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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】カップ部付き衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/00 20060101AFI20231130BHJP
   A41C 3/12 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A41C3/00 Z
A41C3/12 D
A41C3/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020011147
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116496
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 由美
(72)【発明者】
【氏名】南口 奈津子
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168875(WO,A1)
【文献】特開2016-186142(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C3/00-3/14
A41B9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胸部を覆う胸部被覆部と、前記着用者の背中の一部を覆うバック部と、前記バック部と前記胸部被覆部とに連続するストラップ部であって前記胸部被覆部の左右の上部に連続する左右一対の前ストラップ部を含む前記ストラップ部と、を有する本体部と、
前記胸部被覆部の裏面側に配置され、前記胸部被覆部から遊離する左右一対のカップ部と、
前記胸部被覆部の下辺に連結されると共に前記左右一対のカップ部のそれぞれの下辺に連結されるカップ支持部と、
前記前ストラップ部の裏面側に配置され、前記前ストラップ部と前記カップ部の上辺とにそれぞれ連結される左右一対の接続部材と、を備え、
前記接続部材は、下縁部と、前中心側の側辺とを有し、
前記接続部材の前記下縁部は、前記カップ部の前記上辺に連結されており、少なくとも、前記カップ部の前記上辺の脇側端から、前記カップ部の前記上辺の長さの半分である上辺中央を超えて延在しており、
前記下縁部と前記前中心側の側辺との交差部である前記下縁部の前中心側の端部は、前記上辺中央と前記上辺の中心側端との間に位置している、カップ部付き衣類。
【請求項2】
前記接続部材の前記下縁部は、前記上辺の前記脇側端を超えて前記本体部の側縁部にまで延在している、請求項1に記載のカップ部付き衣類。
【請求項3】
前記接続部材の脇側の側辺は、前記本体部の側縁部に連結されている、請求項1または2に記載のカップ部付き衣類。
【請求項4】
前記接続部材の前記前中心側の側辺は、前記本体部の内縁部に連結された上部と、当該内縁部から遊離した下部とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のカップ部付き衣類。
【請求項5】
前記胸部被覆部の裏面側であって前記胸部被覆部の上部に相当する位置に配置され、少なくとも前記本体部の左右の側縁部に連結されたバスト上部押さえ布を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のカップ部付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のカップを有するブラジャー等の上衣が知られている。たとえば特許文献1に記載された上衣では、伸縮性を有する生地からなる前身頃に、横方向に並ぶ一対のカップが設けられている。前身頃の両脇には後身頃が連結され、前身頃と後身頃とが環状に形成されている。前身頃の裏面には、伸縮性を有する、前身頃とほぼ同じ形状の裏布が縫い合わされており、前身頃と裏布とが2重構造となっている。裏布には、横方向に並んで2個の開口部が設けられており、開口部20には、乳房(バスト)を覆うカップが縫い合わせられている。裏布は、前身頃に重ねられて、前身頃の下端部に取り付けられたゴムベルトと、前身頃の袖ぐりに取り付けられたテープとに縫い付けられている。
【0003】
