(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】物品およびその製造方法、ならびに表面処理剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20231130BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C09K3/00 112F
(21)【出願番号】P 2023029214
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022031218
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】森安 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】波北 悟
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/024964(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207811(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152392(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/18
C09K3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機基材と、
前記有機基材上に位置する、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含むプライマーから形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の直上に位置する、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αを含む表面処理剤から形成された表面処理層と、を備え、
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αは、
下記式(α1)または式(α2):
【化1】
[式中、
R
1はポリエーテル鎖を含む一価の有機基であり、
R
1’はポリエーテル鎖を含む二価の有機基であり、
X
1は、それぞれ独立して、含シラン反応性架橋基であり、
X
2は、それぞれ独立して、一価の基である。]
で表され、
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3X
10
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0または1以上の整数であり、
a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、
X
10は、
Fであり、
添字a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される、物品。
【請求項2】
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
下記式(f1)~式(f6):
-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e- (f1)
[式中、
dは、1~200の整数であり、eは0または1である。];
-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f2)
[式中、
cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、
eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R
21-R
22)
g- (f3)
[式中、
R
21は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R
21-R
22)
g-R
r-(R
22’-R
21’)
g’- (f4)
[式中、R
21は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
R
21’は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22’は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
R
rは、
【化2】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f5)
[式中、
eは、1以上200以下の整数であり、
a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。];
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f6)
[式中、
fは、1以上200以下の整数であり、
a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。];
のいずれかで表される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
X
1は、下記式:
-L
1-{Si(R
a)
s(R
b)
t(R
c)
u(R
d)
v}
n
[式中、
L
1は単結合または二価の連結基であり、
R
a、R
bおよびR
cは、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、または炭素数3~10のグリシジル基であり、
R
dは、それぞれ独立して、-O-、-NH-、-C≡C-またはシラン結合であり、
s、tおよびuは、それぞれ独立して、0または1であり、
vは0~3の整数であり、
nは、1~20の整数であり、
nが1である場合、s+t+uは3であり、vは0である。
nが2~20である場合、s+t+uは、それぞれ独立して0~2であり、vは、それぞれ独立して0~2であり、
vが1以上の整数である場合、少なくとも2個のSiは、R
dを介して、直鎖、梯子型、環状、または複環状に結合している。]
で表される、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記表面処理剤は、さらに、前記式(α1)および前記式(α2)で表される前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物α以外の、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物βを含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項5】
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αの数平均分子量は、500以上10,000以下である、請求項1または2に記載の物品。
【請求項6】
前記カップリング剤が有する有機反応性基は、アミノ基、グリシジル基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、スチリル基、フェニル基、イソシアネート基およびメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項7】
前記カップリング剤が有する加水分解性シリル基は、炭素数1~5のアルコキシ基を2以上有する、請求項1または2に記載の物品。
【請求項8】
前記カップリング剤が有する加水分解性シリル基は、少なくともトリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基のいずれか一方を含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項9】
前記表面処理剤は、さらに、架橋性化合物を含み、
前記架橋性化合物は、下記式(Q1):
A[Z
q1-M
q(OR
q1)
wn1(R
q2)
wn2-wn1]
wa1[Z
q2-R
q3]
wa2 (Q1)
[式中:
Aは、1~10価の有機基であり、
Z
q1は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、
M
qは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnであり;
R
q1は、それぞれ独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基であり、
R
q2は、それぞれ独立して、水素原子、または炭化水素基であり、
wn1は、それぞれ独立して、1以上(M
qの価数-1)以下であり、
wn2は、それぞれ独立して、(M
qの価数-1)であり、
Z
q2は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、
R
q3は、それぞれ独立して、反応性基であり、
wa1は、1~10の整数であり、
wa2は、0~10の整数であり、
wa1とwa2との合計はAの価数である。]
で表される化合物、および、
下記式(Q2):
【化3】
[式中:
Mは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnであり;
R
qは、それぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基、またはR
q1-CO-であり;
R
q1は、1価の炭化水素基であり;
R
q’は、それぞれ独立して、C
1-3アルキル基またはC
1-3アルコキシ基であり;
mqは、前記Mの価数であり;
nqは、0以上前記Mの価数以下である。]
で表される化合物の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項10】
wn1は、2以上である、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記R
q1基は、それぞれ独立して、C
1-6アルキル基である、請求項9に記載の物品。
【請求項12】
Aは、アルキレン基である、請求項9に記載の物品。
【請求項13】
Aは、下記式:
【化4】
[式中:
X
aは、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基である。]
で表される基である、請求項
9に記載の物品。
【請求項14】
前記R
q3基は、それぞれ独立して、イソシアネート基、エポキシ基、またはビニル基である、請求項9に記載の物品。
【請求項15】
前記プライマーは、さらに、少なくとも紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方を含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項16】
前記表面処理剤は、さらに、少なくとも紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方を含む、請求項1または2に記載の物品。
【請求項17】
有機基材上に、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含むプライマーを用いてプライマー層を形成すること、および
上記プライマー層の直上に、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αを含む表面処理剤を用いて表面処理層を形成すること、を含み、
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αは、
下記式(α1)または式(α2):
【化5】
[式中、
R
1はポリエーテル鎖を含む一価の有機基であり、
R
1’はポリエーテル鎖を含む二価の有機基であり、
X
1は、それぞれ独立して、含シラン反応性架橋基であり、
X
2は、それぞれ独立して、一価の基である。]
で表され、
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3X
10
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0または1以上の整数であり、
a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、
X
10は、
Fであり、
添字a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される、物品の製造方法。
【請求項18】
請求項1または2に記載の物品の製造に用いる、表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防汚性を有する物品およびその製造方法、ならびに表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機基材に防汚性を付与するために、特許文献1および2では、基材上にプライマー層と防汚層とを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-186576号公報
【文献】国際公開第2018/207811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2の防汚層は、耐摩耗性および耐候性が十分ではない。本開示は、優れた耐候性および耐摩耗性を有する表面処理層を有する物品およびその製造方法、ならびに表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様を含む。
[1]
有機基材と、
前記有機基材上に位置する、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含むプライマーから形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の直上に位置する、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αを含む表面処理剤から形成された表面処理層と、を備え、
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αは、
下記式(α1)または式(α2):
【化1】
[式中、
R
1はポリエーテル鎖を含む一価の有機基であり、
R
1’はポリエーテル鎖を含む二価の有機基であり、
X
1は、それぞれ独立して、含シラン反応性架橋基であり、
X
2は、それぞれ独立して、一価の基である。]
で表され、
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3X
10
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0または1以上の整数であり、
a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、
X
10は、それぞれ独立してH、FまたはClであり、
添字a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される、物品。
[2]
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
下記式(f1)~式(f6):
-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e- (f1)
[式中、
dは、1~200の整数であり、eは0または1である。];
-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f2)
[式中、
cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、
eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R
21-R
22)
g- (f3)
[式中、
R
21は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R
21-R
22)
g-R
r-(R
22’-R
21’)
g’- (f4)
[式中、R
21は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
R
21’は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22’は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
R
rは、
【化2】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f5)
[式中、
eは、1以上200以下の整数であり、
a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。];
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f6)
[式中、
fは、1以上200以下の整数であり、
a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。];
のいずれかで表される、上記[1]に記載の物品。
[3]
X
1は、下記式:
-L
1-{Si(R
a)
s(R
b)
t(R
c)
u(R
d)
v}
n
[式中、
L
1は単結合または二価の連結基であり、
R
a、R
bおよびR
cは、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、または炭素数3~10のグリシジル基であり、
R
dは、それぞれ独立して、-O-、-NH-、-C≡C-またはシラン結合であり、
s、tおよびuは、それぞれ独立して、0または1であり、
vは0~3の整数であり、
nは、1~20の整数であり、
nが1である場合、s+t+uは3であり、vは0である。
nが2~20である場合、s+t+uは、それぞれ独立して0~2であり、vは、それぞれ独立して0~2であり、
vが1以上の整数である場合、少なくとも2個のSiは、R
dを介して、直鎖、梯子型、環状、または複環状に結合している。]
で表される、上記[1]または[2]に記載の物品。
[4]
前記表面処理剤は、さらに、前記式(α1)および前記式(α2)で表される前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物α以外の、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物βを含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の物品。
[5]
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αの数平均分子量は、500以上10,000以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の物品。
[6]
前記カップリング剤が有する有機反応性基は、アミノ基、グリシジル基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、スチリル基、フェニル基、イソシアネート基およびメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の物品。
[7]
前記カップリング剤が有する加水分解性シリル基は、炭素数1~5のアルコキシ基を2以上有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の物品。
[8]
前記カップリング剤が有する加水分解性シリル基は、少なくともトリメトキシシランおよびトリエトキシシランのいずれか一方を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の物品。
[9]
前記表面処理剤は、さらに、架橋性化合物を含み、
前記架橋性化合物は、下記式(Q1):
A[Z
q1-M
q(OR
q1)
wn1(R
q2)
wn2-wn1]
wa1[Z
q2-R
q3]
wa2 (Q1)
[式中:
Aは、1~10価の有機基であり、
Z
q1は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、
M
qは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnであり;
R
q1は、それぞれ独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基であり、
R
q2は、それぞれ独立して、水素原子、または炭化水素基であり、
wn1は、それぞれ独立して、1以上(M
qの価数-1)以下であり、
wn2は、それぞれ独立して、(M
qの価数-1)であり、
Z
q2は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、
R
q3は、それぞれ独立して、反応性基であり、
wa1は、1~10の整数であり、
wa2は、0~10の整数であり、
wa1とwa2との合計はAの価数である。]
で表される化合物、および、
下記式(Q2):
【化3】
[式中:
Mは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnであり;
R
qは、それぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基、またはR
q1-CO-であり;
R
q1は、1価の炭化水素基であり;
R
q’は、それぞれ独立して、C
1-3アルキル基またはC
1-3アルコキシ基であり;
mqは、前記Mの価数であり;
nqは、0以上前記Mの価数以下である。]
で表される化合物の少なくとも一方を含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の物品。
[10]
wn1は、2以上である、上記[9]に記載の物品。
[11]
前記R
q1基は、それぞれ独立して、C
1-6アルキル基である、上記[9]または[10]に記載の物品。
[12]
Aは、アルキレン基である、上記[9]~[11]のいずれか一項に記載の物品。
[13]
Aは、下記式:
【化4】
[式中:
X
aは、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基である。]
で表される基である、上記[9]~[11]のいずれか一項に記載の物品。
[14]
前記R
q3基は、それぞれ独立して、イソシアネート基、エポキシ基、またはビニル基である、上記[9]~[13]のいずれか一項に記載の物品。
[15]
前記プライマーは、さらに、少なくとも紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方を含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載の物品。
[16]
前記表面処理剤は、さらに、少なくとも紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方を含む、上記[1]~[15]のいずれかに記載の物品。
[17]
有機基材上に、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含むプライマーを用いてプライマー層を形成すること、および
上記プライマー層の直上に、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αを含む表面処理剤を用いて表面処理層を形成すること、を含み、
