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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】切替え可能な電磁シールド
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20231130BHJP
   H01Q 1/36 20060101ALI20231130BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20231130BHJP
   D03D 9/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K9/00 A
H01Q1/36
D03D1/00 Z
D03D9/00
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019050587
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2019204944
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】18162715.9
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】イトカ イルマズ
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】ファティー デンメズ
(72)【発明者】
【氏名】フェヒム チャグラル
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-196289(JP,A)
【文献】特開2006-128510(JP,A)
【文献】特開2005-019674(JP,A)
【文献】特開2005-150590(JP,A)
【文献】特表2015-518635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0263420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01Q 1/36
D03D 1/00
D03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電素子(2)を有するシールド表面を含む電磁シールド(1)であって、
前記複数の導電素子(2)は、前記電磁シールド(1)の前記複数の導電素子の少なくとも一部をオープン構成と短絡構成との間で切替えるように構成されたスイッチングアセンブリ(3)に電気的に接続されており、
前記オープン構成において、前記複数の導電素子(2)は、互い電気的に絶縁され、
前記短絡構成において、前記複数の導電素子(2)は、共通のノード(C)で互いに電気的に接続され、
前記共通のノード(C)は、送信アンテナとして前記複数の導電素子(2)を駆動する、ダイナミック駆動電位に電気的に接続されることを特徴とする電磁シールド。
【請求項2】
請求項に記載の電磁シールド(1)において、
前記ダイナミック駆動電位は、共振回路(8)によって提供されることを特徴とする電磁シールド。
【請求項3】
請求項に記載の電磁シールド(1)において、
前記共振回路(8)は、電圧制御発振器を含むことを特徴とする電磁シールド。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁シールド(1)において、
前記複数の導電素子(2)は、電気的絶縁材料(5)により互いに他の前記導電素子に対して間隔をおいて配置されていることを特徴とする電磁シールド。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁シールド(1)において、
前記導電素子は、前記複数の導電素子(2)の第1のセットの少なくとも1つと、前記複数の導電素子(2)の第2のセットの少なくとも1つを含んでおり、
前記スイッチングアセンブリ(3)は更に、前記電磁シールド(1)の前記複数の導電素子の一部を、少なくとも第1の部分的短絡構成と第2の部分的短絡構成の間で、電気的に切替えるように構成されており、
前記第1の部分的短絡構成では、前記第1のセットの前記導電素子(2)は前記共通のノード(C)で互いに電気的に接続され、前記第2のセットの前記導電素子(2)は互いに電気的に絶縁されており、
前記第2の部分的短絡構成では、前記第2のセットの前記複数の導電素子(2)は前記共通のノード(C)で互いに電気的に接続され、前記第1のセットの前記複数の導電素子(2)は互いに電気的に隔離されていることを特徴とする電磁シールド。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁シールド(1)において、
