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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】エレベータのかご及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B66B5/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022201830
(22)【出願日】2022-12-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】武田 佳祐
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-062860(JP,A)
【文献】特開平10-316323(JP,A)
【文献】特開平05-310379(JP,A)
【文献】実開昭60-075371(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご室を構成する壁に形成される非常口と、
一側端部を固定端、他側端部を自由端として非常口の枠に回転自在に取り付けられる内開き式の扉と、
扉の他側端部の所定高さ位置にて扉を枠に固定するためのロック機構部と、
ロック機構部のロック解除操作を行うためのロック解除操作部とを備え、
ロック機構部は、
枠側の構成として、被ロック部を備え、
扉側の構成として、
被ロック部を受け入れ可能な受入凹部を備えるロック部材であって、扉の開閉方向において受入凹部と被ロック部とが係合するロック状態と、ロック状態のときよりも扉の開閉方向における受入凹部と扉との距離が長くなり、かつ、扉の開閉方向において受入凹部と被ロック部とが係脱可能となるロック解除状態とに状態変化可能なロック部材と、
ロック部材をロック状態からロック解除状態に状態変化させるためのトリガを入力する入力部とを備え、
ロック解除操作部は、
扉側の構成として、
扉のかご室内の面に形成される開口孔と、
ロック機構部のロック解除操作として、開口孔を介してかご室内からロック機構部の入力部へのトリガの入力操作を可能とする操作機構部とを備える
エレベータのかご。
【請求項2】
扉側の構成として、ロック機構部の入力部と作動的に接続される入力部を備えることにより、トリガの入力位置を変更する入力位置変更部を備え、
ロック解除操作部は、入力位置変更部の入力部の近傍に設けられ、入力位置変更部の入力部へのトリガの入力操作を行うことにより、ロック機構部の入力部へのトリガの入力操作を可能とする
請求項1に記載のエレベータのかご。
【請求項3】
ロック機構部は、上下2箇所に2つ設けられ、
入力位置変更部の入力部は、2つのロック機構部間の所定高さ位置に設けられるとともに、2つのロック機構部の2つの入力部と作動的に接続される
請求項2に記載のエレベータのかご。
【請求項4】
ロック解除操作部は、
操作機構部の構成として、
開口孔の奥側に位置してかご室内から回転操作可能な回転軸と、
回転軸と一体的に回転し、一方向への回転に伴って入力位置変更部の入力部と係合して入力部にトリガを入力する作用部と、
かご室外から回転軸を回転操作可能な操作部とを備える
請求項2に記載のエレベータのかご。
【請求項5】
ロック解除操作部は、枠側の構成として、逆方向に回転した作用部をロック片として係止する被ロック部を備える
請求項4に記載のエレベータのかご。
【請求項6】
ロック解除操作部は、操作機構部の構成として、別の回転軸と、操作部と作動的に接続される別の操作部とを備えるとともに、開口孔を別の回転軸に対して設けることにより、ロック解除操作位置を変更する操作位置変更部を備える
請求項4に記載のエレベータのかご。
【請求項7】
開口孔及び回転軸は、かご室内から回転軸を回転操作するための工具の引き抜き方向において工具との係合部を備えない
請求項4に記載のエレベータのかご。
【請求項8】
枠側の構成として、検出スイッチを備え、
扉側の構成として、扉を閉じたときに検出スイッチに検出されるスイッチキーを備える
請求項1に記載のエレベータのかご。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のかごを備える
エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常口装置を備えるエレベータのかご及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、故障等の何らかの原因でかごが昇降路の途中で動かなくなった場合にかご内に乗客が閉じ込まれる事態を想定して、かごの壁や天井に非常口が形成される。また、1つの昇降路内に複数台のかごが横並びに設置されるエレベータでは、隣り合うかごの対向する側壁に非常口が形成され、いずれかのかごが昇降路の途中で動かなくなった場合、隣のかごを救出かごとして不具合かごの側方に停止させ、各かごの扉を開いて非常口を開放し、2つの非常口に足場板を掛け渡し、不具合かご内の乗客を救出かごへ乗り移らせて救出する、という救出作業が行われる。
【0003】
