(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】トナー及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G03G9/097 372
(21)【出願番号】P 2019131290
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-04-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】金原 広
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-186725(JP,A)
【文献】特開2013-203986(JP,A)
【文献】特開2017-120423(JP,A)
【文献】特開2017-021193(JP,A)
【文献】特開2017-062366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着剤を含むトナー母粒子と、外添剤とを含み、
前記外添剤が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基及び第四級アンモニウム塩基からなる群から選ばれる親水性官能基を有さない疎水性単量体(a)に基づく構成単位と、カルボキシ基含有単量体
(ただし、ヒドロキシ基含有単量体を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)に基づく構成単位とからなり、全構成単位の合計に対する前記疎水性単量体(a)に基づく構成単位の割合が98~99.7質量%、前記単量体(b)に基づく構成単位の割合が0.3~2質量%であり、重量平均分子量が20,000~200,000である共重合体の粒子(A)を含み、
前記粒子(A)の含有量が、前記結着剤100質量部に対して0.3~10質量部である、トナー。
【請求項2】
前記共重合体のガラス転移温度が60~100℃である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナー母粒子の平均粒子径が5.0~15μmである請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
結着剤を含むトナー母粒子に外添剤を添加する、トナーの製造方法であり、
前記外添剤が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基及び第四級アンモニウム塩基からなる群から選ばれる親水性官能基を有さない疎水性単量体(a)に基づく構成単位と、カルボキシ基含有単量体
(ただし、ヒドロキシ基含有単量体を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)に基づく構成単位とからなり、全構成単位の合計に対する前記疎水性単量体(a)に基づく構成単位の割合が98~99.7質量%、前記単量体(b)に基づく構成単位の割合が0.3~2質量%であり、重量平均分子量が20,000~200,000である共重合体の粒子(A)を含み、
前記粒子(A)の含有量が、前記結着剤100質量部に対して0.3~10質量部である、トナーの製造方法。
【請求項5】
前記疎水性単量体(a)と前記単量体(b)とからなる単量体混合物を水、乳化剤及び重合開始剤の存在下で重合して前記粒子(A)を製造する請求項4に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法において静電荷像を現像するトナーは、プリンタ、ファクシミリ、複写機等に使用されている。トナーは、摩擦帯電によって粒子表面に正又は負の電荷を蓄積させて静電荷像の現像(静電荷潜像の可視化)に供される。現像を正確に行うためには、帯電量が適切な値であることが必要となる。
【0003】
トナーとしては、結着剤、着色剤、荷電制御剤等を主成分とする粒子状のもの(トナー母粒子)が広く用いられている。また、トナー母粒子の表面には、トナーの流動性、現像性、帯電性等を補助する目的で、外添剤が付着している場合が多い。外添剤としては、各種の無機粒子や樹脂粒子が使用されている。
【0004】
特許文献1には、摩擦帯電時間の変化による帯電量の変化が抑制されたトナーとして、トナー母粒子と、疎水性単量体に基づく構成単位とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づく構成単位とを含む共重合体からなる樹脂粒子と、を含むトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1のトナーは、帯電性が湿度の影響を受けやすく、摩擦帯電時の湿度によっては、適切な帯電量が得られないことがある。また、低温定着性が充分ではないことがある。
【0007】
本発明は、帯電性が湿度の影響を受けにくく、低温定着性に優れるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトナーは、結着剤を含むトナー母粒子と、
疎水性単量体(a)に基づく構成単位と、カルボキシ基含有単量体及びスルホン酸基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)に基づく構成単位とからなり、全構成単位の合計に対する前記疎水性単量体(a)に基づく構成単位の割合が98~99.7質量%、前記単量体(b)に基づく構成単位の割合が0.3~2質量%であり、重量平均分子量が10,000~200,000である共重合体の粒子(A)と、を含み、
前記粒子(A)の含有量が、前記結着剤100質量部に対して0.3~10質量部である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトナーは、帯電性が湿度の影響を受けにくく、低温定着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「単量体」は、重合性二重結合を有する化合物を意味する。