ユーザによって前記スイッチングアセンブリ(3)のスイッチングを制御するための制御手段(9)を含むことを特徴とする電磁シールド。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁シールド(1)において、
前記複数の導電素子(2)は、メッシュ又はグリッドを形成するように配置されていることを特徴とする電磁シールド。
【請求項8】
請求項に記載の電磁シールド(1)において、
前記メッシュ又は前記グリッドは、400mm 未満の広がりを有する開口部を備えていることを特徴とする電磁シールド。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁シールド(1)において、
前記複数の導電素子(2)は金属ワイヤであることを特徴とする電磁シールド。
【請求項10】
請求項に記載の電磁シールド(1)において、
前記複数の金属ワイヤは、ファブリックの経糸(12a)及び/又は緯糸(12b)の少なくとも一部を形成するように配置された金属ワイヤであることを特徴とする電磁シールド。
【請求項11】
シールドファブリック(12)あって、
前記シールドファブリック(12)の経糸(12a)及び/又は緯糸(12b)の少なくとも一部を形成するように配置された複数の絶縁された導電性のワイヤ(2)を含み、
前記複数のワイヤ(2)は、請求項1~10のいずれか1項に記載の前記電磁シールド(1)を提供するために、前記スイッチングアセンブリ(3)に電気的に接続されるように構成されていることを特徴とするシールドファブリック。
【請求項12】
請求項11に記載のシールドファブリック(12)において、
前記シールドファブリック(12)は、デニムファブリックであることを特徴とするシールドファブリック。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記電磁シールド(1)を含む物品。
【請求項14】
請求項13に記載の物品において、
前記物品は、請求項11又は12に記載の前記シールドファブリック(12)を含むことを特徴とする物品。
【請求項15】
請求項14に記載の物品において、
前記物品は、前記シールドファブリック(12)で作られた少なくとも1つのポケットを備えていることを特徴とする物品。
【請求項16】
請求項1315のいずれか1項に記載の物品において、
前記物品は、衣服、財布、小銭入れ、バッグ、カードホルダー、あるいは電話カバーのいずれかであることを特徴とする物品。
【請求項17】
電磁界から電磁シールドを提供する方法であって、
(a)請求項1~10のいずれか1項に記載の前記電磁シールド(1)を提供するステップと、
(b)前記電磁シールド(1)の前記複数の導電素子の少なくとも一部を、前記オープン構成と前記短絡構成の間で切替えるステップとを含むことを特徴とする電磁界から電磁シールドを提供する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記ステップ(b)において、前記電磁界の1つ又は複数の周波数において、前記シールド表面の電磁シールド効果(EMSE)の変化を生じさせることを特徴とする電磁界から電磁シールドを提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールドの分野に関係するものである。特に、本発明は、異なるシールド挙動間の切替え能力を有する電磁シールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁シールドは、典型的には、導電性材料で作られたバリヤで電磁界を遮断することによって、空間領域内の電磁界を減少させるために使用される。このシールドは、典型的には、外部環境から電気器具及び電気的ケーブルを分離するために採用される。無線周波数の電磁放射をシールドする電磁シールドも、RFシールドとして知られている。
【0003】
最も一般的な電磁シールドは、電気的にシールドされるべき空間領域を囲むように配置された導電性材料のメッシュからなる、ファラデー箱である。そのような材料で連続的に覆うように形成された導電性の囲いも、ファラデー・シールドとして知られている。
【0004】
ファラデー箱のメッシュは、通常は、導電性材料(例えば金属)の連続的なシートに開口部を形成することより、あるいは、導電素子(例えば棒又は線)間を接合することにより製造できる。
【0005】
ファラデー箱の外部に電界が存在すると、このファラデー箱の内部の電界の影響を相殺するように、このファラデー箱の導電性材料内の電荷が分配される。このようなシールド効果は、使用される材料、その厚さ、シールドされた容積の大きさ及び関係する電界の周波数、ならびに入射電磁界に対するメッシュ内の開口部の大きさ、形状及び配向に依存する。