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物αは、
下記式(α1)または式(α2):
【化5】
[式中、
R
1はポリエーテル鎖を含む一価の有機基であり、
R
1’はポリエーテル鎖を含む二価の有機基であり、
X
1は、それぞれ独立して、含シラン反応性架橋基であり、
X
2は、それぞれ独立して、一価の基である。]
で表され、
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3X
10
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0または1以上の整数であり、
a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、
X
10は、それぞれ独立してH、FまたはClであり、
添字a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される、物品の製造方法。
[18]
上記[1]~[16]のいずれかに記載の物品の製造に用いる、表面処理剤。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、優れた耐候性および耐摩耗性を有する表面処理層を有する物品およびその製造方法、ならびに表面処理剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例および比較例で作製された物品の耐候性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[物品]
本開示の一実施態様の物品は、有機基材と、有機基材上に位置するプライマー層と、プライマー層の直上に位置する表面処理層と、を備える。プライマー層は、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含むプライマーから形成される。表面処理層は、上記式(式(α1)または式(α2))で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物α(以下、PFPEシラン化合物αと称する場合がある。)を含む表面処理剤から形成される。
【0009】
(有機基材)
有機基材は、プライマー層が形成される領域の少なくとも一部が有機材料から形成されている限り、特に限定されない。有機材料としては、例えば、天然樹脂、合成樹脂、エラストマー、ゴム、繊維(例えば、天然繊維、合成繊維、再生繊維)が挙げられる。具体的には、有機基材として、ハードコート処理された無機/有機基材、塗装された無機/有機基材、繊維布帛(例えば、織物、不織布)が挙げられる。
【0010】
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、モディファイド(透明)ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂が挙げられる。有機材料は、ポリカーボネート樹脂であってよい。ゴムとしては、例えば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが挙げられる。
【0011】
有機基材の形状は特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0012】
有機基材の表面は、水酸基を有していてよい。プラズマ処理(例えばコロナ放電)やイオンビーム照射によって、有機基材の表面に水酸基を導入してもよい。有機基材の表面は、シラノール基を有していてよい。プライマーに含まれるカップリング剤の加水分解性シリル基が加水分解されると、シラノール基が生成する。有機基材表面の水酸基あるいはシラノール基と、カップリング剤のシラノール基とが反応すると、脱水縮合して、強固な化学結合が生じ得る。
【0013】
(プライマー層)
プライマー層は、有機基材上に位置している。プライマー層は、有機基材と表面処理層との密着性を高める。
【0014】
プライマー層の厚さは、特に限定されない。密着性の観点から、プライマー層の厚さは、例えば、1nm以上であってよく、5nm以上であってよい。プライマー層の厚さは、例えば、50nm以下であってよく、30nm以下であってよい。一の態様において、プライマー層の厚さは、1nm以上50nm以下である。
【0015】
<プライマー>
プライマー層は、プライマーから形成される。プライマーは、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含む。
【0016】
上記カップリング剤の濃度は、プライマー100質量%に対して、例えば、0.05質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよい。上記カップリング剤の濃度は、例えば、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。一の態様において、上記カップリング剤の濃度は、プライマー100質量%に対して、例えば、0.05質量%以上20質量%以下である。
【0017】
《カップリング剤》
カップリング剤は、一つの分子内に有機反応性基と加水分解性シリル基とを有する。これらの官能基はそれぞれ、PFPEシラン化合物αおよび/または有機基材の表面にある官能基と反応して、表面処理層と有機基材との密着性を高める。
【0018】
有機反応性基(例えば、後述するカップリング剤の一般式における基「A」の少なくとも1つ)は、カップリング剤の1分子内に1つあればよく、2以上あってよい。有機反応性基は特に限定されない。有機反応性基としては、例えば、アミノ基、グリシジル基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、スチリル基、フェニル基、イソシアネート基およびメルカプト基よりなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。複数の有機反応性基は、同種であってよく、異種であってよい。有機反応性基は、アミノ基であってよい。
【0019】
加水分解性基(例えば、(例えば、後述するカップリング剤の一般式における基「B」の少なくとも1つであり、隣接するSi原子とともに加水分解性シリル基を構成する。)は、カップリング剤の1分子内に1つあればよく、2つ以上あってよく、3つあってよい。加水分解性基は、加水分解されて、隣接するSi原子とともにシラノール基を生成する限り、特に限定されない。加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、塩素原子が挙げられる。加水分解性基は、アルコキシ基であってよい。アルコキシ基の炭素数は1~5であってよく、1~3であってよく、1または2であってよい。カップリング剤は、Siに結合する炭素数1~5のアルコキシ基を2以上有していてよい。複数の加水分解性基は、同種であってよく、異種であってよい。アルコキシ基の炭素鎖は、直鎖状であってよく、分枝状であってよい。
【0020】
加水分解性シリル基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリス(2-メトキシエトキシ)シリル基、ジメトキシアルキルシリル基、ジエトキシアルキルシリル基、ジプロポキシアルキルシリル基、ビス(2-メトキシエトキシ)アルキルシリル基が挙げられる。加水分解性シリル基は、少なくともトリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基のいずれか一方であってよい。
【0021】
カップリング剤は、例えば、下記一般式:
(A-RCP)4-ns-Si-Bns
(式中、Aの少なくとも1つは上記有機反応性基であり、Bの少なくとも1つは上記加水分解性基であり、RCPは、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、nsは1以上3以下の整数である。)
で表される。
【0022】
「-Si-Bns」が加水分解性シリル基を構成する。上記一般式において、有機反応性基以外のAは、例えば、水素原子であってよい。上記一般式において、加水分解性基以外のBは、例えば、炭化水素基であってよい。nsは、2以上であってよく、3であってよい。
【0023】
上記一般式において、RCPは、単結合、または2価の有機基であり、2価の有機基であってよい。RCPとしては、例えば、C1-6アルキレン基、-(CH2)cp1-O-(CH2)cp2-(cp1は、1~6の整数であり、cp2は、1~6の整数である。)、または、-フェニレン-(CH2)cp3-(cp3は、0~6の整数である。)が挙げられる。RCPは、C1-3アルキレン基であってよく、C2-3アルキレン基であってよく、-CH2CH2CH2-であってよい。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0024】
カップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。カップリング剤は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0025】
《その他》
プライマーは、さらに、他の添加剤を含んでいてよい。他の添加剤としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、顔料、染料およびフィラーが挙げられる。なかでも、耐候性の点で、プライマーは、少なくとも紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方を含んでよい。
【0026】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ラジカル重合性化合物、無機系化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は、トリアジン系化合物であってよい。
【0027】
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイル-2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、4,6-ジベンゾイルレゾルチノールが挙げられる。
【0028】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕が挙げられる。
【0029】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0030】
ラジカル重合性紫外線吸収剤として、例えば、2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリリルオキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0031】
無機系紫外線吸収剤として、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化錫、酸化チタンが挙げられる。
【0032】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0033】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートが挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の(合計の)濃度は、プライマー100質量%に対して、例えば、1質量%以上であり、2質量%以上であってよく、3質量%以上であってよい。紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の(合計の)濃度は、プライマー100質量%に対して、例えば、10質量%以下であり、8質量%以下であってよく、6質量%以下であってよい。一の態様において、紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の(合計の)濃度は、プライマー100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下である。
【0035】
《有機溶剤》
プライマーは、有機溶剤で希釈されていてもよい。有機溶剤は特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘブタンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。
【0036】
(表面処理層)
表面処理層は、プライマー層の直上に位置している。表面処理層は、有機基材に防汚性能を付与する。本開示で用いられる表面処理層は、耐摩耗性および耐候性に優れるため、屋外での苛酷な環境条件下、長期間にわたり使用する場合にも、防汚性能が維持される。
【0037】
表面処理層の厚さは、特に限定されない。耐摩耗性および耐候性の観点から、表面処理層の厚さは、1nm以上であってよく、100nm以上であってよい。表面処理層の厚さは、2000nm以下であってよく、500nm以下であってよく、200nm以下であってよい。一の態様において、表面処理層の厚さは、1nm以上2000nm以下である。
【0038】
<表面処理剤>
表面処理層は、表面処理剤から形成される。表面処理剤は、PFPEシラン化合物αを含む。PFPEシラン化合物αの濃度は、表面処理剤100質量%に対して、例えば、0.001質量%以上であり、0.005質量%以上であってよく、0.01質量%以上であってよい。PFPEシラン化合物αの上記濃度は、例えば、1質量%以下であり、0.5質量%以下であってよく、0.2質量%以下であってよい。一の態様において、PFPEシラン化合物αの上記濃度は、0.001質量%以上1質量%以下である。
【0039】
《フルオロポリエーテル基含有シラン化合物》
フルオロポリエーテル基含有シラン化合物α(PFPEシラン化合物α)は、ポリエーテル鎖および含シラン反応性架橋基を有する。PFPEシラン化合物αはさらに、イソシアヌル骨格(以下、イソシアヌル環とも言う。)を有する。イソシアヌル骨格により、得られる表面処理層の耐摩耗性および耐候性が向上する。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1~20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0042】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する基を意味する。有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基であり得る。また、「2~10価の有機基」とは、炭素を含有する2~10価の基を意味する。かかる2~10価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基からさらに1~9個の水素原子を脱離させた2~10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0043】
本明細書において用いられる場合、「加水分解可能な基」とは、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR2、-NR2、-NHR、ハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換の炭素数1~4のアルキル基を示す)などが挙げられ、-OR(即ち、アルコキシ基)であってよい。Rの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
【0044】
PFPEシラン化合物αは、下記式(α1)または式(α2)で表される。
【0045】
【化6】
[式中、
R
1はポリエーテル鎖を含む一価の有機基であり、
R
1’はポリエーテル鎖を含む二価の有機基であり、
X
1は、それぞれ独立して、含シラン反応性架橋基であり、
X
2は、それぞれ独立して、一価の基である。]
で表され、
前記ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3X
10
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f-
[式中、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0または1以上の整数であり、
a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、
X
10は、それぞれ独立してH、FまたはClであり、
添字a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される。
【0046】
R1としては、ポリエーテル鎖を含む一価の有機基(但し、ウレタン結合を含むものを除く)であってよい。
【0047】
R1’としては、ポリエーテル鎖を含む二価の有機基(但し、ウレタン結合を含むものを除く)であってよい。
【0048】
X10は、Fであってよい。
【0049】
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0050】
a、b、c、d、eおよびfの和は、5以上、10以上、15以上または20以上であってよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、200以下、100以下、60以下、50以下または30以下であってよい。
【0051】
ポリエーテル鎖中の繰り返し単位は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでよい。ポリエーテル鎖中の繰り返し単位は、特に直鎖状であってよい。
-(OC6F12)-は、例えば、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3)CF2)-、または、-(OCF2CF2CF2CF2CF(CF3))-であり、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-であってよい。
-(OC5F10)-は、例えば、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2)-、または、-(OCF2CF2CF2CF(CF3))-である。なかでも、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-であってよい。
-(OC4F8)-は、例えば、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-、または、-(OCF2CF(C2F5))-である。なかでも、-(OCF2CF2CF2CF2)-であってよい。
-(OC3F6)-は、例えば、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-、または、-(OCF2CF(CF3))-である。なかでも、-(OCF2CF2CF2)-であってよい。
-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-、または、-(OCF(CF3))-である。なかでも、-(OCF2CF2)-であってよい。
【0052】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性が向上し得る。
【0053】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数が大きくなり得る。
【0054】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、または六員環であり得る。
【化7】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0055】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、または六員環、より好ましくは四員環、または六員環であり得る。
【0056】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【化8】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0057】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
【0058】
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、
dは、1~200の整数であり、
eは0または1である。];
【0059】
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、
cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、
eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
【0060】
-(R21-R22)g- (f3)
[式中、
R21は、OCF2またはOC2F4であり、
R22は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
【0061】
-(R
21-R
22)
g-R
r-(R
22’-R
21’)
g’- (f4)
[式中、R
21は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
R
21’は、OCF
2またはOC
2F
4であり、
R
22’は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
R
rは、
【化9】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。]
【0062】
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f5)
[式中、
eは、1以上200以下の整数であり、
a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。];
【0063】
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f6)
[式中、
fは、1以上200以下の整数であり、
a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0064】
上記式(f1)において、dは、5~200、10~100、15~50または25~35の整数である。OC3F6は、(OCF2CF2CF2)、(OCF(CF3)CF2)または(OCF2CF(CF3))であってよく、(OCF2CF2CF2)であってよい。(OC2F4)は、(OCF2CF2)または(OCF(CF3))であってよく、(OCF2CF2)であってよい。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。
【0065】
上記式(f2)において、eおよびfは、それぞれ独立して5~200であってよく、10~200の整数であってよい。c、d、eおよびfの和は、5以上であってよく、10以上であってよく、15以上または20以上であってよい。一の態様において、上記式(f2)は、-(OCF2CF2CF2CF2)c-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-(OCF2)f-で表される。別の態様において、式(f2)は、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される。
