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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】温度推定装置、および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20231130BHJP
   F04C 28/28 20060101ALI20231130BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20231130BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20231130BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20231130BHJP
   F25B 1/02 20060101ALI20231130BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20231130BHJP
【FI】
F25B49/02 510A
F04C28/28 A
F04C29/04 J
F24F11/86
F24F11/63
F25B1/02 A
F24F140:20
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023030279
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2023-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 知希
(72)【発明者】
【氏名】林 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】宮島 孝幸
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176627(JP,A)
【文献】特開2013-093956(JP,A)
【文献】特開2018-123975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-1/10
F25B 49/02
F04C 28/28
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(31)と、
前記筐体(31)内に配置され、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を前記筐体(31)の内部空間(S)に吐出する圧縮機構(40)と、
前記圧縮機構(40)を駆動させる電動機(32)と、
前記筐体(31)の内部空間(S)から外部に前記冷媒を流す吐出管(22)と
を備える圧縮機(30)の吐出冷媒の温度を推定する温度推定装置であって、
前記圧縮機(30)に関する物理量に基づいて、前記吐出冷媒の温度を推定する制御部(70)を備え、
前記内部空間(S)内における前記圧縮機構(40)と前記吐出管(22)との間には、前記冷媒が流れる空間と、前記空間に配置される前記電動機(32)とが設けられ、
前記吐出冷媒の温度は、前記圧縮機構(40)から吐出された冷媒の温度、または、前記空間のうち前記圧縮機構(40)と前記電動機(32)との間に位置する空間における冷媒の温度であり、
前記物理量は、前記電動機(32)の回転数と、前記吐出管(22)の温度とを含む、温度推定装置。
【請求項2】
前記制御部(70)は、前記物理量と前記吐出冷媒の温度の推定値との関係を示す回帰式に基づいて前記吐出冷媒の温度を推定する、請求項1に記載の温度推定装置。
【請求項3】
前記制御部(70)は、前記物理量を説明変数とし、前記吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とした機械学習により構築され、前記物理量と前記吐出冷媒の温度の推定値とを対応付けた推定モデルに基づいて、前記吐出冷媒の温度を推定する、請求項1に記載の温度推定装置。
【請求項4】
前記吐出管(22)の温度をTtとし、前記電動機(32)の回転数をRとし、係数をK(nは整数)とすると、前記吐出冷媒の温度Tを推定するための前記回帰式は、以下の数1で示される、請求項2に記載の温度推定装置。
(数1)
=K×T+K×(R-K)×(T-K)+K×(R-K+K×(T-K+K
【請求項5】
前記物理量は、前記電動機(32)に流れる電流を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項6】
前記物理量は、前記圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力、または前記圧力に相関する物理量を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項7】
前記圧力に相関する物理量は、気液混合状態の冷媒の温度、または前記気液混合状態の冷媒の温度に相関する物理量を含む、請求項6に記載の温度推定装置。
【請求項8】
前記物理量は、前記圧縮機(30)の周辺温度を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項9】
前記制御部(70)は、前記圧縮機(30)を個体毎に識別し、推定した前記吐出冷媒の温度を、識別結果に基づいて補正する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項10】
前記物理量は、前記筐体(31)の内部空間(S)を流れる冷凍機油の量、または前記冷凍機油の量に相関する物理量を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項11】
前記物理量は、前記圧縮機(30)の総駆動時間を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項12】
前記物理量は、前記圧縮機(30)の吸入管(23)の温度、または前記吸入管(23)の温度に相関する物理量を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項13】
前記物理量は、前記電動機(32)のコイル(33a)の発熱量、または前記電動機(32)のコイル(33a)の発熱量に相関する物理量を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項14】
前記制御部(70)は、前記圧縮機(30)の運転条件に応じて、前記吐出冷媒の温度を推定するために用いる前記回帰式を変更する、請求項2または請求項4に記載の温度推定装置。
【請求項15】
前記制御部(70)は、前記電動機(32)の回転数が最大値から所定の範囲内の回転数となるときに前記吐出冷媒の温度を推定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項16】
前記制御部(70)は、推定した前記吐出冷媒の温度に基づいて、前記電動機(32)に流れる電流を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項17】
前記吐出冷媒の温度を推定することは、前記電動機(32)に含まれる磁石の温度を推定することを示す、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の温度推定装置。
【請求項18】
前記物理量は、前記磁石の発熱量を含む、請求項17に記載の温度推定装置。
【請求項19】
前記物理量は、前記磁石の表面熱伝達係数を含む、請求項17に記載の温度推定装置。
【請求項20】
前記制御部(70)は、前記電動機(32)の回転数が最大値から所定の範囲内の回転数となるときに前記磁石の温度を推定する、請求項17に記載の温度推定装置。
【請求項21】
前記制御部(70)は、推定した前記磁石の温度に基づいて、前記電動機(32)に流れる電流を制御する、請求項17に記載の温度推定装置。
【請求項22】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温度推定装置と、上記圧縮機(30)とを備える、空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度推定装置、および空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の冷凍サイクル装置は、筐体と、圧縮機構と、吐出管と、第1温度センサと、第2温度センサと、演算部とを備える。圧縮機構は、筐体内に配置され、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を筐体の内部空間に形成される冷媒流路に吐出する。吐出管は、筐体の内部空間から外部に圧縮した冷媒を流す。第1温度センサは、感温部を有し、感温部は前記冷媒流路に配置されて冷媒の温度を直接的に計測する。第2温度センサは、第1温度センサとは異なる場所に配置され、吐出管の表面、吐出管の内部空間、又は前記筐体の表面のいずれかの温度を計測する。演算部は、第1温度センサおよび第2温度センサを用いて、圧縮機構から吐出された冷媒の温度を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6974775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷凍サイクル装置は、圧縮機構から吐出された冷媒の温度を演算するために2つの温度センサ(第1温度センサおよび第2温度センサ)を用いている。しかし、第1温度センサは、一般的な圧縮機には備えられておらず、別途用意する必要があるため煩雑である。
【0005】
