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特許7393762水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20231130BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20231130BHJP
   C04B 24/10 20060101ALI20231130BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20231130BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20231130BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C04B24/26 D
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B24/06 A
C04B24/10
C04B28/04
C08F220/28
C08F290/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020001783
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109797
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】桜井 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 優
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和秀
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】大石 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直樹
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197409(JP,A)
【文献】特開2018-140920(JP,A)
【文献】特開2003-212622(JP,A)
【文献】特開2001-163655(JP,A)
【文献】特開2021-046349(JP,A)
【文献】特開2021-109797(JP,A)
【文献】米国特許第04286992(US,A)
【文献】国際公開第2009/131240(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/067826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02, C04B40/00-40/06, C04B103/00-111/94
C08F 220/28、290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分と、下記のB成分と、下記のC成分と 、下記のD成分とを含有する水硬性組成物用添加剤であって、
前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量%とした場合において、
前記A成分を5~65質量%、前記B成分を15~75質量%、前記C成分を10~70質量%、及び前記D成分を10~70質量%の割合でそれぞれ含有する水硬性組成物用添加剤。
A成分:下記の化1で示される構成単位1下記の構成単位2、下記の構成単位5、及び下記の構成単位6を有し、
前記A成分において構成単位1構成単位2、構成単位5、及び構成単位6の合計100質量%に対し、前記構成単位1を70~95質量%、前記構成単位2を5~30質量%、前記構成単位5を0.1~20質量%、及び前記構成単位6を0~10質量%の割合でそれぞれ含有し、
2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸、及びチオグリコール酸から選ばれる少なくとも1つの連鎖移動剤を更に含有し、
前記A成分中の前記構成単位5の含有割合、または、前記構成単位5及び前記連鎖移動剤の含有割合に基づいて算出されるカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合が0.1~4.0質量%であり、かつ、質量平均分子量が1000~200000であるビニル共重合体
構成単位1:
【化1】
(化1において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、または炭素数3~4の不飽和アシル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、mは2~300の整数であり、Rは水素原子、炭素数1~22のアルキル基、または炭素数1~22の脂肪族アシル基を示す)
構成単位2:
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位5:
不飽和カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位6:
分子中にビニル基を有する単量体から形成される構成単位
B成分:下記の化2で示される構成単位3下記の構成単位4、下記の構成単位7、及び下記の構成単位8を有し、
前記B成分において構成単位3構成単位4、構成単位7、及び構成単位8の合計100質量%に対し、前記構成単位3を65~95質量%、前記構成単位4を5~35質量%、前記構成単位7を0~5質量%、前記構成単位8を0~10質量%の割合でそれぞれ含有し、
2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸、及びチオグリコール酸から選ばれる少なくとも1つの連鎖移動剤を更に含有し、
前記B成分中の前記構成単位4の含有割合、または、前記構成単位4及び前記連鎖移動剤の含有割合に基づいて算出されるカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合が4.0質量%を超え40.0質量%以下であり、かつ、質量平均分子量が1000~200000であるビニル共重合体
構成単位3:
【化2】
(化2において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、または炭素数3~4の不飽和アシル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは2~300の整数であり、Rは水素原子、炭素数1~22のアルキル基、または炭素数1~22の脂肪族アシル基を示す)
構成単位4:
不飽和カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位7:
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位8:
分子中にビニル基を有する単量体から形成される構成単位
C成分:グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸、またはクエン酸
D成分:スクロース、またはフルクトース
