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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20231130BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231130BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/06
B60N2/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019183264
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059155
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】會田 真也
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-025545(JP,U)
【文献】実開昭62-126143(JP,U)
【文献】特開2017-043123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/06
B60N 2/22
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
シート本体と、
ロアレールと、該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパーレールと、該アッパーレールの移動を規制するロック機構と、を有し、前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、
前記シート本体と前記アッパーレールとを接続する接続部と、該接続部より前記乗物用シートの前方に向かって延出し、側面視で前記ロック機構と上下に重なる位置に設けられる延出部と、を有するベースフレームと、を備え、
前記延出部は、先端が自由端であり、前記シート本体に所定の負荷が掛った場合に、前記ベースフレームが回動して、該延出部の下面の一部と前記ロック機構の上面の一部とが当接するように設けられており、
前記延出部及び前記ロック機構は、前記乗物用シートの幅方向の前記ベースフレームの移動を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記延出部の下面に形成された挿通孔と、上方に突出して前記挿通孔に挿通するように前記ロック機構に設けられた突出部と、から構成されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記所定の負荷が掛っていない場合には、前記延出部の下面の一部と前記ロック機構の上面の一部との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記突出部が挿通される前記挿通孔は、前後方向に複数形成されていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記挿通孔の内壁面と前記突出部の側部との間に隙間が形成されていて、前記所定の負荷が掛った場合に、前記突出部の側部と前記挿通孔の内壁面とが当接することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記接続部と前記延出部との間に前記ロック機構を避けるよう切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記ベースフレームは、前記乗物用シートの幅方向外側に向かって膨出し前後方向に延びるよう形成された膨出部を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ベースフレームは外周端部にフランジ部を有し、前記延出部は前記乗物用シートの幅方向内側に開口する断面U字状に形成されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記ベースフレームの前記接続部において、前記シート本体を回動させるリクライニング機構と、
前記ベースフレームの反対側の位置において、前記シート本体と前記アッパーレールとを接続するリアブラケットと、
前記リクライニング機構を挟む前後の位置において、前記ベースフレームと前記リアブラケットとを連結する2本の連結部材とを有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、衝突時の変位が抑制される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にチャイルドシートを取り付ける機構として、ISOFIXという国際標準規格により定められた機構がある。例えば、特許文献1に記載されるように、ISOFIXの機構においては、座席に設けられたロアアンカと呼ばれる取付金具にチャイルドシートのコネクタを接続して、チャイルドシートをシートに固定するようになっている。
【0003】
特許文献1に記載される従来技術では、チャイルドシートの下部を係止用アームでシートに取付けている。例えば、図示されていないが、ロアアンカはシートクッションフレームの左右に架け渡されたパイプに取り付けられたU字状の取付金具として構成されている。シートバックにチャイルドシートを取付け、テザーアンカをシートバック背面に係合することにより、チャイルドシートとシートバックとが一体的に固定されるようになる。ロアアンカはチャイルドシートの固定部としてのみ機能していて、シートフレームの剛性の確保や変形に対する対策は、別途シートフレームの機構や材料により実現する必要がある。
