(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】加飾部材製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/12 20060101AFI20231130BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20231130BHJP
B29C 51/16 20060101ALI20231130BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20231130BHJP
B29C 51/28 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C51/12
B29C51/10
B29C51/16
B29C65/70
B29C51/28
(21)【出願番号】P 2021537666
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2020027919
(87)【国際公開番号】W WO2021024763
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019145569
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 招次
(72)【発明者】
【氏名】雨森 紀平
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217416(WO,A1)
【文献】特公昭60-058014(JP,B1)
【文献】特開平08-011200(JP,A)
【文献】特開2017-043014(JP,A)
【文献】特開2019-025835(JP,A)
【文献】特開2016-089019(JP,A)
【文献】特開2017-119403(JP,A)
【文献】実開平05-058275(JP,U)
【文献】特開2013-078898(JP,A)
【文献】特開2014-156048(JP,A)
【文献】特開平05-131545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
B29C 63/00 - 63/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に加飾材を備える加飾部材の製造方法であって、
前記基材の表面と対向する位置に前記加飾材を配置する工程と、
一方が開口した第一の筐体と前記第一の筐体側が開口した第二の筐体との境界に柔軟性を有する成形部材を配置し、前記第一の筐体と前記第二の筐体とを突き合わせて、前記第一の筐体と前記成形部材により密閉される第一の空間、及び前記第二の筐体と前記成形部材により密閉される第二の空間を形成する工程と、
前記第一の空間が前記第二の空間よりも減圧された状態で、前記成形部材を介して前記第一の空間内に設けられた前記加飾材を所定の形状に成形する工程と、
前記加飾材を前記基材の表面に貼合する工程と、を有し、
前記加飾部材が、前記加飾材と前記基材との間に弾性層を備え
、
前記第一の空間及び前記第二の空間を形成する工程では、前記第一の筐体及び前記第二の筐体の突き合せ方向において前記加飾材と前記成形部材とを接触させずに間隔を空けて配置し、
前記加飾材を所定の形状に成形する工程では、可動機構により前記加飾材を前記成形部材に押し付けることを特徴とする加飾部材製造方法。
【請求項2】
基材の表面に加飾材を備える加飾部材の製造方法であって、
前記基材の表面と対向する位置に前記加飾材を配置する工程と、
一方が開口した第一の筐体と前記第一の筐体側が開口した第二の筐体との境界に柔軟性を有する成形部材を配置し、前記第一の筐体と前記第二の筐体とを突き合わせて、前記第一の筐体と前記成形部材により密閉される第一の空間、及び前記第二の筐体と前記成形部材により密閉される第二の空間を形成する工程と、
前記第一の空間が前記第二の空間よりも減圧された状態で、前記成形部材を介して前記第一の空間内に設けられた前記加飾材を所定の形状に成形する工程と、
前記加飾材を前記基材の表面に貼合する工程と、を有し、
前記基材及び前記加飾材が支持治具によって支持され、
前記支持治具の少なくとも一部が柔軟性を有
し、
前記第一の空間及び前記第二の空間を形成する工程では、前記第一の筐体及び前記第二の筐体の突き合せ方向において前記加飾材と前記成形部材とを接触させずに間隔を空けて配置し、
前記加飾材を所定の形状に成形する工程では、可動機構により前記加飾材を前記成形部材に押し付けることを特徴とする加飾部材製造方法。
【請求項3】
前記加飾材は、前記基材の表面に通気性のある接着剤によって貼合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾部材製造方法。
【請求項4】
前記成形部材は、弾性体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾部材製造方法。
【請求項5】
前記成形部材は、シリコンゴムで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾部材製造方法。
【請求項6】
前記加飾材は、樹脂含浸突板と、通気性層と、前記基材に接着する接着層と、を有し、
前記通気性層は前記樹脂含浸突板と前記基材との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾部材製造方法。
【請求項7】
前記加飾材及び前記弾性層は前記基材よりも表面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の加飾部材製造方法。
【請求項8】
前記加飾材は、前記弾性層よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加飾部材製造方法。