本開示の目的は、吐出冷媒の温度を容易に推定することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、温度推定装置を対象とする。温度推定装置は、筐体(31)と、前記筐体(31)内に配置され、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を前記筐体(31)の内部空間(S)に吐出する圧縮機構(40)と、前記圧縮機構(40)を駆動させる電動機(32)と、前記筐体(31)の内部空間(S)から外部に前記冷媒を流す吐出管(22)とを備える圧縮機(30)の内部温度を推定する。温度推定装置は、前記圧縮機(30)に関する物理量に基づいて、吐出冷媒の温度を推定する制御部(70)を備え、前記内部空間(S)内における前記圧縮機構(40)と前記吐出管(22)との間には、前記冷媒が流れる空間と、前記空間に配置される前記電動機(32)とが設けられ、前記吐出冷媒の温度は、前記圧縮機構(40)から吐出された冷媒の温度、または、前記空間のうち前記圧縮機構(40)と前記電動機(32)との間に位置する空間における冷媒の温度であり、前記物理量は、前記電動機(32)の回転数と、前記吐出管(22)の温度とを含む。空間における冷媒の温度は、言い換えれば、空間中の冷媒の温度である。
【0007】
第1の態様では、吐出冷媒の温度を容易に推定することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(70)は、前記物理量と前記吐出冷媒の温度の推定値との関係を示す回帰式に基づいて前記吐出冷媒の温度を推定する。
【0009】
第2の態様では、回帰式を用いて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1の態様において、前記制御部(70)は、前記物理量を説明変数とし、前記吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とした機械学習により構築され、前記物理量と前記吐出冷媒の温度の推定値とを対応付けた推定モデルに基づいて、前記吐出冷媒の温度を推定する。
【0011】
第3の態様では、機械学習により構築された推定モデルを用いて前記吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第2の態様において、前記吐出管(22)の温度をTとし、前記電動機(32)の回転数をRとし、係数をK(nは整数)とすると、前記制御部(70)により推定される前記吐出冷媒の温度Tは、以下の数1で示される。
(数1)
=K×T+K×(R-K)×(T-K)+K×(R-K+K×(T-K+K
【0013】
第4の態様では、数1を用いて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1の態様~第3の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記電動機(32)に流れる電流を含む。
【0015】
第5の態様では、電動機(32)に流れる電流に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1の態様~第3の態様、および第5の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力、または前記圧力に相関する物理量を含む。
【0017】
第6の態様では、圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第6の態様において、前記圧力に相関する物理量は、気液混合状態の冷媒の温度、または前記気液混合状態の冷媒の温度に相関する物理量を含む。
【0019】
第7の態様では、気液混合状態の冷媒の温度、または気液混合状態の冷媒の温度に相関する物理量に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1の態様~第3の態様、および第5の態様~第7の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記圧縮機(30)の周辺温度を含む。
【0021】
第8の態様では、圧縮機(30)の周辺温度に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1の態様~第8の態様のいずれか1つの態様において、前記制御部(70)は、前記圧縮機(30)を個体毎に識別し、推定した前記吐出冷媒の温度を、識別結果に基づいて補正する。
【0023】
第9の態様では、推定した吐出冷媒の温度を、圧縮機(30)の種類毎に補正することができる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第1の態様~第3の態様、および第5の態様~第9の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記筐体(31)の内部空間(S)を流れる冷凍機油の量、または前記冷凍機油の量に相関する物理量を含む。
【0025】
第10の態様では、冷凍機油の量、または冷凍機油の量に相関する物理量に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第1の態様~第3の態様、および第5の態様~第10の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記圧縮機(30)の総駆動時間を含む。
【0027】
第11の態様では、圧縮機(30)の総駆動時間の増加による圧縮機(30)の構成要素の劣化による吐出冷媒の温度への影響を考慮して吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0028】
本開示の第12の態様は、第1の態様~第3の態様、および第5の態様~第11の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記圧縮機(30)の吸入管(23)の温度、または前記吸入管(23)の温度に相関する物理量を含む。
【0029】
第12の態様では、圧縮機(30)の吸入管(23)の温度または吸入管(23)の温度に相関する物理量に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0030】
本開示の第13の態様は、第1の態様~第3の態様、および第5の態様~第12の態様のいずれか1つの態様において、前記物理量は、前記電動機(32)のコイル(33a)の発熱量、または前記電動機(32)のコイル(33a)の発熱量に相関する物理量を含む。
【0031】
第13の態様では、電動機(32)のコイル(33a)の発熱量、または電動機(32)のコイル(33a)の発熱量に相関する物理量に基づいて吐出冷媒の温度を推定することができ。
【0032】
本開示の第14の態様は、第2の態様または第4の態様において、前記制御部(70)は、前記圧縮機(30)の運転条件に応じて前記吐出冷媒の温度を推定するために用いる前記回帰式を変更する。
【0033】
第14の態様では、圧縮機(30)の運転条件に適合した回帰式を用いて吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0034】
本開示の第15の態様は、第1の態様~第14の態様のいずれか1つの態様において、前記制御部(70)は、前記電動機(32)の回転数が最大値から所定の範囲内の回転数となるときに前記吐出冷媒の温度を推定する。
【0035】
第15の態様では、電動機(32)が最大値近傍の回転数(最大値から所定の範囲内の回転数)になるときの吐出冷媒の温度を推定することができる。
【0036】
本開示の第16の態様は、第1の態様~第15の態様のいずれか1つの態様において、前記制御部(70)は、推定した前記吐出冷媒の温度に基づいて、前記電動機(32)に流れる電流を制御する。
【0037】
第16の態様では、電動機(32)に不可逆減磁が発生することを抑制できる。
【0038】
本開示の第17の態様は、第1の態様~第16の態様のいずれか1つの態様において、前記吐出冷媒の温度を推定することは、前記電動機(32)に含まれる磁石の温度を推定することを示す。
【0039】
第17の態様では、電動機(32)の磁石の温度を推定することができる。
【0040】
本開示の第18の態様は、第17の態様において、前記物理量は、前記磁石の発熱量を含む。
【0041】
第18の態様では、磁石の発熱量を考慮して磁石の温度を推定することができる。
【0042】
本開示の第19の態様は、第17の態様または第18の態様において、前記物理量は、前記磁石の表面熱伝達係数を含む。
【0043】
第19の態様では、磁石の表面熱伝達係数を考慮して磁石の温度を推定することができる。
【0044】
本開示の第20の態様は、第17の態様~第19の態様のいずれか1つの態様において、前記制御部(70)は、前記電動機(32)の回転数が最大値から所定の範囲内の回転数となるときに前記磁石の温度を推定する。
【0045】
第20の態様では、電動機(32)が最大値近傍の回転数(最大値から所定の範囲内の回転数)になるときの磁石の温度を推定することができる。
【0046】
本開示の第21の態様は、第17の態様~第20の態様のいずれか1つの態様において、前記制御部(70)は、推定した前記磁石の温度に基づいて、前記電動機(32)に流れる電流を制御する。
【0047】
第21の態様では、電動機(32)に不可逆減磁が発生することを抑制できる。
【0048】
本開示の第22の態様は、空気調和装置を対象とする。空気調和装置は、第1の態様~第21の態様のいずれか1つの態様に記載の温度推定装置と、上記圧縮機(30)とを備える。
【0049】
第22の態様では、吐出冷媒の温度を容易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、実施形態に係る冷凍装置の概略の構成図である。
図2図2は、実施形態に係る圧縮機の縦断面図である。
図3図3は、実施形態に係る圧縮機構の内部を表す横断面図である。
図4図4は、圧縮機の構成を示すブロック図である。
図5図5は、電動機を通過時の冷媒と周囲の熱伝達の関係式を示す。
図6図6は、圧縮機の熱回路を示す図である。
図7図7は、流体と固体の熱抵抗を表す一般的な式である。
図8図8は、項目と、相当する物理量と、物理量が増加した場合の影響との対応関係を示す。
図9図9は、電動機に流れる電流を制御するフロー図である。
