(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ラベル発行装置およびラベル発行システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0283 20230101AFI20231130BHJP
G06Q 30/02 20230101ALI20231130BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20231130BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20231130BHJP
G09F 3/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
G06Q30/0283
G06Q30/02 450
G06Q50/02
G07G1/00 331Z
G09F3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019085907
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000145068
【氏名又は名称】株式会社寺岡精工
(73)【特許権者】
【識別番号】502038842
【氏名又は名称】株式会社デジアイズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野直史
(72)【発明者】
【氏名】田中雄二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博貴
(72)【発明者】
【氏名】森 豊樹
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-235053(JP,A)
【文献】特開2011-170462(JP,A)
【文献】農産物流通ベンチャーとコラボし都市部で売るという選択肢,農業ビジネスマガジン,イカロス出版,2018年05月25日,第21巻,p.44-45
【文献】及川智正,農業はアイデア次第で儲かる仕事になる ビジネスとしての農産業~農業XITベンチャー(3)物流&ITプラットフォーム,[online],2018年04月11日,[令和5年3月9日検索], インターネット<URL:https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2092>
【文献】堀川 三好,農産物産地直売所を対象としたVender Managed Inventoryの適用,情報処理学会研究報告 ,日本,一般社団法人情報処理学会,2010年08月15日,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G07G 1/00
G09F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル発行予約を行う携帯端末を制御するプログラムであって、
予め設定された生産者の識別情報に基づいて生産者の認証を行う認証ステップと、
商品を特定するための特定ステップと、
前記特定ステップで特定した商品の売価を入手する入手ステップと、
前記特定ステップで特定された前記商品の参考売価を算出するための価格変動要因を考慮することを受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで前記価格変動要因を考慮することを受け付けたとき、前記商品自体の要因であって価格に影響を与える内在要因、および前記商品自体以外の要因であって価格に影響を与える外在要因を選択的に入力可能とする要因入力画面を表示する表示ステップと、
過去に販売された商品の、販売価格、前記内在要因および前記外在要因に関する販売情報が記録された価格データベースから検索され、前記要因入力画面に入力された要因と同じ要因を有する同一商品の販売価格に基づく情報を取得して提示する提示ステップと、
を含む処理を携帯端末に実行させるプログラム。
【請求項2】
前記表示ステップは、前記内在要因として商品サイズを入力可能とすることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末に実行させるプログラム。
【請求項3】
前記表示ステップは、前記外在要因として出荷日および出荷日の気候を入力可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯端末を制御するプログラム。
【請求項4】
ラベル発行予約を行う携帯端末であって、
予め設定された生産者の識別情報に基づいて生産者の認証を行う認証手段と、
商品を特定するための特定手段と、
前記特定手段で特定した商品の売価を入手する入手手段と、
前記特定手段で特定された前記商品の参考売価を算出するための価格変動要因を考慮することを受け付ける受付手段と、
前記受付手段で前記価格変動要因を考慮することを受け付けたとき、前記商品自体の要因であって価格に影響を与える内在要因、および前記商品自体以外の要因であって価格に影響を与える外在要因を選択的に入力可能とする要因入力画面を表示する表示手段と、
過去に販売された商品の、販売価格、前記内在要因および前記外在要因に関する販売情報が記録された価格データベースから検索され、前記要因入力画面に入力された要因と同じ要因を有する同一商品の販売価格に基づく情報を取得して提示する提示手段と、
を含むことを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
携帯端末とラベルプリンタを備えるラベル発行システムであって、
前記携帯端末は、
予め設定された生産者の識別情報に基づいて生産者の認証を行う認証手段と、
商品を特定するための特定手段と、
前記特定手段で特定した商品の売価を入手する入手手段と、
前記特定手段で特定された前記商品の参考売価を算出するための価格変動要因を考慮することを受け付ける受付手段と、
前記受付手段で前記価格変動要因を考慮することを受け付けたとき、前記商品自体の要因であって価格に影響を与える内在要因、および前記商品自体以外の要因であって価格に影響を与える外在要因を選択的に入力可能とする要因入力画面を表示する表示手段と、
過去に販売された商品の、販売価格、前記内在要因および前記外在要因に関する販売情報が記録された価格データベースから検索され、前記要因入力画面に入力された要因と同じ要因を有する同一商品の販売価格に基づく情報を取得して提示する提示手段と、を備え、
前記ラベルプリンタは、前記提示手段によって提示されたラベルの発行を行う発行手段を備える、
ことを特徴とするラベル発行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル発行装置およびラベル発行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農家等の生産者が農産物等(商品)を産地直売所などの店舗で販売する場合、商品の価格を自分で決定し、生産者名を含む生産者情報と価格を含む商品情報を店舗に備置されたラベルプリンタでラベルに印刷して発行し、そのラベルを商品に貼付して店頭に陳列することが行なわれている。商品には、農産物のほか、青果、鮮魚、手工芸品が含まれる場合がある。
【0003】
生産者は、産地直売所に設置されているラベルプリンタで、「生産者」、「商品」、「販売金額」等を設定してラベルを印刷し、生産者自身が商品にラベルを貼付して売場で陳列したり、直売所の店員が当該ラベルを商品に貼付し、所定の売場へ陳列している。
【0004】
ラベルを貼付して販売される商品には、事前に登録されている価格はあるが、農産物や海産物のように商品の出来具合や生産コスト、または売れ行き、他の生産者の類似商品の価格など、いろいろな情報を考慮して価格の設定(変更を含む)を行う必要がある。また、売れ残りが発生すると回収や廃棄の費用が生じるので、なるべく売れ残りが生じないように適正な価格を設定して販売したいという要求はあるが、従来の出荷状況下では価格設定に拠り所が無く、経験に基づく勘などで価格が設定されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生産者がラベル印刷に際して合理的な範囲で適正な価格を簡単に設定することができるラベル発行装置およびラベル発行システムを提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、生産者がラベル印刷に際して商品出荷時の価格変動要因を考慮してより適正な価格の設定を行うことができるラベル発行装置およびラベル発行システムを提供することを目的とする。
【0008】
