(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】自動車外装パネルの補強構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20231130BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20231130BHJP
B60R 21/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60R11/02 A
B60R21/02
(21)【出願番号】P 2021545653
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034789
(87)【国際公開番号】W WO2021049670
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019167395
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】澤 靖典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利哉
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-360790(JP,A)
【文献】特開2009-006838(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021422(WO,A1)
【文献】特許第3403276(JP,B2)
【文献】特開2008-087741(JP,A)
【文献】特開平10-100674(JP,A)
【文献】特開2017-077759(JP,A)
【文献】特開2016-153292(JP,A)
【文献】特開平10-250369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 11/02
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のアウタパネルと、
前記アウタパネルより車両内側に配置される補強部材と、
前記補強部材より車両内側に配置される板状のインナパネルと、
前記インナパネルより車両外側に設けられ、前記補強部材を車両内側から支持し、前記アウタパネルに車両外側から衝撃荷重が負荷されると前記補強部材と前記インナパネルとの間で変形して衝撃を吸収する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、車両内側から車両外側に向かう軸心を有する筒状体から構成され、
前記支持部材の車両内側の端部は前記インナパネルの車両外側の面に固定され、
前記軸心に沿う方向から見て、前記インナパネルにおける前記支持部材と重複する領域には、開口がな
く、
前記支持部材を車両外側から見たときの前記支持部材の前記補強部材側の端部の最大幅が前記補強部材の幅よりも大きい、自動車外装パネルの補強構造。
【請求項2】
前記筒状体は、円筒状部分を有する、請求項1に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項3】
前記筒状体は、角筒状部分を有する、請求項1に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項4】
前記筒状体は、六角形の前記角筒状部分を有する、請求項3に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項5】
前記支持部材は、前記軸心の方向に延在し、前記筒状体を複数の区画に仕切る仕切り体を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項6】
前記支持部材は、複数の前記仕切り体を有し、
複数の前記仕切り体の少なくとも2つが前記筒状体の内部で交差するように配置されている、請求項5に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項7】
前記支持部材は、前記補強部材側の端部に設けられ、前記補強部材と対向する対向面を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項8】
前記対向面は前記筒状体の軸心に向けて延在する、請求項7に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項9】
前記支持部材は、前記インナパネル側の端部に設けられ、前記インナパネルに固定されるフランジを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項10】
複数の前記支持部材を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項11】
前記補強部材は、
前記アウタパネルに沿う第1の方向に延在する複数の長尺状の第1の部材と、
前記アウタパネルに沿う第2の方向に延在し、前記第1の部材と交差する長尺状の複数の第2の部材と、を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項12】
前記第2の部材は、前記第1の部材よりも太く、
前記支持部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が交差する交差部において、前記第1の部材又は前記第2の部材を支持する、請求項11に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項13】
前記支持部材の前記補強部材側の端部に、前記交差部における前記第1の部材及び前記第2の部材の形状に対応した凹部が設けられた、請求項12に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項14】
前記第2の部材は、前記第1の部材よりも太く、
前記支持部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が交差する複数の交差部のうち、隣接する前記交差部の間で前記第2の部材を支持する、請求項11に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項15】
前記支持部材の前記補強部材側の端部に、隣接する前記交差部の間における前記第2の部材の形状に対応した凹部が設けられた、請求項14に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項16】
前記アウタパネルは、自動車のドアにおけるアウタパネルであって、
前記第1の部材は車高方向に延在し、前記第2の部材は車長方向に延在する、請求項11~15のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項17】
前記支持部材は、車両外側の端部が前記第1の部材又は前記第2の部材に固定された第1の支持部材と、車両内側の端部が前記インナパネルに固定された第2の支持部材を有し、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とは、前記ドアに備えられた窓ガラスが進入するための隙間が形成されるように、互いに離間している、請求項16に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【請求項18】