特許文献1に記載された上衣において、前身頃と裏布には、アルカリ減量加工により伸長応力が低下させられた低緊締部と、低緊締部よりも高い伸長応力を有する高緊締部とがそれぞれ設けられている。前身頃においては、カップに重ねられた部分である伸展部は、低緊締部からなる。伸展部の下側の側縁部の脇側部分に、高緊締部からなるカップ支持部が形成されている。また、裏布においては、一対のカップの側縁部の下側に沿って、高緊締部からなる別のカップ支持部が形成されている。これらのカップ支持部は、カップを横方向にホールドする。また、一対のカップの上側の側縁部の中心より少し脇側に位置する部分には、高緊締部からなる引き上げ部が形成されている。この引き上げ部は、カップを上方にホールドする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-19422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された下衣によれば、カップが、引き上げ部で引き上げられているため、運動による乳房(バスト)の上下方向の揺れを防ぐことができる。また、裏布に形成されたカップ支持部でアンダー側を止めることができ、下側の揺れと、中心側斜め下方向への揺れも抑制することができる。また、前身頃と裏布にそれぞれ形成されたカップ支持部の各端部が、カップの脇の斜め下方に向かって脇後側まで止めることで、脇側の揺れを抑制することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された下衣では、前身頃と裏布にそれぞれ形成されたカップ支持部は、その端部があらゆる方向及び位置に延出している。たとえば、前身頃に形成されたカップ支持部の上端部は、細い幅で延出し、襟ぐりの途中の鎖骨付近に達している。このように、前身頃と裏布のそれぞれに、カップをホールドし、バストの揺れを抑制するためのあらゆるパーツが配設されているため、揺れの防止の観点では対策が施されているものの、着用感が損なわれるおそれがある。
【0007】
本発明は、運動時等におけるバストの揺れを縦方向および横方向において抑えることができると共に、着用感にも優れたカップ部付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るカップ部付き衣類は、着用者の胸部を覆う胸部被覆部と、前記着用者の背中の一部を覆うバック部と、前記バック部と前記胸部被覆部とに連続するストラップ部であって前記胸部被覆部の左右の上部に連続する左右一対の前ストラップ部を含む前記ストラップ部と、を有する本体部と、
前記胸部被覆部の裏面側に配置され、前記胸部被覆部から遊離する左右一対のカップ部と、
前記胸部被覆部の下辺に連結されると共に前記左右一対のカップ部のそれぞれの下辺に連結されるカップ支持部と、
前記前ストラップ部の裏面側に配置され、前記前ストラップ部と前記カップ部の上辺とにそれぞれ連結される左右一対の接続部材と、を備え、
前記接続部材は、下縁部と、前中心側の側辺とを有し、
前記接続部材の前記下縁部は、前記カップ部の前記上辺に連結されており、少なくとも、前記カップ部の前記上辺の脇側端から、前記カップ部の前記上辺の長さの半分である上辺中央を超えて延在しており、
前記下縁部と前記前中心側の側辺との交差部である前記下縁部の前中心側の端部は、前記上辺中央と前記上辺の中心側端との間に位置している。
【0009】
このカップ部付き衣類によれば、着用者の左右のバストが、一対のカップ部によってそれぞれ覆われる。これらのカップ部の下辺は、カップ支持部によって支持され、カップ支持部を介して本体部の胸部被覆部に連結される。一対のカップ部は胸部被覆部から遊離しており、それぞれが独立して動くことができる。このような独立性により、カップ部付き衣類を着用する着用者にとって、楽なつけ心地が実現されており、着用感に優れる。一方、前ストラップ部に連結された接続部材が、カップ部の上辺に連結される。前ストラップ部からカップ部を吊る構造により、カップ部付き衣類は、運動時等におけるバストの縦方向の揺れを抑えることができる。接続部材の下縁部のカップ連結部は、カップ部の上辺の脇側端から、上辺中央を超えて上辺の前中心側にまで延在しているため、カップ部の横方向の動きに対しても支持効果を発揮する。したがって、上記した縦方向の揺れのみならず、運動時等におけるバストの横方向の揺れをも抑えることができる。カップ連結部が形成される特定の範囲によれば、上述した着用感を損なうこともない。
【0010】
接続部材の下縁部は、上辺の脇側端を超えて本体部の側縁部にまで延在していてもよい。カップ部の上辺の脇側端は、通常、本体部の側縁部にまでは達しておらず、脇側端と側縁部との間には所定の距離が存在する。上記の構成によれば、接続部材の下縁部が、カップ部の上辺の脇側端を超えて本体部の側縁部にまで延在しているため、接続部材を介して、カップ部が本体部によって支持される。このように、より本体部の側縁部に至る広い範囲にカップ連結部が設けられるため、運動時等におけるバストの横方向の揺れを一層好適に抑えることができる。
