(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/38 20060101AFI20231130BHJP
F04D 29/32 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F04D29/38 A
F04D29/38 D
F04D29/38 G
F04D29/32 G
(21)【出願番号】P 2022060652
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】陳 作舟
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 明楠
(72)【発明者】
【氏名】太田黒 竜佑
(72)【発明者】
【氏名】小西 英明
(72)【発明者】
【氏名】富岡 洋峻
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】中井 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐希
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-240748(JP,A)
【文献】実開昭62-045395(JP,U)
【文献】特開2021-032137(JP,A)
【文献】特開2005-188376(JP,A)
【文献】特開平01-237399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(20)が取り付けられるハブ(31)と、
前記ハブ(31)に設けられた5枚以下の翼(41)と、を備え、
前記翼(41)は、
前記回転軸(20)の回転方向の前方に位置する前縁(45)と、
前記回転軸(20)の回転方向の後方に位置する後縁
(71)と、
前記ハブ(31)に接合される内周縁(47)と、
前記前縁(45)と前記後縁(71)との間で前記回転軸(20)の回転方向に延びる外周縁(48)と、
多孔質部(61)と、を備え、
前記後縁(71)は、
前記内周縁(47)に接続される内周接続部(72)と、
前記外周縁(48)に接続される外周接続部(73)と、
前記内周接続部(72)から前記前縁(45)に向けて延びる第1部位(75)と、
前記外周接続部(73)から前記前縁(45)に向けて延びる第2部位(76)と、
前記第1部位(75)と前記第2部位(76)とを接続する湾曲した第3部位(77)と、を備え、
前記前縁(45)から前記第3部位(77)の中心位置(P1)までの前記回転方向への軌道(L12)の長さを第1距離(L3)、前記前縁(45)から前記第1部位(75)と前記第2部位(76)とを結ぶ仮想的な線分(L13)と前記軌道(L12)との交点(P2)までの前記回転方向への前記軌道(L12)の長さを第2距離(L4)とした場合、前記第1距離(L3)は前記第2距離(L4)の95%以下であり、
前記前縁(45)から前記後縁
(71)までの寸法を翼弦長(L1)とすると、前記多孔質部(61)は、前記前縁(45)から前記翼弦長(L1)の40%以上後方の位置に配置さ
れ、
前記第3部位(77)の半径+5mmを半径、前記第3部位(77)の中心位置(P1)を中心とする円形状の範囲(C3)を前記回転方向に延長した範囲を非設置範囲(A1)とすると、前記多孔質部(61)は前記非設置範囲(A1)とは異なる位置に設けられている、
軸流ファン。
【請求項2】
前記内周縁(47)と前記外周縁(48)との間の中心位置に対して前記多孔質部(61)が前記外周縁(48)に偏って配置されている、
請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項3】
前記翼(41)の正圧面全体の面積に対して前記多孔質部(61)の面積は30%以下である、
請求項1または2に記載の軸流ファン。
【請求項4】
回転軸(20)が取り付けられるハブ(31)と、
前記ハブ(31)に設けられた翼(41)と、を備え、
前記翼(41)は、
前記回転軸(20)の回転方向の前方に位置する前縁(45)と、
前記回転軸(20)の回転方向の後方に位置する後縁(71)と、
前記ハブ(31)に接合される内周縁(47)と、
前記前縁(45)と前記後縁(71)との間で前記回転軸(20)の回転方向に延びる外周縁(48)と、
多孔質部(61)と、を備え、
前記後縁(71)は、
前記内周縁(47)に接続される内周接続部(72)と、
前記外周縁(48)に接続される外周接続部(73)と、