さらに本発明は、生産者が直売所に行かなくとも、出荷商品に貼るためのラベルの印刷発行を予約することができるラベル発行装置およびラベル発行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るラベル発行装置は、一側面において、商品を特定するための商品特定手段と、前記商品特定手段で特定した商品の売価を入力する入力手段と、前記商品特定手段にて特定された商品情報と、前記入力手段で入力された売価を出力する出力手段と、前記商品特定手段で商品を特定した場合、前記商品の売価を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記報知手段は、前記商品の販売履歴から所定の条件に応じて、前記商品の売価を報知するものであることが好ましい。
【0011】
前記所定の条件は、一の側面においては、価格変動要因である商品の種類、サイズ、数量などの内在要因に応じた計算式によって売価を算出することを特徴とする。
【0012】
前記所定の条件は、他の側面においては、価格変動要因である出荷日の曜日、天候などの外在要因などの要因情報に応じて売価を算出することを特徴とする。
【0013】
前記所定の条件は、さらに他の側面においては、当該商品と同一品の価格のうち、少なくとも上限価格、下限価格または平均価格のうちのひとつであることを特徴とする。
【0014】
前記報知手段により所定の方法で売価を報知することに代えて、売価を選択可能に表示する選択手段を備えることでもよい。
【0015】
ラベル発行装置は、生産者を指定する生産者指定手段と、前記生産者による前記商品を販売するための条件を入力する入力手段と、前記入力手段で入力された条件が、販売適合か販売不適合かを判定する判定手段と、前記商品指定手段にて指定した商品が、前記判定手段で不適合と判定された場合、前記出力手段を制限する制御手段とをさらに備えていることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係るラベル発行システムは、管理装置とラベルプリンタを備えるラベル発行システムであって、商品を特定するための商品特定手段と、前記商品特定手段にて特定された商品情報を出力する出力手段と、前記出力手段にて出力された前記商品情報の売価を記憶する記憶手段とを備え、前記商品特定手段で商品を特定した場合、前記記憶手段で記憶された前記売価を所定の方法で報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、直売所で販売する商品価格を生産者の勘や経験などに頼らず、価格設定が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るラベル発行装置を含む販売管理システムの構成の一例を概念的に示すブロック図である。
【
図2】
図1の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3のCPUの機能実現手段を示す図である。
【
図6】
図3のDB部の記憶内容の一部である生産者ファイルを構成するデータを例示する図である。
【
図7】
図3のDB部の記憶内容の他の一部である商品ファイルを構成するデータを例示する図である。
【
図8】
図3のDB部の記憶内容のさらに他の一部である価格変動要因ファイルを構成するデータを例示する図である。
【
図9】携帯端末の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図9A】
図9のS7の詳細を示すフローチャートである。
【
図9E】
図9のS9の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】表示部の画面遷移を一覧的に示す図である。
【
図11】携帯端末の表示部のトップ画面を例示する図である。
【
図12】
図11の「設定画面に進む」のボタンがタッチされた場合に表示部に表示される設定操作画面を例示する図である。
【
図13】
図12の店舗一覧ボタンがタッチされた場合に表示部に表示される店舗一覧画面を例示する図である。
【
図14】
図12の店舗登録ボタンがタッチされた場合に表示部に表示される店舗登録画面を例示する図である。
【
図15】
図11の「発行予約へ進む」のボタンを押した場合に表示される企業・店舗選択画面を例示する図である。
【
図16】企業・店舗選択画面の次に表示される品目選択画面のメイン画面を例示する図である。
【
図17A】
図16の品目選択画面の中の発行履歴ボタンを押した場合に表示される発行履歴画面を例示する図である。
【
図17B】発行履歴選択画面の第2表示領域に表示される発行履歴の他の例を示す図である。
【
図18】
図16の品目選択画面の中のカナ検索ボタンを押した場合に表示されるカナ検索画面を例示する図である。
【
図19】品目選択画面による品目選択を終了した後に表示部に表示される産地選択画面のメイン画面を例示する図である。
【
図20】
図19の産地選択画面のカナ検索ボタンを押した場合に表示されるカナ検索画面を例示する図である。
【
図21】産地選択画面による産地選択を終了した後に表示部に表示される単位選択画面のメイン画面を例示する図である。
【
図22A】単位選択画面による単位選択を終了した後に表示部に表示される価格入力画面のメイン画面を例示する図である。
【
図22B】
図22Aの価格入力画面の要因考慮ボタンを押した場合に表示部に表示される要因選択画面を例示する図である。
【
図23】価格入力後における発行枚数入力画面を例示する図である。
【
図24A】ラベル発行予約入力画面を例示する図である。
【
図24B】
図24Aの確定ボタンが押された時の発行予約中を表示する発行予約中画面を例示する図である。
【
図25】管理装置がラベル発行予約を受け付ける場合のフローチャートである。
【
図26】ラベルプリンタがラベル発行予約を受け付ける場合のフローチャートである。
【
図27】
図1のラベルプリンタのシステム構成を示すブロック図である
【
図28】携帯端末を用いてラベル発行予約を行う一の態様を示すイメージ図である。
【
図29】携帯端末を用いてラベル発行予約を行う他の態様を示すイメージ図である。
【
図30】携帯端末を用いてラベル発行予約を行うさらに他の態様を示すイメージ図である。
【
図31】他の実施の形態における機能実現手段の一例を示す図である。
【
図32】栽培日誌の発行からラベル発行の許可・禁止までの手順の一例を示す図である。
【
図33】農薬チェック手段の農薬チェック手順を示すフローチャートである。
【
図34】栽培日誌の1ページ目の表紙の印刷項目及び記入例を示す図である。
【
図35】栽培日誌の2ページ目以降の印刷項目及び記入例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を次の目次に従って図面を参照しながら詳細に説明する。
1.0 販売管理システム
2.0 携帯端末
3.0 管理装置
4.0 ラベルプリンタ
5.0 農薬管理(栽培日誌管理)
【0020】
1.0 販売管理システム
図1は、本発明に係るラベル発行装置を含む販売管理システムAの構成を概念的に示す。
販売管理システムAは、店舗(産地直売所)におけるラベル発行、商品(農産物)の入荷管理、販売管理、在庫管理、精算管理などを行う管理システムである。
図1に示すように、販売管理システムAは、携帯端末100と、管理装置200と、ラベルプリンタ300と、POS端末機400とをネットワーク500により接続し、各装置間でデータ通信ができるように構成されている。
ネットワーク500は、LAN(Local Area Network)またはインターネットのいずれでも良く、また、有線、無線のいずれでも良い。
本発明に係るラベル発行装置は、携帯端末100、管理装置200、ラベルプリンタ300により構成されている。以下、これらについて順次詳細に説明する。
【0021】
2.0 携帯端末
携帯端末100は、タブレット、スマートフォン(スマホ)またはパーソナルコンピュータ(パソコン)等で構成される。携帯端末100は、基本的には生産者が所有するが、店舗も所有する場合もある。
携帯端末100は、選択的操作または一義的操作により所定の問合せ情報またはラベル発行予約情報もしくはラベル発行要求情報を管理装置200に送信し、管理装置200からその問合せ情報に対する応答情報またはラベル発行予約情報に対する予約受付信号もしくはラベル発行要求情報に対する印刷許可信号を受信したとき、所定内容の印刷情報およびラベル発行要求信号をラベルプリンタ300に送信する。
【0022】
携帯端末100は、
図2に示すように、入力部101、表示部102、制御部103、記憶部104および通信部105を有する。
