(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G01N21/33
(21)【出願番号】P 2021126348
(22)【出願日】2021-07-31
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(73)【特許権者】
【識別番号】391049530
【氏名又は名称】株式会社信光社
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀和
(72)【発明者】
【氏名】杉本 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】府川 隆
(72)【発明者】
【氏名】芦野 航
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169203(JP,A)
【文献】特開2002-374039(JP,A)
【文献】特表2007-529012(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213385(WO,A1)
【文献】特開2016-33484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 3/00-G01J 3/52
G02B 6/42-G02B 6/43
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路と前記ガス流路と交差する光路とを有する測定セルと、
前記光路の一端に配設され、前記光路内に光を出射するための光源と、
前記光源の側方であって前記光源の先端より前記光源の光軸に沿った光出射方向の後方に配設され、前記光源から出射した光を参照光として検出する第1光検出器と、
前記光路の他端に配設され、前記光源から出射した光を光吸収測定用として検出する第2光検出器と、を備え
、
前記測定セルは、
前記光路の一部を構成する貫通孔と前記ガス流路とを有する測定セル本体と、
前記貫通孔の一方の開口部に第1透光窓を介して前記測定セル本体に接続されて、前記光源及び前記第1光検出器を備える入射側部材と、を備え、
前記入射側部材は、第1凹部を備え、
前記光源は、前記第1凹部の底部に配設され、
前記第1光検出器は、前記第1凹部の側壁内に埋設されている、濃度測定装置。
【請求項2】
前記第1光検出器は、前記光源の光軸に対して斜めに向くように、前記入射側部材に固定されている、請求項
1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記測定セルは、前記貫通孔の他方の開口部に第2透光窓を介して前記測定セル本体に接続されて前記第2光検出器を備える検出側部材を備え、
前記検出側部材は、前記貫通孔とともに前記光路の一部を構成する第2凹部を備え、
前記第2光検出器が前記第2凹部の底部に配設され、
前記検出側部材は、前記第2光検出器と前記第2透光窓との間に介在された集光レンズを更に備え、
前記集光レンズと前記光源との距離が15mm以下である、請求項
1又は
2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記光源は、波長の異なる複数の発光素子を含む、請求項1~
3の何れかに記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記複数の発光素子は、波長230nm~320nmの前記発光素子と、波長520nm~680nmの前記発光素子と、を含む、請求項
4に記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記複数の発光素子のそれぞれの光軸は一つの前記第2光検出器に向けられており、前記複数の発光素子から発せられた光が前記第2光検出器で受光されるように構成されている、請求項
4又は
5に記載の濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光光度法の原理に基づいてガス濃度を測定するための濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の濃度測定装置として、ガス流路を備える測定セルに所定波長の光を入射し、測定セル内を通過する際にガスによる吸収を受けた光を光検出器で検出することにより吸光度を測定し、ランベルト・ベールの法則を適用して吸光度からガスの濃度を演算する濃度測定装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3等)。
【0003】
また、測定精度を向上させるために、測定セルに入射する前の光の一部を分岐させて参照光として検出し、入射光の劣化等による吸光度演算値の誤差を補正する濃度測定装置も知られている(例えば、特許文献3、4等)。
