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特許7393721走行経路生成システム及び車両運転支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】走行経路生成システム及び車両運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231130BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20231130BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/095
G01C21/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020022366
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128508
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英輝
(72)【発明者】
【氏名】菅野 崇
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岸本 勇太
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-067988(JP,A)
【文献】特開2017-165158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0185388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
B62D 6/00 - 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路生成システムであって、
車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、
前記走行路上の障害物に関する障害物情報を取得する障害物情報取得装置と、
前記走行路情報及び前記障害物情報に基づいて、前記走行路において前記車両に走行させるための走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、
前記演算装置は、
前記車両が車線変更する場合に、前記走行路情報及び前記障害物情報に基づき、変更先の車線上において前記車両付近に後続車両が存在するか否かを判定し、
前記後続車両が存在すると判定された場合には、前記後続車両が存在しないと判定された場合よりも、前記車両が車線変更のための動作を行うときに発生するヨー角速度が大きくなるような前記走行経路を生成するよう構成され、
前記演算装置は、前記後続車両が存在すると判定された場合には、前記後続車両が存在しないと判定された場合よりも、前記車両が車線変更のための動作を開始するときに発生するヨー角速度が大きくなるような前記走行経路を生成するよう構成され、
前記演算装置は、
前記車両の現在位置に応じた始点と前記車両の前方に定められた終点とを結ぶ線であって、前記走行路が延びる方向及び前記走行路の幅方向のそれぞれに規定されたx座標及びy座標を用いてn次関数により表された前記線に基づき、前記走行経路を生成し、
前記後続車両が存在しないと判定された場合には、少なくとも前記始点でのヨー角速度をゼロに設定するという第1拘束条件を前記n次関数に適用して、前記走行経路を生成する一方で、前記後続車両が存在すると判定された場合には、少なくとも前記始点でのヨー角速度を非ゼロに設定するという第2拘束条件を前記n次関数に適用して、前記走行経路を生成するよう構成され、
前記n次関数は、3次関数、4次関数及び5次関数のいずれかである、
ことを特徴とする走行経路生成システム。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記第1拘束条件として、少なくとも、前記始点でのヨー角速度をゼロに設定し、且つ前記終点でのヨー角速度をゼロに設定するという条件を用いる一方で、
前記第2拘束条件として、少なくとも、前記始点でのヨー角速度を非ゼロに設定し、前記終点でのヨー角速度をゼロに設定し、且つ前記終点でのヨー角加速度をゼロに設定するという条件を用いるよう構成されている、
請求項に記載の走行経路生成システム。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記車両の速度と、前記障害物情報に含まれる前記車両と前記後続車両との車間距離とに基づき、前記車両と前記後続車両とにおける車頭時間を算出し、前記車頭時間が所定時間未満である場合に、変更先の車線上において前記車両付近に前記後続車両が存在すると判定するか、又は、
前記車両の速度と、前記障害物情報に含まれる前記後続車両の速度及び前記車両と前記後続車両との車間距離とに基づき、前記車両と前記後続車両とにおける衝突余裕時間を算出し、前記衝突余裕時間が所定時間未満である場合に、変更先の車線上において前記車両付近に前記後続車両が存在すると判定するか、又は、
前記車頭時間及び前記衝突余裕時間を算出し、前記車頭時間が所定時間未満で且つ前記衝突余裕時間が所定時間未満である場合に、変更先の車線上において前記車両付近に前記後続車両が存在すると判定する、よう構成されている、