【0006】
ファラデー箱は、例えば、柔軟な金属織物でできたファラデー箱を含むバッグである、いわゆる「ファラデーバッグ」でも使用される。これらは通常、犯罪捜査で回収されたワイヤレスデバイスのリモートワイプ又は改ざんを阻止するために使用される。しかし、データの盗難から保護するため、又はディジタル・セキュリティを強化するために、一般の人々が使用することもある(例えば、不正な非接触支払いを回避するため)。
その結果、装置(例えば、スマートフォン、タブレットなど)又は非接触カード(クレジット/デビットカード、バッジなど)を、「外界」から隔離することが可能である。
しかしながら、ファラデーバッグは、ユーザの日々の使用には不快となり得るものである。例えば、ユーザが装置を使用する必要があるとき(例えば電話を受ける)や非接触カードを使用する必要があるとき(例えば支払いのために)、デバイス又はカードをファラデーバッグから取り出す必要がある。
【0007】
この問題に関して、特許文献1は、2つのシールド構成間で切替えることができる電子的に読取り可能な認証カード用の保護装置を開示している。
この保護装置は、電磁放射からの遮蔽を提供するために、メッシュシースが伸張してカードを囲み電磁放射からシールドする第1の位置(アクティブなシールド構成)と、メッシュシースが折り畳まれカードがシールドされていない第2の位置(非アクティブなシールド構成)との間で移動可能な、導電性のメッシュシースを含んでいる。
【0008】
この解決策は、伸張構成と折り畳み構成との間での、メッシュシースの確実な移動(切替え)を可能にするために、導電性のメッシュシースが結合される剛性の支持体を必要とする。例えば、シールドされる装置がポケットに入れられるように構成されているとき(例えば、スマートフォン)、剛性のある支持体は、使用者にとって不快である。更に、この解決策は、広い空間領域(例えば部屋又は建物)がシールドされるような場合には、非常に複雑で、高価となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US2014/0146510A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、上に先行技術の欠点を克服し、簡単で信頼性のある方法で異なるシールド挙動間で切替えることができる、電磁シールド及びこの電磁シールドを提供するための関連する方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、容易かつ信頼できるやり方で、衣服、財布、小銭入れ、バッグ、カードホルダーあるいは電話カバーのような物品に組み立てられることが可能な、電磁シールド、及びこの電磁シールドを提供するための関連する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のこれら及び他の目的は、請求項1に記載の電磁シールド、請求項14に記載のシールドファブリック、請求項16に記載の物品、及び請求項20に記載の電磁シールドを提供する方法によって達成される。
本発明の好ましい態様は、従属項にも記載されている。
【0013】
特に、本発明によれば、電磁シールドはシールド表面、つまり複数の導電素子と共に提供される表面、を含んでおり、この複数の導電素子は、複数の導電素子の少なくとも一部を、オープン構成と短絡構成との間で切替えるように構成された、スイッチングアセンブリに電気的に接続されている。
【0014】
オープン構成では、複数の導電素子は、互いに電気的に隔離される。言いかえれば、複数の導電素子がオープン構成にある場合、スイッチングアセンブリは、導電素子間に非常に高い抵抗を提供し、その結果、電場の影響下で、複数の導電素子間に電流が流れないか、又はごくわずか(理論的にはゼロ)である。
【0015】
短絡構成では、複数の導電素子は、共通のノードで互いに電気的に接続される。言いかえれば、複数の導電素子が短絡構成にある場合、スイッチングアセンブリは複数の導電素子間に、非常に低いインピーダンスを提供する。その結果、電場の影響を受けて複数の導電素子間に電流が自由に流れることができる。
【0016】
本発明のこの態様は、シールドすべき空間領域に対する複数の導電素子の相対移動を必要とせずに、電磁シールドを2つのシールド挙動間で切替えることができる利点がある。特に、複数の導電素子をオープン構成と短絡構成の間で切替えることによって、後でより詳細に述べるように、シールド表面の電磁シールド効果(EMSE:electromagnetic shielding effectiveness)の値が変化する。
【0017】
好ましくは、共通のノードは、電気的に固定グラウンド電位に接続される。あるいは更に、共通のノードは、送信アンテナとして複数の導電素子を駆動する、ダイナミック駆動電位に電気的に接続される。