【0066】
上記式(f3)において、R21は、OC2F4であってよい。R22は、OC2F4、OC3F6およびOC4F8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであってよく、OC3F6およびOC4F8から選択される基であってよい。上記の2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC4F8-、-OC3F6OC2F4-、-OC3F6OC3F6-、-OC3F6OC4F8-、-OC4F8OC4F8-、-OC4F8OC3F6-、-OC4F8OC2F4-、-OC2F4OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC2F4OC4F8-、-OC2F4OC3F6OC2F4-、-OC2F4OC3F6OC3F6-、-OC2F4OC4F8OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC3F6-、-OC3F6OC3F6OC2F4-、およびOC4F8OC2F4OC2F4-等が挙げられる。gは、3以上であってよく、5以上の整数であってよい。gは、50以下の整数であってよい。OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、直鎖であってよい。一の態様において、上記式(f3)は、-(OC2F4-OC3F6)g-または(OC2F4-OC4F8)g-である。
【0067】
上記式(f4)において、R
21、R
22およびgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R
21’、R
22’およびg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR
21、R
22およびgと同意義であり、同様の態様を有する。R
rは、好ましくは、
【化10】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【化11】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0068】
上記式(f5)において、eは、1以上100以下であってよく、5以上100以下の整数であってよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、5以上であってよく、10以上であってよく、10以上100以下であってよい。
【0069】
上記式(f6)において、fは、1以上100以下であってよく、5以上100以下の整数であってよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、5以上であってよく、10以上であってよく、10以上100以下であってよい。
【0070】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、式(f1)で表される。
【0071】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、式(f2)で表される。
【0072】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、式(f3)で表される。
【0073】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、式(f4)で表される。
【0074】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、式(f5)で表される。
【0075】
一の態様において、ポリエーテル鎖は、式(f6)で表される。
【0076】
ポリエーテル鎖において、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)が大きいほど、PFPEシラン化合物αの安定性が向上し得る。e/f比が小さいほど、表面処理層の表面滑り性が向上し得る。e/f比は、例えば、0.1以上である。e/f比が0.1以上であると、PFPEシラン化合物αの安定性はより高まる。e/f比は、例えば、10以下である。e/f比が10以下であると、表面処理層の滑り性がより向上し易く、耐摩耗性および耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)が向上し得る。e/f比は、0.2以上であってよい。e/f比は、5以下であってよく、2以下であってよく、1.5以下であってよく、0.85以下であってよい。一の態様において、e/f比は、例えば、0.1以上10以下である。
【0077】
ポリエーテル鎖の平均分子量は、特に限定されるものではない。ポリエーテル鎖の平均分子量は、例えば500以上であり、1,500以上であってよく、2,000以上であってよい。ポリエーテル鎖の平均分子量は、例えば30,000以下であり、10,000以下であってよい。一の態様において、ポリエーテル鎖の平均分子量は、500以上30,000以下である。本明細書において、平均分子量は、数平均分子量を意味し、19F-NMRにより測定される。
【0078】
別の態様において、ポリエーテル鎖の平均分子量は、例えば500以上であり、1,000以上であってよく、2,000以上であってよく、3,000以上であり得る。ポリエーテル鎖の平均分子量は、例えば30,000以下であり、20,000以下であってよく、15,000以下であってよく、10,000以下であってよく、6,000以下であり得る。一の態様において、ポリエーテル鎖の平均分子量は、500以上30,000以下である。
【0079】
別の態様において、ポリエーテル鎖の平均分子量は、例えば4,000以上であり、5,000以上であってよく、6,000以上であり得る。ポリエーテル鎖の平均分子量は、例えば30,000以下であり、10,000以下であり得る。一の態様において、ポリエーテル鎖の平均分子量は、4,000以上30,000以下である。
【0080】
R1は、例えば、下記式:
R3-(PAO)-Lα2-
(式中、PAOは上記ポリエーテル鎖であり、
R3は、アルキル基またはフッ素化アルキル基であり、
Lα2は単結合または二価の連結基である。)
で表される一価の有機基である。
【0081】
R1’は、例えば、下記式:
-Lα3-(PAO)-Lα2-
(式中、PAOは上記ポリエーテル鎖であり、
Lα2は、単結合または二価の連結基であり、
Lα3は、単結合または二価の連結基であり、
Lα2が式(α2)の右側のイソシアヌル環に結合し、Lα3が左側のイソシアヌル環に結合する。)
で表される一価の有機基である。
【0082】
R3の炭素数は、例えば1~16であり、1~8であってよく、1~6であってよく、1~3であってよい。R3は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0083】
R3は、例えば、直鎖または分枝鎖の炭素数1~16のアルキル基またはフッ素化アルキル基である。アルキル基の炭素数は、1~8であってよく、1~6であってよく、1~3であってよい。R3は、直鎖の炭素数1~3のアルキル基またはフッ素化アルキル基であってよい。
【0084】
R3は、炭素数1~16のフッ素化アルキル基であってよく、CF2H-C1-15フルオロアルキレン基、または炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であってよい。
【0085】
R3は、直鎖または分枝鎖の炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であってよい。パーフルオロアルキル基の炭素数は、1~6であってよく、1~3であってよい。R3は、直鎖の炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であってよい。R3は、例えば、-CF3、-CF2CF3、またはCF2CF2CF3である。
【0086】
Lα2は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Lα2は、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む二価の基であってよい。Lα2は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基であってよい。
【0087】
Lα2は、式:
-(CX121X122)o-(L’)p-(CX123X124)q-
[式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR125)3であり(3つのR125は、それぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基である。)、
L’は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-(各結合の左側がCX121X122に結合している。)、
oは0~10の整数であり、
pは0または1であり、
qは1~10の整数である。]
で表される基であってよい。
【0088】
Lα2は、下記式:
-(CF2)m11-(CH2)m12-O-(CH2)m13-
[式中、m11は1~3の整数、m12は1~3の整数、m13は1~3の整数]
で表される基、下記式:
-(CF2)m14-(CH2)m15-O-CH2CH(OH)-(CH2)m16-
[式中、m14は1~3の整数、m15は1~3の整数、m16は1~3の整数]
で表される基、下記式:
-(CF2)m17-(CH2)m18-
(式中、m17は1~3の整数、m18は1~3の整数)
で表される基、または、下記式:
-(CF2)m19-(CH2)m20-O-CH2CH(OSi(OCH3)3)-(CH2)m21-
(式中、m19は1~3の整数、m20は1~3の整数、m21は1~3の整数)
で表される基であってよい。
【0089】
Lα2としては、例えば、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-(CF2)n1-(n1は0~4の整数)、-CH2-、-C4H8-、-(CF2)n2-(CH2)n3-(n2、n3は独立していずれも0~4の整数)、-CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2-、および、-CF2CF2CH2OCH2CH(OSi(OCH3)3)CH2-が挙げられる。
【0090】
Lα3は、
-(CX126X127)r-(CX121X122)o-(L’)p-(CX123X124)q-
[式中、X121~X124、L’、o、pおよびqは、上記Lα2における規定と同意義であり、
X126およびX127は、独立に、H、FまたはClであり、Fであってよく、
rは1~6の整数であり、
-(CX126X127)r-が(PAO)に結合し、(CX123X124)qがイソシアヌル環に結合する。]
で表される基であってよい。
【0091】
L’は、-O-またはC(=O)O-であってよい。
【0092】
X1は、一価の含シラン反応性架橋基である。X1は、基材との接着性に寄与する。X1は、上記基材の材料と化学的に反応してもよい。
【0093】
一の態様において、X1は、式:
-Lα1-{Si(Ra)s(Rb)t(Rc)u(Rd)v}n
[式中、
Lα1は単結合または二価の連結基であり、
Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、または炭素数3~10のグリシジル基であり、
Rdは、それぞれ独立して、-O-、-NH-、-C≡C-またはシラン結合であり、
s、tおよびuは、それぞれ独立して、0または1であり、
vは0~3の整数であり、
nは、1~20の整数であり、
nが1である場合、s+t+uは3であり、vは0である。
nが2~20である場合、s+t+uは、それぞれ独立して0~2であり、vは、それぞれ独立して0~2であり、
vが1以上の整数である場合、少なくとも2個のSiは、Rdを介して、直鎖、梯子型、環状、または複環状に結合している。]
で表される。
【0094】
Lα1は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Lα1は、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む二価の基であってよい。Lα1は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基であってよい。
【0095】
Lα1としては、例えば、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-CH2-、-C4H8-が挙げられる。
【0096】
Ra、RbおよびRcは、Siに結合している1価の基である。Ra、RbおよびRcの少なくとも1つは、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、または炭素数1~10のアミノ基であってよい。それ以外のRa、RbおよびRcは、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、または炭素数3~10のグリシジル基であってよい。Ra、RbおよびRcはいずれも、炭素数1~5のアルコキシ基であってよく、炭素数1~4のアルコキシ基であってよい。
【0097】
Ra、RbおよびRcにおいて、ハロゲンは、Cl、BrまたはIであってよく、Clであってよい。
【0098】
Ra、RbおよびRcにおいて、アルコキシ基の炭素数は、1~5であってよい。アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。アルコキシ基の水素原子は、フッ素原子等に置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、またはブトキシ基であってよく、メトキシ基、またはエトキシ基であってよい。
【0099】
Rdは、2個のSiに結合している2価の基である。Rdは、それぞれ独立して、-O-、-NH-、-C≡C-、または、シラン結合である。Rdは、-O-、-NH-、または、-C≡C-であってよい。Rdによって、2以上のケイ素原子がRdを介して、直鎖、梯子型、環状、または複環状に結合することができる。nが2以上の整数である場合、ケイ素原子同士で結合していてもよい。
【0100】
一の態様において、X1は、式:
-Lα1-{Si(Ra)s(Rb)t(Rc)u(Rd’)v}n
[式中、
Lα1は単結合または二価の連結基であり、
Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、または炭素数3~10のグリシジル基であり、
Rd’は、それぞれ独立して、-Z-SiRd1
p’Rd2
q’Rd3
r’
(式中、Zは、それぞれ独立して、単結合または二価の連結基であり、
Rd1は、それぞれ独立して、Rd”であり、
Rd”は、Rd’と同意義であり、
Rd’中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり、
Rd2は、それぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり、
Rd3は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基であり、
p’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
ただし、p’、q’およびr’の和は3である。)
で表される基であり、
s、tおよびuは、それぞれ独立して、0または1であり、
vは0~3の整数であり、
nは、1~20の整数である。]
で表される。
【0101】
Zとしては、例えば、-C2H4-、-C3H6-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-CH2-、および、-C4H8-が挙げられる。
【0102】
上記Rd’において、Rd1が少なくとも1つ存在する場合、Rd’中にZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在するが、かかるZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は最大で5個である。なお、「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」とは、Rd’中において直鎖状に連結される-Z-Si-の繰り返し数と等しくなる。
【0103】
例えば、下記にRd’中においてZ基を介してSi原子が連結された一例を示す。
【0104】
【0105】
上記式において、*は、主鎖のSiに結合する部位を意味し、…は、ZSi以外の所定の基が結合していること、即ち、Si原子の3本の結合手がすべて…である場合、ZSiの繰り返しの終了箇所を意味する。また、Siの右肩の数字は、*から数えたZ基を介して直鎖状に連結されたSiの出現数を意味する。即ち、Si2でZSi繰り返しが終了している鎖は「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が2個であり、同様に、Si3、Si4およびSi5でZSi繰り返しが終了している鎖は、それぞれ、「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が3、4および5個である。なお、上記の式から明らかなように、Rd’中には、ZSi鎖が複数存在するが、これらはすべて同じ長さである必要はなく、それぞれ任意の長さであってもよい。
【0106】
一の態様において、下記に示すように、「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。
【0107】
【0108】
一の態様において、Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は1個または2個であり、1個であってよい。
【0109】
Rd2は、それぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
【0110】
Rd2は、-OR4(R4は、置換または非置換のC1-3アルキル基であり、メチル基であってよい)であり得る。
【0111】
Rd3は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、炭素数1~20のアルキル基であり、炭素数1~6のアルキル基であってよく、メチル基であってよい。
【0112】
一の態様において、Rd’中の末端のRd1(Rd1が存在しない場合、Rd’)において、q’は、2以上であってよく、2または3であってよく、3であってよい。
【0113】
一の態様において、Rdは、末端部に少なくとも1つの、-Si(-Z-SiRd2
q’Rd3
r’)2またはSi(-Z-SiRd2
q’Rd3
r’)3を有してよく、-Si(-Z-SiRd2
q’Rd3
r’)3を有している。(-Z-SiRd2
q’Rd3
r’)は、(-Z-SiRd2
3)であってよい。他の態様において、Rdの末端部はすべて、-Si(-Z-SiRd2
q’Rd3
r’)3であり、-Si(-Z-SiRd2
3)3であってよい。末端部の各Siに結合したRd2が多いほど、基材への密着性が高くなり易く、耐摩耗性がより向上し得る。
【0114】
一の態様において、X1は、式:
-Lα1-{C(Ra6)s6(Rb6)t6(Rc6)u6(Rd6)v6}n6
[式中、
Lα1は単結合または二価の連結基であり、
Ra6、Rb6およびRc6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、炭素数3~10のグリシジル基、OCOR67(式中、R67は、炭素数1~6のアルキル基)、OHまたはY6-SiR65
j6R66
3-j6であり、
Rd6は、それぞれ独立して、-O-、-NH-、-C≡C-、または、-Z6-CR61
p6R62
q6R63
r6であり、
Z6は、それぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり、
R61は、それぞれ独立して、Rd6’を表し、
Rd6’は、Rd6と同意義であり、
Rd6中、Z6基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個であり、
R62は、それぞれ独立して、-Y6-SiR65
j6R66
3-j6であり、
Y6は、それぞれ独立して、2価の有機基であり、
R65は、それぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり、
R66は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基であり、
j6は、(-Y6-SiR65
j6R66
3-j6)単位毎に独立して、1~3の整数であり、
R63は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基であり、
p6は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q6は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r6は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
s6、t6およびu6は、それぞれ独立して、0または1であり、
v6は0~3の整数であり、
n6は、1~20の整数であり、
式中、少なくとも2つの(-Y6-SiR65
j6R66
3-j6)が存在する。]
で表される。
【0115】
Ra、Rb、Rc、Ra6、Rb6およびRc6において、ハロゲンは、Cl、BrまたはIであってよく、Clであってよい。
【0116】
Ra、Rb、Rc、Ra6、Rb6およびRc6において、アルコキシ基の炭素数は、1~5であってよい。アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。アルコキシ基の水素原子は、フッ素原子等に置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、またはブトキシ基であってよく、メトキシ基、またはエトキシ基であってよい。
【0117】
Z6は、例えば、C1-6アルキレン基、-(CH2)g-O-(CH2)h-(gは、0~6の整数であってよく、1~6の整数であってよい。hは、0~6の整数であってよく、1~6の整数であってよい。)、または、-フェニレン-(CH2)i-(iは、0~6の整数であってよい。)である。Z6は、C1-3アルキレン基であってよい。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0118】
R61は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd6’を表す。Rd6’は、Rd6と同意義である。
【0119】
Rd6中、Z6基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個である。即ち、Rd6において、R61が少なくとも1つ存在する場合、Rd6中にZ6基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在するし、かかるZ6基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は最大で5個である。「Rd6中のZ6基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、Rd6中において直鎖状に連結される-Z6-C-の繰り返し数と等しい。
