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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/47 20100101AFI20231130BHJP
【FI】
F16H61/47
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020012140
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116901
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】東泊 良隆
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】荒田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 隆也
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003706(JP,A)
【文献】特開2014-132196(JP,A)
【文献】特開2018-105359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/24,61/38-61/70,
63/40-63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、走行部材と、前記駆動源からの回転動力を無段変速して、前記走行部材へ向けて出力する無段変速装置と、前記無段変速装置の変速状態を変化させる変速アクチュエータと、前記走行部材に作動的に制動力を付加可能なブレーキ装置と、人為操作可能な変速操作部材及びブレーキ操作部材と、前記変速操作部材の操作位置を検出する変速操作センサと、前記ブレーキ操作部材の操作位置を検出するブレーキ操作センサと、前記無段変速装置の出力回転速度を直接又は間接的に検出する変速出力センサと、前記変速アクチュエータの作動制御を司る制御装置とを備え、前記ブレーキ操作部材への人為操作に応じて前記ブレーキ装置による前記走行部材への作動的な制動力の付加が係合又は解除されるように構成された作業車輌であって、
前記制御装置は、前記ブレーキ操作センサからの検出信号に基づきブレーキ非操作状態及びブレーキ操作状態であると判断した場合にそれぞれ起動する通常変速制御モード及びブレーキ操作時変速制御モードを有し、
前記通常変速制御モードは、前記無段変速装置の出力の制御目標速度を前記変速操作部材の操作位置に応じて設定した状態で前記変速アクチュエータを作動させ、
前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記無段変速装置の出力の制御目標速度を前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じて設定した状態で前記変速アクチュエータを作動させることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じた前記無段変速装置の出力の制御目標速度ωaを、
ωa=(1-最大操作位置に対する、その時点での前記ブレーキ操作位置の比率)×(その時点での前記変速操作部材の操作位置によって画されるHMT出力速度ωn)
に基づいて決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車輌。
【請求項3】
前記制御装置には、前記ブレーキ操作部材の操作位置と前記無段変速装置の出力の制御目標速度とに関する制御目標速度データが記憶されており、
前記ブレーキ操作時変速制御モードは、所定の制御切替タイミング毎に、前記ブレーキ操作センサの検出値及び前記制御目標速度データに基づき制御目標速度を切り替えることを特徴とする請求項に記載の作業車輌。
【請求項4】
前記制御目標速度データは、前記ブレーキ操作部材がブレーキ開始位置から最大操作位置へ近づくに従って、前記無段変速装置の出力の制御目標速度が遅くなり、前記ブレーキ操作部材が最大操作位置に位置された際には所定のブレーキ操作時車速となるように設定されていることを特徴とする請求項に記載の作業車輌。
【請求項5】
前記ブレーキ操作時車速は車速ゼロ速であることを特徴とする請求項に記載の作業車輌。
【請求項6】
前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じた制御速度で前記変速アクチュエータを作動させることを特徴とする請求項からの何れかに記載の作業車輌。
【請求項7】
前記制御装置には、前記ブレーキ操作部材の操作位置と前記変速アクチュエータに対する制御速度とに関する制御速度データが記憶されており、
前記ブレーキ操作時変速制御モードは、所定の制御切替タイミング毎に、前記ブレーキ操作センサの検出値及び前記制御速度データに基づき制御速度を切り替えることを特徴とする請求項からの何れかに記載の作業車輌。
【請求項8】
前記制御速度データは、前記ブレーキ操作部材が最大操作位置へ近づくに従って、前記変速アクチュエータに対する制御速度が高速となるように設定されていることを特徴とする請求項に記載の作業車輌。
【請求項9】
前記駆動源から前記無段変速装置へ入力される動力の入力回転速度を直接又は間接的に検出する変速入力センサを備え、
前記制御装置は、前記無段変速装置の出力を制御目標速度に追従させる為に必要とされる当該無段変速装置の変速比を、前記変速入力センサによって検出される入力回転速度に基づき算出することを特徴とする請求項1からの何れかに記載の作業車輌。
【請求項10】
前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作有無を検出するブレーキ入切スイッチを備え、
前記制御装置は、前記ブレーキ操作センサからの検出信号に基づきブレーキ非操作状態と判断したにも拘わらず、前記ブレーキ入切スイッチからブレーキ操作信号を入力した場合に起動する異常時変速制御モードを有し、