前記内周接続部(72)から前記前縁(45)に向けて延びる第1部位(75)と、
前記外周接続部(73)から前記前縁(45)に向けて延びる第2部位(76)と、
前記第1部位(75)と前記第2部位(76)とを接続する湾曲した第3部位(77)と、を備え、
前記前縁(45)から前記第3部位(77)の中心位置(P1)までの前記回転方向への軌道(L12)の長さを第1距離(L3)、前記前縁(45)から前記第1部位(75)と前記第2部位(76)とを結ぶ仮想的な線分(L13)と前記軌道(L12)との交点(P2)までの前記回転方向への前記軌道(L12)の長さを第2距離(L4)とした場合、前記第1距離(L3)は前記第2距離(L4)の95%以下であり、
前記第3部位(77)の半径+5mmを半径、前記第3部位(77)の中心位置(P1)を中心とする円形状の範囲(C3)を前記回転方向に延長した範囲を非設置範囲(A1)とすると、前記多孔質部(61)は前記非設置範囲(A1)とは異なる位置に設けられている、軸流ファン。
【請求項5】
回転軸(20)が取り付けられるハブ(31)と、
前記ハブ(31)に設けられた6枚以上の翼(81)と、を備え、
前記翼(81)は、
前記回転軸(20)の回転方向の前方に位置する前縁(83)と、
前記回転軸(20)の回転方向の後方に位置する後縁(84)と、
多孔質部(91)と、を備え、
前記前縁(83)から前記後縁(84)までの寸法を翼弦長(L5)とすると、前記多孔質部(91)は、前記後縁(84)から前記翼弦長(L5)の60%以上前方の位置に配置されている、軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンは、ハブと、ハブに設けられた翼と、を備える。ハブには回転軸が取り付けられる。回転軸の回転に伴いハブ、及び翼が回転する。翼の回転による圧力変動は、騒音発生の原因となる。特許文献1に開示の翼は、多孔質部を備える。多孔質部を設けることによって翼の正圧面側での圧力と負圧面側での圧力との差が小さくなる。これにより、圧力変動を抑制することができ、騒音発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
翼に多孔質部を設けることによって翼の強度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決する軸流ファンは、回転軸が取り付けられるハブと、前記ハブに設けられた5枚以下の翼と、を備え、前記翼は、前記回転軸の回転方向の前方に位置する前縁と、前記回転軸の回転方向の後方に位置する後縁と、多孔質部と、を備え、前記前縁から前記後縁までの寸法を翼弦長とすると、前記多孔質部は、前記前縁から前記翼弦長の40%以上後方の位置に配置されている。
【0006】
翼が5枚以下の場合、翼の後縁側で騒音が発生しやすい。前縁から翼弦長の40%以上後方に多孔質部を配置することで、翼の後縁側で発生する騒音が低減される。騒音源に近い箇所に多孔質部を設けることによって、翼の全体に亘って多孔質部を設ける場合に比べて多孔質部を減らすことができる。これにより、翼の強度の低下を抑制できる。
【0007】
上記軸流ファンにおいて、前記翼は、前記ハブに接合される内周縁と、前記前縁と前記後縁との間で前記回転軸の回転方向に延びる外周縁と、を備え、前記後縁は、前記内周縁に接続される内周接続部と、前記外周縁に接続される外周接続部と、前記内周接続部から前記前縁に向けて延びる第1部位と、前記外周接続部から前記前縁に向けて延びる第2部位と、前記第1部位と前記第2部位とを接続する湾曲した第3部位と、を備え、前記前縁から前記第3部位の中心位置までの前記回転方向への軌道の長さを第1距離、前記前縁から前記第1部位と前記第2部位とを結ぶ仮想的な線分と前記軌道との交点までの前記回転方向への前記軌道の長さを第2距離とした場合、前記第1距離は前記第2距離の95%以下であり、前記第3部位の半径+5mmを半径、前記第3部位の中心位置を中心とする円形状の範囲を前記回転方向に延長した範囲を非設置範囲とすると、前記多孔質部は前記非設置範囲とは異なる位置に設けられている。
【0008】
第3部位には応力が集中しやすい。第3部位と多孔質部との距離が短いと、翼の強度が低下するおそれがある。これに対応させて、第3部位の半径+5mmを半径、第3部位の中心位置を中心とする円形状の範囲を回転方向に延長した範囲を非設置範囲とし、当該非設置範囲とは異なる位置に多孔質部を設けることによって非設置範囲に多孔質部を設ける場合に比べて、翼の強度の低下を抑制できる。