入力部101は、たとえば位置入力機能を有するタッチパッドを有し、制御部103の機能の一部と共に、生産者指定手段101aと商品特定手段101bを構成し、また、後述される販売価格の更新の際に操作される更新手段101cを構成する。携帯端末100がパソコンである場合は、タッチパッドに代えてキーボードを使用してもよい。
【0023】
表示部102は、たとえば液晶パネルからなり、表示方式は、マトリクス・スイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等いずれの方式であってもよい。表示部102は、入力部101から入力された生産者情報および商品情報、ならびに制御部103が記憶部104から読み出す各種の画面を表示する出力手段102aと、携帯端末100からの要求により後述される管理装置200から与えられる販売価格(参考価格)を報知する報知手段102bとを含む。
【0024】
入力部101と表示部102は、たとえば、タッチパッドなどの位置入力手段と液晶パネルからなる表示手段とを組み合わせたタッチパネルで構成してもよい。
【0025】
制御部103は、携帯端末100が起動されると、記憶部104に格納されているシステムプログラムおよびワーキングプログラムを実行し、後述される所定の作業を所定の順序で行う。
【0026】
通信部105は、外部装置との通信手段であり、無線通信、有線通信いずれのインターフェイスでも良く、無線通信は、WiFi、Bluetooth(ブルートゥース:登録商標)、赤外線通信などがある。また、NFC(Near Field Communication)などを搭載しているので、生産者を認証する際に利用できる。その他、MAC(Media Access Control)アドレスなどで端末を識別することで生産者を認証しても良い。
【0027】
携帯端末100の作用については、後に管理装置200およびラベルプリンタ300の作用と関連させて詳述する。
【0028】
3.0 管理装置
管理装置200は、販売管理システムA全体を統括制御するコンピュータで構成され、ラベルプリンタ300とPOS端末機400に対してはサーバとクライアントの関係にある。管理装置200は、独立したものでもよいが、インターネット上のクラウドであってもよい。
図3に示すように、管理装置200は、CPU(Central Processing Unit)201、DB部 (データベース部) 202、記憶部203および通信部204を有する。これらはバスライン205により相互に接続されている。
【0029】
CPU201は、管理装置200が後述されるようにラベルプリンタ300およびPOS端末機400の間で各種データの授受を行い、各種の管理処理を行うために、
図4に示すように、それぞれソフトウェアで構成されたファイル登録手段201a、通信制御手段201b、入荷管理手段201c、在庫管理手段201d、売上管理手段201e、精算管理手段201fおよび価格検索手段201gを有する。
【0030】
価格検索手段201gは、本発明において新たに備えられたものであるが、これ以外の手段201a~201fは周知慣用の技術を用いているので、詳細な説明は割愛する。
【0031】
DB部202には、ラベルプリンタ300によるラベル発行に必要なデータとして、
図5に示すように、生産者ファイル202aと商品ファイル202bと価格変動要因ファイル202cが保存されている。
【0032】
図6はDB部202に記憶される生産者ファイル202aの一例を示す図である。同図に示すように、生産者ファイル202aは各生産者の生産者コード (生産者識別情報)と生産者名等の生産者情報からなっている。
図7はDB部202に記憶される商品ファイル202bの一例を示す図である。同図に示すように、商品ファイル202bは、各商品の商品コード(商品識別情報)、商品名、価格、産地名、内容量、農薬情報などの商品情報からなっている。加えて端末情報を関連付けて登録しても良い。
【0033】
価格変動要因ファイル202cには、価格変動要因が登録されている。価格変動要因は、
図8に例示するように、内在要因と外在要因とに分けることができ、内在要因としては、商品規格、サイズ(たとえば大、中、小)や入数(たとえば本数、個数、重量)、出来映え(たとえばランクS・A・B・C)や欠陥の割合(たとえば1割、2割)などを挙げることができるが、これに限られない。また、外在要因としては、出荷日の天気(数日間の気象状態)、天候(一週間や一か月など比較的短期の気象状況)、気候(一か月以上の長期的なもの)などの晴雨・気温・湿度・風などの状態・状況、地域(産地)などを挙げることができるが、これに限られない。
【0034】
記憶部203には、ラベルプリンタ300から送信されてくる少なくともラベル情報、すなわち、ラベル発行の際に印刷された生産者情報と商品情報が、後の管理のため、および参考価格検索のために、逐次記憶される(ラベル発行履歴データ)。通信部204は、管理装置200と、ラベルプリンタ300およびPOS端末機400との間の通信制御を行う。
なお、携帯端末100は、管理装置200との間でクラウド経由や無線通信で接続可能である。また、携帯端末100は、ラベルプリンタ300との間でも無線通信可能である。この場合は、WiFi接続やブルートゥースなどの近距離通信でもよい。
【0035】
以下には、携帯端末100および管理装置200の作用について説明する。
【0036】
[第1の実施の形態]
携帯端末100は、起動されると、まず管理装置200に業務開始の通知を行う(
図9のステップ1。以下、ステップをSという。)。携帯端末100は、初期画面でラベル発行をする操作者のログイン認証を行う。ログイン認証は、予め契約により付与されているID(生産者コードおよび生産者名を含む生産者情報)をログイン画面での入力により管理装置200に送信して、認証を要求する。この認証要求に対して管理装置200から、認証結果として、販売管理を担う企業名およびラベルプリンタ300が設置されている店舗名に、認証相手である生産者の識別情報である生産者情報とその生産者の出荷可能な品目の情報である品目情報を加えて、マスタ情報として携帯端末100に送信し、画面に表示する。
【0037】
生産者が商品の価格決定の際に価格変動要因を考慮する価格決定方式を導入する場合は、価格変動要因を管理装置200の価格変動要因ファイル202cに登録しておき、業務開始の通知を行ったときに、その価格変動要因をマスタ情報に加えて携帯端末100に送信する。これについては、後述される。携帯端末100は受信したマスタ情報を記憶部104に格納する(S2,S3)。
価格変動要因を管理装置200に登録するのではなく、各携帯端末100に登録するようにしてもよい。価格変動要因ファイル202cが前回記憶時以降に更新された場合は、各携帯端末100へ報知しても良いし、自動更新の処理を実行しても良い。
【0038】
次に、携帯端末100は表示部102に、
図10の遷移図に示されている順序で各種画面を表示する。最初に、
図11に例示するアプリトップ画面(以下、トップ画面という。)SC1を表示する(S4)。トップ画面SC1の左側上部に設けられた第1表示領域da1に作業の選択を促す文字が表示され、その第1表示領域da1の下側に設けられた第2表示領域da2に、二つの作業内容を選別するための「設定画面へ進む」ボタンb1と「発行予約へ進む」ボタンb2とが選択可能に表示される(S5,S6)。
【0039】
携帯端末100には、使用開始前に、使用者の生産者、商品出荷先である店舗、使用者が商品に貼付するラベルを発行させるラベルプリンタなどの項目を識別可能なコードで設定する必要がある。
【0040】
図11のトップ画面SC1において「設定画面へ進む」ボタンb1をタッチした場合(
図9のS6でYのとき)は、設定プログラムが実行され(S11)、
図12に示すようなマスタ受信画面SC2に遷移し、第1表示領域da1には設定項目の操作を促す文字が表示されるとともに、第3表示領域da3にこのマスタ受信画面SC2で操作可能な内容を表す「マスタ受信」ボタンb12、「店舗一覧」ボタンb13、および「店舗登録」ボタンb14が表示される。このとき、マスタ情報の更新の有無で表示態様を替えたり、更新有りの場合は有効に、更新がない場合は無効にするようにしても良い。
【0041】
また、第2表示領域da2の中央に即時受信ボタンb15が表示され、その即時受信ボタンb15の上側と下側に、最終マスタ受信時刻およびアプリを起動したときにマスタを自動受信する旨の文字が表示される。そして、即時受信ボタンb15が押されると、即時にマスタ受信が行なわれ、第2表示領域da2の右側に設けられた第4表示領域da4にマスタ受信中であることと、店舗情報、品目情報および産地情報のそれぞれの受信進行状況が表示される。
【0042】
マスタ受信画面SC2の「店舗一覧」ボタンb13を押すと、