前記異常時変速制御モードは、前記無段変速装置の出力の制御目標速度を、前記変速操作部材の操作位置に応じて設定された通常車速よりも低速の異常時車速に設定した状態で、予め設定された所定制御速度で前記変速アクチュエータを作動させることを特徴とする請求項1からの何れかに記載の作業車輌。
【請求項11】
前記異常時車速は車速ゼロ速であることを特徴とする請求項10に記載の作業車輌。
【請求項12】
前記無段変速装置は、前記駆動源から入力される回転動力を前記変速アクチュエータによる変速動作に応じて正逆双方向に無段変速して出力するHSTと、前記駆動源及び前記HSTから入力される回転動力を合成し、合成回転動力を前記走行部材へ向けて出力する遊星ギヤ機構とを含むHMTとされ、
前記HMTは、前記HSTの出力速度が中立速及び逆転側最高速の間の逆転側所定回転速とされた際に、合成回転動力の出力速度がゼロ速となり、前記HSTの出力速度が逆転側所定回転速から中立速を介して正転側最高速へ変速されるに従って、合成回転動力の出力速度がゼロ速から前進側最高速へ変速され、前記HSTの出力速度が逆転側所定回転速から逆転側最高速へ変速されるに従って、合成回転動力の出力速度がゼロ速から後進側最高速へ変速されるように、構成されていることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速操作部材の操作状態に応じて出力制御される無段変速装置及びブレーキ操作部材の操作状態に応じて制動力の付加又は解除が行われるブレーキ装置が、駆動源から駆動輪へ至る走行系伝動経路に備えられている作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源から走行部材へ至る走行系伝動経路に介挿されたHST(油圧式無段変速機構)及び遊星歯車機構を含むHMT(油圧・機械式無段変速装置)と、前記HMTの変速状態を変化させる変速アクチュエータと、前記駆動輪に作動的に制動力を付加可能なブレーキ装置と、人為操作可能な変速操作部材及びブレーキ操作部材と、前記変速操作部材の操作状態を検出する変速操作センサと、前記ブレーキ操作部材の操作状態を検出するブレーキ操作センサと、前記HMTの入力回転速度及び出力回転速度をそれぞれ検出する変速入力センサ及び変速出力センサと、前記変速入力センサ及び前記変速出力センサに基づく前記HMTの変速比が前記変速操作センサによって検出される前記変速操作部材の操作状態に応じて変化するように前記変速アクチュエータの作動制御を司る制御装置とを備え、前記ブレーキ操作部材への人為操作に応じて前記ブレーキ装置による前記駆動輪への作動的な制動力の付加が係合又は解除される作業車輌において、前記ブレーキ操作センサからの検出信号に基づき前記ブレーキ操作部材がブレーキ操作されると、前記制御装置が、前記変速操作部材の操作状態に拘わらず、前記HSTの可動斜板が車速ゼロに相当する中立位置に位置するように前記変速アクチュエータを作動させ、且つ、前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作が解除されると、前記可動斜板がブレーキ作動制御前の変速比に応じた傾転位置又は前記変速操作部材のその時点での操作状態に応じた傾転位置に位置するように前記変速アクチュエータを作動させること(以下、従来構成という)が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
さらに、前記従来構成は、前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作に応じて、HST可動斜板が車速ゼロに相当する中立位置に位置するように前記変速アクチュエータを作動させる際には、予め登録された複数の制御曲線の中から一の制御曲線を選択し、当該一の制御曲線に従って前記変速アクチュエータの作動制御を行うように構成されている。
【0004】
前記従来構成は、ブレーキ操作に応じて前記ブレーキ装置が前記駆動輪に作動的に制動力を付加しているにも拘わらず、前記HMTが前記駆動輪へ向けて回転動力を出力し続けることを有効に防止でき、これにより、ブレーキ操作時に、制動距離が不当に伸びること並びに前記HMTに必要以上に負荷が掛かることを有効に防止できる点において有用であるが、下記点において改善の余地がある。
【0005】
即ち、前述の通り、前記従来構成においては、予め登録されている複数の制御曲線の中ら一の制御曲線が選択されており、その選択は、制御曲線決定要素に基づいて行われる。
ここで、制御曲線決定要素として、ブレーキペダルの回動角、ブレーキ装置における油圧装置の油圧値等が例示されているが、何れにおいても、操縦者のブレーキ操作速度に基づき一の制御曲線を選択するものとされている。
【0006】
従って、操縦者が一連のブレーキ操作を完了させるまで、変速アクチュエータの作動制御を行う際に用いる制御曲線を決定できず、結果として、操縦者の意図に即した減速状態を得るにはタイムラグが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4439183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、無段変速装置及びブレーキ装置を有する作業車輌であって、ブレーキ操作時に、制動距離が不当に伸びること及び無段変速装置に必要以上に負荷が掛かることを有効に防止しつつ、操縦者のブレーキ操作意図に応じた車速減速制御を迅速に行える作業車輌の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