【0011】
接続部材の脇側の側辺は、本体部の側縁部に連結されていてもよい。接続部材の下縁部のみならず、脇側の側辺が本体部の側縁部に連結されるので、接続部材の支持の基となる連結領域の範囲が広く、また連結領域が延在する向きが付加される。この構成により、カップ部を安定させることができるため、運動時等におけるバストのあらゆる複雑な動き(たとえば縦方向成分と横方向成分が複雑に合成された動きであって、かつ時間とともに変化するような動き)に対しても、揺れを確実に抑えることができる。
【0012】
接続部材の前中心側の側辺は、本体部の前内縁部に連結された上部と、当該前内縁部から遊離した下部とを含んでもよい。この場合、接続部材の前中心側の側辺の上部は本体部の内縁部によって支持されるが、当該側辺の下部は、自由に動くことができる。よって、バストの揺れを必要以上に抑えたり、バストそのものを抑え過ぎたりすることが防止される。左右一対のカップ部の動きの独立性を生かしつつ、脇側からは、バストの揺れを支持できる。
【0013】
カップ部付き衣類は、胸部被覆部の裏面側であって胸部被覆部の上部に相当する位置に配置され、少なくとも本体部の左右の側縁部に連結されたバスト上部押さえ布を備えてもよい。この場合、バスト上部押さえ布により、運動時等におけるバストの上方への揺れを抑えることができる。バスト上部押さえ布は本体部の左右の側縁部にも連結されているので、接続部材による上述の抑え効果のみならず、バスト上部押さえ布が、接続部材と協働して、縦方向および横方向においてバストの揺れを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運動時等におけるバストの縦方向の揺れを抑えることができ、それのみならず、運動時等におけるバストの横方向の揺れをも抑えることができる。しかも、着用感を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の第1実施形態に係るカップ部付き衣類を示す正面図である。
図2図1に示したカップ部付き衣類の背面図である。
図3図1に示したカップ部付き衣類を裏返して示す正面図である。
図4】本体部とカップ部に対する接続部材の取付け構造を説明するための図である。
図5】カップ部付き衣類の胸部被覆部および前ストラップ部と、一対のカップ部と、接続部材とからなる構造を示す斜視図である。
図6】着用者がカップ部付き衣類を着用して運動を行う状態を示す図である。
図7】カップ部の上辺に形成され得るカップ連結部の好適な範囲を説明するための図である。
図8】本開示の第2実施形態に係るカップ部付き衣類を示す図であり、胸部被覆部の裏面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係るブラジャー(カップ部付き衣類)1の基本構成について説明する。ブラジャー1は、たとえば着用者Wが軽い運動等を行う場合に着用するのに適した上半身衣類である。ブラジャー1は、たとえば、運動用に着用されるスポーツブラジャー(以下、「スポーツブラ」と称する)であってよい。ブラジャー1は、運動時以外に着用されてもよい。ブラジャー1は、カップ部10内に収まる着用者Wのバストの揺れを適度に抑えることができるように構成されている。ブラジャー1は、伸縮性の生地から形成される本体部2と、本体部2の前部を構成する胸部被覆部3の裏面側に配置された一対のカップ部10,10と、これら一対のカップ部10,10の下辺12に連結されてカップ部10,10を支持するカップ支持部20とを備える。
【0018】
本体部2は、前面側に配置された胸部被覆部3と、後面側に配置されたバック部4とを有し、これらの胸部被覆部3およびバック部4が左右の脇接ぎ部5,5で接合されることにより、筒状をなしている。脇接ぎ部5は、たとえば縫着による接合部である。なお、本実施形態では、元々は別体である胸部被覆部3とバック部4とが脇接ぎ部5において接合される形態について説明するが、この形態に限られず、胸部被覆部3およびバック部4が一体の筒状に編み立てられた構造であってもよい。本明細書において、本体部2における各部の「接ぎ部」は、いずれも縫着による接合部であるが、この接合形態に限られず、接着による接合部であってもよいし、他の接合形態による接合部であってもよい。さらには、公知の編成技術を用いて、すべての又は一部の「接ぎ部」が存在しない構造であってもよい。また本明細書において、本体部2、カップ部10、およびカップ支持部20におけるそれぞれの「縫着」された部分は、何らかの手段による接合部であればよく、たとえば接着による接合部であってもよいし、他の接合形態による接合部であってもよい。
