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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/474 20210101AFI20231130BHJP
   H01M 50/486 20210101ALI20231130BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20231130BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20231130BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/474
H01M50/486
H01M10/0587
H01M10/0566
H01G11/82
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019163269
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021044082
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】尾木 謙太
(72)【発明者】
【氏名】加古 智典
(72)【発明者】
【氏名】中井 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥太
(72)【発明者】
【氏名】下川 亮介
(72)【発明者】
【氏名】針長 右京
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-076476(JP,A)
【文献】特開2013-161755(JP,A)
【文献】特開2013-077465(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159581(WO,A1)
【文献】特開2012-252888(JP,A)
【文献】特開2017-027735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
H01M 10/0587
H01M 10/0566
H01G 11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されている帯状の電極本体、及び該電極本体と導通する片状の集電タブを有する電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記電極体と前記ケースとの間に配置される衝撃吸収部材と、
前記ケースに収容される電解液と、を備え
前記衝撃吸収部材は、
前記電極本体の巻回軸と直交する第一方向における前記電極本体の一方側において該電極本体と前記ケースとの間に配置される第一部位と、
前記第一方向における前記電極本体の他方側において該電極本体と前記ケースとの間に配置される第二部位と、を含み、
前記電解液を吸収することで膨潤する樹脂によって形成され、
前記第一方向において、前記第一部位の寸法は、前記第二部位の寸法より大きい、蓄電素子。
【請求項2】
前記電極本体は、前記電極本体の巻回軸と直交する第一方向の径である短径と前記巻回軸及び前記第一方向とそれぞれ直交する第二方向の径である長径とを有する扁平状に巻回されていると共に、前記第二方向に沿って延びる直線状部位を最内周に有し、
前記衝撃吸収部材は、前記第一方向における前記電極体と前記ケースとの間において前記直線状部位の前記第二方向の各端部位置より内側に配置されている、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記ケースは、第一方向に対向する一対の長壁部と、第一方向と直交する第二方向に対向する一対の短壁部と、によって構成される角筒形状の胴部を有し、
前記電極体は、前記ケース内においてそれぞれが第一方向及び第二方向のそれぞれと直交する第三方向に巻回軸を向けた状態で第一方向に複数並び、
前記第一部位は、第一方向の一方側における最も端の前記電極体の前記電極本体と前記ケースの一方の前記長壁部との間に配置され、
前記第二部位は、第一方向の他方側における最も端の前記電極体の前記電極本体と前記ケースの他方の前記長壁部との間に配置され、
前記衝撃吸収部材は、
前記ケースの一方の前記短壁部に沿って配置され且つ対応する前記第一部位と前記第二部位との端部同士を接続する第三部位と、
前記ケースの他方の前記短壁部に沿って配置され且つ対応する前記第一部位と前記第二部位との端部同士を接続する第四部位と、を含む、請求項1に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回型の電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、巻回型の二次電池用電極体を備えた二次電池が知られている(特許文献1参照)。この二次電池は、帯状正極及び帯状負極が、両者の間に帯状のセパレータが介在する状態で巻回された巻回型の二次電池用電極体と、二次電池用電極体を電解液と共に収容する電池ケースと、を備える。
【0003】