【請求項9】
前記基材の表面と対向する位置に前記加飾材を配置する工程の前に、前記加飾材の表面に表面保護層を塗工する工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾部材製造方法。
【請求項10】
前記加飾部材は、前記加飾材の表面に表面保護層をさらに備え、
該表面保護層は、ガラス転移温度が66℃以上であって135℃以下であるアクリル系樹脂を主成分として含有し、
前記表面保護層の厚さが10μm以上であって40μm以下であり、
前記加飾材及び前記表面保護層の総厚さが0.3mm以上であって1.5mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾部材製造方法。
【請求項11】
前記加飾部材は、3次元構造を有しており、
前記基材の表面に貼合された前記加飾材の角部には、該角部を丸めた角R部が形成され、
該角R部の曲率半径が0.5mm以上であることを特徴とする請求項10に記載の加飾部材製造方法。
【請求項12】
前記表面保護層は、前記アクリル系樹脂と、顔料とを含有し、
前記表面保護層の総質量に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が50~90質量%であって、前記顔料の含有量が1~15質量%であることを特徴とする請求項10に記載の加飾部材製造方法。
【請求項13】
前記表面保護層は、前記加飾部材の耐候性を向上させるための耐候性向上剤をさらに含有し、
前記表面保護層の総質量に対して、前記耐候性向上剤の含有量が1~10質量%であることを特徴とする請求項12に記載の加飾部材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に加飾材を貼合した加飾部材を製造する加飾部材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアトリムやインストルメントパネル等の車両用内装部品には、高級感を出すために熱可塑性樹脂等からなる基材の表面に天然木の突板を含む加飾材を部分的に貼合することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、2つの筐体の境界に加飾材を配置した状態で、2つの筐体を突き合わせて、下側筐体と加飾材により密閉される下側空間、及び上側筐体と加飾材により密閉される上側空間を形成する工程と、下側空間が上側空間よりも減圧された状態で、加飾材を所定の形状に成形する工程と、加飾材を基材の表面に貼合する工程と、を有する加飾パネル製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の加飾パネル製造方法では、加飾材を所定の形状に成形する工程において加飾材を基材の形状に追従させることを目的として、接着層に熱可塑性フィルムなどの成形部材を使用することがあった。従来技術では、接着層に成形部材を用いることで、加飾部材の重量が増加し、厚みも厚くなっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加飾材を基材に貼合する際に、加飾材を基材の形状に追従させることができ、加飾部材の重量が増加することが抑制された加飾部材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、基材の表面に加飾材を備える加飾部材の製造方法であって、前記基材の表面と対向する位置に前記加飾材を配置する工程と、一方が開口した第一の筐体と前記第一の筐体側が開口した第二の筐体との境界に柔軟性を有する成形部材を配置し、前記第一の筐体と前記第二の筐体とを突き合わせて、前記第一の筐体と前記成形部材により密閉される第一の空間、及び前記第二の筐体と前記成形部材により密閉される第二の空間を形成する工程と、前記第一の空間が前記第二の空間よりも減圧された状態で、前記成形部材を介して前記第一の空間内に設けられた前記加飾材を所定の形状に成形する工程と、前記加飾材を前記基材の表面に貼合する工程と、を有し、前記加飾部材が、前記加飾材と前記基材との間に弾性層を備え、前記第一の空間及び前記第二の空間を形成する工程では、前記第一の筐体及び前記第二の筐体の突き合せ方向において前記加飾材と前記成形部材とを接触させずに間隔を空けて配置し、前記加飾材を所定の形状に成形する工程では、可動機構により前記加飾材を前記成形部材に押し付けることを特徴とする加飾部材製造方法により解決される。
上記の加飾部材製造方法によれば、加飾材を基材に貼合する際に、柔軟性を有する成形部材によって加飾材を基材の形状に追従させることが可能となるとともに、成形部材が加飾部材とは別体であるため加飾部材の重量が増加することが抑制される。
また上記の構成では、加飾材と基材の間に弾性層を有していることで、基材に貼合した後における加飾材の形状が適切なものとなるため意匠性が向上する。
【0008】
また上記の課題は、基材の表面に加飾材を備える加飾部材の製造方法であって、前記基材の表面と対向する位置に前記加飾材を配置する工程と、一方が開口した第一の筐体と前記第一の筐体側が開口した第二の筐体との境界に柔軟性を有する成形部材を配置し、前記第一の筐体と前記第二の筐体とを突き合わせて、前記第一の筐体と前記成形部材により密閉される第一の空間、及び前記第二の筐体と前記成形部材により密閉される第二の空間を形成する工程と、前記第一の空間が前記第二の空間よりも減圧された状態で、前記成形部材を介して前記第一の空間内に設けられた前記加飾材を所定の形状に成形する工程と、前記加飾材を前記基材の表面に貼合する工程と、を有し、前記基材及び前記加飾材が支持治具によって支持され、前記支持治具の少なくとも一部が柔軟性を有し、前記第一の空間及び前記第二の空間を形成する工程では、前記第一の筐体及び前記第二の筐体の突き合せ方向において前記加飾材と前記成形部材とを接触させずに間隔を空けて配置し、前記加飾材を所定の形状に成形する工程では、可動機構により前記加飾材を前記成形部材に押し付けることを特徴とする加飾部材製造方法により解決される。