前記支持部材を車両外側から見たときの前記支持部材の前記補強部材側の端部の最大幅が前記補強部材の幅の2倍以上である、請求項1~17のいずれか1項に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装パネルの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のドアに関し、サイドインパクトビームの両端部間の位置に設けられ、インナーパネルに結合されてインナーパネルの一面により支持されている支持部材が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術は、サイドインパクトビームを断面ハット形の支持部材で支持することで、耐衝突性能の向上を図っている。しかしながら、断面ハット形の支持部材では、構造上、縦壁により荷重を受けることになるため、衝撃荷重が加わった際に支持部材が特定の方向に変形し易く、衝撃負荷を効率よく吸収できない。このため、耐衝突性能については改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、衝撃負荷の吸収性能を向上させた自動車外装パネルの補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)板状のアウタパネルと、前記アウタパネルより車両内側に配置される補強部材と、前記補強部材より車両内側に配置される板状のインナパネルと、前記インナパネルより車両外側に設けられ、前記補強部材を車両内側から支持し、前記アウタパネルに車両外側から衝撃荷重が負荷されると前記補強部材と前記インナパネルとの間で変形して衝撃を吸収する支持部材と、を備え、前記支持部材は、車両内側から車両外側に向かう軸心を有する筒状体から構成され、
前記支持部材の車両内側の端部は前記インナパネルの車両外側の面に固定され、
前記軸心に沿う方向から見て、前記インナパネルにおける前記支持部材と重複する領域には、開口がなく、
前記支持部材を車両外側から見たときの前記支持部材の前記補強部材側の端部の最大幅が前記補強部材の幅よりも大きい、自動車外装パネルの補強構造。
【0008】
(2)前記筒状体は、円筒状部分を有する、上記(1)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0009】
(3)前記筒状体は、角筒状部分を有する、上記(1)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0010】
(4)前記筒状体は、六角形の前記角筒状部分を有する、上記(3)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0011】
(5)前記支持部材は、前記軸心の方向に延在し、前記筒状体を複数の区画に仕切る仕切り体を有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0012】
(6)前記支持部材は、複数の前記仕切り体を有し、複数の前記仕切り体の少なくとも2つが前記筒状体の内部で交差するように配置されている、上記(5)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0013】
(7)前記支持部材は、前記補強部材側の端部に設けられ、前記補強部材と対向する対向面を有する、上記(1)~(6)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0014】
(8)前記対向面は前記筒状体の軸心に向けて延在する、上記(7)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0015】
(9)前記支持部材は、前記インナパネル側の端部に設けられ、前記インナパネルに固定されるフランジを有する、上記(1)~(8)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0016】
(10)複数の前記支持部材を備える、上記(1)~(9)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0017】
(11)前記補強部材は、前記アウタパネルに沿う第1の方向に延在する長尺状の複数の第1の部材と、前記アウタパネルに沿う第2の方向に延在し、前記第1の部材と交差する複数の長尺状の第2の部材と、を有する、上記(1)~(10)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0018】
(12)前記第2の部材は、前記第1の部材よりも太く、前記支持部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が交差する交差部において、前記第1の部材又は前記第2の部材を支持する、上記(11)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0019】
(13)前記支持部材の前記補強部材側の端部に、前記交差部における前記第1の部材及び前記第2の部材の形状に対応した凹部が設けられた、上記(12)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0020】
(14)前記第2の部材は、前記第1の部材よりも太く、前記支持部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が交差する複数の交差部のうち、隣接する前記交差部の間で前記第2の部材を支持する、上記(11)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0021】
(15)前記支持部材の前記補強部材側の端部に、隣接する前記交差部の間における前記第2の部材の形状に対応した凹部が設けられた、上記(14)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0022】
(16)前記アウタパネルは、自動車のドアにおけるアウタパネルであって、前記第1の部材は車高方向に延在し、前記第2の部材は車長方向に延在する、上記(11)~(15)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0023】
(17)前記支持部材は、車両外側の端部が前記第1の部材又は前記第2の部材に固定された第1の支持部材と、車両内側の端部が前記インナパネルに固定された第2の支持部材を有し、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とは、前記ドアに備えられた窓ガラスが進入するための隙間が形成されるように、互いに離間している、上記(16)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0024】
(18)前記支持部材を車両外側から見たときの前記支持部材の前記補強部材側の端部の最大幅が前記補強部材の幅よりも大きい、上記(1)~(17)のいずれかに記載の自動車外装パネルの補強構造。
【0025】