記目的を達成する為に、本発明は、駆動源と、走行部材と、前記駆動源からの回転動力を無段変速して、前記走行部材へ向けて出力する無段変速装置と、前記無段変速装置の変速状態を変化させる変速アクチュエータと、前記走行部材に作動的に制動力を付加可能なブレーキ装置と、人為操作可能な変速操作部材及びブレーキ操作部材と、前記変速操作部材の操作位置を検出する変速操作センサと、前記ブレーキ操作部材の操作位置を検出するブレーキ操作センサと、前記無段変速装置の出力回転速度を直接又は間接的に検出する変速出力センサと、前記変速アクチュエータの作動制御を司る制御装置とを備え、前記ブレーキ操作部材への人為操作に応じて前記ブレーキ装置による前記走行部材への作動的な制動力の付加が係合又は解除されるように構成された作業車輌であって、前記制御装置は、前記ブレーキ操作センサからの検出信号に基づきブレーキ非操作状態及びブレーキ操作状態であると判断した場合にそれぞれ起動する通常変速制御モード及びブレーキ操作時変速制御モードを有し、前記通常変速制御モードは、前記無段変速装置の出力の制御目標速度を前記変速操作部材の操作位置に応じて設定した状態で前記変速アクチュエータを作動させ、前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記無段変速装置の出力の制御目標速度を前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じて設定した状態で前記変速アクチュエータを作動させるように構成された作業車輌を提供する。
【0010】
一形態においては、前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じた前記無段変速装置の出力の制御目標速度ωaを、ωa=(1-最大操作位置に対する、その時点での前記ブレーキ操作位置の比率)×(その時点での前記変速操作部材の操作位置によって画されるHMT出力速度ωn)に基づいて決定するように構成される。
【0011】
他形態において、前記制御装置には、前記ブレーキ操作部材の操作位置と前記無段変速装置の出力の制御目標速度とに関する制御目標速度データが記憶される。
この場合、前記ブレーキ操作時変速制御モードは、所定の制御切替タイミング毎に、前記ブレーキ操作センサの検出値及び前記制御目標速度データに基づき制御目標速度を切り替えるように構成される。
【0012】
ましくは、前記制御目標速度データは、前記ブレーキ操作部材がブレーキ開始位置から最大操作位置へ近づくに従って、前記無段変速装置の出力の制御目標速度が遅くなり、前記ブレーキ操作部材が最大操作位置に位置された際には所定のブレーキ操作時車速となるように設定される。
好ましくは、前記ブレーキ操作時車速は車速ゼロ速とされる。
【0013】
本発明の種々の構成において、好ましくは、前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じた制御速度で前記変速アクチュエータを作動させるように構成され得る。
【0014】
ましくは、前記制御装置には、前記ブレーキ操作部材の操作位置と前記変速アクチュエータに対する制御速度とに関する制御速度データが記憶される。
この場合、前記ブレーキ操作時変速制御モードは、所定の制御切替タイミング毎に、前記ブレーキ操作センサの検出値及び前記制御速度データに基づき制御速度を切り替えるように構成される。
【0015】
好ましくは、前記制御速度データは、前記ブレーキ操作部材が最大操作位置へ近づくに従って、前記変速アクチュエータに対する制御速度が高速となるように設定される。
【0016】
前記種々の構成において、好ましくは、本発明に係る作業車輌には、前記駆動源から前記無段変速装置へ入力される動力の入力回転速度を直接又は間接的に検出する変速入力センサが備えられ得る。
この場合、前記制御装置は、前記無段変速装置の出力を制御目標速度に追従させる為に必要とされる当該無段変速装置の変速比を、前記変速入力センサによって検出される入力回転速度に基づき算出するように構成される。
【0017】
前記種々の構成において、好ましくは、本発明に係る作業車輌には、前記ブレーキ操作部材のブレーキ操作有無を検出するブレーキ入切スイッチが備えられる。
この場合、前記制御装置は、前記ブレーキ操作センサからの検出信号に基づきブレーキ非操作状態と判断したにも拘わらず、前記ブレーキ入切スイッチからブレーキ操作信号を入力した場合に起動する異常時変速制御モードを有し得る。
前記異常時変速制御モードは、前記無段変速装置の出力の制御目標速度を、前記変速操作部材の操作位置に応じて設定された通常車速よりも低速の異常時車速に設定した状態で、予め設定された所定制御速度で前記変速アクチュエータを作動させる。
好ましくは、前記異常時車速は車速ゼロ速とされる。
【0018】
本発明に係る前記作業車輌の前記種々の構成において、前記無段変速装置は、前記駆動源から入力される回転動力を前記変速アクチュエータによる変速動作に応じて正逆双方向に無段変速して出力するHSTと、前記駆動源及び前記HSTから入力される回転動力を合成し、合成回転動力を前記走行部材へ向けて出力する遊星ギヤ機構とを含むHMTとされ得る。
【0019】
好ましくは、前記HMTは、前記HSTの出力速度が中立速及び逆転側最高速の間の逆転側所定回転速とされた際に、合成回転動力の出力速度がゼロ速となり、前記HSTの出力速度が逆転側所定回転速から中立速を介して正転側最高速へ変速されるに従って、合成回転動力の出力速度がゼロ速から前進側最高速へ変速され、前記HSTの出力速度が逆転側所定回転速から逆転側最高速へ変速されるに従って、合成回転動力の出力速度がゼロ速から後進側最高速へ変速されるように、構成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る作業車輌によれば、ブレーキ操作時に制動距離が不当に伸びること及び無段変速装置に必要以上に負荷が掛かることを有効に防止しつつ、操縦者のブレーキ操作意図に応じた車速減速制御を迅速に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る作業車輌の側面図である。
図2図2は、図1に示す前記作業車輌の伝動模式図である。
図3図3は、図1に示す前記作業車輌における無段変速装置を形成するHMTの断面図である。
図4図4は、図3に示す前記HMTにおけるHSTの油圧回路図である。
図5図5は、前記HSTの出力回転速度と前記HMTの出力回転速度との関係を表すグラフである。
図6図6は、図3におけるVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7は、図6におけるVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図9は、図8におけるIX部拡大図であり、図9(a)~(c)は、それぞれ、電磁比例弁のスプールが初期位置、突出位置及び格納位置に位置されている状態を示している。
