(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/264 20210101AFI20231130BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20231130BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M50/264
H01M50/262 S
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2019186884
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西村 洋介
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-023302(JP,A)
【文献】特開2016-031806(JP,A)
【文献】特開2016-031898(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065197(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203859171(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
前記蓄電素子と隣り合う終端部材と、
前記終端部材に固定される拘束部材と、を備え、
前記拘束部材は、
前記蓄電素子に沿い且つ該蓄電素子と前記終端部材との並び方向に延びる第一部位と、
前記終端部材に沿って前記並び方向と交差する方向に延び且つ前記終端部材に固定される第二部位と、
前記第一部位と前記第二部位との端部同士を接続する接続部と、を有し、
前記接続部は、
外側に向けて凸となる二つの屈曲部又は湾曲部と、前記二つの屈曲部又は湾曲部の間に配置され且つ内側に向けて凸となる屈曲部又は湾曲部と、を有し、
前記内側に向けて凸となる屈曲部又は湾曲部は、前記接続部において、前記第二部位より前記第一部位に近い位置に配置されている、蓄電装置。
【請求項2】
前記拘束部材は、前記第一部位と前記第二部位と前記接続部とに連接し且つ前記蓄電素子に沿って配置される第三部位を有する、請求項
1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
蓄電素子と、
前記蓄電素子と隣り合う終端部材と、
前記終端部材に固定される拘束部材と、を備え、
前記拘束部材は、
前記蓄電素子に沿い且つ該蓄電素子と前記終端部材との並び方向に延びる第一部位と、
前記終端部材に沿って前記並び方向と交差する方向に延び且つ前記終端部材に固定される第二部位と、
前記第一部位と前記第二部位との端部同士を接続する接続部と、を有し、
前記接続部は、複数の屈曲部又は湾曲部を有
し、
前記拘束部材は、前記第一部位と前記第二部位と前記接続部とに連接し且つ前記蓄電素子に沿って配置される第三部位を有する、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を拘束する拘束部材を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の単電池を拘束する拘束部材を備えた電池パックが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この電池パックは、配列方向に並ぶ複数の単電池と、複数の単電池の配列方向の両端に配置される一対のエンドプレートと、単電池の配列方向に伸びる拘束部材と、を備える。この電池パックでは、拘束部材の両端部が折り曲げられた状態で一対のエンドプレートのそれぞれに固定されることで、複数の単電池が拘束されている。
【0003】
以上の電池パックでは、使用によって単電池が膨張等したときに、拘束部材の端部の折り曲げられた部位に応力集中が生じ、これにより、拘束部材が塑性変形し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本実施形態は、拘束部材の塑性変形を抑えることができる蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の蓄電装置は、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と隣り合う終端部材と、
前記終端部材に固定される拘束部材と、を備え、
前記拘束部材は、
前記蓄電素子に沿い且つ該蓄電素子と前記終端部材との並び方向に延びる第一部位と、
前記終端部材に沿って前記並び方向と交差する方向に延び且つ前記終端部材に固定される第二部位と、
前記第一部位と前記第二部位との端部同士を接続する接続部と、を有し、
前記接続部は、複数の屈曲部又は湾曲部を有する。
【0007】
