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特許7393714扁平断面ガラス繊維、ガラス繊維強化樹脂組成物およびガラス繊維強化樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】扁平断面ガラス繊維、ガラス繊維強化樹脂組成物およびガラス繊維強化樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/00 20060101AFI20231130BHJP
   C03B 37/022 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C03C13/00
C03B37/022
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023532383
(86)(22)【出願日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2023002390
【審査請求日】2023-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 優
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104591541(CN,A)
【文献】特開2000-103635(JP,A)
【文献】特開2009-256203(JP,A)
【文献】特開2009-007252(JP,A)
【文献】国際公開第99/028543(WO,A1)
【文献】特開平06-228806(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111302640(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103193384(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
C03C 25/00-25/70
C03B 37/00-37/16
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面の長径が20.0~35.0μmの範囲にあり、短径が5.0~10.0μmの範囲にあり、短径に対する長径の比(長径/短径)である異形比Rが3.0より大きく5.0以下の範囲にある、扁平な断面形状を有する扁平断面ガラスフィラメントを複数本含む扁平断面ガラス繊維であって、
該扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積に対する、該扁平断面ガラフィラメントの断面積の比(扁平断面ガラスフィラメントの断面積/扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積)である充填率Pが77.0~92.0%の範囲にあり、前記異形比Rおよび前記充填率Pが次式(1)を満たし、
扁平断面ガラス繊維の全量に対し、52.0~62.0質量%の範囲のSiOと、10.0~20.0質量%の範囲のAlと、16.7~28.1質量%の範囲のCaOとを含むことを特徴とする、扁平断面ガラス繊維。
55.9 ≦ P/R1/4 ≦ 63.0 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1記載の扁平断面ガラス繊維であって、前記異形比Rおよび前記充填率Pが次式(2)を満たすことを特徴とする、扁平断面ガラス繊維。
57.4 ≦ P/R1/4 ≦ 60.3 ・・・(2)
【請求項3】
請求項1又は2記載の扁平断面ガラス繊維を樹脂組成物中に含有することを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載のガラス繊維強化樹脂組成物からなることを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平断面ガラス繊維、ガラス繊維強化樹脂組成物およびガラス繊維強化樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断面が扁平形状である複数本の扁平断面ガラスフィラメントを含むガラス繊維(以下、扁平断面ガラス繊維ということがある)を含有するガラス繊維強化樹脂成形品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、断面形状が長円形(長方形の短辺部分を、該短辺を直径とする半円にそれぞれ置換した形状)である複数本の扁平断面ガラスフィラメント(以下、長円形断面ガラスフィラメントということがある)を含むガラス繊維(以下、長円形断面ガラス繊維ということがある)を含有するガラス繊維強化樹脂成形品は、断面が円形形状の複数本のガラスフィラメントを含むガラス繊維(以下、円形断面ガラス繊維ということがある)を含有するガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、反りの発生が抑制されて寸法安定性に優れ、さらに引張強度、曲げ強度等の機械的物性に優れるため、携帯電子機器筐体等の軽薄短小な部品に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/137004号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、長円形断面ガラス繊維は、該長円形断面ガラス繊維を所定長に切断してチョップドストランドへと加工する際に、前記円形断面ガラス繊維の場合に比較して、切断刃が摩耗しやすく、切断刃の交換回数が増加するため、チョップドストランド生産性が悪いという不都合がある。
【0006】
また、長円形断面ガラス繊維は、ガラス繊維を構成するガラスのガラス組成によっても前記チョップドストランド生産性が悪化するという不都合がある。
【0007】
本発明は、前記長円形断面ガラス繊維と比較して、ガラス繊維強化樹脂成形品としたときに、同等の寸法安定性および曲げ強度等の機械的物性を維持しながらも、前記不都合を解消して、長円形断面ガラスフィラメントに比較して、優れたチョップドストランド生産性を得ることができる扁平断面ガラス繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、断面の長径が20.0~35.0μmの範囲にあり、短径が5.0~10.0μmの範囲にあり、短径に対する長径の比(長径/短径)である異形比Rが3.0より大きく、5.0以下の範囲にある、扁平な断面形状を有する扁平断面ガラスフィラメントを複数本含むガラス繊維であって、該扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積に対する、該扁平断面ガラフィラメントの断面積の比(扁平断面ガラフィラメントの断面積/扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積)である充填率Pが77.0~92.0%の範囲にあり、前記異形比Rおよび前記充填率Pが次式(1)を満たし、扁平断面ガラス繊維の全量に対し、52.0~62.0質量%の範囲のSiOと、10.0~20.0質量%の範囲のAlと、16.7~28.1質量%の範囲のCaOとを含むことを特徴とする。