(19)前記支持部材を車両外側から見たときの前記支持部材の前記補強部材側の端部の最大幅が前記補強部材の幅の2倍以上である、上記(18)に記載の自動車外装パネルの補強構造。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る自動車外装パネルの補強構造は、衝撃負荷の吸収性能を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態に係る自動車の外装パネルの内部を裏側(自動車の車両内側)から見た状態を示す模式図である。
【
図3】外装パネルを表側(自動車の車両外側)から見た状態を示す模式図である。
【
図4】
図3における一点鎖線I-I’に沿った断面を示す模式図である。
【
図5】支持部材の1つの構成例を示す斜視図である。
【
図6】
図3における第1の補強部材と第2の補強部材の交差部の構成の一例を示す斜視図である。
【
図7】交差部において、第1の補強部材と第2の補強部材を分離した状態を示す模式図である。
【
図8】交差部を車両外側から見た状態を示す平面図である。
【
図9】
図3における一点鎖線II-II’に沿った断面を示す模式図である。
【
図10】隣接する2つの交差部の間で第1の補強部材を支持するように支持部材140を配置した例を示す模式図である。
【
図11】隣接する2つの交差部の間で第1の補強部材を支持するように支持部材140を配置した例を示す模式図である。
【
図12】隣接する2つの交差部の間で第2の補強部材を支持するように支持部材140を配置した例を示す模式図である。
【
図13】隣接する2つの交差部の間で第2の補強部材を支持するように支持部材140を配置した例を示す模式図である。
【
図14】補強部材側の端部にフランジが設けられた支持部材を示す模式図である。
【
図15】補強部材側の端部にフランジが設けられた支持部材を示す模式図である。
【
図16】補強部材側の端部が軸心に向けて折り曲げられて、補強部材側に面146が形成された支持部材を示す模式図である。
【
図17】補強部材側の端部が軸心に向けて折り曲げられて、補強部材側に面が形成された支持部材を示す模式図である。
【
図18】支持部材を角筒から構成した例を示す斜視図である。
【
図19】支持部材を六角形の筒から構成した例を示す斜視図である。
【
図20】補強部材の形状に対応した凹部が設けられた支持部材を示す斜視図である。
【
図21】補強部材の形状に対応した凹部が設けられた支持部材を示す斜視図である。
【
図22】
図20に示す支持部材140が、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部に配置された状態を示す斜視図である。
【
図23】
図21に示す支持部材140が、
図10に示す位置に配置された状態を示す斜視図である。
【
図24】支持部材が仕切り体を備える構成を示す模式図である。
【
図25】支持部材が仕切り体を備える構成を示す模式図である。
【
図26】支持部材が仕切り体を備える構成を示す模式図である。
【
図27】支持部材が仕切り体を備える構成を示す模式図である。
【
図28】支持部材が仕切り体を備える構成を示す模式図である。
【
図29】ハット型の部材から支持部材を構成した例を示す模式図である。
【
図30】筒状構造の支持部材とハット型の支持部材について、車両側面からの衝突の際の衝撃吸収能力を比較して評価した結果を説明するための模式図である。
【
図31】筒状構造の支持部材とハット型の支持部材について、車両側面からの衝突の際の衝撃吸収能力を比較して評価した結果を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る自動車の外装パネルの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る自動車の外装パネル100の内部を裏側(自動車の車両内側)から見た状態を示す模式図である。ここでは、外装パネル100としてドアパネルを例示するが、外装パネル100は、フェンダー、ボンネット、ルーフ、リアゲートなど、自動車の他の部位のパネルであっても良い。
【0029】
図1に示すように、外装パネル100は、アウタパネル(外装材)110と補強部材120を有している。アウタパネル110は、一例として厚さが0.4mm程度の鋼板から構成される。アウタパネル110は、表側(自動車の車両外側)が凸面となるように湾曲している。また、湾曲の曲率は、上下方向に沿っている。
【0030】
補強部材120は、上下方向に配置された長尺状の第1の補強部材122と、水平方向に配置された長尺状の第2の補強部材124とを含む。なお、長尺状とは、所定方向に延在する長さを有する形状を意味し、特に所定方向と直交する断面の外形寸法の最大値よりも大きな長さで当該所定方向に延在する形状を意味する。また、第1の補強部材122と第2の補強部材124は、いずれも長尺状であるが、上下方向または水平方向の全域に渡って1部材から構成されていなくてもよい。例えば第1の補強部材122または第2の補強部材124は、両者が交差する交差部Cの位置で分断された複数の長尺状の部材から構成されていてもよい。第1の補強部材122は、アウタパネル110の曲率に倣って湾曲していることが望ましい。第2の補強部材124は、ほぼ直線状に延在しているが、アウタパネル110が湾曲している場合は、湾曲に倣った形状であることが望ましい。第1の補強部材122と第2の補強部材124は、アウタパネル110に倣った形状であれば、アウタパネル110に密着することができ、好ましくはアウタパネル110に接合(接着)することができるからである。
【0031】
図2は、補強部材120の構成を示す斜視図である。第1の補強部材122と第2の補強部材124の基本的な構成は同一とすることができるが、後述するように、第1の補強部材122と第2の補強部材124は、一方が他方に対して剛性がより高いものとされている。一例として、補強部材120は、中空の矩形(長方形)断面を有している。補強部材120は板材130を折り曲げて製造される。
図2に示す例では、補強部材120は長方形の断面形状であり、その一辺は長辺が16mm程度、短辺が10mm程度である。また、補強部材120を構成する板材130の板厚は、一例として0.8mm程度である。板材130としては、鋼板を用いることができる。
【0032】
図2に示すように、折り曲げられた板材130の端部130aと端部130bの間には所定の隙間が設けられていてもよい。一方、端部130aと端部130bは密着していても良い。また、端部130aと端部130bは、溶接や接着等により接合されても良い。補強部材120は、端部130a,130bが位置する面、あるいは端部130a,130bが位置する面に反対側の面がアウタパネル110と密着するように配置される。好適には、端部130a,130bが位置する面、あるいは端部130a,130bが位置する面に反対側の面がアウタパネル110と接合される。
【0033】
ここで、アウタパネル110と接合されるあるいは隣接する面を底面と称する。また、底面に反対側の面を頂面と称する。底面の両側に稜線を挟んで位置する面を縦壁と称する。補強部材120の断面において、短辺が底面、長辺が縦壁である。端部130a,130bが接合されずに頂面に配置される構成では、外装パネル100の外側方向から押されて補強部材120が湾曲した場合に、端部130a,130bから断面が開いて断面形状が崩壊しやすい。しかし、端部130a,130bが接合されていると、断面形状が崩壊することを防ぐことができるため、外装パネル100の剛性をより高めることが可能となる。端部130a,130bが底面に配置され、底面がアウタパネル110に接合されている場合も、アウタパネル110により端部130a,130bが離れて断面形状が崩壊することを防ぐことができる。
