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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ガス液化方法およびガス液化装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20231130BHJP
   F25J 3/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F25J1/00 D
F25J3/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020008072
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2020118441
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2019008163
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 宏文
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-142161(JP,A)
【文献】特開2018-179243(JP,A)
【文献】特開平05-045050(JP,A)
【文献】特開2002-318069(JP,A)
【文献】国際公開第2017/071742(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2016-0057108(KR,A)
【文献】米国特許第3365898(US,A)
【文献】米国特許第10788259(US,B1)
【文献】国際公開第2017/006074(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104807286(CN,A)
【文献】Applied Energy,2009年,Vol. 86,p. 781-792
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00-5/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一圧力で送られる液化天然ガスを、主熱交換器に導入させた後に、前記第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する昇圧工程と、
前記昇圧工程において昇圧された液化天然ガスの少なくとも一部を、前記主熱交換器を経由させて、天然ガスとして前記主熱交換器から導出させる第一天然ガス導出工程と、
フィードガスを、前記主熱交換器を経由させて、第一温度よりも高い第二温度まで冷却する予冷工程と、
前記予冷工程で冷却されたフィードガスを圧縮するフィードガス圧縮工程と、
前記フィードガス圧縮工程において圧縮されたフィードガスを前記第一温度まで冷却するフィードガス冷却工程であって、前記主熱交換器において、前記第一圧力の液化天然ガスおよび前記第二圧力の液化天然ガスと、前記フィードガスとの熱交換により、前記フィードガスを冷却する、フィードガス冷却工程と、
前記フィードガス冷却工程において冷却されたフィードガスを減圧、冷却した後に気液分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で得られる液化フィードガスを液体状態で導出する液化フィードガス導出工程と、
前記気液分離工程で気液分離して得られる気体状態のフィードガスを、前記フィードガス圧縮工程に供されるフィードガスに合流させるフィードガスリサイクル工程と、
を含み、
前記フィードガスは窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス、またはこれらのうちいずれか2以上のガスを含む混合ガスである、
ガス液化方法。
【請求項2】
フィードガス圧縮工程において圧縮されたフィードガスを第一温度より高い第三温度まで冷却する中間冷却工程をさらに含み、前記中間冷却工程で冷却されたフィードガスはさらに圧縮された後に前記フィードガス冷却工程に供される、請求項に記載のガス液化方法。
【請求項3】
前記第二圧力の液化天然ガスのうち、前記主熱交器に導入されない部分を蒸発器において気化させて、天然ガスとして前記蒸発器から導出させる第二天然ガス導出工程をさらに含む、請求項1または2に記載のガス液化方法。
【請求項4】
前記液化フィードガス導出工程において導出された液体状態の液化フィードガスをさらに冷却するためのサブクール工程をさらに含む、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のガス液化方法。
【請求項5】
主熱交換器を経由して第一温度よりも高い第二温度まで冷却したフィードガスを圧縮する第一圧縮機と、
フィードガスを、主熱交換器を経由して第一温度よりも高い第二温度まで冷却した後で第一圧縮機に導入するフィードガスラインと、
圧縮されたフィードガスを主熱交換器に導入する圧縮フィードガスラインと、
前記第一圧縮機により圧縮されたフィードガスを前記第一温度まで冷却する主熱交換器と、
前記主熱交換器の冷端から導出されるフィードガスを減圧・冷却する第一減圧弁と、
前記第一減圧弁から導出されるフィードガスを気液分離する気液分離器と、
前記気液分離器の液相から液体状態の液化フィードガスを導出する液化フィードガス導出ラインと、
前記気液分離器の気相から気体状態のフィードガスを導出し、前記第一圧縮機の前段に合流させるリサイクルフィードガスラインと、
第一圧力で送られる液化天然ガスを、当該第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する昇圧ポンプと、
前記第一圧力の液化天然ガスを、前記主熱交換器の冷端に導入する第一液化天然ガスラインと、
前記第一液化天然ガスインを経由して前記主熱交換器に導入される液化天然ガスを、前記主熱交換器の中間部から液化天然ガスの臨界温度よりも低い温度において導出して、前記昇圧ポンプに導入する第二液化天然ガスラインと、
前記昇圧ポンプから導出される液化天然ガスの少なくとも一部を前記主熱交換器の中間部に導入する第三液化天然ガスラインと、