55.9 ≦ P/R1/4 ≦ 63.0 ・・・(1)
【0009】
また、本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記異形比Rおよび前記充填率Pが次式(2)を満たすことが好ましい。
57.4 ≦ P/R1/4 ≦ 60.3 ・・・(2)
【0010】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は本発明の扁平断面ガラス繊維を樹脂組成物中に含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0012】
前記異形比Rおよび前記充填率Pが前記式(1)を満たし、扁平断面ガラス繊維の全量に対し、前記範囲のSiO、Al、および、CaOを含む本発明の扁平断面ガラス繊維によれば、本発明のガラス繊維強化成形品において、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性および曲げ強度等の機械的物性を維持しながらも、長円形断面ガラス繊維に比較して、優れたチョップドストランド生産性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の扁平断面ガラス繊維は、該扁平断面ガラス繊維の全量に対するCaOの含有量が28.1質量%超であると、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品において十分な曲げ強度等の機械的物性を得ることができず、該扁平断面ガラス繊維の全量に対するCaOの含有量が16.7質量%未満であると、チョップドストランド生産性が低下する。
【0014】
ここで、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性を維持するとは、後述の測定方法により測定されるガラス繊維強化樹脂成形品の反りが5.0mm以下であることを意味する。また、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の機械的物性を維持するとは、後述の測定方法により測定される曲げ強度が、390MPa以上であることを意味する。
【0015】
また、優れたチョップドストランド生産性を得ることができるとは、後述の計測方法により計測されるカッターの交換回数が30回未満であることを意味する。
【0016】
また、本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記異形比Rおよび前記充填率Pが前式(2)を満たすことにより、長円形断面ガラスフィラメントに比較して、より優れたチョップドストランド生産性を得ることができる。
【0017】
ここで、より優れたチョップドストランド生産性を得ることができるとは、後述の方法により計測されるカッターの交換回数が20回未満であることを意味する。
【0018】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品によれば、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性および曲げ強度等の機械的物性を維持することができる。
【0019】
ここで、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性および曲げ強度等の機械的物性を維持するとは、前述と同一の意味である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、扁平な断面形状を有する扁平断面ガラスフィラメントを複数本含み、扁平断面ガラスフィラメントの断面の長径が20.0~35.0μmの範囲にあり、短径が5.0~10.0μmの範囲にあり、異形比Rが3.0より大きく5.0以下の範囲にある、扁平な断面形状を有する。
【0022】
ここで、扁平断面ガラスフィラメントの断面とは、該扁平断面ガラスフィラメントの長さ方向に対して垂直な横断面であり、前記異形比Rは、短径に対する長径の比(長径/短径)である。本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記異形比Rは、好ましくは3.1~4.6の範囲にあり、より好ましくは、3.4~4.4の範囲にあり、さらに好ましくは、3.7~4.2の範囲にある。
【0023】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、前記異形比Rが5.0超であるとチョップドストランド生産性が低下し、3.0以下であると本発明のガラス繊維強化樹脂成形品において十分な寸法安定性および曲げ強度等の機械的物性を得ることができない。
【0024】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、充填率Pが77.0~92.0%の範囲にあり、前記異形比Rおよび前記充填率Pが次式(1)を満たし、好ましくは次式(2)を満たし、扁平断面ガラス繊維の全量に対し、52.0~62.0質量%の範囲のSiOと、10.0~20.0質量%の範囲のAlと、16.7~28.1質量%の範囲のCaOとを含む。
55.9 ≦ P/R1/4 ≦ 63.0 ・・・(1)
57.4 ≦ P/R1/4 ≦ 60.3 ・・・(2)
【0025】
ここで、前記充填率Pは、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積に対する、該扁平断面ガラフィラメントの断面積の比(扁平断面ガラスフィラメントの断面積/扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積)である。本実施形態の扁平断面ガラスフィラメントにおいて、前記充填率Pは、好ましくは79.5~89.8%の範囲にあり、より好ましくは80.1~84.9%の範囲にあり、さらに好ましくは80.1~84.4%の範囲にあり、特に好ましくは81.8~84.4%の範囲にあり、最も好ましくは82.0~84.0%の範囲にある。
