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特許7393591情報記録体、印刷物および情報記録体の読取装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】情報記録体、印刷物および情報記録体の読取装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20231129BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20231129BHJP
   B41M 1/18 20060101ALI20231129BHJP
   B41M 1/22 20060101ALI20231129BHJP
   B42D 25/26 20140101ALI20231129BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20231129BHJP
   B42D 25/382 20140101ALI20231129BHJP
   B42D 25/387 20140101ALI20231129BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20231129BHJP
【FI】
B41M3/14
B41M1/30 B
B41M1/18
B41M1/22
B42D25/26
B42D25/30 100
B42D25/382
B42D25/387
B42D25/305
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023543205
(86)(22)【出願日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2023019057
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022085251
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】杉江 健太
(72)【発明者】
【氏名】中崎 久美子
(72)【発明者】
【氏名】小林 馨
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065185(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054380(WO,A1)
【文献】特開2013-004025(JP,A)
【文献】特開2021-000751(JP,A)
【文献】特開2020-059174(JP,A)
【文献】特開2021-146550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B41M 1/18-1/30
B42D 25/26-25/391
G07D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面に光輝性インキにより形成された第1印刷層と、
前記一方の面側であって、光輝性インキではない有色インキにより形成された第2印刷層と、
前記一方の面側であって、透明インキにより形成された第3印刷層と、を備えた情報記録体であって、
前記第2印刷層は、第1のパターンを形成し、
前記第3印刷層は、第2のパターンを形成し、
平面視において、前記第1のパターンおよび前記第2のパターンの全域は、それぞれ前記第1印刷層が形成された領域と重畳し、
前記第2のパターンは、特定のコードに変換可能な情報を含み、少なくともその一部が前記第1のパターンと重畳する、情報記録体。
【請求項2】
前記第1印刷層はベタで形成されるか、または網点面積率が80%以上の網点、または万線で形成される、請求項1に記載の情報記録体。
【請求項3】
前記第2のパターンは複数の部分パターンから構成される、請求項1に記載の情報記録体。
【請求項4】
前記複数の部分パターンのうち、一部の前記部分パターンのみが前記特定のコードに変換可能な情報を含む、請求項3に記載の情報記録体。
【請求項5】
前記第2のパターンは、複数の部分パターンから構成されるとともに各々が1箇所以上の切り出しシンボルを備え、かつ、すべての前記切り出しシンボルが、前記第2のパターンの端部に配置される二次元コードである、請求項1に記載の情報記録体。
【請求項6】
前記第2のパターンは、複数の部分パターンから構成され、
前記複数の部分パターンを第1の部分パターン、第2の部分パターンおよび前記第1の部分パターンと前記第2の部分パターンとに挟まれた第3の部分パターンとするとき、
前記第1の部分パターンの前記第2の部分パターン側に配置された第1の切り出しシンボルと、前記第2の部分パターンの前記第1の部分パターン側に配置された第2の切り出しシンボルとが前記第3の部分パターンの少なくとも2箇所の切り出しシンボルを構成し、前記第3の部分パターンは、前記特定のコードに変換不可能なダミー情報を構成する、請求項5に記載の情報記録体。
【請求項7】
前記第1のパターンは、前記第2のパターンとは異なる特定のコードに変換可能な情報を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報記録体。
【請求項8】
前記第3印刷層は、赤外線または紫外線によって励起され、可視光を発光する前記透明インキにより構成される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報記録体。
【請求項9】
前記第3印刷層は、赤外線吸収材料を含むインキにより構成される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報記録体。
【請求項10】
前記第3印刷層は、偏光材料を含むインキにより構成される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報記録体。
【請求項11】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報記録体を備える印刷物。
【請求項12】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の情報記録体の読み取りを行う読取装置であって、
照明光源と、
読取部と、
制御部と、
を備え、
前記読取部は、消灯状態を含む第1の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能な前記情報記録体の前記第1のパターン、および、前記第1の光量よりも大きな第2の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能な前記第2のパターンの情報を読み取ることができ、
前記制御部は、前記読取部を起動させ、前記読取部が読み取り可能な状態で前記第2の光量にて前記照明光源を点灯させ、前記照明光源が点灯された状態で前記読取部に前記第2のパターンの情報を読み取らせ、前記読取部が読み取った前記第2のパターンの情報を、前記特定のコードに変換する、読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造が困難な情報記録体およびこれを備える偽造防止印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷物等に人間が視覚で認識できないレベルで情報を埋め込み、印刷物の美的外観を損なわずに、埋め込まれた情報を読取装置で読み取る、電子透かし技術が用いられている。
【0003】
電子透かしの技術を用いた印刷物として、下記の特許文献1には、光輝層に印刷される画像と、当該画像上に形成され透明層として印刷される画像とを含む合成画像を具備した情報記録体が記載されている。当該情報記録体において、両画像は、それぞれ観察角度によって反射光量の異なるインキにより印刷され、合成画像は、観察角度によって一方の画像を認識可能である。また、光輝層に印刷された画像は、空間周波数領域における特徴点に規則性を有する画像であり、透明層に印刷される画像は、空間周波数領域における特徴点がその規則性を阻害する位置に配置される画像である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-93895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合、専用の読取装置の観察角度を調整することによって、当該印刷物の光輝層に印刷された、空間周波数領域における特徴点に規則性を有する画像情報を読み取り、これを解読することができる。しかし、一般的に電子透かし技術で埋め込まれた情報を解読するには、読取装置が専用のアルゴリズムを有する解読用のアプリケーションプログラムを備えている必要があり、例えばスマートフォンのような汎用的な読取装置を簡単に利用できない可能性がある。また、当該印刷物の読み取るべき画像情報の外観が視覚的に認識し難く、画像情報のどこを読めばよいか視覚的に分かりにくいため、利便性に影響を及ぼす可能性がある。一方、一般的な読取装置で読み取り可能なコードとしてOCR文字、バーコードまたは二次元コード等が挙げられる。しかしこれらのコードは複製や偽造が容易であり、そのまま使用すれば当該印刷物の真贋判定や安全性の確保において支障をきたすおそれがある。
【0006】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、一般的な読取装置による読み取りや解読が容易であり、かつ、複製等が困難な情報記録体、印刷物および情報記録体の読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態による情報記録体は、基材と、前記基材の一方の面に光輝性インキにより形成された第1印刷層と、前記一方の面側であって、光輝性インキではない有色インキにより形成された第2印刷層と、前記一方の面側であって、透明インキにより形成された第3印刷層と、を備えた情報記録体であって、前記第2印刷層は、第1のパターンを形成し、前記第3印刷層は、第2のパターンを形成し、平面視において、前記第1のパターンおよび前記第2のパターンの全域は、それぞれ前記第1印刷層が形成された領域と重畳し、前記第2のパターンは、特定のコードに変換可能な情報を含み、少なくともその一部が前記第1のパターンと重畳する。
【0008】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記第1印刷層はベタで形成されるか、または網点面積率が80%以上の網点、または万線で形成されてもよい。
【0009】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記第2のパターンは複数の部分パターンから構成されてもよい。
【0010】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記複数の部分パターンのうち、一部の前記部分パターンのみが前記特定のコードに変換可能な情報を含むものでもよい。
【0011】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記第2のパターンは、複数の部分パターンから構成されるとともに各々が1箇所以上の切り出しシンボルを備え、かつ、すべての前記切り出しシンボルが、前記第2のパターンの端部に配置される二次元コードであってもよい。
【0012】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記第2のパターンは、複数の部分パターンから構成され、前記複数の部分パターンを第1の部分パターン、第2の部分パターンおよび前記第1の部分パターンと前記第2の部分パターンとに挟まれた第3の部分パターンとするとき、前記第1の部分パターンの前記第2の部分パターン側に配置された第1の切り出しシンボルと、前記第2の部分パターンの前記第1の部分パターン側に配置された第2の切り出しシンボルとが前記第3の部分パターンの少なくとも2箇所の切り出しシンボルを構成し、前記第3の部分パターンは、前記特定のコードに変換不可能なダミー情報を構成してもよい。
【0013】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記第1のパターンは、前記第2のパターンとは異なる特定のコードに変換可能な情報を含むものでもよい。
【0014】
また、本実施の別の形態による情報記録体において、前記第3印刷層は、赤外線または紫外線によって励起され、可視光を発光する前記透明インキにより構成されてもよく、赤外線吸収材料を含むインキにより構成されてもよく、偏光材料を含むインキにより構成されてもよい。
【0015】
本実施の形態による印刷物は、上記いずれかの情報記録体を備えてもよい。
【0016】
本実施の形態による上記いずれかの情報記録体の読み取りを行う読取装置は、照明光源と、読取部と、制御部と、を備え、前記読取部は、消灯状態を含む第1の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能な前記情報記録体の前記第1のパターン、および、前記第1の光量よりも大きな第2の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能な前記第2のパターンの情報を読み取ることができ、前記制御部は、前記読取部を起動させ、前記読取部が読み取り可能な状態で前記第2の光量にて前記照明光源を点灯させ、前記照明光源が点灯された状態で前記読取部に前記第2のパターンの情報を読み取らせ、前記読取部が読み取った前記第2のパターンの情報を、前記特定のコードに変換する。
【0017】
本実施の形態による上記読取装置を含む真贋判定装置は、前記情報記録体の真贋判定のための比較情報を記憶する記憶部と、前記特定のコードと前記比較情報とを比較して、両者が一致する場合に前記情報記録体が真正であると判断し、両者が一致しない場合に前記情報記録体が真正でないと判断する真贋判定部と、をさらに備える。
【0018】
また、本実施の別の形態による読取装置において、前記読取部は、消灯状態を含む第1の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能な前記情報記録体の前記第1のパターン、および、前記第1の光量よりも大きな第2の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能な前記第2のパターンの情報を読み取ることができ、前記特定のコードを第2の特定コードとするとき、前記コード特定部は、前記読取部が読み取った前記第1のパターンおよび前記第2のパターンの情報を、それぞれ第1の特定のコードおよび前記第2の特定のコードに変換し、前記第1の特定のコードに基づき、前記読取部による前記第2のパターンの読み取り位置を特定する位置特定部をさらに備えてもよい。