【0009】
上記軸流ファンにおいて、前記翼は、前記ハブに接合される内周縁と、前記前縁と前記後縁との間で前記回転軸の回転方向に延びる外周縁と、を備え、前記内周縁と前記外周縁との間の中心位置に対して前記多孔質部が前記外周縁に偏って配置されている。
【0010】
外周縁に近いほど、空気の流れの相対速度が速い。空気の流れの相対速度が速いほうが騒音の原因になりやすい。内周縁と外周縁との間の中心位置に対して多孔質部が外周縁に偏って配置されていることで、騒音を抑制することができる。
【0011】
上記軸流ファンにおいて、前記翼の正圧面全体の面積に対して前記多孔質部の面積は30%以下である。
この課題を解決する軸流ファンは、回転軸が取り付けられるハブと、前記ハブに設けられた翼と、を備え、前記翼は、前記回転軸の回転方向の前方に位置する前縁と、前記回転軸の回転方向の後方に位置する後縁と、前記ハブに接合される内周縁と、前記前縁と前記後縁との間で前記回転軸の回転方向に延びる外周縁と、多孔質部と、を備え、前記後縁は、前記内周縁に接続される内周接続部と、前記外周縁に接続される外周接続部と、前記内周接続部から前記前縁に向けて延びる第1部位と、前記外周接続部から前記前縁に向けて延びる第2部位と、前記第1部位と前記第2部位とを接続する湾曲した第3部位と、を備え、前記前縁から前記第3部位の中心位置までの前記回転方向への軌道の長さを第1距離、前記前縁から前記第1部位と前記第2部位とを結ぶ仮想的な線分と前記軌道との交点までの前記回転方向への前記軌道の長さを第2距離とした場合、前記第1距離は前記第2距離の95%以下であり、前記第3部位の半径+5mmを半径、前記第3部位の中心位置を中心とする円形状の範囲を前記回転方向に延長した範囲を非設置範囲とすると、前記多孔質部は前記非設置範囲とは異なる位置に設けられている。
【0012】
第3部位には応力が集中しやすい。第3部位と多孔質部との距離が短いと、翼の強度が低下するおそれがある。非設置範囲とは異なる位置に多孔質部を設けることによって非設置範囲に多孔質部を設ける場合に比べて、翼の強度の低下を抑制できる。
【0013】
この課題を解決する軸流ファンは、回転軸が取り付けられるハブと、前記ハブに設けられた6枚以上の翼と、を備え、前記翼は、前記回転軸の回転方向の前方に位置する前縁と、前記回転軸の回転方向の後方に位置する後縁と、多孔質部と、を備え、前記前縁から前記後縁までの寸法を翼弦長とすると、前記多孔質部は、前記後縁から前記翼弦長の60%以上前方の位置に配置されている。
【0014】
翼が6枚以上の場合、翼の前縁側で騒音が発生しやすい。後縁から翼弦長の60%以上前方の位置に多孔質部を配置することで、翼の前縁側で発生する騒音が低減される。騒音源に近い箇所に多孔質部を設けることによって、翼の全体に亘って多孔質部を設ける場合に比べて多孔質部を減らすことができる。これにより、翼の強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】第1実施形態の軸流ファンを正圧面側から見た正面図である。
【
図3】第1実施形態の翼の断面を示す
図2の3-3線断面図である。
【
図5】軸流ファンの回転によって生じる騒音の音圧レベルと多孔質部の位置との関係を示す図である。
【
図6】多孔質部を備えない軸流ファン及び第1実施形態の軸流ファンの周波数毎の音圧レベルを示す図である。
【
図7】第2実施形態の軸流ファンを正圧面側から見た正面図である。
【
図9】第3実施形態の軸流ファンを正圧面側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
軸流ファンの第1実施形態について説明する。
<空気調和機>
図1に示すように、空気調和機10は、室外機11と、室内機21と、配管24,25と、を備える。室外機11は、閉鎖弁12,13と、圧縮機14と、四方弁15と、室外熱交換器16と、膨張弁17と、アキュムレータ18と、軸流ファン30と、ファンモータ19と、を備える。室内機21は、室内熱交換器22と、室内ファン23と、を備える。
【0017】
配管24,25は、室外機11と室内機21とを接続している。配管24,25は、閉鎖弁12,13に接続されている。配管24,25によって室内機21と室外機11とが接続されることで、空気調和機10は冷媒回路26を備える。冷媒回路26は、冷媒が流れる回路である。冷媒回路26は、圧縮機14と、四方弁15と、室外熱交換器16と、膨張弁17と、アキュムレータ18と、室内熱交換器22と、を含む。
【0018】