このような二次電池では、電池ケースに加速や衝撃、振動等が加わったときに、電池ケースに収容されている二次電池用電極体が該電池ケースに衝突して損傷する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-118098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本実施形態は、ケース内での電極体の損傷を抑えることができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の蓄電素子は、
巻回されている帯状の電極本体、及び該電極本体と導通する片状の集電タブを有する電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記電極体と前記ケースとの間に配置される衝撃吸収部材と、を備える。
【0007】
かかる構成によれば、電極体とケースとの間に衝撃吸収部材が配置されているため、ケースに加わる加速や衝撃、振動等によって電極体が衝撃吸収部材側に移動する又は移動しようとしたときに、電極体のケースへの衝突が防がれると共に電極体に加わる衝撃が衝撃吸収部材に吸収され、これにより、ケース内での電極体の損傷が抑えられる。
【0008】
前記蓄電素子では、
前記衝撃吸収部材は、
前記電極本体の巻回軸と直交する第一方向における前記電極本体の一方側において該電極本体と前記ケースとの間に配置される第一部位と、
前記第一方向における前記電極本体の他方側において該電極本体と前記ケースとの間に配置される第二部位と、を含み、
前記第一方向において、前記第一部位の寸法は、前記第二部位の寸法より大きくてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、第一部位と第二部位とが並ぶ方向(第一方向)に沿って電極体が移動する又は移動しようとする加速や衝撃、振動等がケースに加わったときの該電極体の損傷を抑えることができる。しかも、第一方向における第一部位の寸法が第二部位の寸法より大きいことで、電極体が第一方向の一方側(第二部位から第一部位に向かう方向)に移動する又は移動しようとする加速等がケースに加わったときに、第一方向の他方側(第一部位から第二部位に向かう方向)に移動する又は移動しようとするような加速等がケースに加わったときに比べ、電極体の損傷がより効果的に抑えられる。
【0010】
また、前記蓄電素子では、
前記電極本体は、前記電極本体の巻回軸と直交する第一方向の径である短径と前記巻回軸及び前記第一方向とそれぞれ直交する第二方向の径である長径とを有する扁平状に巻回されていると共に、前記第二方向に沿って延びる直線状部位を最内周に有し、
前記衝撃吸収部材は、前記第一方向における前記電極体と前記ケースとの間において前記直線状部位の前記第二方向の各端部位置より内側に配置されていてもよい。
【0011】
ケースに第一方向の力が加わって蓄電素子が圧壊等したときに、扁平な巻回型の電極体では、湾曲部(電極本体が湾曲した状態で積層されている部位)に荷重が加わり易い。このため、上記構成のように、衝撃吸収部材を、第一方向における電極体とケースとの間において直線状部位の第二方向の各端部位置より内側に配置することにより、前記圧壊等したときに衝撃吸収部材が電極体の平坦部(電極本体が第二方向に沿って直線状に延びた状態で積層されている部位)を押すことで前記圧壊等に起因する荷重が湾曲部に集中することが防がれ、これにより、電極体の損傷を抑えることができる。
【0012】
また、前記蓄電素子は、
前記ケースに収容される電解液を備え、
前記衝撃吸収部材は、前記電解液を吸収することで膨潤する樹脂によって形成されてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、膨潤した樹脂によって電極体への衝撃が吸収され、該電極体の損傷が抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本実施形態によれば、ケース内での電極体の損傷を抑えることができる蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III位置の断面図である。
図4図4は、前記蓄電素子が備える電極体の斜視図である。
図5図5は、前記電極体の構成を説明するための図である。
図6図6は、正極、負極、及びセパレータを説明するための図である。
図7図7は、図1のVII-VII位置の断面図である。
図8図8は、他実施形態に係る電極体を説明するための図である。
図9図9は、他実施形態に係る衝撃吸収部材を説明するための断面図である。
図10図10は、前記蓄電素子を備えた蓄電装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1図7を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0017】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0018】
蓄電素子は、図1図3に示すように、いわゆる巻回型の電極体2と、電極体2を収容するケース3と、電極体2とケース3との間に配置される衝撃吸収部材6と、を備える。また、蓄電素子1は、少なくとも一部を露出させた状態でケース3に取り付けられる又はケース3の少なくとも一部によって構成される外部端子4と、電極体2と外部端子4とを接続する集電体5等も、備える。本実施形態の蓄電素子1は、複数の電極体2を備え、外部端子4は、ケース3に取り付けられている。
【0019】
