(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ベルトコンベアの監視装置とそれを用いたベルトクリーナ
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20231130BHJP
B65G 45/16 20060101ALI20231130BHJP
B65G 45/12 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B65G43/02 E
B65G43/02 Z
B65G45/16 A
B65G45/12 A
(21)【出願番号】P 2023029042
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2023-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312010308
【氏名又は名称】マフレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大徳 一美
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132342(JP,A)
【文献】特開2004-250161(JP,A)
【文献】中国実用新案第217126044(CN,U)
【文献】特開2020-142928(JP,A)
【文献】特開2010-013269(JP,A)
【文献】特開2013-252976(JP,A)
【文献】特開2022-016275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体の先端に耐摩耗チップと
固定側に振動検知器が取付けられた検知棒がベルトコンベアのベルト下部に配設され、前記
耐摩耗チップがベルトの表面に押圧力を付加されて当接されており、前記検知棒は前記ベルトの下部に配設された架台に、先端が
ベルトの走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルトの走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒で検出され、少なくとも該検知棒の検出情報が表示出力可能な制御部を有することを特徴とするコンベアベルトの監視装置。
【請求項2】
弾性体の先端に耐摩耗チップと振動検知器が取付けられた検知棒がベルトコンベアのベルト下部に配設され、前記
耐摩耗チップがベルトの表面に押圧力を付加されて当接されており、前記検知棒は前記ベルトの下部に配設された架台に、先端が
ベルトの走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルトの走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒で検出され、該検知棒の検出情報とベルトの異常の有無を付加した教師ありデータを用い、人工知能による解析プログラムに基づいて前記ベルトの異常の有無を判断し運転制御せしめる診断部を有することを特徴とする請求項1記載のベルトコンベア監視装置。
【請求項3】
ベルトコンベアのベルトの下部に配設してベルトに付着した付着物を、耐摩耗チップを取付けた弾性体を前記ベルトの幅方向に配設した架台の溝に複数並べて掻き取るベルトクリーナにおいて、少なくとも前記弾性体の一つは前記弾性体に振動検知器を取付けた検知棒であり、
該検知棒は先端がベルトの走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルトの走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒で検出され、該検知棒の検出情報とベルトの異常の有無を付加した教師ありデータを用い、人工知能による解析プログラムに基づいて前記ベルトの異常の有無を判断し運転制御せしめる診断部を有することを特徴とするベルトクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトコンベアの監視装置とその監視装置を応用したベルトクリーナであり、振動波形をAIで分析してコンベアの異常を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアのベルトの異常には、摩耗、蛇行、破孔、付着物・捲れ、縦裂き、スリップなどがあり、ベルトコンベアの異常は安定生産に直接影響を与えるため、ベルトの点検管理は重要である。広い敷地に多数のベルトコンベアが設置されているような生産ラインでは、ベルトコンベアの基数が多く総延長距離が数十kmから数百kmに達する場合もあり、各ベルトコンベアを人が個別に点検することは困難である。そこで、ベルトにセンサを取り付けてベルトの状態を自動で効率的に監視することが求められている。