【0004】
テザーアンカを用いてチャイルドシートをシートバックに一体的に取付けた状態で、前面衝突等に伴い前方から過大な衝撃荷重が入力されると、チャイルドシート及びシートクッションに作用する慣性力により、チャイルドシート及びシートクッションを前方に移動させようとする力が生じる。そのため、チャイルドシートと一体的に固定されたシートバックに負荷がかかり、シートバックが前方向に傾斜して大きく変位する場合があった。
【0005】
特許文献2には、前面衝突時に作用する力によるシートクッションの離脱を防止するための構造が開示されている。具体的には、支持フレームの後部に立設された一対のブラケットの後方側にある係合孔の周縁部が、案内フックの係止面によって確実に係止され、衝突時に前方移動するシートクッションが案内フックにより係止されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5248093号公報
【文献】特許第6544636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された発明では、シートクッションの前方移動は案内フックにより係止されるものの、シートバックにかかる負荷は軽減されないため、衝突時にシートバックが前方向に傾斜して大きく変位する可能性があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝突時の過大な荷重による変位が抑制される乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、乗物用シートであって、シート本体と、ロアレールと、該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパーレールと、該アッパーレールの移動を規制するロック機構と、を有し、前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、前記シート本体と前記アッパーレールとを接続する接続部と、該接続部より前記乗物用シートの前方に向かって延出し、側面視で前記ロック機構と上下に重なる位置に設けられる延出部と、を有するベースフレームと、を備え、前記延出部は、先端が自由端であり、前記シート本体に所定の負荷が掛った場合に、前記ベースフレームが回動して、該延出部の下面の一部と前記ロック機構の上面の一部とが当接するように設けられており、前記延出部及び前記ロック機構は、前記乗物用シートの幅方向の前記ベースフレームの移動を規制する規制部を有し、前記規制部は、前記延出部の下面に形成された挿通孔と、上方に突出して前記挿通孔に挿通するように前記ロック機構に設けられた突出部と、から構成されること、により解決される。
【0010】
上記の乗物用シートによれば、ベースフレームが、その接続部から前方に向かって延出する延出部を備え、延出部は、延出部の下面の一部とレール用部材の上面との一部とが少なくとも所定の負荷が掛った場合に当接するように設けられている。それによりベースフレームの回動が抑制され、ベースフレームと接続するシート本体の変位も抑制される。
また、規制部により、ベースフレームの幅方向の移動が規制されるため、確実にベースフレームによりシート本体が支持されるようになり、シート本体の変位を抑制できる。
また、上記の構成により、幅方向のベースフレームの変位が抑制される。
また、上記の構成により、突出部がロック機構に設けられることで、新たに部材を追加することなく突出部を設けることができ、効率的に幅方向の変位を抑制することができる。
また、上記の構成により、コンパクトな配置で変位を抑制できる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記所定の負荷が掛っていない場合には、前記延出部の下面の一部と前記レール用部材の上面の一部との間に隙間が設けられているとよい。
上記の構成により、延出部とレール用部材との接触による異音の発生を抑制することができる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記突出部が挿通される前記挿通孔は、前後方向に複数形成されているとよい。
挿通孔が前後方向に複数形成されることで、効率的に幅方向の変位を抑制することができる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記挿通孔の内壁面と前記突出部の側部との間に隙間が形成されていて、前記所定の負荷が掛った場合に、前記突出部の側部と前記挿通孔の内壁面とが当接するとよい。
上記の構成により、幅方向の変位量を抑制すると共に、所定の負荷が掛っていない場合に異音の発生を抑制することができる。
【0017】
上記の乗物用シートにおいて、前記接続部と前記延出部との間に前記ロック機構を避けるよう切欠きが形成されているとよい。
上記の構成により、ベースフレームとロック機構との干渉が排除され、延出部をコンパクトに配置することができる。
【0018】
上記の乗物用シートにおいて、前記ベースフレームは、前記乗物用シートの幅方向外側に向かって膨出し前後方向に延びるよう形成された膨出部を有するとよい。
上記の構成により、ベースフレームの剛性が向上する。
【0019】
上記の乗物用シートにおいて、前記ベースフレームは外周端部にフランジ部を有し、前記延出部は前記乗物用シートの幅方向内側に開口する断面U字状に形成されるとよい。
上記の構成により、バックフレームの剛性が向上すると共に、延出部の剛性が向上する。
【0020】