請求項1又は2に記載の走行経路生成システム。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の走行経路生成システムによって生成された走行経路に沿って車両が走行するように、前記車両を運転制御するよう構成された制御装置を有することを特徴とする車両運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行経路を生成する走行経路生成システム、及び走行経路に基づき車両の運転支援を行う車両運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両の周辺の状況や自車両の状態などに基づき、自車両に走行させるための走行経路を設定し、この走行経路に基づき車両の運転支援(具体的には運転アシスト制御や自動運転制御)を行う技術が開発されている。例えば、特許文献1には、車線変更時において、自車両の情報や自車両周辺の他車両の情報などに基づき、車線変更の開始ポイント及び終了ポイントを設定し、これらポイントに応じた走行経路を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-100657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願の発明者らは、自車両が車線変更するときにおいて、変更先の車線上において自車両付近に後続車両が存在する場合に、自車両に車線変更意思があることを後続車両(基本的には後続車両のドライバであるが、後続車両が車両運転支援システムにより自動運転を行っている場合には当該システムである。以下同様とする。)に対して認識させられるような走行経路を生成できれば良いと考えた。こうすれば、後続車両に対して減速の必要性を認識させることができ、車線変更時の安全性を確保することが可能となる。すなわち、後続車両の減速タイミングを早期化することができ、車線変更時における自車両と後続車両との衝突(特に後続車両の追突)を防止することが可能となる。
【0005】
なお、上述した特許文献1には、車線変更時における走行経路を生成することが記載されているに止まり、このような本願の発明者が着眼した課題については何ら開示されておらず、当然、これを解決可能な技術について開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両が車線変更するときに、車両に車線変更意思があることを変更先の車線上に存在する後続車両に対して適切に認識させられるような走行経路を生成することができる走行経路生成システム、及びこの走行経路に基づき車両の運転支援を行うことができる車両運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、走行経路生成システムであって、車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、走行路上の障害物に関する障害物情報を取得する障害物情報取得装置と、走行路情報及び障害物情報に基づいて、走行路において車両に走行させるための走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、演算装置は、車両が車線変更する場合に、走行路情報及び障害物情報に基づき、変更先の車線上において車両付近に後続車両が存在するか否かを判定し、後続車両が存在すると判定された場合には、後続車両が存在しないと判定された場合よりも、車両が車線変更のための動作を行うときに発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路を生成するよう構成され、演算装置は、後続車両が存在すると判定された場合には、後続車両が存在しないと判定された場合よりも、車両が車線変更のための動作を開始するときに発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路を生成するよう構成され、演算装置は、車両の現在位置に応じた始点と車両の前方に定められた終点とを結ぶ線であって、走行路が延びる方向及び走行路の幅方向のそれぞれに規定されたx座標及びy座標を用いてn次関数により表された線に基づき、走行経路を生成し、後続車両が存在しないと判定された場合には、少なくとも始点でのヨー角速度をゼロに設定するという第1拘束条件をn次関数に適用して、走行経路を生成する一方で、後続車両が存在すると判定された場合には、少なくとも始点でのヨー角速度を非ゼロに設定するという第2拘束条件をn次関数に適用して、走行経路を生成するよう構成され、n次関数は、3次関数、4次関数及び5次関数のいずれかである、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、演算装置は、車両が車線変更するときにおいて、変更先の車線上において車両付近に後続車両が存在すると判定された場合には、この後続車両が存在しないと判定された場合よりも、車両が車線変更のための動作を行うときに発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路(目標走行経路)を生成する。これにより、車線変更を後続車両に気付かせ易くなり、換言すると車線変更動作に対する後続車両の視覚的顕著性が高まり、車線変更意思を後続車両に対して適切に認識させることができる。したがって、本発明によれば、後続車両に対して減速の必要性を認識させることができ、車線変更時の安全性を確保することが可能となる。すなわち、後続車両の減速タイミングを早期化することができ、車線変更時における後続車両との衝突(特に後続車両の追突)を防止することが可能となる。
なお、上記した「車両が車線変更のための動作を行うときに発生するヨー角速度」とは、換言すると、車線変更時に生じる、車両の向きの変化率(変化の程度)、ヨーレート、ヨー角度の変化率に相当する。