上記の構成では、基材及び加飾材が適切に支持されることで、効率よく加飾材を基材に貼合することが可能となる。
また上記の構成では、支持治具が撓むことで、成形部材が変形する際の追従性が向上するため、加飾材の基材の表面形状に対する追従がより良好なものとなる。
【0009】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記加飾材は、前記基材の表面に通気性のある接着剤によって貼合されるとよい。
上記の構成では、加飾材と基材の間に空気が残ることが抑制されるため、エア溜まりの生成が抑制される。
【0010】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記成形部材は、弾性体であるとよい。
上記の構成では、成形部材が弾性体であることで、延び易いため、効率よく加飾材を基材の形状に追従させることが可能となる。
【0011】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記成形部材は、シリコンゴムで形成されているとよい。
上記の構成では、成形部材がシリコンゴムであることで、熱を与えても固まらないため、繰り返し使用することが可能となる。
【0012】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記加飾材は、樹脂含浸突板と、通気性層と、前記基材に接着する接着層と、を有し、前記通気性層は前記樹脂含有突板と前記基材との間に配置されているとよい。
上記の構成では、樹脂含有突板と基材との間に通気性層を配置することで、エア溜まりの生成が抑制される。
【0014】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記加飾材及び前記弾性層は前記基材よりも表面積が大きいとよい。
上記の構成では、基材に対して加飾材及び弾性層を効率よく貼合することが可能となる。
【0015】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記加飾材は、前記弾性層よりも薄く形成されているとよい。
上記の構成では、加飾材が弾性層よりも薄く形成されていることで、弾性層の弾性を残したまま減圧によって加飾材を変形させることが可能となる。
【0018】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記基材の表面と対向する位置に前記加飾材を配置する工程の前に、前記加飾材の表面に表面保護層を塗工する工程をさらに有するとよい。
上記の構成では、加飾材を所定の形状に成形する前に当該加飾材の表面に表面保護層を塗工することになるため、所定形状の加飾材の表面に表面保護層を塗工する場合と比較して、表面保護層の塗工作業がし易くなる。結果として、製造工数の削減につながる。
【0019】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記加飾部材は、前記加飾材の表面に表面保護層をさらに備え、前記表面保護層は、ガラス転移温度が66℃以上であって135℃以下であるアクリル系樹脂を主成分として含有し、前記表面保護層の厚さが10μm以上であって40μm以下であり、前記加飾材及び前記表面保護層の総厚さが0.3mm以上であって1.5mm以下であるとよい。
上記の構成では、表面保護層の主成分となる樹脂材料、当該樹脂材料のガラス転移温度、表面保護層の厚さを最適化することで、加飾部材の製造にあたって表面保護層の追従性と耐候性を両立させ、成形加工性を向上させることができる。
【0020】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記加飾部材は、3次元構造を有しており、前記基材の表面に貼合された前記加飾材の角部には、該角部を丸めた角R部が形成され、該角R部の曲率半径が0.5mm以上であると良い。
上記の構成では、加飾材の角部において曲率半径0.5mm以上の角R部が形成されているため、加飾部材の成形加工性を向上できる(成形時の割れを抑制できる)。
【0021】
また、上記の加飾部材製造方法において、前記表面保護層は、前記アクリル系樹脂と、顔料とを含有し、前記表面保護層の総質量に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が50~90質量%であって、前記顔料の含有量が1~15質量%であると良い。
また、前記表面保護層は、前記加飾部材の耐候性を向上させるための耐候性向上剤をさらに含有し、前記表面保護層の総質量に対して、前記耐候性向上剤の含有量が1~10質量%であると良い。
上記の構成では、アクリル系樹脂、顔料、及び/又は耐候性向上剤の含有量を最適化することで、さらに外観性を確保し、耐候性を向上させた加飾部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の加飾部材製造方法によれば、加飾材を基材に貼合する際に、柔軟性を有する成形部材によって加飾材を基材の形状に追従させることが可能となるとともに、成形部材が加飾部材とは別体であるため加飾部材の重量が増加することが抑制される。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、加飾材と基材の間に空気が残ることが抑制されるため、エア溜まりの生成が抑制される。