【0019】
また、本実施の別の形態による真贋判定装置は、前記情報記録体の真贋判定のための比較情報を記憶する記憶部と、前記第2の特定のコードと前記比較情報とを比較して、両者が一致する場合に前記情報記録体が真正であると判断し、両者が一致しない場合に前記情報記録体が真正でないと判断する真贋判定部と、をさらに備えてもよい。
【0020】
また、本実施の別の形態による真贋判定システムは、上記読取装置と、サーバとが互いに通信可能に接続された真贋判定システムであって、前記サーバは、前記情報記録体の真贋判定のための比較情報を記憶する記憶部と、前記読取装置が読み取った前記第2の特定のコードと前記比較情報とを比較して、両者が一致する場合に前記情報記録体が真正であると判断し、両者が一致しない場合に前記情報記録体が真正でないと判断する真贋判定部と、を備えてもよい。
【0021】
本実施の形態による上記情報記録体の読み取り方法は、消灯状態を含む第1の光量にて照明光源を点灯することにより読み取りが可能となる、前記情報記録体の前記第1のパターンの情報を読み取る工程と、読み取った前記第1のパターンの情報を第1の特定のコードに変換する工程と、前記第1の特定のコードに基づき、前記第2のパターンの読み取り位置を特定する工程と、前記第1の光量よりも大きな第2の光量にて前記照明光源を点灯することにより読み取りが可能となる前記情報記録体の前記第2のパターンの情報を読み取る工程と、読み取った前記第2のパターンの情報を第2の特定のコードに変換する工程と、を備える。
【0022】
本実施の形態による上記情報記録体の真贋判定を、コンピュータに実行させるためのプログラムは、消灯状態を含む第1の光量にて照明光源が点灯されているときに、前記情報記録体の前記第1のパターンの情報を読み取り、読み取った前記第1のパターンの情報を第1の特定のコードに変換し、前記第1の特定のコードに基づき、前記第2のパターンの読み取り位置を特定し、前記第1の光量よりも大きな第2の光量にて前記照明光源が点灯されているときに、前記情報記録体の前記第2のパターンの情報を読み取り、読み取った前記第2のパターンの情報を第2の特定のコードに変換し、前記第2の特定のコードと真贋判定のための比較情報とを比較して、両者が一致する場合に前記情報記録体が真正であると判断し、両者が一致しない場合に前記情報記録体が真正でないと判断するものでもよい。
【0023】
本実施の形態による上記情報記録体の真贋判定方法は、上記読み取り方法に加えて、前記第2の特定のコードと真贋判定のための比較情報とを比較して、両者が一致する場合に前記情報記録体が真正であると判断し、両者が一致しない場合に前記情報記録体が真正でないと判断する工程、をさらに備える。
【発明の効果】
【0024】
本実施の形態によれば、一般的な読取装置による読み取りや解読が容易であり、かつ、複製等が困難な情報記録体、印刷物および情報記録体の読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る情報記録体の平面図および側面図である。
図2】観察角度による情報記録体の見え方の違いを説明する図である。
図3】本開示の情報記録体の読取装置および真贋判定装置の構成を示す構成図である。
図4】第2パターンのコード特定および真贋判定に関するフロー図である。
図5】第2実施形態に係る情報記録体の平面図および観察角度による見え方の違いを説明する図である。
図6】第3実施形態および第3実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図7】第4実施形態に係る読取装置の構成を示す構成図である。
図8】第1パターンのコード特定に関するフロー図である。
図9】第2パターンのコード特定に関するフロー図である。
図10】第4実施形態に係る真贋判定装置の構成を示す構成図である。
図11】第2パターンのコード特定および真贋判定に関するフロー図である。
図12】第5実施形態および第6実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図13】第7実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図14】第8実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図15】第9実施形態および第10実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図16】第11実施形態に係る情報記録体を備える印刷物の平面図および側面図である。
図17】第12実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図18】有色インキの網点面積率における性能の優劣を示す表である。
図19】有色インキの網点面積率の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面等を参照して、本開示の情報記録体、印刷物および真贋判定装置の一例について説明する。ただし、本開示の情報記録体等は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0027】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0028】
1.第1実施形態
本開示の情報記録体の第1実施形態について説明する。図1(a)は、第1実施形態に係る情報記録体1を説明する平面図であり、図1(b)は、その側面図である。情報記録体1は、基材2と、基材2の一方の面に光輝性インキにより形成された光輝性インキ層5とを備える。また、同じく一方の面側であって、光輝性インキ層5の基材2とは反対の面側に、光輝性インキ層5の一部を覆うように、有色インキにより形成された有色インキ層3と、観察角度によって反射光量が異なる性質を有する透明インキにより形成された透明インキ層4と、を備えている。
【0029】
情報記録体1を厚さ方向から平面視した場合に、有色インキ層3で形成された第1パターン100および透明インキ層4で形成された第2パターン200の全域は、それぞれ光輝性インキ層5が形成された領域と重畳する。また、第2パターン200は、特定のコードに変換可能な情報を含み、少なくともその一部が第1パターン100と重畳する。光輝性インキ層5、有色インキ層3および透明インキ層4は、それぞれ第1印刷層、第2印刷層および第3印刷層の一例である。
【0030】
(a)情報記録体の構成
基材2は、光輝性インキ層5、有色インキ層3および透明インキ層4を形成するための印刷、塗布適性を有し、これらを支持するものとして、任意のフィルム基材が用いられる。基材2として、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ弗化エチレン系フィルム、ポリ弗化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン-ビニルアルコールフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリイミドフィルム等を挙げることができる。また、基材2は紙製用紙、シール・ラベル用紙等であってもよい。
【0031】
基材2は、不透明であっても透明であってもよく、また、有色であっても無色であってもよい。本実施形態では、基材2は、例えば白色に着色されている。基材2の厚さも情報記録体1の用途によって任意に定めることができ、適度な可撓性を有する程度に薄くしてもよく、可撓性がほとんどない程度に厚くしてもよい。前者の場合は、例えば厚さを0.1μm以上、1mm以下とすることができ、後者の場合は、例えば厚さを1mmよりも厚くすることができる。
【0032】
光輝性インキ層5を構成する光輝性インキは、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛もしくは錫の粉末、またはリン化鉄等を成分とする銀色系、青味金色系または赤味金色系を示す光輝性材料を含むインキとすることができる。このような光輝性インキを有する光輝性インキ層5は、照明光源から白色光等を入射させた場合に、主として拡散反射する性質を有する。
【0033】
一方、有色インキ層3を構成する有色インキは、通常のデザイン形成用の印刷等で用いられている印刷インキにより構成され、透明ではない何らかの色であるプロセスカラーが何らかのパターンや模様として視認できる程度のもので足りる。また、有色インキは、光輝性材料を含まない。有色インキ層3は、それ自体を視認または認識させることで、これと重畳する透明インキ層4のパターンを多少なりともカモフラージュできればよいからである。例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の樹脂に、酸化チタン、フタロシアニン、カーボンブラック等の有機または無機の着色顔料を混合したインキで形成されるものが挙げられる。有色インキは紫外線硬化型、酸化重合型、浸透型、過熱乾燥型、蒸発乾燥型等の様々なタイプが適用可能である。このような有色インキを有する有色インキ層3の照明光源から白色光等を入射させた場合の反射の仕方は、当該有色インキ層3の表面の面質にも左右されるが、通常は拡散反射する性質が支配的となることが多い。
【0034】
また、透明インキ層4を構成する透明インキは、例えば、着色顔料を使用しない透明ニス、インキワニス、透明インキまたはメジウムインキとすることができる。透明インキは紫外線硬化型、酸化重合型、浸透型、過熱乾燥型、蒸発乾燥型等の様々なタイプが適用可能である。このような透明インキを有する透明インキ層4は、照明光源から白色光等を入射させた場合に、主として入射角と出射角とが略等しい正反射の方向において、入射光に対する出射光の割合が変動する性質を有する。すなわち、透明インキ層4は、照明光源の入射角に対する出射角が正反射の方向において、入射光に対する出射光の割合が低減する。
【0035】
これは、正反射の条件では透明インキ層4の光吸収が増加するためである。その反面、透明インキ層4は、照明光源の入射角に対する出射角が正反射ではない方向において、入射光のほとんどを透過する。したがって、この場合、入射光は透明インキ層4の通過ではほとんど減衰せず、下地の光輝性インキ層5や有色インキ層3で反射した際の出射光がほぼそのまま透明インキ層4からの出射光となる。
【0036】
光輝性インキ層5、有色インキ層3および透明インキ層4を形成する印刷方法は、グラビア印刷、ウェットオフセット印刷、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷または凹版印刷等であってもよく、インクジェット印刷や静電印刷でもよい。また、インクリボンを用いた溶融転写または昇華転写としてもよい。
【0037】
光輝性インキ層5は特段のパターンを形成せず、基材2の一方の面の所定の領域に一様に形成される。光輝性インキ層5は例えばベタで形成される。一方、有色インキ層3と透明インキ層4とは、それぞれ所定のパターン画像である第1パターン100と第2パターン200とを構成しており、基材2の一方の面の光輝性インキ層5と重畳する位置に形成される。その結果、観察角度によって見え方は異なるが、情報記録体1の上述の一方の面には第1パターン100と第2パターン200とが合成された所定のパターン画像300が形成される。
【0038】
本実施形態では第1パターン100は、「ABC」という文字から構成されるパターンを最小単位としてこれが左右方向に連続的に配列され、当該配列がさらに上下方向に並列的に繰り返し配置されたものである。一方、第2パターン200は二次元コードである。すなわち、第1パターン100は目視により読み取りが可能なパターンであり、第2パターン200は、二次元コードの読み取り機能を備えた一般的な読取装置で読み取れ、一義的な特定のコードに変換が可能なパターンである。なお、特定のコードとは、読取装置や後述の真贋判定装置により変換が可能な、利用者(ユーザ)にとって必要な有用性のある情報の表現体系である。
【0039】
第1パターン100は、目視によって文字が読め、あるいは何らかの模様であると認識できる程度のものであればよく、これによって、適度に第2パターン200の視認性や読み取り性が阻害できることが好ましい。一方、第2パターン200である透明インキは目視し難い方が読み取り困難性が増す上でよい。
【0040】
なお、セルサイズとは、二次元コードを構成する最小単位となるセルと呼ばれる四角形の1辺の長さをいう。二次元コードは、このセルがマトリックス状の升目に対して配置されたりされなかったりすることで全体として特定のコードに対応したパターンを構成する。ちなみに、二次元コードがQRコード(登録商標)のモデル2のバージョン25で、その全体のサイズが20mm角である場合は、これに対応するセルサイズは約0.17mmであり、バージョン30である場合は、これに対応するセルサイズは約0.15mmである。
【0041】
光輝性インキ層5は、銀色系の光輝性材料を含むインキを使用する場合、少なくとも網点面積率が80%以上の網点または万線で形成することが好ましく、100%の網点、すなわちベタで形成することがさらに好ましい。網点面積率が80%以上であることにより、第1パターン100の視認性の向上や第2パターン200の機械読み取り性が向上し、100%であることにより、その効果(視認性や機械読み取り性)を一層高められるからである。光輝性インキ層5の網点は、例えば、FMスクリーンの画像のような不規則な網点とは異なり、例えば、一定の網点等のような規則性のある網点である。なお、網点面積率は、網点階調において、単位面積あたりに占める網点面積の割合をパーセントで表したものである。また、網点面積率の算出方法の一例については、後述において説明する。
【0042】
また、第1パターン100を構成する有色インキ層3は、白インキ、黒インキ、およびこれらの調合または重ね合わせによるグレー色のインキであってもよい。または、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各インキであるプロセスカラーのインキおよび他の黒インキや特色インキ等から適宜取捨選択し、これらを調合または重ね合わせたインキとしてもよい。有色インキ層3は、透明ではない有色の無彩色または有彩色のインキで構成される層であり、有色インキ層3を形成する有色インキは、網点面積率が35%以上、55%以下の網点とすることが好ましく、40%以上、50%以下の網点とすることがさらに好ましい。