また、本発明によれば、車線変更の動作開始時に発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路を生成するので、車線変更動作に対する後続車両の視覚的顕著性をより高めることができ、車線変更意思を後続車両に対して効果的に認識させることができる。また、本発明によれば、車両付近に後続車両が存在すると判定された場合に、始点でのヨー角速度を非ゼロに設定するという第2拘束条件をn次関数に適用して走行経路を生成するので、車線変更時に発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路を適切に生成することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、演算装置は、第1拘束条件として、少なくとも、始点でのヨー角速度をゼロに設定し、且つ終点でのヨー角速度をゼロに設定するという条件を用いる一方で、第2拘束条件として、少なくとも、始点でのヨー角速度を非ゼロに設定し、終点でのヨー角速度をゼロに設定し、且つ終点でのヨー角加速度をゼロに設定するという条件を用いるよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、第1拘束条件を用いた場合には、車線変更の開始時及び終了時において車両に発生するヨー角速度を適切に小さくすることができる。他方で、第2拘束条件を用いた場合には、車線変更の開始時において車両に発生するヨー角速度を適切に比較的大きくすることができる一方で、車線変更の終了時において車両に発生するヨー角速度及びヨー角加速度を小さくすることができる、つまり車線変更動作を緩やかに収束させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、演算装置は、車両の速度と、障害物情報に含まれる車両と後続車両との車間距離とに基づき、車両と後続車両とにおける車頭時間を算出し、車頭時間が所定時間未満である場合に、変更先の車線上において車両付近に後続車両が存在すると判定するか、又は、車両の速度と、障害物情報に含まれる後続車両の速度及び車両と後続車両との車間距離とに基づき、車両と後続車両とにおける衝突余裕時間を算出し、衝突余裕時間が所定時間未満である場合に、変更先の車線上において車両付近に後続車両が存在すると判定するか、又は、車頭時間及び衝突余裕時間を算出し、車頭時間が所定時間未満で且つ衝突余裕時間が所定時間未満である場合に、変更先の車線上において車両付近に後続車両が存在すると判定する、よう構成されている。
このように構成された本発明によれば、車頭時間や衝突余裕時間に基づき、変更先の車線上において車両付近に後続車両が存在するか否かを判定するので、車線変更意思を認識させるべき後続車両の存在有無を的確に判断することができる。
【0013】
他の観点では、本発明において、車両運転支援システムは、上述した走行経路生成システムによって生成された走行経路に沿って車両が走行するように、車両を運転制御するよう構成された制御装置を有することを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、走行経路生成システムによって生成された走行経路に基づき車両を運転制御することで、車両が車線変更するときに、車線変更意思があることを変更先の車線上に存在する後続車両に対して適切に認識させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の走行経路生成システムによれば、車両が車線変更するときに、車両に車線変更意思があることを変更先の車線上に存在する後続車両に対して適切に認識させられるような走行経路を生成することができ、また、本発明の車両運転支援システムによれば、このような走行経路に基づき車両の運転支援を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による走行経路生成の基本概念についての説明図である。
図3】本発明の実施形態による走行経路候補を設定するための演算についての説明図である。
図4】本発明の実施形態による走行経路候補についての説明図である。
図5】本発明の実施形態による走行経路生成及び運転支援を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成システム及び車両運転支援システムについて説明する。
【0017】
[システム構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【0018】
車両運転支援システム100は、走行路において車両1に走行させるための走行経路(以下では適宜「目標走行経路」と呼ぶ。)を設定する走行経路生成システムとしての機能を有すると共に、車両1をこの目標走行経路に沿って走行させるように運転支援制御(運転アシスト制御や自動運転制御)を行うように構成されている。図1に示すように、車両運転支援システム100は、演算装置及び制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)10と、複数のセンサ類と、複数の制御システムと、を有する。
【0019】
具体的には、複数のセンサ類には、カメラ21、レーダ22や、車両1の挙動や乗員による運転操作を検出するための車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28が含まれている。さらに、複数のセンサ類には、車両1の位置を検出するための測位システム29、ナビゲーションシステム30が含まれている。複数の制御システムには、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33が含まれている。
【0020】
また、他のセンサ類として、車両1に対する周辺構造物の距離及び位置を測定する周辺ソナー、車両1の4箇所の角部における周辺構造物の接近を測定するコーナーレーダや、車両1の車室内を撮影するインナーカメラが含まれていてもよい。
【0021】
ECU10は、複数のセンサ類から受け取った信号に基づいて種々の演算を実行し、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33に対して、それぞれエンジンシステム、ブレーキシステム、ステアリングシステムを適宜に作動させるための制御信号を送信する。ECU10は、1つ以上のプロセッサ(典型的にはCPU)と、各種プログラムを記憶するメモリ(ROM、RAMなど)と、入出力装置などを備えたコンピュータにより構成される。なお、ECU10は、本発明における「演算装置」及び「制御装置」の一例に相当する。
【0022】