空気調和機10の冷房運転時には、圧縮機14から吐出された冷媒が、室外熱交換器16に流れるように四方弁15が切り替えられる。室外熱交換器16では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器16で熱を奪われた冷媒は、膨張弁17で減圧される。膨張弁17で減圧された冷媒は、室内熱交換器22に流れる。室内熱交換器22では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室内熱交換器22で熱を室内空気から得た冷媒は、四方弁15及びアキュムレータ18を通って圧縮機14に吸入される。室内熱交換器22での熱交換によって熱を奪われた室内空気で室内が冷房される。室外熱交換器16には、軸流ファン30により、室外空気が供給される。室内熱交換器22には、室内ファン23により、室内空気が供給される。
【0019】
空気調和機10の暖房運転時には、圧縮機14から吐出された冷媒が、室内熱交換器22に流れるように四方弁15が切り替えられる。室内熱交換器22では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室内熱交換器22で放熱した冷媒は、膨張弁17で減圧される。膨張弁17で減圧された冷媒は、室外熱交換器16に流れる。室外熱交換器16では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器16で熱を室外空気から得た冷媒は、四方弁15及びアキュムレータ18を通って圧縮機14に吸入される。室内熱交換器22での熱交換によって熱を得た室内空気で室内が暖房される。
【0020】
<軸流ファン>
図2に示すように、軸流ファン30は、ハブ31と、5枚以下の翼41と、を備える。
ハブ31は、円筒状である。ハブ31は、例えば、樹脂製である。ハブ31は、挿入孔32と、外周面33と、を備える。挿入孔32は、ハブ31の径方向の中心に設けられている。挿入孔32には、ファンモータ19の回転軸20が挿入される。回転軸20が回転することによって軸流ファン30は回転する。回転軸20は、一方向に回転する。以下の説明において、回転方向とは、回転軸20の回転する方向である。
【0021】
翼41は、3枚である。翼41は、5枚、4枚、又は2枚であってもよい。翼41は、ハブ31の外周面33に設けられている。翼41は、外周面33からハブ31の径方向に延びている。ハブ31の径方向は、回転軸20に直交する方向である。翼41は、回転方向に互いに間隔を空けて設けられている。3枚の翼41は、同一形状である。以下の説明において、径方向とはハブ31の径方向である。
【0022】
図3に示すように、翼41は、正圧面42と、負圧面43と、を備える。正圧面42は、軸流ファン30を回転させたときに、空気の流れにより正圧側となる翼面である。負圧面43は、軸流ファン30を回転させたときに、空気の流れにより負圧側となる翼面である。正圧面42は、軸流ファン30を回転させたときに空気が流出する側の面である。負圧面43は、軸流ファン30を回転させたときに、空気が流入する側の面である。
【0023】
図2に示すように、翼41は、本体44と、多孔質部61と、を備える。本体44は、例えば、樹脂製である。ハブ31と本体44とは、一体成形されている。ハブ31と本体44とは、例えば、射出成形により一体成形されている。
【0024】
本体44は、前縁45と、後縁46と、内周縁47と、外周縁48と、を備える。前縁45は、回転方向の前方に位置する縁である。後縁46は、回転方向の後方に位置する縁である。前縁45は、湾曲している。前縁45は、後縁46に向けて凹むように弧状に湾曲している。後縁46は、湾曲している。後縁46は、前縁45から離れるように弧状に湾曲している。内周縁47は、ハブ31に接合されている。内周縁47は、前縁45と後縁46との間で延びている。外周縁48は、前縁45と後縁46との間で延びている。回転軸20から内周縁47までの径方向の寸法は、回転軸20から外周縁48までの径方向の寸法よりも短い。外周縁48は、湾曲している。外周縁48は、径方向に凸となるように弧状に湾曲している。
【0025】
図4に示すように、前縁45から後縁46までの寸法を翼弦長L1とする。詳細にいえば、前縁45と後縁46との間で、回転軸20からの径方向の寸法が同一となる箇所を繋いだ仮想的な線の寸法を翼弦長L1とする。翼弦長L1は、回転軸20を中心とする円を描いた場合に、同一の翼41の前縁45と後縁46との間で延びる円弧の長さともいえる。