【0043】
図18は、有色インキの網点面積率ごとに各種の性能の優劣をまとめた表80を示す。
図18の表80は、行に有色インキの網点面積率を示し、網点面積率は、25%から60%までが5%刻みになっている。また、図18の表80は、列に各種の性能を示し、性能は、有色インキの二次元コードにおける機械読取性、透明インキの二次元コードにおける機械読取性、有色インキの視認性、コピー防止性である。行と列が交わるところが、評価であり、性能の優劣を○、△、×の3段階で示している。○は良好であり、×は不良であり、△はその中間を示す。
表80によれば、網点面積率が35%以上、55%以下の網点である範囲81であればいずれの評価にも不良がない。また、網点面積率が40%以上、50%以下の網点である範囲82であれば、性能に対する評価がさらに良好である。ベストは、すべての性能に対する評価が良好である45%前後である。
なお、有色インキ(第1パターン100)が機械読取しないデザインの場合(第2パターン200のカモフラージュ機能のみとする場合)は、網点面積率が30%以上、55%以下の網点である範囲であれば不良がない。
【0044】
ここで、有色インキの網点面積率は、以下の2つの測定方法を用いて行った。
(方法1)
機器:X-rite製 ホータブル分光測色計(eXactアドバンス)
測定照明条件:M1(ISO13655準拠)
色彩計算パラメータ:D50/2
光輝性インキの上に有色インキの載った部分を計測
有色インキをC(シアン)とし、測定のCMYKカラー(K:黒)からシアンの値を読み取った(網点%の測定)
→測定したい場所に上記の機器を設置し、濃度測定を行い、測定結果が網点%となる。
【0045】
(方法2)
機器:マイクロスコープ(Keyence MHX500F)
網点のピッチ、サイズから網点濃度を測定して算出(実物計測)
印刷物は、150線 2400dpi解像度で印刷
方法2の場合、図19に示すように、測定媒体である印刷物90に対して150線である線90aで四方を囲われた150線ピッチ91の面積に対する網点92のサイズにより、網点面積率を算出できる。
【0046】
有色インキの網点面積率が前者の範囲であることにより、外部からの入射光の量に対して、有色インキの網点の隙間を通過して下地の光輝性インキ層5にて反射した反射光の量を増加できる。よって、所定条件における第2パターン200を構成する透明インキ層4と、その下地となる光輝性インキ層5および有色インキ層3とのコントラストが大きくとれ、読取装置による第2パターン200の読み取り性が向上する。また、有色インキの網点面積率が後者の範囲であることにより、第2パターン200の読み取り性が一層向上し、読取装置の機種ごとの照明の強さ等の個体差の影響をより受けにくい、安定した読み取り性が得られる。
【0047】
一方、図1(a)に示す第2パターン200の二次元コードについては特に制約はなく、セルサイズはなるべく大きくし、二次元コード全体のサイズはなるべく小さくすることが好ましい。ちなみに、二次元コードがQRコード(登録商標)のモデル2で、その全体のサイズが12mm角である場合、バージョンを10以下とすることが好ましく、バージョンを3以下とすることがさらに好ましい。第2パターン200の読み取り性を向上させるためである。
【0048】
第2パターン200がモデル2のQRコード(登録商標)であるとする。このとき、第2パターン200の外形輪郭が略正方形であり、その3頂点に、小さい正方形とその外側を囲むような一回り大きな正方形の外枠とから構成される切り出しシンボル200pが配置される。切り出しシンボルはファインダパターンとも呼ばれ、読取装置で当該コードを読み取る際のパターンの位置や傾きを判別するために使用される。
【0049】
なお、本実施形態では、第1パターン100は目視による読み取りが可能なパターンであり、第2パターン200が二次元コードである。よって、第2パターン200のみが読取装置により一義的な特定のコードに変換可能としている。しかし、第1パターン100は、目視による読み取りができないランダムな、または無意味なパターンであってもよく、意匠性のみを目的とする何らかのデザインであってもよい。第1パターン100は第2パターン200の存在をカモフラージュする効果を最低限備えていれば足りるからである。
【0050】
次に、観察角度の変化による、情報記録体1に形成されたパターン画像300の見え方について説明する。図2(a)は、パターン画像300が形成された情報記録体1を図示しない平台に載せ、これに情報記録体1の主面に対する法線方向に対して傾いて配置された照明光源21から白色光を出射する状況を示す。照明光源21からの出射光は、その出射角が情報記録体1の主面に対する法線方向に対して角度αである。
【0051】
このとき、当該法線方向に対して照明光源21とは反対側に角度αよりも小さい角度β1だけ傾いた位置である位置P1の視点22aから観察した場合、情報記録体1にて視認できるパターン画像は、図2(b)に示すパターン画像300aとなる。すなわち、観察角度がβ1である位置P1の視点22aからは第1パターン100のみが良好に視認できる。
【0052】
下地となる光輝性インキ層5の部分は、前述したとおり観察角度にかかわらず拡散反射し、有色インキ層3で構成された第1パターン100も、光輝性インキ層5ほどではないものの、特定波長の光をほぼ全領域に向けて拡散反射する傾向がある。このため、入射角αで入射した光はαとは異なる出射角β1にも反射する。その一方で、透明インキ層4で構成された第2パターン200は、正反射の出射角に相当する観察角度付近でない位置では、入射光のほとんどが透過してしまう。このため、当該条件では第2パターン200を視認することが困難となる。
【0053】
また、当該法線方向に対して照明光源21とは反対側に角度αと略同一の角度である角度β2だけ傾いた位置である位置P2の視点22bから観察した場合、情報記録体1にて視認できるパターン画像は、図2(c)に示すパターン画像300bとなる。すなわち、観察角度がβ2である位置P2の視点22bからは第1パターン100および第2パターン200の両方が視認でき、特に第2パターン200が良好に視認できる。光輝性インキ層5の部分や有色インキ層3で構成された第1パターン100は上記のとおり、観察角度にかかわらず、拡散反射する。これに対して、透明インキ層4で構成された第2パターン200は、他の観察角度と比べて、正反射の出射角に相当する観察角度付近でその入射光に対する反射光の割合が低減し、光輝性インキ層5の部分や第1パターン100に対する第2パターン200のコントラストが十分に得られる。
【0054】
なお、当該法線方向に対して照明光源21とは反対側に角度αよりも大きい角度β3だけ傾いた位置である位置P3の視点22cから観察した場合、情報記録体1にて視認できるパターン画像は、図2(b)に示すパターン画像300aとなる。すなわち、観察角度がβ1である位置P1の視点22aと同様の見え方となる。その理由も観察角度がβ1のときと同じである。
【0055】
図2(c)の情報記録体1に形成されたパターン画像300bを位置P2の視点22bにて、当該読取装置で読み取るとする。ここで、読取装置に入射する情報記録体1からの反射光のうち、パターン画像300bの下地となる光輝性インキ層5の部分および第1パターン100における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率をRe21(%)とする。また、第2パターン200における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率をRe22(%)とする。光輝性インキ層5の部分における白色光に対する反射率をRe211(%)とし、第1パターン100における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率をRe212(%)とするとき、通常はRe211がRe212よりも大きくなる。Re21はこのようなRe211およびRe212の両方を含めた反射率を示す。
【0056】
このとき、読取装置の2値化処理の反射率の閾値をRe21よりも小さくRe22よりも大きい閾値Re23とし、当該閾値以上の反射率で入光した画素を1または白とし、当該閾値未満の反射率で入光した画素を0または黒と判断する。このような処理により、読取装置は、パターン画像300bの下地である光輝性インキ層5の部分および第1パターン100の部分を1または白として捉え、第2パターン200の部分を0または黒として捉える。これにより、第2パターン200をコントラストよく抽出でき、特定のコードに良好に変換できる。
【0057】
有色インキ層3を形成する有色インキを網点面積率が35%以上、55%以下の網点とする場合には、パターン画像300bの下地の第1パターン100の網点の隙間からに光輝性インキ層5が若干露出する。このため、第1パターン100の部分による局所的な反射率の低下が第2パターン200の読み取りを阻害するおそれは少ない。なお、照明光源21と観察角度との位置関係によって、パターン画像300にパターン画像300aおよび300bの2通りの見え方が生じることを説明したが、このような見え方の相違は、照明光源21と観察角度との位置関係を変えなくても生じさせることができる。
【0058】
例えば、図2(a)において、角度αと略同一の角度である角度β2だけ傾いた位置である位置P2の視点22bに固定した状態で観察する。ここで、照明光源21を消灯し、または光量を大幅に減らして照明光源21を点灯させる。この場合、情報記録体1には拡散光の入射が支配的となり強い平行光が入射しないため、ほとんどの入射光は透明インキ層4を透過してしまう。その結果、第2パターン200は視認できず、拡散反射の効果により、光輝性インキ層5の部分および第1パターン100だけが視認できる。すなわち、図2(b)のパターン画像300aが視認できる。
【0059】
一方、上記の条件下で、照明光源21を十分な光量で点灯した場合、情報記録体1には比較的強い平行光が入射角αにて入射し、光輝性インキ層5の部分および第1パターン100と一緒に第2パターン200が明確に視認できる。すなわち、図2(c)のパターン画像300bが視認できる。このとき、ほとんどの入射光は透明インキ層4にて吸収され、出射光の割合が低減するからである。
【0060】
以上のように、照明光源21の光量を一定にし、観察角度を変えることによって、情報記録体1のパターン画像300について、パターン画像300aおよび300bの2通りの見え方を生じさせることができる。また、照明光源21と観察角度との位置関係を変えずに、照明光源21の光量のみを消灯状態と点灯状態とに変えたり、または、光量の少ない点灯状態とこれよりも光量の多い点灯状態とに変えることによっても、同様の見え方を生じさせることができる。なお、以上の説明は、図2(a)において照明光源21の配置や観察角度がともに上述の法線方向に対向して配置される場合、すなわち角度αおよびβ2がともに0°であっても成り立つ。
【0061】
なお、第2パターン200を構成する透明インキ層4は、観察角度による上述の条件を満たす程度に透明性を有していればよい。具体的には照明光源の入射角と観察角度とが正反射の条件ではない前提にて波長が380nm以上で780nm以下の可視光に対する透過率が50%以上あることが好ましく、80%以上あることがさらに好ましい。50%以上あることで、第1パターン100が外部から視認しやすくなり、その結果、第2パターン200のカモフラージュ効果が向上する。さらに、80%以上あることで、透明インキ層4の第2パターン200が目視で視認しづらくなり、セキュリティ性が向上する。
【0062】
これにより、情報記録体1の一方の面において、第1パターン100は視認しやすいが、第2パターン200は照明光源の入射角と観察角度とが所定の関係にない場合には視認し難い。このため、特定のコードに変換可能な情報を含む第2パターン200の存在を第3者に知られ難くでき、セキュリティ性を高められる。さらに、情報記録体1の一方の面のパターン画像300を複写機でコピーした場合、複写機の照明光源が固定位置からの一定の光照射とは異なるため、透明インキ層4で構成された第2パターン200を抽出することが困難である。その結果、拡散反射する光輝性インキ層5の部分と第1パターン100とのコントラストにより、第1パターン100のみが抽出されやすくなる。よって複写機でのコピー牽制効果を有し、情報記録体1の複製が困難となり、この点からもセキュリティ性が向上する。
【0063】
また、照明光源を十分な光量で点灯し、当該照明光源の入射光に対する正反射の条件となる観察角度に読取装置を配置することにより、特別な機能を有しない二次元コードの読み取り機能を備えた市販の安価な読取装置でも、簡単に第2パターン200を抽出し、特定のコードを解読できる。
【0064】
この場合でも、照明光源を消灯したり、光量を少なくして点灯したときは、周囲の光は拡散光の影響を大きく受けるため、当該読取装置では情報記録体1の第1パターン100のみが良好に視認できる一方、第2パターン200が読み取り難くなる。よって、読み取り条件を適切にしなければ第2パターン200が読み取れないため、情報記録体1の真贋判定やセキュリティに対する信頼性を十分高めることができる。また、第2パターン200を第1パターン100よりも小さく設けることにより、第1パターン100と第2パターン200とを重畳印刷した際に、相互の印刷位置が多少ずれていても問題なく機械読み取りすることができる。
【0065】
ただし、第2パターン200は第1パターン100と略同一の大きさで設けてもよい。すなわち、第2パターン200の外周の輪郭と第1パターン100の外周の輪郭とが、略一致するように設けてもよい。こうすることで、目視で視認可能な第1パターン100を目安として、第2パターン200の配置される範囲を容易に推定でき、読取装置の位置合わせが簡略化できるからである。なお、第2パターン200の外周の輪郭と第1パターン100の外周の輪郭とが、部分的に略一致するように設けてもよく、この場合でも上記の効果が得られる。
【0066】
(b)情報記録体の読取装置の構成
次に、本開示の情報記録体の情報を読み取るための読取装置の構成を説明する。読取装置30は、照明光源と二次元コード読み取り機能とを備える。図3(a)に示すように、読取装置30は、カメラ等の読取部33と、照明光源21と、各種操作のための操作部35と、各種表示のためのディスプレイ画面である表示部36とを備える。また、読取装置30は、これら各部の動作指示や情報の入出力のための制御部31と、記憶部32とを備える。
【0067】