上記の乗物用シートにおいて、前記ベースフレームの前記接続部において、前記シート本体を回動させるリクライニング機構と、前記ベースフレームの反対側の位置において、前記シート本体と前記アッパーレールとを接続するリアブラケットと、前記リクライニング機構を挟む前後の位置において、前記ベースフレームと前記リアブラケットとを連結する2本の連結部材とを有するとよい。
上記の構成により、ベースフレームの剛性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の乗物用シートによれば、ベースフレームが、その接続部から前方に向かって延出する延出部を備え、延出部は、延出部の下面の一部とレール用部材の上面との一部とが少なくとも所定の負荷が掛った場合に当接するように設けられている。それによりベースフレームの回動が抑制され、ベースフレームと接続するシート本体の変位も抑制される。また、規制部により、ベースフレームの幅方向の移動が規制されるため、確実にベースフレームによりシート本体が支持されるようになり、シート本体の変位を抑制できる。
また、本発明の乗物用シートによれば、延出部とレール用部材との接触による異音の発生を抑制することができる。
また、本発明の乗物用シートによれば、幅方向のベースフレームの変位が抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、挿通孔が前後方向に複数形成されることで、効率的に幅方向の変位を抑制することができる。
また、本発明の乗物用シートによれば、幅方向の変位量を抑制すると共に、所定の負荷が掛っていない場合に異音の発生を抑制することができる。
また、本発明の乗物用シートによれば、突出部がロック機構に設けられることで、新たに部材を追加することなく突出部を設けることができ、効率的に幅方向の変位を抑制することができる。
また、延出部が側面視でロック機構と上下に重なる位置に空間をあけて支持されることで、よりコンパクトな配置で変位を抑制できる。
また、接続部と延出部との間に、ロック機構を避けるよう切欠きが形成されていることにより、ベースフレームとロック機構との干渉が排除され、延出部をコンパクトに配置することができる。
また、ベースフレームが膨出部を有することにより、ベースフレームの剛性が向上する。
また、ベースフレームが外周端部にフランジ部を有し、延出部が幅方向内側に開口する断面U字状に形成されることで、ベースフレームの剛性が向上すると共に、延出部の剛性も向上する。
また、リクライニング機構を挟む前後の位置において、ベースフレームとリアブラケットとを連結する2本の連結部材とを有することで、ベースフレームの剛性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す斜視図である。
図2】車両用シートが備えるシートフレームの斜視図である。
図3】車両用シートの側面図である。
図4図3の部分Aを示す拡大図である。
図5】過大な負荷が掛った場合の車両用シートの状態を示す模式図である。
図6】ベースフレームとスライドレールとの連結状況を示す、図1のX方向から見た斜視図である。
図7】ベースフレームを構成するレールブラケットの斜視図である。
図8図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図6のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図6のX-X線に沿った断面図である。
図11】突出部の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0024】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0025】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向(換言すると、シート本体の前後方向)であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向(換言すると、シート本体の幅方向)であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0026】
また、シート幅方向の「車外側」とは、車体の外側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアに近い側)を意味し、「車内側」とは、車体の内側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアから離れている側)を意味している。
また、以下の説明中、「回動」は、特に断る場合を除き、シート幅方向に沿う軸を中心とした回動動作を意味する。
【0027】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0028】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、車両用シートSの斜視図である。図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、トリムカバーTを外した構成にて図示している。
【0029】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の後部座席に相当するリアシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、前席シートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0030】