図10図10は、前記作業車輌における変速操作部材の部分斜視図であり、ゼロ速位置に位置された状態を示している。
図11図11は、変速操作部材の部分斜視図であり、前進側最高速位置に位置された状態を示している。
図12図12は、前記作業車輌におけるブレーキ操作部材の斜視図であり、非操作位置(初期位置)に位置されている前記ブレーキ操作部材をブレーキ操作軸線方向一方側から視た状態を示している。
図13図13は、前記ブレーキ操作部材の斜視図であり、非操作位置(初期位置)に位置されている前記ブレーキ操作部材をブレーキ操作軸線方向他方側から視た状態を示している。
図14図14は、前記ブレーキ操作部材の斜視図であり、最大操作位置に位置されている前記ブレーキ操作部材をブレーキ操作軸線方向一方側から視た状態を示している。
図15図15は、操作パターンX1~X3におけるサンプリングタイミング毎の前記ブレーキ操作部材の操作位置を表すグラフである。
図16図16は、前記実施の形態1において操作パターンX1~X3で前記ブレーキ操作部材を操作した際に現出される前記HMTの変速比の変化状況を表すグラフである。
図17図17は、前記実施の形態1における制御フローである。
図18図18は、本発明の実施の形態2に係る作業車輌において操作パターンX1~X3で前記ブレーキ操作部材を操作した際に現出される前記HMTの変速比の変化状況を表すグラフである。
図19図19は、前記実施の形態2における制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1
以下、本発明に係る作業車輌の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2に、それぞれ、本実施の形態に係る作業車輌1の側面図及び伝動模式図を示す。
【0023】
図1及び図2に示すように、前記作業車輌1は、駆動源10と、駆動輪等の走行部材15と、前記駆動源10からの回転動力を無段変速して、前記走行部材15へ向けて出力する無段変速装置100と、前記走行部材15に作動的に制動力を付加可能なブレーキ装置300とを備えている。
なお、図1中の符号16は、副駆動輪又は従動輪である。
【0024】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記無段変速装置100は、前記駆動源10から作動的に入力される回転動力を無段変速する油圧式無段変速機構110(以下、HSTという)と、前記駆動源10から作動的に入力される回転動力及び前記HST110から作動的に入力される回転動力を合成し、合成回転動力を前記走行部材15へ向けて出力する遊星ギヤ機構150とを有する油圧・機械式無段変速装置(以下、HMTという)とされている。
当然ながら、前記無段変速装置100が前記HST110のみを有するように変形することも可能である。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、前記走行部材15として左右一対の第1及び第2走行部材15(1)、15(2)を有しており、前記無段変速装置100の回転動力を前記第1及び第2走行部材15(1)、15(2)へ差動伝達する差動ギヤ機構320を有している。
【0026】
詳しくは、前記作業車輌1は、前記第1及び第2走行部材15(1)、15(2)をそれぞれ作動的に駆動する左右一対の第1及び第2駆動車軸17(1)、17(2)を有しており、前記差動ギヤ機構320は、前記無段変速装置100から作動的に伝達される回転動力を前記第1及び第2駆動車軸17(1)、17(2)に差動伝達するように構成されている。
【0027】
なお、前記作業車輌1は、図2に示すように、さらに、前記駆動源10から前記走行部材15へ至る走行系伝動経路に関し、前記無段変速装置100及び前記差動ギヤ機構320の間に介挿されたギア式変速機構250を有している。
【0028】
前記ギヤ式変速機構250は、前記無段変速装置100からの回転動力を作動的に入力する副変速入力軸252と、副変速出力軸254と、前記副変速入力軸252から前記副変速出力軸254へ回転動力を伝達可能な低速ギヤ列256L及び高速ギヤ列256Hを含む複数の副変速ギヤ列と、前記複数の変速ギヤ列のうちの一のギヤ列を伝動状態とさせるシフター258とを有している。
【0029】
この場合、前記無段変速装置100が主変速装置として作用し、前記ギヤ式変速機構250が副変速装置として作用する。
【0030】
図2に示すように、前記ギヤ式変速機構250及び前記差動ギヤ機構320は前記作業車輌1に備えられるミッションケース200内に収容されており、前記第1及び第2駆動車軸17(1)、17(2)は前記ミッションケース200に支持されている。
【0031】
図3に、前記無段変速装置100の断面図を示す。
図2及び図3に示すように、本実施の形態においては、前記無段変速装置100は、前記HST110及び前記遊星ギヤ機構150を収容するハウジング102を有しており、前記ハウジング102が前記ミッションケース200に着脱可能に連結されている。
【0032】
図4に、前記HST110の油圧回路図を示す。
図2図4に示すように、前記HST110は、前記ハウジング102に軸線回り回転自在に支持されたポンプ軸112及びモータ軸122と、前記ポンプ軸112に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記ハウジング102に収容された油圧ポンプ114と、前記モータ軸122に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記ハウジング102に収容され、且つ、前記油圧ポンプ114に一対の作動油ライン400a、400bを介して流体接続された油圧モータ124と、前記油圧ポンプ114及び前記油圧モータ124の容積量をそれぞれ画するポンプ側斜板116及びモータ側斜板126とを備えており、前記ポンプ側斜板116及び前記モータ側斜板126の少なくとも一方が揺動軸線回りの傾転位置に応じて対応する油圧ポンプ114又は油圧モータ124の容積量を変化させる可動斜板とされている。
【0033】
