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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】表示システム及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231130BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20231130BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20231130BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20231130BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231130BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60N2/90
B60R11/02 C
B60N2/02
B60N2/80
G09F9/00 362
G03B21/14 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018223962
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020083204
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
(72)【発明者】
【氏名】草野 惇至
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208594(JP,A)
【文献】特開2004-299591(JP,A)
【文献】特開2019-130971(JP,A)
【文献】特開2016-009100(JP,A)
【文献】特開2017-136984(JP,A)
【文献】特開平01-245287(JP,A)
【文献】特開2004-224235(JP,A)
【文献】特表2018-526258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60R 11/02
B60N 2/02
B60N 2/80
G09F 9/00
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内に設けられ、少なくとも一部が可動に構成されるシートと、
前記車内に設けられ、前記車内の壁面に映像を投影可能な投影装置と、
前記シートの状態を取得するとともに、前記投影装置の投影位置を制御する制御部と、
前記シートの側方に配置されたセンターコンソールと、を備え、
前記投影装置は、前記映像を投影するプロジェクタ本体と、該プロジェクタ本体が取り付けられ、前記プロジェクタ本体の前記車両に対する垂直方向の角度及び水平方向の角度を任意の角度で変更するプロジェクタ可動機構とを有し、前記センターコンソールに設けられており、
前記制御部は、前記シートの状態に合わせて、前記プロジェクタ可動機構を制御して前記プロジェクタ本体の前記車両に対する角度を変更し、前記投影装置の投影位置を変更することを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記シートは、シートバック部と、前記シートバック部に連結したシートクッション部と、を有し、
前記投影装置は、前記車両の前後方向において、前記シートクッション部の前端部より後方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記投影装置は、前記車両の前後方向において、前記シートバック部の後端部より前方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記シートは、前記シートバック部が起立した起立姿勢と、前記シートバック部が後傾した倒れ姿勢の状態とに変形可能であり、
前記投影装置は、前記シートが倒れ姿勢であるとき、前記車両の前後方向において、前記シートバック部の後端部より前方に位置し、且つ、前記シートクッション部の前端部より後方に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記投影装置は、前記シートが起立姿勢であるとき、前記シートクッション部より上方に位置し、且つ、前記シートバック部の上端部より下方に位置していることを特徴とする請求項4に記載の表示システム。
【請求項6】
前記シートは、前記シートバック部に取り付けられるヘッドレスト部と、前記シートクッション部の前端部に支持されるオットマン部と、を更に有し、
前記シートが倒れ姿勢であるとき、前記投影装置は、前記ヘッドレスト部の後端部より前方に位置し、且つ、前記オットマン部の前端部より後方に位置することを特徴とする請求項4又は5に記載の表示システム。
【請求項7】
