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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】掘削土砂圧密形スクリュー
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/44 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E21B10/44
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023049566
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010043
【氏名又は名称】株式会社サンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】前田 直之
(72)【発明者】
【氏名】船田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 実
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞
(72)【発明者】
【氏名】仲山 要
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066199(JP,A)
【文献】特開2015-229872(JP,A)
【文献】登録実用新案第3193872(JP,U)
【文献】特開平08-291683(JP,A)
【文献】実開昭57-079693(JP,U)
【文献】特開平09-060462(JP,A)
【文献】特開平08-060650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドの外周に、上下面をスクリュー面とし、湾曲押圧面を側面とした円弧形状のコテ部としての圧密翼を設ける掘削土砂圧密形スクリューにおいて、
前記圧密翼は平面視においてロッドの中心軸に対して左右対称に、かつ、相互の上面のスクリュー面が螺旋として連続するように上下段に設け、これら一組の圧密翼をロッドの上下方向に複数設け、これら一組の圧密翼の相互間にスクリュー羽根を配置したことを特徴とする掘削土砂圧密形スクリュー。
【請求項2】
ロッドの上下方向において隣り合う一組の圧密翼の突出方向は、ロッドの外周の周方向において約90°ずれている請求項1記載の掘削土砂圧密形スクリュー。
【請求項3】
一組の圧密翼の下段に位置する圧密翼の下面のスクリュー面は、スクリュー羽根のスクリュー面と断続的に螺旋を描く請求項1または請求項2記載の掘削土砂圧密形スクリュー。
【請求項4】
一組の圧密翼の上段に位置する圧密翼の上面のスクリュー面は、スクリュー羽根のスクリュー面と断続的に螺旋を描く請求項1または請求項2記載の掘削土砂圧密形スクリュー。
【請求項5】
圧密翼の湾曲押圧面は硬化肉盛で格子形を形成し、圧密翼の押圧頂部には耐摩耗プレート又は超硬合金の面板を設けた請求項1または請求項2記載の掘削土砂圧密形スクリュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削土砂を効率よく孔壁に填圧させることができる掘削土砂圧密形スクリューに関するものである。
【背景技術】
【0002】
掘削した土砂のすべてを地上に排出するのではなく、その一部または大部分を孔壁に圧密すれば土砂排出の手間が省けるばかりでなく、孔壁の崩壊も防止でき、また、掘削時の摩擦抵抗も減少するので大深度の掘削が可能となり、かつ、地盤中に玉石や転石があっても掘削に必要な刃先部の面圧を随時に意識調整しながら連続した掘削が可能となる。
【0003】
下記特許文献は本願発明者が先に出願し、掘削土砂圧密形オーガスクリューとして特許を取得しものである。
【文献】特許第5976723号公報
【文献】特許第3060045号公報
【0004】
前記特許文献1は、図8に示すように、ロッド3とその先端のオーガヘッド12とからなる掘削機において、ロッド3は重機のリーダーマストのトップシーブから昇降自在に吊り下がる駆動装置2に結合して正逆回転自在に垂下するピース物のロッド3は継ぎ足し可能であり、オーガヘッド12を下端に接続する第1ロッド3a、その上に接続する第2ロッド3b、さらにその上に接続する第3ロッド3cの組合せである。