図2図4に示すように、本実施の形態においては、前記ポンプ側斜板116が可動斜板とされており、一方、前記モータ側斜板126は固定斜板とされている。
【0034】
図4に示すように、前記HST110は、さらに、前記ポンプ軸112によって駆動される補助ポンプ130と、前記補助ポンプ130から圧油供給を受ける供給ライン410と、前記供給ライン410の油圧を設定するリリーフ弁412と、一端部が前記供給ライン410に流体接続され且つ分岐点416において第1及び第2分岐ライン415a、415bに分岐されたチャージライン415であって、前記第1及び第2分岐ライン415a、415bの圧油流れ方向下流端部がそれぞれ前記第1及び第2作動油ライン400a、400bに流体接続されているチャージライン415と、前記供給ライン410から対応する作動油ライン400a、400bへの圧油流入を許容し且つ逆向きの流れを防止するように前記第1及び第2分岐ライン415a、415bにそれぞれ介挿されたチェック弁417とを有している。
【0035】
本実施の形態においては、前記HST110は、さらに、前記第1及び第2分岐ライン415a、415bのそれぞれに前記チェック弁417に並列状態で設けられた高圧リリーフ弁420を有している。前記高圧リリーフ弁420は、一方の作動油ライン(例えば、第1作動油ライン400a)の異常高圧時に当該一方の作動油ライン400aの圧油を、他方の作動油ライン400bに接続された分岐ライン415b及び当該分岐ライン415bに介挿された前記チェック弁417を介して他方の作動油ライン400bへリリーフさせる。
【0036】
また、前記第1及び第2分岐ライン415a、415bの一方には、当該一方の分岐ラインに介挿される前記チェック弁417をバイパスさせるバイパスライン422と、前記バイパスライン422に介挿された絞り424とが設けられている。
【0037】
前記バイパスライン422及び前記絞り424は、HST作動効率の悪化を可能な範囲で防止しつつ、HST中立幅を確保する為に備えられるものであり、好ましくは、前記一対の第1及び第2作動油ライン400a、400bのうち、後進時高圧側の作動油ライン(例えば、第2作動油ライン400b)に流体接続された分岐ライン415bに備えられる。
【0038】
図2及び図3に示すように、前記遊星ギヤ機構150は、サンギヤ152と、前記サンギヤ152と噛合する遊星ギヤ154と、前記遊星ギヤ154と噛合するインターナルギヤ156と、前記遊星ギヤ154を軸線回り回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ154の前記サンギヤ152回りの公転に連動して前記サンギヤ152の軸線回りに回転するキャリヤ158とを有しており、前記サンギヤ152、前記キャリヤ158及び前記インターナルギヤ156が遊星3要素を形成している。
【0039】
前記遊星3要素のうちの第1要素に前記HST110の出力が作動的に入力され、第2要素に前記駆動源10からの動力が作動的に入力され、第3要素から合成回転動力が出力される。
【0040】
本実施の形態においては、図2及び図3に示すように、前記サンギヤ152、前記インターナルギヤ156及び前記キャリヤ158が、それぞれ、前記第1~第3要素として作用している。
【0041】
図3に示すように、前記無段変速装置100は、さらに、前記駆動源10から作動的に伝達される回転動力を入力する入力軸105と、前記第3要素(本実施の形態においては前記キャリヤ158)に作動連結されたHMT出力軸195とを有している。
【0042】
前記入力軸105は、前記ポンプ軸112と同軸上に配置されており、伝動方向上流側の第1端部105aが前記駆動源10に作動連結され且つ伝動方向下流側の第2端部105bが前記ポンプ軸112にカップリング106を介して連結されている。
【0043】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記ハウジング102を前記ミッションケース200に連結させた状態において、前記入力軸105の第1端部105aが前記ミッションケース200に支持された入力伝動軸205に軸線回り相対回転不能に連結されるようになっている。
なお、前記入力伝動軸205はプーリー伝動機構等の伝動機構202を介して前記駆動源10に作動連結されている。
【0044】
前記インターナルギヤ156は、前記カップリング106に設けられた伝動ギヤ107を介して前記駆動源10からの回転動力を入力している。
【0045】
前記HMT出力軸195は、前記ハウジング102を前記ミッションケース200に連結させた状態において、前記ミッションケース200に支持された伝動軸に軸線回り相対回転不能に連結される。
【0046】
本実施の形態においては、図3に示すように、前記HMT出力軸195は、前記サンギヤ152と同軸上に配置されており、伝動方向上流側の第1端部が前記キャリヤ158に連結され、且つ、伝動方向下流側の第2端部が前記伝動軸に連結されている。
なお、本実施の形態においては、図2に示すように、前記副変速入力軸252が、前記HMT出力軸195が連結される前記伝動軸とされている。
【0047】
図5に、前記HST110の出力(前記モータ軸122の回転動力)の回転速度と前記HMTの出力(前記遊星歯車機構150の合成回転動力)の回転速度との関係を表すグラフを示す。
【0048】
本実施の形態においては、前記HMTは、前記HST110の出力速度が中立速HST(N)及び逆転側最高速HST(Rmax)の間の逆転側所定回転速HST(Rs)とされた際に、合成回転動力の出力速度(即ち、車速)がゼロ速0となり、前記HST110の出力速度が逆転側所定回転速HST(Rs)から中立速HST(N)を介して正転側最高速HST(Fmax)へ変速されるに従って、合成回転動力の出力速度がゼロ速から前進側最高速Fmaxへ変速され、前記HST110の出力速度が逆転側所定回転速HST(Rs)から逆転側最高速HST(Rmax)へ変速されるに従って、合成回転動力の出力速度がゼロ速0から後進側最高速Rmaxへ変速されるように、構成されている。
【0049】