【請求項2】
前記A成分を5~50質量部、前記B成分を15~60質量部、前記C成分を10~50質量部、及び前記D成分を10~50質量部の割合でそれぞれ含有する請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤
【請求項3】
下記の(1)~(3)から選ばれる少なくとも一つの使用条件下で使用される請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤。
(1)型枠への水硬性組成物の打ち込み時の水硬性組成物温度が25℃以上
(2)型枠への水硬性組成物の打ち込み時の日平均気温が25℃以上
(3)型枠への水硬性組成物の打ち込み日の最高気温が30℃以上
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤と、
セメントを含有する結合材と、
水と、
細骨材と、
粗骨材と
を含有する水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、35℃以上の高温環境下でコンクリート等の水硬性組成物を使用する場合であっても、25℃未満の標準環境下での使用と同等のスランプ保持性、凝結時間、及びブリーディング率の発現を可能とする性能を備えた、水硬性組成物の調製と同時に添加される同時添加型の水硬性組成物用添加剤、及び当該水硬性組成物用添加剤を添加した水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリートなどのセメント組成物として広く用いられている。これらの水硬性組成物(例えば、コンクリート)は、一般にコンクリート製造工場において、各種材料を練り混ぜて調製された後、流動性を保った状態で使用場所(施工現場)までコンクリートミキサー車によって運搬し、使用されている。
【0003】
このとき、交通渋滞やその他要因によって製造工場から使用場所への運搬に時間を要すると、調製されたコンクリートの流動性が低下し、使用場所でのコンクリートの打ち込み作業が困難になることがある。そのため、調製された未硬化の状態のコンクリートに後添加し、コンクリートの流動性を長時間に亘って保持するための後添加混和剤等が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、オキシカルボン酸またはその塩から構成された凝結遅延剤、及び、アミノスルホン酸等の化合物から構成された高性能AE減水剤によって構成され、コンクリートまたはモルタルの初期スランプを長時間にわたって維持するための初期スランプ長時間維持剤を使用することも既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、第一及び第二のポリカルボキシレートポリエーテル櫛形ポリマー超可塑剤を含み、第一の混合物系組成物によって初期スランプ向上、後期スランプ維持、及び初期スランプの制限を達成し、第二の混合物により後期スランプ向上を達成するものも知られている(例えば、特許文献3参照)。これらによって、コンクリート等の初期スランプを数日間という長時間にわたり維持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/067826号
【文献】特開平10-007445号公報
【文献】特開2014-223813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、調製されたコンクリート等の水硬性組成物の流動性を維持するための混和剤等は既に提案されている。ここで、コンクリート等の水硬性組成物の流動性に及ぼす要因として、施工時における水硬性組成物の温度や、施工時の周囲の温度が大きいことが知られている。特に35℃以上の高温環境下では、水硬性組成物に含まれるセメントの水和反応が促進されることにより、スランプロスが増大したり、凝結が促進されたりするなどの問題を生じることがあった。そのため、コンクリートの施工に悪影響を及ぼし、施工不良等の不具合を生じさせる可能性があった。
【0008】
特に近年において、夏期に日中最高気温が35℃以上の猛暑日となる日数が増大しており、コンクリートの施工作業を中止したり、或いは施工時間を変更したりするなどの対応や、水硬性組成物の温度が35℃を超えないような対策を施したりするなどの対応が必要となることがあった。
【0009】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、35℃以上の高温環境下であっても、25℃未満の環境(標準環境)と同等のスランプ保持性、凝結時間、及びブリーディング率の発現等の効果を発揮し、水硬性組成物の良好な流動性を保持することの可能な、特に水硬性組成物を製造する際に各種原料とともに同時に添加される「同時添加型」の水硬性組成物用添加剤、及び当該水硬性組成物を添加した水硬性組成物の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願出願人らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記に示すA成分、B成分、C成分、及びD成分を所定の配合比率で含有した水硬性組成物用添加剤を用いることが好適であることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物が提供される。
【0011】
[1] 下記のA成分と、下記のB成分と、下記のC成分と、下記のD成分とを含有する水硬性組成物用添加剤であって、前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量%とした場合において、前記A成分を5~65質量%、前記B成分を15~75質量%、前記C成分を10~70質量%、及び前記D成分を10~70質量%の割合でそれぞれ含有する水硬性組成物用添加剤。
A成分:下記の化1で示される構成単位1下記の構成単位2、下記の構成単位5、及び下記の構成単位6を有し、
前記A成分において構成単位1構成単位2、構成単位5、及び構成単位6の合計100質量%に対し、前記構成単位1を70~95質量%、前記構成単位2を5~30質量%前記構成単位5を0.1~20質量%、及び前記構成単位6を0~10質量%の割合でそれぞれ含有し、
2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸、及びチオグリコール酸から選ばれる少なくとも1つの連鎖移動剤を更に含有し、
前記A成分中の前記構成単位5の含有割合、または、前記構成単位5及び前記連鎖移動剤の含有割合に基づいて算出されるカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合が0.1~4.0質量%であり、かつ、質量平均分子量が1000~200000であるビニル共重合体
【0012】
構成単位1:
【化1】
(化1において、R は炭素数2~5のアルケニル基、または炭素数3~4の不飽和アシル基であり、A Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、mは2~300の整数であり、R は水素原子、炭素数1~22のアルキル基、または炭素数1~22の脂肪族アシル基を示す)
構成単位2:
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位5:
不飽和カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位6:
分子中にビニル基を有する単量体から形成される構成単位
【0013】
B成分:下記の化2で示される構成単位3、下記の構成単位4、下記の構成単位7、及び下記の構成単位8を有し、
前記B成分において構成単位3、構成単位4、構成単位7、及び構成単位8の合計100質量%に対し、前記構成単位3を65~95質量%、前記構成単位4を5~35質量%、前記構成単位7を0~5質量%、前記構成単位8を0~10質量%の割合でそれぞれ含有し、
2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸、及びチオグリコール酸から選ばれる少なくとも1つの連鎖移動剤を更に含有し、
前記B成分中の前記構成単位4の含有割合、または、前記構成単位4及び前記連鎖移動剤の含有割合に基づいて算出されるカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合が4.0質量%を超え40.0質量%以下であり、かつ、質量平均分子量が1000~200000であるビニル共重合体
構成単位3:
【化2】
(化2において、R は炭素数2~5のアルケニル基、または炭素数3~4の不飽和アシル基であり、A Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは2~300の整数であり、R は水素原子、炭素数1~22のアルキル基、または炭素数1~22の脂肪族アシル基を示す)
【0014】
構成単位7:
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位
構成単位8:
分子中にビニル基を有する単量体から形成される構成単位
【0015】
C成分:グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸、またはクエン酸
D成分:スクロース、またはフルクトース
【0016】
] 前記成分を5~50質量%、前記B成分を15~60質量%、前記C成分を10~50質量%、及び前記D成分を10~50質量%の割合でそれぞれ含有する前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0017】
] 下記の(1)~(3)から選ばれる少なくとも一つの使用条件下で使用される前記[1]または2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
(1)型枠への水硬性組成物の打ち込み時の水硬性組成物温度が25℃以上
(2)型枠への水硬性組成物の打ち込み時の日平均気温が25℃以上
(3)型枠への水硬性組成物の打ち込み日の最高気温が30℃以上
【0018】
] 前記[1]~[]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤と、セメントを含有する結合材と、水と、細骨材と、粗骨材とを含有する水硬性組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水硬性組成物用添加剤によれば、特に水硬性組成物の製造時に各種原料と同時に添加することにより、高温環境下であっても標準期と同等のスランプ保持性等を発揮可能な水硬性組成物を製造することができる。これにより、高温環境下であっても標準環境と同等の作業により、施工不良等のない安定したコンクリート等の水硬性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物の実施の形態について説明する。なお、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、改良等を加え得るものである。なお、以下の実施例等において、特に記載しない限り、%は質量%を、または部は質量部を意味するものとする。
【0021】
本発明の一実施形態の水硬性組成物用添加剤は、A成分と、B成分と、C成分と、D成分とを含有するものである。
【0022】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分は、分子中に構成単位1及び構成単位2を有するビニル共重合体として構成されるものであり、一方、B成分は分子中に構成単位3及び構成単位4を有するビニル共重合体として構成されるものであり、C成分はオキシカルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一つからなるものであり、及び、D成分は糖類である。
【0023】
A成分に含まれる構成単位1は、下記の化1で示されるものである。
【0024】
【化1】
【0025】
ここで、化1において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、または炭素数3~4の不飽和アシル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、mは2~300の整数であり、Rは水素原子、炭素数1~22のアルキル基、または炭素数1~22の脂肪族アシル基をそれぞれ示している。
【0026】
上記に既定される化1の化合物としては、例えば、α-アリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等が挙げられる。
【0027】
構成単位2は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位である。
【0028】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分であるビニル共重合体は、更に分子中に構成単位5を有し、構成単位6を含んでいるものであっても構わない。ここで、構成単位5は、不飽和カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位であり、構成単位6は分子中にビニル基を有する単量体から形成される構成単位である。
【0029】
構成単位5は、不飽和カルボン酸及び/またはその塩から構成されるものであり、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、及びマレイン酸等、或いはこれらの塩から選ばれる少なくとも一つから形成される構成単位を含むものである。塩としては、特に制限するものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアミン塩などが挙げられる。なかでもナトリウム塩とカルシウム塩が好ましい。一方、構成単位6は、例えば、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩、アクリル酸ブチル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ポリアルキレンイミン等から形成される構成単位を含むものである。