【0005】
第1ロッド3a、その上に接続する第2ロッド3bが掘削土砂圧密形スクリュー8であり、第3ロッド3cがスクリューロッド14で、前記第3ロッド3cはスクリュー羽根1だけをロッド3の外周に設けた通常のロッドであり、オーガヘッド12を下端に接続する第1ロッド3a、その上に接続する第2ロッド3bは掘削土砂圧密形スクリュー8としてロッド3bの外周に外方に張り出す湾曲押圧面4を側面とした厚肉フランジ状のコテ部としての圧密翼5を螺旋状に上昇するように設けた。
【0006】
圧密翼5はロッド3に設けるスクリュー羽根1と並ぶように組み合わせ、側面の湾曲押圧面4はロッド3の周面からスクリュー羽根1の外縁位置まで外方に張り出す。
【0007】
圧密翼5はロッド3の外周からの左右両端の突出側面が必ず円弧形状である。前記湾曲押圧面4が全体で円弧状になるように形成した。図中11は孔壁である。なお、この圧密翼5は内部を中空としたドラムタイプのものでよい。
【0008】
先端のオーガヘッド12の掘削ビットで切削された土砂はロッド3の正転にともなうスクリュー羽根1および圧密翼5の旋回による揚上作用によって上方に移送されるが、この移送の際に圧密翼5の湾曲押圧面4で外側に押し出され、孔壁11に圧密される。
【0009】
また、ロッド3を逆転させる場合にはスクリュー羽根1および圧密翼5が土砂の下降作用を行うことになるが、その場合でも移送の際に圧密翼5の湾曲押圧面4で外側に押し出され、かかる正転と逆転を適宜組み合わせることで孔壁11への圧密を効果的に行い、地上への排土量を減じ、または無くすことができる。
【0010】
特許文献2の場合は、図9に示すように、掘削土砂圧密形ロッド15のロッド3′にはスクリュー羽根を設けず、圧密翼5は端部同士が近接または重合し、かつ、このように並ぶ圧密翼5を連続体として順次組み合わせるものとした。
【0011】
このように螺旋状に上昇するように設ける圧密翼5は連続体として順次組み合わせることにより、掘削土砂は、掘削土砂圧密形ロッド15にスクリュー羽根がなくてもこの圧密翼5の揚上作用によって上方に移送でき、また、この圧密翼5の湾曲押圧面4で外側に押し出された土砂の孔壁11への圧密も連続的に得られる。
【0012】
圧密翼5は上方にロッド3′の外周に向かい角度θで傾斜する上部傾斜面9を、また、下方にもロッド3′の外周に向かい角度θで傾斜する下部傾斜面10を設けるものとする。これにより圧密翼5は糸巻ボビンの形の半割り体に近いものとなる。
【0013】
上部傾斜面9や下部傾斜面10を設けることにより、圧密翼5の上に行く土砂は傾斜面を落下して土等が圧密翼5の上部・下部双方に残らず、土を圧密翼5の湾曲押圧面4に集めることができるので、孔壁11への圧密が効率的となり、完全無排土のものに近づけることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記特許文献2の掘削土砂圧密形ロッド15は、ロッド3′には圧密翼5のみを設けていてスクリュー羽根を設けていないため、圧密効率が悪い。
【0015】
また、圧密翼5は上下が窄まる糸巻ボビンのような形の半割り体に近いものであり、スクリュー羽根に圧密を発揮させるためにスクリュー羽根に厚みを持たせて構成したものとは言えない。圧密翼5ではスクリュー羽根の効果を十分期待できない。
【0016】
また、特許文献1の掘削土砂圧密形スクリュー8は、 圧密翼5はスクリューロッド3に設けるスクリュー羽根1と並ぶように組み合わせ、側面の湾曲押圧面4はスクリューロッド3の周面からスクリュー羽根1の外縁位置まで外方に張り出すようにしたが、圧密翼5スクリュー羽根1との連携が十分なものといえず、掘削された土砂の圧密が十分ではなかった。
【0017】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、杭建て込み施工において、掘削する地盤の排土を極力低減することができ、圧密作用を向上させることができる掘削土砂圧密形スクリューを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、ロッドの外周に、上下面をスクリュー面とし、湾曲押圧面を側面とした円弧形状のコテ部としての圧密翼を設ける掘削土砂圧密形スクリューにおいて、前記圧密翼は平面視においてロッドの中心軸に対して左右対称に、かつ、相互の上面のスクリュー面が螺旋として連続するように上下段に設け、これら一組の圧密翼をロッドの上下方向に複数設け、これら一組の圧密翼の相互間にスクリュー羽根を配置したことを要旨とするものである。