【0003】
特開2016-60556号広報において、コンベアベルトを複数の支持ローラで支持するベルトコンベアの異常を、コンベアベルトの側面に取付けた加速度センサにより検知する方法が提案されている。この方法はベルトの異常検知ではなく支持ローラの異常を検知する方法であった。
【0004】
特開2020-132342号広報において、ベルトクリーナフレームに加速度検出部を設けたベルトクリーナが提案されている。この方法では加速度検出器がベルトクリーナフレームに取付けてあるため、ベルト以外の減速機や電動機などの振動も検知するので外乱があり診断が困難であった。又、蛇行や縦裂きや破孔やスリップなどの検出は不可能であった。ベルトクリーナをヘッドプーリの下部に取付けると付着物や捲れなどの突起物に衝突し破損していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-60556号広報
【文献】特開2020-132342号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以下の課題を解決するものである。(1)構造がシンプルでコンパクトでありヘッドプーリの下部に取り付け可能であること。(2)ベルトの付着物や捲れなどの表面性状の変化を敏感に感知できること。(3)ベルトの故障の原因となる現象即ち摩耗、蛇行、破孔、付着物・捲れ、スリップなどの異常によって生じる特異な振動現象を取らえられること。(4)強固な付着物やエンドレスの凹凸から受ける衝撃に大きく撓んで衝撃力を回避し検知棒の破損を回避できること。(5)耐摩耗チップの寿命が長く調整周期や取り換え周期が長いこと。(6)振動波形をパターン化してAIで正確に分析できること。(7)検知棒をベルトクリーナの掻き取り用弾性体の代わりに流用できること。(8)検知棒の取り替えが容易であることなどの条件が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、弾性体の先端に耐摩耗チップと固定側に振動検知器が取付けられた検知棒がベルトコンベアのベルト下部に配設され、前記耐摩耗チップがベルトの表面に押圧力を付加されて当接されており、前記検知棒は前記ベルトの下部に配設された架台に、先端がベルトの走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルトの走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒で検出され、少なくとも該検知棒の検出情報が表示出力可能な制御部を有することを特徴とするコンベアベルトの監視装置である。
【0008】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、弾性体の先端に耐摩耗チップと振動検知器が取付けられた検知棒がベルトコンベアのベルト下部に配設され、前記耐摩耗チップがベルトの表面に押圧力を付加されて当接されており、前記検知棒は前記ベルトの下部に配設された架台に、先端がベルトの走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルトの走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒で検出され、該検知棒の検出情報とベルトの異常の有無を付加した教師ありデータを用い、人工知能による解析プログラムに基づいて前記ベルトの異常の有無を判断し運転制御せしめる診断部を有することを特徴とする請求項1記載のベルトコンベア監視装置である。
【0009】
第の3解決手段は特許請求項3に示すように、ベルトコンベアのベルトの下部に配設してベルトに付着した付着物を、耐摩耗チップを取付けた弾性体を前記ベルトの幅方向に配設した架台の溝に複数並べて掻き取るベルトクリーナにおいて、少なくとも前記弾性体の一つは前記弾性体に振動検知器を取付けた検知棒であり、該検知棒は先端がベルトの走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルトの走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒で検出され、該検知棒の検出情報とベルトの異常の有無を付加した教師ありデータを用い、人工知能による解析プログラムに基づいて前記ベルトの異常の有無を判断し運転制御せしめる診断部を有することを特徴とするベルトクリーナである。
【発明の効果】