図10図10は、電動機に流れる電流を制御するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0052】
〈冷凍装置の全体構成〉
実施形態に係る冷凍装置は、室内の冷房と暖房とを行う空気調和装置(10)である。図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒が充填される冷媒回路(11)を備える。冷媒回路(11)では、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0053】
空気調和装置(10)は、室外ユニット(12)と室内ユニット(13)とを備える。室内ユニット(13)は1台でなく、2台以上であってもよい。
【0054】
冷媒回路(11)には、圧縮機(30)と、室外熱交換器(16)(熱源熱交換器)と、膨張弁(17)と、室内熱交換器(18)(利用熱交換器)と、四方切換弁(19)とが接続される。圧縮機(30)、室外熱交換器(16)、四方切換弁(19)は、室外ユニット(12)に収容される。室内熱交換器(18)及び膨張弁(17)は、室内ユニット(13)に収容される。
【0055】
室外ユニット(12)では、室外熱交換器(16)の近傍に室外ファン(20)が設置される。室外熱交換器(16)では、室外ファン(20)が搬送する室外空気と冷媒とが熱交換する。室内ユニット(13)では、室内熱交換器(18)の近傍に室内ファン(21)が設置される。室内熱交換器(18)では、室内ファン(21)が搬送する室内空気と冷媒とが熱交換する。
【0056】
四方切換弁(19)は、第1~第4までのポート(P1~P4)を有している。第1ポート(P1)は圧縮機(30)の吐出管(22)と繋がり、第2ポート(P2)は圧縮機(30)の吸入管(23)と繋がり、第3ポート(P3)は室外熱交換器(16)のガス端部と繋がり、第4ポート(P4)は室内熱交換器(18)のガス端部と繋がる。四方切換弁(19)は、第1状態(図1の実線で示す状態)と第2状態(図1の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態では、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)が連通し、第2ポート(P2)と第3ポート(P3)が連通する。従って、四方切換弁(19)が第1状態のときに圧縮機(30)が運転されると、室内熱交換器(18)が凝縮器(放熱器)となり、室外熱交換器(16)が蒸発器となる冷凍サイクル(暖房サイクル)が行われる。第2状態では、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)が連通し、第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する。従って、四方切換弁(19)が第2状態のときに圧縮機(30)が運転されると、室外熱交換器(16)が凝縮器(放熱器)となり、室内熱交換器(18)が蒸発器となる冷凍サイクル(冷房サイクル)が行われる。
【0057】
〈圧縮機の全体構成〉
図2に示すように、圧縮機(30)は、縦長の円筒密閉型の筐体(31)を備えている。筐体(31)の下部には、吸入管(23)が貫通して固定されている。筐体(31)の頂部(上部鏡板)には、吐出管(22)が貫通して固定されている。筐体(31)の底部には、圧縮機(30)の各摺動部を潤滑するための油(冷凍機油)が貯留される。筐体(31)の内部には、圧縮機構(40)から吐出された冷媒(吐出冷媒ないし高圧冷媒)で満たされる内部空間(S)が形成される。つまり、本実施形態の圧縮機(30)は、筐体(31)の内部空間(S)の内圧が高圧冷媒の圧力と実質的に等しい、いわゆる高圧ドーム型に構成されている。
【0058】
筐体(31)の内部空間(S)には、上から下に向かって順に、電動機(32)、駆動軸(35)、及び圧縮機構(40)が設けられる。
【0059】
電動機(32)は、固定子(33)と回転子(34)とを有している。固定子(33)は、筐体(31)の胴部の内周面に固定されている。回転子(34)は、固定子(33)の内部を上下方向に貫通している。回転子(34)には磁石(永久磁石)が設けられる。固定子(33)には、そのティース部分(図示省略)にコイル(33a)が巻回されている。回転子(34)の軸心内部には、駆動軸(35)が固定される。電動機(32)が通電されると、回転子(34)とともに駆動軸(35)が回転駆動される。
【0060】
駆動軸(35)は、筐体(31)の胴部の軸心上に位置している。駆動軸(35)は、圧縮機構(40)の各軸受に回転可能に支持されている。駆動軸(35)は、電動機(32)と同軸の主軸(36)と、主軸(36)から偏心したクランク軸(37)とを有している。クランク軸(37)の外径は主軸(36)の外径よりも大きい。駆動軸(35)の下部には、筐体(31)の底部に溜まった冷凍機油を汲み上げる油ポンプ(38)が設けられる。油ポンプ(38)で汲み上げた冷凍機油は、駆動軸(35)の内部の軸流路を通じて、軸受けや圧縮機構(40)の各摺動部へ供給される。
【0061】
圧縮機構(40)は、電動機(32)の下側に配置されている。圧縮機構(40)は、フロントヘッド(41)、シリンダ(42)、リアヘッド(43)、及びピストン(44)を有している。シリンダ(42)は、扁平な筒状に形成される。シリンダ(42)の上端の開口はフロントヘッド(41)に閉塞され、シリンダ(42)の下端の開口はリアヘッド(43)に閉塞される。これにより、シリンダ(42)の内部には、円柱状のシリンダ室(45)が区画される。
【0062】
シリンダ室(45)には、円環状のピストン(44)が収容される。ピストン(44)は、クランク軸(37)に内嵌する。従って、電動機(32)によって駆動軸(35)が回転駆動されると、シリンダ室(45)内をピストン(44)が偏心回転する。
【0063】
シリンダ(42)には、シリンダ室(45)(厳密には低圧室(L))と連通する吸入ポート(46)が径方向に貫通している。吸入ポート(46)には、吸入管(23)が接続される。フロントヘッド(41)には、シリンダ室(厳密には、高圧室(H))と連通する吐出ポート(47)が形成される。吐出ポート(47)には、リード弁等の吐出弁(図示省略)が設けられる。
【0064】
圧縮機構(40)の上部には、フロントヘッド(41)を覆うマフラ(48)が取り付けられる。マフラ(48)の内部には、吐出ポート(47)と連通するマフラ空間(49)が形成される。マフラ空間(49)では、冷媒の吐出脈動に起因する騒音が低減される。
【0065】
〈圧縮機構の内部構造〉
圧縮機構(40)は、ブレード(51)及びブッシュ(52)を有する揺動ピストン型に構成される。図2及び図3に示すように、シリンダ(42)には、ブッシュ溝(53)と背圧室(54)とが形成される。ブッシュ溝(53)は、シリンダ室(45)と隣接する位置に形成され、シリンダ室(45)と連通している。ブッシュ溝(53)は、横断面が略円形の円柱状の空所を構成している。背圧室(54)は、シリンダ(42)において、ブッシュ溝(53)よりも径方向外方に位置している。背圧室(54)は、横断面が略円形の円柱状の空所を構成している。
【0066】
背圧室(54)は、シリンダ室(45)側の端部がブッシュ溝(53)と連通している。背圧室(54)は、筐体(31)の内部空間(S)の圧力(即ち、圧縮機構(40)の吐出冷媒の圧力)に相当する高圧圧力の雰囲気となっている。背圧室(54)には、油ポンプ(38)によって汲み上げられた油が供給される。背圧室(54)の油は、ブッシュ溝(53)の内周面とブッシュ(52)との間の摺動部、及びブッシュ(52)とブレード(51)の摺動部の潤滑に利用される。
【0067】
一対のブッシュ(52)は、横断面が略弓形状ないし半円形状に形成されている。一対のブッシュ(52)は、ブッシュ溝(53)の内部に揺動可能に保持される。一対のブッシュ(52)は、ブッシュ溝(53)に対向する円弧部(52a)と、ブレード(51)に対向する平坦部(52b)とを有している。一対のブッシュ(52)は、ブッシュ溝(53)の中心を軸心として円弧部(52a)がブッシュ溝(53)と摺接するように揺動運動を行う。
【0068】
一対のブッシュ(52)は、各平坦部(52b)が互いに対向するようにブッシュ溝(53)に配置される。これにより、一対のブッシュ(52)の各平坦部(52b)の間には、ブレード溝(55)が形成される。ブレード溝(55)は、横断面が略矩形状に形成され、その内部にブレード(51)が径方向に進退可能に保持される。
【0069】
ブレード(51)は、径方向外方に延びる直方体状ないし板状に形成される。ブレード(51)の基端(径方向内方端部)は、ピストン(44)の外周面に一体に連結している。ここで、ピストン(44)とブレード(51)とは同じ部材で一体成型されていてもよいし、別部材を一体的に固定してもよい。ブレード(51)の先端(径方向外方端部)は、背圧室(54)に位置している。ブレード(51)は、シリンダ室(45)を低圧室(L)と高圧室(H)とに仕切っている。低圧室(L)は、図3におけるブレード(51)の右側の空所であり、吸入ポート(46)と連通している。高圧室(H)は、図3におけるブレード(51)の左側の空所であり、吐出ポート(47)と連通している。
【0070】
〈センサ類、制御部等の構成〉
図4に示すように、圧縮機(30)は、第1センサ(61)と、第2センサ(62)と、第3センサ(63)と、第4センサ(64)と、第5センサ(65)と、第6センサ(66)と、第7センサ(67)と、第8センサ(68)と、記憶部(69)と、制御部(70)とを備える。
【0071】