前記第三液化天然ガスラインを経由して前記主熱交換器に導入される液化天然ガスを、前記主熱交換器の温端から導出する第一天然ガスラインと、を備え、
前記フィードガスは窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス、またはこれらのうちいずれか2以上のガスを含む混合ガスである、
ガス液化装置。
【請求項6】
前記リサイクルフィードガスラインは、前記主熱交換器を経由することを特徴とする、請求項に記載のガス液化装置。
【請求項7】
前記第一圧縮機により圧縮されたフィードガスをさらに圧縮する第二圧縮機と、前記主熱交喚器を経由して前記第二圧縮機に圧縮されたフィードガスを導入するフィードガス中間冷却ラインと、前記第二圧縮機にて圧縮されたフィードガスを前記主熱交喚器に導入する昇圧フィードガスラインをさらに有する、請求項5または6に記載のガス液化装置。
【請求項8】
前記第二圧力の液化天然ガスのうち、前記主熱交換器に導入されない部分の液化天然ガスを気化させる蒸発器と、
前記蒸発器から気体状態の天然ガスを導出する第二天然ガスラインと、をさらに備える、請求項ないし請求項のいずれか1項に記載のガス液化装置。
【請求項9】
前記液化フィードガス導出ラインから導出される液化フィードガスを冷却するためのサブクーラと、
前記サブクーラから過冷却状態の液化フィードガスを導出する過冷却液化フィードガスラインと、
前記過冷却液化フィードガスラインから導出される過冷却液化フィードガスの一部を減圧冷却する第二減圧弁と、
前記第二減圧弁から導出された低圧リサイクルフィードガスを前記サブクーラの冷端に導入する第一低圧リサイクルフィードガスラインと、
前記サブクーラの温端から導出される低圧リサイクルフィードガスを前記主熱交換器の冷端に導入する第二低圧リサイクルフィードガスラインと、前記低圧リサイクルフィードガスを圧縮して前記第一圧縮機の前段に合流させる第三圧縮機と、前記主熱交器を経由して第三圧縮機に低圧リサイクルフィードガスを導入する第三低圧リサイクルフィードガスラインと、をさらに備える、請求項ないし請求項のいずれか1項に記載のガス液化装置。
【請求項10】
前記第三圧縮機に、フィードガスよりも圧力の低い低圧フィードガスを導入する低圧フィードガスラインをさらに備える、請求項に記載のガス液化装置。
【請求項11】
前記フィードガスおよび前記低圧フィードガスの少なくともいずれか一つは、窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス、またはこれらのうちいずれか2以上のガスを含む混合ガスである、請求項10に記載のガス液化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス液化装置およびガス液化方法に関し、特に液化天然ガス寒冷を利用する窒素ガス液化装置において、高効率で液化窒素を得るガス液化装置およびガス液化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(NG)は、輸送や貯蔵の利便性などのため、液化天然ガス(LNG)として貯蔵され、これを気化した後に、主として火力発電用や都市ガス用として用いられる。そこで、気化時に得られる、LNGの寒冷を有効利用する技術が開発されている。
【0003】
LNGの寒冷を利用して窒素ガス等を液化する設備としては、一般に、窒素ガスを圧縮機で圧縮し、次いで熱交換器でLNGと熱交換させてLNGを昇温気化させるとともに、窒素ガスを液化するプロセスが用いられている。
たとえば特許文献1では、LNGを蒸発させる際に放出される寒冷を利用し、圧縮機で圧縮された高圧窒素ガスを熱交換器において冷却し、次いで減圧弁で減圧させることにより液体窒素を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2005-164150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような窒素ガスの液化方法においては、窒素ガスを液化する液化能力は、熱交換器に供給されるLNGの温度に依存する。すなわち、熱交換器に供給されるLNG温度が低いほど、熱交換器の後段に配置される減圧弁における液化量は多くなる。逆にLNG温度が高くなると液化量は減少する。
液化量が減少することは、減圧弁において窒素ガスを減圧する際に発生する窒素ガス量が増加することを意味する。減圧の際に発生した窒素ガスは低圧であるため、再度圧縮してリサイクルするか、放出する必要があることから、LNG温度が高い場合には、窒素ガスの液化が非効率となる。
【0006】
他方、近年は天然ガスタービンの効率化に伴って、使用される天然ガスの圧力が高まる傾向にある。このため、より高い圧力でLNGを蒸発させる必要が増している。
高い天然ガス圧力を得るためには、タンクに貯留されたLNGをポンプで昇圧させた後に蒸発させることが一般的である。しかしLNGをポンプで昇圧すると、ポンプからの入熱によりLNG温度が上昇する。したがって、高い圧力にLNGを昇圧させることは、LNG温度を高めることとなる。その結果LNGの寒冷を利用する窒素ガスの液化効率が低下するという問題があった。
【0007】
上記実情に鑑みて、本発明では、液化天然ガスの寒冷を利用してフィードガスを高効率で液化する装置において、高い圧力の天然ガスを供給可能なガス液化装置および該装置を用いたガス液化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明1)
本発明に係るガス液化方法は、
第一圧力で送られる液化天然ガスを、主熱交換器に導入させた後に、前記第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する昇圧工程と、
前記昇圧工程において昇圧された液化天然ガスの少なくとも一部を、前記主熱交換器を経由させて、天然ガスとして前記主熱交換器から導出させる第一天然ガス導出工程と、
フィードガスを圧縮するフィードガス圧縮工程と、
前記フィードガス圧縮工程において圧縮されたフィードガスを第一温度まで冷却するフィードガス冷却工程と、
前記フィードガス冷却工程において冷却されたフィードガスを減圧、冷却した後に気液分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で得られる液化フィードガスを液体状態で導出する液化フィードガス導出工程と、を含み、
