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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】フィラメントランプ
(51)【国際特許分類】
   H01K 1/32 20060101AFI20231130BHJP
   H01K 1/28 20060101ALI20231130BHJP
   H05B 3/44 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01K1/32 A
H01K1/28
H01K1/32 C
H05B3/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020000957
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111468
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 忠和
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 貴文
(72)【発明者】
【氏名】古江 悟
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177027(JP,A)
【文献】特開昭59-058752(JP,A)
【文献】特開昭52-074635(JP,A)
【文献】特開昭60-054159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0316268(US,A1)
【文献】特開2006-302719(JP,A)
【文献】米国特許第05536991(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01K 1/32
H01K 1/28
H05H 3/00
H05B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に対して透過性を示す筒状の発光管と、
前記発光管内において、前記発光管の管軸方向に沿って延伸するフィラメントと、
前記発光管の前記管軸方向に延伸し、前記発光管の前記管軸方向と直交する平面で切断したときの断面形状が、前記発光管の内壁面の周方向に関し、第一端部と第二端部とを有するように形成された反射膜とを備え、
前記反射膜は、前記発光管の前記周方向に関し、前記第一端部と前記第二端部における膜厚が、前記第一端部と前記第二端部の間に位置する中央部における膜厚よりも薄く、かつ、シリカを主たる成分とする粒子が凝集されて形成されており、前記粒子のうち、シリカ粒子の平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下であることを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
前記反射膜は、前記第一端部及び前記第二端部における膜厚が実質的に0であることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項3】
前記反射膜は、前記中央部から前記第一端部及び前記第二端部それぞれに向かって膜厚が徐々に薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィラメントランプ。
【請求項4】
前記反射膜は、前記発光管の前記管軸方向に関し、前記発光管の一端部から他端部にわたって形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフィラメントランプ。
【請求項5】
前記発光管の前記内壁面には、前記発光管の管軸方向に関し、前記反射膜の少なくとも一方の端部に、前記反射膜と当接するように保護部が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフィラメントランプ。
【請求項6】
前記発光管は、前記管軸方向と直交する面で切断した時の断面が円形状、又は楕円形状を呈することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフィラメントランプ。
【請求項7】