前記投影装置が前記映像を投影する前記投影位置として、前記車両のルーフ、窓部、ドア部、前記シートの前方に位置する前方シートのシートバック部、及び、前記前方シートのヘッドレスト部のうちいずれかが選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項8】
前記センターコンソールには、前記映像の投影を開始するための投影開始スイッチが設けられており、
前記投影開始スイッチは、前記投影装置と前記車両の前後方向において並んで配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項9】
前記シートは、シートバック部と、前記シートバック部に連結したシートクッション部と、を有し、前記シートバック部が起立した起立姿勢と、前記シートバック部が後傾した倒れ姿勢の状態とに変形可能であり、
前記投影装置は、前記センターコンソールの中央部に設けられており、
前記シートが前記倒れ姿勢である場合、前記投影装置の前記投影位置は前記車両のルーフとなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項10】
前記投影装置の先端部は、前記センターコンソールの前端部及び後端部の間に配置されており、
前記投影装置の前記投影位置が、前記シートの状態に合わせて前記車両の窓部となることを特徴する請求項1から9のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項11】
前記投影装置は、前記センターコンソールの上面より上方に設けられており、
前記投影装置の前記投影位置が、前記車両のドア部となることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項12】
前記車内には、二つの前記シートが左右に設けられていて、
前記投影装置は、左側の前記シートの右端面と、右側の前記シートの左端面との間に配置されており、
前記制御部は、二つの前記シートのうち、前記投影装置の動作を合わせるシートを任意に設定することが可能であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項13】
前記投影装置は、前記センターコンソールの左右幅方向内側に配置されており、
前記投影装置の水平方向の角度を変更して、前記シートに着座する着座者の目線の先に前記投影位置を配置することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項14】
前記車両のルーフにスクリーンが設けられており、
前記投影装置は、前記センターコンソールの左右幅方向の中心線上に配置され、
前記ルーフに設けられた前記スクリーンを、前記投影装置の投影位置とすることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項15】
前記センターコンソールに設けられる前記投影装置とは別に複数の投影装置が設けられており、
前記制御部は、前記シートの状態に合わせて、前記複数の投影装置の投影位置を設定することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の表示システムを備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システムに係り、特に、車内においてシートの状態と連動した投影装置を備える表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車内において映像を表示するためにルーフにモニタを取り付けたディスプレイシステムが知られている。特許文献1に記載のディスプレイでは、乗物シートの位置をセンサにより判定し、それに基づいて乗物のディスプレイの位置を自動的に調整することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-098317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のディスプレイシステムでは、ディスプレイ自体を支持しつつその位置を変化させるため、ディスプレイを車内において移動させるための大掛かりな装置、例えばルーフにレール等を設ける必要があった。しかしながら、車内にディスプレイを取り付ける大掛かりな装置を別途取り付けることはコストが高くなるという課題があった。より簡便な方法で車内において映像を表示するシステムが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、車内に大掛かりな装置を設けることなく、シートの状態と映像の表示位置とが連動した表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明に係る表示システムによれば、車内に設けられ、少なくとも一部が可動に構成されるシートと、前記車内に設けられ、前記車内の壁面に映像を投影可能な投影装置と、前記シートの状態を取得するとともに、前記投影装置の投影位置を制御する制御部と、前記シートの側方に配置されたセンターコンソールと、を備え、前記投影装置は、前記映像を投影するプロジェクタ本体と、該プロジェクタ本体が取り付けられ、前記プロジェクタ本体の前記車両に対する垂直方向の角度及び水平方向の角度を任意の角度で変更するプロジェクタ可動機構とを有し、前記センターコンソールに設けられており、前記制御部は、前記シートの状態に合わせて、前記プロジェクタ可動機構を制御して前記プロジェクタ本体の前記車両に対する角度を変更し、前記投影装置の投影位置を変更することにより解決される。