第1センサ(61)は、電動機(32)の回転数を検出する。第1センサ(61)は、例えば、ホールセンサ、エンコーダまたはタコジェネレータを含み、電動機(32)の回転数に合わせた信号を出力することで電動機(32)の回転数を検出する。例えば、第1センサ(61)であるホールセンサは、回転子(34)の磁石の磁束からS極またはN極を検出し制御部(70)に入力する。制御部(70)は、ホールセンサの検知信号から、電動機(32)(回転子(34))の回転数(回転速度)を検出する。なお、電動機(32)の回転数は、電動機(32)に流れる電流を検出する電流センサの検出値、または電動機(32)に印加される電圧を検出する電圧センサの検出値に基づいて、制御部(70)が推定(算出)してもよい。電動機(32)の回転数は、制御部(70)が電動機(32)に指示する回転数であってもよい。第2センサ(62)は、吐出管(22)に設けられ、吐出管(22)の温度を検出する温度センサである。第3センサ(63)は、電動機(32)に流れる電流(電動機(32)を駆動させるための電流)を検出する電流センサである。第3センサ(63)は、例えば、電流検出回路を含む。当該電流検出回路は、例えば、電動機(32)の三相のうち任意の一相に流れる電流(交流)を、DCCT(DC Current Transformer)にて電圧(交流)に変換し、この電圧をオペアンプにより増幅して出力電圧を変換することで、制御部(70)に入力する電圧値(例えば0~5V)の範囲に変換する。そして、当該電圧値は、制御部(70)のA/D入力ポートに入力され、制御部(70)は、デジタル値として当該電圧値を読み込む。制御部(70)は、例えば、入力された当該電圧値に所定の定数を掛けて、電動機(32)に流れている電流値に変換する。このようにして検出された電流は交流のため、時間毎に電流値が変動するが、短期的には周期が一定のため、その実効値を算出することで電流(実効値)を得ることができる。電流検出回路は、電動機(32)に流れる電流を検出する構成を有していればよく、上記の構成に限定されない。 例えば、電流検出回路は、電動機(32)に流れる電流をセンス抵抗で電圧値に変換し、その変換した電圧値をアイソレーションアンプにより絶縁させて、制御部(70)へ送信してもよい。第4センサ(64)は、吸入管(23)に設けられ、圧縮機(30)の吸入圧力(圧縮機(30)に吸入される冷媒の圧力)を検出する圧力センサである。第5センサ(65)は、吐出管(22)に設けられ、圧縮機(30)の吐出圧力(圧縮機(30)から吐出される冷媒の圧力)を検出する圧力センサである。第6センサ(66)は、筐体(31)の表面に設けられ、筐体(31)の温度(圧縮機(30)の周辺温度)を検出する温度センサである。第7センサ(67)は、筐体(31)の底部に貯留される冷凍機油の油面の高さを検出する油面センサである。第8センサ(68)は、吸入管(23)に設けられ、吸入管(23)の温度を検出する温度センサである。
【0072】
記憶部(69)は、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリ)を含み、補助記憶装置(例えば、ハ-ドディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、SD(Secure Digital)メモリカード、又は、USB(Universal Seral Bus)フラッシメモリ)をさらに含んでもよい。記憶部(69)は、制御部(70)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。制御部(70)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部(70)は、記憶部(69)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、空気調和装置(10)の各構成要素を制御する。制御部(70)は、温度推定装置に備えられる。
【0073】
〈圧縮機の運転動作〉
電動機(32)が通電状態となり、駆動軸(35)が回転駆動されると、ピストン(44)がシリンダ室(45)で偏心運動(厳密には、揺動運動)を行う。
【0074】
図3に示すように、圧縮機構(40)では、ピストン(44)の外周面が、シリンダ室(45)の内周面と油膜を介して線接触し、シール部を形成する。ピストン(44)が揺動運動を行うと、ピストン(44)とシリンダ(42)との間のシール部が、シリンダ室(45)の内周面に沿って変位し、低圧室(L)と高圧室(H)の容積が変化する。この際、ブレード(51)は、ピストン(44)の回転角に応じてブレード溝(55)の内部を進退する。同時に、一対のブッシュ(52)は、ブッシュ溝(53)の軸心を中心としてブレード(51)とともに揺動する。なお、ここでいう「回転角」は、ピストン(44)がブッシュ溝(53)に最も近づく位置(いわゆる上死点)を基準0°とし、駆動軸(35)の回転方向(図3の時計回り方向)に角度を表したものである。
【0075】
ピストン(44)の揺動運動に伴い低圧室(L)の容積が徐々に大きくなると、低圧の冷媒が、吸入管(23)及び吸入ポート(46)を通じて低圧室(L)へ吸入されていく。次いで、この低圧室(L)が吸入ポート(46)から遮断されると、遮断された空所が高圧室(H)を構成する。次いで、この高圧室(H)の容積が徐々に小さくなると、高圧室(H)の内圧が上昇していく。高圧室(H)の内圧が内部空間(S)の圧力より大きくなると、吐出行程が行われる。つまり、吐出行程では、吐出ポート(47)の吐出弁が開放され、高圧室(H)の冷媒が吐出ポート(47)から吐出される。内部空間(S)内における圧縮機構(40)の吐出ポート(47)から吐出された冷媒は、マフラ空間(49)を介して内部空間(S)へ流出する。内部空間(S)において、圧縮機構(40)と吐出管(22)との間には、冷媒が流れる空間が設けられる。当該空間には、電動機(32)が設けられる。圧縮機構(40)から内部空間(S)へ流出した冷媒は、当該空間を流れることにより、電動機(32)へ到達し、電動機(32)の周囲を流れた後、吐出管(22)へ到達し、吐出管(22)から筐体(31)の外部へ流出する。吐出管(22)から筐体(31)の外部へ流出した流体は、冷媒回路(11)へ送られる。
【0076】
〈制御部の動作〉
図2および図4に示すように、制御部(70)は、吐出冷媒の温度を推定し、推定した吐出冷媒の温度に基づいて、電動機(32)に流れる電流を制御する。吐出冷媒の温度を推定することは、吐出冷媒の温度の推定値を出力(算出)することを示す。推定した吐出冷媒の温度は、吐出冷媒の温度の推定値を示す。吐出冷媒の温度は、圧縮機構(40)から吐出された冷媒の温度、または、所定空間における冷媒の温度である。所定空間は、圧縮機構(40)と吐出管(22)との間に位置する上記空間のうち圧縮機構(40)と電動機(32)との間に位置する空間である。
【0077】
〈吐出冷媒の温度の推定値に基づいて電動機に流れる電流を制御する理由〉
電動機(32)の磁石が高温になると不可逆減磁が発生する可能性がある。不可逆減磁は、磁石の温度を上げた後、当該温度が戻っても磁石の磁力が戻らないで減磁することである。不可逆減磁が発生することを抑制するためには、電動機(32)の磁石の温度上昇を抑制する必要がある。磁石の温度上昇を抑制する方法としては、磁石の温度が上昇し始めると、電動機(32)に流れる電流を減少させる方法が考えらえる。また、不可逆減磁が発生しないようにするために電動機(32)に流れる電流を減少させるタイミングを確認するためには、磁石が設けられる回転子(34)にセンサ類を設けて、直接に磁石の温度を検出する方法が考えられる。しかしながら、回転子(34)は回転体であるため、回転子(34)にセンサ類を設けて磁石の温度を検出することは困難である。
【0078】
そこで、本願発明者は、試験を行い、不可逆減磁が発生する位に電動機(32)の磁石が高温になると、吐出冷媒の温度が電動機(32)の磁石の温度と略同じになることで磁石の温度を示すようになる、もしくは、吐出冷媒の温度が電動機(32)の磁石の温度よりも高くなるという知見を得た。この知見より、本願発明者は、吐出冷媒の温度に基づいて電動機(32)に流れる電流を制御する(吐出冷媒の温度がある程度上昇すると、電動機(32)に流れる電流を減少させる)ことで、不可逆減磁が発生する位に電動機(32)の磁石の温度が高温になることを抑制できると考えた。さらに、本願発明者は、下記第1例~第12例に示すように吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成を考え出した。その結果、本願発明者は、電動機(32)の磁石の温度を直接に検出することなく、吐出冷媒の温度の推定値に基づいて、不可逆減磁が発生しないように電動機(32)に流れる電流を制御する構成を考え出した。
【0079】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第1例〉
制御部(70)は、圧縮機(30)に関する物理量に基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。具体的には、制御部(70)は、後述する推定モデルに、圧縮機(30)に関する物理量を入力データとして入力することで、吐出冷媒の温度の推定値を推定(出力)する。
【0080】
第1例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度とが含まれる。第1例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。電動機(32)の回転数は、第1センサ(61)により検出される。吐出管(22)の温度は、第2センサ(62)により検出される。
【0081】
記憶部(69)には、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルが記憶される。推定モデルは、回帰分析法の一種である重回帰分析法を用いて生成される。第1例では、推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。重回帰分析で用いられるデータ(説明変数およに目的変数)は、例えば、実際の空気調和装置(10)(実機)を用いた試験結果(実機を用いて電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度を変化させた場合に、吐出冷媒の温度がどのような値となるかを試験した結果)、またはシミュレーション結果(数値計算によりコンピュータ上で空気調和装置(10)を再現して、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度に対して吐出冷媒の温度がどのような値となるかを計算した結果)等から得られる。