図13の店舗一覧画面SC3に遷移し、第1表示領域da1と第3表示領域da3には、マスタ受信画面SC2のものと同じ内容が表示されているが、第2表示領域da2には、この販売管理システムに加盟している企業・店舗と生産者コードのリストL3が表示される。したがって、この携帯端末100の使用者は、このリストL3を見て自分の商品出荷先店舗と生産者コードを確認した後、次の店舗登録画面SC4において携帯端末100に登録をすることができる。このとき、操作者の権限により表示内容を制御しても良い。例えば、直売所、店舗の従業員の場合は、全生産者のデータを参照可能として、当該生産者に関しては自身のデータのみ参照できるようにしても良い。そうすることで、生産者は、当該店舗で登録がないこともすぐにわかる。換言すれば、チェーン展開や複数の直売所で共通の管理装置(クラウドサービス)を提供している場合は、ラベルプリンタ300にログインできるが当該店舗での登録がないことも容易に確認できる。その際の登録についても、生産者が独自に登録可能としても良いし、追加登録の場合は従業員の認証コードを入力するように制御しても良い。
【0043】
図13のマスタ受信画面SC2の「店舗登録」ボタンb14を押すと、
図14の店舗登録画面SC4に遷移し、第1表示領域da1と第3表示領域da3には、マスタ受信画面SC2と同じ内容が表示されているが、第2表示領域da2には、店舗コードを登録するためのキー群k1が配置され、そのキー群k1の上側に入力内容を確認するための登録キー表示窓w1が設けられている。したがって、携帯端末100の店舗ファイルに自分の出荷先店舗を登録することができる。
【0044】
携帯端末100では、上記の項目設定を行った後(S12でYのとき)は、ラベル発行の予約を行うことができる。すなわち、
図11のトップ画面SC1の「発行予約へ進む」ボタンb2をタッチすると(S5でYのとき) 、携帯端末100からラベルプリンタ300に対して発行予約をするための発行予約設定プログラムが実行される(S7)。
【0045】
まず、
図15に例示するように、表示部102に企業店舗選択画面SC5のメイン画面が表示され(
図9AのS71)、そのメイン画面の第1表示領域da1に、企業と店舗の選択を促す文字が表示され、また第2表示領域da2に店舗を経営している企業名と店舗名のリストL1が表示される。なお、好ましい実施態様として、第1表示領域da1と第2表示領域da2の間に第3表示領域da3が設けられ、その第3表示領域da3に携帯端末100のオペレータである担当者名が表示される。
【0046】
携帯端末100に音声出力部(図示せず)を備え、表示部102のメイン画面に
図15の企業店舗選択画面SC5が表示された時に、その音声出力部から企業と店舗の選択を促す音声を出すことが、誤入力防止のため望ましい。
【0047】
企業店舗選択画面SC5において企業と店舗を選択したとき(S72でYのとき)は、その選択した内容が記憶部104の予約情報ファイルに企業・店舗データとして登録される(S73)。
【0048】
企業・店舗の選択をした後は、表示部102のメイン画面が
図16の品目選択画面SC6に遷移し(S74)、第1表示領域da1に商品選択を促す文字が表示されるとともに、第2表示領域da2に、記憶部104から読み出した品目情報に基づいて取扱対象商品のリストL2が表示される。そのリストL2の右側に「発行履歴」ボタンb3と「カナ検索」ボタンb4が表示される。
【0049】
「発行履歴」ボタンb3にタッチすると(S75でYのとき)、メイン画面が
図17の発行履歴選択画面SC7に遷移し(S76)、第1表示領域da1に発行履歴の選択を促す文字が表示されるとともに、第2表示領域da2に、この携帯端末100の使用者である生産者が過去の一定期間内にラベル印刷をした履歴(発行履歴)が記憶部104から読み出されて表示される。発行履歴には、ラベル印刷の日付、ラベル貼付の対象となった商品の商品名、内容量および価格が含まれる。
図17Aは、内容量が記録されていない場合の例である。
【0050】
なお、この発行履歴選択画面SC7に遷移したときは、たとえば、『発行履歴を選択してください』などの音声が出される。また、第2表示領域da2の下側に配置されているボタン(符号省略)のいずれかを押すことにより、第2表示領域da2の表示内容を先頭、前、次、最後のいずれかに移動させたり、表示を中止したりすることができる。
【0051】
図17Bは、第2表示領域da2に表示される発行履歴の他の例である。
図17Bの例では、「日付」、「商品」、「規格」、「単位」、「価格」、「上限価格」、「平均価格」、「下限価格」、「天候」、「温度/室温」がそれぞれ表示される。すなわち価格決定に参考になる項目が表示されるので、それらを参考に生産者は価格決定することができる。なお表示画面の大きさが限られている場合は、例えばスライドバーや「→」ボタン等を設け、それを操作して表示画面を遷移させて必要な項目の情報を表示させるようにすることができる。
【0052】
図16の品目選択画面SC6における「カナ検索」ボタンb4にタッチした場合(S77でYのとき)は、
図18に例示するような品目選択のカナ検索画面SC8に遷移する(S78)。このカナ検索画面SC8は、
図16の品目選択画面SC6に表示された商品名を絞り込むためのものであり、
図16と同様に商品選択を促す文字が表示されている第1表示領域da1の下側に「商品カナ検索」と表示されているとともに、その下側の第2表示領域da2にカナ文字のキーボードが表示され、その周辺にクリア、挿入、前進(→)、後退(←)および確定などの各ボタン(符号省略)が配置されている。なお、このカナ検索画面SC8に遷移した時は、たとえば、『絞り込む商品カナ名を入力し最後に確定ボタンを押してください』などの音声が出される。
【0053】
図17Aのカナ検索による品目選択を終了した後(S79でYのとき)は、すなわち、
図17Aのカナ検索画面において商品名の絞り込みをすると、表示部102のメイン画面は、
図19に示すように、産地選択画面SC9に遷移し(
図9BのS710)、第1表示領域da1に産地の選択を促す文字が表示され、第2表示領域da2に当該店舗に出荷される可能性のある商品の産地名リストL3が表示される。産地名は、一定範囲単位、一例として道、県、特定の地域(水揚げの場合は港や漁を行った海域)など、食品表示法でうたわれている産地の単位で表示される。また、生産者名を加えても良い。対面販売の場合は産地名称は不要の場合があるので、未選択でも良い。
【0054】
この産地名リストL3の表示内容は、第2表示領域da2の下部に配置されているボタン(符号省略)のいずれかを押すことにより、先頭、前、次、最後に移動することができる。また、産地選択画面SC9に遷移した時は、たとえば『産地を選択してください』などの音声が出される。
【0055】
産地名リストL3の右側に表示されているカナ検索ボタンb4を押すと(S711でYのとき)、表示部102に、
図20に例示するように、
図18のカナ検索画面SC8とほぼ同様なカナ検索画面SC8’が表示される(S712)。なお、このカナ検索画面SC8’に遷移した時も、たとえば、『絞り込む産地カナ名を入力し、最後に確定ボタンを押してください』などの音声が出される。
【0056】
産地の選択を終了した後(S713でYのとき)は、表示部102のメイン画面は
図21に示すように単位選択画面SC10に遷移する(S714)。第1表示領域da1に、出荷する商品の単位の選択を促す文字が表示され、第2表示領域da2に単位を表す文字、たとえば「個」「本」「箱」…「g」などが選択し易いように一列L4に配置されている。単位の文字列L4の下側には、選択の確定を求める確定ボタンb5と、単位が無い場合に押される単位無しボタンb6が表示されている。なお、この単位選択画面SC10に遷移した時は、一例として『単位を選択してください』などの音声が出される。
【0057】
図21の単位選択を終了すると(S715でYのとき)、表示部102のメイン画面は
図22Aの価格入力画面SC11に遷移し(S716)、絞り込まれた商品の価格の入力と第1表示領域da1に確定キーの押下を促す文字が表示される。そして、第2表示領域da2に、ラベル貼付対象となる商品の商品名、産地名、出荷日(納品日)、製造年月日、消費期限、内容量、本体価格、発行枚数等の項目を示す文字が表示されるとともに、各文字の右側に項目の入力領域が表示され、さらにその右側にテンキーb7が配置され、そのテンキーb7の下側に確定ボタンb5が表示されている。なお、この価格入力画面SC11に遷移した時は、一例として『価格を入力して確定ボタンを押してください』などの音声が出される。
【0058】
管理装置200のDB部202の価格変動要因ファイル202cに価格変動要因が登録されている場合は、上述したように、携帯端末100が起動されたときに、携帯端末100からの要求に基づき管理装置200は価格変動要因ファイル202cから価格変動要因情報を読み取って携帯端末100に送信する。受信した携帯端末100はこれを記憶部104に記憶する。