【0018】
ダイナミックな駆動電位は、好ましくは電圧制御発振器を含む、共振回路によって提供されるのが良い。この実施例では、ダイナミックな駆動電位の振動数の制御により、電磁シールド効果(EMSE)の値を調節することができる。
【0019】
好ましい実施例では、スイッチングアセンブリは更に、共通のノードを固定グラウンド電位に、又は共通のノードをダイナミック駆動電位に電気的に接続するように構成されている。
【0020】
本発明の特別の態様によれば、導電素子は、複数の導電素子の第1のセットの少なくとも1つと、複数の導電素子の第2のセットの少なくとも1つを含んでいる。スイッチングアセンブリは更に、複数の導電素子の一部を、少なくとも第1の部分的短絡構成と第2の部分的短絡構成の間で、電気的に切替えるように構成されている。
【0021】
第1の部分的短絡構成では、第1のセットの導電素子は共通のノードで互いに電気的に接続され、第2のセットの導電素子は互いに電気的に絶縁されている。
第2の部分的短絡構成では、第2のセットの複数の導電素子は共通のノードで互いに電気的に接続される一方、第1のセットの複数の導電素子は互いに電気的に隔離されている。
【0022】
複数の導電素子は互いに離間しており、一実施形態では、これらは電気絶縁材料によって離間しているのが良い。幾つかの実施例では、導電素子は金属ワイヤであり、好ましくは電気絶縁材料で被覆されている(例えばマグネットワイヤ)。「エナメルワイヤ」とも呼ばれるマグネットワイヤは、非常に薄い絶縁層で被覆された金属ワイヤ(たとえば銅又はアルミニウム製)である。マグネットワイヤは市販されており、典型的には変圧器、インダクタ、モータ、スピーカー、ハードディスクヘッドアクチュエータ、電磁石、及び絶縁ワイヤの狭いコイルを必要とする他の用途の構成に使用されている。
【0023】
本発明の一態様によれば、電磁シールドは、ユーザによるスイッチングアセンブリの切替えを制御するための制御手段を含んでいる。この制御手段は、例えば、機械的セレクタ又は通信モジュール、あるいは一般的には構成設定を受信するための手段とすることができるユーザ・インターフェースを提供することができる。言い換えれば、制御手段のユーザ・インターフェースによって、ユーザは、電磁シールドの導電素子のシールド構成に対応する構成設定をスイッチングアセンブリに提供する。
好ましくは、複数の導電素子は、メッシュ又は格子を形成するように配置されている。
【0024】
本発明の一態様によれば、メッシュ又はグリッドは、それぞれ400mm未満、好ましくは1mmと100mmの間、の広がりを有する複数の開口部を含んでいる。
【0025】
本発明の特別な実施例では、複数の導電素子が、ファブリックの経糸及び/又は緯糸の少なくとも一部を形成するように配置された金属ワイヤである。好ましくは、金属ワイヤは、織物繊維で被覆されたマグネットワイヤ、例えば、綿繊維(例えばステープル綿繊維)である。絶縁金属ワイヤは、織布内の経糸及び/又は緯糸の一部を形成してもよい。
【0026】
本発明の他の目的は、シールドファブリック(つまり複数の絶縁された導電性の線を含むファブリック)の提供である。すなわち、ファブリックは、複数の絶縁導電ワイヤを含んでいる。適切なワイヤは、導電性材料(例えば金属)から作られ、織物の経糸及び/又は緯糸の少なくとも一部を形成するように配置された電気絶縁材料(好ましくは磁石ワイヤ)で被覆されたワイヤである。
絶縁導電線は、本発明の一実施形態による電磁シールドを提供するためのスイッチングアセンブリに電気的に接続されるように構成される。
本発明の1つの態様によれば、シールドファブリックはデニムファブリックである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、本発明の上述の実施形態による電磁シールドを含む物品である。例えば、物品は、衣服、財布、小銭入れ、バッグ、カードホルダーあるいは電話カバーでも良い。これらの物品は、好ましくは、本発明によるシールドファブリックを含み、より好ましくは、物品は少なくとも上記シールドファブリックでできたポケットを備えている。
【0028】
本発明の他の目的は、次のステップを含む、電磁界からの電磁シールドを提供する方法の提供にある。
(a)本発明の実施例によって電磁シールドを提供するステップ、
(b)電磁シールドの複数の導電素子の少なくとも一部を、オープン構成と短絡構成の間で切替えるステップ。
上記ステップ(b)は、電磁場の1つ又は複数の周波数においてシールド表面の電磁シールド効果(EMSE)を変化させる。
【0029】