【0007】
本発明の表示システムでは、映像の表示装置として車内の壁面に映像を投影可能な投影装置を用いている。また、制御部が、シートの状態を取得し、その状態に合わせて投影装置の投影位置、すなわち、映像が表示される位置を変更する。そのため、例えば車内にディスプレイを支持する大掛かりな装置を設けることなく、シートの状態と映像の表示位置とが連動した表示システムを提供することができる。
また、投影装置が車両の略中央に配置されるため、車内の広範囲に映像を投影することができるようになる。
【0008】
このとき、前記シートは、シートバック部と、前記シートバック部に連結したシートクッション部と、を有し、前記投影装置は、前記車両の前後方向において、前記シートクッション部の前端部より後方に配置されているとよい。
【0009】
前記投影装置は、前記車両の前後方向において、前記シートバック部の後端部より前方に配置されているとよい。
【0010】
前記シートは、前記シートバック部が起立した起立姿勢と、前記シートバック部が後傾した倒れ姿勢の状態とに変形可能であり、前記投影装置は、前記シートが倒れ姿勢であるとき、前記車両の前後方向において、前記シートバック部の後端部より前方に位置し、且つ、前記シートクッション部の前端部より後方に位置するとよい。
【0011】
前記投影装置は、前記シートが起立姿勢であるとき、前記シートクッション部より上方に位置し、且つ、前記シートバック部の上端部より下方に位置しているとよい。
【0012】
前記シートは、前記シートバック部に取り付けられるヘッドレスト部と、前記シートクッション部の前端部に支持されるオットマン部と、を更に有し、前記シートが倒れ姿勢であるとき、前記投影装置は、前記ヘッドレスト部の後端部より前方に位置し、且つ、前記オットマン部の前端部より後方に位置するとよい。
【0013】
前記投影装置が前記映像を投影する前記投影位置として、前記車両のルーフ、窓部、ドア部、前記シートの前方に位置する前方シートのシートバック部、及び、前記前方シートのヘッドレスト部のうちいずれかが選択されるとよい。
【0014】
前記センターコンソールには、前記映像の投影を開始するための投影開始スイッチが設けられており、前記投影開始スイッチは、前記投影装置と前記車両の前後方向において並んで配置されているとよい。
【0015】
前記シートは、シートバック部と、前記シートバック部に連結したシートクッション部と、を有し、前記シートバック部が起立した起立姿勢と、前記シートバック部が後傾した倒れ姿勢の状態とに変形可能であり、前記投影装置は、前記センターコンソールの中央部に設けられており、前記シートが前記倒れ姿勢である場合、前記投影装置の前記投影位置は前記車両のルーフとなるとよい。
【0016】
前記投影装置の先端部は、前記センターコンソールの前端部及び後端部の間に配置されており、前記投影装置の前記投影位置が、前記シートの状態に合わせて前記車両の窓部となるとよい。
【0017】
前記投影装置は、前記センターコンソールの上面より上方に設けられており、前記投影装置の前記投影位置が、前記車両のドア部となるとよい。
【0018】
前記車内には、二つの前記シートが左右に設けられていて、前記投影装置は、左側の前記シートの右端面と、右側の前記シートの左端面との間に配置されており、前記制御部は、二つの前記シートのうち、前記投影装置の動作を合わせるシートを任意に設定することが可能であるとよい。
前記投影装置は、前記センターコンソールの左右幅方向内側に配置されており、前記投影装置の水平方向の角度を変更して、前記シートに着座する着座者の目線の先に前記投影位置を配置するとよい。
前記車両のルーフにスクリーンが設けられており、前記投影装置は、前記センターコンソールの左右幅方向の中心線上に配置され、前記ルーフに設けられた前記スクリーンを、前記投影装置の投影位置とするとよい。
【0019】
上記表示システムは車両に提供されてよい。車両に上記表示システムが設けられることで、ディスプレイ装置を支持する大掛かりな装置を車両に設けることなく、乗員に映像を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
発明の表示システムによれば、車内にディスプレイを支持する大掛かりな装置を設けることなく、乗員が着座するシートの状態と投影位置とを連動させた表示システムを提供することができる。
また、シートの変形やシートの位置に応じて、乗員にとって最適な位置に投影装置の投影位置を変更することができる。