【0019】
胸部被覆部3は、着用者Wの胸部を覆う。本明細書において、着用者Wの胸部とは、着用者Wの左右のバストを含む意味であり、着用者Wの上半身の前面部のうちの概ね上部を意味する。胸部被覆部3は、一対のカップ部10,10の表(おもて)面である凸面部10aを覆う一対のカップ被覆部3fを含んでもよい。胸部被覆部3は平面的な生地から形成されてもよいが、一対のカップ被覆部3fを含む場合、胸部被覆部3は、カップ部10に対応する位置において幾らか突出する形状に形成されてもよい。胸部被覆部3は着用者Wの胸部を覆うが、胸部被覆部3が設けられる範囲は、適宜に調整されてよい。胸部被覆部3は、たとえば、一対のカップ部10,10およびカップ支持部20が存在する範囲を含み、これらの部材の全体を覆うように設けられる。胸部被覆部3は、一対のカップ部10,10およびカップ支持部20を合わせた領域にちょうど重なる範囲に設けられてもよい。あるいは、胸部被覆部3が、カップ支持部20の一部分を覆っておらず、その一部分を露出させるような範囲に設けられてもよい。
【0020】
バック部4は、着用者Wの背中の一部を覆う。バック部4の形状は、特に限定されない。バック部4の形状および大きさは、ストラップ部6(特に後ストラップ部6c)の形状およびデザインによって適宜に変更され得る。バック部4は、ブラジャー1がたとえばスポーツブラである場合に、着用者Wの肩甲骨を露出させるように、上辺4aが大きく弧状に抉られた形状をなしてもよい。その場合、上辺4aの高さは、胸部被覆部3の上辺3aよりも低く、たとえば上辺3aの高さの半分程度である(図2参照)。
【0021】
胸部被覆部3の脇部3dとバック部4の脇部4dとが、脇接ぎ部5において、縫着等によって連結されている。本体部2の下側には、環状の帯部7が連結されている。帯部7の前面側に位置する前帯部7aは、胸部被覆部3の下辺3bに縫着等によって連結されている。前帯部7aの後面側に位置する後帯部7bは、バック部4の下辺4bに縫着等によって連結されている。これらの胸部被覆部3およびバック部4に用いられる生地は、伸縮性を有する生地であれば特に限定されないが、たとえば、2WAYトリコット、パワーネット、ベア天竺、ベアスムース等であってよい。生地が配置される向きは特に限られないが、着用者Wの身長を基準とする上下方向(すなわち縦方向)において比較的低い伸長性を有するように、生地が配置されてもよい。
【0022】
本体部2は、バック部4と胸部被覆部3とに連続するストラップ部6を更に有する。ストラップ部6は、バック部4の中央部4cに連続し着用者Wの背中を通る略X字形状の後ストラップ部6cと、後ストラップ部6cの上端に左右一対のストラップ後接ぎ部6f,6fを介して連結され着用者Wの肩部にかけられる左右一対の中ストラップ部6b,6bと、中ストラップ部6b,6bの前端部にストラップ前接ぎ部6e,6eを介して連結され胸部被覆部3の左右の上部3e,3eに連続する左右一対の前ストラップ部6a,6aとを含む。ストラップ部6,6は着用者Wの鎖骨上を通る。本実施形態において、前ストラップ部6aの下端部と、胸部被覆部3の上部3eとが繋がる位置は、概ね着用者Wの鎖骨とバストトップの中間付近であるが、この位置は特に重要ではない。すなわち、前ストラップ部6aと胸部被覆部3との境界は、本体部2の設計思想やデザイン等に応じて変更され得るものである。前ストラップ部6aの下端部は、たとえば、脇側に位置する側縁部6gと前中心側に位置する内縁部6hとの間の幅が一定値未満となり帯状を呈し始める部分であると定義することができる。本実施形態において、前ストラップ部6aと胸部被覆部3とは一体的な生地となっており、それらの間に境界は形成されていない。
【0023】
なお、胸部被覆部3、ストラップ部6、およびバック部4を有する本体部2は、一体の生地で形成されてもよいし、又は2枚以上の生地が互いに接合されることで形成されてもよい。より詳細に説明すると、本実施形態では、胸部被覆部3と前ストラップ部6a,6aとが1枚の(一体の)生地からなり、胸部被覆部3および前ストラップ部6a,6aと、中ストラップ部6bとで、別体の生地が用いられ、これらがストラップ前接ぎ部6eで接合されている。バック部4においては、中央部4cと、脇部4d,4dを含む両側部分とで別々の生地が用いられている。また、後ストラップ部6cと中央部4cとが1枚の(一体の)生地からなり、後ストラップ部6cおよび中央部4cと、中ストラップ部6bとで、別体の生地が用いられ、これらがストラップ後接ぎ部6fで接合されている。