(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/265 20220101AFI20231130BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20231130BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20231130BHJP
F24H 15/196 20220101ALI20231130BHJP
【FI】
F24H15/265
F24H1/00 Z
F24H15/246
F24H15/196 301Z
(21)【出願番号】P 2020103119
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮元 省吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】清水 史朗
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-004207(JP,A)
【文献】特開2011-158120(JP,A)
【文献】特開2018-089088(JP,A)
【文献】特開2010-002115(JP,A)
【文献】特開2004-108962(JP,A)
【文献】特開2017-156059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 1/00
F24H 15/265
F24H 15/246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯先に浴槽を含む給湯システムであって、
前記浴槽に対して湯水を供給するための注湯回路と、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出器と、
前記水位検出器によって検出された浴槽水位に基づき、前記注湯回路による前記浴槽への湯張り運転の終了から前記浴槽の排水が検知されるまでの入浴人数をカウントする制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記湯張り運転の終了から前記排水が検知されるまでの間において、前記浴槽水位が第1の判定値を超えて上昇したときに入浴を検知するとともに前記入浴人数をカウントアップし、かつ、入浴の検知後に前記浴槽水位が第2の判定値を超えて低下したときに退浴を検知し、更に、前記退浴の検知時点から予め定められた時間が経過するまでの間、前記入浴が検知されても前記入浴人数をカウントアップしないカウント禁止期間を設ける、給湯システム。
【請求項2】
前記制御回路は、前記カウント禁止期間内において、前記入浴が検知される毎に当該入浴検知時の水位変化量を順次記憶し、かつ、今回の入浴検知における第1の水位変化量が前回の入浴検知時に記憶された第2の水位変化量と異なる場合には、前記カウント禁止期間内であっても前記今回の入浴検知に応じて前記入浴人数をカウントアップする、請求項1記載の給湯システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1の水位変化量が前記第2の水位変化量と異なる場合であっても、前記第1の水位変化量が、同一の前記カウント禁止期間内で記憶されている前記水位変化量の和と同等であるときには、前記今回の入浴検知に応じて前記入浴人数をカウントアップしない、請求項2記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関し、より特定的には、給湯先に浴槽を含む給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽入浴者の人数を算定するための人体検出装置が、特開2004-108962号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1では、人体の動きを検出する人検出センサと、浴槽の水位を検出する水位センサとを用いる構成として、浴槽に複数の入浴者が入った場合においても、浴槽入浴者の人数を算定することができる。
【0003】
特許文献1では、浴室内を、浴槽領域及び洗場領域に分けて、人を検知することも記載されている。又、個人毎に浴槽水位の上昇データを取得することで、複数の入浴者があった場合に対応することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、人工網膜チップを利用した人体検出センサの適用が想定されており、入浴者の有無や入浴者の動き等を総合的に判断した高度な人検出が可能となる一方で、システムの高コスト化が懸念される。又、個人毎の水位上昇データについては、実際に水位が変動した入浴時に、入浴者がスイッチを押すことで取得されることが前提とされている。
【0006】