前記フィードガス冷却工程は、前記主熱交換器において、前記第一圧力の液化天然ガスおよび前記第二圧力の液化天然ガスと、前記フィードガスとの熱交換により、前記フィードガスを冷却する工程である。
【0009】
上記方法によれば、まず、第一圧力の液化天然ガスが主熱交換器の冷端に導入され、フィードガスと熱交換が行われる。この熱交換により所定の温度にまで昇温された液化天然ガスは、主熱交換器の中間部から導出され、昇圧工程において第二圧力まで昇圧され、さらに昇温される。昇温された液化天然ガスは再度主熱交換器に返送され、フィードガスとの熱交換により寒冷を放出し、気化する。
すなわち、従来よりも、主熱交換器に導入される液化天然ガスの圧力を低くしておき、次いで、主熱交換器の途中から液化天然ガスを導出して、第二圧力まで昇圧してから再度主熱交換器へ返送することで、ポンプからの入熱による液化天然ガスの温度上昇を抑えることができる。
【0010】
上記第一圧力の液化天然ガスは、液化天然ガスを貯留するタンク内のインタンクポンプによって、第一圧力まで昇圧されてもよく、タンクと接続される配管に設けられるインラインポンプでもよく、一つでもよく、複数でもよいが、ポンプによる入熱が従来よりも低く抑えられるように構成されることが好ましい。
上記のガス液化方法は、
液化天然ガスを第一圧力まで昇圧する第一昇圧工程と、
前記第一昇圧工程において昇圧された液化天然ガスを、主熱交換器に導入させた後に、前記第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する第二昇圧工程と、含んでいてもよい。
このように液化天然ガスを昇圧させる工程を2段階とする構成とすることにより、高い圧力(たとえば、80barA以上)の天然ガスを供給する必要がある場合においても、主熱交換器の冷端に導入される液化天然ガスの圧力を低く抑えることができる。第一昇圧工程で昇圧される圧力(第一圧力)を低くすることで、昇圧の圧力が高い場合と比較して、第一昇圧工程における液化天然ガスの温度上昇が低減される。このため、主熱交換器では温度が低い液化天然ガスとフィードガスとの熱交換を実施することが可能となり、フィードガスの液化効率が上昇する。
【0011】
主熱交換器で低温の液化天然ガスとフィードガスとの熱交換を行い、ある程度の液化天然ガスの寒冷を放出させた後に、昇圧工程または第二昇圧工程において第二圧力まで昇圧すれば、その液化天然ガスを気化させて高い圧力の気体状態の天然ガスを得ることができる。
【0012】
さらに、昇圧工程または第二昇圧工程において温度が上昇した液化天然ガスについても、主熱交換器に返送してその寒冷をさらに放出させることにより、液化天然ガスの寒冷をフィードガスの冷却に利用することができる。このように、比較的低い圧力(第一圧力)における液化天然ガスの寒冷と、比較的高い圧力(第二圧力)における液化天然ガスの寒冷を、それぞれフィードガスの冷却に利用することから、熱効率の高いフィードガスの液化方法であるといえる。
【0013】
(発明2)
本発明に係るガス液化方法は、気液分離工程において気液分離して得られる気体状態のフィードガスを、前記フィードガス圧縮工程に供されるフィードガスに合流させるフィードガスリサイクル工程をさらに含むこともできる。
【0014】
主熱交換器において冷却され、減圧冷却されたフィードガスは気液混合状態となり、液化された液化フィードガスは製品として導出される。
一方、液化されず、冷却された気体状態のフィードガスは、再度圧縮工程と、それに続くフィードガス冷却工程に供されるためのリサイクルフィードガスとして、フィードガスに合流される。
このように液化しなかった部分のフィードガスをリサイクルすることにより、フィードガスの損失を避けることが可能となる。
【0015】
気体状態のフィードガスは、気液分離器から導出されたのちに主熱交換器に導入され、その寒冷を放出した後にフィードガス圧縮工程に供されてもよい。気液分離器から導出される気体状態のフィードガスは冷却されている状態であるため、その寒冷をフィードガス冷却工程でのフィードガスの冷却に利用することにより、フィードガスの液化効率をより高めることが可能となる。
【0016】
(発明3)
上記の本発明に係るガス液化方法は、フィードガスを、第一温度よりも高い第二温度まで冷却する予冷工程をさらに含み、
前記予冷工程で冷却されたフィードガスは圧縮されたのちにフィードガス冷却工程に供されることもできる。
【0017】
液化天然ガスの寒冷をフィードガス圧縮工程で圧縮される前のフィードガスの予冷に利用することが可能であるため、フィードガスは前記主熱交器を経由する予冷工程で第二温度まで冷却された後に、フィードガス圧縮工程に供されてもよい。フィードガスをより低温で圧縮することによって、圧縮にかかる動力を削減することができるためである。
【0018】
(発明4)
上記の本発明に係るガス液化方法は、フィードガス圧縮工程において圧縮されたフィードガスを第一温度より高い第三温度まで冷却する中間冷却工程をさらに含み、前記中間冷却工程で冷却されたフィードガスはさらに圧縮された後に前記フィードガス冷却工程に供されることもできる。
【0019】
フィードガス圧縮工程を複数の圧縮段に分割し、その中間のフィードガスを、液化天然ガスの寒冷を利用して前記主熱交器で冷却してもよい。ガス圧縮工程おいてガス温度は断熱圧縮により上昇し、熱効率は圧縮比が大きくなるほど低下する。このため圧縮工程において中間冷却を適用することにより熱効率を改善することができる。
【0020】
(発明5)
本発明に係るガス液化方法は、
昇圧工程または第二昇圧工程において昇圧された第二圧力の液化天然ガスのうち、主熱交換器に導入されない部分を蒸発器において気化させて、天然ガスとして蒸発器から導出させる第二天然ガス導出工程をさらに含むこともできる。
【0021】
昇圧工程または第二昇圧工程で昇圧された第二圧力の液化天然ガスは、その全量を主熱交換器に導入して、昇温、気化させることもできるが、その一部を主熱交換器には導入せずに、主熱交換器から独立して配置される蒸発器に導入されてもよい。蒸発器に導入された液化天然ガスは、蒸発器において気化されて、気体状態の天然ガスとして天然ガスの消費地へと供給される。
【0022】