その結果、本発明の電磁シールドは、電磁場の1つ以上の周波数において異なるEMSE値を有する、異なるシールド挙動間で切替えることができる。言いかえれば、本発明の基本的な考え方は、最初に絶縁導体のグリッド又は積み重ねを用意し、それらを短絡させて導体の箱を形成し、導体グリッドのシールド挙動を変更することである。このスイッチは、導体の任意の形状やグループ化等に対応して実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施例に基づく電磁シールドの透視図を概略的に示すものである。
図2図1の電磁シールドの断面A-Aに沿った横断面図である。
図3A】本発明の他の実施例に基づく、電磁シールドの透視図を概略的に示すものである。
図3B図3Aの電磁シールドの断面B-Bに沿った横断面図である。
図4】本発明の一実施例に基づく、シールドファブリックの透視図を概略的に示すものである。
図5図4に示したシールドファブリックの断面C-Cに沿った横断面図である。
図6】本発明の一実施例に基づく電磁シールドの透視図を概略的に示すものである。
図7】本発明の一実施例に基づく電磁シールドの、2つのシールド構成における周波数領域とEMSEの関係を示すグラフである(実線は短絡構成、破線はオープン構成示す)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の非限定的な図面を参照しながら、本発明の実施例を更に詳細に説明する。慣例に従って、図面の様々な特徴は必ずしも一定の縮尺ではなく、特徴をより明確にするために様々な部材の寸法が、任意に拡大又は縮小されている。明細書及び図面の全体にわたり、同じ数字は同じ特徴を示す。
【0032】
図1は、本発明の一実施例に基づく電磁シールド1を示すものである。電磁シールド1は、シールド表面を定義づけるために配置された複数の導電素子2を含んでいる。このシールド表面は、入射電磁界に関して外部空間領域からシールドされた空間領域を本質的に分ける表面として定義することができる。
【0033】
導電素子2は、実質的に線形である。すなわち、複数の導電素子2は、各々、主に線形の方向(他の2つの方向は無視できる)に沿って伸びている。例えば、導電素子2は、棒、線あるいは長方形の形状である。
【0034】
導電素子2は、好ましくは、例えば図1に概略的に示されるように、メッシュ、ネットあるいはグリッドを形成するように配列することができる。しかしながら、さらなる実施例(図示せず)として、シールド表面の導電素子2が全て本質的に互いに平行に配列されていても、本発明の保護の範囲内にある。
図1において、複数の導電素子2は、オープン構成と短絡構成との間で切替えるように構成された、スイッチングアセンブリ3(破線で図示)に電気的に接続されている。
【0035】
特に、スイッチングアセンブリ3は、従来技術として良く知られたリレー、トランスミッション・ゲートあるいは同様のスイッチング要素のように、できれば電気的に操作されるタイプの複数のスイッチング要素4を含んでいる。
しかしながら、さらなる実施例では、機械的に操作されるスイッチング要素4でも良い。
各導電素子2は、スイッチングアセンブリ3の対応するスイッチング要素4の第1のターミナル4aに電気的に接続されている。スイッチング要素4の第二のターミナル4bは、共通のノードCに接続されている。
【0036】
スイッチング要素4は、ターミナル4a、4b間でスイッチング要素4を開閉制御するための制御端末4cを含んでいる。機械的に操作されるスイッチング要素4の場合には、制御端末4cは、閉位置と開位置間とを移動可能なレバーやセレクタでも良い。電気的に操作されるスイッチング要素4の場合には、制御端末4cが、スイッチング要素4の開状態及びの閉状態を表わすブール値を有する制御信号(例えば電圧)を受信するように構成された電気的なターミナルでも良い。
【0037】
複数のスイッチング要素4が開いている場合、各導電素子2は、互いに電気的に絶縁されている(オープン構成)。複数のスイッチング要素4が閉じている場合、各導電素子2は共通のノードCで互いに電気的に接続されている(短絡構成)。
【0038】
スイッチングアセンブリ3は、複数の導電素子2の各終端の1つに電気的に接続されており、その結果、複数の導電素子2が短絡構成にある場合、これらの導電素子2はそれらの各終端で互いに電気的に接続される。
他の実施例として、各導電素子2の端が各々スイッチング要素4に電気的に接続され、その結果、複数の導電素子が短絡構成にある場合、各導電素子2の両方の端は、共通のノードCに電気的に接続されるようにしても良い。
【0039】
後でより詳細に説明するように、電磁シールド1の複数の導電素子2を、電気的なオープン構成と短絡構成の間で切替えることによって、シールド表面の電磁シールド効果(EMSE)の値に変化が生じる。
特に、この電磁シールド効果は、電磁シールドのシールド表面に入射する電磁界の周波数値の関数である。言いかえれば、本発明は、例えば所定の周波数においてスイッチングアセンブリ3を制御することにより変更できる電磁シールド効果値を有する、電磁シールド1を提供する。