車両用シートSは、図1に示すように、その本体部分をなすシート本体Shを有する。シート本体Shは、図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とは後述するリクライニング機構19を挟み込むように連結されている。シートバック1は、後述のベースフレーム12を介して、車体フロアに対して回動可能な状態で取り付けられている。
【0031】
車両用シートSの中には、図2に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1のフレームであるシートバックフレーム10と、シートクッション2のフレームであるシートクッションフレーム20と、ベースフレーム12と、から構成されている。ベースフレーム12は、シートバックフレーム10のバックサイドフレーム11の下端とリクライニング機構19を介して接続されている。
【0032】
シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20の外側には、パッド部材P及びトリムカバーTが設けられることで、シートバック1及びシートクッション2が構成されている。パッド部材Pは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、トリムカバーTは、例えばクロスや革等の素材からなる。
【0033】
また、シートクッション2は、その後端部がシートバック1の側部に連結されている。なお、シートクッション2の後端部とシートバック1の下端部との間には、図1図2に示すように後述のクッションサイドフレーム21が介在している。このクッションサイドフレーム21は、シートバック1に対して回動可能な状態で取り付けられている。これにより、シートクッション2はシートバック1と共に回動することが可能である。
【0034】
また、シート本体Shの下部には、後述のスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、シート本体Shは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられている。
【0035】
また、シート本体Shは、その前方に形成された収納フロアに折り畳んだ状態で収納することが可能である。収納フロアは、車体フロアの一部(具体的には、車体フロア中、シート本体Shが着座状態にあるときにシート本体Shの前方に位置する部分)を下方に窪ませることで形成された凹型スペースである。
【0036】
図2に示すように、シートフレームFは、シートフレームFにおける背もたれ部分の骨格をなすシートバックフレーム10と、シートフレームFにおける着座部分の骨格をなすシートクッションフレーム20と、を主たる構成要素とする。
シートバックフレーム10は、主に、方形枠状に加工されたパイプからなるパイプフレーム18と、バックパネル22と、バックサイドフレーム11と、を備える。
【0037】
バックサイドフレーム11は、パイプフレーム18の左右の側部にそれぞれ取り付けられた、上下方向に延出するフレームである。換言すれば、バックサイドフレーム11は、パイプフレーム18のシート外側に配置され、パイプフレーム18の側部と共にシートバックフレーム10の左右端部を構成するフレームである。バックサイドフレーム11は、断面がシート内側に向けて開口したUの字状の板状フレームである。バックサイドフレーム11は、上部がパイプフレーム18の側部の中央部に溶接されており、後述するベースフレーム12に対して回動可能に取り付けられている。
【0038】
ベースフレーム12は、その上部においてバックサイドフレーム11に、リクライニング機構19を介して接続されている。また、ベースフレーム12は、その下部においてスライドレール4のアッパーレール6とボルト締結されている(図3及び図4参照)。
【0039】
スライドレール4は、前後方向に沿ってシート本体Shをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロア上に固定されるロアレール5、及びロアレール5に対してスライド移動可能なアッパーレール6を、それぞれ一対備えている(図1及び図2参照)。車体に固定されたロアレール5に対してアッパーレール6が摺動可能となっている。そして、シートバックフレーム10が、ベースフレーム12を介してアッパーレール6に取り付けられ、シートバックフレーム10はアッパーレール6と一体にロアレール5に対して前後することが可能となっている。したがって、アッパーレール6に取付けられたシート本体Shが、アッパーレール6のスライド移動に伴って前後移動する。
【0040】
図6に示すように、スライドレール4は、アッパーレール6のスライド移動をロックするロック装置30(ロック機構の一例)と、ロック装置30のロックを解除する不図示のケーブルとを備える。ロック装置30には、ロックブラケット31とケーブルを保持するケーブルブラケット32が設けられている。
【0041】
アッパーレール6は、通常時、ロック装置30によってスライド移動不能な状態でロックされており、乗員が所定の操作を行うと、ロック解除されてスライド移動可能な状態となる。より具体的に説明すると、不図示の操作部材が、ケーブルを介してロック装置30に接続されている。ロック装置30については、アッパーレール6をロックするための一般的な機器が利用可能であるため、詳細な説明を省略することとする。そして、操作部材が操作されると、ケーブルが牽引される結果、ロック装置30がアッパーレール6のロックを解除するように動作する。
【0042】
<ベースフレーム>
図4図6を用いて、ベースフレーム12について詳細に説明する。ベースフレーム12は、上述のように、バックサイドフレーム11の下部とアッパーレール6とを接続する部材である。ベースフレーム12は、アッパーレール6に接続するレールブラケット13と、バックサイドフレーム11に接続する連結ブラケット14とから構成される。レールブラケット13と連結ブラケット14とは、図4に示すように三本のボルト17により締結され一体となっている。