カメラ21は、車両1の周囲を撮影し、画像データを出力する。ECU10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、対象物(例えば、先行車両(前方車両)、後続車両(後方車両)、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(車線境界線、白線、黄線)、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物等)を特定する。なお、ECU10は、交通インフラや車々間通信等により、外部から対象物の情報を取得してもよい。これにより、対象物の種類、相対位置、移動方向等が特定される。
【0023】
レーダ22は、対象物(特に、先行車両、後続車両、駐車車両、歩行者、走行路上の落下物等)の位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。レーダ22は、車両1の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1と対象物との間の距離(例えば、車間距離)や、車両1に対する対象物の相対速度を測定する。なお、本実施形態において、レーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定してもよい。また、複数のセンサ類を用いて、位置及び速度測定装置を構成してもよい。
【0024】
なお、カメラ21及びレーダ22は、本発明における「走行路情報取得装置」及び「障害物情報取得装置」の一例に相当する。
【0025】
車速センサ23は、車両1の絶対速度を検出する。加速度センサ24は、車両1の加速度を検出する。この加速度は、前後方向の加速度と、横方向の加速度(つまり横加速度)とを含む。なお、加速度には、速度が増加する方向の速度の変化率だけでなく、速度が減少する方向の速度の変化率(つまり減速度)も含むものとする。
【0026】
ヨーレートセンサ25は、車両1のヨーレート(以下では適宜「ヨー角速度」と言い換える。)を検出する。操舵角センサ26は、車両1のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。ECU10は、車速センサ23が検出した絶対速度、及び、操舵角センサ26が検出した操舵角に基づいて所定の演算を実行することにより、車両1のヨー角(つまり、後述するx軸に対して車両1の前後方向が成す角度)を取得することができる。アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
【0027】
測位システム29は、GPSシステム及び/又はジャイロシステムであり、車両1の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーションシステム30は、内部に地図情報を格納しており、ECU10に地図情報を提供することができる。ECU10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両1の周囲(特に、進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物等を特定する。地図情報は、ECU10内に格納されていてもよい。なお、ナビゲーションシステム30も、本発明における「走行路情報取得装置」の一例に相当する。
【0028】
エンジン制御システム31は、車両1のエンジンを制御する。エンジン制御システム31は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。ECU10は、車両1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御システム31に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
【0029】
ブレーキ制御システム32は、車両1のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御システム32は、ブレーキ装置の制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどを含む。ECU10は、車両1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御システム32に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
【0030】
ステアリング制御システム33は、車両1のステアリング装置を制御する。ステアリング制御システム33は、車両1の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。ECU10は、車両1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御システム33に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
【0031】
[走行経路生成]
次に、本発明の実施形態において上述したECU10によって実行される走行経路生成について説明する。最初に、図2を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成の基本概念について説明する。図2は、車両1が走行路5上を走行している様子を示している。
【0032】
まず、ECU10は、走行路情報に基づいて、走行路5上の位置を特定するための演算を行う。走行路情報は、車両1が走行している走行路5に関する情報であり、カメラ21、レーダ22、ナビゲーションシステム30等により取得される。走行路情報は、例えば、走行路の形状(直線、カーブ、カーブ曲率)、走行路幅、車線数、車線幅等に関する情報を含んでいる。
【0033】
次いで、ECU10は、走行路情報に基づく演算により、車両1の進行方向前方に存在する走行路5上に、仮想の複数のグリッド点Gn(n=1,2,・・・N)を設定する。走行路5が延びる方向をx方向と定義し、走行路5の幅方向をy方向と定義した場合に、グリッド点Gnは、x方向及びy方向に沿って格子状に配列されている。なお、xy座標の原点は、車両1の位置に対応する点に設定される。