【0120】
一の態様において、下記に示すように、「R
d6中のZ
6基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。
【化14】
【0121】
一の態様において、Rd6中のZ6基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は1個または2個であり、1個であってよい。
【0122】
R62は、-Y6-SiR65
j6R66
3-j6を表す。
【0123】
Y6は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表す。
【0124】
一の態様において、Y6は、C1-6アルキレン基、-(CH2)g’-O-(CH2)h’-(g’は、0~6の整数であってよく、1~6の整数であってよい。h’は、0~6の整数であってよく、1~6の整数であってよい。)または、-フェニレン-(CH2)i’-(i’は、0~6の整数であってよい。)である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0125】
一の態様において、Y6は、C1-6アルキレン基またはフェニレン-(CH2)i’-であり得る。この場合、光耐性、特に紫外線耐性が向上し得る。
【0126】
R65は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。上記「加水分解可能な基」としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0127】
一の態様において、R65は、-OR(Rは、置換または非置換のC1-3アルキル基であり、メチル基またはエチル基であってよく、メチル基であってよい。)である。
【0128】
R66は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。R66は、メチル基であってよい。
【0129】
j6は、(-Y-SiR65
j6R66
3-j6)単位毎に独立して、1~3の整数であり、2または3であってよく、3であってよい。
【0130】
R63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。R63は、メチル基であってよい。
【0131】
p6は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。q6は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。r6は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、p6、q6およびr6の和は3である。
【0132】
一の態様において、Rd6中の末端のRd6’(Rd6’が存在しない場合、Rd6それ自体)において、q6は、2以上であり、2または3であってよく、3であってよい。
【0133】
一の態様において、式(α1)における、水酸基または加水分解可能な基を有するSi原子の数は、1~6個であってよく、2~4個であってよく、3個であってよい。式(α2)における、水酸基または加水分解可能な基を有するSi原子の数は、2~12個であってよく、4~8個であってよく、6個であってよい。
【0134】
一の態様において、X1におけるvは3であり、Rd’は、それぞれ独立して、-Z-SiRd2
q’Rd3
r’である。
【0135】
X1は、例えば、-Lα1-SiR5
3、-Lα1-Si(OR6)3、-Lα1-Si(NR6
2)3、または、-Lα1-Si(OCOR6)3(各式中、Lα1は上述のとおり、R5はハロゲン原子、R6は独立に炭素数1~4のアルキル基)であってよい。
【0136】
一の態様において、X1は、式:
-Lα1-{Si(Ra)s(Rb)t(Rc)u(Rd)v}n、または
-Lα1-{C(Ra6)s6(Rb6)t6(Rc6)u6(Rd6)v6}n6
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
で表される。
【0137】
一の態様において、X2は、それぞれ独立して、上記ポリエーテル鎖を含む一価の有機基であってよい。上記有機基の好適な基は、R1と同じである。
【0138】
別の態様において、X2は、それぞれ独立して、上記含シラン反応性架橋基であってもよい。
【0139】
別の態様において、X2は、X1と同じであってよい。
【0140】
別の態様において、X2は、それぞれ独立して、シリコーン残基、シルセスキオキサン残基およびシラザン基からなる群より選択される少なくとも1種の基であってもよい。
【0141】
上記シリコーン残基としては、次の基が挙げられる。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
[各式中、L2は単結合または二価の連結基であり、n30は1~20の整数であり、m30は0~10の整数であり、R31は、それぞれ独立して、一価の基であり、各基が有するR31のうち、少なくとも1つは反応性基である。]
【0148】
反応性基としては、例えば、H、ハロゲン原子、OR310(R310は炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~20のアリール基である。)、-L3-SiR311
3(L3は単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、R311はハロゲン原子である。)、-L3-Si(OR312)3(L3は上記のとおりであり、R312は独立に炭素数1~4のアルキル基である。)、-L3-Si(NR312
2)3(L3およびR312は上記のとおりである。)、-L3-Si(OCOR312)3(L3およびR312は上記のとおりである。)、および、これらの基のいずれかを含む基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0149】
上記反応性基以外の基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONR313COR314(R313およびR314は独立にH、アルキル基またはハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、および、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0150】
L2は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。L2は、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む二価の基であってよい。L2は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基であってよい。
【0151】
L2としては、例えば、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-CH2-、-C4H8-が挙げられる。
【0152】
上記シリコーン残基は、以下の基であってよい。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
[各式中、L2は単結合または二価の連結基であり、R34は、それぞれ独立して、一価の基であり、各基が有するR34のうち、少なくとも1つは反応性基である。]
【0163】
反応性基としては、例えば、-H、-OR340(R340は炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン原子、-OH、-O-CR340=CH2(R340は上記のとおり)、-OCOR340(R340は上記のとおり)、-OCOOR341(R341はアルキル基またはハロゲン化アルキル基)、-NR340
2(R340は上記のとおり)、および、これらの基のいずれかを含む基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0164】
上記反応性基以外の基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONR342COR343(R342およびR343は独立にH、アルキル基またはハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、および、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0165】
L2は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。L2として好適なものは、上述したとおりである。
【0166】
上記シルセスキオキサン残基としては、次の基が挙げられる。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
各式中、L2は単結合または二価の連結基であり、R37は、各々独立して、一価の基であり、各基が有するR37のうち、少なくとも1つは反応性基であり、p30は独立して0~5000の整数である。
【0173】
上記反応性基としては、例えば、-H、-OR370(R370は炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン原子、-OH、-O-CR370=CH2(R370は上記のとおり)、-OCOR370(R370は上記のとおり)、-OCOOR371(R371はアルキル基またはハロゲン化アルキル基)、-NR370
2(R370は上記のとおり)、および、これらの基のいずれかを含む基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0174】
上記反応性基以外の基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONR372COR373(R372およびR373は独立にH、アルキル基またはハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、および、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0175】
L2は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。L2として好適なものは、上述したとおりである。
【0176】
X2は、上述したポリエーテル鎖を含む一価の有機基、含シラン反応性架橋基、シリコーン残基、シルセスキオキサン残基およびシラザン基とは異なる基であってもよい。
【0177】
すなわち、X2は、独立に、H、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-OCOORj(Rjはアルキル基またはハロゲン化アルキル基)、-CONRkCORl(RkおよびRlは独立にH、アルキル基またはハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、ハロゲン化アリール基、シリコーン残基(但し反応性基を有するものを除く)およびシルセスキオキサン残基(但し反応性基を有するものを除く)からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0178】
上記シリコーン残基(但し反応性基を有するものを除く)としては、次の基が挙げられる。なお、上記反応性基とは、R37を構成し得る反応性基として例示したものである。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
各式中、L4は単結合または二価の連結基であり、R41は、それぞれ独立して、一価の反応性基以外の基である。
【0189】
反応性基以外の基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRkCORl(RkおよびRlは独立にH、アルキル基またはハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、および、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0190】
L4は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。L4としては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基であってよく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基であってよい。
【0191】
L4として、具体的には、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-等が挙げられる。
【0192】
上記シルセスキオキサン残基(但し反応性基を有するものを除く)としては、次の基が挙げられる。なお、上記反応性基とは、R37を構成し得る反応性基として例示したものである。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
[各式中、L4は単結合または二価の連結基、R41は、各々独立して、一価の反応性基以外の基、p30は独立して0~5000の整数である。]
【0199】
反応性基以外の基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRkCORl(RkおよびRlは独立にH、アルキル基またはハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、および、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0200】
L4は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。L4として好適なものは、上述したとおりである。
【0201】
上記シラザン基としては、次の基が挙げられる。
【0202】
【0203】
【0204】
[各式中、L5は単結合または二価の連結基であり、m31は2~100の整数であり、n31は100以下の整数であり、R42は、それぞれ独立して、H、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、アルキルシリル基、アルキルシアノ基、炭素数1~4のアルコキシ基である。]
【0205】
L5は、式(α1)または式(α2)のイソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。L5は、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む二価の基であってよい。L5は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基であってよい。
【0206】
L5としては、例えば、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-が挙げられる。
【0207】
上記シラザン基としては、具体的には、次の基が挙げられる。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
式(α1)または式(α2)で表される化合物において、R1の平均分子量は特に限定されない。R1の平均分子量は、例えば、500以上であり、1,500以上であってよく、2,000以上であってよい。R1の平均分子量は、例えば、30,000以下であり、10,000以下であってよい。一の態様において、R1の平均分子量は、500以上30,000以下である。
【0216】
PFPEシラン化合物αの平均分子量は、特に限定されない。紫外線耐性および耐摩耗性の観点から、PFPEシラン化合物αの平均分子量は、例えば、500以上であり、1,000以上であってよく、2,000以上であってよい。PFPEシラン化合物の平均分子量は、10,000以下であってよく、6,000以下であってよい。一の態様において、PFPEシラン化合物αの平均分子量は、例えば、500以上10,000以下である。
【0217】
一の態様において、PFPEシラン化合物αは、上記式(α1)で表される。
【0218】
別の態様において、PFPEシラン化合物αは、上記式(α1)で表される化合物と式(α2)で表される化合物の混合物である。当該混合物における、式(α1)で表される化合物の含有割合は、1mol%以上であってよく、10mol%以上、50mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、または99mol%以上であってよい。式(α1)で表される化合物の上記含有割合は、100mol%未満であればよく、99mol%以下、95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、または80mol%以下であってよい。
【0219】
表面処理剤におけるPFPEシラン化合物αの含有量は、例えば、0.01質量%以上であり、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってよい。表面処理剤におけるPFPEシラン化合物αの含有量は、例えば、99.9質量%以下であり、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。一の態様において、表面処理剤におけるPFPEシラン化合物αの含有量は、0.01質量%以上99.9質量%以下である。
【0220】
表面処理剤から溶剤を除いた成分において、PFPEシラン化合物αの含有量は、100モル%(即ち、表面処理剤は、不揮発分として化合物αのみを含む。)であってよく、99.9モル%以下であってよく、99モル%以下であってよく、98モル%以下であってよく、95モル%以下であってよい。表面処理剤から溶剤を除いた成分において、PFPEシラン化合物αの含有量は、1モル%以上であってよく、10モル%以上であってよく、30モル%以上であってよく、50モル%以上であってよく、60モル%以上であってよく、70モル%以上であってよく、80モル%以上であってよい。
【0221】
PFPEシラン化合物αは、例えば、国際公開第2018/056410号に記載の方法により製造することができる。
【0222】
《フルオロポリエーテル基含有シラン化合物β》
表面処理剤は、さらに、PFPEシラン化合物α以外のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物β(以下、PFPEシラン化合物βとも称する。)を含んでいてもよい。PFPEシラン化合物βは、パーフルオロポリエーテル基と、水酸基または加水分解可能な基を有するSiとを有する。PFPEシラン化合物βは、イソシアヌル骨格を有さない。
【0223】
PFPEシラン化合物βのパーフルオロポリエーテル基は、下記式:
-(OC6F12)a1-(OC5F10)b1-(OC4F8)c1-(OC3F6)d1-(OC2F4)e1-(OCF2)f1-
で表されるポリエーテル鎖を含む。
[式中、a1、b1、c1、d1、e1およびf1は、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a1、b1、c1、d1、e1またはf1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0224】
一の態様において、a1、b1、c1、d1およびe1は、それぞれ独立して、0以上100以下の整数であり、f1は、1以上200以下の整数である。a1、b1、c1、d1、e1およびf1の和は5以上であってよく、10以上であってよく、10以上100以下であってよい。
【0225】
PFPEシラン化合物βのポリエーテル鎖中の繰り返し単位は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、特に直鎖状であってよい。PFPEシラン化合物βのポリエーテル鎖中の繰り返し単位の具体例としては、PFPEシラン化合物αと同様のものが挙げられる。
【0226】
一の態様において、PFPEシラン化合物βのポリエーテル鎖は、それぞれ独立して、PFPEシラン化合物αにおけるポリエーテル鎖として挙げられた式(f1)~(f6)のいずれかで表される基であってよく、式(f2)または(f3)で表される基であってよい。
【0227】
一の態様において、PFPEシラン化合物βのポリエーテル鎖は、少なくとも1つ、あるいは5以上、さらには10以上のOCF2ユニットを有する。
【0228】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)、(D2)、または(E1)で表される化合物であり得る。
【0229】
【0230】
[各式中、Rfは、それぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基であり、
PFPEは、パーフルオロポリエーテル基を表す。]
【0231】
炭素数1~16のアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。その炭素数は、1~6であってよく、1~3であってよい。特に、Rfは、直鎖の炭素数1~3のアルキル基であってよい。
【0232】
Rfは、CF2H-C1-15フルオロアルキレン基または炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であってよく、炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であってよい。
【0233】
Rfは、直鎖または分枝鎖の炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であってよい。パーフルオロアルキル基の炭素数は、1~6であってよく、1~3であってよい。Rfは、直鎖の炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であってよい。Rfは、例えば、-CF3、-CF2CF3、またはCF2CF2CF3である。
【0234】
パーフルオロポリエーテル基は、上記の通りである。
【0235】
式(A1)および(A2)において、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく1~6であってよい。R12は、メチル基、エチル基またはプロピル基であってよい。
【0236】
式(A1)および(A2)において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、ヨウ素原子、塩素原子またはフッ素原子であってよく、フッ素原子であってよい。
【0237】
式(A1)~(B2)において、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~22のアルキル基であり、炭素数1~4のアルキル基であってよい。
【0238】
式(A1)~(B2)において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0239】
式(A1)~(B2)において、nは、(-SiR14
nR15
3-n)単位毎に独立して、0~3の整数であり、0~2の整数であってよく、0であってよい。ただし、式中、すべてのnが同時に3になることはない。換言すれば、式中、少なくとも1つはR15が存在する。