読取部33は、CCDカメラ等であり、カラーCCD素子が撮影画像に対応する平面に各画素単位で配列している。読取部33は、各画素について入光量に応じたRGBの各色に関して0から255までの256段階の階調情報を画像取得部44に出力できる。照明光源21は、LEDライト等が用いられ、その光量が調整可能である。また、表示部36は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等が用いられ、操作部35は、当該ディスプレイが兼用する静電容量入力型のタッチパネルから構成され、ディスプレイ上のタッチパネルを指でなぞることにより必要な操作を行うことができる。なお、読取部33は白黒のCCDカメラ等であってもよく、各画素について入光量に応じた0から255までの256段階のグレーレベルの階調情報を画像取得部44に出力できてもよい。
【0068】
また、制御部31は、CPUまたはMPUと、各部位との入出力インターフェースとを備え、各種の演算や判断をしたり、各部位への指示を含む情報の入出力等を行う。制御部31は、照明光源21のオンオフや、光量の強弱を制御する照明制御部41と、読取部33が撮影した画像を取得する画像取得部44と、画像取得部44が取得した二次元コード画像等から特定のコードを特定するコード特定部45と、を備える。
記憶部32は、制御部31が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶領域である。
記憶部32は、プログラム記憶部38を記憶している。プログラム記憶部38は、制御部31の各種機能を実行するためのプログラムを記憶している。制御部31の各種機能を実行するためのプログラムは、1つのプログラムにより構成されていてもよいし、複数のプログラムにより構成されていてもよい。また、当該プログラムは、他のプログラムに組み込み可能なものであってもよい。
【0069】
読取装置30は、例えば制御部31および記憶部32の機能を備えるパーソナルコンピュータやサーバと、読取部33であるCCDカメラ等と、照明光源21と、操作部35および表示部36と、から構成されてもよい。各装置はその各々がケーブルで互いに通信可能に接続されてもよく、各装置がインターネット等のネットワークを介して互いに通信可能に接続されてもよい。また読取装置30は、例えばスマートフォンのように上述の機能が一体化された装置であってもよい。
なお、コンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいい、読取装置30は、制御部31、記憶部32等を備えた情報処理装置であり、コンピュータの概念に含まれる。
【0070】
(c)情報記録体の読み取り方法
次に、本実施形態の情報記録体1の情報の読み取り方法について、主として図4に基づいて説明する。まず、読取装置30はカメラ等の読取部33を起動する(図4のステップS401)。次に、読取装置30は、情報記録体1のパターン画像300を読取部33の視野に入れる。
【0071】
続いて、読取装置30の照明制御部41は、照明光源21をオンにして、読取部33が情報記録体1のパターン画像300から第1パターン100だけでなく第2パターン200を一緒に撮影できる状態にする。照明光源21をオンにすることにより情報記録体1に照明光源からの強い平行光が入射し、読取装置30を適切な観察角度に向けることで、読取部33には情報記録体1からの正反射光を入光させることができる。このとき、読取部33には、情報記録体1の透明インキ層4からの反射光が光輝性インキ層5および有色インキ層3からの反射光よりも低減している。よって、光輝性インキ層5の部分および有色インキ層3の第1パターン100を背景として、これらと透明インキ層4の第2パターン200とのコントラストが明瞭となる。
【0072】
その結果、光輝性インキ層5からの反射光が多く入射し、有色インキ層3からの反射光がこれよりも少ない量で入射する。すなわち、読取部33は第2パターン200を良好に撮影することができる。この状態で、画像取得部44は読取部33から第2パターン200の画像を取得し、コード特定部45にて特定のコードに変換する(ステップS402)。
【0073】
なお、読取装置30がスマートフォンである場合、照明光源21と読取部33との配置が略同一位置であることが多い。この場合は、照明光源21および読取部33がともに情報記録体1の主面の法線方向に対向するように配置すればよい。スマートフォン等で使用可能な汎用的な二次元コードの読み取りアプリケーションプログラムでは、通常、読み取った画像から二次元コードを抽出するための画像の二値化処理における閾値を自動的に増減させて二次元コードの読み取りが最適化されるように調整される。この場合の閾値とは、例えば背景画像を1とし、二次元コード画像を0と判定するための境界となる輝度の基準値である。
【0074】
ここで、コード特定部45での特定のコードへの変換に成功した場合は、その旨が読取装置30の表示部36に表示される(ステップS403およびステップS404)。一方、特定のコードへの変換に失敗した場合は、その旨が表示部36に表示される(ステップS403およびステップS408)。図4における読み取り方法のフローはこれで完了する。前者の場合は、引き続き、第2パターン200から特定されたコードに基づいて、別の処理を継続することができる。例えば、当該特定のコードを金融取引の認証番号とみなして、これが真正である場合には、金融取引が可能となるように構成できる。一方、後者の場合は、当該情報記録体1が真正ではないものと判断し、処理を中止するとしてもよい。
【0075】
(d)情報記録体の真贋判定装置の構成
次に、本実施形態の情報記録体1の真贋判定をするための真贋判定装置の構成を説明する。真贋判定装置60は、図3(b)に示すように、上述の読取装置30に対して、制御部31aが真贋判定部46をさらに備え、記憶部32aがプログラム記憶部38の他に真贋判定情報53が格納される点が異なる。真贋判定部46は、上述の読取装置30において、コード特定部45が第2パターン200から変換、特定したコードが真正であるか否かを、記憶部32aの真贋判定情報53と比較することにより判断する機能を有する。すなわち真贋判定情報53は、情報記録体1の真贋判定のための比較情報である。
なお、コンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいい、真贋判定装置60は、制御部31a、記憶部32a等を備えた情報処理装置であり、コンピュータの概念に含まれる。
【0076】
(e)情報記録体の真贋判定方法
続けて、本実施形態の情報記録体1の情報の真贋判定方法について、上述の図4の読み取り方法に続く工程を説明する。コード特定部45での特定のコードへの変換に成功し、その旨が読取装置30の表示部36に表示された後(ステップS403およびステップS404)、真贋判定部46が、コード特定部45によって第2パターン200から特定されたコードの真贋判定を行う(ステップS405)。ここで当該コードが真正であると判断した場合は、その旨を表示し(ステップS406およびステップS407)、当該コードが真正ではないと判断した場合は、その旨を表示し(ステップS406およびステップS409)、処理を終わる。第2パターン200が特定コードに変換できず(ステップS403およびステップS408)、処理Aに進んだ場合もステップS409を経て処理を終わる。
【0077】
ここで、記憶部32aに格納される真贋判定情報53は、例えば第2パターン200から変換したコードと一致する値としてもよいが、所定の暗号鍵によって暗号化された値としてもよい。この場合、真贋判定部46は、当該所定の暗号鍵を備え、参照した真贋判定情報53の値より自身の暗号鍵で複合化した値を算出し、これを第2パターン200から特定されたコードと比較することにより真贋判定をしてもよい。こうすることで、真贋判定情報53が外部から不正に読み出されたり、改ざんされるリスクを低減できる。
【0078】
なお、真贋判定情報53は真贋判定装置60の記憶部32aではなく、別個の管理用サーバの記憶部に格納されていてもよい。この場合、真贋判定装置60は、当該管理用サーバとインターネットや携帯電話用の広域通信網等を介して通信する機能を備えることが好ましい。
【0079】
読取装置30や真贋判定装置60は、上記の情報記録体1から必要とする特定のコードを正しく抽出し、真贋判定するものである。これにより、情報記録体1から正しい情報を特定して、これを金融取引の条件としてセキュアに手続きを進めることができ、情報記録体の偽造や不正使用を容易に検出することができる。
【0080】
なお、真贋判定装置60は、例えば制御部31aおよび記憶部32aの機能を備えるパーソナルコンピュータやサーバと、読取部33であるCCDカメラ等と、照明光源21と、操作部35および表示部36と、から構成されてもよい。各装置はその各々がケーブルで互いに通信可能に接続されてもよく、各装置がインターネット等のネットワークを介して互いに通信可能に接続されてもよい。この場合、真贋判定装置60は、各々の装置が互いに通信可能に接続された真贋判定システムを構築する。また真贋判定装置60は、例えばスマートフォンのように上述の機能が一体化された装置であってもよい。
【0081】
2.第2実施形態
次に、本開示の情報記録体の第2実施形態について説明する。図5(a)に示す第2実施形態に係る情報記録体1aの積層構成は、図1(b)に示した第1実施形態に係る情報記録体1と同一の層構成である。この点は、第12実施形態を除いた以降に述べる他の実施形態や変形例についても同様である。情報記録体1aは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像301を備える。パターン画像301は、有色インキ層3により構成される第1パターン101と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン200と、を含む。
【0082】
第2実施形態の情報記録体1aでは、パターン画像301を構成する第1パターン101が文字等から構成されるパターンではなく、第1パターン101および第2パターン200がいずれも二次元コードである点が第1実施形態とは異なる。すなわち、二次元コードの読み取り機能を備えた一般的な読取装置で、当該第1パターン101および当該第2パターン200をそれぞれ別個に読み取り、かつ一義的な特定のコードへ変換することが可能である。
【0083】
第2パターン200である透明インキは目視し難い方が良く、機械(例えば、カメラ等)で読み取る際の位置合わせは、視認性のよい第1パターン101を目視しながら行う。この構成により、機械を介して視認しながら容易に位置合わせすることが可能である。
【0084】
また、第1パターン101を構成する有色インキ層3は、第1実施形態と同様の構成でよく、有色インキ層3を形成する有色インキは、網点面積率が35%以上、55%以下の網点とすることが好ましく、40%以上、50%以下の網点とすることがさらに好ましい。第1パターン101が二次元コードであっても、第1実施形態と同様の効果が期待できるからである。
【0085】
第1パターン101および第2パターン200が両方ともモデル2のQRコード(登録商標)であるとする。このとき、両パターンともその外形輪郭が略正方形であり、その3頂点に、小さい正方形とその外側を囲むような一回り大きな正方形の外枠とから構成される切り出しシンボル101pおよび200pが配置される。特に、第1パターン101から特定のコードへの変換が必要な場合は、第1パターン101の切り出しシンボル101pと第2パターン200とが重畳しないように両パターンを配置することが好ましい。これにより、第1パターン101の読み取り性が向上するからである。
【0086】
次に、観察角度の変化による、情報記録体1に形成されたパターン画像301の見え方について説明する。パターン画像301が形成された情報記録体1aを図示しない平台に載せ、これに情報記録体1aの主面に対する法線方向に対して傾いて配置された照明光源21から白色光を出射する状況を示すものとして説明する。
【0087】
このとき、当該法線方向に対して照明光源21とは反対側に角度αよりも小さい角度β1だけ傾いた位置である位置P1の視点22aから観察した場合、情報記録体1aにて視認できるパターン画像は、図5(b)に示すパターン画像301aとなる。すなわち、観察角度がβ1である位置P1の視点22aからは第1パターン101のみが良好に視認できる。また、当該法線方向に対して照明光源21とは反対側に角度αと略同一の角度である角度β2だけ傾いた位置である位置P2の視点22bから観察した場合、情報記録体1aにて視認できるパターン画像は、図5(c)に示すパターン画像301bとなる。すなわち、観察角度がβ2である位置P2の視点22bからは第1パターン101および第2パターン200の両方が視認でき、特に第2パターン200が良好に視認できる。
【0088】
なお、当該法線方向に対して照明光源21とは反対側に角度αよりも大きい角度β3だけ傾いた位置である位置P3の視点22cから観察した場合、情報記録体1にて視認できるパターン画像は、図5(b)に示すパターン画像301aとなる。すなわち、観察角度がβ1である位置P1の視点22aと同様の見え方となる。
【0089】
図5(b)の情報記録体1に形成されたパターン画像301aを位置P1の視点22aまたは位置P3の視点22cにて、二次元コード用の読取装置で読み取るとする。ここで、読取装置に入射する情報記録体1からの反射光のうち、パターン画像301aの下地である光輝性インキ層5における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率をRe211(%)とする。また、第1パターン101における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率をRe212(%)とする。すなわち第1実施形態と同じ定義とする。
【0090】
このとき、読取装置がCCD素子である各画素への入光量に応じた2値化処理を行う。そして、反射率の閾値をRe212よりも大きくRe211よりも小さい第1の閾値Re13とし、当該閾値以上の反射率で入光した画素を1または白とし、当該閾値未満の反射率で入光した画素を0または黒と判断する。このような処理により、読取装置は、パターン画像300aの下地の光輝性インキ層5の部分を1または白として捉え、第1パターン101の部分を0または黒として捉えることで、第1パターン101をコントラストよく抽出でき、特定のコードに良好に変換できる。
【0091】