【0030】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分において、構成単位1及び構成単位2の合計100質量%に対し、構成単位1を70~95質量%及び構成単位2を5~30質量%含むものであり、構成単位1を70~90質量%、及び構成単位2を10~30質量%の割合で含むものが好ましく、構成単位1を75~85質量%、及び構成単位2を15~25質量%の割合で含むことが更に好ましい。
【0031】
なお、A成分において、上記の構成単位5及び構成単位6を含む場合において、構成単位1、構成単位2、構成単位5及び構成単位6の合計100質量%に対し、構成単位5を0.1~20質量%の割合で、及び構成単位6を0~10質量%の割合でそれぞれ含むものであっても構わない。
【0032】
更に水硬性組成物添加剤に供するA成分のカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合は、0.1~4.0質量%に範囲内に規定され、0.1~3.0質量%であることが好ましく、0.1~2.0質量%であることがより好ましい。本発明において、酢酸換算含有割合は、本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれるA成分に含まれるカルボン酸及びその塩のカルボキシル基及びその塩を電位差測定して酢酸に換算したときの質量%であり、具体的にはA成分の40質量%水溶液をイオン交換水で20倍に希釈した2質量%水溶液に塩酸水溶液を加えてpH=2としたものを電位差滴定装置に供し、これを濃度0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定したときの、第1当量点と第2当量点との間に消費された水酸化カリウムと同モルの酢酸の質量を求め、求めた酢酸の質量の元のA成分の質量に対する割合を算出した値(質量%)である。
【0033】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することができ、好ましくはプルラン換算で1000~200000であり、より好ましくは5000~200000であり、更に好ましくは8000~100000である。
【0034】
このようなA成分は、公知のラジカル重合反応により得ることができる。これには、溶媒に水を使用したラジカル重合、溶媒に有機溶媒を使用したラジカル重合、無溶媒のラジカル重合による方法が挙げられる。ラジカル重合における反応温度は、好ましくは0~120℃であり、より好ましくは20~100℃であり、更に好ましくは50~90℃である。ラジカル重合に使用するラジカル重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物や、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられ、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであれば、その種類は特に制限されない。これらは、亜硫酸塩やL-アスコルビン酸等の還元性物質、更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として使用することもできる。得られるA成分の質量平均分子量を所望の範囲とするため、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオグリセリン、チオリンゴ酸等の連鎖移動剤を使用することもできる。これらのラジカル重合開始剤や還元性物質、連鎖移動剤は、それぞれ単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよく、乾燥させて粉末として使用してもよく、水や有機溶媒を含んだままで無機多孔質粉体に担持させて使用してもよく、水や有機溶媒を含んだままで無機多孔質粉体に担持させ、かつ乾燥させて使用してもよい。反応系内の圧力は特に限定されないが、大気圧が好ましい。
【0035】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するB成分に含まれる構成単位3は、下記の化2で示されるものである。
【0036】
【化2】
【0037】
ここで、化2において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、または炭素数3~4の不飽和アシル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは2~300の整数であり、Rは水素原子、炭素数1~22のアルキル基、または炭素数1~22の脂肪族アシル基をそれぞれ示している。
【0038】
上記に既定される化2の化合物としては、例えば、α-アリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するB成分に含まれる構成単位4は、不飽和カルボン酸及び/またはその塩から選ばれる少なくとも一つから形成された構成単位である。構成単位4は、既に説明したA成分における構成単位5として示したものと同一構成の中から選ぶことが可能であり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するB成分であるビニル共重合体は、更に分子中に、任意の構成単位として、構成単位7、及び構成単位8を含んでいてもよい。
【0041】
構成単位7は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一つから形成された構成単位を含むものである。構成単位7は、既に説明したA成分における構成単位2として示したものと同一構成の中から選ぶことが可能である。
【0042】
構成単位8は、(メタ)アリルスルホン酸及びその塩、アクリル酸ブチル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ポリアルキレンイミン等から形成される構成単位を含むものであり、既に説明したA成分における構成単位6として示したものと同一構成の中から選ぶことが可能である。
【0043】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するB成分において、構成単位3及び構成単位4の合計100質量%に対し、構成単位3を65~95質量%及び構成単位4を5~35質量%含むものであり、構成単位3を70~95質量%、及び構成単位4を5~30質量%の割合で含むものが好ましく、構成単位3を75~90質量%、及び構成単位4を10~25質量%の割合で含むことが更に好ましい。
【0044】
B成分において、構成単位7及び構成単位8を含む場合においては、構成単位の合計100質量%に対して、構成単位7を0~5質量%の割合で、及び、構成単位8を0~10質量%の割合でそれぞれ含むものであっても構わない。
【0045】
本実施形態の水硬性組成物用混和剤に供するB成分中のカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合は4.0質量%を超え40.0質量%以下であり、4.0質量%を超え30.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%を超え20.0質量%以下であることがより好ましい。なお、B成分中の酢酸換算含有割合は、本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれるB成分に含まれるカルボン酸及びその塩のカルボキシル基及びその塩を電位差測定して酢酸に換算したときの質量%であり、上記のA成分の酢酸換算含有割合の算出と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