「構成単位」は、単量体が重合することによって形成された単位(単量体単位)を意味する。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0011】
≪トナー≫
本発明のトナーは、結着剤を含むトナー母粒子と、粒子(A)とを含む。
粒子(A)は、外添剤であり、トナー母粒子の表面に付着している。
本発明のトナーは、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、粒子(A)以外の他の外添剤をさらに含んでもよい。
【0012】
<粒子(A)>
粒子(A)は、疎水性単量体(a)(以下、単に「単量体(a)」ともいう。)に基づく構成単位と、カルボキシ基含有単量体及びスルホン酸基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(b)に基づく構成単位とからなる共重合体の粒子である。
【0013】
単量体(a)は、典型的には、ヒドロキシ基、アニオン性官能基(カルボキシ基、スルホン酸基)、カチオン性官能基(アミノ基、アミド基、第四級アンモニウム塩基等)等の親水性官能基を有さない。
単量体(a)としては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0014】
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-もしくはp-メチルスチレン、o-,m-もしくはp-クロロスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。該アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~8がより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)プロピル等が挙げられる。
脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
単量体(a)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
単量体(b)のうちカルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。スルホン酸基含有単量としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
単量体(b)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
粒子(A)を構成する共重合体中の全構成単位の合計に対する単量体(a)に基づく構成単位の割合は、98~99.7質量%であり、98.5~99.5質量%が好ましい。単量体(a)に基づく構成単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、摩擦帯電時の環境が高湿度の場合でも、適切な帯電量が得られやすい。単量体(a)に基づく構成単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、摩擦帯電時の環境が低湿度の場合でも、適切な帯電量が得られやすい。
【0017】
粒子(A)を構成する共重合体中の全構成単位の合計に対する単量体(b)に基づく構成単位の割合は、0.3~2質量%であり、0.5~1.5質量%が好ましい。単量体(b)に基づく構成単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、摩擦帯電時の環境が低湿度の場合でも、適切な帯電量が得られやすい。単量体(b)に基づく構成単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、摩擦帯電時の環境が高湿度の場合でも、適切な帯電量が得られやすい。
なお、全構成単位の合計に対する、単量体(a)に基づく構成単位と単量体(a)に基づく構成単位との合計の割合は100質量%である。
【0018】
粒子(A)を構成する共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、10,000~200,000であり、20,000~180,000が好ましく、30,000~150,000がより好ましい。Mwが前記範囲の下限値以上であれば、粒子(A)の耐久性が優れる。Mwが前記範囲の上限値以下であれば、トナーの低温定着性が優れる。
共重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0019】
粒子(A)を構成する共重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)は、60℃~100℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。Tgが前記範囲の下限値以上であれば、ブロッキングが起こりにくく、上限値以下であれば、低温定着性がより優れる。
Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
【0020】
粒子(A)の平均粒子径は、20~120nmが好ましく、30~100nmがより好ましい。平均粒子径が前記範囲の上限値以下であれば、粒子(A)がトナー母粒子の表面に密に付着しやすく、粒子(A)による効果が発現しやすい。平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、粒子(A)の耐久性が優れる。
粒子(A)の平均粒子径は、動的光散乱式粒子径測定装置により測定される値である。
【0021】
(粒子(A)の製造方法)
粒子(A)は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とからなり、全単量体の合計に対する単量体(a)の割合が98~99.7質量%、単量体(b)の割合が0.3~2質量%である単量体混合物を、液状媒体の存在下で、生成する共重合体のMwが10,000~200,000となるように重合することにより製造できる。これにより、粒子(A)が液状媒体に分散した分散体が得られる。重合後、必要に応じて、分散体から粒子(A)を回収してもよい。回収方法としては、例えば分散体を乾燥する方法が挙げられる。