昇圧工程または第二昇圧工程で昇圧された液化天然ガスの全量を主熱交換器に導入すると、主熱交換器においてフィードガスとの熱交換により液化天然ガスが得る熱量が、その全量の蒸発には不十分となる場合がある。すると、蒸発器から導出される天然ガスの全量が気体状態とならず、気液混合状態となったり、気体状態であっても温度が低すぎることによる不具合が生じることがある。
そこで、主熱交換器で蒸発させることができない分の液化天然ガスを蒸発器に導入し、蒸発器において気化させる。これにより、昇圧工程または第二昇圧工程で昇圧される液化天然ガスの全量を蒸発させることが可能となる。
【0023】
蒸発器において、液化天然ガスが気化する際に寒冷が放出されるが、この寒冷を例えばフィードガス圧縮工程で使用される圧縮機の冷却に利用することで、より熱効率を向上させることが可能となる。
【0024】
(発明6)
上記の本発明に係るガス液化方法は、液化フィードガス導出工程において導出された液体状態の液化フィードガスをさらに冷却するためのサブクール工程をさらに含むこともできる。
【0025】
液化フィードガス導出工程において導出された液体状態の液化フィードガスは、そのまま液化フィードガスの貯槽に貯蔵されることもできるが、サブクール工程を経てさらに冷却されたのちに貯蔵されることもできる。
液化フィードガス導出工程において液体状態として導出される液化フィードガスの温度は、比較的フィードガスの液化点に近い温度であることが多い。しかしその温度において貯蔵すると、貯蔵中に多量のボイルオフガスが発生し、液体状態での貯蔵効率が低下することがある。そこで本発明にかかるサブクール工程を経由させて液体状態の液化フィードガスをさらに冷却すれば、ボイルオフガスを低減させ、液化フィードガスが気化することによるフィードガスの損失を抑制させることが可能となる。
【0026】
(発明7)
上記の本発明において、フィードガスは圧縮し、液化天然ガスによって冷却されることで液化するガスであればよく、例えば窒素ガス、アルゴンガス、または酸素ガスであってもよい。
【0027】
(発明8)
本発明に係るガス液化装置は、
フィードガスを圧縮する第一圧縮機と、フィードガスを第一圧縮機に導入するフィードガスラインと、圧縮されたフィードガスを主熱交換に導入する圧縮フィードガスラインと、
前記第一圧縮機により圧縮されたフィードガスを冷却する主熱交換器と、
前記主熱交換器の冷端から導出されるフィードガスを減圧・冷却する第一減圧弁と、
前記第一減圧弁から導出されるフィードガスを気液分離する気液分離器と、
前記気液分離器の液相から液体状態の液化フィードガスを導出する液化フィードガス導出ラインと、
第一圧力で送られる液化天然ガスを、当該第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する昇圧ポンプと、
前記第一圧力の液化天然ガスを、前記主熱交換器の冷端に導入する第一液化天然ガスラインと、
前記第一液化天然ガスラインを経由して前記主熱交換器に導入される液化天然ガスを、前記主熱交換器の中間部から液化天然ガスの臨界温度よりも低い温度において導出して、前記昇圧ポンプに導入する第二液化天然ガスラインと、
前記昇圧ポンプから導出される液化天然ガスの少なくとも一部を前記主熱交換器の中間部に導入する第三液化天然ガスラインと、
前記第三液化天然ガスラインを経由して前記主熱交換器に導入される液化天然ガスを、前記主熱交換器の温端から導出する第一天然ガスラインと、を備える。
【0028】
フィードガスは、第一圧縮機において圧縮されたのちに、主熱交換器において冷却され、さらに第一減圧弁において減圧・冷却されることにより、少なくともその一部が液化される。
【0029】
上記ガス液化装置は、液化天然ガスを第一圧力まで昇圧させる第一ポンプと、第一圧力で送られる液化天然ガスを、当該第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する第二昇圧ポンプと、を有していてもよい。
上記第一ポンプは、液化天然ガスを貯留するタンク内のインタンクポンプ、タンクと接続される配管に設けられるインラインポンプでもよく、一つでもよく、複数でもよいが、ポンプによる入熱が従来よりも低く抑えられるように構成されることが好ましい。 主熱交換器では、フィードガスと、液化天然ガスとの熱交換が行われ、液化天然ガスの寒冷によりフィードガスが冷却される。液化天然ガスは所定の圧力(第一圧力とする)まで第一ポンプにより昇圧され、主熱交換器の冷端に導入され、フィードガスとの熱交換により寒冷を放出する。その後、液化天然ガスは主熱交換器の中間部から導出されて、第二ポンプへ導入され、該第二ポンプにより、第二圧力にまで昇圧される。第二圧力は、第一圧力よりも高く、第一圧力から第二圧力に昇圧されることにより、液化天然ガスの温度は上昇する。温度が上昇した液化天然ガスは再度主熱交換器へ導入され、さらにフィードガスとの熱交換により寒冷を放出して、気化され、主熱交換器の温端から導出される。
【0030】
第一ポンプにおいて第一圧力に昇圧させることから、第一ポンプから主熱交換器に導入される際の液化天然ガスの温度(すなわち、主熱交換器の温端における液化天然ガスの温度)は、第二圧力にまで昇圧させる場合と比較して低い。したがって、第一圧力以上に液化天然ガスの圧力を上昇させないことにより、主熱交換器において十分な寒冷を得ることを可能としている。
第一圧力を有する液化天然ガスとの熱交換を実施した後に、第二圧力にまで第二ポンプにより液化天然ガスを昇圧させる。第二圧力にまで上昇させることにより、液化天然ガスを気化させた後の、気体状態の天然ガスを高圧で供給することが可能となる。第二圧力に到達した液化天然ガスの寒冷は、フィードガスを液化させるために十分ではないが、液化前の気体状態のフィードガスを冷却させるためには十分である。このため、第二圧力に到達した液化天然ガスは再度主熱交換器に導入されて、その寒冷をフィードガスの冷却に利用する。
【0031】
以上のように主熱交換器において冷却されたフィードガスは、主熱交換器の冷端から第一減圧弁に導入され、減圧、冷却される。ここで気液混合状態となったフィードガスは気液分離器により気相と液相に分離され、液相部分から液体状態の液化フィードガスが導出される。
【0032】
(発明9)
上記発明に係るガス液化装置は、気液分離器の気相から気体状態のフィードガスを導出し、前記第一圧縮機の前段に合流させるリサイクルフィードガスラインをさらに有することもできる。
【0033】