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、成形部材が弾性体であることで、延び易いため、効率よく加飾材を基材の形状に追従させることが可能となる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、成形部材がシリコンゴムであることで、熱を与えても固まらないため、繰り返し使用することが可能となる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、樹脂含有突板と基材との間に通気性層を配置することで、エア溜まりの生成が抑制される。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、加飾材と基材の間に弾性層を有していることで、基材に貼合した後における加飾材の形状が適切なものとなるため意匠性が向上する。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、基材に対して加飾材及び弾性層を効率よく貼合することが可能となる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、加飾材が弾性層よりも薄く形成されていることで、弾性層の弾性を残したまま減圧によって加飾材を変形させることが可能となる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、基材及び加飾材が適切に支持されることで、効率よく加飾材を基材に貼合することが可能となる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、支持治具が撓むことで、成形部材が変形する際の追従性が向上するため、加飾材の基材の形状に対する追従がより適切なものとなる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、所定形状の加飾材の表面に表面保護層を塗工する場合と比較して、表面保護層の塗工作業がし易くなる。結果として、製造工数の削減につながる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、表面保護層の主成分となる樹脂材料、当該樹脂材料のガラス転移温度、表面保護層の厚さを最適化することで、加飾部材の製造にあたって、表面保護層の追従性と耐候性を両立させ、成形加工性を向上させることができる。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、加飾材の角部において曲率半径0.5mm以上の角R部が形成されているため、加飾部材の成形加工性を向上させることができる(成形時の割れを抑制できる)。
また、本発明の加飾部材製造方法によれば、アクリル系樹脂、顔料、及び/又は耐候性向上剤の含有量を最適化することで、さらに外観性を確保し、耐候性を向上させた加飾部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る加飾部材製造方法により製造した加飾パネルを備えるドアトリムの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る加飾パネル製造方法のフロー図である。
【
図14】第1の変形例に係る支持治具を説明する図である。
【
図15】第1の変形例に係る支持治具を説明する図である。
【
図16】第2の変形例に係る支持治具を説明する図である。
【
図17】第3の変形例に係る支持治具を説明する図である。
【
図18】第4の変形例に係る支持治具を説明する図である。
【
図19】第5の変形例に係る支持治具を説明する図である。
【
図20】変形例に係る加飾パネルの構成を示す模式的断面図である。
【
図21】第2実施形態に係る加飾パネルの構成を示す模式的断面図である。
【
図23】第2実施形態に係る加飾パネル製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1乃至
図23を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る加飾部材製造方法について、加飾パネル製造方法を例示して説明する。本実施形態において、加飾パネルとは、例えば車両のドアトリムやインストルメントパネル等の内装部品の一部に用いられる部材とする。
【0025】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0026】
<加飾パネルP>
図1乃至
図4に、本実施形態に係る加飾パネル製造方法より製造される加飾部材の一例としての加飾パネルPを示す。
図1に、乗用車のドアの室内側の側面に設けられるドアトリムDを示すように、加飾パネルPは、ドアトリムDのトリムアッパー部に設けられる加飾部材である。ドアトリムDは、車両用ドアの車内側を装飾するものであり、不図示のドアインナパネルに取り付けられた部品群により構成される。
【0027】
図2乃至4に示されるように、加飾パネルPは、断面が湾曲した形状である。そして、加飾パネルPは、パネル基材1の上に、木材を薄くスライスした板材である突板を加工した樹脂含浸突板2Aを含む加飾材2を貼合して構成される。本実施形態に係る加飾パネル製造方法によれば、このような湾曲した3次元形状のパネル基材1に対しても、突板を含む加飾材2を好適に貼合して加飾パネルPを製造できる。
【0028】
図3及び
図4に示されるように、加飾パネルPは、パネル基材1の表面に加飾材2を備える加飾部材である。パネル基材1は、例えば射出成形等により製造した樹脂からなる部材としてよい。
【0029】
加飾材2は、樹脂含浸突板2Aと、通気性層2Bと、パネル基材1に接着する接着層2Cと、を有している。樹脂含浸突板2Aは、突板(例えば天然木の薄板材)に樹脂(例えば合成樹脂)を含浸させた部材である。このように、突板内部の導管や繊維に樹脂が含まれることにより、突板内部の応力集中が緩和可能となっている。
【0030】