しかし、このような形態に限られず、本体部2の構造は自由に設計されてよい。たとえば、ストラップ前接ぎ部6eおよびストラップ後接ぎ部6fが形成されなくてもよい。あるいは、ストラップ後接ぎ部6fは形成されるがストラップ前接ぎ部6eは形成されなくてもよい。あるいは、ストラップ前接ぎ部6eは形成されるがストラップ後接ぎ部6fが形成されなくてもよい。各生地がどのように設けられるかという具体的構造と、本発明における本体部の構成要素である胸部被覆部、ストラップ部、およびバック部とは、異なる概念である。胸部被覆部、ストラップ部、およびバック部は、着用者の上半身のどの部分を覆うか、あるいは、「胸部被覆部をストラップ部が吊っている」といったような機能に基づいて定められる。
【0024】
ストラップ部6の側縁部6gとバック部4の上辺4aとは、着用者Wの腕が通される袖ぐり部(アームホール)を形成する。一方、ストラップ部6の内縁部6hと胸部被覆部3の上辺3aとは、着用者Wの首が通される襟ぐり部を形成する。
【0025】
ストラップ部6に用いられる生地も、上述した胸部被覆部3およびバック部4に用いられる生地と同様であってよい。ストラップ部6のうち、後ストラップ部6cおよび中ストラップ部6bと、前ストラップ部6aとで、異なる素材からなる生地が用いられてもよい。
【0026】
ブラジャー1は、胸部被覆部3の裏面側に配置された左右一対のカップ部10,10と、これらのカップ部10,10の下辺12,12と、胸部被覆部3の下辺3bおよび脇接ぎ部5,5との間に設けられた左右に(横方向に)細長い伸縮性の生地からなるカップ支持部20とを備える。
【0027】
一対のカップ部10,10は、カップ支持部20を介して互いに連結されている。カップ部10,10は、着用者Wの左右のバストを覆うが、左右のバストの動きが異なる場合に、それぞれのバストの動きに追従可能である。言い換えれば、一方のカップ部10の動きが、他方のカップ部10には影響(外力)を及ぼしにくい構造が採用されている。なお、左右のカップ部10,10の間に配置されたカップ支持部20の中央連結部20cに所定の張力が加わった状態では、当然ながら、左右のカップ部10,10の動きが互いに影響を及ぼし得る。しかし、中央連結部20cは伸張性に富む素材から形成されており、カップ部10の動きに基づくカップ部10間の力の作用は小さく抑えられている。
【0028】
以下、図2~5を参照して、一対のカップ部10,10、カップ部10に対応して設けられる一対の前ストラップ部6a,6a、および、前ストラップ部6a,6aの裏面側に配置される一対の接続部材30,30について詳細に説明するが、これらは左右対称の構造を有するので、以下の説明では、一方のみ(たとえば図面では左のカップ部10のみ)について説明することとし、他方についての説明は省略される。
【0029】
図3は、ブラジャー1を裏返して示す正面図である。図3に示されるように、カップ部10は、たとえばウレタンまたは不織布等の弾性材料を用いて所定の椀形状に成形された成形カップ体である。カップ部10は、胸部被覆部3に面する凸面部10aと、裏面側すなわち肌側に位置して所定のカップサイズに応じた大きさ及び形状を有する凹面部10bとを含む。また、カップ部10は、上方に突出する弧状の上辺11と、下方に突出する弧状の下辺12とを含む。上辺11の長さ及び形状、あるいは、下辺12の長さ及び形状は、任意に設定される。カップ部10の下辺12には、カップ支持部20の上縁部20aが縫着等によって連結されている。またカップ支持部20の下縁部20bは、縫着等によって、胸部被覆部3の下辺3b及び前帯部7aに連結されており、カップ支持部20の左右の側縁部20d,20dは、縫着等によって、脇接ぎ部5において胸部被覆部3の脇部3dおよびバック部4の脇部4dに連結されている。すなわち、カップ支持部20は、胸部被覆部3の下辺3bに連結されると共に、左右一対のカップ部10,10のそれぞれの下辺12に連結されている。
【0030】
カップ部10は、胸部被覆部3から遊離している。言い換えれば、カップ部10全体のうちのどの部分も、胸部被覆部3(すなわち本体部2)には直接接合されていない。図5に示されるように、ブラジャー1が着用されない状態で、カップ部10の凸面部10aと胸部被覆部3の裏面との間には間隙が形成されている。一方、図6に示されるように、ブラジャー1が着用された状態では、カップ部10と胸部被覆部3とは凸面部10aの大部分において当接するが、これらは互いに自由に動くことができる(当然ながらこれらの間に摩擦力は作用するが)。カップ部10と胸部被覆部3とが互いに動くことのできる方向は、これらの当接面に沿って生地がスライドする方向である。
【0031】