図4では、一例として、3箇所の翼弦長L1を図示している。翼弦長L1は、翼41の径方向での位置によって異なる寸法となり得る。
【0026】
図3に示すように、翼弦長L1の中心位置C1と前縁45との間の部分を前縁部51、翼弦長L1の中心位置C1と後縁46との間の部分を後縁部52とする。前縁部51は、後縁部52よりも重い。例えば、
図3に示すように、後縁46から前縁45に向けて本体44が徐々に厚くなるようにすることで前縁部51は後縁部52よりも重くなる。前縁部51の一部の厚みを後縁部52よりも厚くすることによって前縁部51が後縁部52よりも重くなっていてもよい。
【0027】
多孔質部61は、合成樹脂製、又はセラミックス製である。多孔質部61は、本体44よりも強度が低い。多孔質部61は、前縁45、後縁46、内周縁47、及び外周縁48に囲まれる領域に設けられている。多孔質部61は、全体に亘って多孔質部61よりも強度が高い本体44に囲まれている。多孔質部61は、正圧面42と負圧面43との間で延びる孔を備える。多孔質部61の平均気孔径は、例えば、700[μm]以下である。多孔質部61の厚みは、例えば、5[mm]以下である。多孔質部61は、本体44と一体に設けられている。多孔質部61と本体44は、例えば、インサート成形、接着、又は嵌め込みによって一体に設けられている。
【0028】
多孔質部61は、四角形状である。詳細にいえば、多孔質部61は、四隅が湾曲している角丸四角形状である。
図4に示すように、前縁45から多孔質部61までの距離を配置距離L2とする。詳細にいえば、前縁45と多孔質部61との間で、回転軸20からの径方向の寸法が同一となる箇所を繋いだ仮想的な線の寸法を配置距離L2とする。回転軸20からの径方向の寸法が同一となる箇所では、配置距離L2/翼弦長L1≧40%が成立する。多孔質部61は、前縁45から翼弦長L1の40%以上後方の位置に配置されているといえる。
図4には、前縁45から翼弦長L1の40%の位置を示す境界線L11を示す。前縁45と境界線L11との間を第1領域53とする。第1領域53と後縁46との間を第2領域54とする。境界線L11は、第2領域54に含まれる。多孔質部61は、第2領域54にのみ設けられている。多孔質部61は、第1領域53に設けられていない。多孔質部61は、後縁46に偏って設けられているといえる。即ち、後縁部52に含まれる多孔質部61は、前縁部51に含まれる多孔質部61よりも多い。
【0029】
なお、本実施形態では、回転軸20からの径方向の位置が変化することに伴って配置距離L2及び翼弦長L1の双方が変化する。この場合において、本実施形態の多孔質部61は、回転軸20からの径方向の位置に関わらず、配置距離L2/翼弦長L1≧40%となる位置に配置されている。
【0030】
多孔質部61は、軸流ファン30の回転に伴い発生する騒音を抑制するために設けられている。多孔質部61による静音効果は、多孔質部61の配置位置によって変化する。
図5に示すように、配置距離L2/翼弦長L1[%]を大きくするにつれて軸流ファン30で発生する騒音の音圧レベル[dBA]が低下することがわかる。特に、配置距離L2/翼弦長L1を40%以上にすると、音圧レベルが著しく低下する。
【0031】
図4に示すように、内周縁47から外周縁48までの径方向の距離を第1翼長R1とする。内周縁47から多孔質部61の中心位置C2までの径方向の距離を第2翼長R2とする。多孔質部61の中心位置C2は、径方向の中心位置である。第2翼長R2/第1翼長R1>50%が成立する。多孔質部61は、内周縁47と外周縁48との間の中心位置に対して外周縁48に偏って配置されている。翼41の径方向の中心位置を境界として、翼41を内周領域55と外周領域56とに分割したとする。内周領域55は、外周領域56よりもハブ31に近い領域である。この場合、外周領域56に含まれる多孔質部61は、内周領域55に含まれる多孔質部61よりも多い。
【0032】
正圧面42のうち本体44の面積は、多孔質部61の面積よりも大きい。本実施形態では、正圧面42全体の面積に対して、多孔質部61の面積は30%以下である。
<第1実施形態の作用>
翼弦長L1が長くなるほど、翼41の後縁46側で騒音が生じやすくなる。翼41が5枚以下の場合、仕事量を確保するために翼弦長L1が長くなりやすい。これにより、翼41が5枚以下の場合、翼41の後縁46側で騒音が生じやすくなる。圧力変動が生じると、圧力変動を原因として騒音が発生する。圧力変動が生じると、多孔質部61を介して正圧面42側と負圧面43側で空気が移動することによって圧力変動が抑制される。特に、前縁45から翼弦長L1の40%以上後方に多孔質部61を配置することで、翼41の後縁46側で圧力変動が抑制される。
