(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】多流路ロータリージョイント
(51)【国際特許分類】
F16L 27/08 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
F16L27/08 Z
(21)【出願番号】P 2019089475
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】西納 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幹合
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 重和
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-158358(JP,A)
【文献】特開2010-189035(JP,A)
【文献】特開2001-219996(JP,A)
【文献】特開2006-151473(JP,A)
【文献】特開平11-082836(JP,A)
【文献】特開2003-095391(JP,A)
【文献】特開2008-265851(JP,A)
【文献】特開平11-277017(JP,A)
【文献】特表2018-520956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側のハウジングに回転体を回転自在に連結するロータリージョイントにおいて、
前記回転体の内部には、液体を流通させる第1液通路が設けられ、前記ハウジングの内周面と前記回転体の外周面との間に前記第1液通路を囲繞するように形成された円環状の第2液通路が設けられ、
前記第2液通路には、液体を導入する少なくとも2つの給液口が設けられ、前記給液口が前記回転体の軸心からオフセットされて形成され、
前記給液口が前記第2液通路に向けて水平から上向に傾斜していることを特徴とする多流路のロータリージョイント。
【請求項2】
前記回転体の外周面の一部を上方に向けてテーパ形状として、前記液通路から導入される液体を上昇させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の多流路のロータリージョイント。
【請求項3】
固定側のハウジングに回転体を回転自在に連結するロータリージョイントにおいて、
前記回転体の内部には、液体を流通させる第1液通路が設けられ、前記ハウジングの内周面と前記回転体の外周面との間に前記第1液通路を囲繞するように形成された円環状の第2液通路が設けられ、
前記第2液通路には、液体を側方から導入す
る2つの給液口が設けられ、前記給液口が前記回転体の軸心から
各々反対側にオフセットされて
180°で回転対称に形成されることを特徴とする多流路のロータリージョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流路を通して固定側から回転側に液体を供給するロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を容器に充填する装置として、回転体の周囲に複数の充填ノズルを設け、回転しながら充填ノズルから容器に液体を充填する回転式充填装置が知られている。また、回転式充填装置としては、回転体の周囲に第1、第2の2系統の充填ノズルを交互に配置し、第1、第2充填液供給源からそれぞれに第1、第2給液管路を通して独立に製品液を供給可能としたものも知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の構成では、回転体の回転軸に沿って第2給液管路が設けられ、これを取り囲むように第1給液管路が同心的に配置される。第1、第2給液管路は、回転体と一体的に回転され、その下端は各充填ノズルへと分岐される。第2給液管路の上端は、第1給液管路の上端よりも上方に延出し、屈曲管が取り付けられた固定部に接続される。第2給液管路の上端は、液密かつ回転自在に固定部に連結され、ロータリジョイントを構成する。また、第1給液管路の上端は、第2給液管路の周囲を取り囲み、側方から直管状の管路が取り付けられた固定部に接続される。第1給液管路の上端は、液密かつ回転自在に固定部に連結され、ロータリジョイントを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、充填装置では、通常定期的に給液管路の洗浄を行う必要がある。給液管路の洗浄では、洗浄対象となる給液管路に洗浄液を流通させ各管路の洗浄が行われる。しかし、例えば特許文献1の第1給液管路は、第2給液管路を取り囲むように設けられ、その上端においてロータリジョイントを構成する固定部には、軸側方から液が管路内へと供給される。そのため第1給液管路には、第2給液管路の周りを回り込む形で洗浄液が供給され、ロータリジョイント内において、供給口とは反対側の上方部分には、十分に洗浄液が行き渡らず、洗浄性に問題が発生し得る。