これと同様に、図5(c)の情報記録体1aに形成されたパターン画像301bを位置P2の視点22bにて、当該読取装置で読み取るとする。ここで、読取装置に入射する情報記録体1aからの反射光のうち、パターン画像301bの下地となる光輝性インキ層5の部分および第1パターン101における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率を前述したようにRe21(%)とする。Re21は上述のRe211およびRe212の両方を含めた反射率を示す。また、第2パターン200における反射光の元の照明光源21の白色光に対する反射率をRe22(%)とする。
【0092】
このとき、読取装置の2値化処理の反射率の閾値をRe21よりも小さくRe22よりも大きい第2の閾値Re23とし、当該閾値以上の反射率で入光した画素を1または白とし、当該閾値未満の反射率で入光した画素を0または黒と判断する。このような処理により、読取装置は、パターン画像301bの下地である光輝性インキ層5の部分および第1パターン101の部分を1または白として捉え、第2パターン200の部分を0または黒として捉える。これにより、第2パターン200をコントラストよく抽出でき、特定のコードに良好に変換できる。
【0093】
パターン画像301bの下地の第1パターン101の隙間に光輝性インキ層5が若干露出しているが、前述のとおり、第1パターン101の二次元コードのセルサイズを十分小さくしているため、光輝性インキ層5の部分が第2パターン200の読み取りを阻害するおそれは少ない。なお、照明光源21と観察角度との位置関係によって、パターン画像301に、パターン画像301aおよび301bの2通りの見え方が生じることを説明したが、このような見え方の相違は、照明光源21と観察角度との位置関係を変えなくても生じさせることができる。この点は、第1実施形態と同様である。
【0094】
これにより、情報記録体1aの一方の面において、第1パターン101は視認しやすいが第2パターン200は視認し難いため、特定のコードに変換可能な情報を含む第2パターン200の存在を第3者に知られ難くでき、セキュリティ性を高められる。さらに、情報記録体1の一方の面のパターン画像301を複写機でコピーした場合、複写機の照明光源が固定位置からの一定の光照射とは異なるため、透明インキ層4で構成された第2パターン200を抽出することが困難である。その結果、拡散反射する光輝性インキ層5を下地とした有色インキ層3で構成された第1パターン101のみが抽出されやすくなる。よって複写機でのコピー牽制効果を有し、情報記録体1aの複製が困難となり、この点からもセキュリティ性が向上する。
【0095】
なお、本実施形態では、パターン画像301を構成する第1パターン101および第2パターン200が、いずれも、所定の条件にて二次元コードの読み取り機能を備えた一般的な読取装置で読み取れ、それぞれ一義的な特定のコードに変換が可能なパターンである。そして、第1パターン101はあくまでカモフラージュのためだけに設けられ、第1パターン101から変換された特定のコードは無意味なダミーコードであってもよい。この場合は、第1実施形態のように所定の条件で第2パターン200を読み取ることによって、これを特定のコードに変換したり、真贋判定することができる。
【0096】
しかし、本実施形態はこれに限らず、例えば、所定の第1の条件にて、読取装置でパターン画像301を構成する第1パターン101を読み取り、所定の第2の条件にて、読取装置でパターン画像301を構成する第2パターン200を読み取るものとしてもよい。このとき、第1パターン101および第2パターン200がそれぞれ特定のコードに変換され、それぞれのコードが、記憶部32aに記憶された2種類の真贋判定情報53と一致した場合に、パターン画像301が真正であると真贋判定することとしてもよい。この場合、所定の第1の条件は、読取装置の照明をオフとした条件であり、所定の第2の条件は、読取装置の照明をオンとした条件としてもよい。
【0097】
3.第3実施形態
次に、本開示の情報記録体の第3実施形態について説明する。図6(a)に示す第3実施形態に係る情報記録体1bは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像302を備える。パターン画像302は、有色インキ層3により構成される第1パターン101と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン201と、を含む。情報記録体1bの透明インキ層4で構成される第2パターン201は、左上、右上、左下および右下の4箇所に分離配置された複数の部分パターン201a、201b、201cおよび201dから構成される。この点が、第1および第2実施形態の情報記録体1および1aとは異なる。各部分パターンは縦2列および横2列のマトリックス状に配置される。
【0098】
本実施形態では第2パターン201を構成する4箇所の部分パターンはいずれも同一パターンの二次元コードである。すなわち、二次元コード読み取り機能を備えた一般的な読取装置で、当該第1パターン101や当該第2パターン201を構成する各々の部分パターンをそれぞれ別個に読み取れた場合には、読取装置によりそれぞれ一義的な特定のコードに変換が可能である。部分パターン201a、201b、201cおよび201dは、それぞれ同一のコードに変換される。
【0099】
4箇所の部分パターンは、それぞれが所定の隙間だけ離隔して同一向きになるよう配置される。すなわち、複数の部分パターンの切り出しシンボル201p同士が互いに重ならないように配置され、その切り出しシンボル201pがそれぞれの部分パターンの左上、右上および左下となるように配置される。
【0100】
このように、第3実施形態の情報記録体1bは、第1および第2実施形態の情報記録体1および1aの構成をすべて備えつつ、透明インキ層4で構成される第2パターン201が、4箇所に分離配置された複数の部分パターンから構成される。さらに、各部分パターンがそれぞれ同一のコードに変換される。
【0101】
情報記録体1bがこのような構成であることより、情報記録体1bの品質が向上し、読み取り環境への適応性が拡大できる。すなわち、透明インキ層4で構成される第2パターン201の一部が欠損する等の製造上の不具合があったり、照明光源による情報記録体1bの照らし方が強すぎて、第2パターン201の一部がハレーションを起こす場合がある。このような場合でも、4箇所の部分パターンのいずれか1つが完全に読み取れれば正しい特定のコードを解読することができる。よって、読取装置の読み取り環境条件を緩和しつつ、正しく真贋判定が行える。
【0102】
4.第4実施形態
次に、本開示の情報記録体の第4実施形態について説明する。図6(b)に示す第4実施形態に係る情報記録体1cの構成は、第3実施形態に係る情報記録体1bとほぼ同一である。情報記録体1cは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像303を備える。パターン画像303は、有色インキ層3により構成される第1パターン101と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン202と、を含む。情報記録体1cの透明インキ層4で構成される第2パターン202は、それぞれ異なる部分パターンで構成され、各部分パターンがそれぞれ異なる特定のコードに変換可能である点が第3実施形態とは異なる。
【0103】
(a)情報記録体の構成
第2パターン202を構成する4箇所に分離配置された複数の部分パターン202a、202b、202cおよび202dは、その切り出しシンボル202pの配置はすべて同じであるが、いずれも異なるパターンの二次元コードである。よって、読取装置で読み取ったときの各部分パターンは異なる特定のコードに変換される。例えば、部分パターン202a、202b、202cおよび202dは、それぞれ「XYZ67890」、「ABC11111」、「ABC22222」および「ABC33333」に変換できる。ちなみに第1パターン101は「ABC12345」に変換できる。
【0104】
情報記録体1cがこのような構成であることより、情報記録体1cの第2パターン202には、4種類の異なる情報を格納でき、これらの情報に何らかの関連付けを行うことにより、情報記録体の読み取りに関するセキュリティ性をさらに向上させることができる。例えば、部分パターン202aから変換されるコードだけが真正なコードであり、他の部分パターン202b、202cおよび202dから変換されるコードはすべてダミーコードであるとしてもよい。4箇所の部分パターンのいずれが真正なコードであるかは、あらかじめ読取装置にアプリケーションデータとして設定して記憶しておいてもよく、あるいは第1パターン101の読み取りにより変換されたコードが正しい部分パターンの配置情報や特定情報を含むようにしてもよい。
【0105】
(b)第4実施形態の情報記録体に関する読取装置の特徴
次に、本実施形態の情報記録体1cの情報を読み取るための読取装置30aの構成を、前述した読取装置30(図3(a)参照)との相違点を中心に説明する。読取装置30aは、図7に示すように、読取装置30に対して記憶部32bを備え、かつ記憶部32bには、プログラム記憶部38に加えて、第1パターン位置特定情報51と第2パターン位置特定情報52とが格納される点が異なる。また、読取装置30aは、読取装置30に対して以下が異なる。すなわち、制御部31bが、第1パターン101の読み取り位置や読み取り範囲を、記憶部32bの第1パターン位置特定情報51を参照して特定する第1パターン位置特定部42を備える。さらに制御部31bは、第2パターン202の読み取り位置や読み取り範囲を、第2パターン位置特定情報52を参照して特定する第2パターン位置特定部43を備える。
【0106】
第1パターン位置特定情報51の格納は任意であり、情報記録体1cの第1パターン101が複数の部分パターンに分離配置され、それぞれが異なる特定のコードに変換可能な場合に用いられる。このとき、第1パターン位置特定情報51は、真正なコードを有する部分パターンの配置情報を含む。本実施形態では第1パターン101はひとつのコードに変換可能であるため、この情報はなくてもよい。また、第2パターン位置特定情報52は、情報記録体1bの第2パターン202を構成する複数の部分パターンのうち、真正なコードを有する部分パターンの配置情報を含む。例えば、左上に配置される部分パターン202aが真正であるとする情報である。
【0107】
なお、読取装置30aは、例えば制御部31bおよび記憶部32bの機能を備えるパーソナルコンピュータやサーバと、読取部33であるCCDカメラ等と、照明光源21と、操作部35および表示部36と、から構成されてもよい。各装置はその各々がケーブルで互いに通信可能に接続されてもよく、各装置がインターネット等のネットワークを介して互いに通信可能に接続されてもよい。また読取装置30aは、例えばスマートフォンのように上述の機能が一体化された装置であってもよい。
【0108】
(c)情報記録体の読み取り方法
次に、本実施形態の情報記録体1cの情報の読み取り方法について、主として図8および図9に基づいて説明する。まず、読取装置30aはカメラ等の読取部33を起動する(図8のステップS421)。次に、読取装置30aは、情報記録体1cのパターン画像303を読取部33の視野に入れる。ここで、制御部31bは、記憶部32bに第1パターン位置特定情報51が格納されている場合はこれを参照し、第1パターン位置特定部42によって、読取部33がパターン画像303の中の第1パターン101について読み取りの必要な位置や範囲を特定する(ステップS422)。本実施形態では、第1パターン101が単一の二次元コードであり、切り出しシンボル101pによって第1パターン101を読み取るべき位置や範囲を特定できるので、この動作は不要である。
【0109】
続いて、読取装置30aの照明制御部41は、照明光源21をオフにして、読取部33が情報記録体1cのパターン画像303から第1パターン101だけを撮影できる状態にする。照明光源21をオフにすることにより、情報記録体1cに特定方向から強い平行光が入射せず、情報記録体1bは全体的に拡散光を支配的に受ける。これによって、読取部33には、情報記録体1cの光輝性インキ層5からの反射光が有色インキ層3からの反射光よりも増加し、光輝性インキ層5の部分を背景として、これと有色インキ層3の第1パターン100とのコントラストが明瞭となる。その結果、第1パターン101だけを良好に撮影することができる。この状態で、画像取得部44は読取部33から第1パターン100の画像を取得し、コード特定部45にて特定のコードに変換される(ステップS423)。
【0110】
なお、読取部33が情報記録体1cのパターン画像303から第1パターン101だけを撮影できる状態は、照明光源21をオフにした場合には限られない。例えば、照明光源21をオンにしつつ、その光量が非常に弱くなるように調整した場合でも可能である。
【0111】
ここで、コード特定部45での特定のコードへの変換に成功した場合は、その旨が読取装置30aの表示部36に表示される(ステップS424およびステップS425)。一方、特定のコードへの変換に失敗した場合は、その旨が表示部36に表示される(ステップS424およびステップS426)。前者の場合は、引き続き、第1パターン101から特定されたコードに基づいて、第2パターン202の読み取り位置や範囲を特定するステップである処理Bに続く。一方、後者の場合は、処理Cに続く。
【0112】
処理Bにおいて、制御部31bの第2パターン位置特定部43は、記憶部32bに格納される第2パターン位置特定情報52を参照する。そして、読取部33がパターン画像303の中から読み取った第2パターン202のうち、読み取りの必要な位置や範囲、すなわち画像取得部44が取得すべき部分パターンの位置や範囲を特定する(図9のステップS441)。本実施形態では、第2パターン202として4箇所の部分パターン202a、202b、202cおよび202dを読み取った場合、そのうちの左上に配置される部分パターン202aのみを画像取得部44が取得すべき部分パターンであることを特定する。
【0113】
続いて、読取装置30aの照明制御部41は、照明光源21をオンにして、読取部33が情報記録体1cのパターン画像303から第2パターン202だけを撮影できる状態にする。照明光源21をオンにすることにより情報記録体1cに照明光源からの強い平行光が入射し、読取装置30aを適切な観察角度に向けることで、読取部33には情報記録体1cからの正反射光を入光させることができる。このとき、読取部33には、情報記録体1cの透明インキ層4からの反射光が光輝性インキ層5および有色インキ層3からの反射光よりも低減する。その結果、光輝性インキ層5の部分および有色インキ層3の第1パターン101を背景として、これらと透明インキ層4の第2パターン202とのコントラストが明瞭となる。