【0033】
図6は、軸流ファン30の回転によって生じる音を周波数で分解して、周波数毎に音の音圧レベルを対応付けたものである。
図6から把握できるように、多孔質部61を設けていない軸流ファンに比べて、本実施形態の軸流ファン30では音圧レベルが低下している。特に、音圧レベルが大きくなりやすい周波数では音圧レベルの低下が顕著であることが把握できる。
【0034】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)多孔質部61は、前縁45から翼弦長L1の40%以上後方に配置されている。騒音が生じやすい箇所に多孔質部61を設けることによって、翼41の全体に亘って多孔質部61を設ける場合に比べて多孔質部61を減らすことができる。これにより、翼41の強度の低下を抑制できる。
【0035】
多孔質部61を減らした場合であっても、騒音が生じやすい箇所に多孔質部61を設けることで、軸流ファン30が回転することで生じる騒音を抑制できる。翼41の強度の低下を抑制しつつ、多孔質部61を設けることによる静音効果を得ることができる。
【0036】
(1-2)多孔質部61は、外周縁48に偏って配置されている。外周縁48に近いほど、空気の流れの相対速度が速い。空気の流れの相対速度が速いほうが騒音の発生の原因になりやすい。多孔質部61が外周縁48に偏って配置されていることで、騒音の発生を抑制することができる。
【0037】
(1-3)正圧面42のうち本体44の面積は、多孔質部61の面積よりも大きい。主として本体44で翼41を構成しつつ、部分的に多孔質部61を設けている。本体44よりも強度の低い多孔質部61を部分的に用いることで翼41の強度の低下を抑制できる。特に、正圧面42全体の面積に対して多孔質部61の面積を30%以下にすることによって翼41の強度の低下を適切に抑制できる。
【0038】
(1-4)前縁部51は後縁部52よりも重いため、軸流ファン30が回転した際に前縁部51に応力が集中しやすい。前縁部51に多孔質部61を設けると、応力が集中しやすい箇所に多孔質部61が設けられることになるため、前縁部51での強度不足が生じるおそれがある。多孔質部61を第2領域54に設けることによって多孔質部61が前縁部51に設けられにくい。このため、前縁部51での強度不足を抑制できる。
【0039】
(1-5)軸流ファン30は、空気調和機10に用いられている。空気調和機10には、省エネルギー性能の向上のために大風量化が求められる場合がある。大風量化のためには、軸流ファン30の回転数の増加や軸流ファン30の大型化を行う必要がある。この場合、軸流ファン30に求められる強度は高くなるが、軸流ファン30の強度を高くするために多孔質部61を減らすと、騒音が大きくなるおそれがある。実施形態のように、騒音が生じやすい箇所に多孔質部61を設けることによって、少量の多孔質部61で騒音の抑制効果が得られる。軸流ファン30に求められる強度の確保と騒音の抑制効果との両立を図ることができる。
【0040】
<第2実施形態>
軸流ファンの第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と同様の部材については、同一の名称を付すことで説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、軸流ファン70の後縁71は、内周接続部72と、外周接続部73と、切欠区画部74と、を備える。
内周接続部72は、内周縁47に接続されている。内周接続部72は、内周縁47と切欠区画部74との間で延びている。内周接続部72は、内周縁47から切欠区画部74に向かうに従って後方に傾斜している。
【0042】
外周接続部73は、外周縁48に接続されている。外周接続部73は、外周縁48と切欠区画部74との間で延びている。外周接続部73は、外周縁48から切欠区画部74に向かうに従って後方に傾斜している。
【0043】
切欠区画部74は、内周接続部72と外周接続部73との間に設けられている。切欠区画部74は、内周接続部72と外周接続部73とを接続している。切欠区画部74は、第1部位75と、第2部位76と、第3部位77と、を備える。
【0044】
第1部位75は、内周接続部72に接続されている。第1部位75は、内周接続部72から前縁45に向けて延びている。第1部位75は、内周接続部72から離れるにつれて外周縁48に近付くように傾斜している。