【0019】
請求項1記載の本発明によれば、コテ部としての圧密翼は平面視においてロッドの中心軸に対して左右対称に設けることで、平面視でいわばめがね状のダブル配置となり、これらが相互に180°ずれた状態を保ちながら回転し圧密翼の湾曲押圧面で掘削土を孔壁に圧密するのを協働させることができる。
【0020】
また、このように平面視においてロッドの中心軸に対して左右対称に設けられる圧密翼は、相互の上面のスクリュー面および下面のスクリュー面が断続的に螺旋を描くように設けられているので、掘削土砂はロッドの回転にともなう圧密翼の旋回による揚上作用によって上方に移送され、この移送の際に圧密翼の湾曲押圧面で外側に押し出され、孔壁に圧密される。
【0021】
このように、平面視においてロッドの中心軸に対して左右対称に設けためがね状のダブルの圧密翼同士を協働させることで、掘削土砂は必要以上に排土されることなく、効率的に孔壁に圧密されるものとなる。
【0022】
請求項2記載の本発明は、ロッドの上下方向において隣り合う一組の圧密翼の突出方向は、ロッドの外周の周方向において約90°ずれていることを要旨とするものである。
【0023】
請求項2記載の本発明によれば、ロッドの上下方向において隣り合う一組の圧密翼の突出方向は、ロッドの外周の周方向に90°ずれているため、これにより圧密翼がロッドの外周において四方に突出するものとなり、間断のない圧密作用を得ることができる。
【0024】
請求項3記載の本発明は、一組の圧密翼の下段に位置する圧密翼の下面のスクリュー面は、スクリュー羽根のスクリュー面と断続的に螺旋を描くことを要旨とするものである。
【0025】
請求項3記載の本発明によれば、一組の圧密翼の下段に位置する圧密翼の下面のスクリュー面は、スクリュー羽根のスクリュー面と断続的に螺旋を描くように設けられているので、スクリュー羽根によって搬送される土砂はさらに、スクリューロッドの正転にともなう圧密翼の旋回による揚上作用によって上方に移送され、この移送の際に圧密翼の湾曲押圧面で外側に押し出され、孔壁に圧密される。
【0026】
請求項4記載の本発明は、一組の圧密翼の上段に位置する圧密翼の上面のスクリュー面は、スクリュー羽根のスクリュー面と断続的に螺旋を描くことを要旨とするものである。
【0027】
請求項4記載の本発明によれば、一組の圧密翼の上段に位置する圧密翼の上面のスクリュー面は、スクリュー羽根のスクリュー面と断続的に螺旋を描くように設けられているので、スクリュー羽根によって搬送される土砂はさらに、スクリューロッドの正転にともなう圧密翼の旋回による揚上作用によって上方に移送され、この移送の際に圧密翼の湾曲押圧面で外側に押し出され、孔壁に圧密される。
【0028】
請求項5記載の本発明は、圧密翼の湾曲押圧面は硬化肉盛で格子形を形成し、圧密翼の押圧頂部には耐摩耗プレート又は超硬合金の面板を設けたことを要旨とするものである。
【0029】
請求項5記載の本発明によれば、圧密翼の湾曲押圧面は硬化肉盛で格子形を形成することで耐久性が高く、効果的な圧密が得られるものとなり、特に圧密翼の湾曲押圧面の押圧頂部には耐摩耗プレート又は超硬合金の面板があるので、左右対称の圧密翼がロッドの回転とともに回転する際にこの面板で土砂の孔壁への押付けが高まり、圧密がより確実なものとなる。
【発明の効果】
【0030】
以上述べたように本発明の掘削土砂圧密形スクリューは、杭建て込み施工において、掘削する地盤の排土を極力低減することができ、圧密作用を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの1実施例を示す側面図である。
図2】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの1実施例を示す平面図である。
図3】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの1実施例を示す底面図である。
図4】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの圧密翼の要部の平面図である。
図5】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの圧密翼の要部の側面図である。