気液分離器の気相に分離された気体状態のフィードガスは、そのまま外部へ放出されることもできるが、第一圧縮機に導入される前段のフィードガスに合流させるリサイクルフィードガスとしてもよい。このように液化されない部分のフィードガスを再度液化させる工程へリサイクルすることで、フィードガスの損失を避けるためである。
【0034】
(発明10)
リサイクルフィードガスラインは、前記主熱交換器を経由することとしてもよい。
【0035】
リサイクルフィードガスは、主熱交換器および第一減圧弁を経由して冷却されているため、主熱交換器を再度経由させて、その寒冷をフィードガスの冷却に利用することができる。このような構成とすることにより、液化されない部分のフィードガスの寒冷も有効に利用し、ガス液化装置全体の熱効率を向上させることが可能となる。
【0036】
(発明11)
上記発明に係るガス液化装置において、フィードガスラインは、前記主熱交器を経由することとしてもよい。
【0037】
フィードガスを第一圧縮機で圧縮する前に冷却することによって、フィードガス圧縮に係る動力を削減することができる。
【0038】
(発明12)
上記発明に係るガス液化装置において、圧縮されたフィードガスをさらに圧縮する第二圧縮機と、前記主熱交器を経由して前記第二圧縮機に圧縮されたフィードガスを導入するフィードガス中間冷却ラインと、前記第二圧縮機にて圧縮されたフィードガスを前記主熱交換器に導入する昇圧フィードガスラインを備えることもできる
【0039】
第一圧縮機により圧縮されたフィードガスは、主熱交換器に導入される。その後、主熱交換器内で第三温度まで冷却されて主熱交換器の中間部から導出される。ここで第二圧縮機によりさらに圧縮されて、再度主熱交換器に導入される。これらによりフィードガスの圧縮に係る動力を削減することができる。
【0040】
(発明13)
上記発明に係るガス液化装置において、第二圧力の液化天然ガスのうち、前記主熱交換器に導入されない部分の液化天然ガスを気化させる蒸発器と、
前記蒸発器から気体状態の天然ガスを導出する第二天然ガスラインと、をさらに備えてもよい。
【0041】
第二ポンプにおいて昇圧された液化天然ガスの全量を主熱交換器に導入することもできるが、フィードガスの冷却に必要な寒冷の量を上回る寒冷が主熱交換器に導入されると、液化天然ガスの気化が不十分となる。このような場合に、主熱交換器で気化されない分の液化天然ガスは、主熱交換器に導入せずに、主熱交換器とは独立して設けられた蒸発器に導入することができる。このような構成とすることにより、第二ポンプで昇圧された液化天然ガスの全量を気化し、気体状態の天然ガスを導出することが可能となる。
【0042】
(発明14)
上記発明に係るガス液化装置において、液化フィードガス導出ラインから導出される液化フィードガスを冷却するためのサブクーラと、
前記サブクーラから導出される液化フィードガスの一部を減圧冷却する第二減圧弁と、
前記第二減圧弁から導出されたフィードガスを、低圧リサイクルフィードガスとして前記サブクーラの冷端に導入する第一低圧リサイクルガスラインと、
前記サブクーラの温端から導出される低圧リサイクルフィードガスを前記主熱交換器の冷端に導入する第二低圧リサイクルガスラインと、
前記低圧リサイクルフィードガスを圧縮して前記第一圧縮機の前段に合流させる第三圧縮機と、
前記第二低圧フィードガスラインを経由して前記主熱交換器の温端から導出される低圧リサイクルフィードガスを、第三圧縮機で圧縮して、前記第一圧縮機の前段に合流させる第三低圧リサイクルガスラインと、をさらに備えることもできる。
【0043】
サブクーラにより、気液分離器で液相側に分離された液体状態の液化フィードガスをさらに冷却することが可能となる。液化フィードガスの温度を低下させることは、貯蔵の際のフィードガスの気化(すなわちボイルオフガスの発生)を低減させることとなり、液化フィードガスの貯蔵における損失を低減させることが可能となる。
【0044】
(発明15)
前記第三圧縮機に、フィードガスよりも圧力の低い低圧フィードガスを導入する低圧フィードガスラインをさらに備えることもできる。
【0045】
外部から供給されるフィードガスの供給圧力が低い場合に、第三圧縮機で圧縮することができる。
【0046】
(発明16)
上記発明において、フィードガスは圧縮し、液化天然ガスによって冷却されることによって液化するガスであればよく、例えば窒素ガス、アルゴンガス、または酸素ガスであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】実施形態1のガス液化装置の構成例を示す図である。
図2】実施形態1の別実施形態1ガス液化装置の構成例を示す図である。
図3】実施形態1の別実施形態2ガス液化装置の構成例を示す図である。
図4】実施形態2のガス液化装置の構成例を示す図である。
図5】実施形態3のガス液化装置の構成例を示す図である。
図6】実施形態4のガス液化装置の構成例を示す図である。
図7】実施形態5のガス液化装置の構成例を示す図である。
図8】実施形態6のガス液化装置の構成例を示す図である。
図9】実施形態7のガス液化装置の構成例を示す図である。
図10】実施形態8のガス液化装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0049】
(実施形態1)
実施形態1のガス液化装置100およびそれを用いたガス液化方法について、図1を参照し説明する。
【0050】
本発明に係るガス液化装置100は、フィードガスを圧縮する第一圧縮機1と、フィードガスを第一圧縮機1に導入するフィードガスライン29と、前記第一圧縮機1により圧縮されたフィードガスを冷却する主熱交換器2と、前記第一圧縮機1により圧縮されたフィードガスを前記主熱交喚器2に導入する圧縮フィードガスライン30と、前記主熱交換器2の冷端から導出されるフィードガスを減圧・冷却する第一減圧弁3と、前記第一減圧弁3から導出されるフィードガスを気液分離する気液分離器4と、前記気液分離器4の液相から液体状態の液化フィードガスを導出する液化フィードガス導出ライン21と、液化天然ガスを第一圧力まで昇圧させる第一ポンプ11と、液化天然ガスを第一圧力よりも高い第二圧力まで昇圧する第二ポンプ12と、前記第一ポンプ11から導出される液化天然ガスを、前記主熱交換器2の冷端に導入する第一液化天然ガスライン22と、前記第一液化天然ガスライン22を経由して前記主熱交換器2に導入される液化天然ガスを、前記主熱交換器2の中間部から液化天然ガスの臨界温度よりも低い温度において導出して、前記第二ポンプ12に導入する第二液化天然ガスライン23と、前記第二ポンプ12から導出される液化天然ガスの少なくとも一部を前記主熱交換器2の中間部に導入する第三液化天然ガスライン24と、前記第三液化天然ガスライン24を経由して前記主熱交換器2に導入される液化天然ガスを、前記主熱交換器2の温端から導出する第一天然ガスライン25と、を備える。