【0045】
第2部位76は、外周接続部73に接続されている。第2部位76は、外周接続部73から前縁45に向けて延びている。第2部位76は、外周接続部73から離れるにつれて内周縁47に近付くように傾斜している。第1部位75と第2部位76とは、前縁45に近付くにつれて互いの距離が短くなっていく。
【0046】
第3部位77は、第1部位75と第2部位76とを接続している。第3部位77は、前縁45に向けて凹むように湾曲している。第1部位75、第2部位76、及び第3部位77に囲まれる領域は、切欠78である。切欠区画部74は、切欠78を区画形成している。切欠78は、風量や騒音の改善を目的として設けられている。切欠78は、正圧面42と負圧面43との間で延びる空間である。切欠78は、前縁45に向けて凹んでいる。
【0047】
図8に示すように、第3部位77の中心位置P1を通って回転方向に延びる仮想的な線を軌道L12とする。前縁45から第3部位77の中心位置P1までの軌道L12の長さを第1距離L3とする。第3部位77の中心位置P1は、切欠区画部74のうち前縁45に最も近い箇所である。
【0048】
第1部位75と第2部位76とを結ぶ仮想的な線分L13と軌道L12とが交わる点を交点P2とする。前縁45から交点P2までの軌道L12の長さを第2距離L4とする。線分L13は、第1部位75のうち最も内周縁47に近い部位P3と第2部位76のうち最も外周縁48に近い部位P4とを結んでいる。第1距離L3は第2距離の95%以下である。切欠78は、中心位置P1が交点P2よりも第2距離L4の5%以上前方に位置するように凹んでいるともいえる。
【0049】
翼41は、非設置範囲A1を備える。非設置範囲A1は、軌道L12を含み、かつ、切欠78を回転方向に延長した範囲に含まれる。本実施形態の非設置範囲A1は、第3部位77の半径R3+5mmを半径R4とし、第3部位77の中心位置P1を中心とする円形状の範囲C3を回転方向に延長した範囲である。非設置範囲A1は、軌道L12を中心として内周縁47及び外周縁48の両方に向けて拡がる範囲である。
【0050】
多孔質部61は、非設置範囲A1とは異なる位置に設けられている。本実施形態において、多孔質部61は、非設置範囲A1と内周縁47との間に設けられている。多孔質部61は、非設置範囲A1と外周縁48との間に設けられていてもよい。多孔質部61は、軌道L12と重ならないように設けられている。
【0051】
多孔質部61は、中心位置P1から所定距離以上離れるように設けられている。切欠区画部74には、応力が集中しやすい。特に、中心位置P1には応力が集中しやすい。このため、中心位置P1から所定距離以上離れて多孔質部61が設けられるようにしている。本実施形態では、多孔質部61に切欠部62を設けている。切欠部62は、多孔質部61の四隅のうち中心位置P1に最も近い隅に設けられている。切欠部62は、当該隅を切り欠いた部位である。切欠部62を設けることによって多孔質部61が中心位置P1から所定距離の範囲に入らないようにしている。これにより、多孔質部61を後縁71に近付けつつ、多孔質部61が中心位置P1に過剰に近付くことを抑制している。切欠部62は、第1部位75と平行に設けられている。なお、上記所定距離は、例えば半径R4よりも大きくてもよい。ただし、これに限られず、上記所定距離は任意である。
【0052】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0053】
(2-1)第3部位77には応力が集中しやすい。第3部位77と多孔質部61との距離が短いと、翼41の強度が低下するおそれがある。非設置範囲A1とは異なる位置に多孔質部61を設けることによって非設置範囲A1に多孔質部61を設ける場合に比べて、翼41の強度の低下を抑制できる。
【0054】
<第3実施形態>
軸流ファンの第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と同様の部材については、同一の名称を付すことで説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、軸流ファン80は、6枚以上の翼81を備える。
図9に示す翼81は、6枚である。翼81は、7枚以上であってもよい。6枚の翼81は、同一形状である。
【0056】
翼81は、本体82と、多孔質部91と、を備える。本体82は、前縁83と、後縁84と、内周縁85と、外周縁86と、を備える。