かかる構成によれば、延びる方向がそれぞれ異なる第一部位と第二部位とを接続する接続部が、複数の屈曲部又は湾曲部を有することで、接続部に応力が発生したときに該応力が分散され、これにより、蓄電素子から終端部材側に向かう方向の力が第二部位に対して加わったときの拘束部材の塑性変形が抑えられる。
【0008】
前記蓄電装置では、
前記接続部は、外側に向けて凸となる二つの屈曲部又は湾曲部と、前記二つの屈曲部又は湾曲部の間に配置され且つ内側に向けて凸となる屈曲部又は逆湾曲部と、を有してもよい。
【0009】
このように、外側に凸となる二つの屈曲部又は湾曲部の間に内側に向けて凸となる屈曲部又は湾曲部が配置される、即ち、凸となる方向が逆の屈曲部又は湾曲部が交互に配置されることで、該部位においてバネ性が生じ、これにより、蓄電素子から終端部材側に向かう方向の力が第二部位に対して加わったときに接続部において応力の一部が吸収され、その結果、拘束部材の塑性変形が効果的に抑えられる。
【0010】
この場合、
前記内側に向けて凸となる屈曲部又は湾曲部は、前記接続部において、前記第二部位より前記第一部位に近い位置に配置されてもよい。
【0011】
このように、バネ性が生じた部位が接続部における第一部位に近い位置に配置されることで、蓄電素子から終端部材側に向かう方向の力が第二部位に加わったときに該部位が前記並び方向に伸び易くなるため、前記力が加わったときの応力の吸収がより効果的に行われる。これにより、拘束部材の塑性変形がより効果的に抑えられる。
【0012】
前記蓄電装置では、
前記接続部は、前記第一部位から前記第二部位に向かう方向に曲率の異なる部位を複数有してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、接続部に応力が発生したときに該応力が分散され、これにより、蓄電素子から終端部材側に向かう方向の力が第二部位に対して加わったときの拘束部材の塑性変形が抑えられる。
【0014】
また、前記蓄電装置では、
前記拘束部材は、前記第一部位と前記第二部位と前記接続部とに連接し且つ前記蓄電素子に沿って配置される第三部位を有してもよい。
【0015】
このように、異なる方向に延びる第一部位と第二部位とが接続部によって接続された状態でこれら第一部位、第二部位、及び接続部に第三部位が連接することで、拘束部材の剛性が向上し、これにより、拘束部材の塑性変形がより確実に抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本実施形態によれば、拘束部材の塑性変形を抑えることができる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、構成を一部省略した前記蓄電装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、拘束部材における接続部の形状を説明するための部分拡大図である。
【
図4】
図4は、接続部のバネ性を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、実施例において応力の測定結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例において逆湾曲部の位置を変化させる際の基準となる位置を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例において応力を測定した位置を示す図である。
【
図8】
図8は、他実施形態の接続部を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図4を参照しつつ説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0019】
蓄電装置は、
図1及び
図2に示すように、蓄電素子2と、蓄電素子2と隣り合う終端部材40及び該終端部材40に固定される拘束部材44を含む保持部材4と、を備える。また、蓄電装置1は、蓄電素子2と隣り合う隣接部材3と、蓄電素子2と保持部材4との間に配置されるインシュレータ5と、異なる蓄電素子2同士又は外部の機器等と導通可能に接続するバスバ6と、を備える。本実施形態の蓄電装置1は、複数の蓄電素子2と、複数の隣接部材3と、を備え、保持部材4は、複数の蓄電素子2と複数の隣接部材3とをひとまとめに保持する。
【0020】
複数の蓄電素子2のそれぞれは、一次電池、二次電池、キャパシタ等である。本実施形態の蓄電素子2は、充放電可能な非水電解質二次電池である。より具体的には、蓄電素子2は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この蓄電素子2は、いわゆる角型のリチウムイオン二次電池である。
【0021】
具体的に、各蓄電素子2は、電極体と、電極体を電解液と共に収容するケース21と、少なくとも一部がケース21の外側に露出する外部端子22と、を有する。
【0022】