【0022】
重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合等の公知の方法を用いることができるが、液状媒体として水を使用できる点、平均粒子径の調整が容易である点等から、乳化重合が好ましい。
乳化重合により粒子(A)を製造する場合、典型的には、液状媒体、乳化剤及び重合開始剤の存在下で単量体混合物を重合する。重合温度は、例えば60~100℃である。
乳化重合の際、乳化剤及び重合開始剤以外に、連鎖移動剤等の、乳化重合に用いられる添加剤として公知の各種の添加剤を用いてもよい。
Mwは、重合開始剤や連鎖移動剤の使用量、重合温度等により調整できる。
【0023】
乳化重合に用いられる乳化剤としては、例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン性乳化剤、アルキルアミン塩、4級アンモニウム塩等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性乳化剤が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上併用してもよい。
乳化剤の使用量は、単量体混合物(重合する単量体の合計)100質量部に対して0.3~8.0質量部が好ましく、0.5~5.0質量部がより好ましい。
【0024】
乳化重合に用いられる重合開始剤(以下、単に「開始剤」ともいう。)としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩基酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)水和物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上併用してもよい。
開始剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して0.05~3.0質量部が好ましく、0.2~2.0質量部がより好ましい。
【0025】
乳化重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えばn-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上併用してもよい。
連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して0.2~5.0質量部が好ましく、0.3~5.0質量部がより好ましい。
【0026】
(粒子(A)の含有量)
本発明のトナーにおいて、粒子(A)の含有量は、トナー母粒子中の結着剤100質量部に対して0.3~10質量部であり、0.5~8.0質量部が好ましく、0.7~6.0質量部がより好ましい。粒子(A)の含有量が前記範囲内であれば、摩擦帯電時の環境が低湿度の場合でも高湿度の場合でも、適切な帯電量が得られやすい。また、粒子(A)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、トナー中の粒子(A)の大部分がトナー母粒子表面に付着するため、トナー母粒子表面に付着していない粒子(A)による複写機等の内部の汚染が生じにくい。
【0027】
<トナー母粒子>
トナー母粒子は、結着剤を含み、典型的には、結着剤と着色剤と荷電制御剤とを含む。トナー母粒子は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。
【0028】
(結着剤)
結着剤としては、例えばスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等の樹脂が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の単独重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体等のスチレン系共重合体等が挙げられる。
【0029】
結着剤として、架橋された樹脂を用いることもできる。
架橋された樹脂としては、例えば前記した樹脂を架橋剤で架橋したものが挙げられる。
架橋剤としては、例えば重合可能な二重結合を2つ以上有する化合物が挙げられる。重合可能な二重結合を2つ以上有する化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート等の二重結合を2つ有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフイド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;3つ以上のビニル基を有する化合物等が挙げられる。これら架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
トナーが加圧定着方式で使用されるものである場合には、結着剤としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチレン、ポリウレタンエラストマー、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、線状飽和ポリエステル、パラフィン等の樹脂を使用することが好ましい。
これら結着剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(着色剤)
着色剤としては特に制限されず、トナーの着色剤として一般的に用いられるものを使用できる。例えばカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG 、ローダミン6G 、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリールメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系染顔料等が挙げられる。これら着色剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