【0082】
下記数1は、第1例の推定モデル(回帰式)を示す。下記数1において、Tは吐出冷媒の温度の推定値を示し、Tは吐出管(22)の温度を示し、Rは電動機(32)の回転数を示し、K(nは整数)は係数を示す。回転数は、単位時間当たりの回転数である。
(数1)
=K×T+K×(R-K)×(T-K)+K×(R-K+K×(T-K+K
【0083】
制御部(70)は、上記数1において、電動機(32)の回転数R(第1センサ(61)の検出値)と、吐出管(22)の温度(第2センサ(62)の検出値)とを代入することで、吐出冷媒の温度の推定値Tを算出する。
【0084】
〈第1例の推定モデルの変形例〉
第1例の推定モデルは、AI(Artificial Intelligence)を用いて生成され、圧縮機(30)に関する物理量(電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度)を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データ(例えば、上記試験結果、または上記シミュレーション結果から得られたデータ)に基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。当該AIが推定モデルを生成する手法の一例として、多層の人工ニューラルネットワークによる機械学習手法(ディープラーニング)等が挙げられる。推定モデルは、電動機(32)の回転数(第1センサ(61)の検出値)と、吐出管(22)の温度(第2センサ(62)の検出値)とを入力データとして、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度と、吐出冷媒の温度の推定値との対応関係を学習した学習済みモデルである。推定モデルは、入力データである電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度を入力されると、出力データである吐出冷媒の温度の推定値を出力する。
【0085】
〈説明変数として電動機の回転数と吐出管の温度とを用いる理由〉
圧縮機構(40)から吐出された冷媒は、電動機(32)を通過して吐出管(22)から筐体(31)の外部へ吐出されるまでの間に、筐体(31)(圧縮機(30)の外殻)を介して放熱し、電動機(32)を通過する際に吸熱する。これにより、当該放熱および吸熱を行った冷媒が吐出管(22)へ到達し、当該放熱および吸熱を行った冷媒の温度が吐出管(22)の温度として検出される。
【0086】
吐出冷媒の温度と、吐出管(22)の温度(当該放熱および吸熱を行った後の冷媒の温度)との間には、当該放熱および吸熱に起因した差が生じる。よって、当該放熱および吸熱に影響する変数と、吐出管(22)の温度を用いれば、吐出冷媒の温度の推定値を算出することが可能であると考えられる。
【0087】
図5は、冷媒が電動機(32)を通過する際の冷媒と周囲との熱伝達の関係式を示す。図6は、圧縮機(30)の熱回路を示す図である。図5に示す関係式において、Cre2は電動機(32)通過冷媒の熱容量を示し、Tre2(t)は電動機(32)通過冷媒の温度を示し、Rre2、shell(t)は電動機(32)通過冷媒と圧縮機(30)外殻との熱抵抗を示し、Tshell(t)は筐体(31)(圧縮機(30)の外殻)の温度を示し、Rre2、re(t)は電動機(32)通過冷媒と吐出冷媒との熱抵抗を示し、Tre(t)は吐出冷媒の温度を示し、Rre2、re3(t)は電動機(32)通過冷媒と吐出管(22)前冷媒との熱抵抗を示し、Tre3(t)は吐出管(22)前冷媒の温度を示し、Rre2、magnet(t)は電動機(32)通過冷媒と電動機(32)の磁石との熱抵抗を示し、Tmagnet(t)は電動機(32)の磁石の温度を示し、Rre2、stator(t)は電動機(32)通過冷媒と固定子(33)との熱抵を示し、Tstator(t)は固定子(33)の温度を示し、Rre2、rotor(t)は電動機(32)通過冷媒と回転子(34)との熱抵抗を示し、Trotor(t)は回転子(34)の温度を示し、Rre2、coil(t)は電動機(32)通過冷媒とコイル(33a)との熱抵抗を示し、Tcoil(t)はコイル(33a)の温度を示す。
【0088】
図2図5および図6に示すように、冷媒が電動機(32)を通過する際、冷媒自体は発熱しないため周囲の物質との熱のやり取りのみである。これにより、電動機(32)の通過時の冷媒の温度は、温度差(冷媒と周囲の物体との温度差)と、熱抵抗(冷媒の周囲の物体の熱抵抗)とに依存する。この温度差と熱抵抗とは、上記の放熱および吸熱に影響する変数を示す。
【0089】
熱の伝達を考えると周囲の物体との温度差は、圧縮機(30)の外殻を介した空気のやり取り(圧縮機(30)の外殻温度)と、電動機(32)の発熱(損失)とに依存(相関)することになる(図8参照)。圧縮機(30)の外殻による空気のやり取りは圧縮機(30)の周辺温度に依存する。電動機(32)の損失は、銅損と、鉄損とに分けられる。銅損は電動機(32)に流れる電流の2乗に比例し、鉄損のうちヒステリシス損は電動機(32)の回転数に比例し、渦電流損は回転数の2乗に比例することが知られている。
【0090】
流体と固体の熱抵抗は一般的に、図7に示す式で表すことが可能である。ここで運転中に変化する変数(圧縮機(30)に関する物理量)は密度と流速である。密度は、吐出圧力と、圧縮機(30)内部の冷媒温度とに依存(相当)する(図8参照)。流速について考えると、圧縮機構(40)一回転あたりに吸い込める冷媒量は低圧側の圧力と温度とによって決まり、その分の冷媒が圧縮されて圧縮機構(40)の吐出側に放出される。その際の一回転あたりに吐出される冷媒の体積は、吸入した冷媒量と、吐出側の冷媒の圧力と温度で決定される。そのため、冷媒の流速は、電動機(32)の回転数、吐出圧力、吸入圧力、圧縮機(30)内部の冷媒温度、および吸入管(23)の温度に依存(相当)する(図8参照)。
【0091】
図8は、項目と、項目に相当する物理量と、物理量が増加した場合の影響との対応関係を示す。図8に示す項目には、温度差(冷媒と周囲の物体との温度差)と、熱抵抗(冷媒の周囲の物体の熱抵抗)とが含まれる。図8に示す表において、物理量は、圧縮機(30)に関する物理量を示す。図8に示す表は、相当する物理量が増加した場合に、対応する項目が受ける影響を示す。
【0092】
図8に示す物理量において、空気調和装置(10)の一般的な駆動条件の範囲内であれば、圧縮機(30)の周辺温度、吸入圧力、および吸入管(23)の温度の変化が吐出冷媒温度へ与える影響は小さい。また、図8に示す物理量のうち、圧縮機(30)内部の冷媒温度、吐出圧力、および電流値(電動機(32)に流れる電流)の各々は、吐出管(22)の温度と強い相関があるため、吐出管(22)の温度で補正できると考えられる。図8に示す物理量のうちの電動機(32)の回転数は、圧縮機(30)の一般的な駆動状態でもある程度変化し、さらに、吐出管(22)の温度で補正することが困難と思われる。よって、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、を用いれば、吐出冷媒温度をある程度精度よく推定できると考えられる。
【0093】
その結果、第1例では、説明変数として電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度が用いられる。第1例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみに基づいて吐出冷媒の温度の推定値を出力する。
【0094】
〈効果〉
以上のように、制御部(70)は圧縮機(30)に関する物理量に基づいて吐出冷媒の温度の推定値を推定し、圧縮機(30)に関する物理量は電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度とを含む。これにより、吐出管(22)の温度を検出する第2センサ(62)のような一般的な圧縮機に備えられるセンサ類、および電動機(32)の回転数を検出、推定等するための一般的な圧縮機に備えられる構成(第1センサ(61)、制御部(70)による演算等)を用いて吐出冷媒の温度の推定値を出力することができる。その結果、簡素な構成で吐出冷媒の温度の推定値を出力できるので、吐出冷媒の温度を容易に推定することができる。
【0095】
〈吐出冷媒の温度の推定値に基づいた電動機の電流制御の第1例〉
ステップS10において、制御部(70)が吐出冷媒の温度の推定値を出力する。
【0096】
ステップS20において、制御部(70)は、吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、不可逆減磁が発生するときの電動機(32)の電流値よりも低い値である。吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上であると判定されると(ステップS20で、Yes)、処理がステップS30へ移行する。吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上でないと判定されると(ステップS20で、No)、処理がステップS10へ移行する。
【0097】
ステップS30において、制御部(70)は、電動機(32)に流す最大電流を判定時よりも減少させる。判定時は、ステップS20において、吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上であるか否かを制御部(70)が判定した時点を示す。ステップS30に示す処理が終了すると、処理がステップS10へ移行する。
【0098】
空気調和装置(10)の稼働時において、制御部(70)は上記ステップS10~ステップS30に示す処理を行う。これにより、電動機(32)の磁石が高温になることで不可逆減磁が発生することを抑制することが可能となる。
【0099】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第2例〉