ケース21は、開口を有するケース本体211と、ケース本体211の開口を塞ぐ(閉じる)板状の蓋板216と、を有する。本実施形態のケース本体211は、有底角筒状であり、ケース21は、扁平な直方体形状である。ケース本体211は、矩形板状の閉塞部212と、閉塞部212の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)213と、を備える。胴部213は、偏平な角筒形状を有する。この胴部213は、閉塞部212の周縁における長辺から延びる一対の長壁部214と、閉塞部212の周縁における短辺から延びる一対の短壁部215とを有する。短壁部215が一対の長壁部214の対応する端部同士をそれぞれ接続することによって、扁平な角筒状の胴部213が形成される。蓋板216は、ケース本体211の開口を塞ぐ矩形板状の部材である。この蓋板216には、一対の外部端子22が配置されている。
【0023】
本実施形態の蓄電装置1において、複数の蓄電素子2は、ケース21(ケース本体211)の長壁部214同士を互いに対向させた状態で並んでいる。
【0024】
以下では、複数の蓄電素子2が並ぶ方向を直交座標系のX軸方向とし、ケース本体211の短壁部215が対向する方向を直交座標系のY軸方向とし、閉塞部212と蓋板216とが対向する方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0025】
隣接部材3は、X軸方向に並ぶ二つの蓄電素子2の間、又は、X軸方向の最も端の蓄電素子2と該蓄電素子2に対してX軸方向に並ぶ部材(本実施形態の例では、保持部材4に含まれる終端部材40)との間に配置される。この隣接部材3は、樹脂等の絶縁性を有する部材によって構成される。また、隣接部材3は、隣接する蓄電素子2との間に該蓄電素子2の温度調整用の流体が流通可能な流路を形成する。
【0026】
保持部材4は、複数の蓄電素子2と複数の隣接部材3との周囲を囲むことにより、これら複数の蓄電素子2及び複数の隣接部材3をひとまとめに保持する。この保持部材4は、金属等の導電性を有する部材によって構成されている。具体的に、保持部材4は、X軸方向において複数の蓄電素子2の両側に配置される一対の終端部材40と、終端部材40におけるY軸方向の端部同士を接続する拘束部材44と、を有する。また、保持部材4は、終端部材40と拘束部材44とを固定(連結)する固定部材45を有する。本実施形態の固定部材45は、ボルトである。本実施形態の蓄電装置1では、一対の拘束部材44が、一対の終端部材40におけるY軸方向の両側の端部同士を接続している。
【0027】
一対の終端部材40のそれぞれは、X軸方向の端に配置された蓄電素子2との間に隣接部材3を挟み込むように配置される。具体的に、各終端部材40は、X軸方向と直交する面(Y軸方向及びZ軸方向を含む面:Y-Z面)方向に沿って広がる。この終端部材40は、X軸方向から見て蓄電素子2と対応した矩形状であり、X軸方向に貫通する穴410をY軸方向の両端部に有する。この穴410には、終端部材40と拘束部材44とを固定(連結)するための固定部材45(本実施形態の例では、ボルト)が挿通される。本実施形態の終端部材40では、Z軸方向に間隔をあけた二つの穴410が、Y軸方向の一方側の端部と他方側の端部とのそれぞれに配置されている。
【0028】
以上のように構成される一対の終端部材40のそれぞれは、X軸方向に並ぶ複数の蓄電素子2の両外側において、隣接部材3に当接した状態で該隣接部材3を蓄電素子2(詳しくは、X軸方向の最も外側に配置される蓄電素子2)との間に挟み込むように配置されている。
【0029】
一対の拘束部材44は、Y軸方向において複数の蓄電素子2の両側に配置される。これら一対の拘束部材44のそれぞれは、
図3にも示すように、蓄電素子2に沿い且つX軸方向(蓄電素子2と終端部材40との並び方向)に延びる第一部位441と、終端部材40に沿って前記並び方向と交差する方向(本実施形態の例では、Y軸方向)に延び且つ終端部材40に固定される第二部位442と、第一部位441と第二部位442との端部同士を接続する第一接続部(接続部)443と、を有する。一対の拘束部材44のそれぞれは、第一部位441と第二部位442と第一接続部443とに連接し且つ蓄電素子2に沿って配置される拘束部材本体(第三部位)440を有する。詳しくは、以下の通りである。
【0030】
各拘束部材44は、複数の蓄電素子2のY軸方向の外側においてこれら複数の蓄電素子2のそれぞれに沿ってX軸方向に延びる拘束部材本体440と、各蓄電素子2の蓋板216に沿って拘束部材本体440からY軸方向に延びると共にX軸方向に延びる第一部位441と、各終端部材40のX軸方向の外側面に沿って拘束部材本体440からY軸方向に延びると共にZ軸方向に延びる一対の第二部位442と、第一部位441のX軸方向の端部と第二部位442のZ軸方向の端部とを接続し且つ拘束部材本体440からY軸方向に延びる第一接続部443と、を有する。また、各拘束部材44は、各蓄電素子2の閉塞部212に沿って拘束部材本体440からY軸方向に延びると共にX軸方向に延びる第四部位444と、第四部位444のX軸方向の端部と第二部位442のZ軸方向の端部とを接続し且つ拘束部材本体440からY軸方向に延びる第二接続部445と、を有する。