【0034】
図2に示すように、補強部材120の長手方向と直交する横断面において、矩形の短辺を「幅(D)」、長辺を「高さ(H)」とすると、補強部材120は、アウタパネル110の面に直交する方向の高さHはアウタパネル110に沿う方向の幅Dよりも大きい。これにより外装パネル100の車体外側から内側方向への衝突荷重が負荷される場合に、補強部材120の断面二次モーメントを効果的に向上することができる。そして、補強部材120の断面二次モーメントが向上することにより、本実施形態に係る外装パネル100は、耐衝突性能を向上することができる。
【0035】
なお、補強部材120の断面構成は、
図2のような端部130a,130bが向かい合う構成に限定されるものではなく、例えば端部130a,130bが離れた溝型(チャンネル)形状、あるいはハット形状であっても良い。また、補強部材120は、中空ではなく、中実の部材から構成されていてもよい。補強部材120の材質についても、鋼板以外にアルミニウムなどの他の金属材料を用いてもよいし、樹脂材料等を用いてもよい。
【0036】
図3は、外装パネル100を表側から見た状態を示す模式図である。説明のため、
図3では、アウタパネル110を破断して外装パネル100の内部構造を示している。外装パネル100は、アウタパネル110と補強部材120に加えて、補強部材120を車両内側から支持する支持部材140と、インナパネル135を有している。
【0037】
図4は、
図3における一点鎖線I-I’に沿った断面を示す模式図である。
図4に示すように、外装パネル100の表側から順に、アウタパネル110、補強部材120、支持部材140、インナパネル135の順でこれらが配置されている。なお、インナパネル135の更に内側には、自動車の内装部品(不図示)が配置される。第1の補強部材122、第2の補強部材124の端部は、アウタパネル110とインナパネル135の間でインナパネル135に対して固定される。
【0038】
図3及び
図4に示す例では、支持部材140は、第1の補強部材122と第2の補強部材124の交差部Cに設けられている。支持部材140は、軸心が外装パネル100の表側から裏側に向かう筒状体から構成されている。支持部材140は、インナパネル135側に設けられたフランジ142において、インナパネル135に対して溶接されている。
【0039】
なお、
図3において、支持部材140は必ずしも全ての交差部Cに設ける必要はなく、支持部材140は、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する複数の交差部Cのうち、一部の交差部Cのみに設けられていてもよい。支持部材140の数は、外装パネル100の想定する衝撃吸収能力に応じて、適宜設定することができる。
【0040】
支持部材140の補強部材120側の端部は、補強部材120の裏側(車両内側)の面と近接または接触している。支持部材140は、補強部材120に対して固定されておらず、補強部材120に対して非拘束とされている。好ましくは、支持部材140の補強部材120側の端部と補強部材120との間は離間しており、両者の間に隙間が設けられている。一方、支持部材140は、補強部材120に対して溶接等により固定されていてもよい。
【0041】
図5は、支持部材140の1つの構成例を示す斜視図である。
図5に示すように、支持部材140は円筒状に構成され、軸心方向の一端にはフランジ142が設けられている。例えば、支持部材140の本体は円筒のパイプから構成される。フランジ142は、支持部材140の筒状の本体と一体に構成されていてもよいし、本体に対して接合された別部品から構成されていてもよい。支持部材140は、フランジ142の溶接部141で溶接(スポット溶接、アーク溶接)が行われることにより、インナパネル135に対して固着される。なお、支持部材140は、インナパネル135に対し、リベット止め、接着、ボルトによる締結、等の手法で取り付けられていてもよい。支持部材140は、補強部材120と同様に、鋼材、アルミニウムなどの金属材料から構成される他、樹脂材料等から構成されていてもよい。
【0042】
図6は、
図3における第1の補強部材122と第2の補強部材124の交差部CCの構成の一例を示す斜視図であって、車両外側から交差部Cを見た状態を示している。また、
図7は、交差部Cにおいて、第1の補強部材122と第2の補強部材124を分離した状態を示す模式図である。
図6に示すように、交差部Cの位置では、第2の補強部材124が第1の補強部材122に対して車両外側(アウタパネル110側)に位置している。また、
図7に示すように、第1の補強部材122に凹部122aが設けられ、第2の補強部材124に凹部124aが設けられている。このため、交差部Cにおいて、凹部122aと凹部124aが当接するように第1の補強部材122と第2の補強部材124を組み合わせると、第1の補強部材122と第2の補強部材124の車両外側及び車両内側の面が概ね同一面となる。
【0043】
本実施形態において、車両外側から衝撃荷重が加わった場合に、第1の補強部材122と第2の補強部材124のそれぞれが果たす役割は異なる。第1の補強部材122と第2の補強部材124は、外装パネル100における長さ、湾曲の程度の相違から、太さが同じであっても、剛性が異なっている。例えば外装パネル100がドアパネルの場合、通常、ドアパネルは水平方向に横長の形状であるため、第1の補強部材122の方が第2の補強部材124よりも短い。このため、第1の補強部材122と第2の補強部材を両端が固定された梁と考えると、長さの短い第1の補強部材122の方が、長さの長い第2の補強部材124よりも、衝撃荷重が負荷された場合の剛性が高くなる。したがって、衝撃負荷を受け止めて衝撃吸収を行うためには、第1の補強部材122の方が第2の補強部材124よりも適している。
【0044】
また、第1の補強部材122がアウタパネル110の曲率に倣って車両外側に凸となるように湾曲していると、車両外側から衝撃荷重が負荷された場合に、第1の補強部材122は、長手方向に圧縮力を受けることで圧壊する。一方、湾曲の少ない第2の補強部材124は、車両外側から衝撃荷重が負荷された場合に、長手方向に圧縮力を殆ど受けない。したがって、第1の補強部材122は、衝撃荷重が加わった場合に圧壊することで、第2の補強部材124よりも耐衝撃性能に優れている。
【0045】
このため、剛性が高く、衝撃吸収により適した第1の補強部材122を第2の補強部材124よりも太くすることで、第1の補強部材122の剛性を更に高めることができ、衝撃吸収をより効果的に行うことができる。換言すれば、第1の補強部材122を第2の補強部材124よりも太くすることで、寸法的にも形状的にも耐衝撃性能に優れる第1の補強部材122を主として衝撃荷重を吸収することができる。
【0046】
なお、第1の補強部材122が第2の補強部材124よりも「太い」とは、第1の補強部材122または第2の補強部材124の長手方向と直交する断面(横断面)の各部材の輪郭よりも内側の領域の面積について、第1の補強部材122の方が第2の補強部材124よりも大きいことをいう。例えば、第1の補強部材122及び第2の補強部材124の横断面が