本実施形態の水硬性組成物用混和剤に供するB成分の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することができ、好ましくはプルラン換算で1000~200000であり、より好ましくは5000~200000であり、更に好ましくは8000~100000である。
【0047】
このようなB成分は、上述したA成分と同様、ラジカル重合反応により得ることができる。
【0048】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤は、A成分、B成分、C成分、及びD成分の合計を100質量%とした場合において、A成分を5~65質量%、B成分を15~75質量%、C成分を10~70質量%、及びD成分を10~70質量%の割合で含有することを特徴とするものであり、A成分を5~50質量%、B成分を15~60質量%、C成分を10~50質量%、及びD成分を10~50質量%の割合で含有するものが好ましく、A成分を10~20質量%、B成分を20~50質量%、C成分を15~40質量%、及びD成分を15~40質量%の割合で含有するものが更に好ましい。
【0049】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するC成分におけるオキシカルボン酸及び/またはその塩としてグルコン酸、グリコール酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸等や、それらの塩が挙げられる。なかでもグルコン酸及びグルコン酸ナトリウム塩から選ばれる少なくとも一つを用いるものが好適である。更に、D成分における糖類としては、単糖類、二糖類、少糖類(オリゴ糖類)、多糖類及び糖アルコールが挙げられる。単糖類としては、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、リブロース、キシルロース、アピオース等の五炭糖、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等の六炭糖、セドヘプツロース、コリオース等の七炭糖等が挙げられる。二糖類としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、パラチノース、メリビオース、キシロビオース等が挙げられる。少糖類(オリゴ糖類)としては、ラフィノース、マルトトリオース、メレジトース等の三糖類、スタキオース等の四糖類、イソマルトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等のオリゴ糖が挙げられる。多糖類としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、グルコマンナン、シクロデキストリン等が挙げられる。これらの多糖類は、単糖、二糖、少糖類を含んでいてよい。糖アルコールとしては、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なかでもスクロースを用いるものが好適である。
【0050】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤は、下記の(1)~(3)から選ばれる少なくとも一つの使用条件下で特に好適に使用することができる。
(1)型枠への水硬性組成物の打ち込み時の水硬性組成物温度が25℃以上
(2)型枠への水硬性組成物の打ち込み時の日平均気温が25℃以上
(3)型枠への水硬性組成物の打ち込み日の最高気温が30℃以上
すなわち、上述した標準環境から逸脱した高温環境下での使用に好適に使用することができる。
【0051】
本実施形態の水硬性組成物は以上説明したような本実施形態の水硬性組成物用添加剤を使用して調製したものであり、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物であることが好ましい。セメント組成物は、結合材として、少なくともセメントを使用したものであるが、セメントを単独で使用してもよく、また、セメントと微粉末混和材料を併用してもよい。このようなセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。また、微粉末混和材料としては、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、石粉、膨張材等が挙げられる。
【0052】
更に、本実施形態の水硬性組成物は、水と骨材を含むことも好ましい。骨材としては、細骨材や粗骨材などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材のうち、細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、珪砂、砕砂、高炉スラグ細骨材などが挙げられ、粗骨材としては、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材などが挙げられる。
【0053】
更に、本実施形態の水硬性組成物においては、水結合材比が30~70%であるのが好ましく、40~65%であるのがより好ましい。なお、水結合材比とは、水硬性組成物中のセメントなどの結合材100質量部に対する水の質量部の比であり、水が50質量部となる場合は水結合材比が50%となる。
【0054】
更に、本実施形態の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、AE調整剤、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、収縮低減剤、防腐剤、防水剤、防錆剤等を含有させることができる。
【0055】
以下、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物による効果を明確にするために、下記に示す実施例に基づいて説明を行う。しかしながら、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物は、かかる実施例に限定されるものではない。また、以下に示す実施例及び比較例において、特に断りのない限り、「部」は質量部を示し、「%」は質量%を意味するものとする。
【実施例
【0056】
(1)A成分(ビニル共重合体の合成)
水硬性組成物用添加剤に供されるA成分として、下記表1に示す構成単位1及び構成単位2と、構成単位5及び構成単位6によって構成されたビニル共重合体からなる3種類(PC-1,PC-2,PC-3)を用いた。ここで、PC-1,PC-2,PC-3は、それぞれ各構成単位1,2,5,6の種類及び配合比率がそれぞれ異なるものである。
【0057】
(1-1)製造例1[ビニル共重合体(PC-1の合成)]
