(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/37 20060101AFI20231130BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20231130BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20231130BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20231130BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20231130BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C01B25/37 Z
C22B3/10
C22B3/22
C22B3/44 101A
C22B26/12
H01M10/54
(21)【出願番号】P 2022563336
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2021122292
(87)【国際公開番号】W WO2022105463
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】202011326398.X
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518458056
【氏名又は名称】湖南金源新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】劉訓兵
(72)【発明者】
【氏名】欧陽剣君
(72)【発明者】
【氏名】張超文
(72)【発明者】
【氏名】王子
(72)【発明者】
【氏名】周群成
(72)【発明者】
【氏名】陳賛
(72)【発明者】
【氏名】呉山木
(72)【発明者】
【氏名】董雄武
(72)【発明者】
【氏名】劉暢
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0161357(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110683528(CN,A)
【文献】特開2016-172654(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111646447(CN,A)
【文献】特表2020-522617(JP,A)
【文献】国際公開第2018/218358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/37
C22B 26/12
C22B 3/22
C22B 3/10
C22B 3/44
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法であって、
リチウムを選択的に抽出し、その後、リチウム抽出残滓を利用してリン酸鉄を製造し、
前記リチウムの選択的抽出においては、廃リン酸鉄リチウム正負極粉末に水又はリチウム
含有溶液を加えてスラリーとした後、塩酸でスラリーのpHを1.5~2.0に調整し、
その後、スラリーに固体塩素酸ナトリウムを加え、リチウムを溶液に選択的に溶解して、
リン酸鉄を残滓中に残し、濾過して、リチウム含有溶液とリン酸鉄を含むリチウム抽出残
滓を得て、
前記リチウム抽出残滓を利用したリン酸鉄の製造においては、
質量比1/3~5となる量でリチウム抽出残滓に水を加えて、スラリーとするステップS
1)と、
塩酸でスラリーのpHを0.5~1.0に調整し、撹拌しながら反応させ、鉄含有量≦1
.0%となるまでスラリースラグ中の鉄を溶解するステップS2)と、
ステップS2)で得たスラリーを加圧ろ過して、洗浄し、ろ過ケーキを分解滓として無害
化処理し、ろ液と洗浄液を次の工程に用いるステップS3)と、
ステップS3)で加圧ろ過した液体に、その鉄及びリンの含有量によって、リン酸三ナト
リウム又は塩化鉄を加え、pHを0.5~1.0に制御して、少なくとも0.5時間反応
させ、次に、水酸化ナトリウム溶液でpHを1.5~2.0に調整し、リン酸鉄を沈殿さ
せるステップS4)と、
S4)ステップの後に加圧ろ過、洗浄をして、ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーショ
ンに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄を得るステップS5)と、を用いることを特徴
とする方法。
【請求項2】
前記リチウムを選択的に抽出する工程では、質量比1/3~5となるように廃リン酸鉄リ
チウム正負極粉末に水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリーとすることを特徴とする
請求項1に記載の使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項3】
前記リチウムを選択的に抽出する工程では、スラリー中2価鉄質量に対して0.35~0
.4倍の量で固体塩素酸ナトリウムを加えることを特徴とする請求項1に記載の使用済み
リン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項4】
前記リチウムを選択的に抽出する工程では、前記リチウムを溶液に選択的に溶解するとき
に、固体塩素酸ナトリウムを加えて反応させたスラリー中の2価鉄イオンを全て3価鉄イ
オンに転化した後、滓液分離を行い、ろ液をリチウム含有溶液とし、リチウム含有溶液中
のリチウム含有量が15g/L未満である場合、スラリー調製工程に戻ってスラリーを調
製し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くし、リチウム含有溶液中のリチウム含有
量が15g/Lを超える場合、水酸化ナトリウム溶液を加えてpH値を8.5~9.5に
調整し、溶液中の銅とアルミから水酸化物沈殿を形成し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケー
キを銅・アルミ滓、ろ液をリチウム含有溶液とすることを特徴とする請求項1に記載の使
用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項5】
前記リチウムを選択的に抽出する工程の後に、リチウム含有溶液から炭酸リチウムを沈殿
させ、具体的には、リチウム含有溶液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウ
ム溶液を加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液を処理してからスラリー調
製工程に戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とすることを特徴とする請求項1に記載の
使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項6】
ステップS2)では、前記撹拌しながら反応させるときに、塩酸でpH値を維持しながら
、1~3時間、好ましくは2時間撹拌することを特徴とする請求項1に記載の使用済みリ
ン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項7】
S4)ステップでは、前記リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加えるときに、液体中の鉄及
びリンの含有量を検出し、鉄/リンモル比1/0.97~1.02となるように、リン酸
三ナトリウム又は塩化鉄を加えることを特徴とする請求項1に記載の使用済みリン酸鉄リ
チウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項8】
粗製リン酸鉄を製造した後、3段逆洗浄を行って不純物を除去し、具体的には、純水と塩
酸からなるpH1.5の洗浄液で粗製リン酸鉄のろ過ケーキを3回逆洗浄し、粗製リン酸
鉄中の他の金属塩を除去して、純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを得て、ベークして粉砕し、
電池用グレードのリン酸鉄製品を得ることを特徴とする請求項1に記載の使用済みリン酸
鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【請求項9】
前記3段逆洗浄を行って不純物を除去することは以下のステップを用いることを特徴とす
る請求項8に記載の使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
b1).洗浄液の調製:純水に高品質塩酸純品を加えて、pH1.5~2.0の塩酸洗浄
液を調製しておく。
b2).第1洗浄:質量比1/3~5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄
水を加えて、30~60分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を
廃水処理ステーションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供する。
b3).第2洗浄:質量比1/3~5となるように第1洗浄により得られた粗製リン酸鉄
のろ過ケーキに第3洗浄水を加えて、30~60分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で
洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い、ろ過ケーキを第3洗浄に供する。
b4).第3洗浄:質量比1/3~5となるように、第2洗浄により得られた粗製リン酸
鉄のろ過ケーキに、pH1.5~2.0の調製済み塩酸洗浄液を加えて、30~60分間
撹拌し、加圧ろ過してpH1.5~2.0の調製済み塩酸洗浄液で洗浄し、ろ液と洗浄液
を第2洗浄に用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したもの