複数の電極体2のそれぞれは、図4図6に示すように、巻回されている帯状の電極本体21、及び該電極本体21と導通する少なくとも一つの片状の集電タブ22とをそれぞれ有する。この電極本体21は、導電層211と該導電層211に重ねられる活物質層212とを有する。尚、巻回されている電極本体21の最外周部位α(電極体2の外周面を構成する部位)においては、導電層211の外側面には、活物質層212が重ねられておらず、導電層211が露出している。
【0020】
本実施形態の各電極体2では、電極20が扁平な巻回体となるように巻回されている。即ち、各電極体2は、電極体2の巻回軸Cを挟んで対向する一対の平坦部2Fと、一対の平坦部2Fの端部同士を接続し且つ巻回軸Cを挟んで対向する一対の湾曲部2Cと、を有する。以下では、一対の湾曲部2Cが対向する方向を直交座標系のX軸方向(第二方向)とし、一対の平坦部2Fが対向する方向を直交座標系のY軸方向(第一方向)とし、巻回軸Cの延びる方向を直交座標系のZ軸方向とする。この場合、扁平な巻回型の電極体2において、Y軸方向の径(直径)が短径であり、X軸方向の径(直径)が長径である。
【0021】
電極20は、巻回されている帯状の電極本体21と、電極本体21の短尺方向の一方の端部(長辺)から延びる少なくとも一つの集電タブ22と、を有する。この電極20は、正極23と負極24とを含む。これら正極23と負極24との間をリチウムイオンが移動することにより、蓄電素子1が充放電する。正極23及び負極24の具体的な構成は、以下の通りである。
【0022】
正極23は、金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。金属箔231は、正極23の導電層211である帯状の箔本体2311と、箔本体2311の短尺方向の一端から延びる矩形の正極集電タブ2312と、を有する。本実施形態の金属箔231は、複数の正極集電タブ2312を有し、これら複数の正極集電タブ2312は、箔本体2311の前記短尺方向の一端において、電極本体21(後述の正極本体230)が巻回された状態のときにY軸方向に並ぶ位置にそれぞれ配置されている(図4参照)。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0023】
この正極23では、正極活物質層232が箔本体2311の両面に重ねられ、これら箔本体2311と、箔本体2311に重ねられた正極活物質層232と、が正極23の正極本体230(電極本体21)を構成している(図6参照)。
【0024】
詳しくは、正極本体230において、箔本体2311における巻回状態で外側を向く面(即ち、電極体2において巻回軸C側とは反対側を向く面:外側面)2311A上では、最外周部位αを除いた長手方向(巻回方向)の全域に正極活物質層232が重ねられている。また、正極本体230において、箔本体2311における巻回された状態で内側を向く面(即ち、電極体2において巻回軸C側を向く面:内側面)2311B上では、長手方向の全域に正極活物質層232が重ねられている。
【0025】
本実施形態の電極体2では、最外周に正極23が位置する。即ち、本実施形態の電極体2では、電極体2を構成する電極20の最外周部位αが正極23の最外周部位αによって構成される。このため、電極体2の外周面は、箔本体2311(導電層211)によって構成されている。
【0026】
以上の正極23では、電極20の電極本体21に相当する部位が正極本体230であり、電極20の集電タブ22に相当する部位が正極集電タブ2312である。
【0027】
負極24は、金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。金属箔241は、負極24の導電層211である帯状の箔本体2411と、箔本体2411の短尺方向の一端から延びる矩形の負極集電タブ2412と、を有する。本実施形態の金属箔241は、複数の負極集電タブ2412を有し、これら負極集電タブ2412は、箔本体2411の前記短尺方向の一端において、電極本体21(後述の負極本体240)が巻回された状態のときにY軸方向に並ぶ位置にそれぞれ配置されている(図4参照)。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0028】
この負極24では、負極活物質層242が箔本体2411の両面に重ねられ、これら箔本体2411と、箔本体2411に重ねられた負極活物質層242と、が負極24の負極本体240(電極本体21)を構成している(図6参照)。
【0029】
本実施形態の電極体2では、正極23の最内周部位βより負極24の最内周部位βの方が内側に配置されている。即ち、本実施形態の電極体2では、電極体2を構成する電極20の最内周部位βが負極24の最内周部位βによって構成されている。
【0030】
以上の負極24では、電極20の電極本体21に相当する部位が負極本体240であり、電極20の集電タブ22に相当する部位が負極集電タブ2412である。
【0031】
本実施形態の各電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回されている。即ち、本実施形態の各電極体2では、正極23、負極24、及びセパレータ25が積層状態である。
【0032】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。また、セパレータ25の幅方向(短手方向)の寸法は、正極23及び負極24の幅方向の寸法より大きい。