【0026】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、前記充填率Pが92.0%超であると断面形状が長方形に近くなり過ぎるため、チョップドストランド生産性が低下し、前記充填率Pが77.0%未満であると断面形状が楕円形に近くなり過ぎるため、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品において十分な曲げ強度等の機械的物性を得ることができない。
【0027】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維を形成するガラスのガラス組成は、扁平断面ガラス繊維の全量に対し、52.0~62.0質量%の範囲のSiOと、10.0~20.0質量%の範囲のAlと、16.7~28.1質量%の範囲のCaOとを含む。前記ガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し52.0~56.0質量%の範囲のSiOと、12.0~16.0質量%の範囲のAlと、20.0~25.0質量%の範囲のCaOと、0.0~10.0質量%の範囲のBとを含む組成であることが好ましく、ガラス繊維の全量に対し53.0~55.0質量%の範囲のSiOと、13.0~15.0質量%の範囲のAlと、21.0~24.0質量%の範囲のCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のBとを含む組成であることが好ましく、例えば、扁平断面ガラス繊維の全量に対し、54.6質量%のSiOと、14.1質量%のAlと、22.4質量%のCaOと、6.1質量%のBと、1.2質量%のMgOと、0.3質量%のTiOと、合計で0.5質量%のNaO、KO、LiOと、0.6質量%のFと、0.2質量%のFeとを含む組成(以下、組成Aということがある)を挙げることができる。
【0028】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前述した各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0029】
測定方法として、具体的には、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、本実施形態の扁平断面ガラス繊維(扁平断面ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、扁平断面ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる)を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化することによりガラス粉末を得る。軽元素であるLiについては前記ガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いてファンダメンタルパラメーター法によって定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量および全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0030】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、所定のガラス組成(例えば、前記組成A)となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの10~30000個のノズルチップから引き出して、急冷するときに、前記ノズルチップを、非円形形状、例えば、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面形状に対応する形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有するものとし、温度条件を制御することにより、扁平断面ガラスフィラメントを得ることができる。
【0031】
次いで、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、10~30000本の扁平断面ガラスフィラメントを集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、本実施形態の扁平断面ガラス繊維とすることができる。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、当該扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントのうち50%超が前記扁平断面ガラスフィラメントであり、好ましくは、80%以上が前記扁平断面ガラスフィラメントであり、より好ましくは、90%以上が前記扁平断面ガラスフィラメントであり、さらに好ましくは、100%が前記扁平断面ガラスフィラメントである。
【0032】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維に含まれるガラスフィラメントは、ノズルチップの長径および短径や、巻取り速度、および、温度条件等を調整することで、短径および長径を調整することができる。例えば、巻取り速度を速くすることで、短径および長径を小さくすることができ、巻取り速度を遅くすることで、短径および長径を大きくすることができる。
【0033】
前記扁平断面ガラス繊維の形態としては、例えば、ガラスヤーン、ガラスチョップドストランド、ガラスロービング、ガラスパウダー、ガラスフィラメントマットを挙げることができる。また、前記ガラス繊維は、ガラスヤーンまたはがラスロービングから構成されるガラスクロス、ガラスチョップドストランドから構成されるチョップドストランドマットの状態であってもよく、ガラス繊維強化樹脂成形品にガラスフィラメントが分散している状態であってもよい。
【0034】
例えば、本実施形態の扁平断面ガラス繊維がチョップドストランドである場合、前記扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメントの本数は、例えば、10~20000本であり、好ましくは、50~10000本であり、より好ましくは、1000~8000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維であるチョップドストランドの長さは、例えば、1.0~100.0mm、好ましくは、1.2~51.0mm、より好ましくは、1.5~30.0mm、さらに好ましくは2.0~15.0mm、特に好ましくは2.3~7.8mmである。ここで、前記チョップドストランドは、前述の方法で製造された扁平断面ガラス繊維を、カッター(切断刃)を等間隔で放射状に取り付けたカッターローラと、これに接触して回転し、外周面にゴムを装備させたゴムローラとの間にガラスストランド(扁平断面ガラス繊維)を送り込んで切断させるようにした長繊維切断装置等の公知の装置で、前記の所定長になるように切断することで得ることができる。