【0004】
図1は、従来の濃度測定装置の一例を示している。光源1は、異なる波長の発光素子1a、1bを含み、夫々の発光素子1a、1bから出射した光L1、L2は、合波モジュール2のハーフミラー2aで合波され、光ファイバー3aを通じて分岐モジュール4に送られ、分岐モジュール4のハーフミラー4aで参照光Lrと吸光度測定用の光Lmとに分けられる。参照光Lrは、参照光を検出するための第1光検出器5で検出される。吸光度測定用の光Lmは、光ファイバー3bを通じて測定セル6に入射される。測定セル6の内部には、流入口6a及び流出口6bを通じてガスGが流されている。測定セル6は、一端側に光透光窓6cを、他端側に光反射膜6dが設けられている。図中、符号7はボールレンズを示し、符号8は光ファイバーコネクタを示す。光透光窓6cを介して測定セル6内に入射した光Lmは、光反射膜6dで反射され、反射光Lmbが再び光透光窓6cを透過し、光ファイバー3bを通じて分岐モジュール4に送られ、ハーフミラー4aで反射されて第2光検出器9
に送られる。測定セル6内においてガスGによる吸収を受けた光Lmbは、分岐モジュール4の第2光検出器9で検出され、吸光度の演算に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2016/017122号パンフレット
【文献】国際公開WO2014/181527号パンフレット
【文献】国際公開WO2018/021311号パンフレット
【文献】国際公開WO2017/029791号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の濃度測定装置において、光源からの光を測定セルに入射する前に分岐器で分岐させるために、光源と分岐モジュールと測定セルとを光ファイバーで接続しているが、光は、光ファイバーを通過する際に減衰するため、好ましくない。また、この種の濃度測定装置は、小型化の要望もある。
【0007】
そこで本発明は、光ファイバーを用いず、小型化が可能な濃度測定装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る濃度測定装置は、ガス流路と前記ガス流路と交差する光路とを有する測定セルと、前記光路の一端に配設され、前記光路内に光を出射するための光源と、前記光源の側方であって前記光源の先端より前記光源の光軸に沿った光出射方向の後方に配設され、前記光源から出射した光を参照光として検出する第1光検出器と、前記光路の他端に配設され、前記光源から出射した光を光吸収測定用として検出する第2光検出器と、を備える。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記測定セルは、前記光路の一部を構成する貫通孔と前記ガス流路とを有する測定セル本体と、前記貫通孔の一方の開口部に第1透光窓を介して前記測定セル本体に接続されて、前記光源及び前記第1光検出器を備える入射側部材と、を備え、前記入射側部材は、第1凹部を備え、前記光源は、前記第1凹部の底部に配設され、前記第1光検出器は、前記第1凹部の側壁内に埋設されている。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記第1光検出器は、前記光源の光軸に対して斜めに向くように、前記入射側部材に固定されている。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記測定セルは、前記貫通孔の他方の開口部に第2透光窓を介して前記測定セル本体に接続されて前記第2光検出器を備える検出側部材を備え、前記検出側部材は、前記貫通孔とともに前記光路の一部を構成する第2凹部を備え、前記第2光検出器が前記第2凹部の底部に配設され、前記検出側部材は、前記第2光検出器と前記第2透光窓との間に介在された集光レンズを更に備え、前記集光レンズと前記光源との距離が15mm以下である。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記光源は、波長の異なる複数の発光素子を含む。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記複数の発光素子は、波長230nm~320nmの前記発光素子と、波長520nm~680nmの前記発光素子と、を含む。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、前記複数の発光素子のそれぞれの光軸は一つの前記第2光検出器に向けられており、前記複数の発光素子から発せられた光が前記第2光検出器で受光されるように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記第1光検出器が前記光源の側方且つ後方で前記光源の光を検出する構成とすることにより、前記光源及び前記第1光検出器と前記ガス流路との距離を短くでき、光ファイバーを用いずに前記測定セルを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の濃度測定装置を示す概略構成図である。