【0010】
第1の解決手段による効果は以下である。(1)構造がシンプルでコンパクトでありヘッドプーリの下部に取り付け可能である。(2)細い検知棒の先端に取付けた耐摩耗チップがベルトに押し付けられてベルト表面を精密になぞるので表面の異常を感度よく捕らえることができる。(3)ベルト摩耗、蛇行、破孔、付着物・捲れ、スリップなどによって変化する振動波形の特長を捕らえることができるので振動波形による故障のパターン化が可能である。(4)検知棒が長期間に渡り弾性力を保持しベルト摩耗量との相関を維持できる。(5)強固な付着物やエンドレスの凹凸から受ける衝撃に大きく撓んで衝撃力を回避し検知棒の破損を回避できる。(6)耐摩耗チップの寿命が長く調整周期や取り換え周期が長い。(7)検知棒の取り替えが容易である。
【0011】
第2の解決手段による効果は以下である。(1)検知棒で検知した振動波形のパターンを利用してAIで故障を早期に発見できる。(2)検知棒で検知できる振動パターンは摩耗、蛇行、破孔、付着物・捲れ、スリップなどであり、ベルトの故障原因をパターン化して検知できる。(3)遠隔で監視できる。
【0012】
第3の解決手段による効果は、(1)検知棒で測定された振動からベルトの摩耗量、蛇行状況、掻き取り性能の状況、異常荷重を検知できる。(2)ベルトの剥離や付着物などの異常負荷に対して弾性体や検知棒が瞬時に撓んで回避できるのでヘッドプーリの下部に取り付けてもベルトを損傷することはない。(3)ベルトやクリーナーの稼働状況をAIで監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】はベルト下部に検知棒を取付けたベルトコンベアの斜視図である。
【
図2】は検知棒をヘッドプーリの下部に配設した側面図。
【
図3】は振動波形と代表的なベルト異常の振動波形である。
【
図6】は検知棒をヘッドプーリ下部に取付けた正面図。
【
図7】は検知棒をヘッドプーリ下部に複数取付けた正面図。
【
図8】は
図7の支持枠のA-A断面図及び支持枠のB-B断面図。
【
図10】は弾性体と金属板バネの複合体である検知棒の実施態様図。
【
図12】は検知棒を取付けたベルトクリーナの斜視図と診断部のブロック図。。
【
図13】は検知棒を取付けたベルトクリーナの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を
請求項1~3及び
図1~13に基づいて説明する。
【0015】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、弾性体21の先端に耐摩耗チップ30と固定側に振動検知器50が取付けられた検知棒20がベルトコンベアのベルト11下部に配設され、前記耐摩耗チップ30がベルト11の表面に押圧力を付加されて当接されており、前記検知棒20は前記ベルト11の下部に配設された架台40に、先端20aがベルト11の走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルト11の走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒20で検出され、少なくとも該検知棒20の検出情報が表示出力可能な制御部53を有することを特徴とするコンベアベルト10の監視装置である。
【0016】
図1に示すように、ベルトコンベア10の監視装置は少なくとも検知棒20と制御部53から構成されている。検知棒20がベルト11の表面11aを押圧した状態で当接し配設されている。検知棒20の先端20aには耐摩耗チップ30が取付けられて、固定側20bは架台40の収納部41に片持ち梁となるように固定されている。検知棒20の先端20aはベルト11の摩擦力を受けて揺動自在に動くことができる。収納部41はガイド板42と押え板43からなり、検知棒20はガイド板42に挟まれており、押え板43をボルト44で締め付けることにより架台40に押し付けられている。架台40はコンベア架台12に取付けられている。
【0017】
検知棒20は振動検知器50を備えており振動検知器50で検知された振動信号は制御部53に送られベルト11の稼働状態を監視することができる。ベルト走行中はベルト進行方向の推進力だけでなくベルト11が蛇行することによるスラスト力も付加されるので両者のベクトルを制御部53で演算してベルト11の異常走行を把握できる。振動検知器50と制御部53はコネクタ59で接続され検知棒20をメンテナンスする際などは簡単に分離できる。
【0018】