【0035】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維がロービングである場合、前記扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数は、例えば、200~30000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維であるロービングは、35~10000tex(g/km)の単位面積当たりの質量を備える。
【0036】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維がガラスパウダー(カットファイバーということもある。)である場合、前記扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数は、例えば、10~20000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維であるガラスパウダーの長さは、例えば、0.001~0.900mmである。ここで、前記ガラスパウダーは、前述の方法で製造された扁平断面ガラス繊維を、ボールミル又はヘンシルミキサー等の公知の方法で、前記の所定長になるように粉砕することで得ることができる。
【0037】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記断面の長径および短径は、例えば次のようにして測定することができる。
【0038】
まず、本実施形態の扁平断面ガラス繊維が、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれない場合には、該扁平断面ガラス繊維をエポキシ樹脂等の樹脂に埋めて該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂を切断してその断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて硬化した樹脂の断面を観察する。そして、前記硬化した樹脂の断面に露出する、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの全て又は200本以上につき、該扁平断面ガラスフィラメントの略中心を通る最長の辺を長径とし、該最長の辺と該扁平断面ガラスフィラメントの略中心で直交する辺を短径として、それぞれその長さを測定する。
【0039】
また、前記扁平断面ガラス繊維が、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれる場合には、該ガラス繊維強化樹脂成形品を切断してその断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて、樹脂の断面を観察する。そして、前記樹脂の断面に露出する、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメント200本以上につき、該扁平断面ガラスフィラメントの略中心を通る最長の辺を長径とし、該最長の辺と該扁平断面ガラスフィラメントの略中心で直交する辺を短径として、それぞれその長さを測定する。
【0040】
ここで、前記扁平断面ガラスフィラメントが、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれない場合と、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれる場合とのいずれの場合においても、前記断面の長径および短径は、電子顕微鏡から得た画像を自動解析装置で画像処理することで測定することもできる。
【0041】
本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面の長径が20.0~35.0μmの範囲にあり、好ましくは22.3~32.8μmの範囲にあり、より好ましくは24.1~31.4μmの範囲にあり、さらに好ましくは26.5~29.9μmの範囲にあり、特に好ましくは27.0~28.8μmの範囲にある。
【0042】
本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面の短径が5.0~10.0μmの範囲にあり、好ましくは5.5~9.0μmの範囲にあり、より好ましくは6.1~8.4μmの範囲にあり、さらに好ましくは.6.5~7.9μmの範囲にあり、特に好ましくは6.8~7.4μmの範囲にある。
【0043】
前記異形比Rは、前記のようにして測定された前記断面の長径および短径から、短径に対する長径の比(長径/短径)として、算出することができる。
【0044】
また、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積は、前記のようにして測定された前記断面の長径および短径から、短径と長径との積(短径×長径)として算出することができ、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面積は、前記断面の長径および短径を測定する際に、例えば、「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング株式会社製)等の公知の画像解析ソフトを用いて、測定することができる。
【0045】
そして、前記充填率Pは、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積と、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面積とから、該扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積に対する、該扁平断面ガラフィラメントの断面積の比(扁平断面ガラスフィラメントの断面積/扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積)として、算出することができる。
【0046】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、該扁平断面ガラスフィラメントの略中心を通る最長の辺に対して略対称な断面形状であることが好ましい。