また、投影装置を可動にすることで、乗員にとって最適な位置に投影位置を変更することができる。投影装置がヘッドレスト部に設けられることにより、映像を車室のルーフに投影しやすくなる。投影装置がセンターコンソールに設けられることにより、投影装置が車両の略中央に配置されるため、車内の広範囲に映像を投影することができるようになる。また、制御部が複数のシートのうち投影装置の動作を合わせるシートを任意に設定することにより、追従が必要な人にとって最適な位置に映像を投影することができる。
また、映像が投影される壁面が動くことにより、乗員にとって見やすい角度で映像を表示することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る表示システムを模式的に示す側面図である。
図2】本実施形態に係る表示システムを模式的に示す平面図である。
図3】表示システムにおいて、シートをリクライニングした状態を示す側面図である。
図4】ECU及びECUの制御対象を示す図である。
図5】シートの動作と連動したプロジェクタを制御するフロー図である。
図6】表示システムの別例を示す側面図であり、ヘッドレストに投影装置を取り付けた場合を示す図である。
図7図6に示すヘッドレストを拡大して示す図である。
図8】表示システムの別例を示す側面図であり、プロジェクタがフロントシートに取り付けられた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る車両用の映像表示システムについて、図1図5を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0023】
本実施形態は、車両の車内に設けられ、少なくとも一部が可動に構成されるシートと、車内に設けられ、車内の壁面に映像を投影可能な投影装置と、シートの状態を取得するとともに、投影装置の投影位置を制御する制御部とを備え、投影装置は、シートの状態に合わせて投影装置の投影位置を変更することを特徴とする表示システムの発明に関する。
【0024】
以下の説明中、「前後方向」とは、図1に示すように車両用シートSの乗員(着座者と呼ぶ場合がある)から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、図2に示すように車両用シートSの横幅方向を意味し、車両用シートSの乗員から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートSの高さ方向を意味し、図1に示すように車両用シートSを側面から見たときの上下方向と一致する。
【0025】
まず、図1から図4を参照しながら、車両用シートSの構成について説明する。車両用シートSは、車両に搭載された乗員Hが着座可能なシートである。以下では、車両の後ろ側に配置されたリアシートS2を中心に説明するが、前側に配置されたフロントシートS1も同様の構成である。
そして、本実施形態に係る車両用シートSは、シートバック部10が起立した起立姿勢(図1参照)から、シートバック部10が後傾した倒れ姿勢(図2参照)の少なくとも二つの状態に変形可能である。なお、車両用シートSが起立姿勢にある状態では、乗員Hは車両用シートSに対して通常の立位姿勢(例えば運転姿勢)をとる。一方で、車両用シートSが倒れ姿勢にある状態では、乗員Hは車両用シートSに対して中立姿勢をとる。
【0026】
図1図3に示すように、表示システム1は、乗員Hが着座する車両用シートSと、映像31を車内の壁面に投影するプロジェクタ30と、車両用シートSの各部の動作を制御する制御部としてのECU40(Electronic Control Unit)と、を備える。
【0027】
プロジェクタ30は車両用シートSの側方に設けられたセンターコンソール5に取り付けられている。プロジェクタ30は、単体でもレンズの向きを変更することにより映像を
投影する位置や角度等を変更が可能である。また、プロジェクタ30本体がプロジェクタ可動機構32に取り付けられていて、車両に対するプロジェクタ30の垂直方向の角度及び水平方向の角度を変更することができる。
【0028】
車両用シートSは、シートバック部10、シートクッション部11、オットマン部12、ヘッドレスト部13、シート支持部19を備える。また、シートバック部10を傾くように動かすリクライニング機構15、シートクッション部11を傾けるチルト機構16を備える。また、シート支持部19は、車両用シートSを前後方向又は左右方向に移動させるシートスライド機構20、車両用シートSを上下方向の軸を中心に回転させるシート回転機構24と、を備える。
【0029】
シートバック部10は、乗員Hの背を後方から支持し、不図示のフレームにクッション材を支持させて当該クッション材を表皮で覆うことで構成される。
【0030】
なお、本実施形態に係るシートバック部10は、上下二分割されており、シートバック上部10a及びシートバック下部10bを有する。シートバック上部10aは、乗員Hの背のうち、胸部と同じ高さに位置する部分を支持する。シートバック下部10bは、乗員の背のうち、腹部から腰部に亘る部分を支持する。