カップ支持部20は、カップ部10を支持する土台部である。カップ支持部20の下縁部20bは略直線状であるが、カップ支持部20の上縁部20aは、カップ部10の下辺12に応じた凹形状をなしている。カップ支持部20の中央連結部20cは、カップ部10の上辺11の中心側端11bに対応する位置に形成されている。カップ支持部20に用いられる生地も、上述した胸部被覆部3およびバック部4に用いられる生地と同様であってよい。
【0032】
図3図5に示されるように、本実施形態のブラジャー1は、前ストラップ部6aの裏面側に配置され、ストラップ部6とカップ部10の上辺11とに連結される接続部材30を備える。接続部材30は、図4に示されるように、上縁部31と、脇側の側辺33および前中心側の側辺34と、下縁部32とによって囲まれた略台形状の布部材である。接続部材30にも、たとえば、2WAYトリコット、パワーネット、ベア天竺、ベアスムース等の生地が用いられる。接続部材30に用いられる生地として、回復力(キックバック)が大きい生地が好ましい。上縁部31は、たとえばストラップ前接ぎ部6eの位置に重なるように配置されており、縫着等によって、前ストラップ部6aに連結されている。なお、接続部材30の上縁部31の位置は、特に限定されない。接続部材30の上縁部がストラップ部6のいずれかの部分に連結されていればよい。たとえば、接続部材30の上縁部が、着用者Wの肩にかかる中ストラップ部6bに連結されていてもよい。ストラップ部6および接続部材30によって、2重構造が形成される。
【0033】
接続部材30の下縁部32は、カップ部10の上辺11に連結されている。接続部材30の下縁部32は、カップ部10の上辺11に連結されるカップ連結部35(図4図5参照)を含む。すなわち、接続部材30は、前ストラップ部6aの裏面側に配置されるが、前ストラップ部6aの下方に突出して胸部被覆部3の上部3e付近の位置(上部3e付近の裏面側)にまで延在している。接続部材30の下縁部32は、カップ部10の上辺11に対応する凹形状をなしており、たとえば縫着等によって、上辺11に接合されている。この下縁部32の長さは、上縁部31の長さよりも長い。接続部材30は、全体として、下縁部32に近づくにつれて幅が大きくなる形状を有する。幅とは、側辺33と側辺34との間の長さである。接続部材30の幅は、前ストラップ部6a(ストラップ部6)と同じであるか、又は前ストラップ部6a(ストラップ部6)よりも小さい。上縁部31付近では、接続部材30の幅は前ストラップ部6aの幅と同等であるが、下縁部32に近づくにつれて、接続部材30の幅は前ストラップ部6aの幅よりも小さくなっている。接続部材30は、たとえば、本体部2の前部(前ストラップ部6aおよび胸部被覆部3)の裏面側に隠れるような範囲に設けられている。
【0034】
本実施形態のブラジャー1は、カップ連結部35が形成される位置および範囲に関して、特有の特徴を備える。カップ連結部35は、以下に説明する特徴を備えることにより、ブラジャー1に、バストの揺れを抑えることに対する有利な効果をもたらしている。図4および図5に示されるように、カップ連結部35は、カップ部10の上辺11の脇側端11aから、上辺11の長さの半分である上辺中央11cを超えて上辺11の前中心側(図4に示す左側)にまで延在している。より詳細には、カップ連結部35は、カップ部10の上辺11の長さを基準として、脇側端11aから60%の位置まで延在している。カップ連結部35が延在する範囲は適宜に変更・調整可能である。
【0035】
たとえば、図7に示されるように、カップ連結部35の中心側端に相当する第2端部32bは、図1図6に示される第1実施形態のように脇側端11aから60%の位置に位置してもよく(図7における右の黒丸参照)、脇側端11aから75%の位置に位置してもよく(図7における真ん中の黒丸参照)、または、脇側端11aから90%の位置に位置してもよい(図7における左の黒丸参照)。第2端部32bは、脇側端11aから50%を超えて95%未満の範囲内に位置してもよく、脇側端11aから60%以上90%以下の範囲内に位置してもよく、さらに好ましくは脇側端11aから60%以上75%以下の範囲内に位置してもよい。このように、カップ連結部35の中心側端(本実施形態では第2端部32b)は上辺11の中心側端11bに至っていない。カップ連結部35の中心側端と上辺11の中心側端11bとの間には、所定の間隔が設けられる。所定の間隔が設けられることにより、バストを一定のサポート力で支持し、バストの揺れを抑えつつも、着用者Wの身体の動きに対する一定の自由度が保たれる。
【0036】