【0047】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、充填率Pが大きいほど、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品における曲げ強度および反り改善の効果は大きいものの、紡糸性およびチョップドストランド製造性は悪化する傾向にある。一方、異形比Rが大きいほど、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品における強度および反り改善の効果は大きいものの、チョップドストランド生産性は悪化する。式(1)は、これらの均衡を表していると考えられる。
【0048】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維によれば、前記異形比Rおよび前記充填率Pが前記式(1)を満たすことにより、該扁平断面ガラス繊維を含有する本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性および曲げ強度等の機械的物性を維持しながらも、長円形断面ガラス繊維に比較して、優れたチョップドストランド生産性を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維によれば、前記異形比Rおよび前記充填率Pが前記式(1)を満たすときに、前記充填率Pが80.1~84.9%の範囲にあることにより、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性を維持しながらも、長円形断面ガラスフィラメントに比較して、さらに優れたチョップドストランド生産性を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維によれば、前記異形比Rおよび前記充填率Pが前記式(1)を満たすときに、前記充填率Pが81.8~84.4%の範囲にあることにより、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性を維持しながらも、優れた機械的物性を得ることができ、長円形断面ガラス繊維に比較して、さらに優れたチョップドストランド生産性を得ることができる。
【0051】
ここで、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性を維持するとは、後述の測定方法により測定されるガラス繊維強化樹脂成形品の反りが5.0mm以下であることを意味する。また、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の機械的物性を維持するとは、後述の測定方法により測定される曲げ強度が、390MPa以上であることを意味し、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、優れた機械的物性を得ることができるとは、後述の測定方法により測定される曲げ強度が、400MPa以上であることを意味する。
【0052】
また、優れたチョップドストランド生産性を得ることができるとは、後述の計測方法により計測されるカッターの交換回数が30回未満であることを意味し、さらに優れたチョップドストランド生産性を得ることができるとは、後述の計測方法により計測されるカッターの交換回数が20回未満であることを意味する。
【0053】
〔ガラス繊維強化樹脂成形品の反りの測定方法〕
まず、前記扁平断面ガラス繊維の表面をシランカップリング剤含有組成物で被覆し、3mmの長さに切断して、チョップドストランドとする。次に、前記チョップドストランドとポリアミド6樹脂(宇部興産株式会社製、商品名:UBE1015B)とを、スクリュー回転数を100rpmとして、二軸混練機(芝浦機械株式会社製、商品名:TEM-26SS)にて270℃の温度で混練し、ガラス繊維含有率が50質量%の樹脂ペレットを作製する。
【0054】
次に、前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度80℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、縦80mm×横60mm×厚さ1mmの寸法の平板である反り測定用試験片を成形する。前記反り測定用試験片の一角を平坦面に接地した際に、該平坦面に接地された一角と対角の位置にある一角と平坦面との間に発生する距離をノギスで測定する。前記反り測定用試験片の四角のそれぞれを平坦面に接地した場合について、前記距離を測定し、各測定値の平均値を反りの値とする。
【0055】
〔ガラス繊維強化樹脂成形品の曲げ強度の測定方法〕
まず、前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度80℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、JIS K 7165:2008に準じたA型ダンベル試験片(厚さ4mm)を成形する。前記A型ダンベル試験片について、試験温度23℃の条件で、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)を用いて、JIS K 7171:2016に準拠した静的曲げ試験を行うことにより曲げ強度を測定する。
【0056】
〔チョップドストランド生産性の計測方法〕
前記扁平断面ガラス繊維の表面をシランカップリング剤含有組成物で被覆して得たガラスストランドを、カッター(切断刃)を等間隔で放射状に取り付けたカッターローラと、これに接触して回転し、外周面にゴムを装備させたゴムローラとの間に送り込んで切断させるようにした長繊維切断装置によって3mmの長さに切断することにより、240時間チョップドストランドを製造する際の、該カッターの交換回数を計測する。
【0057】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、前記異形比Rおよび前記充填率Pが前式(2)を満たすことにより、本発明のガラス繊維強化成形品において、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性を維持しながらも、長円形断面ガラス繊維に比較して、さらに優れたチョップドストランド生産性を得ることができる。
【0058】
ここで、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性を維持する、および、長円形断面ガラス繊維に比較して、さらに優れたチョップドストランド生産性を得ることができるとは、前述と同一の意味である。
【0059】