本実施形態では、例えば、液化の対象となるフィードガスとして窒素ガスがガス液化装置100の第一圧縮機11に導入される。このガスは常温(25℃)より低温でもよいが、例えば0℃以上65℃以下であってもよい。
【0051】
フィードガス圧縮工程において、フィードガス(たとえば流量1653Nm3/hである)は第一圧縮機1により所定の圧力にまで圧縮される。
第一圧縮機1は、主熱交換器2に供給され、冷却されるフィードガスを、主熱交換器2の前段で圧縮するための圧縮機である。フィードガスは、主熱交換器2において冷却されたのちに液化されるガスであり、例えば窒素ガス、アルゴンガス、または酸素ガスであってもよいし、それらの混合ガスであってもよい。
第一圧縮機1に導入されるフィードガスが窒素ガスである場合、第一圧縮機11導入時の窒素ガスの圧力は例えば1barA以上12barA以下である。主熱交換器2に導入されるフィードガスの圧力は例えば40barA以上60barA以下である。
【0052】
フィードガス冷却工程では、フィードガス圧縮工程において圧縮されたフィードガスが、主熱交換器2において第一温度まで冷却される。
第一温度は、第一減圧弁3の後段において、フィードガスの少なくとも一部が液化する温度である必要があり、例えば-160℃以上-130℃以下の温度である。
フィードガスは、主熱交換器2の内部で、後述する液化天然ガスとの熱交換により冷却される。
なお、フィードガス圧縮工程に供されるフィードガスは、あらかじめ冷却されていてもよい。
【0053】
気液分離工程では、フィードガス冷却工程で冷却されたフィードガスを、第一減圧弁3により減圧、冷却した後に、気液分離器4により気相と液相とに気液分離する。減圧弁3を経由することにより、フィードガスの温度は熱交換器2の冷端から導出される時点よりも低下する。その結果、フィードガスは-196℃以上-160℃以下の温度で気液分離器4に導入される。
【0054】
液化フィードガス導出工程は、気液分離工程で気液分離器4の液相に分離される液化フィードガスを液体状態で、液化フィードガス導出ライン21から導出する工程である。導出されたフィードガスは、液体状態で貯留される。
【0055】
第一昇圧工程は、第一ポンプ11により、貯槽に貯留された液化天然ガス(たとえば、流量3695Nm/h)を第一圧力まで昇圧する工程である。貯槽内における液化天然ガスの圧力は大気圧以上であり、例えば1.013barA以上2barA以下の範囲である。第一圧力は、例えば7barA以上30barA以下の範囲である。
【0056】
第一圧力にまで昇圧された液化天然ガスは、主熱交換器2に導入された後に、第二ポンプ12において、第一圧力よりも高い第二圧力にまで昇圧される。
第一圧力は、第二ポンプ12がキャビテーションを起こさないように、液化天然ガスの第二ポンプ12に導入されるときの圧力における飽和温度が、第二ポンプに導入される際の温度よりも高くなるように設定される。
【0057】
たとえば、第二ポンプ12に導入される液化天然ガスの温度が-120℃のときには、第二ポンプ12に導入される液化天然ガスの圧力は、-120℃における飽和圧力である14barA以上でなくてはならず、この圧力以上に到達できるように第一ポンプ11の出口圧力は設定される。
第一ポンプ11から導出される液化天然ガスは、第一液化天然ガスライン22を経由して主熱交換器2の冷端に導入され、さらに主熱交換器2の中間部から第二液化天然ガスライン23を経由して、第二ポンプ12へと導入される。
主熱交換器2の中間部から第二液化天然ガスライン23へと導出される液化天然ガスの温度は、液化天然ガスの飽和温度よりも低い温度である。
【0058】
貯槽に貯留される液化天然ガスの温度は、第一ポンプ11で昇圧される際に入熱により上昇するが、その温度上昇が大きい場合に主熱交換2におけるフィードガスの冷却および液化が不十分となり、液化効率を損なう恐れがある。従って、第一ポンプ11による昇圧は、第二ポンプ12入口において飽和温度に達しない圧力の範囲内で可能な限り低く抑え、第一ポンプ11からの液化天然ガスの温度上昇を抑えることが、好ましい。主熱交喚器2に導入される液化天然ガス温度は、例えば-162℃以上―140℃以下である。
【0059】
第二昇圧工程は、第二ポンプ12により液化天然ガスを、第一圧力よりも高い第二圧力にまで昇圧させる工程である。第二圧力は、気化させた天然ガスを使用する際に必要な天然ガス圧力に応じて定められ、例えば気体状態の天然ガスを50baA以上120barA以下の圧力で供給する必要がある場合には、主熱交器2における圧力損失などを考慮して、第二圧力は51barA以上121barA以下とすることができる。
【0060】
第一天然ガス導出工程は、第二ポンプ12により昇圧された液化天然ガスの少なくとも一部を、第三液化天然ガスライン24を経由して主熱交換器2に導入し、気化させ、主熱交換器2の温端から第一天然ガスライン25により気体状態で導出させる工程である。導出された気体状態の天然ガスは、第二圧力よりも低い圧力(たとえば50baA以上120barA以下)を有し、消費地において消費される。
【0061】
フィードガス冷却工程では、主熱交換器2の温端から主熱交換器2に導入されたフィードガスは、主熱交換器2の内部において、第三液化天然ガスライン24を経由した液化天然ガスとの熱交換を行う。これにより冷却されたフィードガスは、さらに、第一液化天然ガスライン22を経由した液化天然ガスとの熱交換を行うことにより、さらに冷却され、熱交換器2の冷端から導出される。
このように、第一液化天然ガスライン22を経由した、十分に低い温度の液化天然ガスとの熱交換を行うことにより、フィードガスが効率的に液化される。さらに、その後に第二ポンプ12により昇圧することにより、気体状態の天然ガスが十分な圧力で消費地に供給されることが可能となる。