通気性層2Bは、樹脂含浸突板2Aとパネル基材1との間に配置されている不織布やコットンシート等で形成された通気性を有する裏材である。通気性層2Bによれば、樹脂含浸突板2Aとパネル基材1との間に空気が残ることが抑制されるため、エア溜まりの生成が抑制される。
【0031】
接着層2Cは、パネル基材1に接着する層である。例えば接着層2Cに加熱により硬化する熱硬化性樹脂又は加熱により軟化する熱可塑性樹脂を用いることで、加熱工程によりパネル基材1と加飾材2とを接着させることができる。接着層2Cが通気性のある接着剤によって構成されている場合、加飾材2とパネル基材1の間に空気が残ることが抑制されるため、エア溜まりの生成が抑制されるので好適である。
【0032】
本実施形態に係る加飾パネル製造方法は、一方が開口した第一の筐体と、第一の筐体側が開口した第二の筐体とを突き合わせることで形成される密閉空間を減圧可能な真空成形機を用いて、パネル基材の表面に、突板を含む加飾材を貼合した加飾パネルを製造する方法である。
【0033】
<加飾パネル製造方法の概要>
図5は、本実施形態に係る加飾パネル製造方法のフロー図である。本実施形態に係る加飾パネル製造方法は、パネル基材1の表面に加飾材2を備える加飾パネルPの製造方法であって、パネル基材1の表面と対向する位置に加飾材2を配置する工程(ステップST1)と、一方が開口した下側筐体21と下側筐体21側が開口した上側筐体11との境界に柔軟性を有する成形部材40を配置し、下側筐体21と上側筐体11とを突き合わせて、下側筐体21と成形部材40により密閉される下側空間20A、及び上側筐体11と成形部材40により密閉される上側空間10Aを形成する工程(ステップST2)と、下側空間20Aが上側空間10Aよりも減圧された状態で、成形部材40を介して加飾材2を所定の形状に成形する工程(ステップST3)と、加飾材2をパネル基材1の表面に貼合する工程(ステップST4)と、を有する。
【0034】
以下、本実施形態に係る加飾パネル製造方法の概要について説明する。本実施形態に係る加飾パネル製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(11)を有する。
(1)第一の筐体としての下側筐体21内に設けられた上下可動の台22Aにパネル基材1を載置し、パネル基材1の表面と対向する位置に加飾材2を配置する工程
(2)下側筐体21と第二の筐体としての上側筐体11との境界に柔軟性を有する成形部材40を配置する工程
(3)上側筐体11と下側筐体21とを突き合わせて、下側筐体21と成形部材40により密閉される第一の空間としての下側空間20A、及び上側筐体11と成形部材40により密閉される第二の空間としての上側空間10Aを形成する工程
(4)下側空間20Aと上側空間10Aをそれぞれ減圧する工程
(5)上側筐体11内に設けられたヒーター12により加熱する工程
(6)加飾材2を所定の形状に成形するのに先立って加飾材2を加熱蒸気Sにより加熱する工程
(7)台22Aを上方に移動させて成形部材40を介してパネル基材1の表面に加飾材2を当接させる工程
(8)上側空間10Aの減圧を解除するとともに成形部材40を介して加飾材2を所定の形状に成形する工程
(9)加飾材2をパネル基材1の表面に貼合する工程
(10)加飾パネルPを真空成形機から取り出す工程
(11)加飾材2の端部をトリミングする工程
【0035】
以下、上記の各工程の詳細について図面を参照しながら説明する。
【0036】
<真空成形機VF>
図6を参照しながら、本実施形態に係る加飾パネル製造方法に用いられる真空成形機VFの構成の概要について説明する。なお、
図6乃至
図12は、真空成形機VFの断面を模式的に示したものである。
図6に示されるように、真空成形機VFは、上側ユニット10と下側ユニット20を備える。
【0037】
上側ユニット10は、第二の筐体としての上側筐体11、上側筐体11の内部に配されるヒーター12を備える。本実施形態では、ヒーター12は、上側筐体11の内壁の上面に取り付けられており、例えば複数の加熱素子から構成されることとしてよい。
【0038】
上側筐体11は、一方が開口した箱型のチャンバー部材である。具体的には、上側筐体11は、下面の一部が開口している。上側筐体11は、上下に移動可能となっており、後述する下側筐体21と突き合わせることにより、上側筐体11の内部空間を密閉することができる。
図6に示されるように、上側筐体11の内壁には、配管14、配管16、配管19が連結されている。
【0039】
配管14は、蒸気供給装置13からの加熱蒸気を上側筐体11の内部に供給する管である。また、配管14において、上側筐体11と蒸気供給装置13とを接続する間の一部に開閉弁15が設けられている。そして、開閉弁15を開いている間のみ、上側筐体11の内部に加熱蒸気が供給されるようになっている。
【0040】
配管16は、その一部に開閉弁17が設けられており、上側筐体11の内部空間を閉じて減圧する際には、開閉弁17を閉じる。その後、開閉弁17を開くことにより、減圧した上側筐体11の内部空間の圧力を大気圧に戻すことができる。
【0041】
配管19は、開閉弁18、配管25を介して吸引ポンプ24に接続している。上側筐体11の内部空間を密閉した後に、開閉弁18を開けた状態で吸引ポンプ24により空気を吸引することで、上側筐体11の内部空間を減圧状態(真空状態)にすることができる。
【0042】
次に、下側ユニット20について説明する。
図6に示されるように、下側ユニット20は、第一の筐体としての下側筐体21、下側筐体21の内部に配される台22A、台22Aを上下動可能とする可動機構22を備える。
【0043】
下側筐体21は、上側筐体11側が開口した箱型のチャンバー部材である。具体的には、下側筐体21は上面の一部が開口している。なお、上側筐体11と下側筐体21の開口部はそれぞれ対向する位置に設けられている。また、上述したように、下側筐体21は上側筐体11と突き合わせることで、下側筐体21の内部空間を密閉することができる。すなわち、上側筐体11と下側筐体21を突き合わせることにより形成される空間は密閉空間となる。