これに対して、構成を簡素化する観点から、水位センサのみの出力を用いた人検出のニーズが存在する。但し、水位センサによれば、水位の上昇及び低下に応じて入浴及び退浴は検出できる一方で、同一人の連続した入浴のダブルカウントへの対応等、入浴人数のカウント精度の向上が課題となる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、浴槽の水位センサを用いた入浴人数カウントの精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、給湯先に浴槽を含む給湯システムであって、浴槽に対して湯水を供給するための注湯回路と、浴槽内の水位を検出する水位検出器と、制御回路とを備える。制御回路は、水位検出器によって検出された浴槽水位に基づき、注湯回路による浴槽への湯張り運転の終了から浴槽の排水が検知されるまでの入浴人数をカウントする。制御回路は、湯張り運転の終了から排水が検知されるまでの間において、浴槽水位が第1の判定値を超えて上昇したときに入浴を検知するとともに入浴人数をカウントアップし、かつ、入浴の検知後に浴槽水位が第2の判定値を超えて低下したときに退浴を検知する。更に、制御回路は、退浴の検知時点から予め定められた時間が経過するまでの間、入浴が検知されても入浴人数をカウントアップしないカウント禁止期間を設ける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、退浴検知後にカウント禁止期間を設けることで、一定時間内での同一人の連続した入浴を重複してカウントすることを回避できるので、浴槽の水位センサを用いた簡易な構成において、入浴人数のカウント精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る給湯システムの概略構成図である。
【
図2】水位センサの検出値を用いた入退浴の検知を説明する概念図である。
【
図3】本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントを説明する動作波形図である。
【
図4】本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントの制御処理の第1の例を説明するフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントの制御処理の第2の例を説明するフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントの制御処理の第3の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る給湯システムの概略構成図である。
【0013】
図1を参照して、給湯システム300は、給湯装置100を備える。給湯装置100は、給湯回路5、追焚回路7、循環路8、及び、コントローラ12を備える。給湯装置100は、図示しない給湯栓等に加えて、浴室200に設置された浴槽20を給湯先に含む。
【0014】
給湯回路5は、導入された低温水を加熱するための加熱機構(図示せず)を含むように構成される。加熱機構は、例えば、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱、及び、発電時の排熱又はヒートポンプによる加熱の何れを利用する構成であってもよい。又、給湯回路5は、加熱された高温水がそのまま出湯される構成の他、加熱された高温水を貯留する貯湯式の構成であってもよい。
【0015】
給湯回路5は、加熱機構の作動により、ユーザによる設定温度に従う温水を出力することができる。一方で、当該加熱機構の停止時には、低温水が加熱されることなく給湯回路5から出力される。
【0016】
給湯回路5の出湯経路(図示せず)は、浴槽20へ至る注湯配管13aと更に接続される。注湯配管13aには、ふろ注湯弁13が介挿接続される。ふろ注湯弁13は、例えば、開閉制御可能な電磁弁によって構成することができる。ふろ注湯弁13を開放することにより、給湯回路5から注湯配管13aへ湯水が出力される経路を形成することができる。これにより、給湯装置100は、給湯栓等に加えて、給湯先に浴槽20を含むことができる。
【0017】
本明細書では、給湯装置100から浴槽20への給湯については「注湯」と称して、給湯回路5から給湯栓等(図示せず)への直接の給湯と区別することとする。尚、本実施の形態では、給湯回路5からの出力温度に関わらず、ふろ注湯弁13の開放により、湯又は水が、注湯配管13aを経由して浴槽20へ供給される動作を「注湯」と称する。即ち、給湯回路5、及び、ふろ注湯弁13によって、「注湯回路」の一実施例を構成することができる。
【0018】
循環路8は、浴槽20の湯水21(以下、浴槽水21とも称する)を給湯装置100内で循環するためのものであり、戻り配管8a及び往き配管8bと、循環ポンプ10とを有する。戻り配管8aの一方端は、浴槽20内の循環アダプタ25と接続され、他端は、追焚回路7の入力側と接続される。往き配管8bの一端は、追焚回路7の出力側と接続され、他端は循環アダプタ25と接続される。
【0019】
循環ポンプ10の作動により、循環アダプタ25から吸入された浴槽水21が、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して、循環アダプタ25から吐出される経路(追焚循環経路)が形成される。追焚回路7は、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱機構(図示せず)を含むように構成することができる。追焚回路7は、追焚循環経路の形成時に作動して、戻り配管8aから導入された浴槽水21を加熱して、往き配管8bに出力する。加熱後の浴槽水21が往き配管8bによって浴槽20へ供給されることにより、浴槽水21の温度を上昇する追焚運転を行うことができる。