前記反射膜は、前記管軸方向に見たときに、前記発光管の内壁面の周方向に関し、管軸を中心として90°以上270°以下の範囲にわたって形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のフィラメントランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントランプに関し、特に加熱対象物に対して光を照射することで加熱するフィラメントランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造プロセスにおいて加熱対象物(以下、「ワーク」と称する。)の熱処理を行う装置の一つとして、発光管内にフィラメントを有するフィラメントランプを用いた加熱装置が知られている。当該加熱装置は、光を照射することで加熱する方式であるため、ワークを非接触で加熱することできる。また、フィラメントランプの熱源として一般的に用いられるタングステンは、熱容量が小さいため、放射の立ち上がりが早く、ワークを急速に加熱できるという特徴がある。
【0003】
このようなフィラメントランプに関しては、フィラメントから放射される光が効率的にワークに照射されるように、発光管の壁面に反射膜が設けられたフィラメントランプや、ハロゲン電球が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-078065号公報
【文献】特公昭50-27316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体ウェハや液晶ガラスの処理に用いるための、クリーンで、かつ、急速に昇降温が可能な加熱装置が期待されている。そこで、本発明者らは、発光管内にフィラメントを配置したフィラメントランプを検討したところ、次のような課題が存在することを見出した。以下、図面を参照しながら説明する。
【0006】
図9は、従来のフィラメントランプ100の構成を模式的に示す側面図である。図10は、図10のフィラメントランプ100のうち、サポーター部を有する箇所の断面をX方向に見たときの模式的な図面である。図9及び図10に示すように、従来のフィラメントランプ100は、発光管101の内壁面101bに反射膜102が形成され、発光管101内には管軸101aに沿ってフィラメント103が配置されている。
【0007】
フィラメント103は、X(管軸)方向に複数配置されたサポーター104によって軸が発光管101の管軸101aから大きくずれないように支持される。なお、以下説明においては、発光管101の管軸方向をX方向とし、フィラメントランプ100とワークWが対向する方向をZ方向、X方向とZ方向に直交する方向をY方向として説明する。
【0008】
本明細書では、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0009】
図10に示すように、反射膜102は、ワークWに向かって光を出射するために、発光管101の内壁面101bの周方向に関しては、一部に形成される。すなわち、反射膜102は少なくとも二つの端部102aを有し、X方向に関しては、当該形状が延伸するように形成されている。また、従来のフィラメントランプ100は、ワークWに対して均一な光を照射するために、反射膜102は、周方向全体にわたって一様な膜厚となるように構成される。ここで、膜厚とは、管軸に対して直交する面で切断したときの断面における、発光管の内壁面から管軸に向かう方向(径方向)での幅をいう。
【0010】
従来のフィラメントランプ100は、発光管101の周方向に関する反射膜102の端部102aが、周方向に直交し、反射膜102の膜厚に相当する大きさの端面を形成しており、フィラメント103やサポーター104との引っ掛かりが生じやすく、反射膜102が発光管101の内壁面101bから剥がれやすい。これにより、発光管101内にフィラメント103を挿入する工程や、使用時及び搬送時の振動等によって、反射膜102が端部102aから次々と剥離するという現象が発生していた。
【0011】
反射膜102が、図10に示すように、発光管101の内壁面101bに形成されている場合、剥離した反射膜102の一部がワークWに落下してしまうおそれはない。しかしながら、反射膜102が発光管101から剥がれ落ちると、ワークWとは反対側に向かって進行する光を、ワークW側に向かうように反射する機能が低下してしまい、反射膜102が剥がれた部分だけ、ワークWに照射される光の強度分布が低下してしまうという問題があった。
【0012】
また、剥離した反射膜102は、発光管101内に留まるため、フィラメント103から放射される光の進行を阻害する要因ともなり、結果として、光出力の低下や、ワークWに対して照射される光の強度分布が不均一となってしまう。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み、発光管内に形成された反射膜の剥離が抑制されたフィラメントランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るフィラメントランプは、
光に対して透過性を示す筒状の発光管と、
前記発光管内において、前記発光管の管軸方向に沿って延伸するフィラメントと、
前記発光管の前記管軸方向に延伸し、前記発光管の前記管軸方向と直交する平面で切断したときの断面形状が、前記発光管の内壁面の周方向に関し、第一端部と第二端部とを有するように形成された反射膜とを備え、