【0040】
特に、適切なやり方で導電素子2を配列することによって、2つの異なる値の間で切替え可能な電磁シールド効果値を有する、シールド表面を得ることができる。例えば、高周波(RF)に含まれる周波数範囲の電磁界を遮蔽するために、導電素子2を、400mm未満の広がりを有する開口部を備えたメッシュ又はグリッドを形成するように配置しても良い。好ましくは、これらの開口部の範囲は、1mm乃至100mmの間に含まれ、より好ましくは約10mmである。
【0041】
例えば、幾つかの実施例では、電磁シールド1は、導電素子2が閉じた構成にあるとき、電磁界の所定の周波数に対してシールドされるように設計されている。そのため、導電素子2が短絡構成にあるときに高い値のEMSEがシールド面に提供され、一方、導電素子2がオープン構成にあるとき、低い値のEMSEがシールド面によって提供される。
【0042】
図2において、各導電素子2は、電気的絶縁材料5により互いに他の導電素子に対して間隔をおいて配置されている。好ましくは、導電素子2は誘電体層5によって覆われている(例えば絶縁線)。例えば、導電素子2は、誘電体層5で覆われた、銅線、あるいは金属棒でも良い。
【0043】
図3A及び図3Bで概略的に示された)幾つかの実施例では、複数の導電素子2は、シート11a、11bを形成する電気的絶縁材料の1つ又は複数の層内に埋め込まれている。複数のシート11a、11bは、シールドパネル11を形成するために、オーバーラップして連結しても良い。これらの実施例は、シールドされるべき空間領域が例えば部屋又は建物である場合に、非常に有用である。
【0044】
各パネル11の各導電素子2は、ソケットの形式の接続ターミナルを提供する第1の端を備え、この導電素子2の他端には、複数のパネル11間の迅速で単純な電気的な接続を実行するために、プラグ形式の接続ターミナルが設けられているのが良い。
【0045】
図4及び図5において、導電素子2は金属ワイヤ(例えば銅ワイヤ)、好ましくはマグネットワイヤ(あるいは、電気絶縁材料で被覆されている一般的な導電性ワイヤ)である。この実施例では、導電素子2は、好ましくはデニムファブリックであるファブリック12の経糸12a及び緯糸12bの一部を構成するように配列されている。
【0046】
幾つかの実施例では、導電素子2が、ファブリック12の経糸12aの一部だけあるいは緯糸12bの一部だけを形成するように配列されている。他の実施例として、複数の導電素子2が、経糸12aの全体及び又は緯糸12bの全体を形成するように配列されても、本発明の保護の範囲内にある。
一般に、シールドファブリック12は、ファブリック12の少なくとも経糸12aの一部及び又は少なくとも緯糸12bの一部を形成するように配置された複数の導電素子2を含んでいる。
【0047】
例えば、図4、及び図5に示した実施例では、ファブリック12の経糸12aの4分の1が、導電素子2を含んでいる。好ましくは、連続する2本の導電素子2の経糸の間に、3本の普通の経糸12aが存在するように配列されている。経糸と同様に、ファブリック12の緯糸12bも同じ方法で形成しても良い。その結果、ファブリックは、規則的な糸12a、12bで織られており、導電素子2が、実質的に正方形の開口部のグリッドを形成している。
好ましい実施例として、例えば、複数の導電素子2に、銅マグネットワイヤを含むコアを有するコアスパン綿糸を採用しても良い。
【0048】
図6を参照すると、電磁シールド1は、更に2つのスイッチング要素6,7を備えたスイッチングアセンブリ3を含んでいる。スイッチング要素6は、共通のノードCを電気的に固定グラウンド電位に接続するように構成され、スイッチング要素7は、共通のノードCを電気的に共振回路8に接続するように構成されている。
共振回路8は、電磁シールド1の複数の導電素子2が短絡構成にある場合に、これらの導電素子2を送信アンテナとして駆動するダイナミック駆動電位を提供するように構成され、かつ、共通のノードCは、電気的に共振回路8に接続されている。
【0049】
出願人は、共通のノードCが固定グラウンド電位に電気的に接続されているとき、所定の発振周波数を有するダイナミック駆動電位(例えば正弦波電圧信号)を共通のノードCに印加することにより、電磁シールド1によって提供されるEMSE値は、この提供されるEMSE値に対して変化することに注目してきた。
【0050】
好ましい実施例では、共振回路8は、ダイナミック駆動電位の振動数を制御するための、電圧制御発振器(VCO)を含んでいる。その結果、複数の導電素子が短絡構成にあるとき、電磁シールドによって提供されるEMSEは、共通のノードCが共振回路8に電気的に接続されている間に、調整することができる。