をベークし、粉砕して電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【請求項10】
前記ベーク、粉砕においては、純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンによ
り90℃以下の温度で、含水率が0.1%以下となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μ
m以下に粉砕し、包装すると、電池用グレードのリン酸鉄製品を得ることを特徴とする請
求項9に記載の使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済みリチウムイオン電池の回収利用技術、特に使用済みリン酸鉄リチウム電
池の総合的な利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸鉄リチウム電池は性能に優れたパワー電池であり、新エネルギー電気自動車に最も
好適である。新エネルギー自動車産業の急速な発展に伴い、リン酸鉄リチウム電池の需求
量も急速に増えており、ただし、使用済みリン酸鉄リチウム電池の回収利用も重要な課題
となっている。使用済みリン酸鉄リチウム電池では、価値の高いリチウム元素の含有量が
極めて低い一方、価値の低い鉄やリン元素の含有量が極めて高く、しかも、従来の回収技
術はまだ成熟しておらず、回収コストが高いので、ほとんどの企業は価値の高い元素だけ
を回収し、使用済みリン酸鉄リチウム電池を総合的に回収利用する場合が少なく、総合的
に回収利用できる企業があっても、プロセスが複雑であり、生産コストが高いことから、
産業化が困難である。
【0003】
特許出願(開示番号CN111646447A、開示日2020.09.11)は、リン
酸鉄リチウム電池からリチウムを抽出した後の鉄・リン滓からリン酸鉄を回収する方法を
開示し、この方法は、リン酸鉄リチウム電池からリチウムを抽出した後の鉄・リン滓を水
と混合してスラリー化し、スラリーを得るステップS1)と、前記スラリーを酸液と混合
して反応させた後、固液分離し、分離液Aを得るステップS2)と、前記分離液Aを鉄粉
と混合して反応させた後、固液分離し、分離液Bを得るステップS3)と、イオン交換樹
脂を用いて前記分離液Bをイオン交換し、アルミを除去した後、FeSO4・7H2O又
はH3PO4を加えて、系中のリン鉄モル比を(1~2):1に調整し、原料液を得るス
テップS4)と、前記原料液を過酸化水素水、アンモニア水と混合して反応させ、リン酸
鉄を形成するステップS5)と、を含む。この方法には以下の欠点が存在する。鉄・リン
滓を強酸で溶解し、次に、余分な酸を中和で鉄粉し、リン酸で鉄リン比を調整し、最後に
、リン酸鉄を合成するので、pH値を制御するために多くのアルカリが消費され、生産コ
ストが高く、リン酸鉄の製造にはイオン交換法によりアルミを除去するので、廃水の処理
量が大きく、除去し得る不純物の種類が限られ、リン酸鉄の純度が不十分であるなどの問
題がある。
【0004】
特許出願(開示番号CN111653846A、開示日20200911)は使用済みリ
ン酸鉄リチウム電池の処理方法を開示し、この方法は、使用済みリン酸鉄リチウム電池に
ついて放電、解体、分離などの前処理を行い、次に、分離したリン酸鉄リチウム粉末を水
に入れて、撹拌し、超音波を用いて強化処理を行うステップと、所定時間反応後、固液分
離し、濾過後のチウムイオン溶液とリン酸鉄沈殿を得るステップと、リチウムイオン溶液
に炭酸塩を加え、炭酸リチウムを得て、炭酸リチウムとリン酸鉄を混合して焙焼し、再生
リン酸鉄リチウム材料を得るステップと、を含む。この方法には以下の欠点が存在する。
超音波強化処理は物理処理手段であり、リチウムイオン溶液とリン酸鉄沈殿を分離するの
に十分ではなく、且つ、分離後のリン酸鉄沈殿から不不純物を除去すると、電池用グレー
ドのリン酸鉄リチウムの再生ができなくなる。
【0005】
特許出願(開示番号CN111675203A、開示日20200918)は、使用済み
リン酸鉄リチウム電池からリチウムを回収する方法、及びリチウムとリン酸鉄を回収する
方法を開示し、この方法は、正負極粉末と水を混合してスラリー化し、スラリー1を得る
ステップa)と、前記スラリー1を濃硫酸、過酸化水素水と混合して反応させた後、固液
分離し、一次浸出液と一次炭素含有鉄・リン滓を得るステップb)と、正負極粉末と一次
浸出液を混合してスラリー化し、スラリー2を得るステップc)と、前記スラリー2を濃
硫酸、過酸化水素水と混合して反応させた後、固液分離し、二次浸出液と二次炭素含有鉄
・リン滓を得るステップd)と、アルカリ性物質を利用して前記二次浸出液をpH11~
12.5に調整して反応させた後、固液分離し、不純物除去液を得るステップe)と、前
記不純物除去液を炭酸ナトリウムと反応させ、炭酸リチウムを形成するステップf)と、
を含み、前記正負極粉末は以下のように得られる。使用済みリン酸鉄リチウム電池を解体
して得た正負極板を焙焼して粉砕し篩分け、銅・アルミ混合粉末と正負極粉末を得る。使
用済みリン酸鉄リチウム電池からリチウム及びリン酸鉄を回収する方法であって、請求項
1~6のいずれか1項に記載の方法によって正負極粉末を回収して処理し、炭酸リチウム
、一次炭素含有鉄・リン滓及び二次炭素含有鉄・リン滓を得るステップK1)と、前記一
次炭素含有鉄・リン滓及び二次炭素含有鉄・リン滓を水と混合してスラリー化し、スラリ
ーを得るステップK2)と、前記スラリーを酸液と混合して反応させた後、固液分離し、
第1分離液を得るステップK3)と、前記第1分離液を鉄粉と混合して反応させた後、固
液分離、第2分離液を得るステップK4)と、イオン交換樹脂を用いて前記第2分離液を
イオン交換し、アルミを除去した後、FeSO4・7H2O又はH3PO4を加えて系中
のリン鉄モル比を(1~2):1に調整し、原料液を得るステップK5)と、前記原料液
を過酸化水素水、アンモニア水と混合して反応させ、リン酸鉄を形成するステップK6)
と、を含むことを特徴とする。この方法には以下の欠点が存在する。強酸分解によりリチ
ウムとリン酸鉄を一緒に溶解するので、後続の処理コストが高く、鉄イオン、リン酸根イ
オンが大きく浪費され、リン酸鉄の製造においては、アルミがイオン交換法により除去さ
れるので、廃水の処理量が大きく、除去し得る不純物の種類が限られ、電池用グレードの
リン酸鉄が再生できないなどの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術では、リチウムとリン酸鉄を総合的に回収するプロセスは、流れが複雑で
あり、リチウムの選択的な抽出ができず、リチウム溶液の濃度が低く、リチウム沈殿物が
多く消費され、リン酸根イオンの損失が多く、回収率が低く、生産コストが高く、製品の
純度が低く、後の加工において不純物を除去するのがより困難になり、また、廃水量が大
きく、環境保全の負荷が大きく、産業化が実現されにくい。
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠陥を解決するために、プロセスの流れが簡単であり、材料
使用量が少なく、回収率が高く、廃水量が少なく、生産コストが低く、産業化が可能であ
る使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的解決手段は以下の通りである。使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な
回収利用方法であって、リチウムを選択的に抽出し、その後、リチウム抽出残滓を利用し
てリン酸鉄を製造することを特徴とする。
【0009】
前記リチウムの選択的抽出においては、廃リン酸鉄リチウム正負極粉末に水又はリチウム
含有溶液を加えてスラリーとした後、塩酸でスラリーのpHを1.5~2.0に調整し、
その後、スラリーに固体塩素酸ナトリウムを加え、リチウムを溶液に選択的に溶解して、
リン酸鉄を残滓中に残し、固液分離して、リチウム含有溶液とリン酸鉄を含むリチウム抽
出残滓を得る。
【0010】
前記リチウム抽出残滓を利用したリン酸鉄の製造においては、
質量比1/3~5となる量でリチウム抽出残滓に水を加えて、スラリーとするステップS
1)と、
塩酸でスラリーのpHを0.5~1.0に調整し、撹拌しながら反応させ、鉄含有量≦1
.0%となるまでスラリー固相の鉄を溶解するステップS2)と、
ステップS2)で得たスラリーを加圧ろ過して、洗浄し、ろ過ケーキを分解滓として無害
化処理し、ろ液と洗浄液を次の工程に用いるステップS3)と、
ステップS3)で加圧ろ過した液体に、その鉄及びリンの含有量によって、リン酸三ナト
リウム又は塩化鉄を加え、pHを0.5~1.0に制御して、少なくとも0.5時間反応
させ、次に、水酸化ナトリウム溶液でpHを1.5~2.0に調整し、リン酸鉄を沈殿さ
せるステップS4)と、
ステップS4)の後に加圧ろ過、洗浄をして:ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーショ
ンに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄を得るステップS5)と、を含む。
【0011】
好ましくは、前記リチウムを選択的に抽出する工程では、質量比1/3~5となるように
廃リン酸鉄リチウム正負極粉末に水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリーとする。
【0012】
好ましくは、前記リチウムを選択的に抽出する工程では、スラリー中2価鉄質量に対して
0.35~0.4倍の量で固体塩素酸ナトリウムを加える。
【0013】
好ましくは、前記リチウムを選択的に抽出する工程では、前記リチウムを溶液に選択的に
溶解するときに、固体塩素酸ナトリウムを加えて反応させたスラリー中の2価鉄イオンを
全て3価鉄イオンに転化した後、固液分離を行い、ろ液をリチウム含有溶液とし、リチウ
ム含有溶液中のリチウム含有量が15g/L未満である場合、スラリー調製工程に戻って
スラリーを調製し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くし、リチウム含有溶液中の
リチウム含有量が15g/Lを超える場合、水酸化ナトリウム溶液を加えてpH値を8.