【0059】
図22Aの価格入力画面SC11の、一例として第1表示領域da1の右側に要因考慮ボタンb8と参考ボタンb9が設けられている。携帯端末100において要因考慮ボタンb8が押された場合は、参考価格要求信号と要因情報が管理装置200に送信され、管理装置200はその参考価格要求信号と要因情報に基づいて価格検索手段201gにより価格データベースの中に同じ要因を有する同一商品について価格が記録されているか否かを検索し、その検索結果を携帯端末100に送信する。
【0060】
これに対し、携帯端末100において参考ボタンb9が押された場合は、参考価格要求信号と商品情報が管理装置200に送信され、管理装置200はその参考価格要求信号と商品情報に基づいて価格検索手段201gにより、価格データベースの中にその商品情報と同一商品について記録されている価格を読み出して携帯端末100へ参考価格として送信する。以下、これについてさらに説明する。
【0061】
要因考慮ボタンb8は、生産者が出荷する商品の販売価格を決定する際、価格変動要因が存在する、または発生したと考えられる場合に、その価格変動要因を考慮して販売価格に反映する必要があると考えた時に使用される。
【0062】
図22Aの要因考慮ボタンb8を押した場合(
図9CのS717でYのとき)は、記憶部104に記憶された価格変動要因情報を読み出すとともに、
図22Bに例示するように要因入力画面SC12に遷移する(S718)。第2表示領域da2において、内在要因として商品サイズ、欠陥の割合などを、外在要因として天気、天候、気候、産地などを、ボタンのタッチにより選択的に入力することができる。
内在要因である商品サイズ、欠陥の割合などは、生産者が出荷予定の商品を見て決めることができる。
また、外在要因である出荷日の時期(たとえば [平日][休日][月末][月初]など)、出荷日の天気(当日のたとえば気温、[晴れ][曇り][雨][雪][霜][寒い][暖かい]、天候(当日の数日前の天気)、気候(長期にわたる気温、降雨量など)は、生産者自身の知識と経験に基づき、または公共放送の気象情報、天気予報などに基づいて決めることができる
【0063】
要因考慮を選択する際、確定ボタンの上に、「デフォルト」で参考価格のうちいずれか、この場合は、参考価格が、上限・平均・下限の場合は、平均金額(ラベラ使用者全体)もしくは、生産者の履歴データで一番売上が良かった売価、上限・下限・平均(あくまで個人データ)を表示しておき、内在要因、外在要因を選択する毎に、選択した要因に応じた推奨価格に更新される。複数の要因を選択すると、AND条件により推奨価格を更新する。選択ボタンは再度押下すると取消しとなる。生産者は、この画面でいろいろな条件のシミュレーションを行うことも可能である。
【0064】
図22Bの(a)の例では、参考価格として、ラベラ使用者全体の上限・平均・下限の平均金額が表示されている。
図22Bの(b)の例では、外材要因の「雨」が選択され、その条件に基づく参考価格が表示されている。
図22Bの(c)の例では、内外要件の「小」と外在要因の「雨」が選択され、そのAND条件に基づく参考価格が表示されている。
【0065】
これらの価格変動要因のいずれかを選択すると(S719でYのとき)、その価格変動要因情報が参考価格要求信号と共に管理装置200に送信される(S720)。管理装置200は、受信した参考価格要求と価格変動要因情報に基づいて、管理装置200が有する価格データベースの中に、同じ要因を有する同一商品について価格が記録されているか否かを検索する。該当する価格があった場合は、報知手段はその価格を携帯端末100に参考価格として報知する。該当する価格が無い場合は、参考価格無しの情報を携帯端末100に報知する。
【0066】
管理装置200の価格データベースの中に、選択された、または入力された価格変動要因に対応する参考価格がない場合は、報知手段に条件入力手段を付加し、その条件入力手段により価格変動要因に対応する所定の条件を入力することにより、前記報知手段で報知される販売価格を所定の掛け率により変更して、これを参考価格とすることもできる。
【0067】
価格変動要因の入力は、内在要因(商品サイズ、欠陥の割合および産地など)については生産者自身が入力することができるが、予め画面表示し、ボタン選択により入力することもできる。選択された内在要因により価格計算ロジックを変更すればよい。
外在要因(出荷日の天気、天候、気候など)については、管理装置200に設けた、またはより好ましくは、クラウド上に設けられたAI(人工頭脳)に気象情報や天気予報などのビッグデータに基づいて自動的に予知情報を出力させ、その予知情報を利用しても良い。また、AIにその予知情報に基づいて参考価格を自動的に算出させるようにしても良い。
ビッグデータを活用すれば、当該ラベルプリンタに登録されている生産者、商品の販売履歴よりも大きなデータから参考価格を割り出せるから、より正確な参考価格が算出されることが期待できる。
さらに、同一商品の一定期間における売上高順の価格帯を選択可能に表示しても良い。店舗別、チェーン別、期間指定など行えるようにしても良い。
【0068】
管理装置200が価格変動要因に基づいて参考価格を出力するまでしなくとも、生産者が適正な販売価格を決定するのを支援する、次のような方法を用いることができる。すなわち、管理装置200に設けた演算手段(CPU)により、出荷前2~3日間の各生産者の出荷数量と価格の日足平均値を算出してグラフ化し、そのグラフを、日足平均値を求める生産者の携帯端末100に送信する。その生産者はその日足平均値を参考にして自分の販売価格を決定することができる。
【0069】
天候と気候は農産物の成長・収量に影響する。快晴日の連続日数または降雨期間が一定値以上に長くなった場合は、成長・収量が抑えられる。特に玉ねぎやジャガイモなどの根菜および葉物はその傾向がある。したがって、管理装置200に当該直売所に出荷する生産者の生産地域における快晴日の連続日数や降雨期間または降雨量を監視するモニタを設け、モニタが計測した情報を求める生産者の携帯端末100に提供する。その生産者は受信した快晴日連続日数や降雨期間または降雨量と経験に基づいて農産物の成長度合いおよび収量を推測することができる。成長、収量が例年よりも少ないと推測するときは、販売価格を高めに設定することができる。
【0070】
IoTやAIを用いれば、快晴日連続日数や降雨期間と降雨量に基づいて農産物の成長度合いおよび収量を予測または推測することは、過去数年の集積データに基づいて容易に行うことができる。その予測値または推測値は、その時の適切な販売価格を決定する一つの重要な要素とすることができる。
【0071】
携帯端末100は、管理装置200から参考価格を受信した場合(S721でYのとき)は、
図22Cの本体価格表示位置の付近に設けてある参考価格表示位置に、その受信した参考価格を表示する(S722)。なお、管理装置200から参考価格無しの報知情報を受信した時は、参考価格表示位置に「無し」と表示する。
【0072】
要因考慮ボタンb8を押した生産者は、
図22Cの本体価格表示位置に表示されている自分が入力した価格(自己価格)と、参考価格表示位置に表示されている参考価格(無しも含む)を比較考量(S723)して、価格決定ボタンb10とb11のいずれかを選択(S724)して、確定ボタンb5を押すことにより(S725でYのとき)、出荷する商品の価格を決定(S726)することができる。
【0073】
他方、
図22Aの価格入力画面SC11の参考ボタンb9を押した場合(S727でYのとき)は、
図11の「発行予約へ進む」ボタンb2をタッチした後に携帯端末100に入力された情報、すなわち、生産者名、出荷日、商品名、商品サイズなどを包含する商品情報が参考価格要求信号とともに管理装置200に送信される(S728)。管理装置200は、その参考価格要求に基づいて売上情報データベースの直近の売上情報から他の生産者の同一商品の価格を検索し(S729)、その検索結果を参考価格として携帯端末100に送信する。
【0074】
携帯端末100は管理装置200から参考価格を受信すると(S721でYのときは)、
図22Cの参考価格表示位置に表示する。この場合も、生産者は、本体価格表示位置に表示されている自己価格と、参考価格表示位置に表示されている参考価格を比較考量(S723)して、価格決定ボタンb10とb11のいずれかを選択して(S724)確定ボタンb5を押すことにより(S725でYのとき)、出荷する商品の価格を決定(S726)することができる。
自己価格と参考価格の比較考量と出荷する商品の価格の決定は、生産者自身が行うこともできるが、管理装置200で行うことが望ましい。