【0034】
ECU10がグリッド点Gnを設定する範囲は、走行路5に沿って、距離Lだけ車両1の前方に亘っている。距離Lは、演算実行時の車両1の速度に基づいて計算される。本実施形態では、距離Lは、演算実行時の速度(V)で所定の固定時間t(例えば3秒)に走行すると予想される距離である(L=V×t)。しかしながら、距離Lは、所定の固定距離(例えば100m)であってもよいし、速度(及び加速度)の関数であってもよい。また、グリッド点Gnが設定される範囲の幅Wは、走行路5の幅と略等しい値に設定される。このような複数のグリッド点Gnの設定により、走行路5上の位置を特定することが可能になる。
【0035】
なお、図2に示される走行路5は直線区間であるため、グリッド点Gnは矩形状に配置されている。しかしながら、グリッド点Gnは走行路が延びる方向に沿って配置されるため、走行路がカーブ区間を含んでいる場合は、グリッド点Gnはカーブ区間の湾曲に沿って配置される。
【0036】
次いで、ECU10は、走行路情報及び障害物情報に基づいて、走行経路候補RC(つまり、実際に車両1を走行させる目標走行経路となり得る候補)を設定するための演算を実行する。障害物情報は、車両1の走行路5上の障害物(例えば先行車両や後続車両や駐車車両や歩行者などの車両1の走行において障害となり得る対象物)の有無や、障害物の移動方向、障害物の移動速度等に関する情報であり、カメラ21及びレーダ22により取得される。
【0037】
具体的には、ECU10は、ステートラティス法を用いた経路探索により、複数の走行経路候補RCを設定する。ステートラティス法によれば、車両1の位置から、車両1の進行方向に存在するグリッド点Gnに向かって枝分かれするように、複数の走行経路候補RCが設定される。図2は、ECU10が設定する複数の走行経路候補RCの一部である走行経路候補RCa,RCb,RCcを示している。
【0038】
次いで、ECU10は、図2に示されるように、各走行経路候補RCに沿って複数のサンプリング点SPを設定して、各サンプリング点SPにおける経路コストを計算する。このサンプリング点SPは、経路コストが計算される、各走行経路候補RCの経路上の離散点(位置)である。具体的には、ECU10は、複数の走行経路候補RCのそれぞれについて、複数のサンプリング点SPの各々の経路コストを計算する。
【0039】
次いで、ECU10は、このように計算された複数の走行経路候補RCのそれぞれの経路コストに基づき、複数の走行経路候補RCの中から経路コストが最小である1つの経路を選択し、この経路を目標走行経路として設定する。そして、ECU10は、設定した目標走行経路に沿って車両1が走行するように、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32及びステアリング制御システム33のうちの少なくとも1以上に対して制御信号を送信する。
【0040】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態において、走行経路候補RCを設定するための演算について具体的に説明する。図3に示すように、走行経路候補RCは、始点Psから終点Peまで延びている。始点Psは、演算実行時の車両1の位置、典型的には車両1の現在位置である。始点Psの座標は(xs,ys)で表される。図3に示される例では、車両1はxy座標の原点に位置しているため、始点Psの座標は(0,0)である。終点Peは、複数のグリッド点Gnから選択された1つのグリッド点Gn(車両1の進行方向前方に位置する所定のグリッド点)であり、その座標は(xe,ye)で表される。
【0041】
ECU10は、走行経路候補RCとして設定する曲線として、式f1で示されるように、y座標がx座標を変数とする5次関数を暫定的に規定する。なお、式f1は、本発明に係る「n次関数」の一例であるが、n次関数として5次関数を用いることに限定はされず、他の種々の関数(例えば3次関数や4次関数など)を用いてもよい。また、式f1に基づいてxy座標に描画される曲線は、本発明に係る「線」の一例である。
【数1】
【0042】
a~fは未知の係数である。始点Psから終点Peまで延びる曲線を具体的に規定するためには、少なくとも6つの関係式を解いて、係数a~fを定める必要がある。そこで、ECU10は、式f1をxで1回~3回微分した式f2~f4を用意する。
【数2】
【0043】
始点Psの座標(xs,ys)と、終点Peの座標(xe,ye)は、それぞれ式f1の関係を満たす。したがって、ECU10は、関係式f5,f6を得ることができる。
【数3】
【0044】
また、以下の説明では、図3に示されるように、車両1の前後方向に沿って延びる直線1Lがx軸に対して成す角度を「ヨー角」という。さらに、始点Psにおけるヨー角を「Hs」とし、終点Peにおけるヨー角を「He」とする。ヨー角Hs,Heの単位は、いずれもラジアンである。
【0045】
始点Psのx座標(xs)と、始点Psにおけるヨー角Hsの正接は、式f2の関係を満たす。また、終点Peのx座標(xe)と、終点Peにおけるヨー角Heの正接も、式f2の関係を満たす。したがって、ECU10は、関係式f7,f8を得ることができる。
【数4】
【0046】
式f3は、xに対するy’の変化率を示すものであるから、ヨー角速度と相関がある。これより、始点Psのx座標(xs)と、始点Psにおけるヨー角速度Ksは、概ね式f3の関係を満たす。また、終点Peのx座標(xe)と、終点Peにおけるヨー角速度Keも、概ね式f3の関係を満たす。したがって、ECU10は、関係式f9,f10を得ることができる。
【数5】
【0047】
また、式f4は、xに対するy’’の変化率を示すものであるから、ヨー角加速度と相関がある。これより、始点Psのx座標(xs)と、始点Psにおけるヨー角加速度Ks’は、概ね式f4の関係を満たす。また、終点Peのx座標(xe)と、ヨー角加速度Ke’も、概ね式f4の関係を満たす。したがって、ECU10は、関係式f11,f12を得ることができる。