上述の実施形態1において、高圧(95barA)の天然ガスを流量3700Nm/hで導出させる場合、液化天然ガスは、第一ポンプ11により圧力20barAまで昇圧され、さらに第二ポンプ12により圧力95barAまで昇圧される。この場合のフィードガス(窒素ガス)の液化量は1000Nm/hとなる。
一方、昇圧の工程を本実施形態のように2段階にせず、液化天然ガスを1つの昇圧機構により1段階で昇圧させて、同等の圧力を有する天然ガスを導出させる場合には、1段階で液化天然ガスを95barAまで昇圧させる必要がある。この1段階の昇圧工程において、本実施形態では-155℃であった主熱交器2への液化天然ガス導入温度は、-147℃まで上昇する。したがって、液化天然ガスが主熱交換器2において放出する寒冷が減少し、フィードガスの冷却が不十分となる。その結果、フィードガスの液化量は810Nm/hとなり、実施形態1の場合よりも減少する。
このように、昇圧工程を2段階とする本実施形態に係る方法では、昇圧工程を1段階とする従来のフィードガス液化方法と比較して、高い効率で液化することができる。
【0062】
(別実施形態1)
気液分離工程において気液分離器4の気相側に分離される気体状態のフィードガス(たとえば流量371Nm/hである)は、図1に示すように系外へ放出されることもできるが、別の実施形態として図2に示すようにリサイクルフィードガスライン26を経由して、第一圧縮機1の前段に合流させて、フィードガスとともに再度フィードガス圧縮工程に供されることもできる。このようなフィードガスリサイクル工程を設けることにより、気液分離器4の気相部のフィードガスをリサイクルフィードガスとして再度フィードガス圧縮工程へ供して、気体状態のフィードガスの損失を抑制することが可能となる。
本実施形態1において、第一ポンプ11は、液化天然ガスを貯留するタンク内のインタンクポンプでもよく、タンクと接続される配管に設けられるインラインポンプでもよい。他の実施形態でも同様である。
【0063】
(別実施形態2)
さらに別の実施形態として、図3に示すように、気液分離器4の気相側から導出されるリサイクルフィードガス(たとえば流量371Nm/hである)を、主熱交換器2を経由させた後に、第一圧縮機1の前段に合流させることもできる。気液分離器4の気相側から導出される気体状態のリサイクルフィードガスは冷却されており、例えば-180℃以上-160以下の低温であることから、その寒冷を主熱交換器2において放出させ、フィードガスの冷却に利用することで、液化効率をさらに高めることが可能となる。
主熱交換器2を経由したリサイクルフィードガスは、主熱交換器2の冷端から導出されてもよく、主熱交換器2の中間部から導出されてもよい。
【0064】
(実施形態2)
実施形態2のガス液化装置101およびそれを用いたガス液化方法について、図4を参照し説明する。上記実施形態のガス液化装置と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0065】
実施形態2のガス液化装置101では、第一圧縮機にフィードガスを導入する前に、予冷工程によりフィードガスの予冷を実施する。
フィードガス予冷工程において、フィードガスは主熱交器2の温端から主熱交喚器2の内部へと導入され、冷却される。主熱交喚器2の温端に導入される際のフィードガスの温度は、例えば0℃以上65℃以下であり、主熱交換器2の内部で例えば-110℃以上-50℃以下にまで予冷されたのちに、主熱交換器2の中間部から導出される。ここで、予冷されたフィードガスを導出させる、主熱交換器2の中間部は、第二ポンプ12によって主熱交喚器2に液化天然ガスが再導入される点より、主熱交喚器2の温端側にある。
主熱交喚器2の中間部から導出されたフィードガスは、第一圧縮機1へと導入され、圧縮される。
【0066】
(実施形態3)
実施形態3のガス液化装置102およびそれを用いたガス液化方法について、図5を参照し説明する。上記実施形態のガス液化装置と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0067】
実施形態3のガス液化装置102では、フィードガス圧縮工程を実施した後、中間冷却工程によりフィードガスの中間冷却を実施する。
フィードガス圧縮工程において第一圧縮機1により圧縮されたフィードガスは、続く中間冷却工程において、主熱交換器2の温端から主熱交換器2の内部へと導入され、冷却される。主熱交換器2の温端に導入される際の圧縮フィードガスの温度は、例えば0℃以上65℃以下であり、主熱交換器2の内部で例えば-110℃以上-50℃以下にまで中間冷却されたのちに、主熱交換器2の中間部から導出される。ここで、中間冷却されたフィードガスを導出させる、主熱交換器2の中間部は、第二ポンプ12によって主熱交喚器2に液化天然ガスが再導入される点より、主熱交喚器2の温端側にある。
【0068】
主熱交換器2の中間部から導出されたフィードガスは、第二圧縮機6へと導入され、圧縮される。これにより、例えば第一圧縮機1から10barA以上30barAの圧力で導出されたフィードガスの圧力は、第二圧縮機6から40barA以上60barA以下の圧力で導出される。
第二圧縮機6から導出されたフィードガスは、昇圧フィードガスライン32を経由して、主熱交換器2の温端から再度主熱交換器2の内部へと導入され、続くフィードガス冷却工程に供される。
【0069】
(実施形態4)
実施形態4のガス液化装置103およびそれを用いたガス液化方法について、図6を参照し説明する。実施形態1のガス液化装置と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0070】
実施形態4のガス液化装置103においては、第二昇圧工程において第二ポンプ12により昇圧された液化天然ガス(たとえば流量3695Nm/hである)のうち、主熱交換器2に導入されない部分(たとえば流量3277Nm/hである)を、蒸発器5に導入して気化させ、気体状態で蒸発器5から第二天然ガスライン27から導出させる第二天然ガス導出工程を有する。
【0071】
第二ポンプ12から第三液化天然ガスライン24を経由して、主熱交換器2へと導入される液化天然ガスと、蒸発器5へと導入される液化天然ガスとの流量比率は、フィードガスの熱量(すなわち、フィードガスの流量、圧力、および温度)に応じて定めることができ、例えば2:8~9:1の範囲としてもよい。フィードガスの熱量が大きい場合には、熱交換器2へ導入される液化天然ガスの流量を増加させることができ、フィードガスの熱量が小さい場合には蒸発器5に導入される液化天然ガスの流量を増加させることができる。このように調整することにより、主熱交換器から第一天然ガスライン25を経由して導出される天然ガスも、蒸発器5から第二天然ガスライン27を経由して導出される天然ガスも、全量が気化された状態で導出されることが可能となる。