【0075】
前頁には、推奨または参考価格について記載されているので、
図22Cにおいて、推奨価格または参考価格が表示される。商品マスタに価格が設定されている場合は、同図に「設定価格」が表示される。また、この図の「参考価格」には、前頁での要因選択による推奨価格が表示され、未操作の場合は、前頁のデフォルト表示価格が表示される。「本体価格」には、操作性を考えるなら、参考価格が入力された状態で、テンキー入力でクリア後、テンキー入力の数値が表示され、そのまま確定ボタンを押下すると、推奨価格または参考価格で値付けとなるようにすることもできる。
図23、
図24Aにおいても同様である。
【0076】
価格決定を終了すると、表示部102の画面は、
図23に示すような発行枚数入力画面SC13に遷移する(
図9DのS730)。この発行枚数入力画面SC10においては、第1表示領域da1にラベル発行枚数入力後、確定ボタンb5を押すことを促す文字が表示されるとともに、
図22Aの価格入力画面SC11の第2表示領域da2においては未表示であった部分に、先に入力した産地名、本体価格が追加表示されている。そして、テンキーb7から発行枚数を入力した後(S731でYのとき)、確定ボタンb5を押すと(S732でYのとき)、ラベル印刷発行予約の条件が満たされる。
【0077】
発行枚数入力後、確定ボタンb5を押すと(S732でYのとき)、表示部102の画面は、
図24Aに示すようなラベル発行予約画面SC14に遷移し(S733)、第1表示領域da1にラベル発行予約が可能である旨が表示される。第2表示領域da2の表示内容は、
図23の第2表示領域da2の表示内容のままである。
【0078】
そして、第2表示領域da2の確定ボタンb5を押すと(S734でYのとき)、その第2表示領域da2に表示されている内容を印刷内容とするラベル発行予約情報が管理装置200またはラベルプリンタ300に送信される(S735)。
図9DのS734は、
図9のS8に相当する。ラベルプリンタ300から発行予約情報を受信した旨の返答信号を受信した場合(S92においてYのとき)は、
図24Bに示すように表示部102にラベル発行中画面SC15が表示される(
図9DのS93)。
【0079】
4.0 ラベルプリンタ
ラベルプリンタ300は、多くの場合は生産者が商品を搬入する直売所のバックヤードに設置され、生産者がこれを操作して直売所に出荷する商品に貼付するためのラベルを発行するものである。
【0080】
販売管理システムの運営方法は、生産者から予め出荷予定およびラベル発行予約を受領し、生産者の出荷時にラベル発行予約の内容に基づいて所定のラベルを発行する。
【0081】
ラベルには、商品表示基準に沿った表示項目が印刷されなければならない。本発明の好ましい実施の形態においては、ラベル発行と貼付の合理化を図り、各生産者の生産者情報、商品情報および出荷予定情報を予め携帯端末100から管理装置200に送信して格納する。そして、生産者は出荷前日または出荷前にラベルプリンタ300で管理装置200から情報をダウンロードしてラベルを発行し、そのラベルを商品に貼付する。生産者が納品する農産物の出荷予定やラベル発行に必要とする情報は、携帯端末100が通信回線を介して管理装置200に接続され、携帯端末100より各種情報が管理装置200に送信されて記憶される。
【0082】
図25は、ラベルプリンタ300の全体構成を示す。同図に示すように、ラベルプリンタ300は、バスライン307で相互に接続されたCPU301、記憶部302、通信部303、ラベル発行部304および表示部305を有する。記憶部302は、フラッシュメモリその他のROM(Read Only Memory)302aとRAM(Random Access Memory)302bとを含む。
【0083】
CPU301は、ラベルプリンタ300の処理動作全体を制御する制御手段である。そして、CPU301は、携帯端末100または管理装置200から受信する信号に基づき、後述される所定の制御を行う。
【0084】
ROM302aは主記憶装置に該当するものであり、CPU301が実行するプログラムの他、CPU301が演算処理に際して利用する各種の設定データ等が記憶される。なお、ROM302aに代えて、たとえばハードディスク等の他の記憶装置を用いても良い。
【0085】
RAM302bは補助記憶装置に該当するものであり、CPU301が演算処理を実行する際の作業領域を提供する。また、RAM302bには、携帯端末100または管理装置200の操作により入力されるデータを記憶する一時記憶エリアが設けられる。
【0086】
さらに、RAM302bには、生産者ファイルおよび商品ファイルが記憶される。後述されるように、ラベルプリンタ300がラベル発行処理を行う際に、携帯端末100からの要求に応じて管理装置200の生産者ファイルおよび商品ファイルから呼び出される生産者データおよび商品データの一部がダウンロードされて、RAM302bの生産者ファイルおよび商品ファイルに格納される。生産者ファイルおよび商品ファイルを管理装置200からダウンロードすることに代えて、携帯端末100から予め格納し記憶するようにしてもよい。
【0087】
通信部303は、ラベルプリンタ300と管理装置200または携帯端末100との通信をネット回線を介して行なう送受信手段である。管理装置200との間はLANを経由して通信を行うものでもよい。
【0088】
ラベルプリンタ300は、ラベル発行を終了するたびに、そのラベルに印刷された情報(ラベル情報)、すなわち、生産者コード、生産者名、商品コード、商品名、産地名、出荷日、消費期限、内容量、税込価格、ラベル発行枚数をRAM302bに一時記憶し、その記憶されたラベル情報を通信部303を介して管理装置200に送信する。その送信は、ラベル発行終了直後に行ってもよいし、所定の時間間隔をおいて行ってもよい。
【0089】
管理装置200は、ラベルプリンタ300から送信されてくる各ラベル情報を受信記録し、生産者コード別または商品コード別などに分類し、集計してラベル発行履歴を記録する。また、後述されるPOS端末400から送信されてくるラベル情報を利用して、合致する生産者コードを有するラベル情報に対して各種の管理処理、たとえば生産者別の売上管理、在庫管理、精算管理、農薬管理等を行う。
【0090】
管理装置200により得られた管理情報は、管理装置200の記憶部203に売上管理情報、在庫管理情報、精算管理情報、農薬管理情報等として保存される。その保存された管理情報は、生産者または店舗の求めに応じて携帯端末100にメール送信可能である。
農薬管理および農薬管理情報については、後に詳述される。
【0091】
なお、ラベルプリンタ300には、その使用に先立ち、管理装置200から生産者ファイル、商品ファイルなどの情報がダウンロードされるとともに、マスタ更新を行う開設処理を行う機能を有する。また、ラベルプリンタ300は、一日のラベル発行の実績を管理装置200にアップロードするための閉設処理を行う機能を有する。
【0092】
なお、生産者ファイルおよび商品ファイルは、管理装置200からラベルプリンタ300にダウンロードさせることに代えて、ラベルプリンタ300に生産者ファイルおよび商品ファイルを格納するようにしてもよい。
【0093】
生産者が自宅でラベルを発行し、農産物に貼付して納品した場合の納品確定は、直売所の携帯端末100で農産物に貼付されているラベルのバーコードを読み取ることにより確定しても良いし、または、生産者が使用するラベルプリンタ300より管理装置200に送信されたラベル発行実績を管理システムの画面に表示し、受信したラベル発行実績の数量を確認し、その数量に問題が無い場合は、一括確認により当該生産者の納品実績として確定するようにしてもよい。
【0094】
ラベルプリンタ300においてラベル発行が完了すると、ラベル発行実績が納品実績として管理装置200に送信される。このラベル発行実績情報に基づいて、精算処理(日締め処理)における生産者に対するラベル代請求金額が更新される。
【0095】
(a) ラベル発行予約を管理装置200に送信する場合
携帯端末100から発行予約情報を管理装置200に送信する場合の管理装置200の動作流れは、
図26に示す例の通りである。まず、発行予約の要求がある場合(S21でYのとき)は、その要求元が登録された生産者であるか否かを生産者コードによりチェックする(S22でYのとき)。生産者コードが登録されている場合(S23でYのとき)は、ラベルプリンタ300からその携帯端末100に印刷内容を示す印刷データの送信を求める(S24)。印刷データを受信したとき(S25でYのとき)は、その印刷データと生産者コード(発行予約情報)をメモリ(図示せず)に保存する(S26)とともに、その発行予約情報をラベルプリンタ300に送信する(S27)。発行予約情報をラベルプリンタ300に送信した後は、S21に戻り、次の発行予約の要求を待機する。