【0006】
本発明は、複数の流路を備えるロータリージョイントの洗浄性を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明である多流路のロータリージョイントは、固定側のハウジングに回転体を回転自在に連結するロータリージョイントにおいて、前記回転体の内部には、液体を流通させる第1液通路が設けられ、前記ハウジングの内周面と前記回転体の外周面との間に前記第1液通路を囲繞するように形成された円環状の第2液通路が設けられ、前記第2液通路には、液体を導入する少なくとも2つの給液口が設けられ、前記給液口が前記回転体の軸心からオフセットされて形成され、前記給液口が前記第2液通路に向けて水平から上向に傾斜していることを特徴としている。
【0008】
本発明の第2の発明である多流路のロータリージョイントは、第1の発明において、前記回転体の外周面の一部を上方に向けてテーパ形状として、前記液通路から導入される液体を上昇させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
本発明の第3の発明である多流路のロータリージョイントは、固定側のハウジングに回転体を回転自在に連結するロータリージョイントにおいて、前記回転体の内部には、液体を流通させる第1液通路が設けられ、前記ハウジングの内周面と前記回転体の外周面との間に前記第1液通路を囲繞するように形成された円環状の第2液通路が設けられ、前記第2液通路には、液体を側方から導入する2つの給液口が設けられ、前記給液口が前記回転体の軸心から各々反対側にオフセットされて180°で回転対称に形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の流路を備えるロータリージョイントの洗浄性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である多流路ロータリジョイントを備える回転式充填装置の縦断面図である。
【
図2】
図1の多流路ロータリジョイントの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である多流路ロータリジョイントを備える回転式充填装置の縦断面図である。
【0013】
本実施形態の回転式充填装置10は、固定された基台部12にベアリング14を介して回転ホイール16が回転自在に保持される。回転ホイール16は、基台部12に対して垂直軸R周りに回転可能な下部回転ホイール16Aと、下部回転ホイール16Aと回転方向に一体的に構成されるとともに、スプライン機構等を介して上下方向には昇降可能に構成される上部回転ホイール16Bとを備える。上部回転ホイール16Bの頂面の中央には、本実施形態の多流路ロータリジョイント20が取り付けられる。
【0014】
ロータリジョイント20は、上部回転ホイール16Bに取り付けられ、後述するように、上部回転ホイール16Bとともに一体的に回転軸R周りに回転するジョイント回転部(回転体)40と、ジョイント回転部40の一部周囲を覆い、ジョイント回転部40を回転自在にその内側に保持するジョイント固定部(ハウジング)42とを備える。ジョイント固定部42は、固定された状態で保持され、後述するように複数の液供給配管が接続される。
【0015】
下部回転ホイール16Aの下端部には、外周に沿ってギア17が設けられる。ギア17は、基台部12に設置された回転駆動用サーボモータ18に取り付けられた駆動ギア18Aと係合し、回転駆動用サーボモータ18の回転により、下部回転ホイール16A、上部回転ホイール16B、およびロータリジョイント20のジョイント回転部40が一体的に垂直軸R周りに回転される。
【0016】
上部回転ホイール16Bは、上下一対の水平な下部回転板22Aと上部回転板22Bを備える。下部回転板22Aには、その外周に沿って所定の間隔でボトル等の容器Cの首部を保持するネックグリッパ24が配置され、上部回転板22Bには、その外周に沿って、各ネックグリッパ24に対応する位置に、所定の間隔で充填ノズル26が配置される。また、上部回転ホイール16Bは、上部回転ホイール昇降機構28を用いて下部回転ホイール16Aに対して昇降可能であり、これにより、下部回転板22Aと上部回転板22Bとが一体的に昇降可能である。