図2に示すような中空の矩形形状である場合、第1の補強部材122が第2の補強部材124よりも「太い」とは、
図2に示すD×Hで表される面積について、第1の補強部材122の方が第2の補強部材124よりも大きいことをいう。
【0047】
あるいは、第1の補強部材122及び第2の補強部材124の横断面が
図2に示すような中空の矩形形状である場合、第1の補強部材122が第2の補強部材124よりも「太い」とは、
図2に示す幅Dまたは高さHのいずれか一方または双方について、第1の補強部材122の方が第2の補強部材124よりも大きいことをいう。
【0048】
一方、第2の補強部材124は、外装パネル100に外側から加わった衝撃荷重を、第1の補強部材122へ伝える機能を有する。このため、
図3及び
図4に示す構成例では、交差部Cにおいて、第1の補強部材122よりも第2の補強部材124の方が車両外側に位置している。
【0049】
したがって、外装パネル100に車体外側から衝突荷重が負荷されると、衝撃荷重は、先ずアウタパネル110から補強部材120に伝わり、アウタパネル110に隣接して配置される補強部材120が衝撃荷重を受け止める。この際、交差部Cにおいて、第2の補強部材124は第1の補強部材122よりも車両外側に配置されているため、衝撃荷重は、隣接する第1の補強部材122の間では、アウタパネル110から第2の補強部材124に伝わり、その後、第1の補強部材122に伝わる。第1の補強部材122は、第2の補強部材124よりも剛性が高く、衝撃荷重が加わった場合に圧壊するため、第1の補強部材122により衝撃負荷を効果的に吸収することができる。
【0050】
以上のように、2つの補強部材を交差させて補強部材120を構成する場合に、剛性が低い方の補強部材が車両外側に配置され、剛性が高い方の補強部材は車両内側に配置される。これにより、車両外側から衝撃荷重が負荷された際に、剛性の低い方の補強部材から剛性の高い方の補強部材に衝撃荷重が伝わり、剛性が高い方の補強部材で衝撃荷重を確実に吸収することができる。また、車両外側の補強部材の剛性を比較的低くすることで、必要な強度を保ちつつ、より軽量化された外装パネル100を提供することができる。
【0051】
そして、本実施形態では、補強部材120を車両内側から支持する支持部材140が設けられている。衝撃荷重を受けた補強部材120が車両内側へ変形すると、補強部材120が支持部材140の補強部材120側の端部に当接し、衝撃荷重が支持部材140に伝わる。支持部材140のフランジ142がインナパネル135に固定されているため、衝撃荷重を受けた支持部材140が圧壊することで衝撃荷重が吸収される。支持部材140は、軸心が車両外側から車両内側へ延在する筒状体であるため、衝撃荷重を受けた際に圧壊し易く、衝撃吸収能力が高められている。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、補強部材120による衝撃荷重の吸収に加えて、支持部材140でも衝撃荷重を吸収することができるため、外装パネル100の耐衝撃性能を大幅に向上することができる。なお、上述したように、好ましくは支持部材140の補強部材120側の端部と補強部材120との間に隙間が設けられる。これにより、車両外側から衝撃荷重が負荷された際に、補強部材120が支持部材140の補強部材120側の端部に当接する前に補強部材120により衝撃荷重が吸収され、その後、支持部材140が圧壊することで衝撃荷重が吸収される。一方、支持部材140の補強部材120側の端部と補強部材120との間に隙間を設けない場合は、衝撃荷重が直接的に支持部材140に負荷される。この場合、支持部材140で衝撃荷重を十分に吸収できないと、インナパネル135が車室内側に変形する可能性がある。支持部材140の補強部材120側の端部と補強部材120との間に隙間を設けることで、補強部材120が支持部材140の端部に当接するまでの空走距離が確保され、補強部材120と支持部材140の双方で2段階に衝撃荷重が吸収されるため、インナパネル135が車室側に変形することが抑制される。
【0053】
なお、支持部材140の筒状体の肉厚は、衝撃荷重が負荷された際に支持部材140が適度に圧壊する程度の値としておくことが好ましい。
【0054】
補強部材120に対して、支持部材140は様々な位置に配置することができる。
図3及び
図4に示す例では、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cに支持部材140を設けたことで、第1の補強部材122と第2の補強部材124の交差部Cにおける衝撃吸収性能と、支持部材140の衝撃吸収性能の双方による衝撃吸収が可能となり、耐衝撃性能を高めることができる。
【0055】
具体的には、上述のように第1の補強部材122が衝撃荷重を主に吸収するが、交差部Cを通る第2の補強部材124も、車両内側へ変形することにより衝撃吸収に寄与する。したがって、交差部Cに支持部材140を設けることで、交差部Cにおける第1の補強部材122と第2の補強部材124の衝撃吸収能力に加えて、支持部材140の衝撃吸収能力を用いた衝撃吸収が可能となる。
【0056】
支持部材140が補強部材120を確実に支持するためには、衝撃荷重が負荷された場合に、支持部材140の補強部材120側の端面が確実に補強部材120を支持することが重要である。このため、本実施形態では、支持部材140の補強部材122側の端部が必ず補強部材120を支持するよう、支持部材140の幅と補強部材120の幅との間に所定の関係を持たせている。
【0057】
図8は、交差部Cを車両外側から見た状態を示す平面図である。
図8に示すように、支持部材140の補強部材120側の端部の直径Aは、第1の補強部材122または第2の補強部材124の幅Dよりも大きく、好ましくは幅Dの2倍以上とされている。支持部材140の直径Aを幅Dよりも大きくすることで、衝撃荷重を交差部Cから支持部材140へ確実に伝えることができる。また、直径Aを幅Dの2倍以上とすることで、衝撃荷重を受けた際に交差部Cの位置がアウタパネル110の面に沿った上下方向または水平方向にずれたとしても、車両外側から車両内側に向かう方向に見た交差部Cの位置が支持部材140の円筒の存在領域から外れることがなく、交差部Cから支持部材140へ衝撃荷重を確実に伝えることができる。なお、後述するように支持部材140を角筒または六角筒等で構成した場合、車両外側から車両内側に向かう方向に見たこれらの支持部材の補強部材120側の端部の外寸(最大幅)が第1の補強部材122または第2の補強部材124の幅Dよりも大きく、好ましくは幅Dの2倍以上となるように構成する。
【0058】
次に、支持部材140と窓ガラス170との干渉を防ぐ構成について説明する。
図9は、
図3における一点鎖線II-II’に沿った断面を示す模式図である。
図3において、外装パネル100に設けられた窓102には、窓ガラス170が備えられており、窓ガラス170が下降することで窓102が開くように構成されている。
【0059】
窓ガラス170が下降した際に、窓ガラス170の下端は
図3における一点鎖線I-I’の位置まで到達しない。したがって、一点鎖線I-I’の位置では、窓ガラス170が支持部材140と干渉することがなく、支持部材140と窓ガラス170との干渉を防ぐ構造は不要である。
【0060】
一方、窓ガラス170が下降した際に、窓ガラス170は