【0051】
図6において、スイッチング要素6,7は、共通のノードCを電気的に固定グラウンド電位に接続するか、あるいは、共通のノードCを共振回路8に電気的に接続するように制御される。言いかえれば、スイッチング要素6が閉じ、スイッチング要素7が開いていている場合、共通のノードCは、固定グラウンド電位にある。同様に、スイッチング要素6が開き、スイッチング要素7は閉じている場合、共通のノードCは、共振回路8によって提供されるダイナミック駆動電位にある。
例えば、もし、スイッチング要素6,7が(トランスミッション・ゲート、又はリレー等で)電気的に操作される場合、スイッチング要素6の制御信号は、スイッチング要素7の制御信号に対して論理的ではなく、逆もまた同様である。
【0052】
しかしながら、幾つかの実施例では、共通のノードCが固定グラウンド電位のみに電気的に接続されているか、又は共通のノードCが共振回路8のみに電気的に接続されているかのいずれかであり、これも本発明の保護の範囲内である。
言い換えると、これらの実施例のスイッチングアセンブリ3にはスイッチング要素6,7が設けられておらず、また、共通のノードCはグラウンド電位あるいは共振回路8に直接接続されている。
【0053】
電磁シールド1は、ユーザによるスイッチングアセンブリ3のスイッチングを制御するための制御手段9を含んでいる。例えば、スイッチング要素4の制御端末4cは、スイッチング要素4の開閉制御のために構成された論理回路9aに接続するのが良い。
論理回路9aは、セレクタ9cを含んだユーザ・インターフェース9bによって制御するのが良い。このセレクタ9cは、導電素子2がオープン構成と短絡構成との間で摺動する構成を選択するように構成された機械的なセレクタ9cでもよい。
【0054】
電磁シールドが更に共振回路8を備えている場合、ユーザ・インターフェース9bは、更に、(例えばセレクタ9cによって)、オープン構成と短絡構成との間で、次のいずれかのシールド構成を選択できるように構成しても良い;
オープン構成、
固定グラウンド電位にある共通のノードとの短絡構成、及び、
ダイナミックな駆動電位にある共通のノードCとの短絡構成。
【0055】
好ましい実施例では、ユーザ・インターフェース9bが、無線通信モジュール(例えばブルートゥース(登録商標)モジュール)を含むコミュニケーション・モジュール9dを備えているのが良い。このコミュニケーション・モジュールは、外部装置10(例えばスマートフォン、PCあるいは同様の装置)から構成信号を受信するように構成されているのが良い。
この構成信号は、外部装置10において、例えば外部装置10内のグラフィックインターフェースによってよって、選択することができる。好ましい実施例では、スイッチングアセンブリ3は、各スイッチング要素4の開閉制御ができるように構成される。そのため、電磁シールド1の複数の導電素子2を、第1の部分的な短絡構成と、第2の部分的な短絡構成の間で切替えることができる。
【0056】
複数の導電素子が第1の部分的な短絡構成にある場合、複数の導電素子2の第1のセットは共通のノードCで互いに電気的に接続され、複数の導電素子の第2のセットは互いに電気的に絶縁されている。同様に、複数の導電素子が第2の部分的な短絡構成にある場合、複数の導電素子2の第1のセットが互いに電気的に隔離されている一方、複数の導電素子の第2のセットは共通のノードCで互いに電気的に接続される。
【0057】
出願人は、電磁シールドの複数の導電素子2を、部分的な短絡構成(第1のセット又は第2のセット)、オープン構成、又は短絡構成との間で切替えることによってEMSEが変化することに注目してきた。
例えば、前記のように定義された2つの部分的な短絡構成を画定するために、ユーザは、外部装置10によって、複数の導電素子2の第1、第2のセットを選択してもよい。その結果、ユーザが電磁シールドの複数の導電素子の短絡構成を切替えることにより、EMSEを調節することができる。更に、複数の導電素子2の共通のノードCは、部分的な短絡構成において、固定グラウンド電位あるいは(できれば調整可能な振動数を有する)ダイナミックな駆動電位に電気的に接続されても良い。
【0058】
このようにして、シールドすべき電磁界の所定の周波数に対して、所望の範囲内のEMSEを提供するために、同じ電磁シールド1を調節することができる。言い換えると、電磁シールドは、各々所望の第1の範囲及び第2の範囲に含まれる、第1の値と第2の値の間で切替え可能なEMSEを有するシールド表面を提供することができる。
【0059】
要約すると、電磁界から電磁シールドを提供する方法は、以下のステップを含んでいる:
(a)本発明の任意の1つの実施例に基づいて、電磁シールドを提供するステップ;
(b)電磁シールドの複数の導電素子2を、オープン構成と短絡構成の間で切替えるステップ。