【0017】
上部回転ホイール昇降機構28は、例えば、上部回転ホイール16Bに取り付けられた昇降用サーボモータ28Aと、ボールネジ機構28Bとから構成される。すなわち、昇降用サーボモータ28Aによって回転するネジと、下部回転ホイール16Aに取り付けられたナットの係合により上部回転ホイール16Bの高さが調整可能である。これにより、ネックグリッパ24に保持される容器Cのサイズに合わせて、容器Cの底面の高さを基準位置に合わせることができる。
【0018】
ネックグリッパ24は、グリッパ開閉機構24Aを介して、下部回転板22Aに保持され、グリッパ開閉機構24Aは図示しない駆動機構により作動される。一方、充填ノズル26は、エアシリンダ等を用いたノズル高さ調整機構26Aを介して上部回転板22Bに支持される昇降板22Cに取り付けられる。すなわち、充填ノズル26の上部回転板22Bに対する高さは、ノズル高さ調整機構26Aにより昇降板22Cを昇降することにより一体的に調整可能である。ノズル高さ調整機構26Aによる充填ノズル26の高さ調整は、容器Cの口部の高さ(長さ)に応じて調整され、これにより充填時の充填ノズル26と容器Cの口部開口との間の間隙が所定距離に調整される。
【0019】
また、各充填ノズル26は、ノズル昇降機構26Bを介して昇降板22Cに取り付けられ、回転ホイール16が一周する間に、容器Cへの液体の充填を行う。
図1の右側には、充填位置まで充填ノズル26が下降された状態が示され、左側には、充填ノズル26がノズル洗浄位置まで上昇された状態が示される。
【0020】
更に、本実施形態では、各充填ノズル26に対応して洗浄カップ30が設けられる。洗浄カップ30は、揺動アーム30Aの先端に設けられ、揺動アーム30Aは、グリッパ開閉機構24Aに隣接して下部回転板22Aに揺動自在に取り付けられる。後述する洗浄作業を行う充填ノズル26では、揺動アーム30Aは、
図1の左側に示されるように洗浄カップ30がノズル洗浄位置にある充填ノズル26の直ぐ下の洗浄位置に移動され、充填ノズル26から吐出される洗浄液は洗浄カップ30により受け止められる。洗浄カップ30に注がれた洗浄液は、排液管30Bを通して排出される。
【0021】
一方、充填作業を行う充填ノズル26では、
図1の右側に示されるように、揺動アーム30Aが水平面内で回動され、洗浄カップ30が充填ノズル26の真下から退避されたカップ退避位置にまで移動される。これにより、充填作業中に充填位置まで下降する充填ノズル26が、洗浄カップ30と干渉することが防止される。
【0022】
各充填ノズル26は、2系統のノズル給液管32A、32Bの一方の一端が接続され、ノズル給液管32A、32Bの他端は、各々上部回転ホイール16Bの頂部に配置され、多流路ロータリジョイント20がその頂面中央に取り付けられる多流路マニホールド34に接続される。本実施形態の多流路マニホールド34には、2系統の第1、第2マニホールド34A、34Bが設けられる。
【0023】
第1、第2マニホールド34A、34Bは上下2段で構成される。第1マニホールド34Aは下段として構成され、回転軸Rを中心に放射状に配置される多数の分岐管36Aを備える。第2マニホールド34Bは上段として構成され、第1マニホールド34Aの上に回転軸Rを中心に放射状に配置される多数の分岐管36Bを備える。本実施形態の回転ホイール16には、例えば偶数の充填ノズル26が設けられ、充填ノズル26は、1つ置きにノズル給液管32A、32Bを介して第1マニホールド34A、第2マニホールド34Bに接続される。なお、
図1において、右側の充填ノズル26はノズル給液管32Bを介して第2マニホールド34Bに接続されており、左側の充填ノズル26はノズル給液管32Aを介して第2マニホールド34Aに接続されている。
【0024】
次に
図1、
図2を参照して、本実施形態の多流路ロータリジョイント20の構成について説明する。
図2は、ロータリジョイント20の拡大縦断面図である。
【0025】
前述したようにロータリジョイント20は、ジョイント回転部40とこれを取り囲むジョイント固定部42を備える。ジョイント回転部40は、多流路マニホールド34の頂部中央に取り付けられ、回転ホイール16および多流路マニホールド34とともに一体的に回転される。
【0026】