【0033】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、SiO粒子、Al粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態のセパレータ25の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0034】
図1図3に戻り、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0035】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶解させたものである。
【0036】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0037】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0038】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状である。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0039】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0040】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。本実施形態の蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接され、これにより、ケース3が形成される。
【0041】
このケース本体31と蓋板32とによって構成されるケース3には、複数の電極体2が、Y軸方向に並んだ状態で収容されている。具体的には、複数の電極体2は、隣り合う電極体2同士が巻回軸CをZ軸方向(同方向)に向け且つ互いの外周面(周面)が接するように収容されている。詳しくは、複数の電極体2は、各電極体2の平坦部2Fが長壁部313と平行となり、且つ、各電極体2の一対の湾曲部2Cのそれぞれが短壁部314と対向するように、衝撃吸収部材6に覆われた状態でケース3に収容されている(図2及び図3参照)。このとき、図7に示すように、各電極体2の巻回方向は同じ(図7に示す例では右巻き)であり、各電極体2は、該電極体2における電極20(本実施形態の例では、正極23)の巻終わり側の端がX軸方向の同じ側に位置するように、ケース3に収容されている。また、隣り合う電極体2同士は、正極23の金属箔231(詳しくは、正極23の最外周部位αの箔本体2311)同士を接触させている。これにより、隣り合う電極体2の正極23同士が導通している。
【0042】
複数の電極体2の各正極集電タブ2312は、互いに導通するように束ねられ、外部端子4と集電体5を介して接続されている。また、複数の電極体2の各負極集電タブ2412も、互いに導通するように束ねられ、外部端子4と集電体5を介して接続されている(図3参照)。本実施形態の正極集電タブ2312の束と負極集電タブ2412の束とは、溶接によって集電体5に接続されている。
【0043】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。このため、外部端子4は、導電性を有する部材によって形成されている。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成されている。
【0044】
衝撃吸収部材6は、図2図3、及び図7に示すように、ケース3(詳しくはケース本体31)と複数の電極体2との間に配置される。この衝撃吸収部材6は、Y軸方向における電極体2(電極本体21)の一方側(図7における上側)において該電極体2(電極本体21)とケース3との間に配置される第一部位61と、Y軸方向における電極体2(電極本体21)の他方側(図7における下側)において該電極体2(電極本体21)とケース3との間に配置される第二部位62と、を含む。尚、図3及び図7において、衝撃吸収部材6の各部位の厚さは、誇張して表現されている。
【0045】
具体的に、衝撃吸収部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材が折り曲げられることによって袋状(有底筒状)に形成され(図2参照)、複数の電極体2を内側に収容した状態でケース3内に配置される(図3及び図7参照)。この衝撃吸収部材6は、ケース本体31の内部において該ケース本体31に沿って配置される袋状(有底筒状)であり、ケース3の長壁部313に沿って配置される第一部位61及び第二部位62と、ケース3の短壁部314に沿って配置される第三部位63及び第四部位64と、ケース3の閉塞部311に沿って配置される第五部位65と、を有する。本実施形態の衝撃吸収部材6は、ポリエチレンやポリプロピレンの発泡体、スチレンゴム、エチレン―プロピレンゴム等によって形成されている。
【0046】
第一部位61は、Y軸方向に並ぶ複数の電極体2のうちの一方側(各電極体2における電極20(正極23)の巻終わり側の端がある側と反対側:図7の上側)の端にある電極体2と、ケース3の長壁部313と、の間において該長壁部313に沿って広がる矩形状の部位である。この第一部位61は、長壁部313と対応する形状、即ち、X軸方向に長尺な矩形状である。
【0047】