次に、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の扁平断面ガラス繊維を樹脂組成物中に含有する。
【0060】
次に、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物からなる。本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品によれば、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性および機械的物性を維持することができる。
【0061】
ここで、長円形断面ガラス繊維含有ガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、同等の寸法安定性および機械的物性を維持するとは、前述と同一の意味である。
【0062】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物を構成する前記樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を挙げることができる。
【0063】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0064】
前記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0065】
前記ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンおよびこれらの混合物等を挙げることができる。
【0066】
前記ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0067】
前記メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0068】
前記ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0069】
前記ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリキシレンアジパミド(ポリアミドXD6)、ポリキシレンセバカミド(ポリアミドXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ポリアミド4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ポリアミドPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の複数成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0070】
前記ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0071】
前記ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0072】
前記ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0073】
前記ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0074】
前記ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0075】
前記ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0076】
前記変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ等を挙げることができる。
【0077】
前記ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0078】
前記液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0079】
前記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
【0080】
前記アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィン又はスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0081】
前記オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0082】
前記環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0083】
前記ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、又はその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0084】
前記セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0085】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0086】
なお、本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメント同士は接していてもよく離間していてもよい。前記扁平断面ガラスフィラメント同士が離間している場合、該扁平断面ガラスフィラメント同士の間には、表面処理剤、又は、ガラス繊維強化樹脂成形品を構成する樹脂組成物が存在していてもよい。
【0087】
前記表面処理剤としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン、特にカルボン酸変性ポリプロピレン、(ポリ)カルボン酸、特にマレイン酸と不飽和単量体との共重合体等の樹脂、又は、シランカップリング剤を挙げることができる。
【0088】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、これらの樹脂又はシランカップリング剤に加えて、潤滑剤、界面活性剤等を含む組成物で被覆されていてもよい。このような組成物は、組成物に被覆されていない状態における、該扁平断面ガラス繊維の質量を基準として、0.1~2.0質量%の割合で、該扁平断面ガラス繊維を被覆する。
【0089】