前記反射膜は、前記発光管の前記周方向に関し、前記第一端部と前記第二端部における膜厚が、前記第一端部と前記第二端部の間に位置する中央部における膜厚よりも薄いことを特徴とする。
【0015】
本明細書における光に対して透過性を有するとは、少なくとも、ワークの加熱に用いられる光である近赤外線の透過率が80%以上であればよく、必ずしも可視光に対して高い透過率を有していなくてもよい。なお、一般的には、近赤外線の波長帯域は、波長800nm以上2500nm以下の範囲とされており、可視光の波長帯域は、波長380nm以上780nm以下の範囲とされている。
【0016】
上記構成とすることで、第一端部から第二端部にわたって同じ膜厚の反射膜が形成されたフィラメントランプと比較して、フィラメントやサポーターと反射膜の第一端部及び第二端部との引っ掛かりが抑制され、反射膜の剥離が抑制される。
【0017】
また、反射膜で反射されてワークに向かう光のうち、反射膜の膜厚が薄い部分で反射された光は、反射率が低いことから全体の光強度分布に対する寄与度が低い。上記構成とすることで、第一端部及び第二端部付近で反射されてワークに向かう光は、ワークに照射される光全体に対して寄与率が低くなる。
【0018】
つまり、ワークに照射される光の強度分布は、第一端部と第二端部の膜厚のバラつきの影響が小さく、主に中央部の膜厚のバラつきの影響を受けるため、周方向全体にわたって同じ膜厚で反射膜が形成されたフィラメントランプよりも、ワークに照射される光の強度分布のバラつきが抑制される。
【0019】
さらに、反射膜が発光管の内壁面に形成されていることで、剥がれてしまった反射膜がワークの表面に落下してしまうおそれがない。すなわち、半導体製造プロセス等のクリーン度が要求される用途において、安心して用いることができる。また、反射膜が発光管の外壁面に形成されている場合は、フィラメントから放射された光のうち、反射膜で反射されてワークに向かう光が発光管を通過するのは計三回であるが、反射膜を発光管の内壁面に形成した場合には、フィラメントから放射された光が発光管を通過するのは一回だけのため、光エネルギーの損失が最小限に抑えられる。
【0020】
上記フィラメントランプにおいて、
前記反射膜は、前記第一端部及び前記第二端部における膜厚が実質的に0であってもよい。
【0021】
上記構成とすることで、フィラメントやサポーターは、製造工程等において、発光管の内壁面と反射膜との間においても滑るように回転や移動したとしても、反射膜の第一端部及び第二端部と引っ掛かりがさらに抑制され、反射膜の剥離が抑制される。なお、膜厚が実質的に0であるとは、膜厚が最も厚い部分に対して1%以下であることをいう。
【0022】
さらに、上記フィラメントランプにおいて、
前記反射膜は、前記中央部から前記第一端部及び前記第二端部それぞれに向かって膜厚が徐々に薄くなるように形成されていても構わない。
【0023】
ここで、本明細書における中央部から第一端部及び第二端部それぞれに向かって膜厚が徐々に薄くなるとは、中央部から第一端部及び第二端部それぞれに向かうにつれて、連続的に膜厚が薄くなっていく場合や、階段状に膜厚が薄くなっていく場合が含まれる。なお、連続的に膜厚が薄くなる場合は、膜厚が線形に変化するものでなくてもよく、階段状に膜厚が薄くなる場合は、膜厚の各段の大きさや、それぞれの段差が異なっていても構わない。
【0024】
上記フィラメントランプにおいて、
前記反射膜は、前記発光管の前記管軸方向に関し、前記発光管の一端部から他端部にわたって形成されているものとすることができる。
【0025】
上記構成とすることで、発光管の管軸方向において、反射膜が形成されている部分と形成されていない部分とが混在することがなく、フィラメントから放射されてワークに向かう光の強度分布の均一性が向上される。
【0026】
上記フィラメントランプの前記発光管の前記内壁面には、前記発光管の管軸方向に関し、前記反射膜の少なくとも一方の端部に、前記反射膜と当接するように保護部が形成されていても構わない。
【0027】
上記構成とすることで、フィラメントランプの製造時、発光管内にフィラメントを挿入する工程において、発光管内に形成された反射膜の管軸方向における端部は、保護膜によって保護されるため、フィラメントやサポーターと反射膜とが引っ掛かりにくくなり、反射膜が剥がれてしまうことが抑制される。
【0028】
上記フィラメントランプにおいて、
前記反射膜は、前記管軸方向に見たときに、前記発光管の内壁面の周方向に関し、管軸を中心として90°以上270°以下の範囲にわたって形成されていても構わない。
【0029】