ここで、非常口の扉は、がたつきがあると通常運行時の振動や騒音の原因となるため、扉閉時は固定(ロック)され、かつ、不用意に開かれると危険であるため、かご室内からは工具や鍵がなければ開けられないように施錠(ロック)される。たとえば、特許文献1には、扉のかご室内の面に形成される開口孔と、開口孔の奥側に位置してかご室内から回転操作可能な回転軸と、回転軸に取り付けられるロック片と、回転軸の回転に連動して上下動する上下一対のロックバーとを備え、扉閉時は、ロック片によるロック及びロックバーの先端部によるロックの3点ロックで扉を固定し、解錠時は、開口孔に鍵を差し込み、鍵を回して回転軸を回転操作することにより、3点ロックを解除する非常口装置が記載されている。なお、扉のかご室外の面において、回転軸にはレバーが取り付けられ、レバーを回して回転軸を回転操作することにより、かご室外からも3点ロックを解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-316323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常、扉のかご室内の面は平坦であり、かつ、非常口が形成されるかごの壁のかご室内の面と非常口を閉じる扉のかご室内の面とは面一となっている。このため、かご室内から扉を開くための手掛かりはなく、解錠してもかご室内から扉を開くことは容易ではない。したがって、従来の非常口装置においては、緊急時であるにも関わらず、扉を開くのに時間が掛かってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、かご室内から非常口の扉を容易に開くことができるエレベータのかご及びエレベータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータのかごは、
かご室を構成する壁に形成される非常口と、
一側端部を固定端、他側端部を自由端として非常口の枠に回転自在に取り付けられる内開き式の扉と、
扉の他側端部の所定高さ位置にて扉を枠に固定するためのロック機構部と、
ロック機構部のロック解除操作を行うためのロック解除操作部とを備え、
ロック機構部は、
枠側の構成として、被ロック部を備え、
扉側の構成として、
被ロック部を受け入れ可能な受入凹部を備えるロック部材であって、扉の開閉方向において受入凹部と被ロック部とが係合するロック状態と、ロック状態のときよりも扉の開閉方向における受入凹部と扉との距離が長くなり、かつ、扉の開閉方向において受入凹部と被ロック部とが係脱可能となるロック解除状態とに状態変化可能なロック部材と、
ロック部材をロック状態からロック解除状態に状態変化させるためのトリガを入力する入力部とを備え、
ロック解除操作部は、
扉側の構成として、
扉のかご室内の面に形成される開口孔と、
ロック機構部のロック解除操作として、開口孔を介してかご室内からロック機構部の入力部へのトリガの入力操作を可能とする操作機構部とを備える
エレベータのかごである。
【0008】
ここで、本発明に係るエレベータのかごの一態様として、
扉側の構成として、ロック機構部の入力部と作動的に接続される入力部を備えることにより、トリガの入力位置を変更する入力位置変更部を備え、
ロック解除操作部は、入力位置変更部の入力部の近傍に設けられ、入力位置変更部の入力部へのトリガの入力操作を行うことにより、ロック機構部の入力部へのトリガの入力操作を可能とする
との構成を採用することができる。
【0009】
また、この場合、
ロック機構部は、上下2箇所に2つ設けられ、
入力位置変更部の入力部は、2つのロック機構部間の所定高さ位置に設けられるとともに、2つのロック機構部の2つの入力部と作動的に接続される
との構成を採用することができる。
【0010】
あるいは、
ロック解除操作部は、
操作機構部の構成として、
開口孔の奥側に位置してかご室内から回転操作可能な回転軸と、
回転軸と一体的に回転し、一方向への回転に伴って入力位置変更部の入力部と係合して入力部にトリガを入力する作用部と、
かご室外から回転軸を回転操作可能な操作部とを備える
との構成を採用することができる。
【0011】
また、この場合、
ロック解除操作部は、枠側の構成として、逆方向に回転した作用部をロック片として係止する被ロック部を備える
との構成を採用することができる。
【0012】
あるいは、
ロック解除操作部は、操作機構部の構成として、別の回転軸と、操作部と作動的に接続される別の操作部とを備えるとともに、開口孔を別の回転軸に対して設けることにより、ロック解除操作位置を変更する操作位置変更部を備える
との構成を採用することができる。
【0013】
あるいは、
開口孔及び回転軸は、かご室内から回転軸を回転操作するための工具の引き抜き方向において工具との係合部を備えない
との構成を採用することができる。
【0014】
また、本発明に係るエレベータのかごの他態様として、
枠側の構成として、検出スイッチを備え、
扉側の構成として、扉を閉じたときに検出スイッチに検出されるスイッチキーを備える
との構成を採用することができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベータは、
上記いずれかのかごを備える
エレベータである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、扉側の構成であるロック部材がロック状態からロック解除状態に状態変化し、ロック機構部のロック解除操作が完了すると、ロック状態のときよりもロック部材の受入凹部と扉との距離が長くなる。そして、この結果として、ロック部材が受入凹部内の被ロック部から反力を受けて、扉がかご室内に少し開くこととなる。このため、本発明によれば、かごの壁からかご室内に突出する扉の他側端部を手掛かりとして、かご室内から扉を容易に開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、本実施形態に係るエレベータの水平断面図である。図1(b)は、救出作業時におけるエレベータの水平断面図である。
図2図2は、実施形態1に係る非常口装置を備えるエレベータのかごであって、かご室内から見たかごの要部の斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る非常口装置を備えるエレベータのかごであって、かご室外から見たかごの要部の斜視図である。
図4図4(a)は、図3のA部であって、ロック状態にある上部ロック機構部の斜視図である。図4(b)は、ロック解除状態にある上部ロック機構部の斜視図である。
図5図5(a)は、上部ロック機構部の主要構成であるキャッチの側面図である。図5(b)は、キャッチの縦断面図である。