トナー母粒子中の着色剤の含有量は、結着剤100質量部に対して、2.0~10質量部が好ましく、3.0~8.0質量部がより好ましい。
【0033】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、トナーを正荷電トナーとして用いる場合は正荷電制御剤を用い、トナーを負荷電トナーとして用いる場合は負荷電制御剤を用いる。
【0034】
正荷電制御剤としては、トナーを正荷電性に制御できるものであれば特に制限されず、トナー用の正荷電制御剤として一般的に用いられる荷電制御剤を使用できる。例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシンの変性物、四級アンモニウム塩及び四級アンモニウム塩基を含む高分子体、ホスホニウム塩及びホスホニウム塩基を含む高分子体、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズオキサイド、ジオルガノスズボレート等が挙げられる。これら正荷電制御剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
負荷電制御剤としては、トナーを負荷電性に制御できるものであれば特に制限されず、トナー用の負荷電制御剤として一般的に用いられる荷電制御剤を使用できる。例えば、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物等が挙げられる。これら負荷電制御剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
トナー母粒子中の荷電制御剤の含有量は、結着剤100質量部に対して、2.0~15質量部が好ましく、3.0~10質量部がより好ましい。
【0037】
(添加剤)
添加剤としては、例えばステアリン酸亜鉛等の滑剤、酸化セリウム、炭化ケイ素等の研磨剤、酸化アルミニウム等の流動性付与剤、ケーキング防止剤、カーボンブラック、酸化スズ等の導電性付与剤等が挙げられる。
また、熱ロール定着時の離型性を良くするために、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、パラフインワックス等のワックス状物質が含まれていてもよい。ワックス状物質の含有量は、トナー母粒子100質量%中、0.5~5質量%程度が好ましい。
【0038】
トナー母粒子の平均粒子径は、5.0~15μmであることが好ましく、6.0~12μmがより好ましい。
トナー母粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒子径測定装置SALD-3100(島津製作所製)等を用いて測定することができる。
【0039】
<他の外添剤>
他の外添剤としては、例えばシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化錫等の無機酸化物微粒子等が挙げられる。
他の外添剤の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、2.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。
【0040】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーの製造方法としては、粒子(A)がトナー母粒子の表面に付着できる方法であれば特に制限されず、例えば以下の製造方法が挙げられる。
まず、結着剤と、着色剤と、荷電制御剤と、必要に応じて添加剤とを混合し、溶融混練し、冷却固化する。次いで、固化したものを粉砕機で粉砕し、得られた粉砕物を分級し、所定の平均粒子径のトナー母粒子を製造する。次いで、得られたトナー母粒子に粒子(A)と必要に応じて他の外添剤とを添加し、トナーを得る。このとき、粒子(A)は、粒子(A)が液状媒体に分散した分散体の状態で用いられてもよいし、乾燥状態で用いられてもよい。
このようにして得られたトナーには、必要に応じて磁性材料が添加されてもよい。磁性材料が添加されたトナーは、磁性トナーとして用いることができる。
【0041】
<作用効果>
以上説明した本発明のトナーは、特定の共重合体の粒子(A)を結着剤100質量部に対して0.3~10質量部含むので、帯電性が湿度の影響を受けにくく、摩擦帯電時の環境が低湿度の場合でも高湿度の場合でも、適切な帯電量が得られやすい。また、低温定着性に優れる。
特許文献1のトナーは、ヒドロキシ基(OH)含有単量体に基づく構成単位を含む樹脂粒子を用いているため、樹脂粒子の作用でトナーの表面に付着する水の量が湿度の影響で変動しやすく、湿度の影響を受けやすい。粒子(A)を構成する共重合体は、単量体(a)に基づく構成単位と単量体(b)に基づく構成単位とからなるため、OH含有単量体に基づく構成単位を含まない。OH含有単量体に基づく構成単位を含まず、微量の単量体(b)に基づく構成単位を含むことで、トナーの表面に付着する水の量が湿度の影響で変動することが抑制され、帯電性が湿度の影響を受けにくいと考えられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の各例中、「部」は「質量部」を示す。実施例7は参考例である。
【0043】
(製造例1:樹脂粒子(A-1)の製造)
撹拌機、コンデンサ、温度計、窒素導入管を付した4口フラスコにて、イオン交換水1,000部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル0.3部を溶解させた。そこに、単量体(a)としてメチルメタクリレート88.0部及びブチルアクリレート10.5部、単量体(b)としてアクリル酸1.5部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタンの1.0部を混合した単量体混合物の総質量の1/10量を加えて撹拌し、乳化させた。その後、窒素下で80℃まで昇温し、過硫酸アンモニウム0.2部とイオン交換水10部を加え、残りの単量体混合物を1時間かけて滴下した。ついで80℃で3時間反応させた後、85℃まで昇温し、さらに3時間撹拌して共重合体エマルション(a-1)を得た。