【0096】
携帯端末100から発行予約情報を管理装置200に送信する場合は、管理装置200は、ラベル発行に関しては発行予約情報をラベルプリンタ300に送信するための中継点となる。ラベルプリンタ300からその発行予約情報に対応するラベル発行を終了した旨の信号などを管理装置200が受信したことにより、管理装置200は先にメモリに保存した発行予約情報を、その発行予約情報を送信してきた生産者の売上管理に利用することができる。売上管理のための情報処理技術については、特許文献1の記載を援用する。
【0097】
ラベル発行予約をした生産者がラベルプリンタ300にラベルを発行させるには、
図27に示すように、携帯端末100からラベルプリンタ300に発行要求信号を与える(
図9EにおけるS91)。ラベルプリンタ300は、発行要求信号を受信したとき(
図27のS31でYのとき)は、その発行要求信号に含まれる生産者コードから要求者をチェックする(S32)。要求者が登録された生産者である場合(
図9EのS92でYのとき;
図27のS33でYのとき)は、メモリからその生産者コードに付随して記憶されている印刷データを読み出し(S34)、これをラベル発行部304に与える。ラベル発行部304は発行枚数が印刷データに含まれる発行枚数に達するまでラベルを印刷し発行する(S35,36)。
【0098】
(b) ラベル発行予約をラベルプリンタ300に送信する場合
上には、生産者が携帯端末100から管理装置200を経てラベルプリンタ300に発行予約情報を送り、携帯端末100からラベルプリンタ300に発行要求信号を与える場合の例について説明したが、携帯端末100からラベル発行予約を行う態様には、以下の3つの実施例が可能である。
【0099】
第1実施例は、
図28に例示するように、生産者Mが店舗Sに行き、店舗Sに備え置かれている携帯端末100を操作して、携帯端末100とラベルプリンタ300の間をブルートゥースなどの短距離無線により、またはUSBケーブルなどを介して通信可能にして、ラベル発行予約を行うものである。この場合の携帯端末100には、タブレットが最適であるが、スマートフォンを使用することも可能である。
【0100】
店舗で携帯端末100を使用するときは、店員の権限で「マスタ受信」「店舗登録」を行い、その店舗で生産者が登録されているかについても、店舗一覧を見ることなく「ログインできません。」「生産者の登録がありません。」など、ログイン画面で明確にすることができる。
【0101】
第2実施例は、
図29に例示するように、生産者Mが自宅(出荷作業所を含む。)Hに置いてある携帯端末100と店舗Sのラベルプリンタ300とをインターネット回線を介して通信してラベル発行予約を行うものである。この場合の携帯端末100には、タブレットが最適であるが、スマホを使用することも可能である。
【0102】
自宅で携帯端末100を使用する場合は、「店舗登録」、「店舗一覧」が有効になるが、当該ログインをした生産者のデータのみの閲覧が可能になればよい。店舗登録は事前に直売所やメールなどで管理者に登録依頼などを行い管理装置へ登録依頼を行ったり、クラウドサービス上で、店舗登録の申込を行い、その申込に対して管理者が承認処理を行うなど許可を受ける方法は特に限定されない。
【0103】
自宅で予約が完了したときは、管理装置(クラウドサービス)から当該携帯端末100に、直売所のラベルプリンタを使用して、予約発行を可能にするワンタイムパスワードが発行される。そして、店舗Sでそのワンタイムパスワードをラベルプリンタ300に入力すると、当該予約データに基づくラベル発行が可能な状態になる。
ワンタイムパスワードを、一次元コード、二次元コードなどシンボルコードによって携帯端末100の画面に表示して、該シンボルコードをラベルプリンタ付属のスキャナーで読み取るなどして認証を行ってもよい。また、ワンタイムパスワードに代えて、生産者IDとパスワードであっても良いし、パスワードのみでもよい。つまり、他の生産者や誤ってラベル発行したり、いたづらや不正によるラベルプリンタの使用を防止することが可能であり、認証方法も簡単であるのでスムーズにラベル発行処理が行える点で効果を有する。
【0104】
第3実施例は、
図30に示すように、生産者が複数の店舗、たとえば店舗1と店舗2に出荷する場合で、店舗1と店舗2が同一企業に属する場合は、生産者の携帯端末100はその店舗1と店舗2のラベルプリンタ300A,300Bに同時にラベル発行予約をすることができる。また、店舗1と店舗2が2企業に属する場合は、管理装置200からその2企業分のデータを携帯端末100にダウンロードして各店舗のラベルプリンタ300A,300Bに同時にラベル発行予約をすることができる。
【0105】
発行予約を行った生産者が店舗に来て、ラベルプリンタ300を既知の方法で操作することにより、予約した内容が印刷されたラベルを所定枚数発行させることもできる。生産者がラベルプリンタ300を操作してラベルを発行する場合のラベルプリンタ300の作用については、特許文献1の記載を援用する。
【0106】
管理装置200を経由せずに発行予約情報を受信したラベルプリンタ300がラベルを発行した場合は、ラベルプリンタ300は発行したラベルに係る発行予約情報を当該生産者の売上管理のために管理装置200に送信する。
【0107】
これに対して、携帯端末100から発行予約情報を直接ラベルプリンタ300に送信するようにした場合は、ラベルプリンタ300はそのラベル発行予約を受け付け、受信したラベル発行予約情報を一時メモリに保存する。そして、その発行予約をした生産者がその携帯端末100からラベルプリンタ300に発行指令信号を入力したとき、ラベルプリンタ300は、その生産者について一時メモリに保存された発行予約情報に基づいて所定内容が印刷されたラベルを所定枚数発行する。
【0108】
[POS端末機]
なお、ラベルプリンタ300には、商品に貼られたラベルのバーコードを読み取るバーコードリーダを備えたPOS端末(図示省略)400が接続されている。POS端末400は、POS(販売時点情報管理)機能を備えた端末機であり、直売所に出品されている商品 (農産物)を客が買うために商品受け渡し口(レジ)に持参した際に、店員によって操作される端末である。
【0109】
POS端末400は、ラベルのバーコードをスキャナーにより読み取った後、精算を終了するたびに、そのラベルから読み取ったラベル情報を、通信部を介して管理装置200に送信する。この送信は、CPU301が精算を終了したと判断した時に実行される。
【0110】
こうして、管理装置200には、ラベルプリンタ300から送信されてくるラベル情報が生産者別の出荷情報として収集され、記憶部203の出荷情報記憶エリアに格納される。また、POS端末400から送信されてくるラベル情報が生産者別の売上情報として収集され、記憶部203の売上情報記憶エリアに格納される。この記憶部203に格納された生産者別の売上情報に含まれる商品ごとの販売価格は、1つには、生産者の販売予定価格を決定する際に参考価格として検索される。
【0111】
なお、管理装置200では、CPU201が出荷情報記憶エリアに格納されたラベル情報と売上情報記憶エリアに格納されたラベル情報とを常時照合し、生産者コードが合致する双方のラベル情報に基づいて、入荷管理手段201cによる生産者別の入荷管理、在庫管理手段201dによる在庫管理、売上管理手段201eによる売上管理、精算管理手段201fによる精算管理を行う。
【0112】
入荷管理、在庫管理、売上管理、精算管理の処理方法は、特許文献1に記載されている通り既知であるので、詳細な説明は割愛する。
【0113】
5.0 農薬管理(栽培日誌管理)
農薬取締法は、昭和23年7月1日に施行され、平成19年3月30日に最終改正された。この法律は、農薬について登録制度を設け、販売および使用の規制等を行うことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、農業生産の安定と国民の健康保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とするものである。
【0114】
[第2の実施の形態]
本発明は、ラベル発行を求める生産者の農薬使用状況をチェックし、ラベル発行許可条件が満たされたときに限りラベルを発行することにより、直売所で販売される商品の農薬に関する購買者の不安を払拭することができるラベル発行装置を提供することを目的の一つとしている。
【0115】
この目的を実現するため、まず、生産者に対して栽培日誌の提出をシステムとして義務化する必要がある。栽培日誌(原紙)は生産者が各自ラベルプリンタ300を操作して発行することができる。
【0116】