図6図6(a1)~(c1)は、キャッチがロック状態からロック解除状態に変化する上部ロック機構部の要部の側面図である。図6(a2)~(c2)は、図6(a1)~(c1)に対応する上部ロック機構部の要部の縦断面図である。
図7図7(a1)~(c1)は、キャッチがロック解除状態からロック状態に変化する上部ロック機構部の要部の側面図である。図7(a2)~(c2)は、図7(a1)~(c1)に対応する上部ロック機構部の要部の縦断面図である。
図8図8(a)は、図3のB部であって、ロック状態にある下部ロック機構部の斜視図である。図8(b)は、ロック解除状態にある下部ロック機構部の斜視図である。
図9図9は、上部ロック機構部及び下部ロック機構部の入力位置変更部の斜視図である。
図10図10(a)は、入力位置変更部の平面図である。図10(b)は、入力位置変更部の分解平面図である。
図11図11は、図3のC部であって、扉閉時におけるロック解除操作部の斜視図である。
図12図12は、ロック解除操作の途中におけるロック解除操作部の斜視図である。
図13図13は、ロック解除操作の途中におけるロック解除操作部の斜視図である。
図14図14は、ロック解除操作部によるロック解除操作が完了し、ロック解除により扉が少し開いた状態の斜視図である。
図15図15は、図2の扉閉状態から扉が少し開いた状態の斜視図である。
図16図16(a)及び(b)は、扉の開閉に関する検出スイッチが設けられる箇所の斜視図である。
図17図17は、実施形態2に係る非常口装置を備えるエレベータのかごであって、かご室外から見たかごの要部の斜視図である。
図18図18は、図17のD部であって、扉閉時におけるロック解除操作部の斜視図である。
図19図19は、ロック解除操作の途中におけるロック解除操作部の斜視図である。
図20図20は、ロック解除操作の途中におけるロック解除操作部の斜視図である。
図21図21は、ロック解除操作部によるロック解除操作が完了し、ロック解除により扉が少し開いた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、実施形態1に係る非常口装置をかごに備えるエレベータについて説明する。
【0019】
図1(a)に示すように、エレベータ1は、昇降路2と、かご3とを備える。昇降路2は、階層を有する建物内において上下方向に延びる。かご3は、駆動機構(図示しない)の駆動により、昇降路2内を昇降し、駆動機構の駆動停止により、指定された階床に停止する。
【0020】
かご3は、かご室30と、出入口36と、扉37とを備える。かご室30は、床31、壁32(前壁33、側壁34及び後壁35)及び天井(図示しない)により構成される。床31、壁32及び天井は、1枚又は複数枚に分割されたパネルにより構成される。出入口36は、前壁33に形成される。扉37は、横方向にスライドして出入口36を開閉する。扉37は、両開き式又は片開き式である。
【0021】
かご3は、非常口装置4を備える。非常口装置4は、非常口40と、扉50とを備える。非常口40は、かご3の側壁34に形成される。より詳しくは、非常口40は、1つの昇降路2内に複数台のかご3が横並びに設置されるエレベータ1において、隣り合うかご3,3の対向する側壁34,34に形成される。扉50は、一側端部を中心に回転して非常口40を開閉する。扉50は、片開き式であり、かつ、かご室30内に扉50が開く内開き式である。作業者が、かご室30内から扉50の他側端部を引く、又は、かご室30外からかご室30内へ扉50の他側端部を押すと、扉50が一側端部を中心にして開かれ、非常口40が開放される。
【0022】
非常口装置4は、故障等の何らかの原因で複数台の中のいずれかのかご3が昇降路2の途中で動かなくなった場合、図1(b)に示すように、隣のかご3を救出かご3Aとして不具合かご3Bの側方に停止させ、各かご3A,3Bの扉50を開いて非常口40を開放し、2つの非常口40,40に足場板46を掛け渡し、不具合かご3B内の乗客を救出かご3Aへ乗り移らせて救出する、という救出作業を可能にするためのものである。
【0023】
図2及び図3に示すように、非常口40(ハッチングを付した部分)は、枠41内に形成される。枠41は、左右の縦枠42,42と、上枠43と、下枠44とを備え、非常口40の縦縁部、上縁部及び下縁部の4辺を縁取る枠である。扉50は、ヒンジ51を介して上枠43の一端部及び下枠44の一端部に回転自在に取り付けられる。これにより、扉50の一側端部50aは固定端となり、扉50の他側端部50bは自由端となる。
【0024】
下枠44には、フラップ45が回転自在に取り付けられる。フラップ45は、常時は扉50に沿うように立てられて収納されているが、救出作業時に倒され、この上に足場板46の端部が掛けられる。
【0025】
非常口装置4は、2つのロック機構部60,60(上部ロック機構部60A、下部ロック機構部60B)と、ロック解除操作部80とを備える。2つのロック機構部60,60は、扉50の上下2箇所に設けられ、扉50の上下2箇所にて扉50を枠41に固定(ロック)するためのものである。ロック解除操作部80は、2つのロック機構部60,60間の扉50の所定高さ位置(本実施形態においては、高さ方向中央部)にて2つのロック機構部60,60のロック解除操作を行うためのものである。ロック解除操作部80は、2つのロック機構部60,60間の扉50の所定高さ位置にて扉50を枠41に固定(ロック)する機能も備える。
【0026】
図4に示すように、上部ロック機構部60Aは、扉50側の構成として、ロック装置としてのキャッチ61を備え、枠41側の構成として、被ロック部68bを備える。キャッチ61は、扉50のかご室30外の面側において扉50の他側縁部50bの上部にブラケット67を介して取り付けられる。一例として、キャッチ61は、タキゲン製造株式会社製の「スナッチロック」(登録商標)である。被ロック部68bは、基部68aにて枠41の縦枠42の上部に取り付けられる被ロック部材68の一部である。被ロック部68bは、ピン形状(軸体)であり、枠41の縦枠42の上部から枠41内の垂直面(非常口40の垂直面)に沿って突出する。本実施形態においては、キャッチ61は、縦に配置され、被ロック部68bは、水平方向に突出する。