【0044】
図6に示されるように、下側筐体21の内壁には、配管25が連結されている。配管25は、下側筐体21と吸引ポンプ24を連結する管であり、配管25と吸引ポンプ24の間には開閉弁26が設けられる。下側筐体21の内部空間を密閉した後に、開閉弁26を開けた状態で吸引ポンプ24により空気を吸引することで、下側筐体21の内部空間を減圧状態(真空状態)にすることができる。
【0045】
<加飾パネル製造方法の説明>
次に、
図6乃至
図13に基づいて、パネル基材1に加飾材2を貼合して加飾パネルPを製造する工程の詳細について、真空成形機VFを用いて行われる例を示して説明する。なお、初期状態においては、開閉弁15、開閉弁17、開閉弁18、開閉弁26は全て閉じておくこととする。
【0046】
[工程(1)]
まず、
図6に示されるように、台22Aの上にパネル基材1を載置する。具体的には、台22Aの上には、パネル基材1の下面形状に沿った受容部30aを有する支持治具30が設置されており、支持治具30の上にパネル基材1の下面を当接させた状態で配置する。これにより、パネル基材1が可動機構22に対して位置が固定される。そして、パネル基材1の表面と対向する位置に加飾材2を配置する。
【0047】
また、
図6に示されるように、上側筐体11の開口部を覆うように柔軟性を有する成形部材40が載置される。すなわち、成形部材40により、上側筐体11の内部空間が密閉されるように、成形部材40を配置する。成形部材40は、加飾材2をパネル基材1の表面に沿った所定の形状に成形するための部材である。
【0048】
成形部材40は、柔軟性を有するシート状又はフィルム状の部材(シート部材又はフィルム部材)であり、弾性体である。成形部材40が弾性シートや弾性フィルムなどの弾性体であると、力が加わった際に延び易いため、効率よく加飾材2をパネル基材1の形状に追従させることが可能となる。また、成形部材40は、耐熱性を有する熱可塑性樹脂(例えば、オレフィン系やウレタン系)やシリコンゴムで形成されていてもよい。成形部材40が熱可塑性樹脂で形成された熱可塑性シートや熱可塑性フィルムであると、熱を与えた場合に延び易いため、効率よく加飾材2をパネル基材1の形状に追従させることが可能となる。また、成形部材40がシリコンゴムで形成されたシリコンゴムシートであると、熱を与えても固まらないため、加飾材2をパネル基材1に貼合する工程に繰り返し使用することが可能となる。
【0049】
[工程(2),工程(3)]
次に、
図7に示されるように、下側筐体21が成形部材40と当接するまで下側筐体21を上側に移動させて、上側筐体11と下側筐体21により成形部材40を挟み込むようにする(工程(2))。換言すれば、上側筐体11と下側筐体21とを突き合わせることで、上側筐体11と下側筐体21により成形部材40を挟み込むようにする。
【0050】
本工程により、上側筐体11と成形部材40により密閉される上側空間10Aと、下側筐体21と成形部材40により密閉される下側空間20Aが形成される(工程(3))。なお、本工程の際には、ヒーター12のスイッチをONとして、加熱を開始することとしてよい。以後、ヒーター12による加熱は工程終了まで継続する。また、図面においては、ヒーター12がONである状態を、ヒーター12を黒く塗ることにより表している。
【0051】
[工程(4),(5)]
次に、開閉弁18と、開閉弁26を開いた後に、吸引ポンプ24により上側空間10Aと下側空間20Aの減圧を開始し、それぞれを真空状態にまで減圧する(工程(4))。
図8には、真空状態にまで減圧される上側空間10Aと下側空間20Aの状態を示している。本実施形態においては、真空状態である場合を、内部をドットで埋めることにより表している。なお、真空状態にまで減圧した後には、開閉弁18と開閉弁26を再び閉じることとしてよい。また、上側空間10Aと下側空間20Aを減圧した状態においても、ヒーター12による加熱を実行する(工程(5))。
【0052】
[工程(6)]
次に、
図9に示す位置まで台22Aを上昇させる。そして、
図10に示されるように、加飾材2をパネル基材1に沿って変形させるに先立って、蒸気供給装置13からの加熱蒸気Sを上側空間10Aに注入する。これにより樹脂含浸突板2Aを含む加飾材2を変形しやすくする。
【0053】
[工程(7)]
次に、
図11に示されるように、可動機構22により台22Aを上方に移動させて、パネル基材1及び加飾材2を成形部材40に押し付ける。こうして、成形部材40を介してパネル基材1の表面が加飾材2の接着層2Cに当接する。
【0054】
[工程(8),(9)]
次に、
図11に示されるように、上側空間10Aの圧力が、開閉弁17を開くことにより減圧状態から大気圧に戻される(つまり、減圧が解除される)とともに、蒸気供給装置13による加熱蒸気により加圧状態に切り替わる。
【0055】
また、可動機構22により台22Aを更に上に移動させて、パネル基材1及び加飾材2を成形部材40に対して強く押し当てることで加飾材2をパネル基材1の表面に沿った形状に成形する。こうすることで、加飾材2を、パネル基材1の表面に沿った所定の形状に成形する(工程(8))。この際、加飾材2をヒーター12に近づけてより加飾材2を加熱する。
【0056】
本工程では、上側空間10Aを加圧する一方で、下側空間20Aは真空状態に維持する。これにより生じる上側空間10Aと下側空間20Aの圧力差により、成形部材40を介して加飾材2が上からパネル基材1に対して強く付けられると同時に、台22Aからの支持によりパネル基材1も下から加飾材2に対して強く押し付けられる。
【0057】
この際、加熱蒸気Sとヒーター12による加熱により、加飾材2の樹脂含浸突板2Aが柔軟に変形しやすくする。これにより、樹脂含浸突板2Aが割れることが抑制される。また、樹脂含浸突板2Aには樹脂が含浸されているため、その点でも応力集中が緩和され、更に割れにくくなる。そして、本工程により、パネル基材1の表面に加飾材2が貼合される(工程(9))。