図4に示すように制御部53は、入力部52、記憶部54、演算部55、出力部56などにから構成されており、振動検知器50の検出情報の記録、演算、表示、通信が可能である。制御部53と演算部55がCPU57である。又検出信号に基づいて入力部52から荷重の閾値の設定が可能である。ベルト11が正常に安定して稼働している際の検知棒20の振動値を基準とし、この基準値よりある値以上になったら警報ランプや警報ブザーを鳴らすなどの対応が可能である。出力部56はディスプレイやプリンターや通信部58などを備えており、外部との通信が可能な機能を備えており、離れた場所での監視、管理が可能である。実線はデータの流れ、破線は制御の流れを示している。
【0019】
振動検知器50には、接触型と非接触型がある。接触型には加速度検出型と速度検出型がある。加速度検出型には圧電型や動電型やストレインゲージ型がある。非接触型には変位検出型があり、過電流型、耐電容量型、光学型がある。それぞれの特性を生かしながら検知棒20の大きさや取付け環境に応じて多くの選択肢がある。加速度センサは加速度の測定ができる慣性センサで、3次元の慣性運動を検出し振動、衝撃、動きを測定でき小型タイプも製品化されているので検知棒20の振動検知器50として望ましい。。
【0020】
振動検知器50による振動測定はレコード針の原理と同じで、レコード針がレコード表面の溝の変化を検知して音を出すように、振動検知器50はベルト表面の凹凸や蛇行などの横ずれの動きやモータの負荷変動などの外力から受ける振動の変化を精密にピックアップし振動波形を制御部53に入力しベルト11の異常を検知し出力部56から出力することができる。
【0021】
図2に示すように検知棒20はヘッドプーリ13やテールプーリやドライブプーリやテンションプーリのようにベルト11にテンションのかかるプーリの下部に取付けるのがよい。ヘッドプーリ13の下部ではベルト11にテンションが付加されておりベルト11は略完全にヘッドプーリ13の形状に沿って平らに押し付けられ延ばされているのでベルト11の摩耗や蛇行や破孔や付着物・捲れなどの異常を検知可能である。
【0022】
図6に示すようにベルト11は走行方向と同時に幅方向にも小刻みに動いているので耐摩耗チップ30を取付けた検知棒20の先端20aはベルト11の複雑な動きに合わせて自在に揺動運動することが必要である。この柔軟な揺動運動がなければ検知棒20は疲労破壊したりベルト11を傷めたりする恐れがある。検知棒20を弾性体21で形成しているので検知棒20の動きは極めて滑らかであり突起物に対しても柔軟に撓んで折損などのトラブルを回避して安定して稼働できる。
【0023】
図7に示すように検知棒20はベルト下部に複数配設できる。ベルト11は中央部がおおきく摩耗する傾向にあり、破孔や捲れなども中央部に集中して発生するので中央部の検知棒20のデータが最重要である。しかしながら、両端部はベルト11の蛇行を素早く検知できるメリットがある。検知棒20がベルト11から外れると検知棒20が完全にフリーになり振動しなくなるので瞬時に蛇行検知が可能となる。
【0024】
検知棒20は樹脂性の弾性体21や金属薄板60がよい。また、樹脂弾性体21と金属薄板60の複合体でもよい。検知棒の厚みは10~30mmの角柱や直径10~30mmの円柱が望ましい。望ましくは□15mm、Φ15mmである。長さは100mm~400mmがよい。100mm以下の場合弾性体の撓みが小さくなり柔軟性が低下するのでベルト11の突起物を回避できない。400mm以上になると設置場所が限定される。樹脂にはウレタン、天然ゴム、クロロピレンゴム、シリコンゴムなどがある。使用環境や特性に応じて選択できる。
【0025】
金属板バネ60の材質は、バネ鋼、ステンレス鋼、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅などを使用できる。金属板バネ60の厚みは0.3~1.5mmがよい。金属板バネ60の厚みが0.3mmより薄いと金属板バネ60の弾性力が不足する。また、1.5mmより厚いと剛性が大きくなりすぎて撓みが小さくなりベルト11の摩耗による凹凸や劣化したエンドレス部や強固な付着物などの突起物を回避できない問題がある。
【0026】
図8に検知棒20の形状例を示す。検知棒20は棒状の弾性体21に振動検知器50や耐摩耗チップ30を取付けている。
図8(a)図は断面が四角形の棒状弾性体からなる検知棒20である。ベルト進行方向の水平力や幅方向のスラスト力に対して振動検知器50を取付けることにより、ベクトル合成により蛇行の方向や大きさを算出できる。
図8(b)図は弾性体21に金属板バネ60を取付けた複合体の検知棒20である。弾性体21の合成をアップすることにより長期使用による弾性体21のヘタレを防止できる。
図8(c)図は金属板バネ60に振動検知器50を取付けた例である。金属板バネ60単体構造なので振動が減衰しにくい。