図3の一点鎖線II-II’の位置には到達する。支持部材140は補強部材120とインナパネル135の間に設けられており、補強部材120とインナパネル135の間は窓ガラス170が下降した際に窓ガラス170が通過するスペースである。このため、一点鎖線II-II’の位置では、窓ガラス170が支持部材140と干渉しない構造が必要となる。
【0061】
このため、一点鎖線II-II’の位置では、支持部材140の長さを一点鎖線I-I’の位置における長さよりも短くして、窓ガラス170を下降させた際に、窓ガラス170が支持部材140と干渉しない構造とされている。
【0062】
図9に示すように、一点鎖線II-II’の位置では、支持部材140の補強部材120側の端部が補強部材120まで達しておらず、支持部材140よりも車両外側に別の支持部材160が設けられている。支持部材160は、支持部材140と同様の筒状体とされ、交差部Cの位置において、支持部材140と重なるように設けられている。支持部材160は、補強部材120に対して溶接等により固定されている。
【0063】
支持部材160の車両内側には、フランジ162が設けられている。そして、支持部材140の補強部材120側の端部と、支持部材160のフランジ162との間には、隙間gが設けられている。
【0064】
以上のように、支持部材140は車両内側のフランジ142がインナパネル135に固定され、支持部材160は車両外側の端部が補強部材120に固定され、支持部材140と支持部材160の間には隙間gが設けられている。このような構成によれば、窓ガラス170が下降した際に、窓ガラス170が隙間gに進入することができるため、窓ガラス170と支持部材が干渉してしまうことを抑制できる。
【0065】
また、外装パネル100に外側から衝撃荷重が負荷された場合、窓102が閉じていれば、衝撃荷重を受けた補強部材120が車両内側へ変形すると、補強部材120に固定された支持部材160のフランジ162が支持部材140の車両外側の端部に当接し、衝撃荷重が支持部材160から支持部材140に伝わる。支持部材140のフランジ142がインナパネル135に固定されているため、衝撃荷重を受けた支持部材160、および支持部材140が圧壊することで衝撃荷重が吸収される。支持部材140、および支持部材160は、軸心が車両外側から車両内側へ延在する筒状体であるため、衝撃荷重を受けた際に圧壊し易く、衝撃吸収能力をより高めている。なお、窓ガラス170が下降しており、窓102が開いている場合、窓ガラス170を介して、支持部材160のフランジ162が支持部材140の車両外側の端部に当接する。
【0066】
以上のように、
図9の構成によれば、窓ガラス170が下降してくる位置においても、窓ガラス170と干渉することなく、衝撃荷重を吸収するための支持部材140、支持部材160を設けることができる。したがって、窓ガラス170が下降してくる位置においても、外装パネル100に車両外側から衝撃荷重が負荷された場合は支持部材140、支持部材160により衝撃吸収を行うことができる。
【0067】
図9に示す構成において、支持部材160の太さは支持部材140よりも細く構成され、支持部材160の車両内側の端部にフランジ162が設けられている。このため、衝撃荷重が負荷された際に、支持部材160のフランジ162は、支持部材140の車両外側の端部に確実に当接する。なお、支持部材160は補強部材120に対して固定されるため、衝撃荷重が負荷された際に、補強部材120と支持部材160の位置ずれが生じることは考慮しなくてよい。したがって、支持部材160の太さは、支持部材140より細くすることができる。
【0068】
図3及び
図4では、支持部材140を第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cの位置に配置した例を示したが、支持部材140は様々な位置に設けることができ、配置位置に応じた耐衝撃性能を得ることができる。
【0069】
図10及び
図11は、隣接する2つの交差部Cの間で第1の補強部材122を支持するように支持部材140を配置した例を示している。
【0070】
図10は、
図3と同様に外装パネル100を表側(車両外側)から見た状態を示しており、
図11は、
図10における一点鎖線III-III’に沿った断面を示す模式図である。
【0071】
図10に示すように、隣接する2つの交差部Cの間において、第1の補強部材122を支持するように支持部材140を配置した場合、衝撃負荷が加わった場合に、衝撃負荷を主として受け止める第1の補強部材122と支持部材140により衝撃吸収性能を高めることができる。
【0072】
上述したように、第1の補強部材122は第2の補強部材124よりも剛性が高いものとされ、主として衝撃荷重を受け止める機能を有する。一方、第2の補強部材124は、衝撃負荷を第2の補強部材124から第1の補強部材122に伝える機能を有する。
【0073】
このため、衝撃負荷を主に受け止めるように構成されている第1の補強部材122を、隣接する2つの交差部Cの間で支持部材140により支持することで、第1の補強部材122が変形する際の剛性を更に高めることができる。したがって、第1の補強部材122による衝撃吸収性能をより高めることができる。
【0074】
次に、アウタパネル110に沿った方向の衝撃荷重に対する衝撃吸収能力を高めた外装パネル100について説明する。例えば、ドアパネルのように車長方向へ延在する外装パネル100の場合、車長方向へ延在する第2の補強部材124を太くすることで、車長方向に衝撃荷重が負荷された場合であっても、外装パネル100が車長方向に潰れにくくなる。このため、第1の補強部材122と第2の補強部材124の太さを逆転させ、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも太くすることで、車両の前側から衝撃荷重が負荷された場合に、衝撃吸収能力をより向上することができる。なお、第1の補強部材122と第2の補強部材124の太さを逆転させずに、第2の補強部材124のみ太くすることも考えられるが、その場合、車両の前側から衝撃荷重が負荷された場合の衝撃吸収能力を向上できるものの、第1の補強部材122と第2の補強部材124の双方が太いため、外装パネル100の重量が増大してしまう。
【0075】
一方、上述したように、第2の補強部材124は、第1の補強部材122よりも長く、湾曲も少ないことから、比較的剛性が低くなり易い。したがって、第1の補強部材122と第2の補強部材124の太さを逆転するのみでは、アウタパネル110の面と垂直な方向に衝撃荷重が負荷された場合の衝撃吸収能力が低下してしまう。
【0076】
このため、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも太くした場合に、第2の補強部材124を支持部材140により車両内側から支持することで、第2の補強部材124の剛性を補うようにする。これにより、外装パネル100の外面に垂直に衝撃荷重が負荷された場合に、第1の補強部材122より太い第2の補強部材124で主に衝撃荷重を受け止めることができるとともに、支持部材140で衝撃荷重を受け止めることができる。したがって、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも太くし、第2の補強部材124を支持部材140により車両内側から支持することで、アウタパネル110の面に沿った水平方向の衝撃荷重と、アウタパネル110の面に垂直な方向の衝撃荷重の双方について、衝撃吸収能力を高めることができる。