【数6】
【0048】
ECU10は、始点Ps及び終点Peのそれぞれにおける車両1の状態(つまり、座標、ヨー角、ヨー角速度、ヨー角加速度)を示す複数の拘束条件(境界条件)を適宜設定する。ECU10は、当該拘束条件を適用して、8つの関係式f5~f12のうち少なくとも6つの関係式を解くことにより、係数a~fを定める。これにより、ECU10は、始点Psから終点Peまで延び、走行経路候補RCとして設定される曲線を、具体的に規定することができる。
【0049】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態による走行経路候補RCについて具体的に説明する。図4は、車両(以下では適宜「自車両」と呼ぶ。)1が車線変更するときに設定される2つの走行経路候補RC1、RC2を例示している。
【0050】
本実施形態では、ECU10は、自車両1が車線変更するときにおいて、変更先の車線上において自車両1付近に後続車両3が存在する場合には、当該後続車両3が存在しない場合と比較して、自車両1が車線変更のための動作を行うときに発生するヨー角速度、具体的には自車両1が車線変更のための動作を開始するときに発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路候補RCを設定し、この走行経路候補RCに応じた目標走行経路を生成する。具体的には、ECU10は、図4に示すように、変更先の車線上において自車両1付近に後続車両3が存在する場合には、車線変更開始時に発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路候補RC2(破線)を設定する。一方で、ECU10は、変更先の車線上において自車両1付近に後続車両3が存在しない場合には、車線変更開始時に発生するヨー角速度が小さくなるような走行経路候補RC1(実線)を設定する。なお、これら走行経路候補RC1、RC2を、候補ではなく、最終的に適用される目標走行経路として扱っても構わない。
【0051】
このような本実施形態によれば、車線変更時に走行経路候補RC2を適用することにより、走行経路候補RC1を適用する場合と比較して、自車両1による車線変更開始を後続車両3(基本的には後続車両3のドライバであるが、後続車両3が車両運転支援システムにより自動運転を行っている場合には当該システムである。)に気付かせ易くなる、つまり自車両1による車線変更の開始動作に対する後続車両3の視覚的顕著性が高まることとなる(図4中の破線領域A1参照)。これにより、後続車両3に対して減速の必要性を適切に認識させることができ、車線変更時の安全性を確保することが可能となる。すなわち、後続車両3の減速タイミングを早期化することができ、車線変更時における自車両1と後続車両3との衝突(特に後続車両3の追突)を防止することが可能となる。
【0052】
ここで、上記の走行経路候補RC1、RC2をそれぞれ設定するに当たって用いる第1及び第2拘束条件、具体的には走行経路候補RC1、RC2のそれぞれに適用する5次関数の式f1を規定する係数a~fを決めるために用いる第1及び第2拘束条件について説明する。
【0053】
本実施形態では、走行経路候補RC1を設定するために適用する第1拘束条件、つまり変更先の車線上において自車両1付近に後続車両3が存在しない場合に適用する第1拘束条件として、以下の条件式を用いる。
【数7】
【0054】
すなわち、第1拘束条件では、少なくとも、始点Psでのヨー角速度Ksをゼロに設定し、且つ終点Peでのヨー角速度Keをゼロに設定するという条件が用いられる。こうすることで、車線変更の開始時及び終了時において自車両1に発生するヨー角速度が小さくなるようにしている。
【0055】
このような第1拘束条件の条件式を上記の式f1、f2、f3に代入すると、以下の式が得られる。
【数8】
【0056】
そして、上記の式を行列に置き換えた式から、係数a~fが以下のように定められる。
【数9】
【0057】
ECU10は、このように定められた係数a~fを式f1に代入した5次関数の式に基づき、走行経路候補RC1を設定する。なお、第1拘束条件において、始点Psでのヨー角Hs及び/又は終点Peでのヨー角Heをゼロに設定するという条件を更に用いてもよい。
【0058】
一方、本実施形態では、走行経路候補RC2を設定するために適用する第2拘束条件、つまり変更先の車線上において自車両1付近に後続車両3が存在する場合に適用する第2拘束条件として、以下の条件式を用いる。
【数10】
【0059】
すなわち、第2拘束条件では、少なくとも、始点Psでのヨー角速度Ksを非ゼロに設定し、終点Peでのヨー角速度Keをゼロに設定し、且つ終点Peでのヨー角加速度Ke’をゼロに設定するという条件が用いられる。こうすることで、車線変更の開始時において自車両1に発生するヨー角速度がある程度大きくなることを許容しつつ、車線変更の終了時において自車両1に発生するヨー角速度及びヨー角加速度が小さくなるようにしている、つまり車線変更動作が緩やかに収束するようにしている。
【0060】
このような第2拘束条件の条件式を上記の式f1、f2、f3、f4に代入すると、以下の式が得られる。
【数11】
【0061】
そして、上記の式を行列に置き換えた式から、係数a~fが以下のように定められる。
【数12】
【0062】
ECU10は、このように定められた係数a~fを式f1に代入した5次関数の式に基づき、走行経路候補RC2を設定する。なお、第2拘束条件において、始点Psでのヨー角Hs及び/又は終点Peでのヨー角Heをゼロに設定するという条件を更に用いてもよい。
【0063】
[処理フロー]
次に、図5を参照して、本発明の実施形態において行われる処理の流れについて説明する。図5は、本発明の実施形態による走行経路生成及び運転支援を示すフローチャートである。このフローチャートに係る処理は、ECU10によって所定の周期(例えば、0.05~0.2秒毎)で繰り返し実行される。
【0064】