図8(d)図は弾性体21の断面を円形にした例である。検知棒20がベルト11から受ける水平力とスラスト力の合成ベクトルに対してどの方向にも柔軟に変形できる。
【0027】
図9に金属板バネ60と弾性体21を複合した検知棒20の組み合わせ例を示す。検知棒20はベルト11の水平力やスラスト力を受けて主として進行方法に撓むので、金属板バネ60と弾性体21の接合面61aに滑りが生じると曲げ剛性の複合効果が低下するので、接合面61aを強固に接合する必要がある。
図9(a)は金属板バネ60を弾性体21と耐摩耗チップ30で挟みネジ31で固定し接着剤61で接合している。
図9(b)は金属板バネ60を弾性体21と耐摩耗チップ30で挟みネジ31で固定し、皿ネジ61bで固定している。
図9(c)は金属板バネ60を弾性体21と耐摩耗チップ30で挟みネジ31で固定し、金属板バネ60の下部61cを直角に曲げて弾性体21の底面21aに当接させている。
図9(d)は金属板バネ60を弾性体21と耐摩耗チップ30で挟みネジ31で固定し、金属板バネ60をポンチで穿って突起61dを設け弾性体21に突き刺している。
【0028】
図10はベルト11が摩耗するにつれて検知棒20が次第に立ち上がっていく状況を示している。ベルト11が新品時は、検知棒20は大きく撓んでいるがベルト11が摩耗するにつれて徐々に垂直に立ち上がっていき振動が減衰していく。ベルト11が設定値まで摩耗すると検知棒20に作用する振動は略ゼロになり垂直に立ち上がる。検知棒20によりベルト摩耗管理が長期にわたり正確に把握でき余裕のあるベルト取替え管理が可能になる。
【0029】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、弾性体21の先端20aに耐摩耗チップ30と固定側に振動検知器50が取付けられた検知棒20がベルトコンベア10のベルト11下部に配設され、前記耐摩耗チップ30がベルト11の表面11aに押圧力を付加されて当接されており、前記検知棒20は前記ベルトの下部に配設された架台40に、先端20aがベルト11の走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルト11の走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒20で検出され、該検知棒20の検出情報とベルトの異常の有無を付加した教師ありデータを用い、人工知能による解析プログラムに基づいて前記ベルト11の異常の有無を判断し運転制御せしめる診断部51を有することを特徴とする請求項1記載のベルトコンベア監視装置である。
【0030】
図4に示すように診断部51は入力部52、制御部53、記憶部54、演算部55,出力部56を有している。記憶部54には人工知能を用いた診断用アプリケーションソフトウエア(解析プログラム)や人工知能を用いた解析に使用する教師ありデータが記憶されている。診断部51は診断用アプリケーションソフトウェアや教師ありデータや振動波形解析プログラムやベルト仕様やコンベア操業条件などと組み合わせて検知棒20で検知した振動波形に基づいてベルト11の異常の有無を診断する。
【0031】
図3の振動波形図に示すように検知棒20をベルト11に押し当てて振動を測定し、ベルト摩耗測定、蛇行検知、破孔検知、付着物・繋ぎ目の捲れ検知、縦裂き検知、スリップ検知が可能でありベルトコンベア10の総合的な異常管理が可能である。
【0032】
図3(a)のベルト摩耗測定は、ベルト摩耗に従って検知棒20の押し付け力が徐々に減少して振動が減衰する現象により検知できる。
【0033】
図3(b)の蛇行検知は、ベルト11のスラスト方向の振動がゆっくり増減する状況から検知できる。ベルト11が片側に大きく寄りすぎると自動調心ローラなどによる修正が効かなくなり最終的にコンベアフレームからベルト11が逸脱し大事故に繋がる可能性がある。蛇行傾向を事前に把握することでベルト11を緊急停止できる。
【0034】
図3(c)のベルト11の破孔検知は、ベルト11に小さな孔が生じると検知棒20が孔に落ち込むときに振動が小さくなり、孔から出るときに跳ね上がるので振動が大きくなる特徴がある。この動きは周期性がある。
【0035】
図3(d)の付着物・繋ぎ目の捲れ検知は、ベルト11の表面に付着した突起物やベルトエンドレス部の剥離により捲れた突起は検知棒20に衝突した瞬間に検知棒20を大きく撓ませるので振動が上昇する。通過するときも衝撃的に復帰するので振動は上昇する。この動きは周期性がある。検知が容易なので早い段階で部分捕集を実施できる。
【0036】