5~9.5に調整し、溶液中の銅とアルミなどの金属イオンから水酸化物沈殿を形成し、
加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキを銅・アルミ滓、ろ液を純粋なリチウム含有溶液とする
。
【0014】
さらに、前記リチウムを選択的に抽出する工程の後に、リチウム含有溶液から炭酸リチウ
ムを沈殿させ、具体的には、リチウム含有溶液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸
ナトリウム溶液を加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液を処理してからス
ラリー調製工程に戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とするようにしてもよい。
【0015】
好ましくは、ステップS2)では、前記撹拌しながら反応させるときに、塩酸でpH値を
維持しながら、1~3時間、好ましくは2時間撹拌する。
【0016】
好ましくは、前記リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加えるときに、液体中の鉄及びリンの
含有量を検出し、鉄/リンモル比1/0.97~1.02となるように、リン酸三ナトリ
ウム又は塩化鉄を加える。
【0017】
さらに、粗製リン酸鉄を製造した後、3段逆洗浄を行って不純物を除去し、具体的には、
粗製リン酸鉄のろ過ケーキ用純水と塩酸からなるpH1.5の洗浄液、3回逆洗浄し、粗
製リン酸鉄中の他の金属塩を除去して、純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを得て、ベークして
粉砕し、電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【0018】
またさらに、前記3段逆洗浄を行って不純物を除去することは、以下のステップを用いる
。
b1).洗浄液の調製:純水に高品質塩酸純品を加えて、pH1.5~2.0の塩酸洗浄
液を調製しておく。
b2).第1洗浄:質量比1/3~5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄
水を加えて、30~60分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を
廃水処理ステーションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供する。
b3).第2洗浄:質量比1/3~5となるように第1洗浄により得られた粗製リン酸鉄
のろ過ケーキに第3洗浄水を加えて、30~60分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で
洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い、ろ過ケーキを第3洗浄に供する。
b4).第3洗浄:質量比1/3~5となるように、第2洗浄により得られた粗製リン酸
鉄のろ過ケーキに、pH1.5~2.0の調製済み塩酸洗浄液を加えて、30~60分間
撹拌し、加圧ろ過してpH1.5~2.0の調製済み塩酸洗浄液で洗浄し、ろ液と洗浄液
を第2洗浄に用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したもの
をベークし、粉砕して電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【0019】
さらに、前記ベーク、粉砕においては、純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オー
ブンにより90℃以下の温度で、含水率が0.1%以下となるまで乾燥し、ジェット粉砕
機で5μm以下粉砕し、包装すると、電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、以上の技術手段を使用することにより、従来技術の欠陥が解決され、酸化剤
を利用してリチウムを選択的に抽出し、pH値を制御することでほとんどのリン酸鉄をリ
チウム抽出滓に残し、次に、塩酸でpH値を調整し、滓中のリン酸鉄を溶解して、滓中の
他の不純物と分離し、液固分離後、粗製リン酸鉄溶液として液体にリン酸三ナトリウム又
は塩化鉄を補充し、鉄とリン酸根の比率を調整し、さらにpH値を調整して、リン酸鉄を
合成し、3段逆洗浄を行って不純物を除去し、電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。プ
ロセスの流れが簡単であり、材料使用量が少なく、リン酸鉄の直接収率が93%以上であ
り、廃水量が75%以上減少し、これにより、環境保全の問題を解決するとともに、全て
の有価元素を回収し、相対生産コストを25%程度低下させ、しかも、産業化が実現され
る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明の最良な実施形態】
【0022】
使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法を実施するのに使用される材料(
解体後の正負極材料粉末)
【0023】
そのステップは以下の通りである。
S1)、スラリー調製:20m3反応釜に廃リン酸鉄リチウム正負極粉末5トン、正負極
粉末に対して質量比1/4の量の水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリー状にした。
S2)、塩酸で材料スラリーのpHを2.0に調整した。
S3)、リチウムの選択的抽出:材料スラリー中2価鉄に対して質量比0.35倍の量で
固体塩素酸ナトリウム532kgを加え、80℃で60分間反応させた。
S4)、加圧ろ過、洗浄、2回濃度向上:プレートフレームプレスフィルタによって加圧
ろ過して洗浄し、ろ過ケーキをリチウム抽出残滓、ろ液をリチウム含有溶液とし、ステッ
プ1のスラリー調製工程に戻し、スラリーを調製し、リチウムを2回繰り返して選択的に
抽出し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くした。
S5)、不純物除去:濃度を向上させたリチウム含有溶液に水酸化ナトリウム溶液を加え
てpH値を8.5に調整し、30分間撹拌し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキである銅
・アルミ滓を無害化処理し、ろ液と洗浄液を18m3に制御して、次の工程に供した。
S6)、炭酸リチウム沈殿:ろ液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウム溶
液を加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液をステップ1のスラリー調製工
程に戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とした。
S7)、リン酸鉄溶解:20m3反応釜にステップS4)のリチウム抽出残滓を収容し、
水を加えて質量比約1/4のスラリー状物とし、濃塩酸を加えてpH0.5に調整し、塩
酸でpH値を維持しながら、3時間撹拌した。
S8)、加圧ろ過、洗浄:ろ過ケーキを分解滓として無害化処理し、ろ液と洗浄液を併せ
た。
S9)、リン酸鉄合成:ステップ8で加圧ろ過したろ液と洗浄液について、その中の鉄及
びリンの含有量を検出し、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、鉄/リンモル比を1/
0.97~1.02にし、pHを0.5に制御して、1.5時間反応させた後、水酸化ナ
トリウム溶液でpHを1.5に調整し、リン酸鉄を沈殿させた。