【0072】
(実施形態5)
実施形態5のガス液化装置104およびそれを用いたガス液化方法について、図7を参照し説明する。上記実施形態のガス液化装置と同じ符号の要素は同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0073】
実施形態5のガス液化装置104では、液化フィードガス導出工程において液化フィードガス導出ライン21から導出される液化フィードガスは、サブクール工程においてさらに冷却される。
サブクール工程では、気液分離器4において、例えば、-180℃以上-160℃以下にまで冷却され、液相側に分離された液化フィードガス(たとえば流量1281Nm/hである)は、液化フィードガス導出ライン21を経由してサブクーラ8に導入される。ここで、液化フィードガスは、例えば-196℃以上-175℃以下の温度にまで冷却される。サブクーラ8の内部で冷却された液化フィードガス(たとえば流量1281Nm/hである)は、過冷却液化フィードガスライン41を経由して、サブクーラ8から導出される。導出された液化フィードガスの一部(たとえば流量1000Nm/hである)は、液体状態で消費地まで送液されてもよく、貯槽に貯留されてもよい。
【0074】
サブクーラ8から過冷却液化フィードガスライン41を経由して導出された液化フィードガスの一部(流量281Nm/h)は、ライン41から分岐した第一低圧リサイクルフィードガスライン42に設けられる第二減圧弁9を経由させることにより、減圧冷却される。ここで減圧、冷却された気液混合状態の低圧リサイクルフィードガスは、例えば-196℃以上-176℃以下の温度で、サブクーラ8の冷端側からサブクーラ8に導入される。ライン42からサブクーラ8に導入される低圧リサイクルフィードガスと、液化フィードガス導出ライン21を経由してサブクーラ8に導入される液化フィードガスとが熱交換を行うことにより、サブクーラ8の内部で寒冷を放出する。
【0075】
寒冷を放出した後の低圧リサイクルフィードガスは、例えば-174℃以上-155℃以下の温度でサブクーラ8の温端側から第二低圧リサイクルフィードガスライン33へと導出されたのち、主熱交換器2の冷端側から主熱交換器2へと導入される。主熱交換器2の内部でフィードガスとの熱交換を行うことによりさらに寒冷を放出し、例えば0℃以上65℃以下の温度で主熱交換器2の温端側から第三低圧リサイクルフィードガスライン34へと導出される。導出された低圧リサイクルフィードガスは、第三圧縮機7により圧縮されたのちに、第一圧縮機1の前段へと送られる。第一圧縮機1の前段では、原料であるフィードガスと、第三低圧リサイクルフィードガスライン34を経由した低圧リサイクルフィードガスと、リサイクルフィードガスライン26を経由したリサイクルフィードガスとは、第一圧縮機1の前段で合流、混合されたのちに、フィードガス圧縮工程に供される。
第三圧縮機7は、低温液化ガスを圧縮することができる低温圧縮機とすることができる。
【0076】
別実施形態として、フィードガスは図8に示すように、第三圧縮機7の前段に合流させることもできる。フィードガスの導入位置は、フィードガスの圧力に応じて選択することができる。
供給されるフィードガスの圧力が、気液分離器4の気相部の圧力よりも高い場合には、第一圧縮機1の前段にフィードガスを導入することが好ましい(図6参照)。逆に、供給されるフィードガスの圧力が、気液分離器4の気相部の圧力よりも低い場合には、第三圧縮機7の前段にフィードガスを導入することが好ましい(図7参照)。
なお、フィードガスの温度は、圧縮機で圧縮されることにより上昇するため、これを冷却するためのアフタークーラが圧縮機の後段に設けられてもよい。
【0077】
図9に示す実施形態6のガス液化装置105では、気液分離器4の気相部から導出され
るリサイクルフィードガスおよび/またはサブクーラ8から導出される低圧リサイクルフィードガスは、主熱交器2の中間部から導出される。リサイクルフィードガスは、主熱交器2で予冷されたフィードガスとともに第一圧縮機1により圧縮される。低圧リサイクルガスは、第三圧縮機7によって圧縮される。
第三圧縮機7から導出されるガスは、主熱交器2で冷却されてから第一圧縮機1に導入されてもよい。
フィードガスは、第三圧縮機7から導出される低圧リサイクルフィードガスと合流されたのちに、第一圧縮機1に導入されてもよい。
【0078】
別実施形態として、図10を示す。ここで、原料であるフィードガスは、主熱交換器2で予冷されてから第三圧縮機7に導入されてもよい第三圧縮機7の後段において、フィードガスとリサイクルフィードガスと混合されてから第一圧縮機1に導入されてもよい。
第一圧縮機1と第二圧縮機7のそれぞれの出口には、アフタークーラが設置されてもよい。
主熱交器2の中間部から導出されるリサイクルフィードガスまたは低圧リサイクルフィードガスの温度は、例えば-120℃以上-50℃以下である。この構成により低温のガス圧縮が可能になることで、圧縮機の動力の削減が可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1. 第一圧縮機
2. 主熱交換器
3. 第一減圧弁
4. 気液分離器
5. 蒸発器
6. 第二圧縮機
7. 第三圧縮機
8. サブクーラ
9. 第二減圧弁
11.第一ポンプ
12.第二ポンプ
21.液化フィードガス導出ライン
22.第一液化天然ガスライン
23.第二液化天然ガスライン
24.第三液化天然ガスライン
25.第一天然ガスライン
26.リサイクルフィードガスライン
27.第二天然ガスライン
28.フィードガス予冷ライン
29.フィードガスライン
30.圧縮フィードガスライン
31.フィードガス中間冷却ライン
32.昇圧フィードガスライン
33.第二低圧リサイクルフィードガスライン
34.第三低圧リサイクルフィードガスライン
41.過冷却液化フィードガスライン
42.第一低圧リサイクルフィードガスライン
100.ガス液化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10