図3(e)の縦裂き検知は、障害物がベルト11に突き刺さることにより走行抵抗が急増するのでベルト11は強いテンションを受けて速度変化を繰り返しながら息継ぎ状態で走行する。検知棒20は速度が低下すると振動が減少し、速くなると振動が上昇する。この状態は一定期間継続しベルト11が完全に縦裂きされると定常状態に戻る。縦裂きはベルト交換や捕集に繋がるので早い段階で検知する必要がある。検知棒20により初期段階でベルト11を停止し損害を最小限にとどめることができる。
【0037】
図3(f)のスリップ検知は、ドライブロール(ヘッドプーリ)13が空回りしている状態である。ドライブロール13の回転周波数に同期した振動が発生する。スリップ原因は、雨に濡れた粉体が潤滑剤となって滑りやすくなることや、搬送材が過積載状態になっていることが主な原因である。
【0038】
ベルト11の異常は上記に示したように摩耗、蛇行、破孔、付着物・捲れ、縦裂き、スリップに大きく分類されこれらの異常を事前にキャッチしアクションすることが重要である。検知棒50による振動検知は精密であり、教師ありデータなどに振動データを追加蓄積して実際のベルト11挙動と関連づけてデータを蓄積することによりAI(人工知能)によるベルトコンベア10の診断が可能である。ベルト11の異常を総合的な観点から正確に検知できるのでコントロールセンターなどの運転室でモニターを監視しながら突発故障を未然に防止できる。
【0039】
、
人工知能を用いた診断用アプリケーションソフトは、市販のソフトウエアを使用することもできる。例えば、ニューラルネットワークで構成された機械学習、深層学習等のアルゴリズムを用いたソフトウエアを使用することができる。
【0040】
教師ありデータは、
図3に示すようなベルト11の実装業の振動波形データにベルト11の摩耗、蛇行、破孔、付着物・捲れ、スリップなどの異常情報を付加したデータである。教師ありデータと人工知能を用いた振動波形解析アプリケーションソフトに基づいて、リアルタイムに検知される振動波形のパターンを分析し異常の有無を判断する。振動波形のパターンを、人工知能を用いた解析プログラムに基づいてベルト異常を解析しているので、オペレータを張り付けて24時間監視する必要は無い。
【0041】
図5に解析処理のフローを示す。1)検知棒でベルトの振動を測定する。2)振動波形を診断部に取り込む。3)教師ありデータや解析プログラムで振動波形を解析する。4)解析結果を出力する。5)診断精度向上のため解析結果を教師ありデータに蓄積する。6)終了となりこの解析を繰り返すことにより学習が進みベルト診断精度が向上していく。
【0042】
入力部52は、ネットインタフェース、USBインタフェース等を備える。入力部52は、教師ありデータ、検知棒20で検知した振動波形、振動解析プログラム、ベルト操業条件、ベルト仕様、気象条件などを入力する。制御部53はプログラムを解釈し他の装置に支持を出す。記憶部54はデータや命令を記憶する装置である。演算部55はプログラムの命令に従って演算、処理する。一般に制御部53と合わせてCPU57(中央処理装置あるいは中央演算処理装置)と呼ばれている。出力部56は記憶部54のデータ(処理結果)を外部に出力する。
【0043】
図2に示すようにベルトの振動波形はそれぞれの現象に対して独特の形状を示す。この波形を振動解析アプリケーションプログラムで分析することにより発生トラブルを特定できる。又、振動は振幅、周波数、位相の3要素の合成波から成り立っている。振動波形は複数の正弦波が重なっているので現象を精密に分析するには高速フーリエ変換を用いて振幅、周波数、位相を求める。AIに振動波形を取り込んで解析プログラムで分析することにより複雑に重なっている振動波形を瞬時にいくつかの正弦波に分解し各正弦波の振幅、周波数、位相などを解析して教師ありデータと組み合わせることによりベルト11の事故原因となる兆候を把握できる。
【0044】
ベルト11の操業条件などは振動波形に影響を与えるので、これらの条件を加味して診断する必要がある。ベルト仕様では、ベルト厚み、幅、材質、ステールベルト、帆布ベルト、コンベア速度などの要素がある。ベルト使用条件では使用年数、エンドレスの数、エンドレスの種類などを考慮する必要がある。又、気象条件も重要であり雨や雪や気温もベルトの運転状況に影響を与える。特に雨はスリップや蛇行におおきく影響する要素である。これらの条件と紐付けて教師ありデータを作成し、診断装置にベルト異常の有無の診断をする際にこれらの条件を加味することにより診断精度を向上させることができる。
【0045】
従来、振動波形データの実測値に教師ありデータ、操業条件、気象条件、設備条件、振動解析プログラム、高速フーリエ変換などを用いて総合的に診断するベルトコンベアの診断装置はなかった。
【0046】