【0058】
このように、柔軟性を有する成形部材40を介して加飾材2を所定の形状に成形して、加飾材2をパネル基材1の表面に貼合するため、成形部材40によって加飾材2をパネル基材1の形状に追従させることが可能となる。また、成形部材40が加飾パネルPとは別体であるため加飾パネルPの重量が増加することが抑制される。
【0059】
[工程(10),(11)]
次に、上記工程(9)の後に、必要に応じて加飾パネルPを冷却してから、上側筐体11を上部に移動させて(
図12)、加飾パネルPを支持治具30から取り外し、真空成形機VFから取り出す(工程(10))。そして、
図13に示されるように、加飾材2の端部をトリミングして(工程(11))、加飾パネルPが完成する(
図13)。トリミングは、物理的なカッターを用いてもよいし、レーザーを用いてもよい。
【0060】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態では、第一の筐体(下側筐体21)と第二の筐体(上側筐体11)を鉛直方向に配置したが、第一の筐体と第二の筐体を水平方向に配置してもよい。
【0061】
以下、
図14乃至
図19を参照して、支持治具30の変形例を説明する。
図14及び
図15(第1の変形例)に示されるように、支持治具30が受容部30aの周囲に上方に突出する立設部31を備えていてもよい。このとき、立設部31が加飾材2を支持するために切り欠かれた凹部32を有していると好適である。
【0062】
このような構成によれば、パネル基材1及び加飾材2が支持治具30によって互いに適切な配置に支持されるため、効率よく加飾材2をパネル基材1に貼合することが可能となる。具体的には、
図14に示す状態から
図15に示す状態に成形部材40が変形することで、加飾材2の端末が凹部32から外れて、パネル基材1の表面に沿った形状に順次追従するように変形し、圧着されるため、効率よく加飾材2をパネル基材1に貼合することが可能となる。
【0063】
なお、
図16(第2の変形例)に示されるように、加飾材2を支持するために切り欠かれた凹部を有しない立設部31とすることも可能である。また、
図17乃至
図19に示されるように、立設部を支持治具30の本体とは別体に形成することも可能である。
【0064】
図17(第3の変形例)の立設部31Xの高さは、受容部30aに保持されたパネル基材1の上端部よりも高く構成されている。また、
図18(第4の変形例)の立設部31Yの高さは、受容部30aに保持されたパネル基材1の上端部と略一致するように構成されている。また、
図19(第5の変形例)の立設部31Zの高さは、受容部30aに保持されたパネル基材1の上端部よりも低く構成されている。
【0065】
支持治具30の受容部30aは、安定した保持を行う観点から、硬度が高い材料で形成されていることが好ましい。また、
図14乃至
図19の立設部は、支持治具30の本体同じ材料で形成されていてもよいが、柔軟性を有する材料で形成してもよい。支持治具30の一部、具体的には、受容部30aの周囲に配置された立設部が撓むことで、成形部材40が変形する際の追従性が向上するため、加飾材2のパネル基材1の表面形状に対する追従がより良好なものとなる。
【0066】
図20は、変形例に係る加飾パネルPXの構成を示す模式的断面図である。加飾パネルPXは、加飾材2とパネル基材1の間に弾性層2Xを有していている。弾性層2Xは、例えば、ウレタンなど弾性を有する材料で形成することができ、ウレタンパッドの薄層を例示することができるが、これに限定されるものではない。弾性層2Xが配置されていると、パネル基材1に貼合した後における加飾材2の形状が適切なものとなるため意匠性が向上する。
【0067】
このとき、加飾材2及び弾性層2Xが、パネル基材1よりも表面積が大きいと、パネル基材1に対して加飾材2及び弾性層2Xを効率よく貼合することが可能となる。また、加飾材2は、弾性層2Xよりも薄く形成されているとよい。加飾材2が弾性層2Xよりも薄く形成されていることで、弾性層2Xの弾性を残したまま減圧によって加飾材2を変形させることが可能となる。
【0068】
また、樹脂含浸突板2Aの上にクリア塗装又は透明フィルムにより構成される表面保護層(不図示)を設けていることで、加飾材2の表面を保護することも可能である。
【0069】
以上、本実施形態に係る加飾部材製造方法について、加飾パネル製造方法を例示して説明したが、本実施形態に係る加飾部材製造方法は、加飾パネル製造方法に限定されるものではなく、加飾パネル以外の加飾部材にも適用することが可能である。また、加飾部材は、車両のドアトリムやインストルメントパネル等の車両用の内装部品に限定されるものではなく、車両用以外の装飾部品であってもよい。
【0070】
<第2実施形態の加飾パネルP>
次に、
図21乃至
図23に基づいて、第2実施形態の加飾パネルP2について説明する。
なお、上述した加飾パネルPと重複する内容については説明を省略する。
第2実施形態の加飾パネルP2は、パネル基材101の表面に加飾材102を備え、また加飾材102の表面に表面保護層103を備えている加飾部材であって、3次元構造を有している。
【0071】
加飾材102は、樹脂含浸突板102Aと、通気性層102Bと、パネル基材101の表面に接着する接着層102Cと、を有している。
加飾材102(樹脂含浸突板102A)の表面には、公知な方法で凹凸模様104が予め形成されている。そのため、例えば本木目(オープンポーラス)の外観を表現することで、加飾パネルP2の意匠性を向上させることができる。
また、加飾材102の角部には、当該角部を丸めた角R部105が形成されており、角R部105の曲率半径が0.5mm以上となっている。そのため、加飾パネルP2の成形加工性を向上させることができる、すなわち、加飾材102の成形時の割れを抑制できる。