斯かる構成により、走行系伝動経路に前後進切替機構を備えることなく、前進走行及び後進走行を可能としつつ、前進側最高速Fmaxの絶対値を後進側最高速Rmaxよりも大きくして、使用頻度の高い前進走行の変速可能範囲を後進走行に比して広げることが可能となっている。
【0050】
図2に示すように、本実施の形態においては、前記ブレーキ装置300は、前記左右一対の第1及び第2駆動車軸17(1)、17(2)にそれぞれ制動力を付加する第1及び第2走行ブレーキ機構300(1)、300(2)を有している。
本実施の形態においては、前記第1及び第2走行ブレーキ機構00(1)、300(2)は摩擦板式とされている。
【0051】
図2及び図4に示すように、前記作業車輌1は、さらに、前記無段変速装置100の変速状態を変化させる変速アクチュエータと、人為操作可能な変速操作部材710及びブレーキ操作部材720と、前記変速操作部材710の操作状態を検出する変速操作センサ715と、前記ブレーキ操作部材720の操作状態を検出するブレーキ操作センサ725と、前記無段変速装置100の出力回転速度を直接又は間接的に検出する変速出力センサ735と、前記変速アクチュエータの作動制御を司る制御装置700とを備えている。
【0052】
なお、前記ブレーキ操作部材720及び前記ブレーキ装置300の連動構造については、前記ブレーキ操作部材720への人為操作に応じて前記ブレーキ装置300のブレーキ係合状態及びブレーキ解除状態の切り換えが行われる限り、種々の構成を取り得る。
【0053】
本実施の形態においては、前記作業車輌1は、前記ブレーキ操作部材720と前記ブレーキ装置300の作動部とを作動連結するブレーキリンク機構305(下記図14参照)を有しており、前記ブレーキ装置300が、前記ブレーキ操作部材720の操作量に比例した大きさの制動力を生じるようになっている。
【0054】
当然ながら、前記ブレーキリンク機構305に代えて、前記ブレーキ装置300を油圧的に作動させる油圧構造及び前記ブレーキ操作部材720への操作に応じて前記油圧構造への油路の切替を行う電磁弁を含む油圧式アクチュエータ、又は、前記ブレーキ操作部材720への操作に応じて前記ブレーキ装置300を作動させる電動モータ等の電気式アクチュエータ等のブレーキアクチュエータを備えることも可能である。
【0055】
この場合、前記制御装置700は、前記ブレーキ装置300が前記ブレーキ操作部材720への人為操作に応じた作動状態となるように、前記ブレーキアクチュエータの作動制御を行うように構成される。
【0056】
図4に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、前記変速アクチュエータとして、電気制御式油圧サーボ機構500を有している。
【0057】
図6図3におけるVI-VI線に沿った断面図を示す。
また、図7図6におけるVII-VII線に沿った断面図を、図8図7におけるVIII-VIII線に沿った断面図を示す。
【0058】
図6図8に示すように、前記油圧サーボ機構500は、サーボ空間505に往復動可能に収容されたサーボピストン510と、前記サーボピストン510を前記ポンプ側斜板116に連結させる連結ピン520とを有している。
【0059】
本実施の形態においては、前記サーボ空間505は前記ハウジング102に形成されている。
前記サーボピストン510は、前記サーボ空間505の長手方向一端側及び他端側にそれぞれ第1及び第2油室506a、506bを液密に画した状態で前記サーボ空間505に収容されており、前記第1油室506aへの圧油供給及び前記第2油室506bからの圧油排出によって第1軸線方向へ移動され且つ前記第2油室506bへの圧油供給及び前記第1油室506aからの圧油排出によって第2軸線方向へ移動されるようになっている。
【0060】
前記連結ピン520は、前記サーボピストン510の第1及び第2軸線方向への移動に応じて可動斜板(本実施の形態においては前記ポンプ側斜板116)がそれぞれ揺動軸線回り第1及び第2方向へ傾転するように、前記サーボピストン510及び前記可動斜板を連結している。
【0061】
詳しくは、図7に示すように、前記サーボピストン510は、端面が前記第1油室506aに面する状態で前記サーボ空間505の内周面に液密且つ摺動可能に当接される第1大径部511aと、端面が前記第2油室506bに面する状態で前記サーボ空間505の内周面に液密且つ摺動可能に当接される第2大径部511bと、長手方向に関し前記第1及び第2大径部511a、511bの間に位置する小径部513とを有しており、前記小径部513によって画される溝に前記連結ピン520の先端側が、軸線方向に関しては相対移動不能(一体移動)で且つ軸線方向とは直交する方向に関しては相対移動可能に係入されている。
【0062】
一方、本実施の形態においては、前記ポンプ側斜板116は、前記ハウジング102に設けられた凹状の斜板受け部によって揺動軸線回り傾転可能に支持されたクレードル型とされており、前記サーボピストン510と対向する端面に、前記連結ピン520の基端側が係入される係入孔116aを有している。
【0063】
これにより、前記サーボピストン510が軸線方向一方側の第1方向に移動されると、前記連結ピン520は、前記サーボピストン510と共に第1方向に移動されて、前記ポンプ側斜板116に対して前記第1方向への押動力を付加する。
第1方向への押動力を受けると、前記ポンプ側斜板116は、前記斜板受け部によって画される揺動軌跡に沿って、揺動軸線回りに前記第1方向に対応した方向へ傾転される。
【0064】
図4に示すように、前記油圧サーボ機構500は、さらに、油圧源から圧油を受ける圧油ライン530と、前記第1及び第2油室506a、506bにそれぞれ流体接続された第1及び第2給排ライン535a、535bと、ドレンライン540と、前記圧油ライン530、前記第1給排ライン535a、前記第2給排ライン535b及び前記ドレンライン540の接続状態を切り替える切替弁600と、操作空間の長手方向一端側及び他端側にそれぞれ第1操作油室155a及び第2操作油室を液密に画した状態で当該操作空間に往復動可能往復動可能に収容された操作ピストン770と、前記操作ピストン770及び前記切替弁600を連結させる連結部材760と、前記第1及び第2操作油室155a、155bに対する圧油給排をそれぞれ切り替える第1及び第2電磁比例弁820a、820bとを備えている。