イオン交換水78.0gを温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様の反応容器を使用)に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、イオン交換水141.7g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(9モル)オキシエチレン147.8g、アクリル酸ヒドロキシエチル45.3g、メタクリル酸3.9g、及び連鎖移動剤として2-メルカプトエタノール1.4g(分子量 78.1)を均一に溶解させた水溶液を2時間かけて滴下するとともに、10%過硫酸アンモニウム28.6gを3時間かけて滴下した。その後、65℃で1時間保持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、ビニル共重合体(PC-1)の40%水溶液を得た。このビニル共重合体(PC-1)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量は41000であった。なお、ビニル共重合体(PC-3)は、上記製造例1の合成方法に準拠し、構成単位1、構成単位2、及び構成単位5として使用する化合物及び配合割合を変化させ、連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸を用いて合成を行った。ビニル共重合体(PC-3)の質量平均分子量は38000であった。
【0058】
(1-2)製造例2[ビニル共重合体(PC-2)の合成]
イオン交換水76.6g及びα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(115モル)オキシエチレン156.4gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、1%過酸化水素水8.8gを3時間かけて滴下するとともに、イオン交換水39.1gにアクリル酸ヒドロキシプロピル15.6gとアクリル酸3.9gとアクリル酸メチル19.5gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、イオン交換水7.0gにL-アスコルビン酸0.8gと連鎖移動剤としてチオグリコール酸1.0g(分子量92.1)を溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、65℃で2時間保持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、ビニル共重合体(PC-2)の40%水溶液を得た。このビニル共重合体(PC-2)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量は42000であった。
【0059】
(2)B成分(ビニル共重合体の合成)
(2-1)製造例3[ビニル共重合体(PC-6)の合成]
イオン交換水75.2g、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリ-(23モル)オキシエチレン167.1g、メタクリル酸22.8g、及び連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸1.7g(分子量 106.1)を反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、10%過硫酸ナトリウム水溶液27.5gを4時間かけて滴下した。更に65℃で2時間保持して重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、反応系をpH=6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、ビニル共重合体(PC-6)の40%水溶液を得た。このビニル共重合体(PC-6)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量は30000であった。ビニル共重合体(PC-4,8)は、上記製造例3の合成方法に準拠し、構成単位3、構成単位4、及び構成単位7として使用する化合物及び配合割合を変化させ、連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸(分子量 106.1)を用いてそれぞれ合成を行った。
【0060】
(2-2)製造例4[ビニル共重合体(PC-10)の合成]
イオン交換水210.1g、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリ-(68モル)オキシエチレン144.5g、メタクリル酸38.5g、アクリル酸ヒドロキシエチル1.8g、及び連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸2.3gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、10%過硫酸ナトリウム水溶液36.6gを4時間かけて滴下した。更に65℃で2時間保持して重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、反応系をpH=6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、ビニル共重合体(PC-10)の40%水溶液を得た。このビニル共重合体(PC-10)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量は32000であった。ビニル共重合体(PC-5及びPC-7)は、上記製造例4の合成方法に準拠し、構成単位3、構成単位4、及び構成単位7、及び構成単位8として使用する化合物及び配合割合を変化させ、連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸(分子量 106.1)を用いてそれぞれ合成を行った。なお、ビニル共重合体(PC-9)については、連鎖移動剤を使用せずに合成を行っている。
【0061】
上記により得られたA成分としてのビニル共重合体(PC-1~PC-3)を下記の表1に、B成分としてのビニル共重合体(PC-4~PC-10)を下記の表2にそれぞれまとめて示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
上記表1及び表2における各構成単位1-8の詳細について説明すると、
<構成単位1、構成単位3>
a-1:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(9モル)オキシエチレン
a-2:α-(3-メチル-3-ブテニル) -ω-ヒドロキシ-ポリ(115モル)オキシエチレン
a-3:α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレン
a-4:α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリ(23モル)オキシエチレン
a-5:α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリ(21モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン
a-6:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(50モル)オキシエチレン
a-7:α-アリル-ω-メトキシ-ポリ(33モル)オキシエチレン
a-8:α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリ(68モル)オキシエチレン
<構成単位2、構成単位7>
b-1:アクリル酸ヒドロキシエチル
b-2:アクリル酸ヒドロキシプロピル
b-3:アクリル酸エチル
b-4:アクリル酸メチル
<構成単位5、構成単位4>
c-1:メタクリル酸
c-2:アクリル酸
c-3:マレイン酸
<構成単位6、構成単位8>
d-1:メタリルスルホン酸ナトリウム
d-2:アクリル酸ブチル
をそれぞれ示すものである。
【0065】
A成分、及びB成分であるビニル共重合体のカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合は、本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれるA成分及びB成分に含まれるカルボン酸及びその塩のカルボキシル基及びその塩を電位差測定して酢酸に換算したときの質量%であり、上記のA成分のカルボン酸及びその塩の酢酸換算含有割合の算出と同一であるため、ここでは説明を省略する。これらの測定結果を表1及び表2に示している。
【0066】
A成分、及びB成分であるビニル共重合体の質量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)にて行い、条件を以下のものとした。結果を表1及び表2に示した。
【0067】
[測定条件]
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:昭和電工株式会社製OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.7mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:プルラン(昭和電工株式会社製)
【0068】
(3)水硬性組成物用添加剤の調整
合成された表1記載のA成分(PC-1~PC-3)、表2に記載のB成分(PC-4~PC-10)、下記に示すC成分(C-1,C-2)、下記に示すD成分(D-1,D-2)、及び水を、それぞれ表3に示す割合で配合容器に投入し、撹拌機を用いて十分撹拌混合し、水硬性組成物用添加剤(X-1~X-23)を調製した(実施例1~23)。
【0069】
同様に、A成分、B成分、C成分、D成分、及び水を、それぞれ表4に示す割合で配合容器に投入し、撹拌機を用いて十分撹拌混合し、水硬性組成物用添加剤(RX-1~RX-5)を調製した(比較例1~5)。更に、比較例6~9(RX-6~RX-9)として、市販のAE減水剤 標準形I種(竹本油脂株式会社製 チューポール EX60)、高性能AE減水剤 標準形I種(竹本油脂株式会社製 チューポール HP-11)、AE減水剤 遅延形I種(竹本油脂株式会社製 チューポール EX60R)、及び高性能AE減水剤 遅延形I種(竹本油脂株式会社製 商品名 チューポールHR-11R)をそれぞれ水硬性組成物用添加剤として使用した。
【0070】
実施例1~23、及び比較例1~5において、いずれも水硬性組成物用添加剤100質量部に対し、水は316.7質量部となるように調製されている。すなわち、水硬性組成物用添加剤の濃度(質量%)が24.0質量%となるように調製されている。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
上記表3及び表4におけるC成分及びD成分の詳細について説明すると、
C-1:グルコン酸ナトリウム
C-2:クエン酸ナトリウム
D-1:スクロース
D-2:フルクトース
をそれぞれ示すものである。
【0074】
(4)コンクリート組成物(水硬性組成物)の調製
室内温度を40℃(一部を除く。)に設定した試験室内で、60Lの強制二軸ミキサーに普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、密度=3.16)と、骨材として、細骨材(木更津産陸砂、密度=2.60)及び粗骨材(青海産砕石、密度=2.67)を順次投入して10秒間空練りを行った後、水硬性組成物用添加剤(実施例1~23、及び比較例1~9)を加え、更に市販のAE剤であるAE-300(竹本油脂株式会社製)及び消泡剤であるAFK-2(竹本油脂株式会社製)を練り混ぜ水とともに投入し、60秒間練り混ぜて、実施例24~実施例64、及び比較例10~33のコンクリート組成物(水硬性組成物)を調製し、練り混ぜ後、180秒間ミキサーで静置したのちに排出し、得られたコンクリート組成物により各種試験を行った。
【0075】
なお、比較検討のために、比較例16、比較例24、及び比較例32は、それぞれ室内温度を30℃に設定した試験室内でコンクリート組成物の調製を行ったものであり、比較例17、比較例25、及び比較例33は、それぞれ室内温度を20℃に設定した試験室内でコンクリート組成物の調製を行ったものである。
【0076】
実施例24~36、及び比較例10~17のコンクリート組成物は、表5に示す水、セメント、細骨材、及び粗骨材の配合比率に基づき、水セメント比が55.0%、細骨材率が45.4%となるように調整し、目標スランプが“12±2.5cm”、かつ、目標空気量が“4.5±1.5%”に設定したものである。
【0077】
【表5】
【0078】
実施例37~51、及び比較例18~25のコンクリート組成物は、表6に示す水、セメント、細骨材、及び粗骨材の配合比率に基づき、水セメント比が55.0%、細骨材率が47.0%となるように調整し、目標スランプが“18±2.5cm” 、かつ、目標空気量が“4.5±1.5%”となるように設定したものである。
【0079】
【表6】
【0080】
実施例52~実施例64、及び比較例26~33のコンクリート組成物は、表7に示す水、セメント、細骨材、及び粗骨材の配合比率に基づき、水セメント比が48.0%、細骨材率が45.8%となるように調整し、目標スランプが“21±1.5cm”、 かつ、目標空気量が“4.5±1.5%”となるように設定したものである。
【0081】
【表7】
【0082】
(5)コンクリート組成物の評価
上記により得られたコンクリート組成物の物性の評価を行った。ここで、スランプ、空気量、ブリーディング率、凝結時間及び圧縮強度の測定は、下記に基づいて実施した。
・スランプ(cm):練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1101(2014)に準拠して測定した。
・空気量(容積%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1128(2019)に準拠して測定した。
・ブリーディング率(%):練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1123(2012)に準拠して測定した。
・凝結時間:練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1147(2019)に準拠して測定した。