【0077】
上述したように、2つの補強部材を交差させて補強部材120を構成する場合に、剛性が低い方の補強部材が車両外側に配置され、剛性が高い方の補強部材は車両内側に配置される。つまり、第1の補強部材122と第2の補強部材124のうち、衝撃荷重を主として受け止める部材は、車両内側に配置することが好ましい。このため、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも太くした場合は、交差部Cにおいて、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも車両内側に配置することが好ましい。また、第2の補強部材124を支持部材140で支持するにあたり、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cで第2の補強部材124を車両内側から支持することで、交差部Cにおいて、第1の補強部材122と第2の補強部材124の剛性による衝撃吸収能力と、支持部材140による衝撃吸収能力を共に利用して衝撃吸収を行うことができる。
【0078】
以上の観点から、
図12及び
図13は、第1の補強部材122と第2の補強部材124の太さを
図3及び
図4の構成から逆転し、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも太くした構成をしている。また、
図12及び
図13に示す例では、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cにおいて、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも車両内側に配置している。また、
図12及び
図13に示す例では、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cに支持部材140を配置している。
図12は、
図3と同様に外装パネル100を表側(車両外側)から見た状態を示しており、
図13は、
図12における一点鎖線IV-IV’に沿った断面を示す模式図である。
【0079】
以上のように、第2の補強部材124を第1の補強部材122よりも太くすることで、アウタパネル110に沿った方向の衝撃荷重に対する衝撃吸収能力を高めることができる。また、第2の補強部材124を支持部材140で支持することにより、第2の補強部材124の剛性を補うことができるため、アウタパネル110と垂直な方向の衝撃荷重についても、第2の補強部材124で主に吸収することができる。
【0080】
なお、
図12及び
図13に示す構成では、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cに支持部材140を配置したが、隣接する交差部Cの間で第2の補強部材124を支持するように支持部材140を配置してもよい。
【0081】
次に、支持部材140の構造のバリエーションについて説明する。支持部材140は、筒状体を基本構造とし、様々な構造とすることができる。
図14~
図19は、支持部材140の形状のバリエーションを示す模式図である。
図14は、補強部材120側の端部に補強部材120と対向するフランジ144が設けられた支持部材140を示す概略断面図であって、支持部材140の軸心に沿った断面を示している。また、
図15は、
図14に示す支持部材140を示す斜視図である。
図14及び
図15に示すように、フランジ142とは反対側の端部においても、フランジ144が設けられている。フランジ144は、フランジ142と同様、支持部材140の筒状の本体と一体に構成されていてもよいし、本体に対して接合された別部品から構成されていてもよい。
【0082】
図14及び
図15に示す構成によれば、外装パネル100に衝撃荷重がかかった場合に、補強部材120をフランジ144の平面で受けることができるため、補強部材120をより安定的に支持することが可能である。
【0083】
また、
図14及び
図15に示す構成によれば、支持部材140の補強部材120側の端部にフランジ144を設けたことにより、補強部材120を支持する領域がより広くなっている。したがって、外装パネル100の外側から衝撃荷重が負荷された場合に、衝撃荷重を受けた際に交差部Cの位置がアウタパネル110の面に沿って上下方向または水平方向にずれたとしても、交差部Cの位置がフランジ144の領域から外れることがなく、交差部Cから支持部材140へ衝撃荷重を確実に伝えることができる。
【0084】
図16は、補強部材120側の端部が軸心に向けて延在して、補強部材120側に補強部材120と対向する面146が形成された支持部材140を示す概略断面図である。また、
図17は、
図16に示す支持部材140を示す斜視図である。
図16及び
図17に示す支持部材140においても、面146を形成したことにより、外装パネル100に衝撃荷重がかかった場合に、補強部材120を面146で受けることができるため、補強部材120をより安定的に支持することが可能である。
【0085】
図18は、支持部材140を角筒から構成した例を示す斜視図である。また、
図19は、支持部材140を六角形の筒から構成した例を示す斜視図である。このように、支持部材140の形状としては、円筒に限らず、様々な筒形状を採用することができる。特に、六角形の筒から支持部材140を構成した場合は、軸心方向の圧縮に対して高い衝撃吸収能力を発揮させることができる。
図18、
図19に示す支持部材140の筒状体は、例えばロールフォーミング、プレスブレーキ等の工法で製造することができる。
【0086】
次に、支持部材に補強部材の位置を規制する位置規制部を設けた構成について、支持部材の形状が円筒である場合を例に説明する。
図20~
図23に示すように、支持部材140の補強部材120側の端部に、補強部材120の形状に対応した凹部140bが設けられている。凹部140bは、補強部材120の車両内外方向の長さに対応した深さになるように形成されている。本実施形態では、凹部140bの深さは、補強部材120の車両内外方向の長さよりも10%程度短い深さに形成されている。補強部材120の車両内外方向で最も外側に位置する面が支持部材140の上端より車両内外方で外側に位置している。補強部材120の車両内外方向で最も内側に位置する面は、凹部140bの底部に当接している。なお、補強部材120の車両内外方向で最も内側に位置する面と凹部140bの底部との間に隙間が設けられていてもよい。
図20及び
図21は、補強部材120の形状に対応した凹部140bが設けられた支持部材140を示す斜視図である。
【0087】
図20は、第1の補強部材122と第2の補強部材124の交差部Cに配置される支持部材140を示している。
図20に示すように、支持部材140の補強部材120側の端部には、交差部Cに配置される第1の補強部材122と第2の補強部材124に対応する4つの凹部140bが設けられている。
【0088】
また、
図21は、隣接する2つの交差部Cの間に配置される支持部材140を示している。
図21に示す支持部材は、
図10に示す位置に配置される支持部材140に対応する。
図21に示すように、支持部材140の補強部材120側の端部には、第1の補強部材122に対応する2つの凹部140bが設けられている。
【0089】
図22は、