さらに、接続部材30のカップ連結部35は、カップ部10の上辺11の脇側端11aを超えて前ストラップ部6a(本体部2)の側縁部6gにまで延在している。カップ連結部35の脇側端に相当する第1端部32aは、上辺11の延長線と側縁部6gとの交点であり、脇側端11aよりも所定長さだけ突出した位置で、縫着等によって側縁部6gに結合されている。この結合部位は、胸部被覆部3の側縁部3c(図4参照)であるとも言える。
【0037】
そして、接続部材30の脇側の側辺33は、前ストラップ部6a(本体部2)の側縁部6gに縫着等によって連結されている。一方、接続部材30の前中心側の側辺34は、前ストラップ部6a(本体部)の内縁部6hに連結された上部34aと、内縁部6hから遊離した下部34bとを含む。すなわち、側辺34の上部34aは本体部2に連結されており、側辺34の下部34bは本体部2から遊離している。
【0038】
本実施形態のブラジャー1によれば、着用者Wの左右のバストが、一対のカップ部10,10によってそれぞれ覆われる。成形カップ体であるカップ部10,10により、バストの造形性が維持される。これらのカップ部10,10の下辺12,12は、カップ支持部20によって支持され、カップ支持部20を介して本体部2の胸部被覆部3に連結される。一対のカップ部10,10は胸部被覆部3から遊離しており、それぞれが独立して動くことができる。このような独立性により、ブラジャー1を着用する着用者Wにとって、楽なつけ心地が実現されており、着用感に優れる。一方、前ストラップ部6aに連結された接続部材30が、カップ部10の上辺11に連結される。前ストラップ部6aからカップ部10を吊る構造により、ブラジャー1は、運動時等におけるバストの縦方向の揺れを抑えることができる。接続部材30の下縁部32のカップ連結部35は、カップ部10の上辺11の脇側端11aから、上辺中央11cを超えて上辺11の前中心側にまで延在しているため、カップ部10の横方向の動きに対しても支持効果を発揮する。したがって、上記した縦方向の揺れのみならず、運動時等におけるバストの横方向の揺れをも抑えることができる(図6参照)。カップ連結部35が形成される特定の範囲によれば、上述した着用感を損なうこともない。
【0039】
カップ部10の上辺11の脇側端11aは、本実施形態のように、本体部2の側縁部6g(図4の側縁部3c)にまでは達しておらず、脇側端11aと側縁部6gとの間には所定の距離が存在する。上記の構成によれば、接続部材30の下縁部32のカップ連結部35が、カップ部10の上辺11の脇側端11aを超えて本体部2の側縁部6g(図4の側縁部3c)にまで延在しているため、接続部材30を介して、カップ部10が本体部2によって支持される。このように、より本体部2の側縁部6gに至る広い範囲にカップ連結部35が設けられるため、運動時等におけるバストの横方向の揺れを一層好適に抑えることができる。
【0040】
接続部材30の下縁部32のみならず、脇側の側辺33が本体部2の側縁部6gに連結されるので、接続部材30の支持の基となる連結領域の範囲が広く、また連結領域が延在する向きが付加される。すなわち、カップ連結部35は概ね横方向(左右方向)に延在するが、側辺33における連結部は、概ね縦方向(上下方向)に延在する。この構成により、カップ部10,10を安定させることができるため、運動時等におけるバストのあらゆる複雑な動き(たとえば縦方向成分と横方向成分が複雑に合成された動きであって、かつ時間とともに変化するような動き)に対しても、揺れを確実に抑えることができる。
【0041】
接続部材30の前中心側の側辺34の上部34aは本体部2の内縁部6hによって支持されるが、当該側辺34の下部34bは、自由に動くことができる。よって、バストの揺れを必要以上に抑えたり、バストそのものを抑え過ぎたりすることが防止される。左右一対のカップ部10の動きの独立性を生かしつつ、脇側からは、バストの揺れを支持できる。
【0042】
また本実施形態のブラジャー1は、上述した特許文献1のような複雑な構造を有しておらず、ストラップ部6とカップ部10とを接続部材30で連結するシンプルな構造により、バストの揺れを抑制可能である。本実施形態では、接続部材30の脇側の側辺33と下縁部32(下辺。カップ連結部35の部分)とからなるL字状の部分が本体部2に連結されている。このような接続部材30の連結構造により、運動時等における、バストの縦方向および横方向の揺れを好適に抑えることができる。
【0043】