【0240】
式(A1)および(A2)において、tは、それぞれ独立して、1~10の整数であり、1~6の整数であってよく、2~10であってよく、2~6の整数であってよい。
【0241】
式(A1)および(A2)において、X101は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表す。X101は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf-PFPE部またはPFPE-部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、αを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、X101は、式(A1)および(A2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であっても、いずれの有機基であってもよい。
【0242】
式(A1)および(A2)において、X102は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。X102は、例えば、炭素数1~20のアルキレン基であり、-(CH2)u-(式中、uは、0~2の整数である)であってよい。
【0243】
式(A1)および(A2)において、αは1~9の整数であり、α’は1~9の整数である。これらαおよびα’は、X101の価数に応じて変化し得る。式(A1)においては、αおよびα’の和は、X101の価数と同じである。X101が10価の有機基である場合、αおよびα’の和は10である。この場合、例えばαが9であり、α’が1である。あるいは、αが5であり、α’が5である。さらには、αが1であり、α’が9であり得る。X101が単結合または2価の有機基である場合、αおよびα’は1である。式(A2)において、αは、X101の価数から1を引いた値である。
【0244】
X101は、2~7価、2~4価、または2価の有機基である。
【0245】
一の態様において、X101は2~4価の有機基であり、αは1~3であり、α’は1である。
【0246】
別の態様において、X
101は2価の有機基であり、αは1であり、α’は1である。この場合、式(A1)および(A2)は、下記式(A1’)および(A2’)で表される。
【化58】
【0247】
式(B1)および(B2)において、X105は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表す。X105は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf-PFPE部またはPFPE-部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、βを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、X105は、式(B1)および(B2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であっても、いずれの有機基であってもよい。
【0248】
式(B1)および(B2)において、βは、1~9の整数であり、β’は、1~9の整数である。βおよびβ’は、X105の価数に応じて決定される。式(B1)において、βおよびβ’の和は、X105の価数と同じである。例えば、X105が10価の有機基である場合、βおよびβ’の和は10である。この場合、例えばβが9であり、β’が1である。あるいは、βが5であり、β’が5である。さらには、βが1であり、β’が9であり得る。X105が単結合または2価の有機基である場合、βおよびβ’は1である。式(B2)において、βはX105の価数の値から1を引いた値である。
【0249】
X105は、2~7価、2~4価、または2価の有機基である。
【0250】
一の態様において、X105は2~4価の有機基であり、βは1~3であり、β’は1である。
【0251】
別の態様において、X
105は2価の有機基であり、βは1であり、β’は1である。この場合、式(B1)および(B2)は、下記式(B1’)および(B2’)で表される。
【化59】
【0252】
式(C1)および(C2)において、X107は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表す。X107は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf-PFPE部またはPFPE-部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、γを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、X107は、式(C1)および(C2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であっても、いずれの有機基であってもよい。
【0253】
式(C1)および(C2)において、γは、1~9の整数であり、γ’は、1~9の整数である。γおよびγ’は、X107の価数に応じて決定される。式(C1)において、γおよびγ’の和は、X107の価数と同じである。例えば、X107が10価の有機基である場合、γおよびγ’の和は10である。この場合、例えばγが9であり、γ’が1である。あるいは、γが5であり、γ’が5である。さらには、γが1であり、γ’が9であり得る。X107が単結合または2価の有機基である場合、γおよびγ’は1である。式(C2)において、γはX107の価数の値から1を引いた値である。
【0254】
式(C1)および(C2)において、kは、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、lは、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、mは、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、k、lおよびmの和は、3である。
【0255】
X107は、2~7価、2~4価、または2価の有機基である。
【0256】
一の態様において、X107は2~4価の有機基であり、γは1~3であり、γ’は1である。
【0257】
別の態様において、X
107は2価の有機基であり、γは1であり、γ’は1である。この場合、式(C1)および(C2)は、下記式(C1’)および(C2’)で表される。
【化60】
【0258】
式(C1)および(C2)において、Ra3は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR71
p1R72
q1R73
r1を表す。
【0259】
Z3は、例えば、2価の有機基である。Z3は、式(C1)または式(C2)における分子主鎖の末端のSi原子(Ra3が結合しているSi原子)とシロキサン結合を形成するものを含まないことが望ましい。Z3は、例えば、C1-6アルキレン基、-(CH2)g3-O-(CH2)h3-(g3は、1~6の整数であり、h3は、1~6の整数である。)、または、-フェニレン-(CH2)i3-(i3は、0~6の整数である。)である。Z3は、C1-3アルキレン基であってよく、C2-3アルキレン基であってよく、-CH2CH2-であってよい。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0260】
R71は、各出現においてそれぞれ独立して、Ra’を表す。Ra’は、Ra3と同意義である。
【0261】
Ra3中、Z3基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個である。即ち、上記Ra3において、R71が少なくとも1つ存在する場合、Ra3中にZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在し、Z3基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は最大で5個である。「Ra3中のZ3基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、Ra3中において直鎖状に連結される-Z3-Si-の繰り返し数と等しい。
【0262】
一の態様において、「R
a3中のZ
3基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。換言すれば、式(C1)および(C2)中のX
107に結合するSiを含む-Si-R
a3部分において、左式はSiが2個、右式はSiが3個連結している。
【化61】
【0263】
一の態様において、「Ra3中のZ3基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において、1個または2個であり、1個であってよい。
【0264】
一の態様において、kは3であり、「Ra3中のZ3基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において1個である。
【0265】
R72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。R72は、-OR(Rは、置換または非置換のC1-3アルキル基であり、メチル基であってよい。)であってよい。R73は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基であってよい。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。R73は、メチル基であってよい。
【0266】
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、p1、q1およびr1の和は3である。
【0267】
一の態様において、Ra3中の末端のRa3’(Ra3’が存在しない場合、Ra3それ自体)における上記q1は、2以上であり、2または3であってよく、3であってよい。
【0268】
一の態様において、Ra3は、末端部に、少なくとも1つの、-Si(-Z3-SiR72
q1R73
r1)2またはSi(-Z3-SiR72
q1R73
r1)3を有していてよく、-Si(-Z3-SiR72
q1R73
r1)3を有していてよい。(-Z3-SiR72
q1R73
r1)の単位は、(-Z3-SiR72
3)であってよい。一の態様において、Raの末端部は、すべて-Si(-Z3-SiR72
q1R73
r1)3であってよく、-Si(-Z3-SiR72
3)3であってよい。
【0269】
上記式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR72が存在する。
【0270】
式(C1)および(C2)において、Rb3は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。Rb3は、-OR(Rは、置換または非置換のC1-3アルキル基であり、メチル基であり得る。)であってよい。
【0271】
式(C1)および(C2)において、Rc3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。Rc3は、メチル基であってよい。
【0272】
式(D1)および(D2)において、X109は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表す。X109は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf-PFPE部またはPFPE-部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、δを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、X109は、式(D1)および(D2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であっても、いずれの有機基であってもよい。
【0273】
式(D1)および(D2)において、δは1~9の整数であり、δ’は1~9の整数である。δおよびδ’は、X109の価数に応じて変化し得る。式(D1)においては、δおよびδ’の和は、X109の価数と同じである。例えば、X109が10価の有機基である場合、δおよびδ’の和は10である。この場合、例えばδが9であり、δ’が1である。あるいは、δが5であり、δ’が5である。さらには、δが1でありδ’が9であり得る。X109が2価の有機基である場合、δおよびδ’は1である。式(D2)においては、δはX109の価数から1を引いた値である。
【0274】
X109は、2~7価、2~4価、または2価の有機基である。
【0275】
一の態様において、X109は2~4価の有機基であり、δは1~3であり、δ’は1である。
【0276】
別の態様において、X
109は2価の有機基であり、δは1であり、δ’は1である。この場合、式(D1)および(D2)は、下記式(D1’)および(D2’)で表される。
【化62】
【0277】
式(D1)および(D2)において、Rd3は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3’-CR81
p4R82
q4R83
r4を表す。
【0278】
Z3’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表す。
【0279】
Z3’は、例えば、C1-6アルキレン基、-(CH2)g4-O-(CH2)h4-(g4は、0~6の整数であり、1~6の整数であってよい。h4は、0~6の整数であり、1~6の整数であってよい。)、または、-フェニレン-(CH2)i4-(i4は、0~6の整数である。)である。Z3’は、C1-3アルキレン基であってよく、C2-3アルキレン基であってよく、CH2CH2であってよい。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0280】
R81は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd3”を表す。Rd3”は、Rd3と同意義である。
【0281】
Rd3中、Z3’基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個である。即ち、上記Rd3において、R81が少なくとも1つ存在する場合、Rd3中にZ3’基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在し、Z3’基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は最大で5個である。なお、「Rd3中のZ3’基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、Rd3中において直鎖状に連結される-Z3’-C-の繰り返し数と等しい。
【0282】
一の態様において、下記に示すように、「R
d3中のZ
3’基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。
【化63】
【0283】
一の態様において、「Rd3中のZ3’基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、すべての鎖において、1個または2個であり、1個であってよい。
【0284】
R82は、-Y3-SiR85
jR86
3-jを表す。
【0285】
Y3は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表す。
【0286】
一の態様において、Y3は、C1-6アルキレン基、-(CH2)g5-O-(CH2)h5-(g5は、0~6の整数であり、1~6の整数であってよい。h5は、0~6の整数であり、1~6の整数であってよい。)、または、-フェニレン-(CH2)i5-(i5は、0~6の整数である)である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0287】
一の態様において、Y3は、C1-6アルキレン基またはフェニレン-(CH2)i5-であってよい。この場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0288】
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。R85は、-OR(Rは、置換または非置換のC1-3アルキル基であり、エチル基またはメチル基であってよく、メチル基であり得る。)であってよい。
【0289】
R86は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。R86は、メチル基であってよい。
【0290】
jは、(-Y3-SiR85
jR86
3-j)単位毎に独立して、1~3の整数であり、2または3であってよく、3であってよい。
【0291】
R83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または低級アルキル基を表す。R83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基であってよい。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。R83は、メチル基であってよい。
【0292】
p4は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q4は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r4は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、p4、q4およびr4の和は3である。
【0293】
一の態様において、Rd3中の末端のRd3”(Rd3”が存在しない場合、Rd3それ自体)におけるq4は、2以上であり、2または3であってよく、3であってよい。
【0294】
式(D1)および(D2)において、Re3は、各出現においてそれぞれ独立して、-Y3-SiR85
jR86
3-jを表す。Y3、R85、R86およびjは、上記R82における記載と同意義である。
【0295】
式(D1)および(D2)において、Rf3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または低級アルキル基を表す。Rf3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基であってよい。低級アルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~6であってよい。Rf3は、メチル基であってよい。
【0296】
式(D1)および(D2)において、k’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、k’、l’およびm’の和は3である。
【0297】
一の態様において、少なくとも1つのk’は2または3であり、3であってよい。
【0298】
一の態様において、k’は2または3であり、3であってよい。
【0299】
一の態様において、l’は2または3であり、3であってよい。
【0300】
少なくとも1つのq4は2または3であるか、あるいは、少なくとも1つのl’は2または3である。即ち、式中、少なくとも2つの-Y3-SiR85
jR86
3-j基が存在する。
【0301】
式(E1)において、G5は、-R17-O-、-R17-CONH-、-CONH-または単結合である。光耐性の観点から、G5は、-R17-CONH-またはCONH-であってよい。耐薬品性の観点から、G5は、-R17-O-であってよい。
【0302】
R17は、アルキレン基である。R17は、製造のしやすさの点で、炭素数1~4のアルキレン基であってよく、-CH2-であってよい。
【0303】
式(E1)において、Z5は、(a5+b5)価の炭化水素基、または炭化水素基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を1つ以上有する、炭素数2以上、(a5+b5)価の基である。Z5は、G5が-R17-O-であり、c5が1である場合、(a5+b5)個の水酸基を有する多価アルコールから水酸基を除いた残基である。
【0304】
一の態様において、Z5は、以下の基であり得る。
【0305】
【0306】
Z5は、水酸基の反応性に優れる点で、1級の水酸基を有する多価アルコールから水酸基を除いた残基であってよい。Z5は、原料の入手容易性の点で、下記式(Z-1)で表される基、下記式(Z-2)で表される基、下記式(Z-3)で表される基、下記式(Z-4)で表される基または下記式(Z-5)で表される基であってよい。式中、REは、アルキル基であり、メチル基またはエチル基であってよい。
【0307】
【0308】
式(E1)において、R16は、アルキレン基である。製造のしやすさの点で、R16は、炭素数4~14のアルキレン基であってよい。製造におけるヒドロシリル化の際に、アリル基(-CH2CH=CH2)の一部または全部がインナーオレフィン(-CH=CHCH3)に異性化した副生物が生成され難い点で、R16は、炭素数4~10のアルキレン基であってよい。
【0309】
式(E1)において、a5は、1以上の整数である。b5は、1以上の整数である。(a5+b5)は3以上である。a5が1のとき、b5は4以上である。a5が2以上のとき、b5は1以上である。a5が2以上のとき、a5個の[Rf-PFPE-G5]は、同一であっても異なっていてもよい。b5が2以上のとき、b5個の[(O-R16)c5-SiR14
nR15
3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。c5は0または1である。
【0310】
a5は、1~10であってよく、1~4であってよい。a5が1以上であると、表面処理層の撥水撥油性、耐摩耗性、指紋汚れ除去性、潤滑性がより向上し易い。a5が10以下であると、表面処理層は良好な外観を有する。(a5+b5)は、3~15であってよく、3~12であってよい。
【0311】
a5が1のとき、b5は4以上であり、4~10であってよく、4~5であってよい。a5が1のとき、b5が4以上であると、表面処理層の耐摩耗性が向上し易い。b5が10以下であると、表面処理層の外観、化合物の安定性が向上し易い。
【0312】
a5が2以上の整数のとき、b5は1以上の整数であり、1~10の整数であってよく、1~4の整数であってよい。a5が2以上の整数であると、表面処理層の潤滑性が高まるため、表面処理層に摩擦力が加わりにくい。そのため、b5が1であっても、表面処理層の耐摩耗性が向上し易い。b5が10以下であると、表面処理層の外観、化合物の安定性が向上し易い。
【0313】
式(E1)において、c5は、0または1である。c5は、化合物の光耐性に優れる点で、0であってよい。c5は、化合物の製造のしやすさの点で、1であってよい。
【0314】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、例えば、下記式:
-(R20)p2-(X20)q2-
[式中:
R20は、単結合、-(CH2)s’-、または、o-、m-もしくはp-フェニレン基であり、-(CH2)s’-であってよく、
s’は、1~20、1~6、1~3の整数、または1もしくは2であり、
X20は、-(X21)l’-を表し、