【0031】
拘束部材本体440は、X-Z面(X軸方向及びZ軸方向を含む面)に沿って広がるX軸方向に長尺な矩形板状の部位であり、X軸方向に並ぶ複数の貫通孔440Aを有する。具体的に、この拘束部材本体440は、各蓄電素子2の短壁部215におけるZ軸方向の他方側(蓋板216側)の端部と一方側(閉塞部212側)の端部とに沿ってX軸方向にそれぞれ延びる一対の第一板状部4401と、それぞれがZ軸方向に延び且つ一対の第一板状部4401の端部同士を接続する一対の第二板状部4402と、一対の第二板状部4402の間に配置され且つそれぞれがZ軸方向に延びて一対の第一板状部4401同士を接続する少なくとも一つの第三板状部4403と、を有する。
【0032】
第一部位441は、X-Y面に沿い且つX軸方向に長尺な帯板状の部位である。より詳しくは、第一部位441は、各蓄電素子2の蓋板216に沿ってX軸方向に延び且つX軸方向の各位置におけるY軸方向の寸法(幅)が一定の帯板状の部位である。
【0033】
一対の第二部位442のそれぞれは、終端部材40のY軸方向の端部に連結される部位である。具体的に、各第二部位442は、Y-Z面に沿って広がる板状の部位である。各第二部位442は、終端部材40のY軸方向の端部に設けられた穴410と対応する位置(X軸方向から見て重なる位置)に、穴442aを有する。本実施形態の終端部材40では、Y軸方向の各端部にZ軸方向に間隔をあけて配置される二つの穴410が設けられているため、各第二部位442にも、Z軸方向に間隔をあけた二つの穴442aが設けられている。
【0034】
第一接続部443は、複数の屈曲部又は複数の湾曲部を有する。本実施形態の第一接続部443は、第一部位441から第二部位442に向かう方向において曲率の異なる部位4431、4432、4433を複数有する(
図3参照)。この第一接続部443は、第一部位441と第二部位442との間に挟まれている。即ち、拘束部材本体440において、第一部位441と第一接続部443と第二部位442とは、連続している。
【0035】
具体的に、第一接続部443は、外側に向けて凸となる曲率の二つの湾曲部(第一湾曲部4431、第二湾曲部4432)と、二つの湾曲部4431、4432の間に配置され且つ内側に向けて凸となる曲率の第三湾曲部(逆湾曲部)4433と、を有する。即ち、第一接続部443は、Y軸方向から見て、蓄電素子2が配置される側の領域Iに対して外側に凸となる第一湾曲部4431及び第二湾曲部4432と、前記領域Iに対して内側に凸となる(外側に凹となる)第三湾曲部4433と、を有する。この第三湾曲部4433は、第一接続部443において、第二部位442より第一部位441に近い位置に配置されている。これにより、第一湾曲部4431の円弧方向の長さが、第二湾曲部4432より円弧方向の長さより小さくなっている。また、第一湾曲部4431の曲率と第二湾曲部4432の曲率とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0036】
第四部位444は、X-Y面に沿い且つX軸方向に長尺な帯板状の部位である。より詳しくは、第四部位444は、各蓄電素子2の閉塞部212に沿ってX軸方向に延び且つX軸方向の各位置におけるY軸方向の寸法(幅)が一定の帯板状の部位である。
【0037】
第二接続部445は、一つの湾曲部によって構成され、第四部位444と第二部位442との間に挟まれている。即ち、拘束部材本体440において、第四部位444と第二接続部445と第二部位442とは、連続している。
【0038】
インシュレータ5は、絶縁性を有し、拘束部材44と複数の蓄電素子2との間に配置される。このインシュレータ5は、拘束部材44における少なくとも複数の蓄電素子2と対向する領域を覆う。具体的に、本実施形態のインシュレータ5は、拘束部材本体440における各蓄電素子2(短壁部215)を向いた面、第一部位441における各蓄電素子2(蓋板216)を向いた面、及び、第四部位444における各蓄電素子2(閉塞部212)を向いた面、を覆う。これにより、インシュレータ5は、拘束部材44と、複数の蓄電素子2との間を絶縁する。
【0039】
バスバ6は、金属等の導電性を有する板状の部材である。このバスバ6は、蓄電素子2の外部端子22同士、又は、蓄電素子2の外部端子22と外部機器等とを導通させる。また、バスバ6は、蓄電装置1において複数設けられる。本実施形態の複数のバスバ6は、蓄電装置1に含まれる複数の蓄電素子2の全てを直列に接続する(導通させる)。
【0040】