【0114】
その結果、光輝性インキ層5や有色インキ層3からの反射光が多く入射し、透明インキ層4からの反射光がこれよりも少ない量で入射する。すなわち、読取部33は第2パターン202を良好に撮影することができる。この状態で、画像取得部44は読取部33から第2パターン202のうち、部分パターン202aの画像を取得し、コード特定部45にて、特定のコードに変換する(ステップS442)。
【0115】
ここで、コード特定部45での特定のコードへの変換に成功した場合は、その旨が読取装置30aの表示部36に表示される(ステップS443およびステップS444)。一方、特定のコードへの変換に失敗した場合は、その旨が表示部36に表示される(ステップS443およびステップS445)。前者の場合は、引き続き、第2パターン202の部分パターン202aから特定されたコードに基づいて、前述したような別の処理を継続することができる。
【0116】
(d)情報記録体の真贋判定装置の構成
次に、本実施形態の情報記録体1bの情報の真贋判定をするための真贋判定装置60aの構成を、前述した真贋判定装置60との相違点を中心に説明する。真贋判定装置60aは、図10に示すように、上述の真贋判定装置60に対して記憶部32cを備え、かつ記憶部32cには、プログラム記憶部38および真贋判定情報53に加えて、第1パターン位置特定情報51と第2パターン位置特定情報52とが格納される点が異なる。また、真贋判定装置60aは、制御部31cが、第1パターン101の読み取り位置や読み取り範囲を、記憶部32cの第1パターン位置特定情報51を参照して特定する第1パターン位置特定部42を備える。さらに制御部31cは、第2パターン202の読み取り位置や読み取り範囲を、第2パターン位置特定情報52を参照して特定する第2パターン位置特定部43を備える。なお、記憶部32cは、情報記録体1bの真贋判定のための比較情報として真贋判定情報53を記憶する。
【0117】
なお、真贋判定装置60aは、例えば制御部31cおよび記憶部32cの機能を備えるパーソナルコンピュータやサーバと、読取部33であるCCDカメラ等と、照明光源21と、操作部35および表示部36と、から構成されてもよい。各装置はその各々がケーブルで互いに通信可能に接続されてもよく、各装置がインターネット等のネットワークを介して互いに通信可能に接続されてもよい。この場合、真贋判定装置60aは、各々の装置が互いに通信可能に接続された真贋判定システムを構築する。また真贋判定装置60aは、例えばスマートフォンのように上述の機能が一体化された装置であってもよい。
【0118】
(e)情報記録体の真贋判定方法
続けて、本実施形態の情報記録体1cの情報の真贋判定方法について、主として図8および図11に基づいて説明する。まず、前述したとおり、真贋判定装置60aは、読取部33の起動から(図8のステップS421)、第1パターン101の読み取りによるコードの特定(ステップS424)までを行い、その旨を表示する(ステップS425)。これは、読取装置30aによる第1パターン101のコード特定の方法と同様である。次に、真贋判定装置60aは、図9に示す読取装置30aについての処理である図9のステップS441からステップS444に対応する図11に示すステップS461からステップS464の工程を行う。
【0119】
その後、真贋判定部46が、コード特定部45によって部分パターン202aから特定されたコードの真贋判定を行う(ステップS466)。ここで当該コードが真正であると判断した場合は、その旨を表示し(ステップS467)、当該コードが真正ではないと判断した場合は、その旨を表示し(ステップS469)、処理を終わる。第1パターン101が特定コードに変換できず(図8のステップS424およびステップS426)、第2パターン202のコードの特定工程に入れなかった場合も、ステップS469を経て処理を終わる。
【0120】
第4実施形態の情報記録体1cは、有色インキ層3で構成された第1パターン101が特定のコードに変換し得るように読み取りが可能である。また、透明インキ層4で構成された第2パターン202は、4箇所の部分パターン202a、202b、202cおよび202dから構成され、それぞれが特定のコードに変換し得るように読み取りが可能である。さらに、これらの部分パターンは、少なくともその1つが他とは異なるコードに変換できる。ここで、第1パターン101は第1の特定のコードに変換でき、特定の部分パターン202aは、第2の特定のコードに変換できる。第1の特定のコードは、第2パターン202の中でコードを特定すべき特定の部分パターン202aの位置や範囲に関する情報を含んでいる。
【0121】
よって、まず第1パターン100の読み取りから第1の特定のコードを抽出し、これに基づいて第2パターン202のうち、読み取るべき特定の部分パターン202aの位置や範囲を特定し、当該特定の部分パターン202aから第2の特定のコードを抽出することができる。第2の特定のコードは、部分パターン202a乃至202dのいずれか1つであってもよく、いずれか複数の部分パターンから読み取られたコードを組み合わせたものであってもよい。
【0122】
情報記録体1cがこのような構成であることにより、第1パターン101および第2パターン202をそれぞれ別々に正しく読み取ることが困難である。さらに、汎用の読取装置を用いて第1パターン101と第2パターン202を構成する4箇所の部分パターンとのすべてを読み取れたとしても、これらのパターンから特定されたコードのどれが当該情報記録体1bの真正性を表す値であるかの特定が困難である。これより情報記録体1cによって、さらなるセキュリティ向上が図れる。
【0123】
5.第5実施形態
次に、本開示の情報記録体の第5実施形態について説明する。図12(a)に示す第5実施形態に係る情報記録体1dは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像304を備える。パターン画像304は、有色インキ層3により構成される第1パターン101と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン203と、を含む。情報記録体1dの構成は、第1パターン101および第3実施形態に係る情報記録体1bとほぼ同一であるが、透明インキ層4で構成される第2パターン203の4箇所に分離配置された複数の部分パターンの向きが第2パターン201とは異なる。
【0124】
すなわち、第2パターン203を構成する4箇所に分離配置された複数の部分パターン203a、203b、203cおよび203dは、いずれも同一パターンの二次元コードである。しかし、情報記録体1dを上述の一方の面から平面視したとき、部分パターン203bは、部分パターン202aを時計回りに90°回転した向きになるよう配置される。
【0125】
同様に、部分パターン203cは、部分パターン203aを反時計回りに90°回転した向きになるよう配置される。さらに、部分パターン203dは、部分パターン203aを時計回りまたは反時計回りに180°回転した向きになるよう配置される。したがって、部分パターン203aは、その切り出しシンボル203pが当該部分パターン203aの左上、右上および左下となるように配置され、部分パターン203bは、その切り出しシンボル203pが左上、右上および右下となるように配置される。
【0126】
また、部分パターン203cは、その切り出しシンボル202pが左上、左下および右下となるように配置され、部分パターン203dは、その切り出しシンボル203pが右上、左下および右下となるように配置される。
【0127】
言い換えれば、情報記録体1dの第2パターン203は、複数の部分パターンから構成されるとともに各々が1箇所以上の切り出しシンボル203pを備え、かつ、すべての切り出しシンボル203pが、第2パターン203の外側を向くように端部に配置される。逆に言えば、各々の部分パターンにおいて、切り出しシンボル203pは、第2パターン203の中央側に寄らない向きに配置される。
【0128】
なお、本実施形態では各部分パターンの切り出しシンボル203pが3箇所あるが、切り出しシンボルが1箇所しかない場合でも適用できる。この場合は、左上の部分パターンの切り出しシンボルが左上に配置され、右上、左下および右下の部分パターンの切り出しシンボルがそれぞれ右上、左下および右下に配置されるように各部分パターンを配置する。
【0129】
情報記録体1dがこのような構成であることより、情報記録体1dの品質が向上し、読み取り環境への適応性が拡大できる。すなわち、照明光源の調整によっては、情報記録体1dの照らし方が強すぎて、第2パターン203の中央付近が大きくハレーション(強い光線が当たる部分が白くぼやける現象)を起こす場合がある。このとき、第2パターン203を構成する各部分パターンは読取装置での読み取りにて第2パターン203の中央付近の部分パターンの一部が読み取れない。
【0130】
しかし、部分パターンの位置検出の基準となる切り出しシンボル203pが、第2パターン203の外周に沿うように配置されているため、読取装置が部分パターンの位置検出において、読み取りエラーを起こす可能性を低減できる。
【0131】
一方、二次元コードはその情報に一定の冗長性を持たせているため、切り出しシンボル以外の領域がある程度欠損していても、誤り訂正機能によりコードを復元できることが多い。よって本実施形態の情報記録体1dでは、読み取り環境がある程度悪くても良好に部分パターンを読み取れる。
【0132】
なお、情報記録体1dにおいて、第1パターン101が特定のコードに変換可能であり、第2パターン203を構成する4箇所の部分パターン203a、203b、203cおよび203dの一部または全部が、それぞれ異なる特定のコードに変換できるとしてもよい。このとき、当該情報記録体は、本実施形態と第4実施形態の作用や効果を兼ね合わせたものとなり、このような情報記録体に関する読取装置30、30aや真贋判定装置60、60aの適用も可能である。
【0133】
6.第6実施形態
次に、本開示の情報記録体の第6実施形態について説明する。図12(b)に示す第6実施形態に係る情報記録体1eは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像305を備える。パターン画像305は、有色インキ層3により構成される第1パターン101と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン204と、を含む。情報記録体1eの構成は、第5実施形態に係る情報記録体1dと類似するが、透明インキ層4で構成される第2パターン204が、4箇所ではなく、9箇所に分離配置された複数の部分パターンを備える点が異なる。
【0134】
すなわち、第2パターン204を構成する9箇所に分離配置された複数の部分パターン204a、204b、204c、204d、204e、204f、204g、204hおよび204iは、いずれも同一パターンの二次元コードである。これらは縦3列および横3列のマトリックス状に配置される。情報記録体1eを上述の一方の面から平面視したとき、略正方形となる第2パターン204の左上、右上、左下および右下の角に、部分パターン204a、204c、204gおよび204iが配置される。また、部分パターン204aと204cとの間、204aと204gとの間、204cと204iとの間、および204gと204iとの間に、それぞれ部分パターン204b、204d、204fおよび204hが配置される。
【0135】
各部分パターンは、それぞれの角に3箇所の切り出しシンボル204pを備えている。このうち、第2パターン204の4箇所の角に配置される部分パターン204a、204c、204gおよび204iは、その3箇所の切り出しシンボル204pが第2パターン204の外周に沿うように配置される。
【0136】
また、上記以外の部分パターン204b、204d、204e、204fおよび204hは、部分パターン204aと同じ向きで、各部分パターンの切り出しシンボル204pが左上、右上および左下になるよう配置されている。ただし、これらの第2パターン204の角以外の場所に配置された部分パターンは、どのような向きに配置されていてもよい。
【0137】
なお、各部分パターンが切り出しシンボルを1箇所しか備えない場合でも同様にできる。さらに、第2パターン204が備える部分パターンは9箇所に限らず、16箇所、25箇所等、任意に増やしてもよく、縦横の列数が異なる配列としてもよい。
【0138】
このように、第6実施形態の情報記録体1eは、第2パターン204の各々の部分パターンのうち、第2パターン204の4箇所の角に配置される部分パターンの切り出しシンボル204pが第2パターン204の外周に沿うように端部に配置される。情報記録体1eがこのような構成であることより、情報記録体1eの品質が一層向上し、読み取り環境への適応性が一層拡大できる。
【0139】
7.第7実施形態
次に、本開示の情報記録体の第7実施形態について説明する。図13に示す第7実施形態に係る情報記録体1fは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像306を備える。パターン画像306は、有色インキ層3により構成される第1パターン101と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン205と、を含む。情報記録体1fの構成は、第6実施形態に係る情報記録体1eと類似する。透明インキ層4で構成される第2パターン205は、その4箇所の角に配置される部分パターンを備える。また第2パターン205は、これらの部分パターン(第1および第2の部分パターン)に挟まれ、切り出しシンボル205pを共有する4箇所の部分パターンおよび中央に配置される部分パターン(第3の部分パターン)の計9か所の部分パターンを備える。
【0140】
情報記録体1fを上述の一方の面から平面視したとき、略正方形となる第2パターン205の左上、右上、左下および右下の角に、部分パターン205a、205c、205gおよび205iが配置される。また、部分パターン205aと205cとの間、205aと205gとの間、205cと205iとの間、および205gと205iとの間には、特定のコードへの変換が不可能な、または変換を意図しないダミーパターンが埋め込まれている。これらのダミーパターンは、その左右または上下に配置される部分パターンの切り出しシンボル205pを共用することで、あたかも二次元コードを偽装するダミー部分パターンを形成する。
【0141】