第2の実施の形態に係るラベル発行装置の一構成要素であるラベルプリンタ300は、CPU301内に、
図31に示すように、ラベル発行要求受入れ手段301a、栽培日誌発行手段301b、栽培日誌読取り手段301c、農薬チェック手段301d、ラベル印刷発行制御手段301eを有する。
【0117】
ラベル発行要求受入れ手段301aは、第1の実施の形態に係るラベル発行装置の
図9EのS91における発行予約情報のラベルプリンタ300への送信に対応してこれを受信する手段である。ラベル発行要求受入れ手段301aは、この受信した発行予約情報を、後述される農薬チェックの結果が出るまで保留する。栽培日誌発行手段301bは、発行予約情報を送信した生産者の求めに応じて、後述される所定の項目を印刷した栽培日誌(原紙)をラベルプリンタ300の発行口に発行する。栽培日誌読取り手段301cは、生産者に記入された後、所定の挿入口に挿入された栽培日誌をOCRリーダーなどの既知の読取り手段により読み取る。農薬チェック手段301dは、栽培日誌から読み取った農薬情報を判定基準と比較して、基準を超過しているか否かを判定する。ラベル印刷発行制御手段301eは、農薬チェック手段301dが栽培日誌から読み取った農薬情報は判定基準を超過していると判定した場合、保留していた発行予約情報に基づくラベルの印刷発行を禁止する。
【0118】
さらに詳しく説明すると、各生産者がラベルプリンタ300を用いて栽培日誌(原紙)の発行からラベル発行の許可・禁止(発行制御)までの手順(流れ)は、
図32に示すように、(ア)農薬マスタファイル登録、(イ)栽培日誌の発行、(ウ)栽培日誌の記入、(エ)栽培日誌のスキャン・農薬チェック、(オ)ラベル発行の制御である。(カ)店舗の顧客に対する付加サービスとして、店内モニタへの農薬チェック結果の開示を行うことが望ましい。
【0119】
生産者が栽培日誌(原紙)の発行を求める場合は、
図33に示すように、まずラベルプリンタ300に品目を入力する(S41)。品目を入力すると、入力された品目に対応する農薬情報が独立行政法人農林水産消費安全センター(FAMIC)からラベルプリンタ300にダウンロードされ(S42)、農薬マスタファイルが作成される(S43)。農薬マスタファイルには、農薬情報として当該品目に使用可能な農薬名、使用回数、希釈倍率、使用期限などの限界値が含まれる。
【0120】
次に、生産者がラベルプリンタ300に設けてある栽培日誌発行要求ボタンをタッチすると(S44においてYのとき)、ラベルプリンタ300の所定の発行口から栽培日誌(原紙)が発行される(S45)。栽培日誌(原紙)の1ページ目(表紙)には、
図34に例示されるように、出荷者No.、氏名のほか、品目、栽培規模、収穫開始日、出荷開始日の記入欄が設けられている。下部の薬剤名記入欄には、2ページ目以降に事前印字されなかった農薬を使用した場合に記入する(S46)。
【0121】
栽培日誌(原紙)の2ページ目以降には、
図35に例示されるように、生産者により農薬の使用について記載される(S46)。
図35は、大納言小豆に使用される農薬の例である。薬剤名は事前に印刷されている。この例では、品目ごとに設定された農薬一覧が印字され、出力される。使用回数、希釈倍率、使用時期が事前に印字されるので、生産者はこれを確認しながら実際の栽培を行うことができる。
【0122】
次に、その栽培日誌をラベルプリンタ300に設けてある読取り手段で読み取らせる(S47)と、ラベルプリンタ300に備えてある農薬チェック手段301dが作動し(S48)、読み取った使用状況が上記限界値を超えていないか否かを判定する(S49)。農薬チェック手段301dが使用状況は限界値を超えていないと判定した場合は、ラベル印刷発行制御手段301eがその品目に対するラベルの発行を許可する信号をラベル発行部304に出力する(S410)。
【0123】
しかし、農薬チェックの結果が使用状況は限界値を超えていると判定した場合(S49でYの場合)は、ラベル印刷発行制御手段301eがその品目に対するラベルの発行を許可する信号をラベル発行部304に与えない(S411)。また、ラベルプリンタ300の表示部305に、たとえば使用期限超過、使用回数超過あるいは希釈倍率超過などのラベル発行を許可しない理由を表示する(S412)。
【0124】
したがって、農薬チェックに合格しない商品は、正当なラベルを貼ることができないので、出荷を断念せざるを得ない。その結果、客はラベルが貼られている商品を、農薬に対する不安を抱くことなく安心して購入することができる。
【0125】
店内のモニタに、ラベルが貼られている商品は農薬チェックをパスしたものであるので、安心して購入できる旨を文字および/または映像で客に知らせることは、商品に対する信頼度向上に資する。
【0126】
本発明の他の実施の形態として、次の項目を加えることができる。
ラベル発行実績の履歴データから同一商品の売価を抽出し、平均・上下限の売価や、所定の計算式(要因による掛率)や、過去の売上に対して一番売れた価格(そのもの)や価格帯、ランクなどを表示すれば、参考価格として価格決定の支援に有効である。
農薬チェックにおいて、判定方法は、一度、適合したら販売適合期間中はチェックをしなくても良いし、毎回チェックをしても良いし、どちらでも良い。
また、栽培日誌をクラウドサービスで提供すれば、栽培日誌入力データと使用した農薬の袋の画像、作物などの画像なども含めて、直売所の責任者が承認したものに適合フラグをつけることで、ペーパーレスの実現も可能である。この場合は、管理装置への問い合わせによりラベル発行を制限できる。なお、ペーパで実施する場合は、栽培日誌のスキャンと、結果のフラグ管理をラベルプリンタ主体で行っても良いので、必ずクラウドサービスなどの上位システムが必要と言うわけではない。
【0127】
本発明は、主要な機能を実現するため、次のようなプログラムを用いている。
(ア)生産者を指定するための生産者指定手段と、商品を特定するための商品特定手段と、前記生産者指定手段により指定された生産者の生産者情報と前記商品特定手段により特定された商品の商品情報とをラベル印刷のために管理装置に出力するための出力手段とを備えたラベル発行装置のコンピュータに、前記出力手段が出力した前記生産者情報と前記商品情報を前記管理装置が受信して当該ラベルの印刷操作前に印刷され記憶された他のラベルの印刷のために用いられた商品情報に含まれる販売価格を参考価格として報知する機能と、前記商品情報として事前に記憶された販売価格を前記報知手段で報知された参考価格に更新する機能とを実現させるためのプログラム。
(イ)生産者を指定するための生産者指定手段と、商品を特定するための商品特定手段と、前記商品特定手段は、価格変動要因である商品の種類、サイズ、数量などの内在要因と、出荷日の曜日、天候などの外在要因とを特定するための要因特定手段を含み、前記生産者指定手段により指定された生産者の生産者情報と、前記商品特定手段により特定された商品の商品情報と、前記要因特定手段により特定された要因情報とをラベル印刷のために管理装置に出力するための出力手段とを備えたラベル発行装置のコンピュータに、前記出力手段により前記生産者情報と前記商品情報をラベル印刷予約またはラベル印刷のために出力するときに、当該ラベルの印刷の前に印刷された他のラベルの印刷予約または印刷のために出力された商品情報に含まれている販売価格を参考価格として報知する機能と、前記商品情報として事前に記憶された販売価格または前記報知手段で報知された参考価格を前記要因情報に基づいて修正された価格に更新する機能と、を実現させるためのプログラム。
(ウ)生産者端末機からのラベル印刷発行要求信号を受け入れるラベル印刷発行要求受入れ手段と、前記ラベル印刷発行要求をした生産者から品目を指定して求め求められたときに、その指定された品目に適用可能な薬剤名が印刷された栽培日誌(原紙)を発行する栽培日誌発行手段と、所定の項目が記入された前記栽培日誌を読み取る栽培日誌読取り手段とを備えたラベルプリンタのコンピュータに、前記栽培日誌から読み取った農薬情報を判定基準と比較して、前記判定基準を超過しているか否かを判定する農薬チェック機能と、前記農薬チェックの結果が前記栽培日誌から読み取った農薬情報は前記判定基準を超過していると判定した場合は、発行予約情報に基づくラベルの印刷発行を禁止し、前記農薬チェックの結果が前記栽培日誌から読み取った農薬情報は前記判定基準を超過していないと判定した場合は、発行予約情報に基づくラベルの印刷発行を許可するラベル印刷発行制御機能とを実現させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0128】
A 販売管理システム
100 携帯端末
101a 生産者指定手段
101b 商品特定手段
101c 更新手段
102a 出力手段
102b 報知手段
200 管理装置
300 ラベルプリンタ