以上の蓄電装置1によれば、延びる方向がそれぞれ異なる第一部位441と第二部位442との端部同士を接続する第一接続部443が、曲率の異なる部位4431、4432、4433を複数有することで、第一接続部443に応力が発生したときに該応力が分散される。即ち、第一接続部443が応力集中の生じ易い部位(曲率の異なる部位4431、4432、4433)を複数有することで、応力が分散されて複数ヶ所で応力集中が生じるため、最も大きな応力が生じる部位での該応力の値を、一か所で応力集中が生じる構成における該部位(応力集中が生じる部位)での応力の値より小さくできる。これにより、蓄電素子2等から終端部材40側に向かう方向の力が第二部位442に対して加わったときの拘束部材44の塑性変形が抑えられる。即ち、本実施形態の蓄電装置1によれば、蓄電素子2等から拘束部材44の第二部位442に力が加わって該拘束部材44(詳しくは第一接続部443及びその周辺)に変形が生じても、第一接続部443において応力が分散されて各部位4431、4432、4433での応力が抑えられることで前記変形が弾性変形の範囲内で収まるため、拘束部材44の塑性変形が抑えられる。
【0041】
また、本実施形態の蓄電装置1では、第一接続部443が、二つの湾曲部4431、4432と、これら二つの湾曲部4431、4432の間に配置される第三湾曲部4433と、を有している。このように、第一接続部443を二つの湾曲部(第一湾曲部4431、第二湾曲部4432)間に第三湾曲部4433が配置される、即ち、凸となる方向が逆の湾曲部が交互に配置される構成とすることで、該部位においてバネ性が生じる(
図4(a)及び
図4(b)参照)。これにより、蓄電素子2等から終端部材40側に向かう方向の力Fが第二部位442に対して加わったときに第一接続部443が伸びて応力の一部を吸収し、その結果、拘束部材44の塑性変形が効果的に抑えられる。尚、
図4(a)及び
図4(b)では、バネ性による伸びが分かりやすいように、湾曲や伸びを強調して表現している。
【0042】
また、本実施形態の蓄電装置1では、第一接続部443において、第三湾曲部4433が、第二部位442より第一部位441に近い位置に配置されている。即ち、第三湾曲部4433は、第一接続部443において、第一部位441の端部と第二部位442の端部との中間位置より第一部位441側に寄った位置(オフセットした位置)に配置されている。このように、バネ性の生じている部位が第一接続部443における第一部位441に近い位置に配置されることで、蓄電素子2等から終端部材40側に向かう方向の力Fが第二部位442に加わったときに該部位がX軸方向に伸び易くなるため、前記力Fが加わったときの応力の吸収がより効果的に行われる。これにより、拘束部材44の塑性変形がより効果的に抑えられる。
【0043】
また、本実施形態の蓄電装置1では、拘束部材44において、板状の拘束部材本体440が、第一部位441と第二部位442と第一接続部443とに連接し且つ各蓄電素子2に沿って配置されている。このように、異なる方向に延びる第一部位441と第二部位442とが第一接続部443によって接続された状態でこれら第一部位441、第二部位442、及び第一接続部443に板状の拘束部材本体440が連接することで、拘束部材44の剛性が向上する。これにより、拘束部材44の塑性変形がより確実に抑えられる。
【実施例】
【0044】
ここで、上記実施形態の拘束部材44の第一接続部443において、第三湾曲部4433の位置を第一部位441側に寄せたことによる効果を確認するために、シミュレーションを行った。その結果を
図5に示す。尚、このシミュレーションにおいては、
図6に示すように、第一部位441の端部と第二部位442の端部との中間位置を基準位置α(0mm)とし、第三湾曲部4433の中心C1を第一部位441側に移動させた距離をプラスで表し、第二部位442側に移動させた距離をマイナスで表す。ここで、第三湾曲部4433の中心C1の移動は、第一部位441の端部と第二部位442の端部とを結ぶ仮想線V1と平行な方向に行う。また、第三湾曲部4433の中心C1が移動方向における各位置のときに、第二部位442にX軸方向の力が加わった状態での第一湾曲部4431、第三湾曲部4433、第二湾曲部4432の三か所(A点、B点、C点:
図7参照)で生じた応力をそれぞれ求めている。
【0045】
この結果から判るように、第三湾曲部4433の中心C1が第一部位441側に寄った位置に配置されたときの方が、第三湾曲部4433の中心C1が基準位置αや第二部位442側に寄った位置に配置されたときよりも、三点A、B、Cのうちの最も応力の大きな点での値(発生した応力の値)が小さくなる。これにより、第一接続部443において第三湾曲部4433が第二部位442より第一部位441に近い位置に配置された方が、第一接続部443に生じる応力が抑えられることが確認できた。
【0046】
尚、本発明の蓄電装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0047】