例えば、部分パターン205aと205cとの間、205aと205gとの間、205cと205iとの間、および205gと205iとの間には、ダミー部分パターン205b、205d、205fおよび205hが形成される。なお、部分パターン205a、205c、205gおよび205iに囲まれた中央にもダミーパターンが埋め込まれ、ダミー部分パターン205eが形成される。なお、第2パターン205の部分パターン205a、205c、205gおよび205iは、205c、205gおよび205iが同一の特定のコードに変換可能であり、205aは、これとは異なる特定のコードに変換可能である。
【0142】
本実施形態では、情報記録体1fの第2パターン205は、見かけ上、9箇所の部分パターンを備えているように見える。しかし、実際には、その4箇所の角に配置される部分パターン205a、205c、205gおよび205iだけが二次元コードとして特定のコードに変換が可能であり、それ以外のものは特定のコードへの変換が不可能なダミー部分パターンに過ぎない。さらに、4箇所の部分パターンは異なる特定のコードに変換されるものが含まれており、例えば部分パターン205aだけが真正な特定のコードに変換できる。
【0143】
このような第2パターン205の印刷データを作成するには、まず、ダミー部分パターン205b、205d、205e、205fおよび205hの切り出しシンボル以外を構成するダミーパターンを作成し、所定の領域にレイアウトする。次に、部分パターン205a、205c、205gおよび205iの切り出しシンボルを含めたパターンを上述のダミーパターンに対して上書き形成する。すなわち、部分パターンがダミーパターンと重畳する場合は、前者のデータを優先的に採用する。このような手順で第2パターン205の印刷データを作成することにより、部分パターン205a、205c、205gおよび205iを確実に読み取ることができる。
【0144】
このように、第7実施形態の情報記録体1fは、第2パターン205の各々の部分パターンが正しく特定のコードに変換可能な部分パターンと、特定のコードに変換不可能なダミー部分パターンとに分かれている。よって、仮に第2パターン205のパターン画像306が撮影できたとしても、正しいパターンとダミーのパターンとを分離することが困難である。さらには、正しくコードに変換できる部分パターンを複数特定できても、そのうちのどれが真正なコードに変換できるものかを特定することが困難である。
【0145】
なお、本実施形態の情報記録体1fを、第6実施形態の情報記録体1eのように、第2パターン205の4箇所の角に配置される部分パターンの切り出しシンボル205pが第2パターン205の外周に沿うように端部に配置されるように変形してもよい。あるいは、第2パターン205の4箇所の角に配置される部分パターンをすべて同一のパターンとしてもよく、すべて異なるパターンとしてもよい。また、情報記録体1fについても、前述した読取装置30、30aや真贋判定装置60、60aの適用が可能であることは言うまでもない。
【0146】
8.第8実施形態
次に、本開示の情報記録体の第8実施形態について説明する。図14に示す第8実施形態に係る情報記録体1gは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像308を備える。パターン画像308は、有色インキ層3により構成される第1パターン102と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン208と、を含む。情報記録体1gの構成は、第7実施形態に係る情報記録体1fと類似する。透明インキ層4で構成される第2パターン208は、複数の部分パターンおよびダミー部分パターンである二次元コードが縦3列かつ横5列のマトリックス状に配列されているように見えるものである。例えば、最上段には、左側から右側に向けて順にダミー部分パターン208a、部分パターン208b、ダミー部分パターン208c、部分パターン208dおよびダミー部分パターン208eが配列されている。
【0147】
ここで、部分パターンおよびダミー部分パターンは、各々3箇所の切り出しシンボルを備えるが、互いに横方向に隣接する部分パターンとダミー部分パターンとは、それぞれの切り出しシンボル208pを共有している。さらに、互いに隣接しない部分パターン208bおよび208dのみが特定のコードに変換可能であり、ダミー部分パターン208a、208cおよび208eは、切り出しシンボル208p以外は無意味なパターンであり、特定のコードへの変換が不可能である。第2パターン208の2段目の左側から右側に向けて順に配列されるダミー部分パターン208f、部分パターン208g、ダミー部分パターン208h、部分パターン208iおよびダミー部分パターン208jも同様である。さらに、3段目の左側から右側に向けて順に配列されるダミー部分パターン208k、部分パターン208l、ダミー部分パターン208m、部分パターン208nおよびダミー部分パターン208oも同様である。
【0148】
なお、本実施形態では部分パターン208b、208d、208g、208i、208lおよび208nのうち、208b以外は同一のパターンであり、208bだけがこれらと異なるパターンとなっている。このように、本実施形態では、情報記録体1gの第2パターン208は、見かけ上、15箇所の部分パターンを備えているように見える。しかし、実際には、そのうちの左から2列目および4列目のパターンのみが特定のコードに変換可能な部分パターンであり、それ以外は意味のないダミーのパターンにより構成されている。さらに、特定のコードに変換可能な6箇所の部分パターンの一部または全部を異なるコードに変換されるパターンとすることで、真正なコードだけを抽出して、これを正しく読み取ることをさらに困難とすることができる。例えば本実施形態では部分パターン208bだけが、真正なコードに変換可能とすることができる。
【0149】
ただし、ダミー部分パターン以外の複数の部分パターンは、すべて同一のパターンとしてもよい。こうすることで、真正なコードへの変換が可能な部分パターンを抽出することが困難でありながら、複数の部分パターンのいずれかを正常に読み取れば特定のコードへの変換ができる。これにより、読取装置の性能を抑えることで運用の利便性が増すことになる。
なお、ダミー部分パターンの一例としては、切り出しパターンに欠損を有するようにすることが考えられる。切り出しパターンに欠損を有するようにすれば、読取装置においてダミー部分パターンを特定できない。
【0150】
9.第9実施形態および第10実施形態
これまで、主として第1パターンや第2パターンがいずれも二次元コードであるものを実施形態として例示した。しかし、本開示に係る情報記録体の第1パターンや第2パターンは二次元コードに限らず、少なくとも第2パターンが読取装置により特定のコードに変換可能な情報を含むものが適用可能である。これらの例示として、第1パターンおよび第2パターンがバーコードである第9実施形態と、英数字である第10実施形態について簡単に説明する。
【0151】
図15(a)に示す第9実施形態に係る情報記録体1hは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像307を備える。パターン画像307は、有色インキ層3により構成される第1パターン103と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン206と、を含む。情報記録体1hの構成は、第1パターン103が、横長に形成されたバーコードを上下方向に連続的に配置し、下地の基材2の表面の露出部分が少なくなるように構成されるものである。また、これと重畳するように、第2パターン206が、横長に形成されたバーコードであって、上下に計2箇所の部分パターン206aおよび206bとして配置されている。第1パターン106および第2パターン206は、ともにCODE39のバーコードで構成される。
【0152】
同じく、図15(b)に示す第10実施形態に係る情報記録体1iは、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5と重畳するようにパターン画像309備える。パターン画像309は、有色インキ層3により構成される第1パターン104と、透明インキ層4により構成されるによる第2パターン207と、を含む。情報記録体1iの構成は、第1パターン104が、横書きで記載された英数字の結合である「ABC12345」を横方向および縦方向に連続的に結合させたパターンとして構成され、下地の基材2の表面の露出部分が少なくなるように構成されている。
【0153】
また、これと重畳するように、第2パターン207が、横書きで記載された英数字の結合である「XYZ67890」を上下の計2箇所に配置された部分パターン207aおよび207bとして構成される。第1パターン107および第2パターン207は、ともにCenturyのフォントで作成されているが、他のフォントやOCR文字で作成されていてもよい。このような情報記録体1hや1iについても、第1実施形態や他の実施形態で述べたような作用および効果を得ることができる。
【0154】
10.第11実施形態
次に、本開示の第11実施形態として、情報記録体を備える印刷物について説明する。情報記録体を備える印刷物とは、例えば当該情報記録体が付された映画やコンサート、遊園地等のチケットや入場券、カード等である。情報記録体を備える印刷物はそれ自体として金銭的価値を有するが、これをカラーコピー等によってコピーしたものは、当然ながら金銭的価値を有しない。情報記録体を備える印刷物の一例として図16(a)に示す入場券である印刷物10を例示できる。印刷物10は、用紙11および用紙11の一部を基材2とみなす第1実施形態の情報記録体1を備えている。また、用紙11には、券種を示す表示や購入者、シリアル番号等を示す印刷がされた印字部12が形成されている。
【0155】
ここで、用紙11は、印刷物10のベースとなる基材であり、典型的には白色の紙製用紙であるが、紙としては上質紙やコート紙でもよく、紙以外のプラスチックでもよい。あるいは、紙とプラスチックの混合材料もしくは積層材料であってもよい。いずれにしても、用紙11は情報記録体1を支持し、チケット種別等を示す各種印刷絵柄等を担持できるものであればよい。
【0156】
情報記録体1を備える印刷物10は、その層構成が図16(b)に示す断面図のようになっている。図16(b)は、図16(a)の印刷物10において、情報記録体1の上下方向の略中央を左右に通るA-A線で印刷物10を切り、その断面を下方側から見た断面図である。情報記録体1は、印刷物10の用紙11の一方の表面上に用紙11を基材2と見立てて形成されており、用紙11の面に近い側から、光輝性インキ層5、有色インキ層3および透明インキ層4がこの順に積層されている。有色インキ層3および透明インキ層4は、前述したような第1パターン100および第2パターン200をそれぞれ構成している。
【0157】
情報記録体を備える印刷物は、特に複写機を用いたコピーによる偽造や不正使用が困難となる。また、同等の偽造防止効果を有するホログラムと比較して、材料コストや加工コストが安価であり、展開が容易である。また、汎用的な二次元コードの読取装置を用いて高セキュリティを維持しつつ容易に特定のコードの読み取りや真贋判定ができ、利便性が向上する。本実施形態の情報記録体を備える印刷物は、第1実施形態以外の各実施形態やその変形例に係る情報記録体に置き換えても適用できる。
【0158】
なお、第1実施形態で説明した、情報記録体の第1パターンは視認しやすいが第2パターンは視認し難く、特定のコードに変換可能な情報を含む第2パターンの存在を第3者に知られ難くでき、セキュリティ性を高められる点は、第2乃至第11実施形態のいずれについても共通する。また、情報記録体のパターン画像を複写機でコピーした場合、透明インキ層で構成された第2パターンを抽出することが困難であり、拡散反射しやすい有色インキ層で構成された第1パターンのみが抽出されやすくなるため、複写機でのコピー牽制効果を有する点についても同様である。
【0159】
11.第12実施形態
これまで、基材2に光輝性インキ層5、有色インキ層3および透明インキ層4がこの順に積層された情報記録体について説明した。しかし、本発明の趣旨はこのような態様には限定されない。その他の態様の例示として、第1パターンおよび第2パターンが、それぞれ別個のコードの一部である基礎パターンと組み合わされて全体として特定のコードとして読み取りや真贋判定ができる第12実施形態について説明する。
【0160】
図17(a)に示す第12実施形態に係る情報記録体1nは、基材2の一方の面側に第1の領域と第2の領域とを設け、その全体がパターン画像311を構成するものである。第1の領域には、基材2の一方の面側に例えば黒の有色インキ等により基礎パターン511が形成されている。基礎パターン511は、全体として特定のコードとして読み取り可能な、例えば二次元コードの一部を構成する。一方、第2の領域には、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5が略全面に形成され、その上層に第1の領域とは異なる、例えば青色や赤色等の有色インキ層3により第1パターン111が形成されている。このときの光輝性インキ層5や有色インキ層3の条件は、例えば第1実施形態で説明したものと共通する。
【0161】
第1パターン111は、それだけでは特定のコードとして読み取りができないが、基礎パターン511と一緒に読み取ることにより、全体として特定のコードとして読み取りができる。基礎パターン511および第1パターン111が全体として例えば二次元コードを構成する。なお、第1の領域は、基材2に対して直接、有色インキ等により基礎パターン511が形成されているものとしたが、第2の領域と同様に、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5が形成され、その上層に黒等の有色インキによる基礎パターン511を形成してもよい。
【0162】
一方、図17(b)に示す第12実施形態に係るもう1つの情報記録体1pは、基材2の一方の面側に第3の領域と第4の領域とを設け、その全体がパターン画像312を構成するものである。第3の領域には、基材2の一方の面側に例えば黒の有色インキ等により基礎パターン512が形成されている。基礎パターン512は上述した情報記録体1nと同様の構成である。また第4の領域には、基材2の一方の面側に光輝性インキ層5が形成され、その上層に有色インキ層等を介在させることなく透明インキ層4により第2パターン212が形成されている。このときの光輝性インキ層5、有色インキ層3および透明インキ層4の条件は、例えば第1実施形態で説明したものと共通する。
【0163】