ステップ(b)では、電磁界の所定の1つ又は複数の周波数において、シールド表面の電磁シールド効果(EMSE)を変化させる。
【0060】
好ましくは、上記方法は、シールド表面の電磁シールド効果を調節するためのさらなるステップ(c)を含んでいても良い。
幾つかの実施形態では、ステップ(c)は、例えば、複数の導電素子が部分的に短絡された構成(例えば、第1又は第2の部分的短絡構成)にあるときに、共通のノードに電気的に接続されるべき複数の導電素子2の一部(例えば、第1又は第2の導電素子のセット)を選択することによって実行されるようにしても良い。
【0061】
幾つかの実施例では、ステップ(c)は、例えば、共通のノード(C)に電気的に接続された共振回路によって提供されるダイナミック駆動電位の発振周波数を調整するのを実行するようにしても良い。
この実施例では、ステップ(c)は、複数の導電素子が短絡構成、あるいは部分的な短絡構成にある場合に、実行される。
【0062】
図7は、電磁シールド1の複数の導電素子2が、短絡構成(実線)及びオープン構成(点線)にあるときの、周波数領域におけるEMSEのグラフを示す。
特に、図7に示されるグラフは、シールドされた織物12の試料に対してASTM D 4935-10によって実施されたEMSEの測定に基づいており、導電素子は、直径約35μmの断面を有する銅マグネットワイヤを含むコアを有するコアスパン綿糸を含んでいる。これらの導電素子は、綿製の他の糸と共に織られ、一辺が約3mmの実質的に正方形の形状を有する開口部を備えたグリッドを形成している。
【0063】
グラフからわかるように、電磁シールドの複数の導電素子2を電気的に短絡構成とオープン構成の間で切替えることによって、EMSEの値はかなり変化する。例えば、約800MHzと900MHzとの間に含まれる周波数の第1の範囲(概略的に長方形R1で示された範囲)では、複数の導電素子を有する電磁シールドの、短絡構成とオープン構成おいて提供されるEMSEの値の差は、約10dBと15dBの間にある。
図7において、約2.6GHzと2.7GHzの間で含まれた周波数の第2の範囲(概略的に長方形R2で示された範囲)では、複数の導電素子を有する電磁シールドの、短絡構成とオープン構成で提供されるEMSEの値の差は、約10dBと12dBの間にある。
【0064】
電磁シールド1は、衣服、財布、小銭入れ、バッグ、カードホルダー、あるいは電話カバーのような物品に、容易に組み込むことができる。シールド表面のEMSEは、電磁シールド1の導電素子をオープン構成と短絡構成の間の切替えることによって、例えば、RF信号がールド表面を通過するのを可能にする第1の値と、RF信号がシールドされる第2の値の間で切替えることができる。
【0065】
幾つかの実施例では、電磁シールド1がポケットに結合されとおり、例えば本発明のシールドファブリック12で作られている。
このポケットは、衣服(例えば一着のズボン)、あるいは小銭入れ、あるいは財布に組み込むことができる。このポケットは、例えば、その内部に非接触型クレジット/デビットカードを直接的又は間接的に収容するために使用してもよい。
ユーザ・インターフェース9b(機械的に選択及び/又は無線通信モジュール)によって、ユーザは構成の設定をスイッチングアセンブリ3に提供することができ、それにより、電磁シールド1の導電素子を異なるシールド構成(例えば短絡構成とオープン構成)間で切替えることができる。
電磁シールド1は、クレジット/デビットカードによる非接触決済を実行するために使用される周波数で、異なる値のEMSEを提供するように設計することができる。
【0066】
この実施例により、ユーザは、クレジットカードがポケットに入っているときに、EMSEの値が高いシールド構成を提供する構成設定を選択することができ、ユーザは不正な支払いを防ぐことができる。
ユーザがクレジットカードを非接触モードで使用することを望む場合、ユーザが、低い値のEMSEを有するシールド構成を提供する構成設定を選択することによって、電磁シールドを切替えることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 電磁シールド
2 導電素子
3 スイッチングアセンブリ
4 スイッチング要素
4a 第1のターミナル
4b 第2のターミナル
4c 制御ターミナル
5 電気的絶縁材料
6 スイッチング要素
7 スイッチング要素
8 共振回路
9 制御手段
9a 論理回路
9b ユーザ・インターフェース
9c セレクタ
9d コミュニケーション・モジュール
10 外部装置
11 シールドパネル
11a シート
11b シート
12 シールドファブリック
12a 経糸
12b 緯糸
C 電気的に共通のノード
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7