なお、有機物による扁平断面ガラス繊維の被覆は、例えば、該扁平断面ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、前記樹脂、前記シランカップリング剤又は組成物の溶液を含む前記集束剤又はバインダーを該扁平断面ガラス繊維に塗布し、その後、前記樹脂、前記シランカップリング剤又は前記組成物の溶液の塗布された該扁平断面ガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0090】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、カチオニックシランを挙げることができる。前記シランカップリング剤は、これらの化合物を単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0091】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0092】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0093】
エポキシシランとしては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0094】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0095】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0096】
アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0097】
カチオニックシランとしては、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等を挙げることができる。
【0098】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油およびこの水素添加物、植物油およびこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。前記潤滑剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0099】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0100】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0101】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0102】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0103】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0104】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0105】
脂肪酸アミドとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0106】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0107】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0108】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0109】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン酢酸塩、高級アルキルアミン塩酸塩等、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0110】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0111】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0112】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品を得るための成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体を用いるものも含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等を挙げることができる。これらの方法の中でも、射出成形法が、製造効率に優れることから好ましい。
【0113】
次に、本発明の実施例および比較例を示す。
【実施例
【0114】
〔実施例1~4、比較例1~7、参考例1〕
まず、表1に示す組成A~Cのいずれかの組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、1450~1550℃の範囲の温度で溶融し、得られた溶融ガラスを、200個のノズルチップを備えるブッシングから引き出して、複数本の扁平断面ガラスフィラメントを得て、該複数本の扁平断面ガラスフィラメントを集束させて、扁平断面ガラス繊維を製造した。
【0115】
このとき、前記ノズルチップは、所定の長さの長径と所定の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有する孔部と溶融ガラスを冷却する切り欠きを備えた壁部とを備えており、該孔部の短径の長さを0.2~2.0mmの範囲で調整し、該孔部の短径の長さに対する長径の長さの比を2.0~8.0の範囲で調整し、前記ノズルチップ1個当たりを通過する溶融ガラスの量を0.1~3.0g/分の範囲で調整して、実施例1~4、比較例1~7の扁平断面ガラス繊維を得た。なお、比較例5の扁平断面ガラスフィラメントは、断面形状が長円形である長円形断面ガラスフィラメントであり、比較例5の扁平断面ガラス繊維は複数本の長円形断面ガラスフィラメントを含む長円形断面ガラス繊維である。
【0116】
また、前記ノズルチップが真円形の断面形状を有する孔部を備えるものとすることにより参考例1の円形断面ガラス繊維を得た。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例1~4の各扁平断面ガラスフィラメントの短径、長径、異形比R、充填率P、および、P/R1/4の値を、表2に示す。また、比較例1~7の各扁平断面ガラスフィラメント、および、参考例1の円形断面ガラスフィラメントの短径、長径、異形比R、充填率P、および、P/R1/4の値を表3に示す。
【0119】