・圧縮強度(N/mm):JIS-A1108(2018)に準拠し、供試体寸法を直径100mm×高さ200mmとし、材齢28日で測定した。
【0083】
(5-1)目標スランプ12±2.5cmのコンクリート組成物の評価
実施例24~36、及び比較例10~17のコンクリート組成物について、上記の試験方法により、スランプ、ブリーディング率、凝結時間及び圧縮強度を測定した測定結果を下記の表8、及びその評価のまとめを下記の表9に示す。全ての試験において空気量は4.5±0.5%であることを確認し、練上がり温度は試験室内温度と同温度であることを確認した。また、実施例においては型枠へのコンクリート組成物の打ち込み時のコンクリート組成物温度が38℃であることを確認した。
【0084】
【表8】
【0085】
【表9】
【0086】
表9において、スランプ保持性、ブリーディング率、及び凝結時間の評価は以下の基準に基づいて行った。
【0087】
<スランプ保持性>
S:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±0~2.5cm以下
A:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±2.5cm超~5.0cm以下
B:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±5.0cm超~7.5cm以下
C:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±7.5cm超
【0088】
<ブリーディング率>
S:比較例17の測定結果に対して±0.5%以下
A:比較例17の測定結果に対して±0.5%超~1.0%以下
B:比較例17の測定結果に対して±1.0%超~1.5%以下
C:比較例17の測定結果に対して±1.5%超
【0089】
<凝結時間>
S:比較例17の測定結果に対して±30分以内
A:比較例17の測定結果に対して±30分超~1時間以下
B:比較例17の測定結果に対して±1時間超~2時間以下
C:比較例17の測定結果に対して±2時間超
【0090】
(5-2)目標スランプ18±2.5cmのコンクリート組成物の評価
実施例37~51、及び比較例18~25のコンクリート組成物について、上記の試験方法により、スランプ、ブリーディング率、凝結時間及び圧縮強度を測定した測定結果を下記の表10及び表11に示す。全ての試験において空気量は4.5±0.5%であることを確認し、練上がり温度は試験室内温度と同温度であることを確認した。また、実施例においては型枠へのコンクリート組成物の打ち込み時のコンクリート組成物温度が38℃であることを確認した。
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
表11において、スランプ保持性、ブリーディング率、及び凝結時間の評価は以下の基準に基づいて行った。
【0094】
<スランプ保持性>
S:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±0~2.5cm以下
A:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±2.5cm超~5.0cm以下
B:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±5.0cm超~7.5cm以下
C:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±7.5cm超
【0095】
<ブリーディング率>
S:比較例25の測定結果に対して±0.5%以下
A:比較例25の測定結果に対して±0.5%超~1.0%以下
B:比較例25の測定結果に対して±1.0%超~1.5%以下
C:比較例25の測定結果に対して±1.5%超
【0096】
<凝結時間>
S:比較例25の測定結果に対して±30分以内
A:比較例25の測定結果に対して±30分超~1時間以下
B:比較例25の測定結果に対して±1時間超~2時間以下
C:比較例25の測定結果に対して±2時間超
【0097】
(5-3)目標スランプ21±1.5cmのコンクリート組成物の評価
実施例52~64、及び比較例26~33のコンクリート組成物について、上記の試験方法により、スランプ、ブリーディング率、凝結時間及び圧縮強度を測定した測定結果を下記の表12及び表13に示す。全ての試験において空気量は4.5±0.5%であることを確認し、練上がり温度は試験室内温度と同温度であることを確認した。また、実施例においては型枠へのコンクリート組成物の打ち込み時のコンクリート組成物温度が38℃であることを確認した。
【0098】
【表12】
【0099】
【表13】
【0100】
表13において、スランプ保持性、ブリーディング率、及び凝結時間の評価は以下の基準に基づいて行った。
【0101】
<スランプ保持性>
S:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±0~2.5cm以下
A:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±2.5cm超~5.0cm以下
B:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±5.0cm超~7.5cm以下
C:練り上がりから5分後のスランプ値とスランプとの差が±7.5cm超
【0102】
<ブリーディング率>
S:比較例33の測定結果に対して±0.5%以下
A:比較例33の測定結果に対して±0.5%超~1.0%以下
B:比較例33の測定結果に対して±1.0%超~1.5%以下
C:比較例33の測定結果に対して±1.5%超
【0103】
<凝結時間>
S:比較例33の測定結果に対して±30分以内
A:比較例33の測定結果に対して±30分超~1時間以下
B:比較例33の測定結果に対して±1時間超~2時間以下
C:比較例33の測定結果に対して±2時間超
【0104】
(6)評価結果
上記表8~表13に示す結果から明らかなように、40℃環境下において、実施例1~12(X-1~X-12)を同時添加型の添加剤として使用したコンクリート組成物は、20℃環境下において現行のAE減水剤 標準形I種(チューポールEX60)または高性能AE減水剤 標準形I種(チューポールHP-11)を使用したコンクリート組成物と比較し、同等以上のスランプ保持性、ブリーディング率、及び凝結時間(以下、「スランプ保持性等」と称す。)を示すことが認められる(実施例24~27、実施例37~40、及び実施例52~55参照)。
【0105】
なお、比較例15,23,31に示されるように、現在使用されているAE減水剤 遅延型I種(チューポールEX60R)または高性能AE減水剤 遅延型I種(チューポールHP-11R)を40℃環境下のコンクリート組成物に対して使用した場合、スランプ保持性等において十分な効果は示されないことが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、35℃以上の高温環境下においてコンクリート組成物等の水硬性組成物を調製する際に添加される同時添加型の添加剤として利用することができる。