この共重合体エマルション(a-1)に含まれる共重合体粒子(A-1)の平均粒子径を動的光散乱式粒子径測定装置FPAR-1000(大塚電子製)で測定したところ、平均粒子径は54nmであった。共重合体粒子(A-1)のMw、Tgを表1に示す。
【0044】
(製造例2~8:樹脂粒子(A-2)~(A-12)の製造)
単量体混合物を構成する単量体(単量体(a)、単量体(b)、OH基含有単量体)、乳化剤、開始剤、連鎖移動剤をそれぞれ表1に記載のとおりに変更した以外は製造例1と同様にして共重合体エマルション(a-2)~(a-12)を得た。この共重合体エマルション中の共重合体粒子(A-2)~(A-12)の平均粒子径、Mw、Tgを表1に示す。
なお、表1には、重合する単量体の全量を100部としたときの各単量体、乳化剤、開始剤、連鎖移動剤それぞれの量(部)を示した。空欄はその成分を用いていないことを示す。
【0045】
(実施例1)
ポリエステル樹脂(DIC製DZ200)100部、負荷電制御剤(藤倉化成製FCA-1001NS)5部、カーボンブラック(三菱化学製MA#100)4部、カルナウバワックス(加藤洋行製)4部を配合した。これにより得た混合物を、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)にて溶融混練し、ジェットミル(日本ニューマチック工業製)にて粉砕し、得られた粉砕物を分級して粒径5~15μmのポリエステルトナー母粒子(B-1)を製造した。このポリエステルトナー母粒子(B-1)113部に共重合体エマルション(a-1)3.0部(固形分換算)を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業製)で処理した後、40℃の熱風乾燥炉で乾燥させたものを再度解砕して負荷電トナーを得た。
【0046】
(実施例2~8、比較例1~4)
ポリエステルトナー母粒子(B-1)に添加する共重合体エマルションの種類を、表2に示す共重合体粒子に対応するものとし、共重合体エマルションの添加量(固形分換算)を、結着剤100部に対する共重合体粒子の含有量(部)が表2に示す値となるようにした以外は、実施例1と同様に処理して負荷電トナーを得た。
【0047】
実施例1~8及び比較例1~4の負荷電トナーについて、恒温恒湿環境下での帯電量及び低温定着性を以下のように評価した。結果を表2に示す。
【0048】
(恒温恒湿環境下での帯電量)
キャリア(パウダーテック社製EF96)100部に対し、負荷電トナー5部を配合し、温度10℃、相対湿度20%の環境(以下、「LL環境」という。)下、又は温度30℃、相対湿度80%の環境(以下、「HH環境」という。)下で、1時間摩擦帯電させた。その後、ブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル製)を用いて帯電量を測定した。LL環境での帯電量を「LL帯電量」、HH環境での帯電量を「HH帯電量」とした。
帯電量が-20μC/g以下であればカブリが生じにくく、-40μC/g以上であれば画像濃度の低下を防止できる。したがって、LL帯電量及びHH帯電量がそれぞれ-20~-40μC/gであれば、環境に左右されず、良好な画像が得られる。
【0049】
(低温定着性)
A4サイズの上質紙上に、マクベス濃度計(GretagMacbeth社製RD-919)を用いて、画像濃度が0.5~0.7程度になるように調整した均一な画像を形成した。定着ロールの温度を適宜変更できるように改造したプリンタを定着機として用いて、上記画像を130℃で定着させた。得られた定着画像に対して、堅牢度試験機を使用して荷重500gで10往復の紙擦り試験を行い、試験前の画像濃度に対する試験後の画像濃度の比率を算出した。この比率が0.90以上であれば、低温定着性に優れると判断できる。
【0050】
【0051】
表1中の略号の意味は以下のとおりである。
MMA:メチルメタクリレート。
BA:n-ブチルアクリレート。
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート。
AA:アクリル酸。
MAA:メタクリル酸。
TBAS:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸。
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート。
DBS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム。
DDPDS:ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム。
PODE:ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル。なお、(12)は、オキシエチレン基(OCH2CH2)の平均繰り返し数が12であることを示す。
KPS:過硫酸カリウム。
APS:過硫酸アンモニウム。
NDM:n-ドデシルメルカプタン。
MSD:α-メチルスチレンダイマー。
【0052】
【0053】
実施例1~8の負電荷トナーは、LL帯電量及びHH帯電量がいずれも-20~-40μC/gであり、帯電性が湿度の影響を受けにくいものであった。また、ID濃度の比率が0.90以上であり、低温定着性にも優れていた。
単量体(a)に基づく構成単位のみからなる共重合体粒子を用いた比較例1のトナーは、LL帯電量が低かった。
単量体(a)に基づく構成単位の割合が98質量%未満、単量体(b)に基づく構成単位の割合が2質量%超の共重合体粒子を用いた比較例2のトナーは、HH帯電量が高かった。
Mwが200,000超の共重合体粒子を用いた比較例3のトナーは、低温定着性が劣っていた。
OH含有単量体に基づく構成単位を含む共重合体粒子を用いた比較例4のトナーは、HH帯電量が高かった。