次に、実施例1~4、比較例1~7の各扁平断面ガラス繊維、および、参考例1の円形断面ガラス繊維について、次のようにして、紡糸切断回数、チョップドストランド生産性を判定した。実施例1~4の各扁平断面繊維の紡糸切断回数およびチョップドストランド生産性を表2に示す。また、比較例1~7の各扁平断面ガラス繊維、および、参考例1の円形断面ガラス繊維の紡糸切断回数およびチョップドストランド生産性を表3に示す。
【0120】
〔紡糸切断回数〕
実施例1~4、比較例1~7の各扁平断面ガラス繊維および、参考例1の円形断面ガラス繊維を30日間製造したときに、実施例1~4、比較例1~4の各扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメント、又は、参考例1の円形断面ガラス繊維を構成する円形断面ガラスフィラメントに切断が起きた回数を計測した。1シフトを8時間として、1シフトあたりの平均切断回数を紡糸切断回数とした。紡糸切断回数が、1シフトあたり9回未満である場合を「A」、1シフトあたり9回以上10回未満である場合を「B」、1シフトあたり10回以上である場合を「C」と判定した。
【0121】
〔チョップドストランド生産性〕
実施例1~4、比較例1~7の各扁平断面ガラス繊維および、参考例1の円形断面ガラス繊維の表面をそれぞれシランカップリング剤含有組成物で被覆して得たガラスストランドを、カッター(切断刃)を等間隔で放射状に取り付けたカッターローラと、これに接触して回転し、外周面にゴムを装備させたゴムローラとの間に送り込んで切断させるようにした長繊維切断装置によって3mmの長さに切断することにより、240時間チョップドストランドを製造する際に該カッターの交換回数を計測し、20回未満であったものを「A」、20回以上30回未満であったものを「B」、30回以上であったものを「C」と判定した。
【0122】
次に、実施例1~4、比較例1~7の各扁平断面ガラス繊維および、参考例1の円形断面ガラス繊維を、それぞれシランカップリング剤含有組成物で被覆し、3mmの長さに切断して、実施例1~4、比較例1~7、および、参考例1のチョップドストランドを得た。次に、前記各チョップドストランドとポリアミド6樹脂(宇部興産株式会社製、商品名:UBE1015B)とを、それぞれ、スクリュー回転数を100rpmとして、二軸混練機(芝浦機械株式会社製、商品名:TEM-26SS)にて270℃の温度で混練し、ガラス繊維含有率が50質量%の実施例1~4、比較例1~7、および、参考例1の樹脂ペレットを作製した。
【0123】
次に、各樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度80℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、ガラス繊維強化樹脂成形品として、それぞれ縦80mm×横60mm×厚さ1mmの寸法の平板である反り測定用試験片と、JIS K 7165:2008に準じたA型ダンベル試験片(厚さ4mm)とを成形した。
【0124】
次に、実施例1~4、比較例1~7、および、参考例1の各反り測定用試験片について、次のようにして、反りを測定した。また、実施例1~4、比較例1~7、および、参考例1の各A型ダンベル試験片について、次のようにして、引張強度および曲げ強度を測定した。実施例1~4のガラス繊維強化樹脂成形品の反り、引張強度および曲げ強度を、表2に示す。また、比較例1~7および参考例1のガラス繊維強化樹脂成形品の反り、引張強度および曲げ強度を、表3に示す。
【0125】
〔反り〕
前記反り測定用試験片の一角を平坦面に接地した際に、該平坦面に接地された一角と対角の位置にある一角と平坦面との間に発生する距離をノギスで測定した。反り測定用試験片の四角のそれぞれを平坦面に接地した場合について、前記距離を測定し、各測定値の平均値が、5.0mm以下であるものを「OK」、5.0mm超である場合を「NG」と判定した。
【0126】
〔引張強度〕
前記A型ダンベル試験片について、試験温度23℃の条件で、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)を用いて、JIS K 7165:2008に準拠した静的引張試験を行うことにより引張強度を測定し、240MPa以上あるものを「A」、240MPa未満であるものを「B」と判定した。
【0127】
〔曲げ強度〕
前記A型ダンベル試験片について、試験温度23℃の条件で、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)を用いて、JIS K 7171:2016に準拠した静的曲げ試験を行うことにより曲げ強度を測定し、400MPa以上あるものを「A」、390MPa以上400MPa未満であるものを「B」、390MPa未満であるものを「C」と判定した。
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】

【0130】
表2および表3から、実施例1~4の扁平断面ガラス繊維によれば、比較例5の長円形断面ガラス繊維に比較して、ガラス繊維強化樹脂成形品において同等の寸法安定性(反り)および機械的物性(曲げ強度)を維持しながらも、優れたチョップドストランド生産性を得ることができることが明らかである。
【0131】
一方、P/R1/4の値が前記式(1)の範囲外となる63.0超である比較例1および比較例4、5の扁平断面ガラス繊維によれば、チョップドストランド生産性に劣り、P/R1/4の値が前記式(1)の範囲外となる55.9未満である比較例2および比較例3の扁平断面ガラス繊維によれば、ガラス繊維強化樹脂成形品において寸法安定性に劣るか、チョップドストランド生産性に劣ることが明らかである。
【0132】
また、前記異形比Rおよび前記充填率Pが前記式(1)を満たすものの、扁平断面ガラス繊維の全量に対するCaOの含有量が16.7質量%未満である比較例6、7の扁平断面ガラス繊維もまた、チョップドストランド生産性に劣るか、機械的物性に劣ることが明らかである。
【要約】
長円形断面ガラスフィラメントに比較して、優れたチョップドストランド生産性を得ることができる扁平断面ガラス繊維を提供する。本発明は、断面の長径が20.0~35.0μmであり、短径が5.0~10.0μmであり、短径に対する長径の比である異形比Rが3.0を超え5.0以下である、扁平な断面形状を有する扁平断面ガラスフィラメントを複数本含むガラス繊維であって、扁平断面ガラスフィラメントの断面に外接する長方形の面積に対する、扁平断面ガラフィラメントの断面積の比である充填率Pが77.0~92.0%であり、異形比Rおよび充填率Pが次式(1)を満たし、扁平断面ガラス繊維の全量に対し、52.0~62.0質量%のSiOと、10.0~20.0質量%のAlと、16.7~28.1質量%のCaOとを含む。
55.9 ≦ P/R1/4 ≦ 63.0 ・・・(1)