第2例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、電動機(32)に流れる電流とが含まれる。電動機(32)に流れる電流は、第3センサ(63)により検出される。第2例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、電動機(32)に流れる電流とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第2例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と電動機(32)に流れる電流とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第2例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および電動機(32)に流れる電流を説明変数(入力データ)とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数(出力データ)とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0100】
圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、電動機(32)に流れる電流も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0101】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第3例〉
第3例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力とが含まれる。圧縮機(30)に関する物理量には、圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力の代わりに、当該圧力に相関する物理量が含まれてもよい。圧縮機(30)の吸入圧力は、第4センサ(64)により検出される。圧縮機(30)の吐出圧力は、第5センサ(65)により検出される。以下では、圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力とを、当該圧力に相関する物理量とを総称して、吸入吐出圧力と記載することがある。第3例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、吸入吐出圧力とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第3例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と吸入吐出圧力とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第3例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および吸入吐出圧力を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0102】
圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、吸入吐出圧力も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0103】
〈第3例の変形例〉
なお、吸入吐出圧力を、気液混合状態の冷媒の温度、または気液混合状態の冷媒の温度に相関する物理量で代用してもよい。以下では、気液混合状態の冷媒の温度と、気液混合状態の冷媒の温度に相関する物理量とを総称して、単に、気液混合状態の冷媒の温度と記載することがある。気液混合状態の冷媒の温度は、吸入吐出圧力に相関する物理量の一例である。この場合、空気調和装置(10)は、例えば、室外熱交換器(16)を流れる二相状態(気液混合状態)の冷媒の温度を検出する室外熱交温度センサ(例えばサーミスタ)を備える。記憶部(69)には、気液混合状態の冷媒の温度と、吸入吐出圧力との相関を示す相関情報が記憶されている。相関情報は、例えば、気液混合状態の冷媒の温度を吸入吐出圧力へ変換するための変換式、または、気液混合状態の冷媒の温度と吸入吐出圧力とを対応付けたテーブルである。制御部(70)は、室外熱交温度センサから気液混合状態の冷媒の温度を示す情報を取得すると、取得した気液混合状態の冷媒の温度を当該相関情報(変換式またはテーブル)を用いて吸入吐出圧力へ変換する。その結果、制御部(70)は、圧縮機(30)に関する物理量として、吸入吐出圧力を示す情報を取得する。
【0104】
また、吸入吐出圧力を気液混合状態の冷媒の温度で代用する場合、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と気液混合状態の冷媒の温度とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成されてもよい。また、この場合、推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および気液混合状態の冷媒の温度を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0105】
以上のような、吸入吐出圧力を、気液混合状態の冷媒の温度で代用する構成は、圧縮機(30)が第4センサ(64)または第5センサ(65)を備えていない場合に有用である。
【0106】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第4例〉
第4例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、圧縮機(30)の周辺温度とが含まれる。圧縮機(30)の周辺温度は、第6センサ(66)により検出される。圧縮機(30)の周辺温度は、第6センサ(66)により検出される。第4例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、圧縮機(30)の周辺温度とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第4例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と圧縮機(30)の周辺温度とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第4例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および圧縮機(30)の周辺温度を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0107】
圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、圧縮機(30)の周辺温度も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0108】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第5例〉
第5例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、筐体(31)の内部空間(S)を流れる冷凍機油の量、とが含まれる。圧縮機(30)に関する物理量には、筐体(31)の内部空間(S)を流れる冷凍機油の量の代わりに、当該冷凍機油の量に相関する物理量が含まれてもよい。以下では、筐体(31)の内部空間(S)を流れる冷凍機油の量と、当該冷凍機油の量に相関する物理量とを総称して、冷凍機油の量と記載することがある。制御部(70)は、冷凍機油の油面の高さを検出する第7センサ(67)の検出結果に基づいて、冷凍機油の量を出力する。
【0109】
第5例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、冷凍機油の量とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第5例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と冷凍機油の量とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第5例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および冷凍機油の量を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0110】
冷凍機油の量の増減により筐体(31)の内部空間(S)での熱伝導率が変化するので、吐出冷媒の温度も影響を受ける。よって、圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、冷凍機油の量も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0111】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第6例〉
第6例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、圧縮機(30)の総駆動時間とが含まれる。制御部(70)は、タイマとして機能し、圧縮機(30)の総駆動時間をカウントする。第6例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、圧縮機(30)の総駆動時間とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第6例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と圧縮機(30)の総駆動時間とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第6例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および圧縮機(30)の総駆動時間を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0112】