【0043】
レールブラケット13は、アッパーレール6と接続する接続部15として機能するブラケット本体13aと、ブラケット本体13aより車両用シートSの前方に向かって延出する延出部13bとを有する。レールブラケット13のブラケット本体13aと連結ブラケット14とにより、シート本体Shとアッパーレール6とを接続する接続部15が構成されている。
【0044】
本実施形態の車両用シートSでは、レールブラケット13の延出部13bの下面13eと、アッパーレール6を構成するレール用部材であるロックブラケット31及びケーブルブラケット32の上面(図9に示す端面31b、32b)とが隙間Lをあけて設けられている。隙間Lの大きさは1.5mm程度であり、レールブラケット13の肉厚J(約2.6mm)よりも狭い。所定の負荷が掛った場合に、レールブラケット13が回動して延出部13bの下面13eとロックブラケット31及びケーブルブラケット32の端面31b、32bが当接するようになっている。
延出部13bの下面13eと、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32の端面31b、32bとは、負荷が掛っていない通常時において当接するよう設けられてもよい。
【0045】
図3に示すように、近年では車両用シートSにチャイルドシート40が、ISOFIXの機構であるロアアンカ41(図2参照)とテザーアンカ42(図2参照)により固定されるようになった。チャイルドシート40は、シートバック1に直接固定されることから、衝突等により前方から過大な衝撃荷重を入力されると、チャイルドシートが慣性力により前方(矢印C方向)に移動し、それに引かれてシートバック1が矢印B方向に傾斜する。また、衝突等による過大な負荷がシートバック1に掛ると、アッパーレール6が浮き上がるように前側方向に変位する。このとき、バックサイドフレーム11と接続したベースフレーム12の延出部13bが、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32の端面31b、32bに当接することでB方向に回動しないよう支持し、シートバックフレーム10の変位を抑制することができる。それにより、シート本体Shの変位も抑制される。
【0046】
また、延出部13bと、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32には、幅方向外側(図6の矢印D方向)へのベースフレーム12の移動を規制する規制部7が設けられている。本実施形態では、図6及び図8に示すように、規制部7は、延出部13bに形成された挿通孔13dと、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32に設けられた突出部31a、32aとにより構成され、突出部31a、32aが挿通孔13dに挿通されることにより幅方向の移動を規制している。本実施形態では、突出部31a、32aは、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32の端部をL字状に折り曲げることにより形成される。
【0047】
上述したように、衝突時に所定の負荷が掛った場合、延出部13bとロックブラケット31及びケーブルブラケット32の端面31b、32bとが当接することで、ベースフレーム12の回動を止め、シートバックフレーム10が変位しないよう延出部13bが支持する。そのとき、延出部13bが当接した状態で、レールブラケット13が幅方向外側に変形しようとする。図6図8図10に示す突出部31a、32aの側面が、挿通孔13dの内壁面に当接することで、延出部13bの幅方向外側への移動を止めることがでる。それにより、レールブラケット13の幅方向外側への変位を抑制することができる。
【0048】
延出部13bの下面13eと、ロックブラケット31の上面31cとは略平行な対向面になっており、下面13eと、ロックブラケット31の上面31cとの間に空間が設けられている。また、本実施形態では、延出部13bの下面13eとロックブラケット31の端面31bとの間に隙間Lがあることで、異音の発生が抑制されている。
【0049】
本実施形態では、延出部13bに、突出部31a、32aが挿通される挿通孔13dが二か所、前後方向に形成されている。挿通孔13dの位置に合わせて複数の突出部31a,32aがロックブラケット31とケーブルブラケット32に設けられる。挿通孔13dが前後方向に形成されることで、効率的に幅方向の変位を抑制することができる。
また、本実施形態では、ロックブラケット31の端部とケーブルブラケット32の端部をL字状に折り曲げることで突出部31a、32aを設けている。二つの部材で形成することで突出部の強度が向上する。強度が不足しない場合は、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32のうちいずれか一方で突出部31a、32aを形成してもよい。
【0050】
図8に示すように挿通孔13dの内壁面と、突出部31a、32aとの間には隙間Kが形成されている。所定の負荷が掛った場合に、下面13eと端面31b、32bとが当接した後、突出部31a、32aが挿通孔13dの内壁面と当接して、レールブラケット13の幅方向外側への移動を阻止する。隙間Kがあることで、異音の発生を抑制すると共に、突出部31a、32aを挿通孔13dに挿通させる組み付けが容易になる。
【0051】