【0027】
図5及び図6に示すように、キャッチ61は、本体62と、ロック部材63と、ストッパ部材65とを備える。本体62は、キャッチ61のハウジングである。ロック部材63は、本体62の一端部に設けられる中空筒状の支持軸62bを介して本体62に回転可能に支持される。ストッパ部材65は、本体62の他端部に設けられる中空筒状の支持軸62cを介して本体62に回転可能に支持される。
【0028】
本体62は、受入凹部62aを備える。受入凹部62aは、扉50と反対側にて開放される切欠き状の凹部である。受入凹部62aは、被ロック部68bを受け入れ可能な大きさに形成される。ロック部材63は、受入凹部63aを備える。受入凹部63aは、先端側にて開放される切欠き状の凹部である。受入凹部63aは、被ロック部68bを受け入れ可能な大きさに形成される。
【0029】
ロック部材63は、本体62及びストッパ部材65と接触することにより回転範囲が規制され、第1角度位置と第2角度位置との間で回転可能、すなわち、第1状態と第2状態とに状態変化可能となる。ロック部材63は、第1状態から第2状態に状態変化するようにバネ64により弾性付勢される。
【0030】
第1状態は、受入凹部63aが扉50の開閉方向(扉50の垂直面と直交する方向、図6では、紙面の左右方向、以下同様)に対して直交状態となる(受入凹部63aの中心線と扉50の開閉方向とが直交する状態となる)ことにより、扉50の開閉方向において受入凹部63aと被ロック部68bとが係合する状態(ロック状態)である。
【0031】
第2状態は、受入凹部63aが扉50の開閉方向に対して傾斜状態となる(受入凹部63aの中心線と扉50の開閉方向とが傾斜する状態となる)ことにより、第1状態のときよりも受入凹部63aと扉50との距離が長くなり、かつ、扉50の開閉方向において受入凹部63aと被ロック部68bとが係脱可能となる状態(ロック解除状態)である。
【0032】
ストッパ部材65は、本体62及びロック部材63と接触することにより回転範囲が規制され、第1角度位置と第2角度位置との間で回転可能、すなわち、第1状態と第2状態とに状態変化可能となる。ストッパ部材65は、第2状態から第1状態に状態変化するようにバネ66により弾性付勢される。
【0033】
第1状態は、ロック部材63とストッパ部材65とが係合し、ロック部材63が第1状態に維持される状態(ロック状態)である。
【0034】
第2状態は、ロック部材63とストッパ部材65との係合が解除され、ロック部材63が弾性付勢により第1状態から第2状態に状態変化する状態(ロック解除状態)である。
【0035】
ストッパ部材65は、入力部65aを備える。入力部65aは、本体62から突出するストッパ部材65の端部であり、ストッパ部材65を弾性付勢に抗して第1状態から第2状態に状態変化させるためのトリガを入力する部分である。
【0036】
図6(a1)及び(a2)は、第1状態(ロック状態)を表す。すなわち、扉50が閉じた状態において、受入凹部63aに被ロック部68bを受け入れるロック部材63は、ストッパ部材65と係合し、第1状態(ロック状態)に維持される。このとき、受入凹部63aが扉50の開閉方向(図6では、紙面の左右方向)に対して直交状態となることにより、受入凹部63aが受入凹部62aと重なり、受入凹部62a,63aが被ロック部68bを拘束し、扉50の開閉方向において受入凹部63aと被ロック部68bとが係合する。第1状態(ロック状態)では、扉50の開閉方向においてキャッチ61と被ロック部68bとの相対変位が規制され、扉50は、閉じた状態で枠41に固定(ロック)される。
【0037】
図6(b1)及び(b2)は、第2状態(ロック解除状態)を表す。すなわち、扉50が閉じた状態において、ストッパ部材65の入力部65aにトリガ(ストッパ部材65を弾性付勢に抗して第1状態(ロック状態)から第2状態(ロック解除状態)に状態変化させる外力)が入力されることにより、受入凹部63aに被ロック部68bを受け入れるロック部材63は、ストッパ部材65との係合が解除され、弾性付勢により第1状態(ロック状態)から第2状態(ロック解除状態)に状態変化する。このとき、受入凹部63aが扉50の開閉方向に対して傾斜状態となることにより、受入凹部63aが受入凹部62aから離脱し、受入凹部62a,63aによる被ロック部68bの拘束が解除され、扉50の開閉方向において受入凹部63aと被ロック部68bとが係脱可能となる。第2状態(ロック解除状態)では、扉50の開閉方向においてキャッチ61と被ロック部68bとの相対変位が許容され、扉50は、固定が解除され、開くことができる(図6(c1)及び(c2))。
【0038】
反対に、開いた扉50を閉じるときは、図7(b1)及び(b2)に示すように、ロック部材63は、被ロック部68bと接触し、扉50を閉じる力の反力を被ロック部68bから受けることにより、弾性付勢に抗して第2状態(ロック解除状態)から第1状態(ロック状態)に状態変化し、第1状態(ロック状態)に復帰する(図7(c1)及び(c2))。
【0039】
図8に示すように、下部ロック機構部60Bは、上部ロック機構部60Aと同じ構成である。このため、下部ロック機構部60Bについては、上部ロック機構部60Aについての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0040】
図9及び図10に示すように、非常口装置4は、入力位置変更部70を備える。入力位置変更部70は、上部ロック機構部60Aの入力部65aと下部ロック機構部60Bの入力部65aとを接続し、2つの入力部65a,65aを一体化するとともに、新たに入力部を設け、扉50の高さ方向においてトリガの入力位置を変更(シフト)するためのものである。