また、シートバック部10は、リクライニング機構15により、シートクッション部11に対して後傾するように移動(厳密には回動)すること、いわゆるリクライニングさせることが可能である。
【0031】
リクライニング機構15は、シートバック部10が車両に対して倒れている角度(倒れ角度α)が変わるようにシートバック部10を移動(回動)させる機構であり、例えば、モータ(不図示)の駆動によって実現される。リクライニング機構15が動作することでシートバック部10とシートクッション部11を連結する軸部材を中心として、シートバック部10が回動する。リクライニング機構15に設けられたモータにはホールICが設けられ、モータが一回転するたびにパルスが出力される。パルスはECU40により受信され、シートバック部10の倒れ角度αを計測することが可能である。
【0032】
シートクッション部11は、乗員Hの臀部を下方から支持し、不図示のフレームにクッション材を載せて当該クッション材を表皮で覆うことで構成されている。シートクッション部11の後端部は、シート幅方向に沿って延びた軸を介して、シートバック部10の下端部(厳密には、シートバック下部10bの下端部)と連結している。
【0033】
また、本実施形態に係るシートクッション部11は、チルト機構16により、その前端部が上下方向に昇降するように回動することが可能である。
【0034】
チルト機構16は、シートクッション部11の前端部が昇降するようにシートクッション部11を移動(回動)させる機構であり、例えば、ジャッキ型の電動リフト機構によって構成されている。チルト機構16が動作することでシートクッション部11の前端が、シートクッション部11の後端に対して回動する。チルト機構16を駆動するモータにはホールICが設けられ、モータが1回転するたびにパルスが出力される。出力されたパルスはECU40により受信され、シートクッション部11が車体フロアFに対して傾斜する角度(傾斜角度β)を計測することが可能である。
【0035】
オットマン部12は、乗員Hの下腿部を下方から支持し、不図示のフレームボードにクッション材を載せて当該クッション材を表皮で覆うことで構成されている。オットマン部12は、シート幅方向に沿って延出した回動軸を介して、シートクッション部11の前端部に支持されている。すなわち、オットマン部12は、上記の回動軸周りに回動可能である。
【0036】
そして、オットマン部12は、回動することにより展開位置と収納位置との間を移動する。収納位置とは、オットマン部12の不使用時の位置であり、オットマン部12が垂下しておりオットマン部12部の先端部(自由端部)がシートクッション部11に最も近接しているときの位置である。展開位置とは、オットマン部12が使用される位置(分かり易くは、乗員の下腿部を支持可能な位置)であり、シートクッション部11の前端よりも前側にオットマン部12が張り出しているときの位置である。
【0037】
また、オットマン部12については、シートクッション部11に支持されている基端部から自由端部である先端部までの長さ(以下、全長)が伸縮可能となっている。つまり、オットマン部12は、収納位置にあるときに全長が最も短くなり、展開位置に近付くにつれて全長が徐々に長くなるように構成される。
【0038】
また、本実施形態において、ヘッドレスト部13は、ヘッドレスト移動機構(不図示)により、シートバック部10に対して上下に移動することが可能である。つまり、本実施形態では、ヘッドレスト移動機構によるヘッドレスト部13の移動に応じて、乗員の頭部を支持する位置を変更することが可能である。
【0039】
シート支持部19は、車両用シートSを下方から支持する装置であり、シートクッション部11の下部に取り付けられる。具体的には、シート支持部19は、車両用シートSとシートスライド機構20及びシート回転機構24を連結するフレーム部材を、カバー部材で覆って構成される。なお、シート支持部19の内部には、車両用シートSの各部を制御する制御部としてのECU40が収容されることとする。もちろん、ECU40は、シート支持部19に限られず、シートバック部10、シートクッション部11等の内部に収容されてもよいし、車両用シートSに対して外付けされてもよい。
【0040】
シートスライド機構20は、車体フロアFに対して車両用シートSを前後方向及び左右方向にスライドさせるための機構である。シートスライド機構20は、アッパーレール21、ロアレール22、及びアッパーレール21をロアレール22に対しスライドさせるためのスライド用モータを備える。スライド用モータについてもホールICが取り付けられていて、モータが1回転するたびにパルスが出力される。
【0041】
アッパーレール21は、シート支持部19を介して車両用シートSに固定され、ロアレール22は、車体フロアFに固定される。ここで、上記のスライド用モータを動作させて、アッパーレール21をロアレール22に対して前後又は左右にスライドさせることで、車両用シートSすなわちシートバック部10、シートクッション部11、ヘッドレスト部13及びオットマン部12を一体として車体フロアFに対して前後又は左右に移動させることができる。