図20に示す支持部材140が、第1の補強部材122と第2の補強部材124が交差する交差部Cに配置された状態を示す斜視図である。
図22に示したように、第1の補強部材122と第2の補強部材124は、支持部材140の凹部140b内に入っている。したがって、外装パネル100に衝撃荷重が負荷された場合に、支持部材140と第1の補強部材122及び第2の補強部材124とが相対的に位置ずれを起こすことが抑制され、交差部Cから支持部材140へ確実に衝撃荷重が伝達される。
【0090】
また、
図23は、
図21に示す支持部材140が、
図10に示す位置に配置された状態を示す斜視図である。
図23に示したように、第1の補強部材122は、支持部材140の凹部140b内に入っている。したがって、外装パネル100に衝撃荷重が負荷された場合に、支持部材140と第1の補強部材122とが相対的に位置ずれを起こすことが抑制され、交差部Cから支持部材140へ確実に衝撃荷重が伝達される。
【0091】
次に、
図24~
図28に基づいて、支持部材140が仕切り体を備える構成について説明する。
図24~
図28に示す構成例は、支持部材140の筒内に軸心方向に並ぶ仕切り体150を設け、仕切り体150で支持部材140の筒状体を複数の区画に仕切ったものである。
【0092】
軸心方向に並ぶ仕切り体150を設けることにより、外装パネル100に外側から衝撃荷重がかかり、アウタパネル110、補強部材120を介して衝撃荷重が支持部材140に加わった際に、仕切り体150が圧壊する。したがって、仕切り体150を設けることで、支持部材140が軸心方向により座屈し難くなるため、支持部材140の衝撃吸収能力がより高められる。また、薄板の仕切り板150を複数設けることで、軽量化を図りつつ支持部材140の衝撃吸収能力を高めることができるため、必要な強度を確保した上で、支持部材140の重量を抑制することができる。
【0093】
図24は、仕切り体150を備える支持部材140を示す斜視図である。また、
図25は、
図24に示す支持部材140を軸心の方向から見た平面図である。
図24及び
図25に示す例では、支持部材140の円筒の軸心を中心とする角度の45°毎に8枚の仕切り体150が設けられている。
【0094】
また、
図26及び
図27は、仕切り体150を備える支持部材140の別の例を示す模式図であって、軸心方向から支持部材140を見た平面図である。
図26は支持部材140の円筒の軸心を中心とする角度の90°毎に4枚の仕切り体150を設けた例を示しており、
図27は軸心を中心とする回転角の120°毎に3枚の仕切り体150を設けた例を示している。
【0095】
図24~
図27のいずれの例においても、支持部材140の衝撃吸収能力を高めることができるが、仕切り体150の数が多いほど、衝撃荷重がかかる方向の剛性が高くなるため、衝撃吸収能力はより高くなる。
【0096】
また、
図28は、仕切り体150を備える支持部材140の更に別の例を示す模式図であって、軸心方向から支持部材140を見た平面図である。
図28は、ハニカム構造に仕切り体150を配置した例を示している。
図28に示す例によれば、仕切り体150をより多く配置することができるため、衝撃吸収能力を更に高くすることができる。
【0097】
上述した例では、いずれも支持部材140を筒状の部分を有する構造として説明したが、支持部材140は筒状以外の構造であってもよい。
【0098】
図29は、ハット型の部材から支持部材140を構成した例を示す模式図である。
図29に示すように、支持部材140を筒状体とせずにハット型に構成してもよい。ハット型の支持部材140においても、フランジ148がインナパネル135に対して溶接等により固定される。また、ハット型の支持部材140の場合、外装パネル100に外側から衝撃荷重が負荷された場合に、側壁149が圧壊することで衝撃荷重を吸収する。
【0099】
図30及び
図31は、筒状体の支持部材140とハット型の支持部材140について、車両側面からの衝突(側突)の際の衝撃吸収能力を比較して評価した結果を説明するための模式図である。
【0100】
この評価では、
図30に示すように、直径254mmのポール状の圧子200を外装パネル100であるドアパネルに対して垂直に20km/hの一定速度で衝突させ、圧子200の変位量が70mmまでの吸収エネルギーを測定した。この評価は、車両のドアパネルに電柱などの構造物が側面から衝突した場合を想定しており、圧子200の形状は電柱を想定したポール形状としている。そして、支持部材140を筒状体とした場合と、支持部材140をハット型とした場合のそれぞれについてEA値を求めた。EA値は、支持部材140を設けた場合の吸収エネルギーを、支持部材140を設けない比較例の吸収エネルギーで除した値である。支持部材140を筒状体とした場合と、ハット型とした場合のそれぞれについてEA値を求め、ハット型に対する筒状体の性能比を算出した。
【0101】
この際、支持部材140の配置を
図31に示す1~9の各番号の位置とし、1または複数の位置に支持部材140を配置した場合について評価を行った。以下の表1は、支持部材140の配置位置の番号と、ハットに対するパイプの性能比の結果を示している。
【0102】
例えば、表1の符号5の条件では、
図31に示す番号1,2,5,6の4箇所に位置に支持部材140を配置し、圧子200を外装パネル100に対して衝突させた。この場合、ハット型に対する筒状体(パイプ)の性能比は、1.02であった。したがって、支持部材140を
図30の1,2,5,6の4箇所に配置した場合、ハット型よりも筒状体の方が、衝撃吸収能力が高い結果が得られた。
【0103】
【0104】
表1に示すように、符号1~19のいずれの条件においても、ハット型よりも筒状体のEA値の方が高い結果が得られた。このことから、筒状体の支持部材140の場合、衝撃荷重がかかった方向に支持部材140が圧壊し、衝撃吸収が効果的に行われることが分かる。また、筒状体の支持部材140の場合、ハット型の支持部材140に比べて特定の方向に変形し難いため、衝撃吸収を確実に行うことができる。したがって、ハット型の支持部材140であっても衝撃荷重を吸収することはできるが、ハット型よりも筒状体とした方が、支持部材140の衝撃吸収能力をより高めることができる。また、上述した仕切り体150を筒の内部に配置することで、衝撃荷重が負荷された際に仕切り体150が圧壊することにより、衝撃吸収能力を更に高めることが可能である。
【0105】
以上説明したように本実施形態によれば、補強部材120を車両内側から支持する支持部材140を設けたことにより、外装パネル100に対して車両外側から衝撃荷重が負荷された場合に、外装パネル100の剛性を高めることができ、衝撃吸収能力を向上することができる。また、支持部材140を軸心が衝撃荷重のかかる方向に向いた筒状体から構成したことにより、衝撃荷重を受けて筒状体が圧壊するため、衝撃吸収を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0106】
100 外装パネル
102 窓
110 アウタパネル
120 補強部材
122 第1の補強部材
122a 凹部
124 第2の補強部材
124a 凹部
130 板材
135 インナパネル
140,160 支持部材
141 溶接部
142 フランジ
144 フランジ
146 面
148 フランジ
149 側壁
150 仕切り体
162 フランジ
170 窓ガラス
200 圧子