【0041】
入力位置変更部70は、ロッド71と、入力部としての入力部材72とを備える。ロッド71は、扉50のかご室30外の面側において扉50の他側縁部50bに高さ方向に沿って配置され、上端部71aが上部ロック機構部60Aの入力部65aに接続され、下端部71bが下部ロック機構部60Bの入力部65aに接続される。上端部71a及び下端部71bの少なくとも一方は、長さ調整機能を備える。入力部材72は、扉50のかご室30外の面側において2つのロック機構部60,60間の扉50の他側縁部50bの所定高さ位置(本実施形態においては、高さ方向中央部)にてロッド71に着脱自在に取り付けられる。
【0042】
入力部材72は、金属板の一部を屈曲し、L字状に形成したものである。一例として、入力部材72は、押え部材73、ボルト74及び角ナット75を用い、押え部材73とでロッド71を挟み込むようにして、ロッド71に着脱自在に取り付けられる。入力部材72は、ボルト74及び角ナット75の締結を緩めて上下させることにより、ロッド71に高さ位置変更可能に取り付けられる。実際上、入力部材72は、ロック解除操作部80が設けられる高さ位置に位置設定される。
【0043】
上述のとおり、ロック解除操作部80は、2つのロック機構部60,60のロック解除操作を行うためのものである。そして、ロック解除操作部80は、入力位置変更部70を介して2つのロック機構部60,60のロック解除操作を一回的かつ同時に行うものである。図11に示すように、ロック解除操作部80は、扉50側の構成として、開口孔81と、回転軸82と、係合部材83と、操作部としての操作部材84とを備え、枠41側の構成として、被ロック部86bを備える。
【0044】
開口孔81は、扉50の他側縁部50bの所定高さ位置(入力部材72の近傍であり、本実施形態においては、高さ方向中央部)において扉50のかご室30内の面に形成される。一例として、開口孔81は、扉50に形成された孔に装着されるガイド環(図示しない)の内孔である。
【0045】
回転軸82は、扉50のかご室30外の面側において扉50の他側縁部50bの所定高さ位置(入力部材72の近傍であり、本実施形態においては、高さ方向中央部)にブラケット85を介して回転自在に取り付けられる。回転軸82は、ピン形状であり、開口孔81と同軸にかつ開口孔81と所定間隔を有して扉50のかご室30外の面側に配置される。回転軸82の開口孔81側の端部には、専用又は汎用の工具の先端部と軸回り方向において係合可能となるよう、四角形、六角形、プラス形状、マイナス形状、楕円形等の非円形状の孔又は突起(図示しない)が形成される。すなわち、工具は、軸部と、軸部を回転操作するためのグリップ部とを備え、軸部の先端部は、四角形、六角形、プラス形状、マイナス形状、楕円形等の非円形状の突起又は孔を備え、これが回転軸82の開口孔81側の端部と軸回り方向において係合する。これにより、回転軸82は、開口孔81の奥側に位置しながらも、かご室30内から回転操作が可能となる。なお、開口孔81及び回転軸82は、工具の引き抜き方向において工具との係合部を備えない。このため、工具は、軸回り方向における回転軸82との係合が抵抗なく解除され、引き抜かれる。
【0046】
係合部材83は、回転軸82から軸直交方向に突出し、回転軸82に軸回り方向に回転不能に取り付けられ、回転軸82と一体的に回転する。係合部材83は、入力部材72と接離可能な位置に配置され、入力部材72と係合して入力部材72にトリガを入力する作用部として機能する。係合部材83は、施錠装置のロック片としての機能も備える。
【0047】
操作部材84は、回転軸82に軸回り方向に回転不能に取り付けられ、回転軸82と一体的に回転する。操作部材84は、かご室30外から回転軸82を回転操作するためのものである。操作部材84は、中間部位にて回転軸82に取り付けられる。これにより、操作部材84は、一方に延びる部分と、他方に延びる部分とを備える。一方に延びる部分は、グリップ部となる。
【0048】
被ロック部86bは、基部86aにて枠41の縦枠42の所定高さ位置(入力部材72の近傍であり、本実施形態においては、高さ方向中央部)に取り付けられる被ロック部材86の一部である。被ロック部86bは、板状部であり、枠41の縦枠42の所定高さ位置から枠41内の垂直面(非常口40の垂直面)に沿って突出する。被ロック部86bは、回転軸82の軸直交面(すなわち枠41内の垂直面(非常口40の垂直面))に沿う係止面を有する。係止面は、被ロック部86bの外面に設けられる。被ロック部86bは、係止面にて係合部材83を係止する。
【0049】
このように、扉50は、2つのロック機構部60,60によるロック及び係合部材83によるロックの3点ロックで枠41に固定(ロック)される。このロック状態から、作業者(救出者)は、開口孔81に専用又は汎用の工具を差し込み、工具を90度程度回して回転軸82を回転操作する。すると、図12に示すように、回転軸82と一体化された係合部材83が被ロック部86bから外れ、1つのロックが解除され、解錠される。なお、図12において、工具は記載していない。後述する図13及び図14においても同様である。
【0050】
しかし、まだ2つのロック機構部60,60によるロックは有効である。そこで、作業者は、そこからさらに工具を所定角度(たとえば50度程度)回して回転軸82を回転操作する。すると、図13及び図14に示すように、係合部材83が入力部材72と係合し、入力部材72にトリガ(外力)が入力される。入力部材72にトリガが入力されると、入力部材72(及び入力部材72と一体的なロッド71)は、ロッド71の長手方向(扉50の高さ方向)に沿って直線移動する(押し下げられる)。この操作により、2つのロック機構部60,60の2つの入力部65a,65aに同時にトリガが伝達して入力され、2つのロック機構部60,60によるロックが同時に解除される。
【0051】
