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特許7393613空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム
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  • 特許-空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム 図1
  • 特許-空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム 図2
  • 特許-空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム 図3
  • 特許-空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム 図4
  • 特許-空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件決定システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/48 20180101AFI20231130BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20231130BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20231130BHJP
【FI】
F24F11/48
F24F11/58
F24F11/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019049519
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020153529
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】吉見 学
(72)【発明者】
【氏名】西村 忠史
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203544(JP,A)
【文献】特開2016-044855(JP,A)
【文献】特開2014-153030(JP,A)
【文献】特開2016-114324(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008698(WO,A1)
【文献】特開2012-242067(JP,A)
【文献】特許第5705348(JP,B2)
【文献】特開2013-204852(JP,A)
【文献】特開2008-020091(JP,A)
【文献】特開平11-337149(JP,A)
【文献】特開2018-048774(JP,A)
【文献】特許第6270996(JP,B2)
【文献】特開2002-312456(JP,A)
【文献】特開2015-197242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/48
F24F 11/64
F24F 11/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件を決定するシステム(100)であって、
異なる場所に設置される複数の空調機(20A~20E)を、当該場所に相当する建物の躯体の部分(51、52、53A、53B、54)の情報に関連づけて登録する登録部(11)と、
前記複数の空調機の各々の予冷運転又は予暖運転時の運転データを取得して記憶する記憶部(12)と、
前記複数の空調機の1つ(20E)に対して、躯体の部分の情報が類似する前記複数の空調機の他の少なくとも1つ(20A)を抽出し、前記記憶部に記憶された前記他の少なくとも1つ(20A)の予冷運転又は予暖運転時の運転データに基づいて、前記1つの前記運転条件を決定する決定部(13)と、
を備える、システム(100)。
【請求項2】
前記運転条件は、運転開始時刻を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記運転条件は、空調機出力及び風量を含む、
請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記躯体の前記部分の前記情報が、
前記躯体の前記部分の蓄熱特性、
前記躯体の前記部分に隣接する空間の内容、
前記躯体の前記部分が有する窓の面積、
前記躯体の前記部分が有する外に面した壁又は窓の向き、
の少なくとも1つを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の空調機の前記1つの予冷運転又は予暖運転時について所定量以上の前記運転データを前記記憶部が取得した場合には、前記決定部は、前記複数の空調機の前記1つの予冷運転又は予暖運転時についての前記運転データに基づいて、前記1つの前記運転条件を決定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建物の躯体の情報を参考にして、空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件を決定するシステム。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許6270996号公報)には、空気調和対象の空間にユーザがいない時間に空調機を制御する不在制御が開示されている。この不在制御は、空気調和対象の空間にユーザが帰ってきた時に快適性を向上させる目的で行われる。