X21は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R330)2-、-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-、-CONR331-、-O-CONR331-、-NR331-および(CH2)n’-よりなる群から選択される基を表し、
R330は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基またはC1-6アルコキシ基を表し、フェニル基またはC1-6アルキル基であってよく、メチル基であり得、
R331は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基(典型的には、メチル基)を表し、
m”は、各出現において、それぞれ独立して、1~100、または1~20の整数であり、
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1~20、1~6、または1~3の整数であり、
l’は、1~10、1~5、または1~3の整数であり、
p2は、0または1であり、
q2は、0または1であり、
ここに、p2およびq2の少なくとも一方は1であり、p2またはq2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される2価の基であり得る。
【0315】
R20およびX20(典型的にはR20およびX20の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0316】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、
-(R20)p2-(X20)q2-
[式中:
R20は、-(CH2)s’-を表し、
s’は、1~20の整数であり、
X20は、-(X21)l’-を表し、
X21は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-CONR331-、-O-CONR331-、および(CH2)n’-よりなる群から選択される基を表し、
R331は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基を表し、
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
l’は、1~10の整数であり、
p2は、0または1であり、
q2は、0または1であり、
ここに、p2およびq2の少なくとも一方は1であり、p2またはq2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される2価の基であり得る。
【0317】
R20およびX20(典型的にはR20およびX20の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0318】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、-(R20)p2-(X20)q2-R32-である。R32は、単結合、-(CH2)t’-またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、-(CH2)t’-であってよい。t’は、1~20、2~6、または2~3の整数である。
【0319】
R32(典型的にはR32の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0320】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、
単結合、
-Xf-C1-20アルキレン基、
-Xf-R20-Xc-R32-、または
-Xf-Xd-R32-
[式中:
R20およびR32は、上記と同意義であり、
Xfは、単結合または炭素数1~6、1~4、または1~2のパーフルオロアルキレン基であり、ジフルオロメチレン基であり得る。]
であり得る。
【0321】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、
単結合、
-Xf-C1-20アルキレン基、
-Xf-(CH2)s’-Xc-、
-Xf-(CH2)s’-Xc-(CH2)t’-
-Xf-Xd-、または
-Xf-Xd-(CH2)t’-
[式中、Xf、s’およびt’は、上記と同意義である。]
である。
【0322】
上記式中、Xcは、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR331-、
-O-CONR331-、
-Si(R330)2-、
-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-、
-O-(CH2)u’-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-、
-O-(CH2)u’-Si(R330)2-O-Si(R330)2-CH2CH2-Si(R330)2-O-Si(R330)2-、
-O-(CH2)u’-Si(OCH3)2OSi(OCH3)2-、
-CONR331-(CH2)u’-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-、
-CONR331-(CH2)u’-N(R331)-、または
-CONR331-(o-、m-またはp-フェニレン)-Si(R330)2-
[式中、R330、R331およびm”は、上記と同意義であり、
u’は1~20の整数であり、2~6の整数であってよく、2~3の整数であってよい。]
を表す。Xcは、-O-であってよい。
【0323】
上記式中、Xdは、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR331-、
-O-CONR331-、
-CONR331-(CH2)u’-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-、
-CONR331-(CH2)u’-N(R331)-、または
-CONR331-(o-、m-またはp-フェニレン)-Si(R330)2-
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
を表す。
【0324】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、
単結合、
-Xf-C1-20アルキレン基、
-Xf-(CH2)s’-Xc-(CH2)t’-、または
-Xf-Xd-(CH2)t’-
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0325】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、
単結合
-Xf-C1-20アルキレン基、
-Xf-(CH2)s’-Xc-、または
-Xf-(CH2)s’-Xc-(CH2)t’-
[式中、
Xcは、-O-、-CONR331-、またはO-CONR331-であり、
R331は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基を表し、
s’は、1~20の整数であり、
t’は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0326】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、
単結合、
-Xf-C1-20アルキレン基、
-Xf-(CH2)s’-O-(CH2)t’-、
-Xf-(CH2)s’-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-(CH2)t’-、
-Xf-(CH2)s’-O-(CH2)u’-(Si(R330)2O)m”-Si(R330)2-(CH2)t’-、または
-Xf-(CH2)s’-O-(CH2)t’-Si(R330)2 -(CH2)u’-Si(R330)2-(CvH2v)-
[式中、Xf、R330、m”、s’、t’およびu’は、上記と同意義であり、
vは1~20、2~6、または2~3の整数である。]
である。
【0327】
上記式中、-(CvH2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。-(CvH2v)-は、例えば、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-であり得る。
【0328】
X101、X105、X107、およびX109基は、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基(典型的には、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0329】
X101、X105、X107、およびX109は、各式の左側がPFPE基に結合する。
【0330】
Xfは、式(A1)、(B1)、(C1)および(D1)において、単結合であってよい。Xfは、式(A2)、(B2)、(C2)および(D2)において、炭素数1~6、1~4、または1~2のパーフルオロアルキレン基であってよく、ジフルオロメチレン基であってよい。
【0331】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109基は、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0332】
別の態様において、X101、X105、X107、およびX109基は、例えば下記式:
【0333】
【0334】
【化67】
[式中:
R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、またはC
1-6アルコキシ基であり、メチル基であってよく、
Dは、
-CH
2O(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3-、
-CF
2O(CH
2)
3-、
-(CH
2)
2-、
-(CH
2)
3-、
-(CH
2)
4-、
-CONH-(CH
2)
3-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
3-、
-CON(Ph)-(CH
2)
3-(式中、Phはフェニルを意味する)、および
【0335】
【化68】
(式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1-6のアルキル基またはC
1-6のアルコキシ基であり、メチル基またはメトキシ基であってよく、メチル基であってよい。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH
2)
n-(nは2~6の整数)であり、
Dは分子主鎖のPFPEに結合し、EはPFPEと反対の基に結合する。]
で表される。
【0336】
X101、X105、X107、およびX109の具体的な例としては、
単結合、
-CH2OCH2-、
-CH2O(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3-、
-CH2O(CH2)6-、
-CF2-CH2-O-CH2-、
-CF2-CH2-O-(CH2)2-、
-CF2-CH2-O-(CH2)3-、
-CF2-CH2-O-(CH2)6-、
-CH2O(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)2Si(CH3)2(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)10Si(CH3)2(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)20Si(CH3)2(CH2)2-、
-CH2OCF2CHFOCF2-、
-CH2OCF2CHFOCF2CF2-、
-CH2OCF2CHFOCF2CF2CF2-、
-CH2OCH2CF2CF2OCF2-、
-CH2OCH2CF2CF2OCF2CF2-、
-CH2OCH2CF2CF2OCF2CF2CF2-、
-CH2OCH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2-、
-CH2OCH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2-、
-CH2OCH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2CF2-、
-CH2OCH2CHFCF2OCF2-、
-CH2OCH2CHFCF2OCF2CF2-、
-CH2OCH2CHFCF2OCF2CF2CF2-、
-CH2OCH2CHFCF2OCF(CF3)CF2OCF2-、
-CH2OCH2CHFCF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2-、
-CH2OCH2CHFCF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2CF2-、
-CH2OCF2CHFOCF2CF2CF2-C(O)NH-CH2-、
-CH2OCH2(CH2)7CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)2-、
-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)3-、
-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)2OSi(OCH2CH3)2(CH2)3-、
-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)2-、
-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)2OSi(OCH2CH3)2(CH2)2-、
-(CH2)2-Si(CH3)2-(CH2)2-、
-CH2-、
-(CH2)2-、
-(CH2)3-、
-(CH2)4-、
-(CH2)5-、
-(CH2)6-、
-CF2-CH2-、
-CF2-(CH2)2-、
-CF2-(CH2)3-、
-CF2-(CH2)4-、
-CF2-(CH2)5-、
-CF2-(CH2)6-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH2-、
-CONH-(CH2)2-、
-CONH-(CH2)3-、
-CONH-(CH2)6-、
-CF2CONHCH2-、
-CF2CONH(CH2)2-、
-CF2CONH(CH2)3-、
-CF2CONH(CH2)6-、
-CON(CH3)-(CH2)3-、
-CON(Ph)-(CH2)3-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(CH3)-(CH2)6-、
-CON(Ph)-(CH2)6-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CF2-CON(CH3)-(CH2)3-、
-CF2-CON(Ph)-(CH2)3-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CF2-CON(CH3)-(CH2)6-、
-CF2-CON(Ph)-(CH2)6-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CH2)2NH(CH2)3-、
-CONH-(CH2)6NH(CH2)3-、
-CH2O-CONH-(CH2)3-、
-CH2O-CONH-(CH2)6-、
-S-(CH2)3-、
-(CH2)2S(CH2)3-、
-CONH-(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、
-CONH-(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、
-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)2Si(CH3)2(CH2)2-、
-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2(CH2)2-、
-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)10Si(CH3)2(CH2)2-、
-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)20Si(CH3)2(CH2)2-、
-C(O)O-(CH2)3-、
-C(O)O-(CH2)6-、
-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-(CH2)2-、
-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-CH(CH3)-、
-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-(CH2)3-、
-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-CH(CH3)-CH2-、
-OCH2-、
-O(CH2)3-、
-OCFHCF2-、
【0337】
【0338】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、式:
-(R35)x1-(CFR36)y1-(CH2)z1-
[式中:
x1、y1およびz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、
x1、y1およびz1の和は1以上であり、
括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される。
【0339】
R35は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR350-(式中、R350は、水素原子または有機基を表す)または2価の有機基であり、酸素原子または2価の極性基であってよい。
【0340】
「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR351)-、およびC(O)NR351-(これらの式中、R351は、水素原子または低級アルキル基を表す)が挙げられる。ここで、低級アルキル基は、例えば、炭素数1~6のアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル)である。低級アルキル基は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0341】
R36は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり、フッ素原子であってよい。ここで、低級フルオロアルキル基は、例えば、炭素数1~6、または1~3のフルオロアルキル基であり、炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であってよく、トリフルオロメチル基またはペンタフルオロエチル基であってよく、トリフルオロメチル基であってよい。
【0342】
一の態様において、X101、X105、X107、およびX109基は、下記式:
【0343】
【0344】
[式中:
R51は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、またはC1-6アルコキシ基であり、メチル基であってよく、
各X101基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のPFPEに結合する以下の基:
-CH2O(CH2)2-、
-CH2O(CH2)3-、
-CF2O(CH2)3-、
-(CH2)2-、
-(CH2)3-、
-(CH2)4-、
-CONH-(CH2)3-、
-CON(CH3)-(CH2)3-、
-CON(Ph)-(CH2)3-(式中、Phはフェニルを意味する)、または
【0345】
【0346】
(式中、R52は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基またはC1-6のアルコキシ基であり、メチル基またはメトキシ基であってよく、メチル基であり得る。)
であり、
別のTのいくつかは、分子主鎖のPFPEと反対の基(即ち、式(A1)、(A2)、(D1)および(D2)においては炭素原子、また、下記する式(B1)、(B2)、(C1)および(C2)においてはSi原子、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C1-6アルコキシ基またはラジカル捕捉基または紫外線吸収基である。]
で表される。
【0347】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されない。ラジカル捕捉基としては、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、またはトリアジン類の残基が挙げられる。
【0348】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されない。紫外線吸収基としては、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換および未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレートまたはアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0349】
一の態様において、ラジカル捕捉基または紫外線吸収基は、下記式:
【0350】
【0351】
この態様において、X101、X105、X107、およびX109は、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0352】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(A1)、(B1)、(C1)、(D1)、または(E1)で表される化合物である。
【0353】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(A2)、(B2)、(C2)、または(D2)で表される化合物である。
【0354】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(A1)、(A2)、(C1)、(C2)、(D1)、(D2)、または(E1)で表される化合物である。これらの化合物は、末端に水酸基または加水分解可能な基を有するSiを複数有し得るので、耐摩耗性がさらに向上し得る。
【0355】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記(C1)、(C2)、(D1)、(D2)、または(E1)で表される化合物である。
【0356】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記(C1)、(C2)、(D1)、または(D2)で表される化合物である。
【0357】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(A1)および(A2)で表される化合物である。
【0358】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(B1)および(B2)で表される化合物である。