【0072】
表面保護層103は、主成分となる「アクリル系樹脂」と、「顔料」と、「艶消し剤」と、「耐候性向上剤」と、を含有する保護層として構成されている。
表面保護層103の厚さは、10μm以上であって40μm以下であると好ましい。
理由として、表面保護層103の厚さが10μm未満になると、加飾パネルP2を成形するときに表面保護層103にクラックが発生することや割れてしまうことが確認されている。また、表面保護層103の厚さが40μm超えになると、表面保護層103の光沢性が高くなって、加飾パネルP2の外観商品性を確保できないことが確認されている。
上記の場合において、加飾材102及び表面保護層103の総厚さが0.3mm以上であって1.5mm以下であると、成形加工性及び外観商品性をより高めることができる。
【0073】
表面保護層103では、その総質量に対して「アクリル系樹脂」の含有量が50~90質量%であって、「顔料」の含有量が1~15質量%であって、「艶消し剤」の含有量が1~5質量%であって、「耐候性向上剤」の含有量が1~10質量%であると好ましい。
また、「アクリル系樹脂」は、好ましくは、ガラス転移温度が66℃以上であって135℃以下のアクリル系樹脂であると良く、より好ましくはガラス転移温度が82℃以上であって135℃以下のアクリル系樹脂であると良く、一層好ましくは、ガラス転移温度が100℃であると良い。
また、「アクリル系樹脂」は、好ましくは、TXフリーのアクリル系樹脂であると良い。TXフリーとは、シックハウス症候群誘発物質として規制対象となっているトルエンやキシレンを配合していないことを意味している。
また、「耐候性向上剤」は、加飾パネルP2の耐候性を向上させるための添加剤であって、好ましくは、紫外線吸収剤や光安定剤であると良い。
【0074】
上記において、「アクリル系樹脂」の含有量が50質量%未満になると、加飾パネルP2の物性全般(特に耐候性)が低下してしまうことが確認されている。また、「アクリル系樹脂」の含有量が90質量%超えになると、加飾パネルP2の光沢及び色調を調整することが困難になることが確認されている。
また上記において、「アクリル系樹脂」のガラス転移温度が66℃未満になると、加飾パネルP2の耐熱性が劣ることが確認されている。また、「アクリル系樹脂」のガラス転移温度が135℃超えになると、加飾パネルP2の成形時に加飾材102が割れてしまうことが確認されている。
【0075】
また上記において、「顔料」の含有量が1質量%未満になると、加飾パネルP2の外観商品性が低下してしまうことが確認されている。また、「顔料」の含有量が15質量%超えになると、表面保護層103の密着性が低下してしまうことや、成形時に加飾材102が割れてしまうことが確認されている。
また上記において、「艶消し剤」の含有量が1質量%未満になると、加飾パネルP2の色艶(グロス値)が高くなり、外観商品性が低下してしまうことが確認されている。また、「艶消し剤」の含有量が5質量%超えになると、表面保護層103の塗布性が低下し、外観商品性が低下してしまうことが確認されている。
【0076】
また上記において、「耐候性向上剤」の含有量が1質量%未満になると、加飾パネルP2の耐候性が低下してしまうことが確認されている。また、「耐候性向上剤」の含有量が10質量%超えになると、コストが上がってしまう。
また上記において、「耐候性向上剤」が紫外線吸収剤であると、一定波長の紫外線を吸収することで、表面保護層103の耐候性を効率良く高めることができる。
また上記において、「耐候性向上剤」が光安定剤であると、紫外線に曝されたときの表面保護層103の劣化の進行を抑制し、耐候性を効率良く高めることができる。
【0077】
次に、
図23に基づいて、第2実施形態の加飾パネル製造方法(ステップST1-1~ST4)について説明する。
第2実施形態の加飾パネル製造方法は、加飾材102の表面に表面保護層103を塗工する工程(ステップST1-1)と、パネル基材101の表面と対向する位置に加飾材102を配置する工程(ステップST1-2)と、
図7に示すように、下側筐体21と成形部材40により密閉される下側空間20A、及び上側筐体11と成形部材40により密閉される上側空間10Aを形成する工程(ステップST2)と、下側空間20Aが上側空間10Aよりも減圧された状態で、成形部材40を介して下側空間20A内に設けられた加飾材102を所定の形状に成形する工程(ステップST3)と、加飾材102をパネル基材101の表面に貼合する工程(ステップST4)と、を有している。
詳しく述べると、ステップST1-1では、例えばロールコーターを用いて、加飾材102の表面に対し表面保護層103を均一な厚みとなるように塗布する。塗布後は十分に乾燥させる。
上記ステップST1-1を有することで、例えば成形後の加飾材102の表面に表面保護層103を塗工する場合と比較して、表面保護層103の塗工作業がし易くなる。例えば、スプレー塗工と比較して、表面保護層103の厚みを均一化させることができる。
【符号の説明】
【0078】
D ドアトリム
P,PX,P2 加飾パネル(加飾部材)
1,101 パネル基材(基材)
2,102 加飾材
2A,102A 樹脂含浸突板
2B,102B 通気性層
2C,102C 接着層
2X 弾性層
103 表面保護層
104 凹凸模様
105 角R部
VF 真空成形機
10 上側ユニット
10A 上側空間(第二の空間)
11 上側筐体(第二の筐体)
12 ヒーター
13 蒸気供給装置
14 配管
15 開閉弁
16 配管
17 開閉弁
18 開閉弁
19 配管
20 下側ユニット
20A 下側空間(第一の空間)
21 下側筐体(第一の筐体)
22 可動機構
22A 台
24 吸引ポンプ
25 配管
26 開閉弁
30 支持治具
30a 受容部
31,31X,31Y,31Z 立設部
32 凹部
40 成形部材
S 加熱蒸気