【0065】
図6及び図7に示すように、本実施の形態においては、前記切替弁600は前記サーボピストン510の中央軸線孔に往復動可能に収容されたスプールとされている。
【0066】
前記切替弁600は、前記第1給排ライン535aを前記圧油ライン530に流体接続させて前記第1油室506aに圧油を供給し且つ前記第2給排ライン535bを前記ドレンライン540に流体接続させて前記第2油室506bから圧油を排出させて前記サーボピストン510を軸線方向一方側へ移動させる第1方向作動位置(例えばHST正転方向作動位置)と、前記第1給排ライン535aを前記ドレンライン540に流体接続させて前記第1油室506aから圧油を排出させ且つ前記第2給排ライン535bを前記圧油ライン540に流体接続させて前記第1油室506aに圧油を供給して前記サーボピストン510を軸線方向他方側へ移動させる第2方向作動位置(例えばHST逆転方向作動位置)と、前記第1及び第2給排ライン535a、bを閉塞させて、前記サーボピストン510をその時点の軸線方向位置に保持する保持位置とをとり得るように構成されている。
【0067】
本実施の形態においては、前記操作ピストン770が収容される前記操作空間は、前記ハウジング102に着脱自在に連結される蓋体108に両端が開口された状態で形成された空洞と、前記空洞の長手方向一方側及び他方側の開口をそれぞれ閉塞する第1及び第2キャップ774a、bとによって形成されている。
前記空洞は、前記操作空間が前記切替弁600の往復動方向と平行になるように形成されている。
【0068】
前記操作ピストン770は、前記第1操作油室155aへの圧油供給及び前記第2操作油室155bからの圧油排出によって第1長手方向へ移動され且つ前記第2操作油室155bへの圧油供給及び前記第1操作油室155aからの圧油排出によって第2長手方向へ移動される。
【0069】
詳しくは、図8に示すように、前記操作ピストン770は、長手方向一方側及び他方側にそれぞれ位置し、前記収容空間の内周面に液密且つ摺動可能に当接される第1及び第2大径部772a、772bと、長手方向に関し前記第1及び第2大径部772a、772bの間に位置する小径部774とを有しており、前記第1大径部772aの端面及び前記第1キャップ774aの間に前記第1操作油室155aを画し且つ前記第2大径部772bの端面及び前記第2キャップ774bの間に前記第2操作油室155bを画した状態で前記収容空間に長手方向往復動可能に収容されている。
【0070】
前記連結部材760は、前記操作ピストン770の第1及び第2長手方向への移動に応じて前記切替弁600がそれぞれ第1方向作動位置及び第2方向作動位置へ向けて移動されるように、前記操作ピストン770及び前記切替弁600を作動連結している。
【0071】
本実施の形態においては、前記連結部材760は、前記ポンプ側斜板116の揺動軸線と平行とされた状態で、一端部が前記操作ピストン770の前記小径部774によって画される係合溝に係合され且つ他端部が前記切替弁600に設けられた凹部に係合された係合ピンとされている。
【0072】
本実施の形態においては、前記油圧サーボ機構500は、さらに、前記第1及び第2操作油室155a、155bにそれぞれ長手方向固定位置変更可能に配設された第1及び第2位置調整ボルト780a、780bを有している。
【0073】
なお、前記第1及び第2位置調整ボルト780a、780bは同一構成を有している。
従って、図中、前記第2位置調整ボルト780bについては、末尾をbに変更した前記第1位置調整ボルト780aと同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0074】
詳しくは、前記第1位置調整ボルト780aは、外端部に前記第1キャップ158aに螺合するネジ部を有し且つ内端部に大径の頭部782aを有しており、軸線回りの回転に応じて長手方向固定位置が変更されるようになっている。
なお、図中符号784aは、前記第1位置調整ボルト780aのネジ部と螺合して、前記第1位置調整ボルト780aの長手方向位置を固定する固定ナットである。
【0075】
前記第1位置調整ボルト780aの前記第1操作油室155a内に位置する部分の外端側には、第1外側バネ受け790aが長手方向相対移動不能に設けられ、且つ、前記第1位置調整ボルト780aの内端側には第1内側バネ受け部材792aが長手方向相対移動可能に設けられている。
前記第1内側バネ受け部材792aは、前記第1位置調整ボルト780aの頭部782aに係合することで、内端側への移動端が画されている。
【0076】
前記第1内側バネ受け部材792a及び前記第1外側バネ受け部材790aの間には、第1操作付勢部材765aが圧縮状態で介挿されている。
【0077】
前記操作ピストン770の第1大径部772aには、前記第1内側バネ受け部材792aが挿入可能な内径の第1外側軸線孔と、前記第1外側軸線孔から第1段部を伴って縮径された状態で軸線方向内側へ延びる第1内側軸線孔とが設けられている。
【0078】
前記第1内側軸線孔は、前記第1位置調整ボルト780aの頭部782aの挿入は許容しつつ、前記第1内側バネ受け部材792aの挿入は防止する内径とされている。
【0079】
ここで、前記操作ピストン770が前記HMTの出力をゼロ速とさせる位置(本実施の形態においては、前記HST110の出力を逆転側所定回転速HST(Rs)とさせる位置、以下、長手方向基準位置という)に位置された際に、前記第1操作付勢部材765aによって前記第2操作油室155aの方向へ付勢されている前記第1内側バネ受け部材792aが前記第1位置調整ボルト780aの頭部782a及び前記第1段部の双方に係合し且つ前記第2操作付勢部材765bによって前記第1操作油室155aの方向へ付勢されている前記第2内側バネ受け部材792bが前記第2位置調整ボルト780bの頭部782b及び前記第2段部の双方に係合するように、前記第1及び第2位置調整ボルト780a、780bの長手方向位置が設定されている。
【0080】