S10)、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄
し、ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄
を次の工程に供した。
S11)、3段逆洗浄及び不純物除去:粗製リン酸鉄のろ過ケーキをpH1.5の洗浄液
で撹拌しながら3回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去し、純粋なリン酸鉄の
ろ過ケーキを得て、そのステップは以下の通りである。
(1)洗浄液の調製:純水20m3を収容可能なpH調整タンクに純水18m3を加えて、
高品質塩酸純品を加えてpH1.5にしておく。
(2)第1洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃水処理ステー
ションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供した。
(3)第2洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第3洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い
、ろ過ケーキを第3洗浄に供した。
(4)第3洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに新しい洗浄水を加
えて、30分間撹拌し、加圧ろ過し、新しい洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第2洗浄に
用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したものをベーク工程
に供した。
S12)、ベーク、粉砕:純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンにより9
0℃の温度で、含水率0.1%となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μm以下に粉砕し
、包装すると電池用グレードのリン酸鉄製品を得た。
本発明の実施形態
【0024】
本発明をより明確に理解するために、以下、
図1を参照して具体的な実施形態によって本
発明についてさらに説明する。
【0025】
実施形態:使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法であって、まず、リチ
ウムを選択的に抽出し、その後、リチウム抽出残滓を利用してリン酸鉄を製造することを
特徴とする。
【0026】
前記リチウムの選択的抽出においては、廃リン酸鉄リチウム正負極粉末に水又はリチウム
含有溶液を加えてスラリーとした後、塩酸でスラリーのpHを1.5~2.0に調整し、
その後、スラリーに固体塩素酸ナトリウムを加え、リチウムを溶液に選択的に溶解して、
リン酸鉄を残滓中に残し、濾過して、リチウム含有溶液とリン酸鉄を含むリチウム抽出残
滓を得る。
【0027】
その反応メカニズム:6LiFePO4+NaClO3+6HCl=6FePO4↓+6
LiCl+NaCl+3H2O。
【0028】
前記リチウム抽出残滓を利用したリン酸鉄の製造においては、以下のステップを用いる。
S1).質量比1/3~5となる量でリチウム抽出残滓に水を加えて、スラリーとする。
S2).塩酸でスラリーのpHを0.5~1.0に調整し、撹拌しながら反応させ、鉄イ
オンの含有量≦1.0%となるまでスラリー固相中の鉄イオンを溶解する。
S3).ステップS2)で得たスラリーを加圧ろ過して、洗浄し、ろ過ケーキを分解滓と
して無害化処理し、ろ液と洗浄液を次の工程に用いる。
S4).S3).ステップで加圧ろ過して得た液体に、その鉄及びリンの含有量によって
、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、pHを0.5~1.0に制御して、少なくとも
0.5時間反応させ、次に、水酸化ナトリウム溶液でpHを1.5~2.0に調整し、リ
ン酸鉄を沈殿させる。
S5).S4)ステップの後に加圧ろ過、洗浄をして、ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ス
テーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄を得る。
【0029】
本発明では、リチウムの選択的な抽出には塩酸と固体塩素酸ナトリウムを用いる原因とし
て、後のリン酸鉄再生時に製品では、硫酸根が無視でき、塩素根が洗浄液で除去できるか
らである。固体塩素酸ナトリウムは、固液比を低下させ、酸化剤の添加によりリチウム含
有溶液の体積が増大しないことを確保し、リチウム含有溶液のリチウム含有濃度を確保す
るために使用される。pH値を1.5~2.0にする原因として、反応メカニズムによれ
ば、リチウムを選択的に抽出すると同時に、リン酸鉄が形成され、pH値が1.5未満で
あれば、リチウム回収がわずかに上昇するが、残滓中のリン酸鉄がかなりリチウム含有溶
液に溶解し、この結果、後でリチウム含有溶液から不純物を除去することが困難になり、
また、大量の鉄やリン源が損失されてしまい、後で残滓からリン酸鉄を回収するときの収
率の大幅な低下を招き、一方、pH値が2.0を超える場合、リチウムの溶出率が大幅に
低下し、リチウム抽出工程の作用が発揮できなくなるからである。
【0030】
本発明では、リチウム抽出残滓を利用したリン酸鉄の製造においては、材料は塩酸と塩素
酸ナトリウム、pH1.5~2.0でリチウムを選択的に抽出した残滓に限定され、それ
以外の残滓は本工程に適さず、その原因として、リチウム抽出時のpH値が1.5未満の
残滓では、鉄とリンはほぼ全て損失されてしまい、リン酸鉄の再生には意義がなく、pH
値が2.0を超える残滓では、溶解後の不純物が多すぎ、不純物を除去するプロセスが複
雑になり、コストが高くなるからである。残滓を溶解するものを塩酸にするのは、リン酸
鉄の塩酸への溶解度が他の酸よりも遥かに高いからである。
【0031】
残滓を溶解するpH値を0.5~1.0にする原因としては、このpH範囲とすることに
より、リン酸鉄の溶解率が回収要件を満たし、残滓を溶解するpH値が0.5未満であれ
ば、酸消費量が多くなり、リン酸鉄を合成した後にリン酸鉄を沈殿させるときにpHを1
.5に調整するのに大量のアルカリが必要になり、その結果として、コストが高くなり、
残滓を溶解するpH値が1.0を超えれば、リン酸鉄の溶解率が徐々に低下し、1.5に
なると、リン酸鉄の溶解率が実質的にゼロになるからである。
【0032】
本発明では、リチウムを選択的に抽出する工程において、質量比1/3~5となるように
廃リン酸鉄リチウム正負極粉末に水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリーとする。本
発明のいくつかの実施例では、質量比1:4となるように水又はリチウム含有溶液を加え
る。スラリーを撹拌しながら移動、輸送することから、固液比が小さすぎると、移動、輸
送が困難になり、管路の詰まりが発生しやすく、固液比が大きすぎると、溶解液における
対象元素の濃度が低くなり、一般には固液比は1/3~5とする。
【0033】
本発明では、リチウムを選択的に抽出する工程において、スラリー中2価鉄質量に対して
0.35~0.4倍の量で固体塩素酸ナトリウムを加える。
【0034】
その反応メカニズム:6LiFePO4+NaClO3+6HCl=6FePO4↓+6
LiCl+NaCl+3H2O。
【0035】
塩素酸ナトリウムと鉄とのモル比は1/6であり、即ち、質量比は106/6×56=0
.3154である。
【0036】
過剰率が1.1~1.25であると、塩素酸ナトリウムと鉄との質量比は0.35~0.