図10に示すように、前縁83から後縁84までの寸法を翼弦長L5とする。後縁84から多孔質部91までの距離を配置距離L6とする。回転軸20からの径方向の寸法が同一となる箇所では、配置距離L6/翼弦長L5≧60%が成立する。多孔質部91は、後縁84から翼弦長L5の60%以上前方の位置に配置されているといえる。
図10には、後縁84から翼弦長L5の60%の位置を繋いだ仮想的な境界線L14を示す。前縁83と境界線L14との間を第1領域87とする。第1領域87と後縁84との間を第2領域88とする。多孔質部91は、第1領域87にのみ設けられている。多孔質部91は、翼弦長L5の中心位置に対して前縁83に偏って設けられているといえる。
【0057】
なお、本実施形態では、回転方向の位置が変化することに伴って内周縁85と外周縁86との間の中心位置が変化し得る。本実施形態の多孔質部91は、回転方向の位置に関わらず内周縁85と外周縁86との間の中心位置に対して外周縁48に偏って配置されている。
【0058】
<第3実施形態の作用>
翼弦長L5が短いほど、翼81の前縁83側で騒音が生じやすくなる。翼81が6枚以上の場合、軸流ファン80の成形性の観点や、翼81同士の間の流路を確保するために翼弦長L5が短くなりやすい。これにより、翼81が6枚以上の場合、翼81の前縁83側で騒音が生じやすくなる。多孔質部91は、後縁84から翼弦長L5の60%以上前方に配置されている。これにより、騒音が生じやすい箇所に多孔質部91が設けられている。翼81の前縁83側で生じる騒音が抑制される。
【0059】
<第3実施形態の効果>
第3実施形態の効果について説明する。第3実施形態では、第1実施形態の効果(1-2)、(1-3)、及び(1-5)に加えて以下の効果を得ることができる。
【0060】
(3-1)騒音が生じやすい箇所に多孔質部91を設けることによって、翼81の全体に亘って多孔質部91を設ける場合に比べて多孔質部91を減らすことができる。これにより、翼81の強度の低下を抑制できる。
【0061】
多孔質部91を減らした場合であっても、騒音が生じやすい箇所に多孔質部91を設けることで、軸流ファン80が回転することで生じる騒音を抑制できる。翼81の強度の低下を抑制しつつ、多孔質部91を設けることによる静音効果を得ることができる。
【0062】
<変更例>
本開示の軸流ファンは、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0063】
・第2実施形態において、多孔質部61は、前縁45から翼弦長L1の40%の位置よりも前方に配置されていてもよい。
・第2実施形態において、翼41の数は、6枚以上であってもよい。
【0064】
・第3実施形態において、後縁84は切欠区画部を備えていてもよい。
以上、軸流ファンの実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された軸流ファンの趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0065】
<付記>
各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(1)回転軸が取り付けられるハブと、前記ハブに設けられた翼と、を備え、前記翼は、前記回転軸の回転方向の前方に位置する前縁と、前記回転軸の回転方向の後方に位置する後縁と、前記ハブに接合される内周縁と、前記前縁と前記後縁との間で前記回転軸の回転方向に延びる外周縁と、多孔質部と、を備え、前記後縁は、前記前縁に向けて切り欠かれた切欠を形成する切欠区画部を備え、前記切欠区画部のうち前記前縁に最も近い箇所を通過する軌道であって前記回転方向に延びる軌道と重ならないように前記多孔質部が配置されている、軸流ファン。
【0066】
(2)回転軸が取り付けられるハブと、前記ハブに設けられた6枚以上の翼と、を備え、前記翼は、前記回転軸の回転方向の前方に位置する前縁と、前記回転軸の回転方向の後方に位置する後縁と、多孔質部と、を備え、前記前縁から前記後縁までの寸法を翼弦長とすると、前記多孔質部は、前記翼弦長の中心位置に対して、前記前縁に偏って配置されている、軸流ファン。
【符号の説明】
【0067】
A1…非設置範囲、C3…範囲、L1,L5…翼弦長、L12…軌道、L13…線分、P1…中心位置、P2…交点、20…回転軸、30,70,80…軸流ファン、31…ハブ、41,81…翼、42…正圧面、45,83…前縁、46,71,84…後縁、47…内周縁、48…外周縁、61,91…多孔質部、72…内周接続部、73…外周接続部、75…第1部位、76…第2部位、77…第3部位。