まず、ステップS1において、ECU10は、図1に示した複数のセンサ類(特にカメラ21、レーダ22、車速センサ23、及びナビゲーションシステム30など)から各種種の情報を取得する。この場合、ECU10は、上記した走行路情報及び障害物情報を少なくとも取得する。
【0065】
次いで、ステップS2において、ECU10は、走行路情報に基づいて、走行路5の形状(例えば、走行路5が延びる方向、走行路5の幅等)を特定するとともに、走行路5上に複数のグリッド点Gn(n=1,2,・・・N)を設定する。例えば、ECU10は、x方向に10m毎に、またy方向に0.875m毎に、グリッド点Gnを設定する。
【0066】
次いで、ステップS3において、ECU10は、車両1の車線変更要求があるか否かを判定する。例えば、ECU10は、車両1のドライバが車線変更のためのウィンカ操作を行った場合や、現時点において設定されている目標走行経路において車線変更するための経路が含まれている場合に、車両1の車線変更要求があると判定する。
【0067】
ステップS3の結果、ECU10は、車両1の車線変更要求があると判定しなかった場合(ステップS3:No)、ステップS7に進む。この場合には、ECU10は、車線変更を考慮せずに、通常の手法により、複数の走行経路候補RCを設定する(ステップS7)。基本的には、ECU10は、走行路情報及び障害物情報に基づいて、ステートラティス法を用いた経路探索により、複数の走行経路候補RCを設定する。詳しくは、ECU10は、車両1の位置から進行方向に存在するグリッド点Gnに向かって枝分かれするように、複数の走行経路候補RCを設定する。
【0068】
一方、ECU10は、車両1の車線変更要求があると判定した場合(ステップS3:Yes)、ステップS4に進む。ステップS4において、ECU10は、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在しないか否かを判定する。この判定を行うに当たって、まず、ECU10は、障害物情報に基づき、変更先の車線上において車両1の後方(側方も含めてよい)に存在する後続車両3を検出する。ECU10は、変更先の車線上に複数の後続車両3が存在する場合には、車両1に最も近い位置に存在する後続車両3を検出すればよい。
【0069】
そして、ECU10は、車速センサ23により検出された車両1の速度と、検出された後続車両3の速度及び当該後続車両3と車両1との車間距離(これらも障害物情報に含まれる)とに基づいて、車両1と後続車両3とにおける車頭時間(THW:Time-Head Way)及び衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)を算出する。ECU10は、車両1と後続車両3との車間距離を車両1の速度により除算することで車頭時間を算出し、車両1と後続車両3との車間距離を車両1と後続車両3との相対速度(|車両1の速度-後続車両3の速度|)により除算することで衝突余裕時間を算出する。
【0070】
そして、ECU10は、車頭時間が所定時間以上で、且つ衝突余裕時間が所定時間以上である場合には、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在しないと判定し(ステップS4:Yes)、ステップS5に進む。なお、ECU10は、そもそも、変更先の車線上に後続車両3が全く検出されなかった場合にも、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在しないと判定し(ステップS4:Yes)、ステップS5に進む。ステップS5において、ECU10は、上述した第1拘束条件を適用することを決定し、この後、ステップS7に進み、第1拘束条件を適用して定められた5次関数の式f1に基づき、走行経路候補RCを設定する。
【0071】
一方、ECU10は、車頭時間が所定時間未満である場合、又は衝突余裕時間が所定時間未満である場合には、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在すると判定し(ステップS4:No)、ステップS6に進む。ステップS6において、ECU10は、上述した第2拘束条件を適用することを決定し、この後、ステップS7に進み、第2拘束条件を適用して定められた5次関数の式f1に基づき、走行経路候補RCを設定する。
【0072】
なお、上記した例では、車頭時間が所定時間未満である場合、又は衝突余裕時間が所定時間未満である場合に、車両1付近に後続車両3が存在すると判定していたが、他の例では、車頭時間が所定時間未満で且つ衝突余裕時間が所定時間未満である場合に(つまり両方の条件が満たされた場合)、車両1付近に後続車両3が存在すると判定することとしてもよい。また、上記した例では、車両1付近に後続車両3が存在するか否かを判定するために車頭時間及び衝突余裕時間の両方を用いていたが、他の例では、車頭時間及び衝突余裕時間のうちのいずれか一方のみを用いて当該判定を行ってもよい。
【0073】
次いで、上記のステップS7の後、ステップS8において、ECU10は、各走行経路候補RCに沿って複数のサンプリング点SPを設定する。例えば、ECU10は、各走行経路候補RCのそれぞれの経路上に、x方向に等間隔(1つの例では0.2m毎)にサンプリング点SPを設定する。
【0074】
次いで、ステップS9において、ECU10は、複数の走行経路候補RCのそれぞれの経路コストを計算する。具体的には、ECU10は、複数の走行経路候補RCのそれぞれについて、複数のサンプリング点SPの各々の経路コストを計算する。そして、ECU10は、一つの走行経路候補RCにおける複数のサンプリング点SPについて計算された複数の経路コストから、当該走行経路候補RCに適用する経路コストを計算する。例えば、ECU10は、複数のサンプリング点SPにおける複数の経路コストの平均値を、一つの走行経路候補RCの経路コストとする。このようにして、ECU10は、複数の走行経路候補RCの全てについて経路コストを計算する。
【0075】