第二部位62は、Y軸方向に並ぶ複数の電極体2のうちの他方側(各電極体2における電極20(正極23)の巻終わり側の端がある側:図7の下側)の端にある電極体2と、ケース3の長壁部313と、の間において該長壁部313に沿って広がる矩形状の部位である。この第二部位62は、第一部位61と対応する形状であり、X軸方向に長尺な矩形状である。
【0048】
第三部位63は、X軸方向において各電極体2の一方側(図7の右側)の端と、ケース3の短壁部314と、の間において該短壁部314に沿って広がる矩形状の部位である。この第三部位63は、短壁部314と対応する形状、即ち、Z軸方向に長尺な矩形状である。尚、第三部位63の一部では、第一部位61から延びている部位と第二部位62から延びている部位とが重なっている。
【0049】
第四部位64は、X軸方向において各電極体2の他方側(図7の左側)の端と、ケース3の短壁部314と、の間において該短壁部314に沿って広がる矩形状の部位である。この第四部位64は、第三部位63と対応する形状であり、Z軸方向に長尺な矩形状である。尚、第四部位64の一部においても、第三部位63と同様に、第一部位61から延びている部位と第二部位62から延びている部位とが重なっている。
【0050】
第五部位65は、Z軸方向において各電極体2の一方側(図3の下側)の端と、ケース3の閉塞部311と、の間において該閉塞部311に沿って広がる矩形状の部位である。この第五部位65は、X軸方向に長尺な矩形状である。
【0051】
このように構成される衝撃吸収部材6において、第一部位61の厚さ寸法は、他の部位62、63、64、65の厚さ寸法より大きい。詳しくは、第一部位61のY軸方向の寸法(厚さ寸法)は、第二部位62のY軸方向の寸法(厚さ寸法)より大きい。また、第一部位61の厚さ寸法は、第三部位63のX軸方向の寸法(厚さ寸法)より大きい。また、第一部位61の厚さ寸法は、第四部位64のX軸方向の寸法(厚さ寸法)より大きい。また、第一部位61の厚さ寸法は、第五部位65のZ軸方向の寸法(厚さ寸法)より大きい。
【0052】
本実施形態の衝撃吸収部材6では、第一部位61の厚さが0.1mm~5mmであり、第二部位62の厚さが、0.05mm~3mmである。
【0053】
以上の蓄電素子1によれば、各電極体2とケース3との間に衝撃吸収部材6が配置されている。このため、ケース3に加わる加速や衝撃、振動等によって電極体2が衝撃吸収部材6側に移動する又は移動しようとしたときに、電極体2のケース3への衝突が防がれると共に電極体2に加わる衝撃が衝撃吸収部材6によって吸収される。これにより、ケース3内での電極体2の損傷が抑えられる。
【0054】
また、本実施形態の蓄電素子1では、衝撃吸収部材6が第一部位61と第二部位62とを含むため、Y軸方向に沿って電極体2が移動する又は移動しようとする加速や衝撃、振動等がケース3に加わったときの該電極体2の損傷を抑えることができる。また、衝撃吸収部材6が第三部位63と第四部位64とを含むため、X軸方向に沿って電極体2が移動する又は移動しようとする加速や衝撃、振動等がケース3に加わったときの該電極体2の損傷も抑えることができる。さらに、衝撃吸収部材6は、第五部位65を含むため、Y軸方向に沿って一方側(図3における下側)に電極体2が移動する又は移動しようとする加速や衝撃、振動等がケース3に加わったときの該電極体2の損傷も抑えることができる。
【0055】
しかも、第一部位61の厚さ寸法が第二部位62の厚さ寸法より大きいため、電極体2がY軸方向の一方側(第二部位62から第一部位61に向かう方向)に移動する又は移動しようとする加速等がケース3に加わったときに、Y軸方向の他方側(第一部位61から第二部位62に向かう方向)に移動する又は移動しようとするような加速等がケース3に加わったときに比べ、電極体2の損傷がより効果的に抑えられる。詳しくは、以下の通りである。
【0056】
本実施形態の蓄電素子1のような複数の巻回型の電極体2においては、巻回中心側の部位が外周側の部位(電極20における外周側端部)から離間しようとする(図7の矢印α参照:以下、単に、「電極体の開き」と称する。)。特に、扁平状の巻回電極体では、この電極体2の開きが生じ易くなる。このような状態において、各電極体2がY軸方向の一方側(第二部位62から第一部位61に向かう方向)に移動する又は移動しようとする加速等がケース3に加わった場合、複数の電極体2のそれぞれにおいて電極体2の開きが生じるため、Y軸方向の最も一方側に配置された電極体2に大きな力(各電極体2が開こうとする力が累積されたもの)が加わる。しかし、本実施形態の蓄電素子1のように、厚さ寸法の十分大きな第一部位61(衝撃吸収部材6)がケース3(長壁部313)との間に配置されていることで、前記大きな力が吸収され、前記Y軸方向の最も一方側に配置された電極体2の前記大きな力に起因する損傷が効果的に抑えられる。
【0057】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0058】
上記実施形態の蓄電素子1は、複数の電極体2を備えるが、この構成に限定されない。蓄電素子1は、一つの電極体2を備える構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、複数の電極体2のそれぞれが、巻回軸Cがケース3の蓋板32とケース本体31の閉塞部311とが対向する方向(Z軸方向)と一致するように配置されているが、この構成に限定されない。複数の電極体2のそれぞれが、図8に示すように、巻回軸Cがケース本体31の一対の短壁部314が対向する方向(X軸方向)と一致するように配置されてもよい。