4である。
【0037】
本発明では、前記リチウムを選択的に抽出する工程において、前記リチウムの選択的抽出
においては、材料スラリー中の固体塩素酸ナトリウムを加えて反応させた後、スラリー中
のリン酸鉄リチウムの2価鉄イオンを全て酸化して3価鉄イオンにし、リン酸鉄リチウム
をリン酸鉄に転化し、リチウムイオンを遊離させ、固液分離後、ろ液をリチウム含有溶液
とし、リチウム含有溶液中のリチウム含有量が15g/L未満である場合、スラリー調製
工程に戻ってスラリーを調製し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くし、リチウム
含有溶液中のリチウム含有量が15g/Lを超える場合、水酸化ナトリウム溶液を加えて
pH値を8.5~9.5に調整し、溶液中の銅やアルミなどの金属イオンで水酸化物を形
成して沈殿させ、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキは銅・アルミ滓であり、一般的な方法
によって再加工したり、関連する生産メーカーに販売したりし、ろ液は純粋なリチウム含
有溶液である。金属イオンを完全に加水分解するpH値は9.0であり、9.5を超える
と、両性酸化物のアルミが溶解するので、pH値は8.5~9.5に制御される。
【0038】
本発明では、リチウムを選択的に抽出する工程の後に、リチウム含有溶液から炭酸リチウ
ムを沈殿させ、具体的には、リチウム含有溶液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸
ナトリウム溶液を加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液を処理してから、
リチウムを選択的に抽出するスラリー調製工程に戻り、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品と
する。本発明のいくつかの実施例では、リチウム含有溶液は水酸化リチウム、リン酸リチ
ウムなどの製造に用いられ、当業者に公知の製造方法に従えばよい。
【0039】
本発明では、ステップS2)において、前記撹拌しながら反応させるときに、塩酸でpH
値を維持しながら、1~3時間撹拌する。本発明のいくつかの実施例では、2時間撹拌す
る。
【0040】
本発明では、S4)ステップにおいて、前記リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加えるとき
に、液体中の鉄及びリンの含有量を検出し、鉄/リンモル比1/0.97~1.02とな
るように、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加える。塩化鉄は鉄イオンを補充するために
添加されるものであり、リン酸三ナトリウムはリン元素を補充して、鉄/リンのモル比を
調整するために添加されるものであり、場合によっては、鉄イオンが少なくなると、塩化
鉄を添加し、リン元素が少ないと、リン酸三ナトリウムを添加する。リン酸三ナトリウム
はアルカリ性であるので、リン酸鉄を沈殿させるときに、アルカリをある程度で節約する
ことができ、リン酸又はリン酸二水素ナトリウムを加える場合よりも好適である。
【0041】
本発明では、S4)ステップにおいて、前記少なくとも0.5時間反応させるときに、0
.5~2時間であってもよく、いくつかの実施例では、0.5時間、1時間、1.5時間
又は2時間である。0.5時間であれば、反応は実質的に完全に行われ、1~1.5時間
であれば、反応は完全に行われる。
【0042】
本発明では、粗製リン酸鉄を製造した後、3段逆洗浄を行って不純物を除去するときに、
具体的には、粗製リン酸鉄のろ過ケーキを、純水と塩酸からなるpH1.5の洗浄液で3
回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去して、純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを得
て、ベークして粉砕し、電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【0043】
本発明の3段逆洗浄の目的:逆洗浄の目的は水を節約することであり、3段洗浄に使用さ
れる水の全量は1段洗浄を3回行うための全水量の1/3であり、これにより、廃水処理
の負荷が低減され、工業的に生産した結果、結果表明、リン酸鉄製品は電池用のグレード
に達し、3回の洗浄は適宜最適効果を果たす。
【0044】
本発明では、前記3段逆洗浄による不純物除去は以下のステップを用いる
a).洗浄液の調製:純水に高品質塩酸純品を加えて、pH1.5~2.0の塩酸洗浄液
を調製しておく。
b).第1洗浄:質量比1/3~5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水
を加えて、30~60分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃
水処理ステーションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供する。
c).第2洗浄:質量比1/3~5となるように第1洗浄により得られた粗製リン酸鉄の
ろ過ケーキに第3洗浄水を加えて、30~60分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗
浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い、ろ過ケーキを第3洗浄に供する。
d).第3洗浄:質量比1/3~5となるように、第2洗浄により得られた粗製リン酸鉄
のろ過ケーキに、pH1.5~2.0の調製済み塩酸洗浄液を加えて、30~60分間撹
拌し、加圧ろ過してpH1.5~2.0の調製済み塩酸洗浄液で洗浄し、ろ液と洗浄液を
第2洗浄に用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したものを
ベークし、粉砕して電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【0045】
本発明では、前記ベーク、粉砕においては、純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波
オーブンにより最高90℃の温度で、含水率が0.1%以下となるまで乾燥し、ジェット
粉砕機で5μm以下粉砕し、包装すると電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。
【0046】
本発明では、粗リン酸鉄のろ過ケーキを洗浄する洗浄液が純水と高品質塩酸純品に限定さ
れる原因として、酸洗用の洗浄液で不純物を除去すると、不純物除去プロセスを追加する
必要がないからであり、このため、洗浄液に対する不純物要件が極めて高い。洗浄液のp
Hを1.5~2.0にする原因として、このpH範囲にすることにより、リン酸鉄の損失
が最も小さく、不純物も十分に洗浄され、洗浄液のpH値が1.5未満であれば、リン酸
鉄の一部が洗浄液とともに損失され、リン酸鉄の回収率が低下し、洗浄液のpH値が2.
0を越えれば、不純物の一部が洗浄液に溶解せずに、リン酸鉄に残留され、その結果とし
て製品が電池用のグレードにならないからである。
【0047】
本発明では、従来技術の欠陥が解決され、酸化剤を用いてリチウムを選択的に抽出し、p
H値を制御して、大部分のリン酸鉄をリチウム抽出滓に残し、次に、塩酸でpH値を調整
し、滓中のリン酸鉄を溶解し、滓中の他の不純物と分離し、液固分離後、液体として粗製
リン酸鉄溶液を得て、次に、リン酸三ナトリウム、又は塩化鉄を補充して、鉄とリン酸根
との比率を調整し、さらにpH値を調整して、リン酸鉄を合成し、3段逆洗浄により不純
物を除去し、電池用グレードのリン酸鉄製品を得る。プロセスの流れが簡単であり、材料
使用量が減少し、リン酸鉄の直接収率は93%以上である。この収率は残滓中のリン酸鉄
の一次直接収率であり、リン酸鉄の品質を確保し、リン酸鉄を沈殿させるときのアルカリ
使用量を減少させるために残滓溶解用の酸度を下げるため、微量のリン酸鉄が溶解してお
らず、しかも、リン酸鉄の一部が不純物とともに除去され、洗浄するときの洗浄水が損失
され、この損失されたリン酸鉄が廃水処理ステーションに集まり、沈殿して分離されると
、システムにリサイクルできる。リチウムの溶解率は98%以上であり、リン酸鉄リチウ
ム廃材1トンを処理すると、水酸化ナトリウムは約270kg減少し、廃水量は75%以
上減少し、このように、環境保全の課題を解決するとともに、全ての有価元素を回収し、
相対生産コストを約25%と低下させ、しかも、産業化が実現される。
【0048】
本発明の係る効果のデータの計算根拠は以下の通りである。
【0049】
1、材料使用量減少の計算根拠:リチウム抽出では、強酸で溶解するか弱酸で溶解するか
にかかわらず、アルカリでpHを1.5~2.0にしてリン酸鉄を沈殿させ、余分な酸を
アルカリで中和しなければならない。HCl+NaOH=NaCl+H2O。反応モル比
は1/1である。
【0050】
強酸(4N)分解の場合、反応終了時の酸度を2Nとして、リン酸鉄リチウム廃材5トン
あたり18m3溶液に制御し、最終pHを1.5で、約0.10Nとして計算すると、酸
度低下量は2-0.1=1.9N、中和に必要なアルカリ量は、1.9N、18m3の場
合に必要なアルカリ量であり、すなわち、1.9×40×18=1.368トン(NaO
H)である。リン酸鉄リチウム廃材1トンあたり、アルカリ273.6kgが必要である
。
【0051】
弱酸(pH1.5は約0.10N)の場合のアルカリ使用量:リン酸鉄リチウム廃材5ト
ンあたり18m3溶液に制御し、最終pHを1.5として計算すると、酸度低下量は0.