圧縮機(30)の駆動時間が増加すると、経時劣化によって、圧縮機(30)の駆動効率が低下する、および第1センサ(61)等のセンサ類の精度が低下するといった現象が生じることで、吐出冷媒の温度も影響を受ける可能性がある。よって、圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、圧縮機(30)の駆動時間も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0113】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第7例〉
第7例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、圧縮機(30)の吸入管(23)の温度とが含まれる。圧縮機(30)に関する物理量には、圧縮機(30)の吸入管(23)の温度の代わりに、当該吸入管(23)の温度に相関する物理量が含まれてもよい。吸入管(23)の温度は、第8センサ(68)により検出される。吸入管(23)の温度に相関する物理量は、例えば、圧縮機(30)の吸入圧力である。圧縮機(30)の吸入圧力は、第4センサ(64)により検出される。以下では、圧縮機(30)の吸入管(23)の温度と、当該吸入管(23)の温度に相関する物理量とを総称して、単に、吸入管(23)の温度と記載することがある。第7例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、吸入管(23)の温度とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第7例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と吸入管(23)の温度とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第7例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および吸入管(23)の温度を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0114】
吸入管(23)の温度(吸入管(23)の温度、および/または圧縮機(30)の吸入圧力)が大きく変化するような空気調和装置(10)の駆動条件では、吸入管(23)の温度が変化することで吐出冷媒の温度が影響を受ける。よって、圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、吸入管(23)の温度も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0115】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第8例〉
第8例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、電動機(32)のコイル(33a)の発熱量とが含まれる。コイル(33a)の発熱量は、例えば、電動機(32)に供給される電力に基づいて推定される。圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)のコイル(33a)の発熱量の代わりに、当該コイル(33a)の発熱量に相関する物理量が含まれてもよい。コイル(33a)の発熱量に相関する物理量は、例えば、コイル(33a)の表面温度、コイル(33a)の抵抗値または電動機(32)に流れる電流である。以下では、電動機(32)のコイル(33a)の発熱量と、当該コイル(33a)の発熱量に相関する物理量とを総称して、単に、コイル(33a)の発熱量と記載することがある。第8例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、コイル(33a)の発熱量とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第8例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度とコイル(33a)の発熱量とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第8例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、およびコイル(33a)の発熱量を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0116】
圧縮機(30)に関する物理量に、電動機(32)の回転数および吐出管(22)の温度のみならず、さらに、コイル(33a)の発熱量も含めることで、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0117】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第9例〉
第9例では、圧縮機(30)に関する物理量には、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、所定物理量とが含まれる。所定物理量は、電動機(32)に流れる電流と、圧縮機(30)の吸入圧力と、圧縮機(30)の吐出圧力と、圧縮機(30)の吸入圧力および吐出圧力のうちの少なくとも1つの圧力に相関する物理量と、圧縮機(30)の周辺温度と、筐体(31)の内部空間(S)を流れる冷凍機油の量と、当該冷凍機油の量に相関する物理量と、圧縮機(30)の総駆動時間と、吸入管(23)の温度と、吸入管(23)の温度に相関する物理量と、電動機(32)のコイル(33a)の発熱量と、当該コイル(33a)の発熱量に相関する物理量とのうち少なくとも1つの物理量である。第9例では、制御部(70)は、電動機(32)の回転数と、吐出管(22)の温度と、所定物理量とに基づいて、吐出冷媒の温度の推定値を出力する。第9例では、吐出冷媒の温度の推定値を出力するための推定モデルは、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と所定物理量とを説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数として、説明変数と目的変数とに対する重回帰分析を行うことにより回帰式(重回帰式)として生成される。なお、第9例の推定モデルは、電動機(32)の回転数、吐出管(22)の温度、および所定物理量を説明変数とし、吐出冷媒の温度の推定値を目的変数とし、説明変数と目的変数との既知データに基づいて機械学習した学習済みモデルであってもよい。
【0118】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第10例〉
上記第1例~第9例において、制御部(70)は、圧縮機(30)を個体毎に識別し、識別した圧縮機(30)の吐出冷媒の温度の推定値を識別結果に基づいて補正してもよい。制御部(70)は、製造番号、ロット番号、型式番号および型式名のような圧縮機(30)に割り振られた識別情報に基づいて、自機を識別する。当該識別情報は、例えば、記憶部(69)に記憶されている。また、記憶部(69)には、複数の識別情報と、複数の補正情報とを対応付けた対応情報が記憶されている。補正情報は、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と推定モデルとに基づいて算出された吐出冷媒の温度の推定値を、対応する識別情報を有する圧縮機(30)の個体の特性を考慮して補正するための情報(例えば、変換式)である。制御部(70)は、電動機(32)の回転数と吐出管(22)の温度と推定モデルとに基づいて吐出冷媒の温度の推定値を演算すると、上記対応情報において自機の識別情報と対応する補正情報を選択し、選択した補正情報を用いて、演算した吐出冷媒の温度の推定値を補正し、補正後の値を自機の吐出冷媒の温度の推定値として出力する。
【0119】
圧縮機(30)の個体によっては、推定モデルを作成する際に用いた圧縮機(30)とは、第1センサ(61)等のセンサ類の位置、当該センサ類の精度、筐体(31)の内部空間(S)のサイズ、使用される冷媒の量等が異なることがある。この場合、推定モデルをそのまま用いて吐出冷媒の温度の推定値を出力すると、実際の推定値との間に誤差が生じる可能性がある。上記のように、制御部(70)が上記補正情報を用いて吐出冷媒の温度の推定値を補正することで、圧縮機(30)を個体毎の特性を考慮して吐出冷媒の温度の推定値を出力することが可能となる。その結果、吐出冷媒の温度の推定値をより精度よく出力することが可能となる。
【0120】
なお、補正情報は、回帰式の係数を示す情報であってもよい。当該補正情報における回帰式の係数は、圧縮機(30)を個体毎(識別情報毎)に設定される。この場合、制御部(70)は、上記対応情報において自機の識別情報と対応する補正情報(回帰式の変数)を選択し、上記数1に示す回帰式の係数を、選択した係数に変更することで回帰式を補正し、補正後の回帰式を用いて吐出冷媒の温度の推定値を出力する。
【0121】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第11例〉
上記第1例~第10例において、制御部(70)は、圧縮機(30)の運転条件に応じて吐出冷媒の温度の推定値を出力するために用いる回帰式を変更してもよい。以下、回帰式を変更する構成について、詳細に説明する。
【0122】
電動機(32)の回転数が低くなるような運転条件では、電動機(32)の最大トルク電流制御または最大効率制御が行われることで、吐出管(22)の温度が高いほど電動機(32)に流れる電流が増加する。これに対し、電動機(32)の回転数が高くなるような運転条件では電動機(32)の弱め磁束制御が行われることで、吐出管(22)の温度が低い状態でも電動機(32)に流れる電流が増加する可能性がある。
【0123】