しかも、2つのロック機構部60,60のロック解除操作が完了すると、上述のとおり、ロック部材63の受入凹部63aと扉50との距離、すなわち、受入凹部63aに受け入れられる枠41側の構成である被ロック部68bと扉50との距離が長くなる。そして、この結果として、ロック部材63が受入凹部63a内の被ロック部68bから反力を受けて、図15に示すように、扉50がかご室30内に少し開くこととなる。そこで、作業者は、かご3の側壁34からかご室30内に突出する扉50の他側端部50bを手掛かりとして、扉50を引く。これにより、扉50が一側端部50aを中心にして開かれ、非常口40が開放される。
【0052】
その後の救出作業は、上述のとおりであるが、簡単に説明しておく。まず、作業者は、自分が乗っているかご3のフラップ45を倒し、次に対向する不具合かご3Bのフラップ45を倒し、足場板46を掛け渡す。次に、作業者は、不具合かご3Bの非常口装置4の操作部材84を回し、扉50を開く。そして、しかる後、作業者は、不具合かご3B内の乗客を救出かご3Aへ乗り移らせて救出する。
【0053】
なお、図16に示すように、枠41の上枠43には、検出スイッチ88が取り付けられ、扉50の上部には、スイッチキー89が取り付けられる。スイッチキー89は、扉50が閉じたときに(扉50が閉じると同時に2つのロック機構部60,60がロック状態となるので、「ロック状態となったときに」と実質的に同一)、検出スイッチ88内に挿入され、導通する。これにより、エレベータ1の制御部は、2つのロック機構部60,60のロック状態を電気的に検出することができる。すなわち、枠41側の構成として、検出スイッチ88を備え、扉50側の構成として、スイッチキー89を備えることにより、2つのロック機構部60,60がロック状態となったこと(=扉50が閉じたこと)、及び、2つのロック機構部60,60がロック解除状態となったこと(=扉50が開いたこと)を検出することができる。
【0054】
以上のとおり、実施形態1に係る非常口装置4によれば、扉50側の構成であるロック部材63が弾性付勢によりロック状態からロック解除状態に状態変化し、2つのロック機構部60,60のロック解除操作が完了すると、ロック状態のときよりもロック部材63の受入凹部63aと扉50との距離が長くなる。そして、この結果として、ロック部材63が受入凹部63a内の被ロック部68bから反力を受けて、扉50がかご室30内に少し開くこととなる。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、かご3の側壁34からかご室30内に突出する扉50の他側端部50bを手掛かりとして、かご室30内から扉50を容易に開くことができる。これは、扉50のかご室30内の面上に手掛かりがなく平坦である場合や、開口孔81及び回転軸82が、かご室30内から回転軸82を回転操作するための工具の引き抜き方向において工具との係合部を備えない構成であるために、工具を引いて扉50を開くことができない場合に、特に効果的である。
【0055】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、入力位置変更部70が設けられ、入力部材72がロッド71に高さ位置変更可能に取り付けられる。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、入力部材72の高さ位置を適宜設定することにより、扉50の高さ方向においてトリガの入力位置を変更することができ、ひいては、扉50の高さ方向においてロック解除操作位置を任意に設定することができる。
【0056】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、ロック機構部60が上下2箇所に2つ設けられ、入力位置変更部70の入力部材72が2つのロック機構部60,60の2つの入力部65a,65aと作動的に接続される。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、ロック解除操作部80が入力位置変更部70を介して2つのロック機構部60,60のロック解除操作を一回的かつ同時に行うことができる。
【0057】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、開口孔81を介してかご室30内からロック解除操作部80の回転軸82を回転操作することにより、ロック機構部60のロック解除操作が行われる。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、簡単にロック解除操作を行うことができる。
【0058】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、ロック解除操作部80が2つのロック機構部60,60間の扉50の所定高さ位置にて扉50を枠41に固定(ロック)する機能も備える。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、上下2つのロック機構部60,60及び中間部のロック解除操作部80による3点で扉50を枠41にがたつきなくしっかりと固定することができる。
【0059】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、枠41に検出スイッチ88が設けられ、扉50にスイッチキー89が設けられる。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、扉50が閉じると同時にロック機構部60がロック状態となることを検出することができる。
【0060】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、扉50が閉じると同時に扉50にロックが掛かる構造となっている。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、ロック解除操作部80による施錠をし忘れたとしても、作業者以外の乗客等が扉50を不用意に開くことを好適に防止することができる。