【0020】
戻り配管8aには、温度センサ9及び水位センサ11が接続されている。温度センサ9により、浴槽水21の温度を検出することができる。温度センサ9は、例えば、サーミスタによって構成することができる。
【0021】
水位センサ11は、例えば、圧力センサによって構成されて、浴槽水21の水圧に基づいて、浴槽20内での浴槽水21の水位(以下、単に「浴槽水位」とも称する)を検知する。温度センサ9及び水位センサ11は、循環ポンプ10の停止時においても、戻り配管8a内で浴槽水21が浸入する領域に配置される。
【0022】
戻り配管8aは、更に、接続点8cにおいて、注湯配管13aと接続される。この結果、循環ポンプ10の停止時に給湯装置100から注湯すると、注湯配管13aから、接続点8c及び戻り配管8aを経由して浴槽20へ至る第1の注湯経路と、注湯配管13aから、接続点8c、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して浴槽20へ至る第2の注湯経路とを形成することができる。これにより、給湯装置100からの注湯によるふろ湯張り運転を行うことができる。
【0023】
この様に、給湯装置100(注湯回路)からの湯水は、第1及び第2の注湯経路による、循環路8を含む注湯経路を介して、浴槽20へ供給される。浴槽20には、排水栓26が設けられる。排水栓26は、ユーザの手動操作によって開閉される「手動排水栓」、及び、コントローラ12からの操作指令に応じた自動的な開閉操作についても可能な「自動排水栓」のいずれで構成することも可能である。
【0024】
コントローラ12は、例えば、マイクロコンピュータを含んで構成することができる。コントローラ12は、給湯回路5、追焚回路7、温度センサ9、循環ポンプ10、水位センサ11、及び、ふろ注湯弁13等と電気的に接続されている。コントローラ12は、図示しない電気配線を介して電源と接続されて、電力供給を受ける。コントローラ12は「制御回路」の一実施例に対応する。コントローラ12には、温度センサ9及び水位センサ11による検出値が入力される。
【0025】
更に、コントローラ12は、リモコン30及びリモコン50と通信可能に接続されている。尚、これらの機器間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、又、有線であっても無線であってもよい。
【0026】
リモコン30は、浴室200の壁面に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン30は、情報を表示するための表示部31と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部32とを含む。表示部31は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、浴槽水位及び温度を表示可能に構成されている。操作部32は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、少なくとも、浴槽水位及び温度に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0027】
リモコン50は、浴室200の外部に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン50は、代表的には台所の壁面に設置されている。リモコン50は、情報を表示するための表示部51と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部52とを含む。
【0028】
表示部51は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、給湯設定温度、及び、ふろ設定温度等を表示可能に構成されている。操作部52は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯装置100の運転に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0029】
コントローラ12は、リモコン30,50からのユーザ等の入力設定操作に基づき、給湯システム300がユーザ指示に従って運転されるように、給湯装置100の動作を制御する。
【0030】
当該制御の一例として、コントローラ12は、リモコン30,50の操作により、ふろ自動運転が指示されると、浴槽20への湯張り運転を実行する。当該湯張り運転は、給湯装置100からの注湯により、浴槽20において、浴槽水位が設定水位に達し、かつ、温度センサ9によって検出される浴槽水温度がふろ設定温度に達すると終了される。
【0031】