出力部56は、液晶ディスプレイ、プリンター、通信部58等で構成される。通信部58は外部との通信が可能な機能を備えており離れた場所での監視・管理が可能である。即ち通信部58を有していることでベルトの情報を遠隔地で受信でき、作動状態を把握することが可能となり離れた場所でも緊急の処置を実施でき重大な設備事故を未然に防ぐことができる。
【0047】
ベルト11の異常の有無の診断結果の情報を蓄積して新たな教師ありデータを作成し、新たに作成された教師ありデータを、記憶部54に記憶された教師ありデータに追加する。そして、追加された教師ありデータを含めて、以後のベルト11の異常の有無の判断をする。このように、教師ありデータを更新していくことにより、ベルト異常の有無を診断するための精度を向上させることができる。
【0048】
診断部51の記憶部54に人工知能を用いて予め教師ありデータを記憶させて診断する解析プログラムだけでなく、深層学習のアルゴリズムを用いた人工知能を適用した場合、学習が進むにしたがって、内部での判断に使用される数式のパラメータが適正化されていく。ベルト異常の有無の判断の正解率が十分に高くなった状態(例えば、正解率が99%以上)のパラメータを有する人工知能を使用する場合、教師ありデータを使用しなくても、ベルト異常の有無の判断を行うことができる。
【0049】
図8は、
図7の支持枠90のA-A断面図及び支持枠90のB-B断面図である。コンベア架台12取付けたベース板95にボルト98によって支持枠90を取付けている。ベース板95に高さ調整板94がボルト97によって取付けられている。高さ調整板94に底板93と側板92が取付けられガイド溝40aが形成されており制振材91を取付けた梁40が挿入されている。高さ調整ボルト96で高さ方向の位置決めが行なわれ押し付けボルト97で梁40を溝40aに固定している。
【0050】
梁40の外周に制振材91を取付けて溝40aに載置しているので、コンベア架台12の振動が梁40を通じて検知棒20に取付けた振動検知器50に伝わらないようにしている。検知棒20をヘッドプーリ13の下部に取付ける際は、モータや減速機の振動の影響を受けるので外乱が大きくなる。制振材91で架台40をコンベア架台12と切り離すことにより振動診断に与える外乱を遮断できる。
【0051】
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、ベルトコンベア10のベルト11の下部に配設してベルト11に付着した付着物を、耐摩耗チップ30を取付けた弾性体21を前記ベルト11の幅方向に配設した架台40の溝80aに複数並べて掻き取るベルトクリーナ70において、少なくとも前記弾性体21の一つは前記弾性体21に振動検知器50を取付けた検知棒20であり、該検知棒20は先端がベルト11の走行方向やスラスト方向に揺動自在に片持ち梁で固定されており、前記ベルト11の走行状態や表面状態や外部からの変化に対応して生じる振動波形が前記検知棒20で検出され、該検知棒20の検出情報とベルト11の異常の有無を付加した教師ありデータを用い、人工知能による解析プログラムに基づいて前記ベルト11の異常の有無を判断し運転制御せしめる診断部51を有することを特徴とするベルトクリーナ70である。
【0052】
図11は検知棒20を備えたベルトクリーナ70である。ベルト11の幅方向に配設した架台80に複数の耐摩耗チップ30を備えた弾性体21が並べて取付けられている。検知棒20は耐摩耗チップ30を取付けた弾性体21に振動検知器50が取付けられている。検検知棒20は少なくともベルトクリーナ70の中央部に配設するが、蛇行や破孔や捲れなどのベルト異常を確実に検知するため複数の検知棒20を取付けてもよい。重要なベルト11を監視する場合は全ての弾性体21に振動検知器50を取付けてもよい。
【0053】
ベルトクリーナの検知棒20は少なくとも
図5(a)、(b)、(c)、(d)に示した実施態様のものを使用できる。また、
図6(a)、(b)、(c)、(d)に示した実施態様のものを使用できる。
【0054】
弾性体21はウレタン、天然ゴム、クロロピレンゴム、シリコンゴムなどがある。使用環境や特性に応じて選択できる。金属板バネ60の材質は、バネ鋼、ステンレス鋼、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅などを使用できる。金属板バネ60の厚みは0.3~1.5mmがよい。金属板バネ60の厚みが0.3mmより薄いと金属板バネ60の弾性力が不足する。また、1.5mmより厚いと剛性が大きくなり撓みが小さくなるのでベルト11の摩耗による凹凸や劣化したエンドレス部や強固な付着物などの突起物を回避できなくなる問題がある。
【0055】