図6に示すように、ベースフレーム12の接続部15(ブラケット本体13a)は、アッパーレール6の後方部にボルトで固定されている。また、図4に示すように、レールブラケット13の延出部13bは、側面視(車両用シートSを左から見た図)でロック装置30と上下に重なる位置に、空間(隙間M)をあけて設けられている。このように構成することで、よりコンパクトな配置とすることができる。
【0052】
また、図6及び図7に示すように、レールブラケット13には、ブラケット本体13aと延出部13bとの間に、ロック装置30を避けるよう切欠き13fが形成されている。切欠き13fがこのように形成されることにより、レールブラケット13とロック装置30との干渉が排除され、延出部13bをよりコンパクトに配置することができる。
【0053】
レールブラケット13には、図4図8図10に示すように、膨出部13cが幅方向外側に向かって膨出し、前後方向に延びるよう形成されている。膨出部13cをレールブラケット13に設けることにより、レールブラケット13の剛性が向上する。
【0054】
また、図6に示すように、ベースフレーム12を構成するレールブラケット13及び連結ブラケット14の外周端部にはフランジ部13h、14aが形成されている。フランジ部13h、14aが形成されることにより、ベースフレーム12の剛性が向上する。また、図9に示すように、レールブラケット13の延出部13bの外周端部にも、フランジ部13hが形成されることで、車両用シートSの幅方向内側に開口する断面U字状に形成される。断面がU字状に形成されることにより、延出部13bの剛性が向上してシートバックフレーム10の変位がより抑制されるようになる。
【0055】
また、図7に示すように、レールブラケット13の延出部13bの側面部には、ボルト孔13g及び連結パイプ用孔13j以外に、複数の貫通孔13i、13kが形成されている。特に、ブラケット本体13aの側面部において、複数のボルト孔13gの間に貫通孔13iが形成されている。側面部に貫通孔13i、13kが形成されることにより、レールブラケット13の軽量化が図られる。
【0056】
また、図2に示すように、ベースフレーム12の反対側の位置に、シートバックフレーム10の下部(バックサイドフレーム11)とアッパーレール6とを接続するリアブラケット23が設けられている。リクライニング機構19を挟む前後の位置において、ベースフレーム12のレールブラケット13と、リアブラケット23とは、2本の連結パイプ16(連結部材)により連結されている。2本の連結パイプ16により連結することで、シートバックフレーム10の剛性が向上する。
なお、連結ブラケット14とレールブラケット13とは、2本の連結パイプ16のうち、前側に位置する連結パイプ16よりもさらに前側の位置で、ボルト17により締結されている。
【0057】
図11を用いて規制部7の別例(規制部71)について説明する。図6図8図10に示す規制部7は、延出部13bに形成された挿通孔13dに、ロックブラケット31及びケーブルブラケット32に形成された突出部31a、32aを挿通することにより構成されていた。図11に示す規制部71は、延出部13bに形成された挿通孔13dは図6に示すものと同様であるが、突出部が異なっている。規制部71では、突出部としてケーブルブラケット32の端部に立設する棒状部材32cが設けられている。棒状部材32cの少なくとも先端部分がねじ切りされており先端部分にナット32dが設けられている。ナット32dにより、延出部13bが上方向に変位し棒状部材32cから外れることを抑止する。棒状部材32cの突出量が十分に長い場合はナット32dを設けなくてもよい。
また、ロックブラケット31の端部はL字状に折り曲げられていて、所定の負荷が掛った場合、ロックブラケット31の端部31dが延出部13bの下面13eと当接する。
【0058】
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。なお、本実施形態では、規制部7として延出部13bに挿通孔13dを形成しロックブラケット31及びケーブルブラケット32に突出部31a、32aを設けていたがこれは一例である。規制部として延出部13bに下方に突出する突出部を形成し、ロックブラケット31及び/又はケーブルブラケット32に挿通孔を形成してもかまわない。
【符号の説明】
【0059】
S 車両用シート(乗物用シート)
Sh シート本体
T トリムカバー
P パッド部材
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
5 ロアレール
6 アッパーレール
7、71 規制部
F シートフレーム
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 ベースフレーム
13 レールブラケット
13a ブラケット本体
13b 延出部
13c 膨出部
13d 挿通孔
13e 下面
13f 切欠き
13g ボルト孔
13h フランジ部
13i、13k 貫通孔
13j 連結パイプ用孔
14 連結ブラケット
14a フランジ部
15 接続部
16 連結パイプ
17 ボルト
18 パイプフレーム
19 リクライニング機構
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 バックパネル
23 リアブラケット
30 ロック装置(ロック機構)
31 ロックブラケット(レール用部材)
31a 突出部
31b、31d 端面(上面の一部)
31c 上面
32 ケーブルブラケット(レール用部材)
32a 突出部
32b 端面(上面の一部)
32c 棒状部材
32d ナット
40 チャイルドシート
41 ロアアンカ
42 テザーアンカ
K、L、M 隙間
J 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11