不在制御においては、空調機を動作させる時間の長さ、及び、空調機の負荷処理量を決定するために、不在時間の長さ、空気調和対象の空間を持つ建物の躯体性能、及び在室開始時の空調負荷が参照される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献においては、建物の躯体性能について、類似物件との比較によりデータを収集することは観念されていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係るシステムは、空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件を決定するシステムである。システムは、登録部と、記憶部と、決定部と、を備える。登録部は、異なる場所に設置される複数の空調機を、当該場所に相当する建物の躯体の部分の情報に関連づけて登録する。記憶部は、複数の空調機の各々の予冷運転又は予暖運転時の運転データを取得して記憶する。決定部は、複数の空調機の1つに対して、躯体の部分の情報が類似する複数の空調機の他の少なくとも1つを抽出し、記憶部に記憶された他の少なくとも1つの予冷運転又は予暖運転時の運転データに基づいて、1つの運転条件を決定する。
【0005】
この構成によれば、空調機を設置する場合などに、他の空調機の予冷運転又は予暖運転の運転データに基づいて、設置される空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件が決定される。したがって、予冷運転又は予暖運転の運転条件を効果的なものにできる。
【0006】
第2観点に係るシステムは、第1観点に係るシステムにおいて、運転条件は、運転開始時刻を含む。
【0007】
第3観点に係るシステムは、第1観点又は第2観点に係るシステムにおいて、運転条件は、空調機出力及び風量を含む。
【0008】
第4観点に係るシステムは、第1観点から第3観点のいずれか1つに係るシステムにおいて、躯体の部分の情報が、躯体の部分の蓄熱特性、躯体の部分に隣接する空間の内容、躯体の部分が有する窓の面積、躯体の部分が有する外に面した壁又は窓の向き、
の少なくとも1つを含む。
【0009】
第5観点に係るシステムは、第1観点から第4観点のいずれか1つに係るシステムにおいて、複数の空調機の1つの予冷運転又は予暖運転時について所定量以上の運転データを記憶部が取得した場合には、決定部は、複数の空調機の1つの予冷運転又は予暖運転時についての運転データに基づいて、複数の空調機の1つの運転条件を決定する、
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】システム100を示す模式図である。
図2】コンピュータ10を示す模式図である。
図3】空調機20を示す模式図である。
図4】制御部30を示す模式図である。
図5】空調機20Eを新規に設置する場合に行われる処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)全体構成
図1は、空調機の予冷運転又は予暖運転の運転条件を決定するシステム100を示す。システム100は、ネットワークNに接続されたコンピュータ10を有する。システム100は、ネットワークNに接続された複数の空調機20A、20B、20C、20Dを有する。加えて、ネットワークNには、空調機20Eが接続される予定である。
【0012】
空調機20Aは建物51に設置されている。空調機20Bは建物52に設置されている。空調機20Cは建物53の部分53Aに設置されている。空調機20Dは建物53の部分53Bに設置されている。空調機20Eは建物54に設置される予定である。
【0013】
空調機20A、20B、20C、20D、20Eは、不在制御を行うことができる。不在制御とは、空気調和対象の空間にユーザがいない時間に行う空調機20A、20B、20C、20D、20Eの制御である。不在制御において行う冷房運転を予冷運転という。不在制御において行う暖房運転を予暖運転という。
【0014】
(2)詳細構成
(2-1)コンピュータ10
図2はコンピュータ10を示す。コンピュータ10は、専用のプログラムを実行することによって、登録部11、記憶部12、決定部13として機能する。
【0015】
(2-1-1)登録部11
登録部11は、異なる場所に設置される複数の空調機20A~20Eを、当該場所に相当する建物51~54の躯体の部分の情報に関連づけて登録する。具体的には、登録部11では、空調機20Aと建物51の躯体情報が関連付けて登録される。空調機20Bと建物52の躯体情報が関連付けて登録される。空調機20Cと建物53の躯体の部分53Aの情報が関連付けて登録される。空調機20Dと建物53の躯体の部分53Bの情報が関連付けて登録される。空調機20Eと建物54の躯体情報が関連付けて登録される。
【0016】
(2-1-2)記憶部12
記憶部12は、複数の空調機20A~20Dの各々の予冷運転又は予暖運転時の運転データを取得して記憶する。運転データはどのようなフォーマットであってもよい。例えば運転データは、空調機20の圧縮機の回転速度、空調機20のファンの回転速度、空調機20の膨張弁の開度などの情報を含む。
【0017】
(2-1-3)決定部13
決定部13は、設置される予定の空調機20E(以下、「制御対象空調機」という。)に対して、躯体の部分の情報が類似する空調機20A~20Dの1つ(以下、「参照空調機」という。)を抽出する。この例では、建物51の躯体情報が建物54の躯体情報と類似するとする。この時、決定部13は、参照空調機として空調機20Aを抽出する。次いで、抽出された参照空調機(空調機20A)に関する、予冷運転又は予暖運転時の運転データを、決定部13は記憶部12から呼び出す。次いで、呼び出された運転データに基づいて、決定部13は制御対象空調機(空調機20E)の運転条件を決定する。
【0018】
(2-2)空調機20