給湯システム300では、浴槽20への湯張り運転の終了後、給湯装置100によって浴槽水21の温度及び水位を維持する自動モードを設定することが可能である。当該自動モードの選択時には、温度センサ9によって検出された浴槽水温度が、ふろ設定温度に対応されて設定された基準温度(例えば、ふろ設定温度よりも2~3℃低く設定)よりも低下すると、保温制御のために追焚運転が自動的に起動される。更に、水位センサ11によって検出された浴槽水位が設定水位よりも低下すると、給湯装置100から浴槽20へ追加的に注湯する足し湯運転が起動される。
【0032】
更に、給湯システム300では、排水栓26の作動による浴槽20の排水後において、給湯装置100からの注湯によって、循環路8を含む配管内を洗浄する配管洗浄運転を実行することができる。配管洗浄運転による洗浄能力は、給湯装置100からの注湯による洗浄水の温度及び供給量によって変化する。この際に、配管内の汚れに比して、洗浄水の供給量が過多、或いは、温度が無用に高いと、過剰な洗浄によってユーザのコスト負担が上昇することが懸念される。一方で、配管内の汚れに比して、洗浄水の供給量が過少、或いは、入水温度のままでの洗浄とすると、洗浄が不十分となることが懸念される。従って、配管洗浄運転における洗浄能力を適切に設定するために、浴槽20への入浴人数のカウント機能が必要とされる。
【0033】
本実施の形態に係る給湯システムでは、特許文献1のような人体検出センサ(人感センサ)を必要とせずに、浴槽20の水位センサ11の検出値を用いた簡易な構成によって、入浴人数のカウント精度が高められる。
【0034】
図2には、水位センサの検出値を用いた入退浴の検知を説明する概念図が示される。
【0035】
図2を参照して、浴槽20への湯張り運転の終了時には、水位センサ11によって検出される浴槽水位Hは、設定水位に達している。この状態が「退浴状態」として初期設定されると、以降では、浴槽水位Hの変化量ΔHがコントローラ12によって逐次検知される。
【0036】
退浴状態において、予め定められた判定値Hthを超える水位上昇(ΔH>Hth)が検知されると、退浴状態から入浴状態への遷移、即ち、入浴が検知される。これに対して、入力状態において、予め定められた判定値-Hthを超える水位低下(ΔH<-Hth)が検知されると、入浴状態から退浴状態への遷移、即ち、退浴が検知される。Hthは「第1の判定値」の一実施例に対応し、-Hthは「第2の判定値」の一実施例に対応する。
【0037】
ここで、判定値Hth及び-Hthは、所定体積(例えば、20[l]程度)の体積増減に対応する水位変化量として予め定めて、コントローラ12に記憶することができる。但し、判定値Hthは、浴槽20の断面積によって変わってくる。例えば、浴槽20の配設を含む給湯システム300の施工時において、浴槽20の機種番号又はサイズ(上記断面積を特定できるデータ)を施工者が入力することで、コントローラ12が、当該入力値を用いて、判定値Hth,-Hthを算出し、かつ、記憶することが可能である。
【0038】
図3は、本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントを説明する動作波形図である。
【0039】
図3を参照して、時刻t0において浴槽20への湯張り運転が終了すると、入浴人数のカウント処理が開始される。ふろ湯張り運転の終了時における浴槽水位H=H1とする。このときに、入浴人数のカウント値Cntは初期化されている(Cnt=0)。
【0040】
時刻taにおいて、浴槽水位HがH1からH2に上昇するのに応じて、退浴状態から入浴状態への遷移が発生し、入浴が検知される。即ち、H2-H1>Hthである。これに応じて、カウント値Cntが1増加する(Cnt=1)。
【0041】
時刻tbでは、浴槽水位HがH2からH1に上昇するのに応じて、入浴状態から退浴状態への遷移が発生し、退浴が検知される。この際の退浴が、浴室200からの退出ではなく、洗体又は洗髪のためのものであると、時刻tbからそれ程遅くないタイミングにおいて、再び、同一の入浴者が浴槽20へ浸かることが想定される。
【0042】
このため、時刻tcにおいて、再び、判定値Hthを超える浴槽水位Hの上昇が検出されることで、退浴状態から入浴状態への遷移が発生し、入浴が再度検知される。
【0043】
本実施の形態では、同一の入浴者が、一定時間内に入浴及び退浴を繰り返した際に、入浴人数を複数回カウントしないように、入浴状態から退浴状態への遷移が検知されたタイミング(時刻tb)から一定時間の間、カウント値Cntの増加を禁止するカウント禁止期間15が設けられる。
【0044】
例えば、時刻tbから、一定時間Txを計時するためのタイマが起動されることで、時刻tbから時刻tdまでの間、カウント禁止期間15を設けることができる。このため、時刻tbから一定時間Txが経過する前の時刻tcでは、入浴が検知されても、カウント値Cntは1から2に増加することなく、Cnt=1に維持されることになる。この結果、上述したような、短時間内での同一人による入退浴によって、入浴人数を複数回カウントすることが防止できる。
【0045】
図4は、本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントの制御処理の第1の例を説明するフローチャートである。