【0042】
シート回転機構24は、車体フロアFに対して車両用シートSを上下方向の軸を中心に回転させるための機構である。シート回転機構24はシート回転用モータを備える。シート回転用モータについてもホールICが取り付けられていて、モータが1回転するたびにパルスが出力される。パルスはECU40により受信され、それにより車両用シートSの車の移動方向に対する回転角度を計測することができる。
【0043】
また、車両用シートSは、操作スイッチ25を備える。操作スイッチ25は、車両用シートSのシートクッション部11の側部に設けられ、車両用シートSの姿勢変形を指示するための操作部である。例えば、操作スイッチ25は、車両用シートSを起立姿勢から倒れ姿勢に変形させるための第1スイッチ、車両用シートSを倒れ姿勢から起立姿勢に変形させるための第2スイッチを含むこととしてよい。
【0044】
ECU40は、上述したリクライニング機構15、チルト機構16、シートスライド機構20、シート回転機構24、プロジェクタ30、プロジェクタ可動機構32を制御する制御部である。また、リクライニング機構15、チルト機構16、シートスライド機構20、シート回転機構24及びプロジェクタ可動機構32(以下まとめて可動機構と呼ぶ場合がある)に設けられたモータからパルスを受信する。そして、図3に示すように、ECU40は、プロセッサ41、メモリ42、入出力インターフェース43を備える。
【0045】
プロセッサ41は、メモリ42に記憶されるプログラムやデータ、入出力インターフェース43を介して接続される各デバイスから受信した信号に基づいて各種の演算処理を実行するとともに、表示システム1の各部を制御する中央処理装置である。メモリ42は、例えば半導体メモリであり、各種のプログラムやデータを記憶するほか、プロセッサ41のワークメモリとしても機能する。入出力インターフェース43は、リクライニング機構15、チルト機構16、シートスライド機構20、シート回転機構24、プロジェクタ30、プロジェクタ可動機構32、操作スイッチ25と接続し、各デバイスと通信する。
【0046】
また、上述したように、車両用シートSには姿勢切り替え用の操作スイッチ25が設けられている。操作スイッチ25は、車両のドアやアームレストに設けられた押しボタン型のスイッチであり、車両用シートSに着座している乗員がシートバック部10等の姿勢を切り替える際に操作される。
なお、本実施形態では操作スイッチ25をON/OFFすることにより車両用シートSの姿勢を切り替えているが、操作スイッチ25を押下している間、リクライニング機構15が動作しシートバック部10が、乗員Hの好みに合うよう徐々に傾斜してもよい。
また、投影開始スイッチ34を備えている。投影開始スイッチ34を押下することにより、プロジェクタ30が映像の投影を開始する。この際、ECU40は、車両用シートSの状態、例えば倒れ姿勢であるか、起立姿勢であるかを判定する。具体的には、ECU40は各可動機構のモータの回転数の情報を基にして、シートバック部10の倒れ角度α、シートクッション部の傾斜角度β、シートクッション部11の高さhを取得し、それらの情報から、プロジェクタ30が映像を投影する投射角度θ(車体フロアFと投影軸33の角度θ)を算出する。
【0047】
この際、例えば表1に示すように倒れ角度αと、倒れ角度αに対応するプロジェクタの最適な投射角度θとが記録された対応表を基に、プロジェクタ30の投射角度θを設定する。例えば、倒れ角度が75°の場合、プロジェクタの投射角度θを15°に設定する。
なお、基本的には、乗員Hが着座したときの乗員Hの目線の先に映像が位置するように投射角度θは定められる。そのため、例えば、図1に示すように起立姿勢では、前方にあるフロントシートS1に映像を投影してよく、図2に示すように倒れ姿勢では、映像をルーフ3に設けられたスクリーン4に映像を投影してよい。
ECU40は、設定された投射角度θの値を基にして、プロジェクタ30又はプロジェクタ可動機構32を動かしてプロジェクタを最適な投射角度に設定し、映像31の表示位置を定める。
【表1】
【0048】
なお、上記例では、倒れ角度αと投射角度θとの対応表を基に、投射角度θを求めていたが、投射角度θは、シートクッション部11の傾斜角度β及びシートクッションの高さhを含めた対応表を予め定めておき、それに基づいてプロジェクタ30の投射角度θを算出してもよい。また、車両用シートS全体の位置及び回転角度に基づいて、投射角度θを算出して、映像の表示位置を定めてもよい。その際、プロジェクタ30全体が、上下方向だけでなく、左右方向に回転してもよい。
【0049】
以下、図5を参照しながら、投影開始スイッチ34が押されてから、プロジェクタ30が映像31の表示位置を定めるまでの表示システム1の処理について説明する。
【0050】
まず、乗員Hが、投影開始スイッチ34を押下すると、ECU40は、プロジェクタ30により映像の投影処理を開始する。そして、プロジェクタ30の動作を合わせる車両用シートSの状態と、プロジェクタ30の投射角度θの状態を取得する(S101)。