ジョイント回転部40は、垂直に延在する第1液通路38を中央に備える中空の中央回転部40Aと、中央回転部40Aの下方部の周囲を円環状に取り囲み、中央回転部40Aとの間に液通路を形成する外殻回転部40Bとを備える。一方、ジョイント固定部42は、中央回転部40Aの上端部を覆い、第1液通路38の上端部を構成する上部固定部42Aと、上部固定部42Aよりも下方、かつ外殻回転部40Bよりも上方の中央回転部40Aの周囲、および外殻回転部40Bの上方部の周囲を覆い、第2液通路44を形成する下部固定部42Bとを備える。中央回転部40Aおよび外殻回転部40Bは、それぞれベアリングおよびシーリング部材を介して上部固定部42A内および下部固定部42B内に回転自在かつ液密的に配置される。
【0027】
また、中央回転部40Aの下端部は、外殻回転部40Bの下端部よりも下方に突出し、多流路マニホールド34内に嵌入されて下段の第1マニホールド34Aに接続される。すなわち、中央回転部40A内に形成されえる第1液通路38は、第1マニホールド34Aに接続される。一方、外殻回転部40Bの下端部は、多流路マニホールド34の頂部に取り付けられる。これにより、中央回転部40Aの周囲に形成された第2液通路44は、上段の第2マニホールド34Bに接続される。
【0028】
外殻回転部40Bの上方において第2液通路44を形成する下部固定部42Bには、側方から複数の給液管48が設けられ、本実施形態では、2本の給液管48が設けられる。給液管48は、各々第2液通路44に連通し、各給液管48からは、同種の液体が2方向から供給される。例えば、第2液通路44に充填液を供給する場合には、全ての給液管48から充填液が供給され、洗浄液を供給する場合には、全ての給液管48から洗浄液が供給される。
【0029】
次に、
図2、
図3を参照して、本実施形態における給液管48と第2液通路44との連結構造について説明する。なお、
図3は、多流路ロータリジョイント20の給液管48が接続される高さでの模式的な水平断面図である。
【0030】
図2に示されるように、給液管48の各軸は第2液通路44に向けて所定の角度で上方に傾けられている。また、給液管48が第2液通路44に連通する高さ周辺において、第2液通路44の内周壁を構成する中央回転部40Aの外周面は、上方に行くに従って外径が細くなるようにテーパ状に形成され(テーパ部)、第2液通路44の幅が拡大される。なお、第2液通路44の外側の内周面は、通路全長に亘って略同じ内径を有する円筒面とされる。また、第2液通路44に設けられたテーパ部は、給液管48から所定高さだけ高い位置まで延出し、第2液通路44の上端を形成する。
【0031】
また、
図3に示されるように、給液管48の軸は、回転軸R(第2液通路44の図心)から各々反対側に所定距離オフセットされる。すなわち、2本の給液管48は、180°で回転対称に配置される。以上の構成により、給液管48の給液口から第2液通路44に吐出された液体は、それぞれ第2液通路44の一方の外周に沿って(図示例では時計回りに回転しながら)上昇し、テーパ部の上端まで勢いよく流れる。給液管48からテーパ部へと供給された液体は、その後第2液通路44に沿って下方へと流通し、下端において放射状に拡散されて第2マニホールド34Bの各分岐管に供給される。なお、第1流通路38を流通する液体は、上方から下方へと流れ落ち、下端において放射状に拡散されて第1マニホールド34Aの各分岐管へと供給される。
【0032】
以上のように、本実施形態では、2以上の給液管を、その軸を回転軸からオフセットして取り付けることで、それぞれの給液管から第2液通路に供給される液体が、一方の外周面に沿って勢いよく中央回転部の裏側にまで回り込めるので、給液管から洗浄液を供給して洗浄を行う際のロータリージョイントの洗浄性が向上する。
【0033】
なお、本実施形態では、給液管を上方に傾けて配置したが、給液管を略水平とし、供給液の旋回流のみで第2液通路の供給部の洗浄を行う構成とすることもできる。
【0034】
また、本実施形態のロータリージョイントでは、2系統を通して液体の供給が可能であったが、第2液通路44の外側に同心的に更に液通路を設けることで3系統以上とすることもできる。
【0035】
更に、本実施形態では、下部固定部42Bに180°回転対称に2本の給液管48が設けられたが、3本の給液管48の軸を回転軸Rからオフセットした形で120°回転対称に配置してもよく、更に多くの給液管48を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 回転式充填装置
20 多流路ロータリージョイント
34 多流路マニホールド
38 第1液通路
40 ジョイント回転部
40A 中央回転部(回転体)
40B 外殻回転部
42 ジョイント固定部(ハウジング)
42A 上部固定部
42B 下部固定部
44 第2液通路
48 給液管
C 容器