【
図2】本発明に係る濃度測定装置の第1実施形態を示す中央縦断正面図である。
【
図3】
図2の濃度測定装置の要部の中央縦断側面図である。
【
図4】本発明に係る濃度測定装置の第2実施形態を示す中央縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る濃度測定装置の第1実施形態について、以下に
図2及び
図3を参照して説明する。
【0018】
図2及び
図3を参照して、濃度測定装置10は、ガス流路11とガス流路11と交差する光路12とを有する測定セル13と、光路12の一端に配設されて光路12内に光を出射するための光源14と、光源14の側方であって光源14の先端14aより光源14の光軸Xに沿った光出射方向X1の後方(
図2の矢印Y方向)に配設され、光源14から出射した光を参照光として検出する第1光検出器15と、光路12の他端に配設されて光源14から出射した光を光吸収測定のために検出する第2光検出器16と、を備える。
【0019】
測定セル13は、光路12のための貫通孔17と、ガス流路11とを有する測定セル本体18と、光源14及び第1光検出器15を備える入射側部材19と、を備える。入射側部材19は、貫通孔17の一方の開口部17aに第1透光窓20を介して測定セル本体18に接続されている。入射側部材19は、ボルト21によって測定セル本体18に固定されている。
【0020】
ガス流路11は、一端開口がガス流入口11a、他端開口がガス流出口11bであり、図示例では測定セル本体18を直線状に貫通している。測定セル本体18は、ステンレス鋼等の耐食性に優れた材料によって形成される。第1透光窓20は、機械的・化学的に安定なサファイアガラスが好適に用いられるが、他の安定な材料、例えば石英ガラス等も利用可能である。
【0021】
入射側部材19は、第1透光窓20を介して貫通孔17と光学的に連通して光路12の一部を構成する第1凹部22を備える。即ち、貫通孔17と第1凹部22とは、第1透光窓を介して光が通ることができるように連なっている。光源14は、第1凹部22の底部に配設されている。
【0022】
光源14は、発光ダイオード、レーザーダイオード等の発光素子が好適に用いられる。図示例の光源14は、LED素子を覆う封止樹脂が砲弾型をした、いわゆる砲弾型発光ダイオードである。リード線23が入射側部材19の底孔24から引き出されている。第1光検出器15及び第2光検出器16は、フォトダイオード、フォトトランジスター等の光センサーが用いられ得る。
【0023】
第1光検出器15は、第1凹部22内の側壁22aに埋設され、好ましくは、第1凹部22内の側壁22aの底側端部に埋設されている。第1光検出器15は、第1光検出器15の光軸Zが光源14の光軸Xと非平行となるように、入射側部材19に固定されている。
【0024】
第1光検出器15は、入射側部材19に斜め方向に穿設された取付孔19bに嵌め込まれて埋設固定されている。入射側部材19の取付面は、傾斜面19cとなっている。第1光検出器15は、光源14からの光を集光させるレンズ15bを備えている。レンズ15bは、その一部が第1凹部22の側壁22aから内側にはみ出すように突出して配置されている。
【0025】
測定セル本体18に検出側部材27が接続されている。第2光検出器16は、検出側部材27に組み込まれている。検出側部材27は、貫通孔17の他方の開口部17bに第2透光窓28を介して測定セル本体18に接続されている。検出側部材27は第2凹部27aを備え、第2光検出器16が第2凹部27aの底部に配設されている。第2光検出器16と第2透光窓28との間に集光レンズ29が介在されている。集光レンズ29と光源14との距離L1は、好ましくは15mm以下である。第2凹部27aは、第2透光窓28を介して貫通孔17と光学的に連通して光路12の一部を構成する。検出側部材27は、ボルト30によって測定セル本体18に固定されている。
【0026】
光路12は、第1凹部22、第1透光窓20、ガス流路11と交差する貫通孔17、第2透光窓28、集光レンズ29を備える第2凹部27aによって構成されている。第1凹部に設けられた光源14から出射された光は、第1透光窓20、ガス流路11と交差する貫通孔17、第2透光窓28、ガス流路11と交差する貫通孔17、第2透光窓28、第2凹部27a内の集光レンズ29を通って、第2光検出器16によって検出されるとともに、一部の光は第1光検出器15によって検出される。
【0027】