発光管の内壁面上の反射膜が形成されている範囲が狭すぎる場合は、発光管内のフィラメントからワークとは反対側に放射された光を、僅かしかワークに向かうように反射できない。また、発光管の内壁面上の反射膜が形成されている範囲が広すぎる場合は、発光管の外側に光を取り出すための開口領域が狭くなり、ワークに照射される光の量が著しく低下してしまう。
【0030】
そこで、反射膜が上記範囲内で形成されることで、ワークとは反対側に向かって進行する光は十分にワークに向かうように反射されると共に、発光管の外側に光を取り出すための開口領域が十分に確保され、ワークに照射される光の量が著しく低下しないように構成することができる。つまり、フィラメントから放射された光が無駄なくワークに照射されるため、効率よくワークを加熱処理することができる。
【0031】
上記フィラメントランプにおいて、
前記発光管は、前記管軸方向と直交する面で切断した時の断面が円形状、又は楕円形状を呈するものであっても構わない。
【0032】
発光管が管軸方向に見たときに四角形や六角形等の多角形状であった場合、管軸方向に見たときに円形状であるフィラメントから放射された光が、それぞれの辺の角度で決まる反射角で反射されることになり、ワークに向かって光を集光することが難しい。
【0033】
発光管が管軸方向に見たときに円形状や楕円形状であれば、発光管の径や曲率を調整することによって、フィラメントから放射された光をワークに向かって容易に集光させることができる。
【0034】
上記フィラメントランプにおいて、
前記反射膜は、前記管軸方向に見たときに、前記発光管の内壁面の周方向に関し、管軸を中心として90°以上270°以下の範囲にわたって形成されていても構わない。
【0035】
さらに、上記フィラメントランプにおいて、
前記反射膜は、シリカを主たる成分とする粒子が凝集されて形成されており、前記粒子のうち、シリカ粒子の平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下であっても構わない。
【0036】
上記構成とすることで、フィラメントから放射され、加熱に用いられる近赤外線が、効率よくワークに向かうように反射される。また、反射膜を構成する粒子の主たる成分である金属酸化物は、特に耐熱性が高く、熱による膨張や収縮の影響が小さいシリカであることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、発光管内に形成された反射膜の剥離が抑制されたフィラメントランプが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】フィラメントランプの第一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図2図1のフィラメントランプをX方向に見たときの断面図である。
図3図1のフィラメントランプの反射膜の拡大図である。
図4】フィラメントランプの一実施形態をX方向に見たときの断面図である。
図5】フィラメントランプの一実施形態の構成を模式的に示す側面図である。
図6】フィラメントランプの製造工程を模式的に示す図面である。
図7】フィラメントランプの別実施形態の構成を模式的に示す側面図である。
図8】フィラメントランプの別実施形態をX方向に見たときの断面図である。
図9】従来のフィラメントランプの構成を模式的に示す側面図である。
図10図9のフィラメントランプのうち、サポーター部を有する箇所の断面をX方向に見たときの模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るフィラメントランプの各実施形態について、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、実際の寸法比と図面上の寸法比とは必ずしも一致していない。
【0040】
[第一実施形態]
図1は、フィラメントランプ1の第一実施形態の構成を模式的に示す図面である。図2は、図1のフィラメントランプ1をX方向に見たときの断面図である。図1及び図2に示すように、フィラメントランプ1は、アルゴン(Ar)等の不活性ガスやハロゲンガスが封入される発光管10と、発光管10の内壁面10b上に形成された反射膜11と、フィラメント13と、フィラメント13を発光管10内で支持するサポーター14を備える。以下説明においては、発光管10の管軸方向をX方向とし、フィラメントランプ1とワークWが対向する方向をZ方向、X方向とZ方向に直交する方向をY方向として説明する。
【0041】
また、上述したように、本明細書では、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0042】
発光管10は、光に対して透過性を有する材料で構成されており、X方向に向かって延伸する筒状を呈している。本実施形態における発光管10は、図2に示すように、X方向に向かって見たときの断面形状が円形状を呈しているが、楕円形状や多角形状を呈するものであっても構わない。なお、ワークWに対して効率よくフィラメント13から放射された光を照射するために、当該形状は、円形状又は楕円形状であることが好ましい。