上記実施形態の蓄電装置1では、第一接続部443において第三湾曲部4433が第一部位441側に寄った位置に配置されているが、この構成に限定されない。第三湾曲部4433は、第一接続部443において第一部位441の端部と第二部位442の端部との中間位置(
図6における基準位置α)や、第二部位442側に寄った位置でもよい。第三湾曲部4433が、第一接続部443のいずれの位置に配置されていても、湾曲部4431又は4432と第三湾曲部4433とが並んで配置されることでバネ性が生じるため、第一接続部443に生じる応力の一部が吸収され、これにより、該第一接続部443において発生する応力が抑えられる。
【0048】
また、上記実施形態の第一接続部443は、第三湾曲部4433を有しているが、この構成に限定されない。例えば、
図8に示すように、第一接続部443は、第三湾曲部4433を備えていない構成でもよい。即ち、第一接続部443は、曲率の異なる(曲率が0を含む)複数の部位(例えば、
図8における、符号4434、4435、4436で示す部位)を有していれば、該第一接続部443に生じる応力を分散させることができる。
【0049】
また、上記実施形態の第一接続部443では、曲率の異なる部位(曲率がマイナスの第三湾曲部も含む)4431、4432、4433の数が三つであるが、この構成に限定されない。第一接続部443は、曲率の異なる部位を二つ有してもよく、曲率の異なる部位を四つ以上有してもよい。この曲率の異なる部位には、
図8に示すように、曲率がゼロの部位(真っ直ぐな部位)4435が含まれていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態の第一接続部443は、曲率の異なる部位4431、4432、4433を複数有しているが、この構成に限定されない。第一接続部443は、曲率の同じ湾曲部を有していてもよい。即ち、第一接続部443は、複数の屈曲部又は湾曲部を有していればよい。また、これら複数の屈曲部又は湾曲部は、第一接続部443において、第一部位441からから第二部位442に向けて連続又は断続に並んでいる。尚、第一接続部443は、屈曲部のみを有する構成又は湾曲部のみ有する構成であってもよく、屈曲部と湾曲部とが混在する構成であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態の拘束部材44は、第一部位441、第二部位442、第一接続部443に連接する拘束部材本体440を有しているが、この構成に限定されない。拘束部材44は、拘束部材本体440のない構成、即ち、第一部位441と第二部位442と第一接続部443とによって構成されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態の拘束部材44では、第一部位441が、各蓄電素子2の蓋板216に沿ってX軸方向に延びる板状であり、第二部位442が、終端部材40に沿ってZ軸方向に延びる板状であり、第一接続部443が、第一部位441のX軸方向の端部と第二部位442のZ軸方向の端部とを接続するが、この構成に限定されない。例えば、拘束部材44において、第一部位441が、各蓄電素子2の短壁部215に沿ってX軸方向に延びる板状であり、第二部位442が、終端部材40に沿ってY軸方向に延びる板状であり、第一接続部443が、第一部位441のX軸方向の端部と第二部位442のY軸方向の端部とを接続する構成であってもよい。かかる構成によっても、第一接続部443が曲率の異なる部位を複数有することで、第一接続部443に応力が発生したときに該応力が分散される。
【0053】
また、上記実施形態の拘束部材44では、第二接続部445は、一つの湾曲部を有しているが、この構成に限定されない。第二接続部445は、第一接続部443と同様の構成でもよい。即ち、第二接続部445は、複数の屈曲部又は湾曲部を有していてもよい。また、拘束部材44において、第一接続部443が一つの湾曲部を有し、第二接続部445が複数の屈曲部又は湾曲部を有していてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…蓄電装置、2…蓄電素子、21…ケース、211…ケース本体、212…閉塞部、213…胴部、214…長壁部、215…短壁部、216…蓋板、22…外部端子、3…隣接部材、4…保持部材、40…終端部材、410…穴、44…拘束部材、440…拘束部材本体、4401…第一板状部、4402…第二板状部、4403…第三板状部、440A…貫通孔、441…第一部位、442…第二部位、442a…穴、443…第一接続部(接続部)、4431…第一湾曲部(曲率の異なる部位)、4432…第二湾曲部(曲率の異なる部位)、4433…第三湾曲部(曲率の異なる部位)、4434、4435、44336…曲率の異なる部位、444…第四部位、445…第二接続部、45…固定部材、5…インシュレータ、6…バスバ、A点、B点、C点…応力の計測位置、C1…第三湾曲部の中心、F…力、I…蓄電素子が配置される側の領域、V1…仮想線、α…基準位置