以上のように、電動機(32)の回転数が低くなるような運転条件と、高くなるような運転条件とでは、吐出管(22)の温度と、電動機(32)に流れる電流との関係が違ってくることがある。よって、第11例では、電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低くなるような第1運転条件で使用する第1回帰式と、電動機(32)の回転数が所定の回転数以上になるような第2運転条件で使用する第2回帰式とを作成し、第1回帰式と第2回帰式とを記憶部(69)に記憶しておく。第1回帰式を作成するためのデータは、空気調和装置(10)の実機を第1運転条件で稼働させる、または、空気調和装置(10)を第1運転条件で稼働させるシミュレーションを行うことによって得られる。第2回帰式を作成するためのデータは、空気調和装置(10)の実機を第2運転条件で稼働させる、または、空気調和装置(10)を第2運転条件で稼働させるシミュレーションを行うことによって得られる。
【0124】
〈吐出冷媒の温度の推定値に基づいた電動機の電流制御の第2例〉
空気調和装置(10)の稼働時において、制御部(70)は上記ステップS1~ステップS30に示す処理を行うことで、電動機(32)の電流を制御してもよい。
【0125】
図10に示すように、ステップS1において、制御部(70)は、第1センサ(61)から電動機(32)の回転数を示す情報を取得し、電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低いか否かを判定する。電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低いと判定されると(ステップS1で、Yes)、処理がステップS11へ移行する。電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低くないと判定されると(ステップS1で、No)、処理がステップS12へ移行する。
【0126】
ステップS11において、制御部(70)は、第1回帰式を用いて吐出冷媒の推定値を出力する。ステップS11に示す処理が終了すると、処理がステップS20へ移行する。
【0127】
ステップS12において、制御部(70)は、第2回帰式を用いて吐出冷媒の推定値を出力する。ステップS12に示す処理が終了すると、処理がステップS20へ移行する。
【0128】
ステップS20において、制御部(70)は、吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上であるか否かを判定する。吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上でないと判定されると(ステップS20で、No)、処理がステップS1へ移行する。吐出冷媒の温度の推定値が所定値以上であると判定されると(ステップS20で、Yes)、処理がステップS30へ移行する。ステップS30において、制御部(70)は、電動機(32)に流す最大電流を判定時よりも減少させる。ステップS30に示す処理が終了すると、処理がステップS1へ移行する。
【0129】
以上のように構成することで、運転条件に応じて電動機(32)の回転数と電動機(32)に流れる電流との関係が異なることを考慮して、吐出冷媒温度の推定値を精度よく出力することができる。
【0130】
〈第11例の変形例(機械学習)〉
なお、電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低くなるような第1運転条件で使用する第1推定モデルと、電動機(32)の回転数が所定の回転数以上になるような第2運転条件で使用する第2推定モデルとを機械学習により作成し、第1推定モデルと第2推定モデルとを記憶部(69)に記憶してもよい。この場合、制御部(70)は、第1センサ(61)から電動機(32)の回転数を示す情報を取得し、電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低いと判定すると前記第1推定モデルを用いて吐出冷媒の推定値を推定し(ステップS11)、電動機(32)の回転数が所定の回転数よりも低くないと判定すると前記第2推定モデルを用いて吐出冷媒の推定値を出力する(ステップS12)。
【0131】
〈吐出冷媒の温度の推定値を出力する構成の第12例〉
上記第1例~第10例において、制御部(70)は、電動機(32)の回転数が、最大値から所定の範囲内(最大値近傍)の回転数となるときの前記吐出冷媒の温度の推定値を推定してもよい。これにより、電動機(32)が最大値近傍の回転数で回転しているときに不可逆減磁が発生するおそれがあるか否かを判定することができる。
【0132】
〈電動機の磁石の温度の推定値を出力する構成〉
上記の電動機の磁石の温度の推定値を出力する構成の第1例~第12例の各々における吐出冷媒の温度の推定値が、電動機(32)の磁石の温度の推定値を示してもよい。その理由は、不可逆減磁が発生する位に電動機(32)の磁石が高温になると、吐出冷媒の温度が、電動機(32)の磁石の温度と略同じ位の値になりうるからである。
【0133】
上記の電動機の磁石の温度の推定値を出力する構成の第1例~第10例の各々において、圧縮機(30)に関する物理量と、推定モデル(回帰式、または学習済みモデル)とに基づいて推定される吐出冷媒の温度の推定値が、電動機(32)の磁石の温度の推定値を示す。すなわち、推定モデルにおいて目的変数が電動機(32)の磁石の温度の推定値とされ、制御部(70)が圧縮機(30)に関する物理量と推定モデルとに基づいて、電動機(32)の磁石の温度の推定値を出力する。
【0134】
〈電動機の磁石の温度の推定値を出力する構成の第1追加例〉
電動機(32)に大電流を流して回転子(34)を高速回転させると、回転子(34)に設けられる磁石に大きな誘導電流が流れることで磁石の発熱量が大きくなる。磁石の発熱量が大きくなると、磁石が高温になる。よって、磁石の発熱量と磁石の温度とは相関を有するので、上記第1例~第10例の各々において、圧縮機(30)に関する物理量(説明変数)に磁石の発熱量をさらに含め、電動機(32)の磁石の温度の推定値を目的変数として、推定モデル(回帰式、または学習済みモデル)が作成され、当該圧縮機(30)に関する物理量と当該推定モデルとに基づいて磁石の温度の推定値が制御部(70)により推定されてもよい。この場合、制御部(70)は、例えば、電動機(32)に流れる電流(電動機(32)に流れる電流と磁石の発熱量との相関)に基づいて磁石の発熱量を算出する。
【0135】
〈電動機の磁石の温度の推定値を出力する構成の第2追加例〉
電動機(32)の磁石の表面熱伝達係数が低い程、磁石で発生した熱を十分に外部に放熱できず、磁石が高温になる。よって、磁石の表面熱伝達係数と磁石の温度とは相関を有するので、上記第1例~第10例の各々において、圧縮機(30)に関する物理量(説明変数)に磁石の表面熱伝達係数をさらに含め、電動機(32)の磁石の温度の推定値を目的変数として、推定モデル(回帰式、または学習済みモデル)が作成され、当該圧縮機(30)に関する物理量と当該推定モデルとに基づいて磁石の温度の推定値が制御部(70)により推定されてもよい。
【0136】
〈電動機の磁石の温度の推定値を出力する構成の第3追加例〉
上記第1例~第10例の各々において、圧縮機(30)に関する物理量(説明変数)に磁石の発熱量と磁石の表面熱伝達係数とをさらに含め、電動機(32)の磁石の温度の推定値を目的変数として、推定モデル(回帰式、または学習済みモデル)が作成され、当該圧縮機(30)に関する物理量と当該推定モデルとに基づいて磁石の温度の推定値が制御部(70)により推定されてもよい。
【0137】
〈磁石の温度の推定値に基づいて電動機に流れる電流を制御する構成の第1例〉
図9に示すフロー図において、吐出冷媒の温度の推定値を電動機(32)の磁石の温度の推定値として、ステップS10~ステップS30に示す処理が行われることで、制御部(70)が磁石の温度の推定値に基づいて電動機(32)に流れる電流を制御してもよい。この場合、ステップS10において電動機(32)の磁石の温度が推定され、ステップS20において電動機(32)の磁石の温度の推定値が所定値以上であるか否かが判定される。
【0138】
〈磁石の温度の推定値に基づいて電動機に流れる電流を制御する構成の第2例〉
図10に示すフロー図において、吐出冷媒の温度の推定値を電動機(32)の磁石の温度の推定値として、ステップS1~ステップS30に示す処理が行われることで、制御部(70)が磁石の温度の推定値に基づいて電動機(32)に流れる電流を制御してもよい。この場合、ステップS11およびステップS11において電動機(32)の磁石の温度が推定され、ステップS20において電動機(32)の磁石の温度の推定値が所定値以上であるか否かが判定される。
【0139】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上説明したように、本開示は、温度推定装置、および空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0141】
10 空気調和装置
22 吐出管
23 吸入管
30 圧縮機
31 筐体
32 電動機
33a コイル
40 圧縮機構
70 制御部
S 内部空間
【要約】
【課題】吐出冷媒の温度を容易に推定することができるようにする。
【解決手段】温度推定装置は、筐体(31)と、圧縮機構(40)と、電動機(32)と、吐出管(22)とを備える圧縮機(30)の内部温度を推定する。温度推定装置は、圧縮機(30)に関する物理量に基づいて、吐出冷媒の温度を推定する制御部(70)を備え、筐体(31)の内部空間(S)内における圧縮機構(40)と吐出管(22)との間には、冷媒が流れる空間が設けられ、吐出冷媒の温度は、圧縮機構(40)から吐出された冷媒の温度、または、前記空間のうち前記圧縮機構(40)と電動機(32)との間に位置する空間における冷媒の温度であり、前記物理量は、前記電動機(32)の回転数と、前記吐出管(22)の温度とを含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10