続いて、図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係るブラジャー1Aを示す図であり、胸部被覆部3の裏面側から見た図である。第2実施形態に係るブラジャー1Aが第1実施形態のブラジャー1と違う点は、ブラジャー1Aが、胸部被覆部3の裏面側であって胸部被覆部3の上部に相当する位置に配置されたバスト上部押さえ布40を備える点である。図8では、カップ部10および接続部材30は仮想線で示されており、バスト上部押さえ布40よりも手前側に配置される。バスト上部押さえ布40は、本体部2(前ストラップ部6aおよび胸部被覆部3)と、接続部材30およびカップ部10との間に配置される。バスト上部押さえ布40の両端部40cが、少なくとも、本体部2の左右の側縁部6gに、たとえば縫着等によって連結されている。バスト上部押さえ布40の両側辺40fが、脇接ぎ部5の上部に、縫着等によって連結されている。さらに、バスト上部押さえ布40は、その上辺40aが胸部被覆部3の上辺3aおよび前ストラップ部6aの内縁部6hに縫着等によって連結され、その頂片40dが、ストラップ前接ぎ部6eにおいて前ストラップ部6aに縫着等によって連結されている。一方、バスト上部押さえ布40の下辺40bは、胸部被覆部3から遊離している。バスト上部押さえ布40に用いられる生地は、たとえば、胸部被覆部3に用いられる生地と同様であってよい。なお、バスト上部押さえ布40が本体部2に取り付けられる前の自然状態において、下辺40bの長さ、すなわち下隅部40e,40e間の長さは、下隅部40e,40eが連結される本体部2の連結点2e,2e(これらは脇接ぎ部5上に位置する)よりも短くなっている。これにより、バスト上部押さえ布40は、下辺40bが多少伸ばされた状態で、胸部被覆部3(本体部2)に取り付けられている。接続部材30は、接続部材30と前ストラップ部6aとの間にバスト上部押さえ布40の左右部分を介在させた状態で、前ストラップ部6aに縫着等によって連結される。
【0044】
ブラジャー1Aによれば、上記実施形態のブラジャー1と同様の作用・効果が奏される。また、バスト上部押さえ布40により、運動時等におけるバストの上方への揺れを抑えることができる。バスト上部押さえ布40は本体部2の左右の側縁部6gにも連結されているので、接続部材30による上述の抑え効果のみならず、バスト上部押さえ布40が、接続部材30と協働して、縦方向および横方向においてバストの揺れを抑えることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、カップ部10は、上方に突出する弧状の上辺11と、下方に突出する弧状の下辺12と、これらの脇側端の間に形成された凹状の脇上辺とを含んでもよい。接続部材30の下縁部32のカップ連結部35が、脇側端11aで終端してもよい。接続部材30が、左右に分離して別体となっておらず、左右一対の前ストラップ部6a,6aに対して横断する1つの部材であってもよい。その場合でも、接続部材30の下縁部は、左右一対のカップ連結部35を含み、各カップ連結部35は、一対のカップ部10,10に対し、上述の実施形態と同様の連結構造を有する。
【0046】
接続部材30の上縁部31が、中ストラップ部6bまたは後ストラップ部6cに連結されていてもよい。その場合、接続部材30は、着用者Wの肩部または背中部から胸部に至るまで長く延在する縦長な形状とされる。接続部材30の上縁部31が、ストラップ部6に連結されておらず、ストラップ部6から遊離していてもよい。また、上記実施形態では1つの後ストラップ部6cが中央部(着用者Wの背中上部の中央部に相当する部分)に設けられていたが、左右に配置された別体の一対の後ストラップ部が設けられることで、左右一対のストラップ部6が設けられてもよい。
【0047】
本発明は、スポーツブラのみならず、他の衣類にも適用可能である。たとえば、本発明は、帯部7が幅広なタイプのブラジャーに適用されてもよく、または、カップ部付きトップス、水着等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ブラジャー(カップ部付き衣類)、2…本体部、3…胸部被覆部、3e…(左右の)上部、4…バック部、5…脇接ぎ部、6…ストラップ部、6a…前ストラップ部、6b…中ストラップ部、6c…後ストラップ部、6g…側縁部、6h…内縁部、10…カップ部、10a…凸面部、10b…凹面部、11…上辺、11a…脇側端、11b…中心側端、11c…上辺中央、12…下辺、20…カップ支持部、20a…上縁部、20b…下縁部、20c…中央連結部、30…接続部材、31…上縁部、32…下縁部、32a…第1端部、32b…第2端部、33…(脇側の)側辺、34…(前中心側の)側辺、34a…上部、34b…下部、35…カップ連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8