【0061】
また、実施形態1に係る非常口装置4によれば、ロック機構部60については、枠41の縦枠42に対する被ロック部材68の取付位置を調整することにより、キャッチ61及び被ロック部68bの係合の調整が行われる。このため、実施形態1に係る非常口装置4によれば、被ロック部材68の位置調整のみで、係合の調整を容易に行うことができる。
【0062】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る非常口装置をかごに備えるエレベータについて説明する。なお、以下においては、主として実施形態1と異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0063】
図17に示すように、非常口装置4は、追加のロック解除操作部(操作位置変更部)90を備える。操作位置変更部90は、ロック解除操作部80に接続され、新たに操作部を設け、扉50の幅方向においてロック解除操作位置を変更(シフト)するためのものである。
【0064】
図18に示すように、操作位置変更部90は、扉50側の構成として、開口孔91と、回転軸92と、ロッド93と、操作部としての操作部材94と、ブラケット95とを備える。ロッド93を除く、開口孔91、回転軸92、操作部材94及びブラケット95は、ロック解除操作部80の開口孔81、回転軸82、操作部材84及びブラケット85と同じ構成である。このため、これらの構成については、ロック解除操作部80についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0065】
異なる点は、ロック解除操作部80において開口孔81が無くなり、この代わりに、操作位置変更部90において開口孔91が設けられる点と、ロッド93が設けられる点である。ロッド93は、扉50の幅方向に沿って配置され、一端部が操作部材84のうち一方に延びるグリップ部となる部分とは反対の他方に延びる部分に接続され、他端部が操作部材94の同じ部分に接続される。これにより、ロッド93は、回転軸82,92間の線分と同じ長さかつ平行なリンクを構成し、ロック解除操作部80の回転軸82、係合部材83及び操作部材84は、回転軸92の回転操作に連動して回転する。
【0066】
そして、実施形態1と同様、扉50は、2つのロック機構部60,60によるロック及び係合部材83によるロックの3点ロックで枠41に固定(ロック)される。このロック状態から、作業者(救出者)は、開口孔91に専用又は汎用の工具を差し込み、工具を90度程度回して回転軸92を回転操作する。すると、図19に示すように、回転軸82が連動して同じ角度で回転し、回転軸82と一体化された係合部材83が被ロック部86bから外れ、1つのロックが解除され、解錠される。なお、図19において、工具は記載していない。後述する図20及び図21においても同様である。
【0067】
しかし、まだ2つのロック機構部60,60によるロックは有効である。そこで、作業者は、そこからさらに工具を所定角度(たとえば50度程度)回して回転軸92を回転操作する。すると、図20及び図21に示すように、回転軸82が連動して同じ角度で回転し、係合部材83が入力部材72と係合し、入力部材72にトリガ(外力)が入力される。入力部材72にトリガが入力されると、入力部材72(及び入力部材72と一体的なロッド71)は、ロッド71の長手方向(扉50の高さ方向)に沿って直線移動する(押し下げられる)。この操作により、2つのロック機構部60,60の2つの入力部65a,65aに同時にトリガが伝達して入力され、2つのロック機構部60,60によるロックが同時に解除される。
【0068】
このように、実施形態2に係る非常口装置4も、実施形態1に係る非常口装置4が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0069】
しかも、実施形態2に係る非常口装置4によれば、操作位置変更部90が設けられ、ロッド93の長さに応じた箇所に開口孔91及び回転軸92が設けられる。このため、実施形態2に係る非常口装置4によれば、ロッド93の長さを適宜設定することにより、扉50の幅方向においてロック解除操作位置を任意に設定することができる。そして、実施形態2に係る非常口装置4によれば、入力位置変更部70及び操作位置変更部90を設けることにより、扉50の高さ方向及び幅方向においてロック解除操作位置を任意に設定することができる。このため、実施形態2に係る非常口装置4によれば、ロック解除操作位置を上下左右の広範な任意の位置に設定することができる。
【0070】
一例として、ロック解除操作位置、すなわち、開口孔91の位置を扉50の一側端部50aにより近づける場合、図2を見て理解できるように、開口孔91は、かご3の壁32の角の位置に近づく。このため、かご室30内において開口孔91を目立たなくし、見栄えをよくすることができる。また、別例として、開口孔91の位置を乗客から見て手すりで隠れる位置に設定する場合も、かご室30内において開口孔91を目立たなくし、見栄えをよくすることができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0072】
たとえば、本発明は、扉を開く際の新規な手掛かりとなる部分を提供するものである。このことから、扉のかご室内の面に手すりが設けられる等、扉のかご室内の面上に手掛かりがある場合や、工具を引いて扉を開くことができる場合であっても、手掛かりとなる部分の選択肢が増えて作業者にとって利便性が向上するという利点がある。したがって、これらの場合であっても本発明を適用することができるのは言うまでもない。
【0073】