図6】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの圧密翼の他の要部の平面図である。
図7】本発明の掘削土砂圧密形スクリューの圧密翼の他の要部の側面図である。
図8】従来例を示す正面図である。
図9】他の従来例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の掘削土砂圧密形スクリューの実施例を示す側面図で、図2は同上平面図、図3は同上底面図で、前記従来例を示す図8図9と同一構成要素には同一参照符号を付したものである。
【0033】
図中3は土砂圧密形スクリューのロッドであり、図示は省略するが、本発明の土砂圧密形スクリュー1も前記従来例と同じく、ロッド3とその先端のオーガヘッドとからなり、ロッド3は重機のリーダーマストのトップシーブから昇降自在に吊り下がる駆動装置に結合して正逆回転自在に垂下するものである。
【0034】
ロッド3は通常のアースオーガ等と同じくピース物として継ぎ足し可能であり、上下端に雄継手3d、雌継手3eを形成している。
【0035】
スクリューロッド3の外周に湾曲押圧面4を側面とした円弧形状のコテ部としての圧密翼5を設ける。
【0036】
圧密翼5はスクリュー羽根に厚みを持たせて湾曲押圧面4を確保したものであり、その上面および下面に、ロッド3の外周に設けられたスクリュー羽根1の傾斜角度と略同一の傾斜角度を有する螺旋スクリュー面である上部スクリュー面6及び下部スクリュー面7を設けた。
【0037】
圧密翼5はロッド3の外周から外方へ平面視円形に張出す団扇形であり、ロッド3の中心軸に対し平面視で左右対称に設け、かつ、相互の上部スクリュー面6及び下部スクリュー面7が断続的に螺旋を描くように上下方向に位置をずらして設ける。
【0038】
前記圧密翼5の湾曲押圧面4はタングステンカーバイト等の超硬化溶接材料による硬化肉盛16で格子形を形成し、圧密翼5の押圧頂部5aには縦縞状の耐摩耗プレート又は超硬合金の面板13を設けた。
【0039】
前記左右対称の一組の圧密翼5をロッド3の上下方向の複数個所に設け、それら一組の圧密翼5の相互間にスクリュー羽根1を配置する。
【0040】
ロッド3の上下方向において隣り合う前記一組の圧密翼5は、その突出方向をロッド3の外周の周方向において90°ずらして設けた。
【0041】
また、前記一組の圧密翼5のうち、下段に位置する圧密翼5の下部スクリュー面7はスクリュー羽根1のスクリュー面と断続的に螺旋を描くように設けられている。(図1参照)
【0042】
圧密翼5はロッド3に設けるスクリュー羽根1と並ぶように組み合わせ、側面の湾曲押圧面4はロッド3の外周からスクリュー羽根1の外縁位置まで外方に張り出す。
【0043】
使用に際しては、 先端のオーガヘッドの掘削ビットで切削された土砂はロッド3の正転にともなうスクリュー羽根1および圧密翼5の旋回による揚上作用によって上方に移送されるが、この移送の際に圧密翼5の湾曲押圧面4で外側に押し出され、孔壁11に圧密される。
【符号の説明】
【0044】
1…スクリュー羽根 2…駆動装置
3、3′…ロッド 3a…第1ロッド
3b…第2ロッド 3c…第3ロッド
3d…雄継手 3e…雌継手
4…湾曲押圧面 5…圧密翼
6…上部スクリュー面 7…下部スクリュー面
8…掘削土砂圧密形スクリュー 9…上部傾斜面
10…下部傾斜面 11…孔壁
12…オーガヘッド
13…耐摩耗プレート又は超硬合金の面板
14…スクリュー
15…掘削土砂圧密形ロッド
16…超硬化肉盛
【要約】
【課題】杭建て込み施工において、掘削する地盤の排土を極力低減することができ、圧密作用を向上させることができる掘削土砂圧密形スクリューを提供する。
【解決手段】ロッド3の外周に、上下面をスクリュー面とし、湾曲押圧面4を側面とした円弧形状のコテ部としての圧密翼5を設ける掘削土砂圧密形スクリューにおいて、前記圧密翼5は平面視においてロッド3の中心軸に対して左右対称に、かつ、相互の上面のスクリュー面が螺旋として連続するように上下段に設け、これら一組の圧密翼5をロッド3の上下方向に複数設け、これら一組の圧密翼5の相互間にスクリュー羽根1を配置した。
【選択図】図1


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9