【0359】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(C1)および(C2)で表される化合物である。これにより、耐摩耗性および表面滑り性がより向上し得る。上記式(C1)および(C2)で表される化合物はまた、PFPEシラン化合物αなどのイソシアヌル骨格を含む化合物との混合性が高い。
【0360】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(D1)および(D2)で表される化合物である。
【0361】
一の態様において、PFPEシラン化合物βは、上記式(E1)で表される化合物である。
【0362】
PFPEシラン化合物βの平均分子量は、1,000以上であってよく、1,500以上であってよく、2,000以上であってよい。PFPEシラン化合物βの平均分子量は、30,000以下であってよく、10,000以下であってよい。一の態様において、PFPEシラン化合物βの平均分子量は、1,000以上10,000以下である。
【0363】
本開示の表面処理剤中、PFPEシラン化合物αとPFPEシラン化合物βとの重量比は、1:99~99:1、5:95~90:10、30:70~90:10、または30:70~70:30であってよい。
【0364】
上記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)、(D2)、および(E1)で表される化合物は、公知の方法により製造することができる。
【0365】
《他の化合物》
本開示の表面処理剤は、さらに、PFPEシラン化合物αおよびβ以外の他の化合物を含み得る。他の化合物としては、代表的には、PFPEシラン化合物αのイソシアヌル環が開環した化合物(他のシラン化合物)、PFPEシラン化合物αの合成に由来する化合物が挙げられる。
【0366】
他のシラン化合物としては、下記式(α1’)および式(α2’):
【0367】
【0368】
[式中、各記号は、式(α1)および式(α2)と同意義である。]
で表される化合物、並びに、パーフルオロポリエーテル基がOCF2ユニットを有しない以外は、式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)、(D2)および(E1)と同様の構造を有するシラン化合物が挙げられる。
【0369】
上記OCF2ユニットを有しないパーフルオロポリエーテル基は、例えば、下記式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3X10
6)d-(OC2F4)e-
[式中、各記号は、上記ポリエーテル鎖と同意義である。]
で表される。
【0370】
上記OCF2ユニットを有しないパーフルオロポリエーテル基は、下記式:
-(OC3X10
6)d-
[式中、dおよびX10は、上記と同意義であり、X10はFであってよい。]
で表される基、および、下記式:
-(OC2F4-R2”)g”-
[式中、R2”は、OC2F4、OC3F6およびOC4F8から選択される基であり、g”は、2~100の整数である。]
で表されてもよい。
【0371】
-(OC3X10
6)d-は、-(OC3F6)d-であってよく、-(OCF(CF3)CF2)d-または(OCF2CF2CF2)d-であってよく、-(OCF2CF2CF2)d-であってよい。
【0372】
他のシラン化合物の含有量は、例えば、100mol部のPFPEシラン化合物αに対して、0.01~20mol部であり、0.1~15mol部であってよく、1~10mol部であってよく、3~5mol部であってよい。
【0373】
PFPEシラン化合物αの合成に由来する化合物としては、例えば、R1-OSO2CF3またはCF3SO2O-R1’-OSO2CF3が挙げられる。
【0374】
《架橋性化合物》
表面処理剤はさらに、架橋性化合物を含んでいてもよい。架橋性化合物は、PFPEシラン化合物αのゾル-ゲル反応を生じさせる。表面処理層がゾル-ゲル反応を経由して形成されることにより、PFPEシラン化合物αの表面偏析が促進され、防汚性がさらに向上し得る。
【0375】
架橋性化合物は、下記式(Q1):
A[Z
q1-M
q(OR
q1)
wn1(R
q2)
wn2-wn1]
wa1[Z
q2-R
q3]
wa2 (Q1)
[式中:
Aは、1~10価の有機基であり、
Z
q1は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、
M
qは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnであり;
R
q1は、それぞれ独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基であり、
R
q2は、それぞれ独立して、水素原子、または炭化水素基であり、
wn1は、それぞれ独立して、1以上(M
qの価数-1)以下であり、
wn2は、それぞれ独立して、(M
qの価数-1)であり、
Z
q2は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基であり、
R
q3は、それぞれ独立して、反応性基であり、
wa1は、1~10の整数であり、
wa2は、0~10の整数であり、
wa1とwa2との合計はAの価数である。]
で表される化合物、および、
下記式(Q2):
【化74】
[式中:
Mは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnであり;
R
qは、それぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル基、またはR
q1-CO-であり;
R
q1は、1価の炭化水素基であり;
R
q’は、それぞれ独立して、C
1-3アルキル基またはC
1-3アルコキシ基であり;
mqは、前記Mの価数であり;
nqは、0以上前記Mの価数以下である。]
で表される化合物の少なくとも一方を含む。
【0376】
(式(Q1)で表される化合物)
A[Zq1-Mq(ORq1)wn1(Rq2)wn2-wn1]wa1[Zq2-Rq3]wa2 (Q1)
【0377】
Aは、1~10価の有機基であり、好ましくは1~8価、より好ましくは1~6価、さらに好ましくは1~4価、さらにより好ましくは1~3価、特に好ましくは2または3価の有機基である。
【0378】
一の態様において、Aは、2価の有機基である。
【0379】
上記2価の有機基は、好ましくは、下記式:
-[(RA1)a11-(RA2)a12-(RA3)a13]-
[式中:
RA1は、それぞれ独立して、アルキレン基、好ましくはC1-20アルキレン基、より好ましくはC1-10アルキレン基、さらに好ましくはC1-6アルキレン基、さらにより好ましくはC1-4アルキレン基であり、
RA2は、それぞれ独立して、シクロアルキレン基、好ましくはC3-20シクロアルキレン基、より好ましくはC3-10シクロアルキレン基、さらに好ましくはC5-8シクロアルキレン基、さらにより好ましくはC5-7シクロアルキレン基であり、
RA3は、それぞれ独立して、アリーレン基、好ましくはC6-20アリーレン基、より好ましくはC6-10アリーレン基、さらに好ましくはC6-8アリーレン基、特に好ましくはフェニレン基であり、
a11は、0~5の整数、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは1または2であり、
a12は、0~5の整数、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0または1であり、
a13は、0~5の整数、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0または1であり、
a11、a12およびa13の合計は、1以上、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
a11、a12およびa13を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である。
【0380】
一の態様において、Aは、RA1(上記のアルキレン基)である。
【0381】
上記RA1におけるアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0382】
別の態様において、Aは、3価の有機基である。
【0383】
上記3価の有機基は、好ましくは、下記式:
【化75】
[式中:
X
aは、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基である。]
で表される。
【0384】
一の態様において、Xaは、単結合である。
【0385】
別の態様において、Xaは、2価の有機基である。
【0386】
Xaにおける2価の有機基は、好ましくは、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む2価の基であり、より好ましくは、単結合、C1-10アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0387】
好ましい態様において、Xaにおける2価の有機基は、下記式:
-(CX221X222)x11-(Xa1)y11-(CX223X224)z11-
(式中、X221~X224は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR221)3(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX221X222に結合する。)、
x11は0~10の整数であり、y11は0または1であり、z11は1~10の整数である。)
で表される基である。なお、上記基は、左側がイソシアヌル環に結合する。
【0388】
Xa1は、好ましくは、-O-またはC(=O)O-である。
【0389】
Xaにおける2価の有機基は、好ましくは、下記式:
-(CF2)m111-(CH2)m112-O-(CH2)m113-
(式中、m111は1~3の整数であり、m112は1~3の整数であり、m113は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CF2)m114-(CH2)m115-O-CH2CH(OH)-(CH2)m116-
(式中、m114は1~3の整数であり、m115は1~3の整数であり、m116は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CF2)m117-(CH2)m118-
(式中、m117は1~3の整数であり、m118は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CF2)m119-(CH2)m120-O-CH2CH(OSi(OCH3)3)-(CH2)m121-
(式中、m119は1~3の整数であり、m120は1~3の整数であり、m121は1~3の整数である。)
で表される基、または、
-(CH2)m122-
(式中、m122は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0390】
Xaにおける2価の有機基としては、特に限定されないが、具体的には、
-CH2-、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-(CF2)n15-(n15は0~4の整数である。)、-(CF2)n25-(CH2)m25-(n25およびm25は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)、-CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2-、-CF2CF2CH2OCH2CH(OSi(OCH3)3)CH2-
等が挙げられる。
【0391】
Zq1は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基である。
【0392】
一の態様において、Zq1は、単結合である。
【0393】
別の態様において、Zq1は、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0394】
上記Zq1における2価の有機基は、それぞれ独立して、アルキレン基、好ましくはC1-20アルキレン基、より好ましくはC1-10アルキレン基、さらに好ましくはC1-6アルキレン基、さらにより好ましくはC1-4アルキレン基である。
【0395】
Mqは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnである。
【0396】
Mqは、好ましくはSi、TiまたはZrであり、より好ましくはSiである。
【0397】
Rq1は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基である。
【0398】
好ましい態様において、Rq1は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはC1-2アルキル基である。
【0399】
Rq2は、それぞれ独立して、水素原子、または炭化水素基である。
【0400】
Rq2は、それぞれ独立して、炭化水素基である。
【0401】
Rq2における炭化水素基は、好ましくは、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはC1-2アルキル基である。
【0402】
wn1は、それぞれ独立して、1以上(Mqの価数-1)以下であり、wn2は、(Mqの価数-1)である。
【0403】
wn1は、好ましくは2以上(Mqの価数-1)以下、より好ましくは3以上(Mqの価数-1)以下、さらに好ましくは(Mqの価数-1)である。
【0404】
Zq2は、それぞれ独立して、単結合、または2価の有機基である。
【0405】
一の態様において、Zq2は、単結合である。
【0406】
別の態様において、Zq2は、それぞれ独立して、2価の有機基である。
【0407】
上記Zq2における2価の有機基は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z21-O-(CH2)z22-(式中、z21は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z22は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)または、-(CH2)z23-フェニレン-(CH2)z24-(式中、z23は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z24は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0408】
好ましい態様において、Z1は、C1-6アルキレン基、または-(CH2)z21-O-(CH2)z22-(式中、z21は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z22は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。
【0409】
Rq3は、それぞれ独立して、反応性基である。
【0410】
上記Rq3基は、それぞれ独立して、イソシアネート基、エポキシ基、またはビニル基である。
【0411】
一の態様において、上記反応性基は、イソシアネート基である。
【0412】
別の態様において、上記反応性基は、エポキシ基である。
【0413】
別の態様において、上記反応性基は、ビニル基である。
【0414】
wa1は、1~10の整数であり、wa2は、0~10の整数であり、wa1とwa2との合計はAの価数である。
【0415】
一の態様において、wa1は、1~10の整数であり、wa2は、0である。
【0416】
別の態様において、wa1は、1~10の整数であり、wa2は、1~10の整数である。
【0417】
好ましい態様において、wa1は、1または2であり、wa2は、0または1であり、好ましくは、wa1は、1であり、wa2は、1である。
【0418】
【0419】
Mは、Al、Ca、Fe、Ge、Hf、In、Si、Ta、Ti、Sn、Zr、またはZnである。
【0420】
Mは、好ましくはSi、TiまたはZrであり、より好ましくはSiである。
【0421】
Rqは、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、またはRq1-CO-である。
【0422】
Rqは、それぞれ独立して、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはC1-2アルキル基である。
【0423】
Rq’は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基またはC1-3アルコキシ基である。
【0424】
上記Rq’におけるアルキル基は、好ましくはメチル基またはエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0425】
上記Rq’におけるアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基またはエトキシ基であり、より好ましくはエトキシ基である。
【0426】
mqは、上記Mの価数であり、nqは、0以上上記Mの価数以下である。
【0427】
一の態様において、nqはMの価数である。
【0428】
別の態様において、(mq-nq)は1である。
【0429】
架橋性化合物の濃度は、表面処理剤100質量部に対して、例えば、3質量部以上であり、10質量部以上であってよい。架橋性化合物の上記濃度は、例えば、30質量部以下であり、20質量部以下であってよい。一態様において、架橋性化合物の上記濃度は、3質量部以上30質量部以下である。
【0430】
《酸触媒》
架橋性化合物を含む表面処理剤は、さらに酸触媒を含み得る。酸触媒の含有量は、表面処理剤100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってよい。酸触媒の上記含有量は、5質量部以下であってよく、3質量部以下であってよい。一態様において、酸触媒の上記含有量は、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0431】
酸触媒としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸類;シュウ酸、ヘキサフルオログルタル酸などのジカルボン酸類;P-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類が挙げられる。酸触媒は、塩酸、シュウ酸および硝酸であってよい。
【0432】
《有機溶剤》
表面処理剤は、有機溶剤で希釈されていてもよい。有機溶剤は、PFPEシラン化合物α等を均一に分散溶解できるものであれば特に限定されない。表面処理剤の安定性および有機溶剤の揮発性の観点から、有機溶剤としては、例えば、炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。
【0433】
表面処理剤が架橋性化合物を含む場合、有機溶剤としては、例えば、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘブタンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で、または、含フッ素系溶剤を含む2種以上の混合物として用いることができる。
【0434】
ポリフルオロ脂肪族炭化水素としては、例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H)が挙げられる。ヒドロフルオロエーテル(HFE)としては、例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000)が挙げられる。有機溶剤は、ヒドロフルオロエーテルであってよく、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)であってよい。
【0435】
《含フッ素オイル》
表面処理剤は、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物(典型的には、パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)(以下、「含フッ素オイル」と称する。)を含んでいてよい。含フッ素オイルにより、表面処理層の表面滑り性が向上し得る。
【0436】
含フッ素オイルは、特に限定されない。例えば、以下の一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物が挙げられる。
Rf11-(OC4F8)a1-(OC3F6)b1-(OC2F4)c1-(OCF2)d-Rf21 ・・・(3)
【0437】
[式中、Rf11は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16のアルキル基(典型的には、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表す。
Rf21は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16のアルキル基(典型的には、C1-16のパーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表す。
Rf11およびRf21は、それぞれ独立して、C1-3のパーフルオロアルキル基であってよい。
a1、b1、c1およびd1は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数である。
a1、b1、c1およびd1の和は少なくとも1であり、1~300であってよく、20~300であってよい。]
【0438】
添字a1、b1、c1またはd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-、または、-(OCF2CF(C2F5))-であってよく、-(OCF2CF2CF2CF2)-であってよい。
-(OC3F6)-は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-、または、-(OCF2CF(CF3))-であってよく、-(OCF2CF2CF2)-であってよい。
-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-、または、-(OCF(CF3))-であってよく、-(OCF2CF2)-であってよい。
【0439】
一の態様において、パーフルオロポリエーテル化合物は、以下の一般式(3a)および(3b)のいずれかで示される。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上の混合物として使用される。
Rf11-(OCF2CF2CF2)b1”-Rf21 ・・・(3a)
Rf11-(OCF2CF2CF2CF2)a1”-(OCF2CF2CF2)b1”-(OCF2CF2)c1”-(OCF2)d1”-Rf21 ・・・(3b)
【0440】
式中、Rf11およびRf21は上記の通りである。
式(3a)において、b1”は1以上100以下の整数である。