また、上記実施形態においては、ロック機構部60は、扉50の上部と下部とに設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ロック機構部は、扉の上部及び下部の少なくとも一方に設けられるものであってよい。また、ロック機構部を設ける箇所も扉の上部又は下部に限定されるものではない。
【0074】
また、上記実施形態においては、ロック機構部60及びロック解除操作部80は、入力位置変更部70を介して作動的に接続される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ロック機構部及びロック解除操作部は、直接接続されるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、係合部材83は、被ロック部86bに対するロック片の機能を備える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。係合部材によるロックはなく、ロック機構部によるロックのみで扉が枠に固定(ロック)されるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、回転軸82と係合部材83とは別体である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。回転軸と係合部材とは一体であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、回転軸82と操作部材84とは別体である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。回転軸と操作部材とは一体であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、係合部材83が入力部材72と係合して入力部材72にトリガを入力する作用部として機能する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、操作部の一部が作用部として機能するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態においては、扉50にスイッチキー89が設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。スイッチキーは、ロック解除操作部の操作部に設けられ、枠の対応する箇所に検出スイッチが設けられるようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、かご3は2機であり、非常口装置4は各かご3に1台ずつ設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。かごは3機以上であってもよく、この場合、両隣りにかごが配置されるその間のかごについては、左右の側壁にそれぞれ非常口装置を設けるようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、非常口装置4は、かご3の側壁34に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。非常口装置は、かごの後壁に設けられるものであってもよい。
【0082】
また、物理的に干渉するものでない限り、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に適用すること、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に係る技術要素と置換すること、以上に記載した技術要素同士を組み合わせること等は、当然に可能であり、これは、本発明が当然に意図するところである。
【符号の説明】
【0083】
1…エレベータ、2…昇降路、3…かご、3A…救出かご、3B…不具合かご、30…かご室、31…床、32…壁、33…前壁、34…側壁、35…後壁、36…出入口、37…扉、4…非常口装置、40…非常口、41…枠、42…縦枠、43…上枠、44…下枠、45…フラップ、46…足場板、50…扉、50a…一側端部、50b…他側端部、51…ヒンジ、60…ロック機構部、60A…上部ロック機構部、60B…下部ロック機構部、61…キャッチ(ロック装置)、62…本体、62a…受入凹部、62b…支持軸、62c…支持軸、63…ロック部材、63a…受入凹部、64…バネ、65…ストッパ部材、65a…入力部、66…バネ、67…ブラケット、68…被ロック部材、68a…基部、68b…被ロック部、70…入力位置変更部、71…ロッド、71a…上端部、71b…下端部、72…入力部材(入力部)、73…押え部材、74…ボルト、75…角ナット、80…ロック解除操作部、81…開口孔、82…回転軸(操作機構部)、83…係合部材(作用部、ロック片、操作機構部)、84…操作部材(操作部、操作機構部)、85…ブラケット、86…被ロック部材、86a…基部、86b…被ロック部、88…検出スイッチ、89…スイッチキー、90…ロック解除操作部(操作位置変更部)、91…開口孔、92…回転軸(操作機構部)、93…ロッド、94…操作部材(操作部、操作機構部)、95…ブラケット
【要約】
【課題】かご室内から非常口の扉を容易に開くことができるエレベータのかご及びエレベータを提供する。
【解決手段】扉側の構成であるロック部材63がロック状態からロック解除状態に状態変化し、ロック機構部60のロック解除操作が完了すると、ロック状態のときよりもロック部材63の受入凹部63aと扉との距離が長くなる。そして、この結果として、ロック部材63が受入凹部63a内の被ロック部68bから反力を受けて、扉がかご室内に少し開くこととなる。そこで、作業者は、かごの壁からかご室内に突出する扉の他側端部を手掛かりとして、かご室内から扉を容易に開くことができる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21