弾性体21は、架台80に設けた溝80aに挿入されている。溝80aは架台80と受け板81と押板83と底板82で構成されている。架台80にはナット86が取り付けられ、押し付けボルト85が回転自在に取り付けてあり、押板83を押し付けることにより、弾性体21を受け板81に押し付けて固定している。弾性体21の下にはライナ84が敷設しており、ライナ84を高さ調整ボルト87で押し上げることにより弾性体21の高さ調整を行なっている。架台80の両側にはベルトクリーナ70をベルトコンベアのフレーム12に取付けるための支持部90が設けてある。
【0056】
図12はベルトクリーナ70に複数の検知棒20を取付けた場合の例である。中央部と両サイドに取付けることによりベルト異常検知精度を向上できる。特にベルト蛇行は、天候やシュート部での偏荷重によって発生しやすいので両側の検知棒20で早期検知できるので大きな設備事故を未然に防ぐことができる。また経時的にベルト摩耗状態を振動波形の減衰状況から把握できるのでベルト保全計画を早いタイミングで見きわめることができる。ベルト11の摩耗は幅方向に均一ではなく特に中央部が摩耗しやすいので、日常保全では高さ調整ボルト87で摩耗度合いに応じてライナ84を押し上げて、耐摩耗チップ30がベルト11表面に正確に当接するように調整する。
【0057】
図4に示すように診断部51は具体的には入力部52、制御部53、記憶部54、演算部55,出力部56を有するCPU(コンピュータ)である。記憶部54には人工知能を用いた診断用アプリケーションソフト(解析プログラム)、人工知能を用いた解析に使用する教師ありデータが記憶されている。診断部51は診断用アプリケーションソフトや教師ありデータや振動波形解析プログラムやベルト仕様やコンベア操業条件などを組み合わせて検知棒20で検知した振動波形に基づいてベルトの異常の有無を診断する。
【0058】
出力部56は、液晶ディスプレイ、プリンター、通信部58等で構成される。通信部58は外部との通信が可能な機能を備えており離れた場所での監視・管理が可能である。即ち通信部58を有していることでベルト11の情報を遠隔地で受信でき、作動状態を把握することが可能となり離れた場所でも緊急の処置を実施でき重大な設備事故を未然に防ぐことができる。ベルトクリーナ70は定期的に取替えるため診断部51と簡単に着脱できるようにコネクタ59を備えている。
【0059】
ベルトクリーナ70に検知棒20を組み込んで振動測定し、振動波形を診断部51で教師ありデータや振動波形解析プログラム解析することにより、ベルト摩耗測定、蛇行検知、破孔検知、付着物・繋ぎ目の捲れ検知、縦裂き検知、スリップ検知などが可能となりベルトコンベア10の総合的な異常管理が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10:ベルトコンベア
11:ベルト
11a:(ベルト)表面
12:コンベア架台
13:ヘッドプーリ(ドライブロール)
20:検知棒
20a:(検知棒)先端
20b:(検知棒)固定側
21:弾性体
30:耐摩耗チップ
31:ネジ
40:架台
41:収納部
42:ガイド板
43:押え板
44:ボルト
50:振動検知器
51:診断部
52:入力部
53:制御部
54:記憶部
55:演算部
56:出力部
57:CPU
58:通信部
59:コネクタ
60:金属板バネ
61a:接合面
61b:皿ネジ
61c:(金属板バネ)下部
61d:(金属板バネ)突起
70:ベルトクリーナ
80:架台
80a:溝
81:受け板
82:底板
83:押板
84:ライナ
85:押付けボルト
86:ナット
87:高さ調整ボルト
90:支持部
91:制振材
92:側板
93:底板
94:調整板
95:ベース板
96:高さ調整ボルト
97:押付けボルト
98:ボルト
【要約】
【課題】課題は以下である。(1)ベルトの故障の原因となる振動現象を捕らえて振動波形をパターン化してAIで正確に分析できること。(2)検知棒がベルトから受ける衝撃を回避し検知棒の破損を回避できること。(3)検知棒がベルトクリーナの掻き取り用弾性体と兼用できベルトの異常診断ができること。
【解決手段】検知棒でベルトの振動波形を検出し異常の有無を判断する診断部と該診断部の分析情報に基づいてコンベアベルトを運転制御する制御部とを有するコンベアベルトの監視装置であり、教師ありデータを用い、人工知能を用いた解析プログラムに基づいてベルト異常を診断できるようにした。また弾性体の一つを検知棒にして、検知棒の検出情報と教師ありデータと人工知能を用いた解析プログラムに基づいてベルトの異常の有無を診断できるようにしてコンベアベルトを運転制御せしめるベルトクリーナを具現化した。
【選択図】
図1