第2パターン212は、それだけでは特定のコードとして読み取りができないが、基礎パターン512と一緒に読み取ることにより、全体として特定のコードとして読み取りができる。基礎パターン512および第2パターン212が全体として例えば二次元コードを構成する。
【0164】
このような2種類の情報記録体1nおよび1pを用いた読み取りや真贋判定の運用の一例として以下のように行うことが可能である。まず、第4実施形態の説明と同様に、読取装置の照明光源をオフにして、情報記録体1nのパターン画像311を読み取る。このとき、第1の領域の基礎パターン511と、第2の領域の第1パターン111とは、照明光源の入射角と観察角度とが拡散反射の条件に対応する。このため、それぞれが、下地である基材2や光輝性インキ層5とのコントラストを良好に得ることができ、両パターンが合成された1つの特定のコードとして読み取りができる。
【0165】
次に、読取装置の照明光源をオンにして、情報記録体1pのパターン画像312を読み取る。このとき、第3の領域の基礎パターン512と、第4の領域の第2パターン212とは、照明光源の入射角と観察角度とが正反射の条件に対応する。このため、それぞれが、下地である基材2や光輝性インキ層5とのコントラストを良好に得ることができ、両パターンが合成された1つの特定のコードとして読み取りができる。
【0166】
以上のように、読取装置の照明光源の条件を変えながら情報記録体1nおよび1pの両方の読み取りを行い、それぞれから読み取られた特定のコードが正しい場合に限り、当該情報記録体1nおよび1pが真正なものであるとの真贋判定を行うことができる。あるいは、情報記録体1nから得られたコードと情報記録体1pから得られたコードとを両方入力することで、初めてこれに対応した必要な情報を入手できるものとしてもよい。このような2種類の情報記録体1nおよび1pを用いることにより、読取装置の照明光源の条件を適宜変更しないと、正しくコードの読み取りができない真贋判定システムが構築できる。すなわち、照明光源の入射角と観察角度とが拡散反射の条件下では情報記録体1pの読み取りは正常にできないため、真贋判定の信頼性が向上できる。
【0167】
12.変形例
図示はしないが、本開示の第1実施形態の情報記録体1の変形例に係る情報記録体について説明する。ただし、以下の各変形例は、第1実施形態の情報記録体1に限らず、他の実施形態の変形例としても適用できる。
【0168】
(a)変形例1
変形例1に係る情報記録体1jは、透明インキ層4jを形成するインキの少なくとも一部に、真贋判定材料である赤外線または紫外線によって励起され可視光を発光する材料を混合し、透明素材のインキを構成したものである。すなわち、透明インキ層4jを形成するインキに、赤外線または紫外線の波長領域の光を照射した場合、当該インキに含まれる発光体内の電子が励起され、励起した電子が基底状態に戻る際に余分なエネルギーを可視光として放出するものである。なお、ここでいう赤外線の波長域は、例えば、0.78μm以上、1mm以下とすることができ、紫外線の波長域は、例えば、0.01μm以上、0.38μm以下とすることができる。ただし、当該インキは、赤外線よりも長い波長域や、紫外線よりも短い波長域であっても、可視光が発光されるものであれば問題はないため、例えば、テラヘルツ波やミリ波等、または、X線やガンマ線等で励起されるものであってもよい。
【0169】
赤外線によって励起され、可視光を発光する材料はアップコンバージョン型発光体とも呼ばれる。例えば、エルビウム(Er)、ホロミウム(Ho)、プラセオジウム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ユウロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される少なくとも1つ以上の希土類元素を含有し、前記蛍光体粒子の母材がハロゲン化物等であるものが挙げられる。また、上記と重複するものもあるが、例えば特開平7-297475号公報に示される材料を挙げることができる。
【0170】
また、紫外線によって励起され、可視光を発光する材料は、例えば、染料としてはフルオレセイン系蛍光色素、クマリン系蛍光色素、ローダミン系蛍光色素等が挙げられる。また、無機系顔料としては、ユウロピウム・マンガン付活アルミン酸バリウムマグネシウム、マンガンで付活されたケイ酸亜鉛、ユウロピウム付活酸化イットリウム、ユウロピウム付活硫化イットリウム、酸化亜鉛、マンガンで付活されたゲルマニウム酸亜鉛、ユウロピウム付活リンバナジン酸イットリウム等が挙げられる。
【0171】
このように、情報記録体1jの透明インキ層4jを形成するインキを、赤外線または紫外線によって励起され、可視光を発光する透明素材のインキにより構成したものとすることにより、以下の効果が得られる。すなわち、可視光の照射角度と観察角度の関係性による、有色インキ層3で構成される第1パターン100と、透明インキ層4jで構成される第2パターン200との見え方の差を利用した本開示の偽造防止機能の精度向上およびその補完を図ることができる。
【0172】
可視光照射の条件下での第2パターン200の読み取りおよび複製の困難性に加えて、特定波長域の赤外線または紫外線の照射時のみ、光輝性インキ層5や有色インキ層3の影響をほとんど受けずに透明インキ層4jの視認性を高めることができる。これにより、一層の読み取りおよび複製の困難性を確保し得る。なお、赤外線によって励起され可視光を発光する材料と、紫外線によって励起され可視光を発光する材料との両方を混合し、透明素材のインキを構成したものであってもよい。こうすれば、2種類の不可視光のいずれかの照射で透明インキ層4jの視認性を向上でき、利便性が向上する。
【0173】
さらに、情報記録体1jの製造工程において、透明インキ層4が所定の第2パターン200を正しく形成しているか否かを直接目視で確認することは困難である。しかし、本実施形態では、透明インキ層4jの形成時または形成後に、特定波長域の赤外線または紫外線を照射することで、透明インキ層4jが可視光を発光するため、第2パターン200の存在を容易に確認することができる。したがって、情報記録体1jの品質向上に寄与できる。
【0174】
(b)変形例2
続いて、変形例2に係る情報記録体1kは、透明インキ層4kを形成するインキの少なくとも一部に、真贋判定材料である赤外線吸収材料を混合し、透明素材のインキを構成したものである。赤外線波長域に吸収を持つ有機色素として、例えば、ポリメチレン系、フタロシアニン系、アゾ系およびアントラキノン系等の化合物が挙げられ、無機系の赤外線吸収剤として、アンチモンドープ酸化錫や錫ドープ酸化インジウムが挙げられる。
【0175】
このように、情報記録体1kの透明インキ層4kを形成するインキを、赤外線吸収材料を含む透明素材のインキにより構成したものとすることにより、変形例1と同様の効果が得られる。すなわち、可視光照射の条件下での第2パターン200の読み取りおよび複製の困難性が得られる。これに加えて、特定波長域の赤外線の照射時のみ、光輝性インキ層5や有色インキ層3の影響をほとんど受けずに透明インキ層4kの第2パターン200を、例えば赤外線カメラ等の測定手段によって明確に認識することができる。これにより、一層の読み取りおよび複製の困難性を確保し得る。
【0176】
さらに、本実施形態では、透明インキ層4kの形成時または形成後に、特定波長域の赤外線を照射し、赤外線カメラ等で当該赤外線の吸収、反射状態を可視化することができる。よって、肉眼での確認が困難な透明インキ層4kの形成状態を、赤外線カメラ等を介して容易に確認でき、情報記録体1kの品質向上に寄与できる。
【0177】
(c)変形例3
さらに、変形例3に係る情報記録体1mは、透明インキ層4mを形成するインキの少なくとも一部に、真贋判定材料である偏光材料を含む、透明素材のインキにより構成したものである。このような偏光材料は、例えば、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を含浸させ、延伸配向させた吸収型偏光子や、二色性染料を配向膜上で配向させて得られる吸収型偏光子、コレステリック液晶を基材上で配向させた反射型円偏光子、複屈折性多層フィルムを積層して形成される反射型偏光子等が挙げられる。なお、これら以外でも、反射光や透過光について特定方向の偏光成分を抽出できる性質を有する素子であれば使用できる。
【0178】
このような、偏光材料を含む透明インキ層4mは、例えば、特許第6519582号公報に記載される方法により形成できる。まず、配向膜用樹脂を溶解した配向膜用溶液を作成し、これを所定のパターン画像以外をマスキングした状態で、マイクログラビア法によって基材2に塗布して塗布膜を形成する。次に、所定方向に沿ってラビング布を用いて塗布膜を擦ることで配向処理を行い、配向膜を得る。さらに、UV硬化性の液晶に対して二色性染料を添加して、偏光子用溶液を作成する。
【0179】
その後、マイクログラビア法を用いて、偏光子用溶液を所定厚さとなるように配向膜の上に塗工し、塗工膜を形成する。次に、塗工膜に対してアニール処理を行い、酸素雰囲気下にて塗工膜にUVを照射して、塗工膜を硬化することにより、所定方向に対して透過軸を有する偏光機能を具備した透明インキ層4mを形成できる。また、マスキングをせずに、基材2の所定領域の全面に透明インキ層4mを形成した後で、パターン画像非形成部分に所定波長域のレーザを照射し、当該部分の液晶分子を熱破壊してパターン画像部分のみに偏光機能を具備させることもできる。
【0180】
このように、情報記録体1mの透明インキ層4mを形成するインキを、偏光材料を含む、透明素材のインキにより構成したものとすることにより、変形例1、2と同様の効果が得られる。すなわち、可視光照射の条件下での第2パターン200の読み取りおよび複製の困難性に加えて、所定の偏光フィルムを使用した場合のみ、光輝性インキ層5や有色インキ層3の影響をほとんど受けずに透明インキ層4mの視認性を高めることができる。これにより、一層の読み取りおよび複製の困難性を確保し得る。
【0181】
さらには、上述の変形例1から変形例3までのいずれかまたはすべてを包含する態様として透明インキ層を構成してもよい。例えば、透明インキ層を形成するインキを、赤外線または紫外線によって励起され可視光を発光する材料に加え、赤外線吸収材料を含む透明素材のインキにより構成したものとすることもできる。あるいは、透明インキ層を形成するインキを、赤外線吸収材料を含むことに加え、偏光材料を含む透明素材のインキにより構成したものとすることもできる。こうすることにより、真贋判定の検証方法を増やすことができ一層の読み取りおよび複製の困難性確保に寄与するものとなる。
【0182】
また、本実施形態では、透明インキ層4mの形成時または形成後に、所定の偏光フィルムを使用することで、肉眼での確認が困難な透明インキ層4mの形成状態を容易に確認でき、情報記録体1mの品質向上に寄与できる。
【0183】
なお、第1実施形態で説明した情報記録体1の真贋判定を行う真贋判定装置60は、例えば制御部31aが所定のプログラムを実行することにより、前述した真贋判定装置60の機能を果たすことができる。このような、真贋判定装置60が備えるコンピュータに実行させるためのプログラムは、消灯状態を含む第1の光量にて照明光源が点灯されているときに、前記情報記録体の前記第1のパターンの情報を読み取り、読み取った前記第1のパターンの情報を第1の特定のコードに変換する。また、前記第1の特定のコードに基づき、前記第2のパターンの読み取り位置を特定し、前記第1の光量よりも大きな第2の光量にて前記照明光源が点灯されているときに、前記情報記録体の前記第2のパターンの情報を読み取り、読み取った前記第2のパターンの情報を第2の特定のコードに変換する。さらに、前記第2の特定のコードと真贋判定のための比較情報とを比較して、両者が一致する場合に前記情報記録体が真正であると判断し、両者が一致しない場合に前記情報記録体が真正でないと判断する。
【符号の説明】
【0184】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j、1k、1m、1n、1p 情報記録体
2 基材
3 有色インキ層
4、4j、4k、4m 透明インキ層
5 光輝性インキ層
10 印刷物
11 用紙
12 印字部
21 照明光源
22 視点
22a 位置P1の視点
22b 位置P2の視点
22c 位置P3の視点
30、30a 読取装置
31、31a、31b、31c 制御部
32、32a、32b、32c 記憶部
33 読取部
35 操作部
36 表示部
41 照明制御部
42 第1パターン位置特定部
43 第2パターン位置特定部
44 画像取得部
45 コード特定部
46 真贋判定部
51 第1パターン位置特定情報
52 第2パターン位置特定情報
53 真贋判定情報
60、60a 真贋判定装置
100、101,102、103、104、111 第1パターン
101p 切り出しシンボル
200、201、202、203、204、205、206、207、208、212 第2パターン
201a、201b、201c、201d、202a、202b、202c、202d、203a、203b、203c、203d、204a、204b、204c、204d、204e、204f、204g、204h、204i、205a、205c、205g、205i、206a、206b、207a、207b、208b、208d、208g、208i、208l、208n 部分パターン
200p、201p、202p、203p、204p、205p、208p 切り出しシンボル
205b、205d、205e、205f、205h、208a、208c、208e、208f、208h、208j、208k、208m、208o ダミー部分パターン
300、300a、300b、301、302、303、304、305、306、307、308、309、311、312 パターン画像
500p、501p 切り出しシンボル
511、512 基礎パターン
【要約】
一般的な読取装置による読み取りや解読が容易であり、かつ、複製等が困難な情報記録体、情報記録体の読取装置等を提供することを課題とする。基材2と、その一方の面に光輝性インキにより形成された光輝性インキ層5と、有色インキにより形成された有色インキ層3と、透明インキにより形成された透明インキ層4と、を備えた情報記録体1であって、有色インキ層3は、第1パターン100を形成し、透明インキ層4は、第2パターン200を形成し、平面視において、第1パターン100および第2パターン200の全域は、それぞれ光輝性インキ層5が形成された領域と重畳し、第2パターン200は、特定のコードに変換可能な情報を含み、少なくともその一部が第1パターン100と重畳する。
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