次いで、ステップS10において、ECU10は、目標走行経路を設定する。具体的には、ECU10は、上記のように計算された複数の走行経路候補RCのそれぞれの経路コストに基づき、複数の走行経路候補RCの中から経路コストが最小である1つの経路を選択し、この経路を目標走行経路として設定する。
【0076】
次いで、ステップS11において、ECU10は、目標走行経路に沿って車両1が走行するように、車両1の速度制御及び/又は操舵制御を含む運転制御(車両挙動制御)を実行する。具体的には、ECU10は、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32及びステアリング制御システム33のうちの少なくとも1以上に制御信号を送信して、エンジン制御、制動制御及び操舵制御の少なくとも1以上を実行する。
【0077】
[作用及び効果]
次に、本発明の実施形態による作用及び効果について説明する。
【0078】
本実施形態では、ECU10は、車両1が車線変更するときにおいて、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在すると判定された場合には、この後続車両3が存在しないと判定された場合よりも、車両1が車線変更のための動作を開始するときに発生するヨー角速度が大きくなるような目標走行経路を生成する。これにより、車両1による車線変更開始を後続車両3に気付かせ易くなり、換言すると車両1による車線変更の開始動作に対する後続車両3の視覚的顕著性が高まり、車両1に車線変更意思があることを後続車両3に対して適切に認識させることができる。したがって、本実施形態によれば、後続車両3に対して減速の必要性を適切に認識させることができ、車線変更時の安全性を確保することが可能となる。すなわち、後続車両3の減速タイミングを早期化することができ、車線変更時における車両1と後続車両3との衝突(特に後続車両3の追突)を防止することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態によれば、ECU10は、車両1の現在位置に応じた始点Psと車両1の前方に定められた終点Peとを結ぶ5次関数により表された線に基づき目標走行経路を生成し、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在しないと判定された場合には、少なくとも始点Psでのヨー角速度Ksをゼロに設定するという第1拘束条件を5次関数に適用して目標走行経路を生成する一方で、当該後続車両3が存在すると判定された場合には、少なくとも始点Psでのヨー角速度Ksを非ゼロに設定するという第2拘束条件を5次関数に適用して目標走行経路を生成する。これにより、車両1付近に後続車両3が存在すると判定された場合には、この後続車両3が存在しないと判定された場合よりも、車線変更時に発生するヨー角速度が大きくなるような目標走行経路を適切に生成することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、ECU10は、第1拘束条件として、少なくとも、始点Psでのヨー角速度Ksをゼロに設定し、且つ終点Peでのヨー角速度Keをゼロに設定するという条件を用いる一方で、第2拘束条件として、少なくとも、始点Psでのヨー角速度Ksを非ゼロに設定し、終点Peでのヨー角速度Keをゼロに設定し、且つ終点Peでのヨー角加速度Ke’をゼロに設定するという条件を用いる。これにより、第1拘束条件を用いた場合には、車線変更の開始時及び終了時において車両1に発生するヨー角速度を適切に小さくすることができる。他方で、第2拘束条件を用いた場合には、車線変更の開始時において車両1に発生するヨー角速度を適切に比較的大きくすることができる一方で、車線変更の終了時において車両1に発生するヨー角速度及びヨー角加速度を小さくすることができる、つまり車線変更動作を緩やかに収束させることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、ECU10は、車頭時間及び衝突余裕時間に基づき、変更先の車線上において車両1付近に後続車両3が存在するか否かを判定するので、車両1の車線変更意思を認識させるべき後続車両3の存在有無を的確に判断することができる。
【0082】
[変形例]
上記した実施形態では、ステートラティス法を用いて走行経路を生成していたが、ステートラティス法を用いて走行経路を生成することに限定はされない。ステートラティス法以外にも公知の種々の方法(例えば、ポテンシャル法や、スプライン補間関数や、Aスター(A*)法や、ダイクストラ法など)を用いて、走行経路を生成してもよい。
【0083】
また、上記した実施形態では、車線変更の開始時に発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路を生成していたが、厳密に車線変更の開始タイミングにおいて発生するヨー角速度が大きくなる走行経路を生成することに限定はされず、他の例では、車線変更の開始付近(車線変更の開始タイミングからある程度時間が経過したタイミング)において発生するヨー角速度が大きくなるような走行経路を生成してもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、エンジンを駆動源とする車両1に本発明を適用する例を示したが(図1参照)、本発明は、電気モータを駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド車)にも適用可能である。加えて、上述した実施形態では、ブレーキ装置(ブレーキ制御システム32)により制動力を車両1に付与していたが、他の例では、電気モータの回生により制動力を車両に付与してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
5 走行路
10 ECU
21 カメラ
22 レーダ
23 車速センサ
30 ナビゲーションシステム
100 車両運転支援システム(走行経路生成システム)
n グリッド点
RC 経路候補
SP サンプリング点
図1
図2
図3
図4
図5