【0043】
ここで、上述したように、本明細書における光に対して透過性を有するとは、少なくとも、近赤外線での光の透過率が80%以上であればよく、可視光に対して高い透過率を有していなくても構わない。
【0044】
反射膜11は、発光管10の内壁面10b上に、X方向に延伸するように形成されている。また、図2に示すように、YZ平面で切断したときの断面形状においては、膜厚が発光管10の周方向に関し、中央部11cから第一端部11aと第二端部11bそれぞれに向かって徐々に薄くなり、反射膜11の第一端部11a及び第二端部11bでは、実質的に0となるように形成されている。
【0045】
本実施形態における反射膜11は、発光管10の一端部から他端部にわたって形成されているが、X方向に関して、一部にのみ形成されていても構わない。また、膜厚が実質的に0であるとは、上述したように、膜厚が最も厚い部分に対して1%以下であることをいう。
【0046】
また、反射膜11が形成されている領域は、管軸10aよりも+Z方向側の面に、管軸10aを中心として180°の角度範囲で形成されているが、当該領域の角度は使用態様に応じて任意の角度に調整してもよく、必ずしもX方向に見たときに、Z軸に対して対称に形成されていなくても構わない。なお、上述したように、当該角度範囲は、90°以上270°以下であることが好ましい。
【0047】
発光管10の説明で上述したように、本実施形態のフィラメントランプ1は、近赤外線によるワークWの加熱を行う。したがって、反射膜11は、近赤外線を反射するように構成されている。図3は、図1のフィラメントランプ1の反射膜11の拡大図である。図3に示すように、本実施形態の反射膜11は、粒子が凝集されて形成されている。なお、赤外線を効率よく反射させるために、近赤外線の波長帯域との関係から、反射膜11を構成する粒子のうち、シリカ粒子の平均粒径は0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0048】
近赤外線以外の光を用いてワークWの加熱を行う場合は、光に合わせて粒子の主たる成分や粒径が変更されても構わない。なお、図3は説明の便宜のために、実際よりも非常に大きい粒径で図示している。
【0049】
反射膜11を形成する粒子の主たる成分は、例えば、金属酸化物を採用することができ、シリカ(SiO2)を採用することができる。また反射膜11を形成する成分として、例えば、アルミナ(Al23)、酸化ホウ素(B23)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO2)等を含んでいても構わない。
【0050】
フィラメント13は、発光管10内において、X方向に発光管10の管軸10aに沿って延伸するように配置される。フィラメント13は、その両端の、金属箔と外部リードからなる給電部15から電力が供給されると光を放射する。フィラメント13から-Z方向側(ワークW側)に放射された光は、そのままワークWに向かって進行し、+Z方向側(ワークWとは反対側)に向かって進行する光は、反射膜11によって反射されて、-Z方向側に向かって進行する。
【0051】
フィラメント13の材料は、例えば、タングステンやカンタル、ニクロム、カーボン等を採用し得る。
【0052】
サポーター14は、図2に示すように、X方向に向かって見たときの形状が螺旋形状を呈し、管軸10aと軸が揃うようにフィラメント13を保持し、外周部を発光管10の内壁面10bや反射膜11に接触させることで、フィラメント13の軸が管軸10aから大きくずれないように固定する。
【0053】
図4は、図1のフィラメントランプ1の構成とは別のフィラメントランプ1の一実施形態をX方向に見たときの断面図である。サポーター14は、図4に示すように、平板型のサポーター14であってもよい。
【0054】
また、フィラメントランプ1は、必ずしも、サポーター14を備えなくても構わない。図5は、図1及び図4の構成とは別のフィラメントランプ1の一実施形態の構成を模式的に示す側面図である。例えば、図5に示すように、フィラメント13が部分的に巻回の径を大きく構成され、サポーター14としての機能を併せ持つように構成されている場合は、別途サポーター14を配置する必要がない。
【0055】
次に、発光管10の内壁面10b上に反射膜11を形成する方法について、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の説明は、あくまでフィラメントランプ1を製造する方法の一例であり、本発明のフィラメントランプ1は、以下の方法で製造されたものには限定されない。
【0056】
図6は、フィラメントランプ1の製造工程を模式的に示す図面である。反射膜11の形成は、まず、発光管10の内壁面10b上において、反射膜11を形成しない部分にマスキングテープ80を貼り付ける。