図1の空調機20A、20B、20C、20D、20Eは、いずれも図3に示す空調機20の構成を有する。空調機20は、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、室外ファン24、膨張弁25、室内熱交換器26、室内ファン27、制御部30を有する。空調機20は、さらに図示しない温度センサ、圧力センサなどを有する。冷房運転の場合には、冷媒は実線の矢印の方向に循環する。暖房運転の場合には、冷媒は破線の矢印の方向に循環する。
【0019】
図3の構成では、1台の室外熱交換器23と1台の室内熱交換器26が接続されている。これに代えて、1台の室外熱交換器23(室外機)に複数の室内熱交換器26(室内機)が接続される構成を採用してもよい。
【0020】
図4は制御部30を示す。制御部30は、例えばマイクロコンピュータからなる。制御部30は、専用のプログラムを実行することによって、圧縮機制御部31、四路切換弁制御部32、室外ファン制御部33、膨張弁制御部34、室内ファン制御部35、温度情報取得部36、不在情報取得部37、躯体情報取得部38、運転データ取得部39、演算部40、通信部41として機能する。
【0021】
圧縮機制御部31は圧縮機21を制御する。四路切換弁制御部32は、四路切換弁22を制御する。室外ファン制御部33は、室外ファン24を制御する。膨張弁制御部34は、膨張弁25を制御する。室内ファン制御部35は、室内ファン27を制御する。
【0022】
温度情報取得部36は、室温、圧縮機21の吸入側又は吐出側の温度、室外熱交換器23の温度、などの温度情報を取得する。不在情報取得部37は、ユーザの不在時間に関する情報を取得する。躯体情報取得部38は、空調機20が取り付けられる建物の躯体の部分についての情報を取得する。躯体の部分についての情報とは、具体的には、躯体の部分の断熱性能、躯体の部分の日射遮蔽性能などである。運転データ取得部39は、参照空調機の運転データをコンピュータ10から取得する。演算部40は、温度情報、不在情報、コンピュータ10が決定した運転条件などに基づいて、予冷運転又は予暖運転の制御パラメータを演算する。通信部41は、ネットワークNを通じて外部と通信を行う。
【0023】
(3)空調機20Eの設置時の処理
図5は、空調機20Eを新規に設置する場合の処理を示すフローチャートである。建物54に新規に設置された空調機20E(S0)は、まず温度情報を取得する(S1)。次いで、空調機20Eは、不在情報の取得を行う(S2)。次いで、空調機20Eは、建物54の躯体情報の取得を行う(S3)。次いで、空調機20Eは、建物54の躯体情報をコンピュータ10に送信する。コンピュータ10の登録部11は、空調機20Eを建物54の躯体情報と関連付けて登録する(S4)。次いで、コンピュータ10の決定部13は、制御対象空調機である空調機20Eの建物54の躯体情報と類似する躯体情報を有する建物51を特定する。なお、この時、建物の躯体の部分(たとえば53A)が選ばれる可能性もある。次いで、決定部13は、建物51に設置されている空調機20Aを参照空調機として抽出する(S5)。次いで、決定部13は、空調機20Aの予冷運転又は予暖運転時の運転データを、決定部13は記憶部12から取得する(S6)。決定部13は、取得した運転データに基づいて、制御対象空調機である空調機20Eの運転条件を決定し、その運転条件を空調機20Eに送信する(S7)。空調機20Eは、その運転条件に従って予冷運転又は予暖運転を行う(S8)。
【0024】
(4)処理の詳細
(4-1)運転条件
S7で決定される運転条件は、典型的には運転開始時刻を含む。換言すれば、空調機20Eが予冷運転又は予暖運転を開始する時刻が、ユーザが空調対象空間に帰ってくる時刻の何時間前か、ということが運転条件に含まれる。
【0025】
運転条件には、運転開始時刻に代えて又は運転開始時刻に加えて、予冷運転又は予暖運転における空調機出力及び風量の少なくとも一方が含まれてもよい。
【0026】
(4-2)躯体情報
建物の躯体の全体又は部分の情報は、具体的には下記の要素の少なくとも1つを含んでいてもよい。
-躯体の全体又は部分の蓄熱特性、
-躯体の全体又は部分に隣接する空間の内容、
-躯体の全体又は部分が有する窓の面積、
-躯体の全体又は部分が有する外に面した壁又は窓の向き。
【0027】
(4-3)運転条件決定のタイミング
決定部13が、参照空調機の運転データに基づいて運転条件を決定するタイミングは、制御対象空調機の予冷運転又は予暖運転時について所定量以上の運転データを記憶部が取得した時であってもよい。
【0028】
(5)特徴
空調機20Eを設置する場合などに、他の空調機20Aの予冷運転又は予暖運転の運転データに基づいて、設置される空調機20Eの予冷運転又は予暖運転の運転条件が決定される。したがって、空調機20Eの予冷運転又は予暖運転の運転条件を効果的なものにできる。
【0029】
(6)変形例
(6-1)
図5のステップS5において、1つの空調機を選択して参照空調機とする代わりに、複数の空調機を選択して、それらの空調機すべてを参照空調機としてもよい。このとき、ステップS6において、複数の参照空調機についての平均的な運転データを算出してもよい。
【0030】
(6-2)
図5のステップS5において、複数の空調機20A~20Dに関して統計的なクラスタリングを行うことにより、参照空調機の選択を行ってもよい。このとき、ステップS6において、当該クラスタに属する複数の参照空調機についての平均的な運転データを算出してもよい。
【0031】
(7)むすび
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0032】
10 :コンピュータ
11 :登録部
12 :記憶部
13 :決定部
20、20A~20E :空調機
30 :制御部
40 :演算部
41 :通信部
51~54 :建物
53A :建物の躯体の部分
53B :建物の躯体の部分
100 :システム
N :ネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【文献】特許6270996号公報
図1
図2
図3
図4
図5