1-0.1=0Nであり、中和に必要なアルカリ量は、0N、18m3の場合に必要なア
ルカリ量であり、このような場合、ほぼ中和は必要としない。
【0052】
このため、本発明の技術手段では、リチウムの選択的抽出は、リン酸鉄リチウム廃材1ト
ンあたり、水酸化ナトリウム273.6kgを節約する。
【0053】
2、廃水量減少の計算根拠:(1)イオン交換法により不純物を除去し、3%~10%(質
量百分率)硫酸溶液を用いて3BV/hの流速で溶出し、また、硫酸溶液を6BVの量で
併用し、さらに水洗してpHを6よりも高くし、洗浄水の量は6~8BVであり、樹脂再
生だけでは、洗浄用水は15m3/トンリン酸鉄リチウム廃材になる。
(2)3段逆洗浄水の使用量:リン酸鉄リチウム廃材5トンは洗浄水18m3を必要とし、
リン酸鉄リチウム廃材1トンあたりは水3.6m3を必要とし、水減少量は(15-3.
6)/15×100=76%である。
【0054】
3、生産コスト低下の計算根拠:(1)塩酸の節約量は273.6/40×36=336.
24kgであり、市販塩酸の含有量は32%であり、価格は500元/トンであり、この
ため、336.24/0.32/1000×500=525.38元になる。
(2)水酸化ナトリウムの節約量:273.6/1000×3500=957.6元。
(3)水処理コスト:水1トンあたりの処理コストは約80元であり、(15-3.6)×
80=912元になる。
リン酸鉄リチウム廃材1トンを処理すると、コストは約525.38+957.6+91
2=2394.98元節約し、これは合計生産コストの25%である。
【0055】
実施例1:使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法を実施するのに使用さ
れる材料(解体後の正負極材料粉末)。
以下のステップを用いる。
S1)、スラリー調製:20m
3反応釜に廃リン酸鉄リチウム正負極粉末5トン、正負極
粉末に対して質量比1/4の量の水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリー状に調製し
た。
S2)、塩酸で材料スラリーのpHを1.5に調整した。
S3)、リチウムの選択的抽出:材料スラリー中2価鉄に対して質量比0.35倍の量で
固体塩素酸ナトリウム532kgを加え、80℃で60分間反応させた。
S4)、加圧ろ過、洗浄し、1回濃度向上:プレートフレームプレスフィルタによって加
圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキをリチウム抽出残滓、ろ液をリチウム含有溶液とし、ステ
ップ1に戻ってリチウム抽出を繰り返し、リチウム溶液の濃度を1回向上させた。
S5)、不純物除去:濃度を向上させたリチウム溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えてp
H値を9.0に調整し、30分間撹拌し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキである銅・ア
ルミ滓を無害化処理し、ろ液と洗浄液を18m
3に制御し、次の工程に供した。
S6)、炭酸リチウム沈殿:ろ液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウム溶
液を加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液をステップ1のスラリー調製工
程に戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とした。
S7)、リン酸鉄溶解:20m
3反応釜にステップS6)のリチウム抽出残滓を収容し、
水を加えて質量比約1/4のスラリー状物とし、濃塩酸を加えてpH1.0に調整し、塩
酸でpH値を維持しながら、3時間撹拌した。
S8)、加圧ろ過、洗浄:ろ過ケーキを分解滓として無害化処理し、ろ液と洗浄液を併せ
た。
S9)、リン酸鉄合成:ステップS8)で加圧ろ過したろ液と洗浄液について、その中の
鉄及びリンの含有量を検出し、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、鉄/リンモル比を
1/0.97~1.02にし、pHを0.5に制御して、1.0時間反応させた後、水酸
化ナトリウム溶液でpHを1.5に調整し、リン酸鉄を沈殿させた。
S10)、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄
し、ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄
を次の工程に供した。
S11)、3段逆洗浄及び不純物除去:粗製リン酸鉄のろ過ケーキをpH1.5の洗浄液
で撹拌しながら3回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去し、純粋なリン酸鉄の
ろ過ケーキを得て、そのステップは以下の通りである。
(1)洗浄液の調製:純水20m
3を収容可能なpH調整タンクに純水18m
3を加えて、
高品質塩酸純品を加えてpH1.5にしておく。
(2)第1洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃水処理ステー
ションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供した。
(3)第2洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第3洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い
、ろ過ケーキを第3洗浄に供した。
(4)第3洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに新しい洗浄水を加
えて、30分間撹拌し、加圧ろ過し、新しい洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第2洗浄に
用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したものをベーク工程
に供した。
S12)、ベーク、粉砕:純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンにより6
0℃の温度で、含水率0.1%となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μm以下に粉砕し
、包装すると電池用グレードのリン酸鉄製品を得た。
検出データを以下に示す。
本実施例1の効果は以下の通りである。リチウムの溶出率は99.9%、リン鉄の溶出率
は97.45%、リンの溶出率は96.54%、アルミの溶出率は、92.17%、銅の
溶出率は91.82%、リン酸鉄不純物含有量(乾燥基準%)はAl:0.0005、C
u:0.0005、Co:0.0025、Ni:0.0005、Mn:0.0013、C
a:0.0014、Cd:0.0005であり、リン酸鉄製品は電池用グレードの品質要
件を満たし、収率は93.93%である。プロセスの流れが簡単であり、リン酸鉄リチウ
ム廃材1トンあたり水酸化ナトリウムは273.8kg、廃水量は75%減少し、相対生
産コストは25.8%低下した。
【0056】
実施例2:使用済みリン酸鉄リチウム電池の総合的な回収利用方法は、実施に使用される
材料は実施例1と同じであった。そのステップは以下の通りである。
S1)、スラリー調製:20m
3反応釜に廃リン酸鉄リチウム正負極粉末5トン、正負極
粉末に対して質量比1/4の量の水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリー状にした。
S2)、塩酸で材料スラリーのpHを2.0に調整した。
S3)、リチウムの選択的抽出:材料スラリー中2価鉄に対して質量比0.35倍の量で
固体塩素酸ナトリウム532kgを加え、80℃で60分間反応させた。
S4)、加圧ろ過、洗浄、2回濃度向上:プレートフレームプレスフィルタによって加圧
ろ過して洗浄し、ろ過ケーキをリチウム抽出残滓、ろ液をリチウム含有溶液とし、ステッ
プ1のスラリー調製工程に戻し、スラリーを調製し、リチウムを2回繰り返して選択的に
抽出し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くした。
S5)、不純物除去:濃度を向上させたリチウム含有溶液に水酸化ナトリウム溶液を加え
てpH値を8.5に調整し、30分間撹拌し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキである銅
・アルミ滓を無害化処理し、ろ液と洗浄液を18m
3に制御し、次の工程に供した。
S6)、炭酸リチウム沈殿:ろ液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウム溶
液を加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液をステップ1のスラリー調製工
程に戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とした。
S7)、リン酸鉄溶解:20m
3反応釜にステップS4)のリチウム抽出残滓を収容し、
水を加えて質量比約1/4のスラリー状物とし、濃塩酸を加えてpH0.5に調整し、塩
酸でpH値を維持しながら、3時間撹拌した。
S8)、加圧ろ過、洗浄:ろ過ケーキを分解滓として無害化処理し、ろ液と洗浄液を併せ
た。
S9)、リン酸鉄合成:ステップ8で加圧ろ過したろ液と洗浄液について、その中の鉄及
びリンの含有量を検出し、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、鉄/リンモル比を1/
0.97~1.02にし、pHを0.5に制御して、1.5時間反応させた後、水酸化ナ
トリウム溶液でpHを1.5に調整し、リン酸鉄を沈殿させた。
S10)、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄
し、ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄
を次の工程に供した。
S11)、3段逆洗浄及び不純物除去:粗製リン酸鉄のろ過ケーキをpH1.5の洗浄液
で撹拌しながら3回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去し、純粋なリン酸鉄の
ろ過ケーキを得て、そのステップは以下の通りである。
(1)洗浄液の調製:純水20m
3を収容可能なpH調整タンクに純水18m
3を加えて、
高品質塩酸純品を加えて、pH1.5に調整しておく。
(2)第1洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃水処理ステー
ションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供した。
(3)第2洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第3洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い
、ろ過ケーキを第3洗浄に供した。
(4)第3洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに新しい洗浄水を加
えて、30分間撹拌し、加圧ろ過し、新しい洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第2洗浄に
用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したものをベーク工程
に供した。
S12)、ベーク、粉砕:純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンにより9
0℃の温度で、含水率0.1%となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μm以下に粉砕し
、包装すると電池用グレードのリン酸鉄製品を得た。
検出データを以下に示す。
本実施例2の効果は以下の通りである。リチウムの溶出率は99.9%、鉄の溶出率は9
8.50%、リンの溶出率は96.62%、アルミの溶出率は99.10%、銅の溶出率
は98.72%、リン酸鉄不純物含有量(乾燥基準%)はAl:0.0005、Cu:0
.0005、Co:0.0025、Ni:0.0005、Mn:0.0008、Ca:0
.0009、Cd:0.0005であり、リン酸鉄製品は電池用グレードの品質要件を満
たし、収率は93.98%である。プロセスの流れが簡単であり、リン酸鉄リチウム廃材
1トンを処理すると水酸化ナトリウムは275.1kg、廃水量は78%減少し、相対生
産コストは25%低下した。
【0057】
比較例1:実施に使用される材料は実施例1と同じであり、そのステップは以下の通りで
ある。
1、スラリー調製:20m
3反応釜に廃リン酸鉄リチウム正負極粉末5トン、正負極粉末
に対して質量比1/4の量の水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリー状にした。
2、塩酸で材料スラリーのpHを1.0に調整した。
3、リチウムの選択的抽出:材料スラリー中2価鉄に対して質量比0.35倍の量で固体
塩素酸ナトリウム532kgを加えた。80℃で60分間反応させた。
4、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄し、ろ
過ケーキをリチウム抽出残滓、ろ液をリチウム含有溶液とした。
5、不純物除去:水酸化ナトリウム溶液を加えてpH値を9.0に調整し、30分間撹拌
し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキである銅・アルミ滓を無害化処理し、ろ液と洗浄液
を18m
3に制御し、次の工程に供した。
6、炭酸リチウム沈殿:ろ液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウム溶液を
加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液をステップ1のスラリー調製工程に
戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とした。
7、リン酸鉄溶解:20m
3反応釜にステップ4のリチウム抽出残滓を収容し、水を加え
て質量比約1/4のスラリー状物とし、濃塩酸を加えてpH0.5に調整し、塩酸でpH
値を維持しながら、3時間撹拌した。
8、加圧ろ過、洗浄:ろ過ケーキを分解滓として無害化処理し、ろ液と洗浄液を併せた。
9、リン酸鉄合成:ステップ8で加圧ろ過したろ液と洗浄液について、その中の鉄及びリ
ンの含有量を検出し、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、鉄/リンモル比を1/0.
97~1.02にし、pHを0.5に制御して、0.5時間反応させた後、水酸化ナトリ
ウム溶液でpHを1.5に調整し、リン酸鉄を沈殿させた。
10、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄し、
ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄を次
の工程に供した。
11、3段逆洗浄及び不純物除去:粗製リン酸鉄のろ過ケーキをpH1.0の洗浄液で撹
拌しながら3回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去し、純粋なリン酸鉄のろ過
ケーキを得て、そのステップは以下の通りである。(1)洗浄液の調製:純水20m
3を収
容可能なpH調整タンクに純水18m
3を加えて、高品質塩酸純品を加えて、pH1.0
に調整しておく。
(2)第1洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃水処理ステー
ションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供した。
(3)第2洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第3洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い
、ろ過ケーキを第3洗浄に供した。
(4)第3洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに新しい洗浄水を加
えて、30分間撹拌し、加圧ろ過し、新しい洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第2洗浄に
用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したものをベーク工程
に供した。
12、ベーク、粉砕:純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンにより90℃
温度で、含水率0.1%となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μm以下に粉至し、リン
酸鉄製品を得た。
検出データを以下に示す。
比較例1では、リチウムを選択的に抽出するときのpH値は1.0であり、リチウム含有
溶液中には鉄24.4g/L、リン15.36g/Lが含まれ、リン及び鉄は大きく損失
され、リン酸鉄粗品から不純物を洗浄除去する際には、洗浄液のpHは1.0であり、洗
浄液には鉄15.96g/L、リン4.93g/Lが含まれ、リン及び鉄は大きく損失さ
れ、リン酸鉄の収率は68.0%しかない。
【0058】
比較例2:実施に使用される材料は実施例1と同じであり、そのステップは以下の通りで
ある。
1、スラリー調製:20m
3反応釜に廃リン酸鉄リチウム正負極粉末5トン、正負極粉末
に対して質量比1/4の量の水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリー状にした。
2、塩酸で材料スラリーのpHを2.0に調整した。
3、リチウムの選択的抽出:材料スラリー中2価鉄に対して質量比0.35倍の量で固体
塩素酸ナトリウム532kgを加えた。80℃で60分間反応させた。
4、加圧ろ過、洗浄、2回濃度向上:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過
して洗浄し、ろ過ケーキをリチウム抽出残滓、ろ液をリチウム含有溶液とし、ステップ1
のスラリー調製工程に戻し、スラリーを調製し、リチウムを2回繰り返して選択的に抽出
し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くした。
5、不純物除去:濃度を向上させたリチウム溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えてpH値
を9.0に調整し、30分間撹拌し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキである銅・アルミ
滓を無害化処理し、ろ液と洗浄液を18m
3に制御し、次の工程に供した。
6、炭酸リチウム沈殿:ろ液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウム溶液を
加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液をステップ1のスラリー調製工程に
戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とした。
7、リン酸鉄溶解:20m
3反応釜にステップ4のリチウム抽出残滓を収容し、水を加え
て質量比約1/4のスラリー状物とし、濃塩酸を加えてpH0.1に調整し、塩酸でpH
値を維持しながら、3時間撹拌した。
8、加圧ろ過、洗浄:ろ過ケーキを分解滓として無害化処理し、ろ液と洗浄液を併せた。
9、リン酸鉄合成:ステップ8で加圧ろ過したろ液と洗浄液について、その中の鉄及びリ
ンの含有量を検出し、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、鉄/リンモル比を1/0.