【0051】
つぎに、車両用シートSの状態が、前回プロジェクタ30による投影を終了した時点の状態から変化したか否かを判定する(S102)。車両用シートSの状態が変化していない場合、例えば、前回起立状態で変更されておらず今回も同様に起立状態である場合(Noの場合)は、プロジェクタ30の投射角度θを変更する必要がなく、プロジェクタ30の投射角度θを変更する処理を終了する。
【0052】
ステップ102において、車両用シートSの状態に変化があったとECU40に判定された場合(ステップ102でYes)、ECU40は、変化後の車両用シートSの状態、例えば倒れ角度αを基に、メモリ42に記憶された対応表を用いて、最適なプロジェクタ30の投射角度θを求める(S103)。
【0053】
次に、ECU40は、プロジェクタ30又はプロジェクタ可動機構32を用いて、プロジェクタ30の投射角度θが、ステップ103で求めた角度になるように、プロジェクタ30を動作又は移動させる(S104)。このようにECU40を用いることにより、プロジェクタ30の投射角度θを、車両用シートSの状態に合わせて設定することができ、映像31の表示位置を決定する。
【0054】
次に図6図7を用いて別例である表示システム601について説明する。図1~3に示す表示システム1では、センターコンソール5にプロジェクタ30が配置されていたが、図6に示す表示システム601は、プロジェクタ630が、乗員Hが着座するヘッドレスト部613に搭載される。図7に示すように、プロジェクタ630の投影部635が、幅方向の軸を中心に回転することによって、投射角度θの変更を行う。ヘッドレスト部613に、プロジェクタ630を備えることにより車内のルーフに映像の表示を行う。プロジェクタ630の構造以外は、図1に示す表示システム1と同様であるので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0055】
次に図8を用いて別例である表示システム801について説明する。図1図3に示す表示システム1は、センターコンソール5にプロジェクタ30が配置されていたが、図8に示す表示システム801は、プロジェクタ830が、乗員Hが着座するリアシートS2の前方に設置されたフロントシートS1のシートバック部10に設けられる。リアシートS2が起立姿勢にある場合、フロントシートS1のシートバック部10に設置されたプロジェクタ830は、フロントシートS1のヘッドレスト部13に投影してよい。車両用シートSが倒れ姿勢にある場合、プロジェクタ830は、ルーフ3に設けられたスクリーン4に投影映像を投影してもよい。
【0056】
本実施形態で示した表示システム1では、投影映像をフロントシートS1のシートバックの背面又はルーフに投影していたが、映像を投影する位置はこれに限定されず、窓やドアであってもよい。
また、プロジェクタ30は、センターコンソール5、ヘッドレスト部13、シートバック部10に設けられていたが、プロジェクタ30が設置される箇所はこれに限定されず、車両用シートSのアームレストに設置されてもよい。
【0057】
車両の室内には、複数のプロジェクタが配備されてよく、ECU40によって、プロジェクタ毎に追従する車両用シートを設定してもよい。
【0058】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる表示システムについて説明したが、特に限定されることなく、本願の表示システムは電車、バス等に設けることが可能であり、また、飛行機、船等にも利用することもできる。
【0059】
本実施形態では、主として本発明に係る表示システムに関して説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。特に、貫通孔の形状、配置及び構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0060】
1、601、801 車両用表示システム(表示システム)
2 車内
3 ルーフ
4 スクリーン
5 センターコンソール
10 シートバック部
10a シートバック上部
10b シートバック下部
11 シートクッション部
12 オットマン部
13、613 ヘッドレスト部
15 リクライニング機構
16 チルト機構
19 シート支持部
20 シートスライド機構
21 アッパーレール
22 ロアレール
24 シート回転機構
25 操作スイッチ
30、630、830 プロジェクタ(投影装置)
31 投影映像
32 プロジェクタ可動機構
33 プロジェクタの投影軸
34 投影開始スイッチ
635 投影部
40 ECU
41 プロセッサ(制御部)
42 メモリ(記憶部)
43 入出力インターフェース
F 車体フロア
S 車両用シート
S1 フロントシート
S2 リアシート
α 倒れ角度
β 傾斜角度
θ 投射角度
H 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8