式(3b)において、a1”およびb1”は、それぞれ独立して0以上30以下であり、1以上30以下の整数であってよい。c1”およびd1”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a1”、b1”、c1”、d1”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0441】
含フッ素オイルの平均分子量は、1,000~30,000であってよい。これにより、表面滑り性はより向上し得る。
【0442】
含フッ素オイルの含有量は、PFPEシラン化合物αおよびPFPEシラン化合物βの合計100質量部に対して、例えば0.1~500質量部であってよく、1~400質量部であってよく、5~300質量部であってよい。
【0443】
含フッ素オイルは、一般式:
Rf31-F
[式中、Rf31はC5-16パーフルオロアルキル基である。]
で表される化合物、あるいは、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってよい。
【0444】
《シリコーンオイル》
表面処理剤は、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と称する。)を含んでいてよい。これにより、表面処理層の表面滑り性が向上し得る。
【0445】
シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のものが挙げられる。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルが挙げられる。
【0446】
シリコーンオイルの含有量は、PFPEシラン化合物αおよびPFPEシラン化合物βの合計100質量部に対して、例えば0~300質量部であってよく、0~200質量部であってよい。
【0447】
《その他》
表面処理剤は、さらに、他の添加剤を含んでいてよい。他の添加剤としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、顔料、染料、フィラー、触媒、アルコール、遷移金属、ハロゲン化物イオン、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物が挙げられる。
【0448】
なかでも、耐候性の点で、表面処理剤は、少なくとも紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方を含んでいてよい。紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤としては、プライマーに含まれ得るものとして例示したものが挙げられる。紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の(合計の)濃度は、表面処理剤100質量%に対して、例えば、0.5質量%以上であり、1.0質量%以上であってよく、2.0質量%以上であってよい。紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の上記濃度は、例えば、3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であってよい。一態様において、紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の上記濃度は、0.5質量%以上3.0質量%以下である。
【0449】
触媒としては、例えば、酸(例えば酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn)が挙げられる。触媒は、表面処理剤が塗布される直前に、PFPEシラン化合物αを含む溶液に添加されるのが望ましい。
【0450】
アルコールとしては、例えば、炭素数1~6のアルコール化合物が挙げられる。
【0451】
遷移金属としては、例えば、白金、ルテニウム、ロジウムが挙げられる。
【0452】
ハロゲン化物イオンとしては、例えば、塩化物イオンが挙げられる。
【0453】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、例えば、窒素原子、酸素原子、リン原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含み、硫黄原子、または窒素原子を含んでいてもよい。
【0454】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、分子構造内に、アミノ基、アミド基、スルフィニル基、P=O基、S=O基およびスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含んでいてよく、P=O基およびS=O基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含んでいてよい。
【0455】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物およびスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つである。上記化合物は、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン類、リン酸アミド、尿素化合物およびスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つであってよく、スルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物および芳香族アミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つであってよく、スルホキシド化合物であってよい。
【0456】
脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミンが挙げられる。芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン、ピリジンが挙げられる。リン酸アミド化合物としては、例えば、ヘキサメチルホスホルアミドが挙げられる。アミド化合物としては、例えば、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが挙げられる。尿素化合物としては、テトラメチル尿素が挙げられる。スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチレンスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホキシドが挙げられる。分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、ジメチルスルホキシド、またはテトラメチレンスルホキシドであってよい。
【0457】
[物品の製造方法]
本開示に係る物品の製造方法は、有機基材上に、一つの分子内に有機反応性基および加水分解性シリル基を有するカップリング剤を含むプライマーを用いてプライマー層を形成すること、および、上記プライマー層の直上に、PFPEシラン化合物αを含む表面処理剤を用いて表面処理層を形成すること、を含む。プライマーおよび表面処理剤は、それぞれ上記の通りである。
【0458】
(1)プライマー層の形成
プライマーの塗布方法は、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、湿潤被覆法が挙げられる。湿潤被覆法としては、例えば、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングが挙げられる。プライマーは、スピンコーティングにより塗布されてよい。
【0459】
プライマーの塗布量は特に限定されない。プライマーは、例えば、プライマー層の厚さが1nm以上50nm以下になるように、塗布される。
【0460】
プライマーが塗布された後、熱処理を行って、プライマーに含まれる有機溶剤を除去してもよい。熱処理の条件は、有機溶剤の種類および量、プライマー層の厚さ等に応じて適宜設定される。
【0461】
(2)表面処理層の形成
表面処理剤の塗布方法は、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、上記の湿潤被覆法が挙げられる。表面処理剤は、スプレーコーティング法により塗布されてよい。
【0462】
表面処理剤の塗布量は特に限定されない。表面処理剤は、例えば、表面処理層の厚さが1nm以上50nm以下になるように、塗布される。
【0463】
表面処理剤が塗布された後、後処理を行ってもよい。後処理により、表面処理層の耐久性が向上し得る。
【0464】
後処理は、加熱であってよい。加熱の条件は特に限定されない。加熱温度は、例えば、60~250℃であってよく、100℃~180℃であってよい。加熱時間は、例えば30分~5時間であってよく、1~3時間であってよい。
【0465】
後処理は、水分供給および加熱を逐次的に実施するものであってよい。水分供給により、表面処理剤中のPFPEシラン化合物αのSiに結合した加水分解可能な基に水が作用し、当該化合物は速やかに加水分解され得る。加熱により、PFPEシラン化合物α同士の間で、加水分解後のSiに結合した基同士の脱水縮合反応が進行し易くなる。また、加熱により、PFPEシラン化合物αの加水分解後のSiに結合した基と、有機基材表面に存在する反応性基とが反応する。有機基材表面に存在する反応性基が水酸基である場合には脱水縮合反応が進行し得る。その結果、PFPEシラン化合物α間、さらには、PFPEシラン化合物αと有機基材との間で結合が形成される。
【0466】
水分の供給方法は特に限定されない。水分供給は、例えば、表面処理剤により形成された膜(表面処理層の前駆体。以下、「前駆体層」とも言う。)と周囲雰囲気との温度差による結露や、前駆体層への水蒸気(スチーム)の吹付けなどにより行われる。
【0467】
水分供給時の周囲あるいは水分の温度は特に限定されない。当該温度は、例えば0~250℃であり、60℃以上であってよく、100℃以上であってよい。当該温度は、180℃以下であってよく、150℃以下であってよい。このような雰囲気下で水分を供給することにより、加水分解は速やかに進行し得る。水分供給は、常圧下で行ってよい。
【0468】
加熱は、例えば、60℃を超える乾燥雰囲気で行われる。加熱方法は特に限定されない。例えば、前駆体層を備える有機基材を、60℃を超え、かつ不飽和水蒸気圧の雰囲気下に配置すればよい。加熱温度は、100℃を超えていてよく、250℃以下であってよく、180℃以下であってよい。加熱は、常圧下で行ってよい。
【0469】
後処理は、水分供給および乾燥加熱を連続的に実施するものであってよい。連続的後処理は、例えば、過熱水蒸気を用いることにより行われる。
【0470】
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を沸点より高い温度に加熱して得られる。過熱水蒸気は、水を、沸点を超える温度(常圧下においては100℃超であって、一般的に250℃以下、例えば180℃以下)に加熱することにより得られる、高温の水蒸気である。前駆体層を過熱水蒸気に曝すと、まず、過熱水蒸気と前駆体層との間の温度差により、前駆体層表面にて結露が生じ、これによって前駆体層に水分が供給される。過熱水蒸気と前駆体層との間の温度差が小さくなるにつれて、前駆体層表面の水分は過熱水蒸気による乾燥雰囲気中で気化し、前駆体層表面の水分量が次第に低下する。前駆体層表面の水分量が低下している間、即ち、前駆体層が乾燥雰囲気下にある間、前駆体層は過熱水蒸気と接触することによって、この過熱水蒸気の温度(常圧下では100℃を超える温度)に加熱される。つまり、前駆体層を過熱水蒸気に曝すだけで、水分供給と乾燥加熱とが連続的に実施される。
【0471】
表面処理剤が塗布された後、上記のような後処理は行われなくてもよい。この場合、有機基材上に前駆体層が形成された後、8時間以上、好ましくは12時間以上、より好ましくは15時間以上、この有機基材を静置してよい。静置中の温度は、室温であってよく、例えば20~35℃であってよい。
【0472】
[表面処理剤]
本開示は、上記の物品の製造に用いられる表面処理剤を包含する。
表面処理剤は、上記のPFPEシラン化合物αを含む。PFPEシラン化合物αの濃度や表面処理剤に含まれ得る他の成分等の詳細は、上記の通りである。
【0473】
本開示の物品は、風雨や汚染物質の付着等、屋外での苛酷な環境条件下による長期間の使用によっても、防汚性能が維持される。本開示の表面処理剤は、耐摩耗性および耐候性に優れた防汚層を形成することができる。
【実施例】
【0474】
次に本開示を、実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示し、パーフルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位((CF2CF2CF2O)、(CF2CF2O)、(CF2O)等)の存在順序は任意である。
【0475】
[合成例1]
公報WO2010/125964に記載の方法に準じて、以下のPFPE含有シラン化合物(A)を合成した。
【0476】
【0477】
[合成例2]
次に、公報WO2018/056410に記載の方法に準じ、以下のPFPE含有シラン化合物(B)を合成した。
【化78】
【0478】
[合成例3]
公報WO2010/125964に記載の方法に準じて、以下のPFPE含有シラン化合物(A)を合成した。
【化79】
【0479】
・対象基材:樹脂
[実施例1]
(1)有機基材の準備
ポリカーボネート製の基材(厚さ2mm、平面寸法100mm×100mm)を、水およびアルコールで洗浄し、有機基材を得た。
【0480】
(2)プライマーの調製
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)をエタノールに添加して、APTMSの濃度が1.0質量%のプライマーを得た。
【0481】
(3)表面処理剤の調製
PFPE含有シラン化合物(A)を、濃度0.1wt%になるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、NovecHFE7200)に溶解させ、表面処理剤を得た。
【0482】
(4)プライマー層の形成
有機基材の表面に、プライマーをスピンコート法により塗布した。その後、130℃で5分間乾燥して、厚さ5nmのプライマー層を形成した。
【0483】
(5)表面処理層の形成
市販の2流体ノズルを搭載したスプレー塗布装置を用いて、表面処理剤を、ヘッドスピード70mm/secとしてプライマー層上に均一にスプレー塗布した。その後、大気中、室温で24時間静置して、厚さ5nmの表面処理層を形成した。このようにして、有機基材とプライマー層と表面処理層とを有する物品を得た。
【0484】
[実施例2]
PFPE含有シラン化合物(A)に替えて、PFPE含有シラン化合物(B)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、物品を得た。
【0485】
[実施例3]
PFPE含有シラン化合物(A)に替えて、PFPE含有シラン化合物(C)を用いたこと、および、表面処理剤にさらにテトラエトキシシラン(架橋性化合物、TEOS)を濃度4.5%になるように添加し、0.01Nの塩酸を濃度0.03%なるように添加したこと以外、実施例1と同様にして、物品を得た。
【0486】
[実施例4]
APTMSに替えて、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を添加したこと以外、実施例1と同様にして、物品を得た。
【0487】
[比較例1]
プライマー層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、物品を得た。
【0488】
[比較例2]
PFPE含有シラン化合物(A)に替えて、以下のPFPE含有シラン化合物(a)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、物品を得た。
【化80】
【0489】
[評価(基材:樹脂)]
得られた物品について以下の評価を行った。結果を表1または
図1に示す。
(1)外観
物品の外観を目視にて評価した。評価基準は下記の通りである。
G:透明である。
NG:白化、または表面に微細な凹凸などの異物がある。
【0490】
(2)密着性
表面処理層の密着性をクロスカット試験により評価した。具体的には、試験面にカッターナイフを用いて素地に達する11本の切り傷をつけ、切り傷間隔2mmの碁盤目100個を作り、該部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がした。テープ剥離後の碁盤目を黒色油性ペン(ゼブラ(株)製、商品名:マッキー)で塗り、インクがはじかれなかった部分を、表面処理層の欠損部とした。評価基準は下記の通りである。
10点:いずれの格子の目にも剥がれがない
8点:切り傷の交差にわずかな剥がれがあり、欠損部の面積が全正方形の面積の5%以内
6点:切り傷の両側と交差とに剥がれがあり、欠損部の面積が全正方形の面積の5%以上15%未満
4点:切り傷の線に沿って部分的、もしくは全面的に剥がれており、欠損部の面積が全正方形の面積の15%以上35%未満
2点:切り傷の線に沿って部分的、もしくは全面的に剥がれており、欠損部の面積が全正方形の面積の35%以上65%未満
0点:切り傷の欠損部の面積が全正方形の65%以上
【0491】
(3)防汚性A(油性インクのハジキ性)
表面処理層に、黒色油性ペン(ゼブラ(株)製、商品名:マッキー)で一方向に一定の荷重で約3cmの直線を引いたときの、油性インキのハジキ性を評価した。評価基準は下記の通りである。
G:油性インクがはじかれていて、連続した直線を書くことが出来なかった
NG:油性インクがはじかれずに、連続した直線を書くことが出来た
【0492】
(4)防汚性B(油性インクの拭き取り性)
表面処理層に、黒色油性ペン(ゼブラ(株)製、商品名:マッキー)で一方向に一定の荷重で約3cmの直線を引いた。10分間放置した後、セルロース製不織布で3回拭き取り、拭き取り性を評価した。評価基準は下記の通りである。
G:油性インクが3回以内で完全に拭き取られた
NG:油性インクを完全に拭き取ることはできなかった
【0493】
(5)耐アルコール性
表面処理層を、エタノールを十分に染み込ませたセルロース製不織布(十條キンバリー社製、商品名:キムワイプ)で5往復拭いた後、さらに別の乾燥したセルロース製不織布で5往復拭いた。その後、表面処理層に、黒色油性ペン(ゼブラ(株)製、商品名:マッキー)で一方向に一定の荷重で約3cmの直線を引いて、上記と同様にして、(3)防汚性Aおよび(4)防汚性Bの評価を行った。
G:防汚性AおよびBが、いずれもG評価であった
NG:防汚性AおよびBのいずれか一方が、NG評価であった
【0494】
(6)耐摩耗性
コットン摩擦による耐久性評価を実施した。具体的には、得られた物品を水平配置し、コットン(旭化成(株)製、商品名:BEMCOT(登録商標)M3-II)を表面処理層に接触させた。1kg/cm2の荷重をかけながら、コットンを60往復/分の速度で摺動させた。1000往復毎に、水の静的接触角(対水接触角)を測定した。
【0495】
水の静的接触角は、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いて次の方法で測定した。水平に置いた物品にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影した。異なる5点で対水接触角を測定し、その平均値をその物品の対水接触角とした。
【0496】
(7)耐候性
スーパーキセノンウェザーメーターによる促進耐候性試験を行った。詳細な条件は以下の通りである。促進耐候性試験を行った試料の対水接触角を測定した。
光源:キセノンアークカーボンランプ(照度180W/m2)
照射パネル温度:63℃
照射時間:連続照射
湿潤サイクル(120分/サイクル):湿潤時間(約20°の水噴霧)18分、乾燥時間102分
【0497】
照射は連続的に行ったが、水の静的接触角の測定時には、物品を装置からいったん取り出した。耐水接触角の測定は、取り出された物品の表面処理層を、純水を十分に染み込ませたセルロース製不織布(十條キンバリー社製、商品名:キムワイプ)で5往復拭いた後、さらにエタノールを十分に染み込ませた別のセルロース製不織布で5往復拭き、乾燥させた後、行った。
図1は、積算照射量(総露光量)と対水接触角との関係を示している。
【0498】
【0499】
・対象基材:ゴム
[実施例5]
(1)有機基材の準備
ニトリルゴム製の基材(厚さ5mm、平面寸法50mm×100mm)を、水およびアルコールで洗浄し、有機基材を得た。
【0500】
(2)プライマーの調製
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を適量エタノールに添加して、APTMSの濃度が1.0質量%のプライマーを得た。
【0501】
(3)表面処理剤の調製
PFPE含有シラン化合物(A)を、濃度0.1wt%になるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、NovecHFE7200)に溶解させ、表面処理剤を得た。
【0502】
(4)プライマー層の形成
有機基材の表面に、プライマーをスピンコート法により塗布した。その後、120℃で5分間乾燥して、厚さ5nmのプライマー層を形成した。
【0503】
(5)表面処理層の形成
表面処理剤をスピンコート法により塗布した。その後、大気中、120℃で30分間加熱乾燥して、表面処理層を形成した。このようにして、ゴム製有機基材とプライマー層と表面処理層とを有する物品を得た。
【0504】
[比較例3]
プライマー層を形成しなかったこと以外、実施例5と同様にして、物品を得た。
【0505】
[比較例4]
プライマー層および表面処理層を形成していない未処理品を比較例4とした。
【0506】
[評価(基材:ゴム)]
得られた物品について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
(a)外観
物品の外観を目視にて評価した。評価基準は下記の通りである。
G:塗膜の加工斑がなく均一である。
NG:加工斑があり、均一に塗膜を形成していない。
【0507】
(b)耐アルコール性
エタノールを含ませたキムワイプで10往復拭き取り、水およびn-ヘキサデカンの、拭き取り前後の静的接触角を評価した。拭き取り前後の静的接触角の変化が小さいほど、耐アルコール性に優れる。静的接触角は、上記の樹脂基材に対する(6)耐摩耗性評価と同様の方法で測定した(以下同様)。
【0508】
(c)耐摩耗性
コットン摩擦による耐久性評価を実施した。具体的には、得られた物品を水平配置し、コットン(旭化成(株)製、商品名:BEMCOT(登録商標)M3-II)を表面処理層に接触させた。1kg/cm2の荷重をかけながら、コットンを60往復/分の速度で摺動させた。50回往復後の水の静的接触角(対水接触角)を測定した。
【0509】
(d)耐候性
上記の樹脂基材に対する(7)耐候性評価と同様の方法で促進耐候性試験を行い、積算照射量(総露光量)が300MJ/m
2のときの対水接触角を測定した。
【表2】
【0510】
表1および
図1の結果から理解されるように、実施例1~4で作製された樹脂製の物品は、初期の防汚性能に加えて、耐摩耗性および耐候性にも優れている。
表1および
図1の結果から理解されるように、実施例5、6で作製されたゴム製の物品もまた、初期の防汚性能に加えて、耐摩耗性および耐候性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0511】
本開示の物品は、耐摩耗性および耐候性に優れているため、特に屋外での用途に適している。