図4の制御処理は、浴槽20への湯張り運転の終了に応じて起動されて、例えば、コントローラ12によって実行される。
【0046】
コントローラ12は、入浴人数カウントの制御処理が起動されると、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、起動処理を実行する。起動処理では、禁止タイマをデフォルトである停止状態とする他、入浴人数のカウント値Cnt=0とする等の初期設定が行われる。又、
図2では、「退浴状態」が初期値として設定される。
図3の例では、時刻t0において、S110の起動処理が実行される。
【0047】
コントローラ12は、S120により、判定値Hthを超える水位上昇の検出によって入浴が検知されるか否かを判定する。
図2での退浴状態から入浴状態への遷移が検出されるとき、S120はYES判定とされ、それ以外では、S120はNO判定とされる。
【0048】
コントローラ12は、S120のNO判定時、即ち、退浴状態が維持されている間は、S300により、入浴人数のカウント終了条件が成立するか否かを判定する。例えば、S300は、浴槽20の排水検知時にYES判定とされる。具体的には、排水栓26の開放により循環アダプタ25が露出するレベルまで水位が低下したことが水位センサ11により一定時間検出されることで、S300をYES判定とすることができる。或いは、排水栓26が「自動排水栓」で構成される場合には、排水栓26の開放指令に連動させて、S300をYES判定とすることができる。
【0049】
カウント終了条件が成立するまで(S300のNO判定時)、S120の判定は繰り返し実行される。即ち、S120がNO判定である状態は、入浴の検知を待機している状態に相当する。この状態から入浴が検知されると(S120のYES判定時)、S130以降の処理が起動される。例えば、
図3の例では、まず時刻taにおいて、S120がYES判定とされる。
【0050】
コントローラ12は、S130により、禁止タイマが停止中であるか否を判定する。
図3の時刻tbでの水位上昇の検知時には、S110での初期設定により禁止タイマが停止状態であるので、S130はYES判定とされる。禁止タイマの停止中には、S140により、カウント値Cntが1増加される。これにより、
図2の時刻taでは、カウント値Cntが0から1へ増加する。
【0051】
そして、コントローラ12は、S200により、判定値-Hthを超える水位低下の検出によって退浴が検知されるか否かを判定する。
図2での入浴状態から退浴状態への遷移が検出されるとき、S200はYES判定とされ、それ以外では、S200はNO判定とされる。退浴が検知されるまで、S210以降の処理は待機される。
【0052】
退浴が検知されると(S200のYES判定時)、コントローラ12は、S210により、禁止タイマが停止状態であるか否かを判定する。
図3の例では、時刻tbにおいて、S200がYES判定とされる。
【0053】
コントローラ12は、禁止タイマが停止状態であれば(S210のYES判定時)、S220により禁止タイマを起動する。一方で、禁止タイマが作動中であれば、S230により、禁止タイマの動作が継続される。尚、禁止タイマは、
図4の処理とは別個に計時し、起動から一定時間Tx(
図3)が経過すると自動的に停止状態に復帰する。これにより、
図3の例では、時刻tbにおいて、禁止タイマが起動されるとともに、禁止タイマが停止する時刻tdまでの間、カウント禁止期間15(
図3)が設けられる。
【0054】
コントローラ12は、S220又はS230の処理後、再び処理をS120に戻して、入浴の検知を待機する状態となる。
図3の時刻tcにおいて、水位上昇に応じてS120は再びYES判定とされる。但し、時刻tcでは、禁止タイマが作動しているため、S130がNO判定とされて、S140の処理はスキップされる。このため、カウント値Cntは2にカウントアップされずに、Cnt=1のままで維持されることになる。
【0055】
以降では、S200~S230の処理が同様に実行されて、時刻tdまでのカウント禁止期間15中に、退浴が検知されると(S200のYES判定)、禁止タイマが作動状態のまま、再び、S120に処理が戻される。又、退浴が検知されるまでの入浴状態中に禁止タイマが一定時間Txのカウントを終了した場合には、S210がYES判定とされるので、退浴状態への遷移の検知に応じて、再び禁止タイマが起動されるとともに、処理がS120に戻される。
【0056】
コントローラ12は、入浴の検知を待機しているときに(S120のNO判定時)、カウント終了条件が成立すると(S300のYES判定時)、S310により、そのときのカウント値Cntから入浴人数Bnmを確定する。これにより、コントローラ12は、浴槽20への湯張り完了から排水までの間の入浴人数を取得することができる。
【0057】
このように、本実施の形態に係る給湯システムによれば、水位センサ11による浴槽水位の上昇及び低下の検知と、タイマ機能との組み合わせによる簡易な構成によって、同一人の連続した入浴の重複カウントを回避して、入浴人数のカウント精度を向上することができる。
【0058】