【0060】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、衝撃吸収部材6は、袋状であるが、この構成に限定されない。衝撃吸収部材6は、例えば、第一部位61及び第二部位62のみで構成されてもよく、第一部位61、第二部位62、及び第五部位65によって構成されてもよい。即ち、衝撃吸収部材6は、少なくとも第一部位61と第二部位62とを有していればよい。尚、衝撃吸収部材6が第一部位61と第二部位62のみで構成される場合には、第一部位61と第二部位62とは、別体として構成される。
【0061】
また、第一部位61及び第二部位62は、図9に示すように、Y軸方向における電極体2とケース3(長壁部313)の間において、電極20の内周側端部であって電極体2の最内周において直線状に延びる内周側端部(直線状部位)20AのX軸方向の各端部位置P1、P2より内側(X軸方向の内側)に配置されてもよい。図9に示す例では、第一部位61及び第二部位62は、正極23の正極内周側端部23Aであって電極体2の最内周において直線状に延びる正極内周側端部23AのX軸方向の各端部位置P1、P2より内側(X軸方向の内側)に配置されている。より詳しくは、正極内周側端部23Aにおける正極活物質層232が配置されている部位のX軸方向の各端部位置(図9に示す例では、正極内周側端部23Aの各端部位置と同じ位置)P1、P2より内側に配置されている。尚、図9において、第一部位61と第二部位62との厚さは、誇張して表現されている。
【0062】
ケース3にY軸方向の力が加わって蓄電素子1が圧壊等したときに、扁平な巻回型の電極体2では、湾曲部2Cに荷重が加わり易い。このため、上記構成のように、衝撃吸収部材6(第一部位61及び第二部位62)を、Y軸方向における電極体2とケース3との間において内周側端部20AのX軸方向の各端部位置P1、P2より内側に配置することにより、前記圧壊等したときに衝撃吸収部材6が電極体2の平坦部2Fを押すことで前記圧壊等に起因する荷重が湾曲部2Cに集中することが防がれる。これにより、電極体2の損傷を抑えることができる。
【0063】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、衝撃吸収部材6は、ポリエチレンやポリプロピレンの発泡体、スチレンゴム、エチレン―プロピレンゴム等によって構成されているが、この構成に限定されない。衝撃吸収部材6は、ポリフッ化ビニリデンや、ポリメタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルセルロース等のような電解液を吸収することで膨潤する樹脂による単一組成もしくはこれらを組み合わせた組成で形成されていてもよい。また、上記の電解液を吸収することで膨潤する樹脂と、膨潤しない樹脂(例えば、ポリプロピレン等)とを複合させたものでもよい。これらの構成によれば、膨潤した樹脂によって電極体2への衝撃が吸収され、該電極体2の損傷が抑えられる。また、この構成の場合、電解液を吸収する前の衝撃吸収部材6の体積は、電解液を吸収した後の衝撃吸収部材6の体積より小さいため、蓄電素子1の製造段階において、電極体2と衝撃吸収部材6とをケース3(ケース本体31)内に挿入する際に挿入し易い。そして、電極体2と衝撃吸収部材6とがケース3に収容された後、該ケース3内に電解液が供給されることで、衝撃吸収部材6が電解液を吸収して膨潤し(膨らみ)、これにより、ケース3内での電極体2及び衝撃吸収部材6が位置ずれし難くなる。
【0064】
上記実施形態の集電タブ22は、箔本体2311と一体であるが、この構成に限定されない。箔本体2311と集電タブ22とが別体であってもよい。この場合、集電タブ22は、電極本体21と導通していれば、電極本体21との接続部位の具体的な構成は、限定されない。
【0065】
また、上記実施形態の電極20は、複数の集電タブ22を有するが、この構成に限定されない。電極20は、一つの集電タブ22を有する構成でもよい。また、集電タブ22は、箔本体2311の短手方向の一端から延びているが、箔本体2311の長手方向の端から延びていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0067】
蓄電素子(例えば電池)1は、図10に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0068】
1…蓄電素子、2…電極体、2C…湾曲部、2F…平坦部、20…電極、20A…内周側端部、21…電極本体、211…導電層、212…活物質層、22…集電タブ、23…正極、23A…正極内周側端部、230…正極本体、231…金属箔、2311…箔本体、2312…正極集電タブ、232…正極活物質層、24…負極、240…負極本体、241…金属箔、2411…箔本体、2412…負極集電タブ、242…負極活物質層、25…セパレータ、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、5…集電体、6…衝撃吸収部材、61…第一部位、62…第二部位、63…第三部位、64…第四部位、65…第五部位、11…蓄電装置、12…バスバ部材、C…巻回軸、P1、P2…内周側端部(直線状部位)の端部位置、α…電極の最外周部位、α…正極の最外周部位、β…電極の最内周部位、β…正極の最内周部位、β…負極の最内周部位
図1
図2
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図10