【0057】
次に、図6に示すように、シリカを酢酸ブチル(溶剤)に分散させた反射膜用塗布液Lを50ml/sの吐出量で吐出する長尺のノズル81を、マスキングテープ80が貼り付けられた発光管10内に挿入して、20cm/sの速度で管軸10aに沿って掃引することで、発光管10の内壁面10b上に反射膜用塗布液Lの被膜を形成する。
【0058】
発光管10の内壁面10b上に形成された反射膜用塗布液Lの被膜は、25℃で20分程度の間、窒素雰囲気中において乾燥される。
【0059】
発光管10の内壁面10b上に形成され、乾燥された反射膜用塗布液Lの被膜は、YZ平面で切断したときの断面形状が、中央部11cから第一端部11aと第二端部11bそれぞれに向かって徐々に薄くなり、第一端部11a及び第二端部11bにおいては、膜厚が実質的に0となるように切削される。なお、切削とは、例えば、シリコンラバー等のエッジ部分を使用し、被膜の余分な部分を削り落とすといった方法である。
【0060】
反射膜用塗布液Lの被膜が乾燥した発光管10は、マスキングテープ80が除去され、大気雰囲気中において、1000℃で1時間程度焼成されて反射膜11が形成される。
【0061】
以上の方法によって、反射膜11が形成される。なお、上記の吐出量、掃引の速度、乾燥条件、乾燥時間、焼成温度等は、一例であり、形成するそれぞれの膜厚や、塗布液の状態等に応じて調整される。
【0062】
以上のように、フィラメントランプ1が構成されることで、フィラメント13やサポーター14が、反射膜11の第一端部11a及び第二端部11bと引っ掛かることや、発光管10と反射膜11との隙間に入り込むことが抑制され、反射膜11の剥離が抑制される。
【0063】
また、上述したように、第一端部11aと第二端部11bでの反射膜11の膜厚のバラつきの影響小さくなるため、ワークWに照射される光の強度分布のバラつきが抑制される。
【0064】
さらに、反射膜11が発光管10の内壁面10b上に形成されていることで、剥がれてしまった反射膜11がワークWの表面に落下してしまうおそれがない。また、フィラメント13から放射されて反射膜11で反射されてワークWに向かう光が発光管10を通過するのが一回だけのため、光エネルギーの損失が最小限に抑えられる。
【0065】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0066】
〈1〉 図7は、フィラメントランプ1の別実施形態の構成を模式的に示す側面図である。図7に示すように、発光管10の内壁面10b上には、X方向に関し、反射膜11の少なくとも一方の端部に、反射膜11と接触するように保護部90が形成されている。
【0067】
保護部90は、例えば、シリカ(SiO2)を採用することができる。また、保護部90は、シリカ以外に、アルミナ(Al23)、酸化ホウ素(B23)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO2)等を含んでいても構わない。また、保護部90は、発光管10と同じ材料で構成されていてもよく、さらには、発光管10と一体として構成されていても構わない。
【0068】
上記構成とすることで、発光管10にフィラメント13を挿入する際に、フィラメント13が反射膜11のX方向に関する端部に引っ掛かり、反射膜11が発光管10から剥離してしまうことを防止することができる。
【0069】
〈2〉 図8は、フィラメントランプ1の別実施形態をX方向に見たときの断面図である。図8に示すように、反射膜11は、第一端部11a及び第二端部11bにおいて膜厚が実質的に0でなくても構わない。
【0070】
また、図8に示すように、反射膜11は、中央部11cの周辺は同じ膜厚で形成され、第一端部11a側及び第二端部11b側の一部の領域だけが、第一端部11a及び第二端部11b側それぞれに向かって徐々に膜厚が薄くなるように形成されていても構わない。
【0071】
〈3〉 上述したフィラメントランプ1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0072】
1 : フィラメントランプ
10 : 発光管
10a : 管軸
10b : 内壁面
11 : 反射膜
11a : 第一端部
11b : 第二端部
13 : フィラメント
14 : サポーター
15 : 給電部
80 : マスキングテープ
81 : ノズル
90 : 保護部
100 : フィラメントランプ
101 : 発光管
101a : 管軸
101b : 内壁面
102 : 反射膜
102a : 端部
103 : フィラメント
104 : サポーター
L : 反射膜用塗布液
W : ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10