図5には、本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントの制御処理の第2の例を説明するフローチャートが示される。
【0059】
図5を参照して、第2の例に係る制御処理では、
図4に示された制御処理に対して、S125、S150、及び、S240の処理が追加される。
【0060】
コントローラ12は、S120において入浴が検知されると、S125により、当該入浴検知時の水位上昇量ΔH(i)を記憶する。当該パラメータiは、S110において、i=0に初期設定され、S125の実行毎に1ずつ増加される。従って、初めての入浴検知時には、S125によって、i=1とされて、ΔH(1)が記憶されることになる。水位上昇量ΔH(i)は、後述するS240によってクリアされるまで、入浴検知毎、即ち、iが増加する毎に取得された値が順位記憶されて、蓄積される。
【0061】
コントローラ12は、禁止タイマの停止中に入浴が検知されると(S130のNO判定時)、S150により、今回の入浴検知時の水位上昇量ΔH(i)と、前回の入浴検知時の水位上昇量ΔH(i-1)との差(絶対値)が、予め定められた判定値εよりも大きいか否かを判定する。
【0062】
コントローラ12は、S150のNO判定時には、水位上昇量が同等である同一人による一定時間内の連続した入浴と判断して、S140の処理をスキップする。従って、禁止タイマの作動中、即ち、カウント禁止期間15における入浴検知に対して、
図4の例と同様に、カウント値Cntは維持される。
【0063】
これに対して、コントローラ12は、S150のYES判定時には、水位上昇量が異なる別人の入浴と判断して、S140に処理を進める。これにより、カウント禁止期間15における入浴検知であっても、異なる人の入浴と判断される場合には、カウント値Cntを増加することができる。
【0064】
コントローラ12は、禁止タイマの起動時(S210のYES判定時)には、S240により、前回のカウント禁止期間15において順次記憶された水位上昇量ΔH(i)を消去する。これにより、水位上昇量ΔH(i)は、同一のカウント禁止期間15内における水位上昇量ΔH(i)のみを比較対象として記憶することができる。
【0065】
このように、
図5に示された第2の例によれば、親子での入浴等の、水位上昇量がある程度異なる複数人の連続した入浴をカウント値に反映することで、入浴人数のカウント精度を向上することができる。
【0066】
図6には、本実施の形態に係る給湯システムでの入浴人数カウントの制御処理の第3の例を説明するフローチャートが示される。
【0067】
図6を参照して、第3の例に係る制御処理では、
図5に示された第2の例に係る制御処理に対して、S160の処理が更に追加される。
図6の制御処理において、S160以外は
図5と同様の各ステップが実行される。
【0068】
コントローラ12は、S150のYES判定時、即ち、同一のカウント禁止期間15内に、水位上昇量が異なる別人の入浴が検知されたときには、S160により、今回の水位上昇量ΔH(i)を、これまでの水位上昇量の和であるΣΔHxと比較する。例えば、ΣΔHxは、i≧3のときに、ΔH(1)~ΔH(i-1)の和とすることができる。S160は、|ΔH(i)-ΔHx|<εのときYES判定とされ、|ΔH(i)-ΣΔHx|≧εのときには、NO判定とされる。又、i≦2のときには、S160は、無条件にNO判定とされる。
【0069】
コントローラ12は、S160のYES判定時には、第2の例におけるS150のYES判定時であっても、S140をスキップして、カウント値Cntを増加しない。これにより、例えば、親の入浴、子の入浴、並びに、親及び子の入浴が連続した場合に、カウント値が「3」となることを回避できる。一方で、親の入浴と、親及び子の入浴とが連続した場合には、カウント値を正しく「2」とすることできる。
【0070】
このように、
図6に示された第3の例によれば、1回のカウント禁止期間15内において、一旦カウントした複数人が同時に入浴した際の水位上昇を、カウント値に反映しない制御処理とすることで、入浴人数のカウント精度を更に向上することができる。
【0071】
尚、本実施の形態では、入浴人数のカウント結果を配管洗浄運転に利用する例を説明したが、入浴人数のカウント結果の活用態様は任意である。即ち、配管洗浄運転以外にも、ユーザガイダンス機能への活用等を図ることができる。一例として、介護の観点から、入浴人数のカウント結果が想定される適切な値であるか否かによって、適切に入浴ができているかを判定することも可能である。このように、本実施の形態に係る入浴人数のカウント結果は、介護の観点からの入浴人数の把握にも利用可能である。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
5 給湯回路、7 追焚回路、8 循環路、8a 配管、8a 戻り配管、8b 往き配管、8c 接続点、9 温度センサ、10 循環ポンプ、11 水位センサ、12 コントローラ、13 ふろ注湯弁、13a 注湯配管、15 カウント禁止期間、20 浴槽、21 浴槽水、25 循環アダプタ、26 排水栓、30,50 リモコン、31,51 表示部、32,52 操作部、100 給湯装置、200 浴室、300 給湯システム、Cnt カウント値(入浴人数)。