97~1.02にし、pHを0.5に制御して、2.0時間反応させた後、水酸化ナトリ
ウム溶液でpHを1.5に調整し、リン酸鉄を沈殿させた。
10、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄し、
ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄を次
の工程に供した。
11、3段逆洗浄及び不純物除去:粗製リン酸鉄のろ過ケーキをpH2.0の洗浄液で撹
拌しながら3回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去し、純粋なリン酸鉄のろ過
ケーキを得て、そのステップは以下の通りである。
(1)洗浄液の調製:純水20m
3を収容可能なpH調整タンクに純水18m
3を加えて、
高品質塩酸純品を加えて、pH2.0に調整しておく。
(2)第1洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃水処理ステー
ションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供した。
(3)第2洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第3洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い
、ろ過ケーキを第3洗浄に供した。
(4)第3洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに新しい洗浄水を加
えて、30分間撹拌し、加圧ろ過し、新しい洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第2洗浄に
用い、ろ過ケーキを純粋なリン酸鉄とした。
12、ベーク、粉砕:純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンにより90℃
温度で、含水率0.1%となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μm以下に粉砕し、リン
酸鉄製品を得た。
検出データを以下に示す。
比較例2では、リチウムを選択的に抽出するときのpH値は2.0であり、リチウム含有
溶液にはリチウム23.0g/Lが含まれ、リチウムの溶解率は90%しかなく、リチウ
ムは大きく損失され、粗製リン酸鉄から不純物を洗浄除去する際には、洗浄液のpHは2
.0であり、リン酸鉄製品にはアルミ0.017%、銅0.051%が含まれ、製品は電
池用グレードの要件を満たさない。
【0059】
比較例3:実施に使用される材料は実施例1と同じであり、そのステップは以下の通りで
ある。
1、スラリー調製:20m
3反応釜に廃リン酸鉄リチウム正負極粉末5トン、正負極粉末
に対して質量比1/4の量の水又はリチウム含有溶液を加えて、スラリー状にした。
2、塩酸で材料スラリーのpHを2.5に調整した。
3、リチウムの選択的抽出:材料スラリー中2価鉄に対して質量比0.35倍の量で固体
塩素酸ナトリウム532kgを加えた。80℃で60分間反応させた。
4、加圧ろ過、洗浄、2回濃度向上:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過
して洗浄し、ろ過ケーキをリチウム抽出残滓、ろ液をリチウム含有溶液とし、ステップ1
のスラリー調製工程に戻し、スラリーを調製し、リチウムを2回繰り返して選択的に抽出
し、リチウム含有溶液のリチウム含有量を高くした。
5、不純物除去:濃度を向上させたリチウム溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えてpH値
を9.0に調整し、30分間撹拌し、加圧ろ過して洗浄し、ろ過ケーキである銅・アルミ
滓を無害化処理し、ろ液と洗浄液を18m
3に制御し、次の工程に供した。
6、炭酸リチウム沈殿:ろ液をリチウム沈殿タンクに圧送し、飽和炭酸ナトリウム溶液を
加えて炭酸リチウム沈殿を形成し、加圧ろ過後、ろ液をステップ1のスラリー調製工程に
戻し、ろ過ケーキを炭酸リチウム製品とした。
7、リン酸鉄溶解:20m
3反応釜にステップ4のリチウム抽出残滓を収容し、水を加え
て質量比約1/4のスラリー状物とし、濃塩酸を加えてpH0.5に調整し、塩酸でpH
値を維持しながら、3時間撹拌した。
8、加圧ろ過、洗浄:ろ過ケーキを分解滓として無害化処理し、ろ液と洗浄液を併せた。
9、リン酸鉄合成:ステップ8で加圧ろ過したろ液と洗浄液について、その中の鉄及びリ
ンの含有量を検出し、リン酸三ナトリウム又は塩化鉄を加え、鉄/リンモル比を1/0.
97~1.02にし、pHを0.5に制御して、1.5時間反応させた後、水酸化ナトリ
ウム溶液でpHを1.5に調整し、リン酸鉄を沈殿させた。
10、加圧ろ過、洗浄:プレートフレームプレスフィルタによって加圧ろ過して洗浄し、
ろ液と洗浄液を併せて廃水処理ステーションに供し、ろ過ケーキとして粗製リン酸鉄を次
の工程に供した。
11、3段逆洗浄及び不純物除去:粗製リン酸鉄のろ過ケーキをpH2.5の洗浄液で撹
拌しながら3回逆洗浄し、粗製リン酸鉄中の他の金属塩を除去し、純粋なリン酸鉄のろ過
ケーキを得て、そのステップは以下の通りである。
(1)洗浄液の調製:純水20m
3を収容可能なpH調整タンクに純水18m
3を加えて、
高品質塩酸純品を加えて、pH2.5に調整しておく。
(2)第1洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第2洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第2洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を廃水処理ステー
ションに送り、ろ過ケーキを第2洗浄に供した。
(3)第2洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに第3洗浄水を加え
て、30分間撹拌し、加圧ろ過して第3洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第1洗浄に用い
、ろ過ケーキを第3洗浄に供した。
(4)第3洗浄:質量比1/5となるように粗製リン酸鉄のろ過ケーキに新しい洗浄水を加
えて、30分間撹拌し、加圧ろ過し、新しい洗浄水で洗浄し、ろ液と洗浄液を第2洗浄に
用い、ろ過ケーキについて純粋なリン酸鉄として検出を行い、合格したものをベーク工程
に供した。
12、ベーク、粉砕:純粋なリン酸鉄のろ過ケーキを、マイクロ波オーブンにより90℃
温度で、含水率0.1%となるまで乾燥し、ジェット粉砕機で5μmに粉砕し、リン酸鉄
製品を得た。
検出データを以下に示す。
比較例3では、リチウムを選択的に抽出するときのpH値は2.5であり、リチウム含有
溶液にはリチウム18.96g/Lが含まれ、リチウムの溶解率は74.2%しかなく、
リチウムは大きく損失され、粗製リン酸鉄から不純物を洗浄除去する際には、洗浄液のp
Hは2.5であり、リン酸鉄製品にはアルミ0.014%、銅0.041%が含まれ、製
品は電池用グレードの要件を満たさない。
【0060】
以上は本発明を説明する実施例に過ぎず、本発明を何ら形式的か実質的に限定するもので
はなく、なお、当業者であれば、本発明の方法を逸脱することなく行われるいくつかの改
良や補充も本発明の特許範囲とみなすべきである。当業者であれば、本発明の主旨や範囲
を逸脱することなく、上記した技術内容に基づいて行われるいくつかの変更、修飾や変化
という等同変化は全て本発明の等価実施例であり、また、本発明の実質的な技術に基づい
て上記の実施例について行われる等同の変更、修飾や変化も本発明の特許範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る技術は工業的生産に適用されており、リチウムの溶出率は99.9%、リン
鉄の溶出率は96.62%以上、リンの溶出率は96.54%以上、アルミの溶出率は9
2.17%以上、銅の溶出率は91.82%以上であり、リン酸鉄製品は電池用グレード
の品質要件を満たし、収率は93.93%以上である。プロセスの流れが簡単であり、リ
ン酸鉄リチウム廃材1トンあたり水酸化ナトリウムは273.8kg以上、廃水量は75
%以上減少し、相対生産コストは少なくとも25%低下する。