第1光検出器15及び第2光検出器16によって検出された検出信号光は、制御部31に送られる。制御部31は、光源14に供給する電流を制御するとともに、公知の電流-電圧変換回路により、第1光検出器15及び第2光検出器16の出力を電圧として測定する測定回路31aを備えている。また、制御部31は、測定回路31aで測定された測定値を記憶するデータロガー31b、濃度計算及び補正処理を演算するコンピュータ31c等を備えることができ、測定回路31aで測定された測定値に基づいて濃度計算処理及び補正処理を行うことができる。なお、ランベルト・ベールの法則を適用してガスの濃度を演算する方法、その演算値を、参照光を用いて補正する方法等は公知であるので詳細な説明を省略する。上記構成の濃度測定装置は、次のような作用効果を奏することができる。
【0028】
光源14及び第1光検出器15は、光ファイバーを用いずに、測定セル13に直接取り付けられているため、光ファイバーによる光の減衰が無い。
【0029】
第1光検出器15は、光源14の側方且つ後方(
図1の矢印Y方向)で光源14の光を検出する構成とすることにより、光源14及び第1光検出器15とガス流路11との距離を短くでき、測定セル13を小型化できる。
【0030】
第1光検出器15は、入射側部材19の第1凹部22の側壁22a内に埋設されることにより、第1光検出器15のために第1凹部22の内部空間を広げずに済み、測定セル13の小型化に寄与する。
【0031】
光源14を構成する発光ダイオードは、一般に指向角がある。第1光検出器15は、光源14の指向角の範囲外に配置されていても、一定量の強度の光が光源14の後方にも出ており、それを参照光として検出することができる。また、レンズ15bによって光を第1検出器15に集めることができる。
【0032】
第1光検出器15は、光軸Zが光源14の光軸Xと非平行であり、光源14の光軸Xに対して斜めに取り付けられる。このように第1光検出器15を斜めに取り付ける構成とすることにより、第1光検出器15と光源14とを其々の光軸が平行となるように並べて配置した場合に比べて、取付箇所である入射側部材19を小型化でき、ハーフミラーを配設する必要がなく、測定セル13全体を小型化できる。
【0033】
第1光検出器15のレンズ15bの一部のみを第1凹部22内に突出させる構成により、光路12の一部を構成する第1凹部22の空間を広げることなく、光源14からの参照光を集光し、測定セル13を小型化することができる。
【0034】
第1実施形態における濃度測定器では、光源14を1つの発光素子で構成した例を示し、測定するオゾンのおおよその濃度が予め知れており、光源14としては、波長230nm~320nm、例えば300nmのLED素子を使用する。
【0035】
次に、本発明の濃度測定装置の第2実施形態について、以下に
図4を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は類似の構成部分については、同符号を付している。
図4は、中央縦断側面図であり、第1実施形態の
図3に対応する断面図である。第2実施形態の中央縦断正面図は、第1実施形態の
図2とほぼ同じであるので図示省略する。
【0036】
図4を参照して、第2実施形態の濃度測定装置では、光源14が波長の異なる2つ発光素子14a、14bを備えている。発光素子14a、14bのそれぞれの光軸Xa、Xbは、一つの第2光検出器16の中心部(半導体チップ16aの中心部)に向けられており、発光素子14a、14bから発せられた光が第2光検出器16で受光されるように構成されている。
【0037】
図示例において、光源14の一方の発光素子14aは、波長230nm~320nmであり、他方の発光素子14bは、波長520nm~680nmである。この2種類の波長は、オゾンガスの濃度測定に適している。即ち、オゾンガスは、高濃度域では600nm付近に吸収のピークがあり、低濃度域では255nm付近に吸収のピークがある。そのため、2種類の波長の発光素子14a、14bを設けることにより、高濃度域及び低濃度域のオゾンガスの濃度を測定することができる。第1光検出器15及び第2光検出器16は、発光素子14a、14bの其々の波長に感受性を有する光センサーが用いられる。測定すべきガスの特性に応じて、各発光素子14a、14bの波長を選択することができるし、異なる波長の3以上の発光素子を設けることもできる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 濃度測定装置
11 ガス流路
12 光路
13 測定セル
14 光源
14a、14b 発光素子
15 第1光検出器
16 第2光検出器
17 貫通孔
18 測定セル本体
19 入射側部材
20 第1透光窓
22 第1凹部
22a 側壁
15b レンズ
27 検出側部材
27a 第2凹部
28 第2透光窓
29 集光レンズ