従って、前記第1及び第2操作油室155a、155bに圧油供給が行われていない状態においては、前記操作ピストン770は前記第1及び第2操作付勢部材765a、765bによって挟圧されることで前記長手方向基準位置に位置される。
【0081】
図9(a)~(c)に、図8におけるIX部拡大図を示す。
図8及び図9(a)~(c)に示すように、前記第1電磁比例弁820aは、駆動部を有する本体825と、軸線方向に関し初期位置、突出位置及び格納位置を取り得るように前記本体825に軸線方向進退可能に収容されたスプール830とを備えている。
【0082】
図9(a)~(c)は、それぞれ、前記スプール830が初期位置、突出位置及び格納位置に位置されている状態を示している。
なお、前記第2電磁比例弁820bは前記第1電磁比例弁820aと同一構成を有している。従って、前記第1電磁比例弁820aの説明は前記第2電磁比例弁820bにも適用される。
【0083】
本実施の形態においては、前記スプール830が突出位置、初期位置及び格納位置に位置された際に、それぞれ、対応する前記第1操作油室155aが前記ドレンライン540に対して遮断されつつ前記圧油ライン530に接続される圧油供給状態(図9(b)参照)、対応する前記第1操作油室155aが前記圧油ライン530及び前記ドレンライン540の双方に対して遮断される保持状態(図9(a)参照)、並びに、対応する前記第1操作油室155aが前記圧油ライン530に対して遮断されつつ前記ドレンライン540に接続される圧油排出状態(図9(c)参照)が現出される。
【0084】
前記駆動部は、前記スプール830を強制的に突出方向へ押動して突出位置に位置させるON状態と、前記スプール830に対して実質的に押動力を付加しないOFF状態とを取り得るように構成されている。
【0085】
また、本実施の形態においては、図9(a)~(c)に示すように、前記第1及び第2電磁比例弁820a、820bの前記駆動部は、ON状態時に、前記スプール830の基端面に当接して前記スプール830を突出方向へ押動するピン827を有している。
【0086】
本実施の形態においては、互いに向かい合わせた前記スプール830の基端面と前記ピン827の先端面との間には隙間Lが形成され、前記駆動部のOFF状態時に、対応する前記第1操作油室155a及び前記操作ドレンライン810の相対油圧差に応じて、初期位置又は格納位置を取るように構成されている。
【0087】
詳しくは、図9(a)~(c)に示すように、前記スプール830は、対応する前記第1操作油室155aの圧力を受けて当該スプール830を格納方向へ押動する格納方向押動力を発生させる油室側受圧部831と、当該スプール830の軸線方向位置(初期位置(図9(a))、格納位置(図9(c))及び突出位置(図9(b)))に応じて、対応する前記第1操作油室155aを選択的に、閉塞、前記圧油ライン530に連結、及び、前記ドレンライン540に連結させる油孔832とを有している。
【0088】
即ち、前記スプール830は、前記駆動部のON状態時には、前記ピン827からの押動力によって前記隙間L+αの所定ストロークを行って強制的に突出位置(図9(b))に位置される一方で、前記駆動部のOFF状態時には、前記第1操作油室155a内の圧力がゼロで前記ドレンライン540と平衡状態の際には初期位置(図9(a))を取り且つ前記格納方向押動力が前記ドレンライン540内の圧力(ゼロ)を上回る油室油圧発生状態の際には格納位置(図9(c))をとる。
【0089】
前記制御装置700は、入力信号に応じて前記第1及び第2電磁比例弁820a、820bの作動制御を行うことで、前記HST110の出力速度(即ち、前記HMTの出力速度)を変更する。
【0090】
即ち、例えば、車輌前進側への増速信号が入力されると、前記制御装置700は、前記操作ピストン770が対応する第1長手方向へ増速信号に応じた所定量だけ移動するように、所定時間だけ前記第1電磁比例弁820aをON状態とさせ且つ前記第2電磁比例弁をOFF状態とさせる。
【0091】
これにより、前記圧油ライン530から対応する前記第1操作油室155aに圧油が供給されて、前記操作ピストン770が第1長手方向へ移動する。
【0092】
この際、前記操作ピストン770の第1長手方向への移動によって前記第2操作油室155bが圧縮され、前記第2操作油室155bの油圧が上昇して前記第2操作油室155bは油室油圧発生状態となる。
【0093】
前記第2操作油室155bの油圧上昇によって、前記駆動部がOFF状態とされている前記第2電磁比例弁820bのスプール830が初期位置から格納位置へ押動され、前記第2操作油室155bの圧油が前記ドレンライン540へ排出される。
【0094】
従って、車輌前進側への増速信号が入力された場合には、前記操作ピストン770が第1長手方向へ所定量だけ移動し、これにより、前記連結部材760を介して前記切替弁600が対応する前進方向へ移動される。逆に、車輌後進側への増速信号が入力された場合には、前記操作ピストン770が第2長手方向へ所定量だけ移動して前記切替弁600が対応する後進方向へ移動される。
【0095】
好ましくは、前記操作部材710の非操作時には、前記第1及び第2電磁比例弁820a、820bの双方の前記スプール830が突出位置から格納位置を取ることを許容しつつ、前記ピン827の先端面及び前記スプール830の基端面の当接状態が維持されるように、前記駆動部に微弱電流を流して、前記ピン827を前記スプール830の基端面に向けて隙間Lが消滅するように軽く付勢することができる。
【0096】
斯かる構成によれば、前記駆動部をOFF状態からON状態に切り替えた際の前記スプール830の初期位置から突出位置への応答性を向上させることができる。
【0097】
なお、本実施の形態においては、前記変速アクチュエータとして前記油圧サーボ機構500が備えられているが、当然ながら、前記制御装置700による制御によって、前記無段変速装置100の変速部(本実施の形態においては前記ポンプ側斜板116)を作動させ得る限り、種々の構成を取ることができる。
例えば、前記変速アクチュエータとして、前記油圧サーボ機構500の代わりに、電動モータを備えることも可能である。
【0098】
図10及び図11に、前記変速操作部材710の部分斜視図を示す。
本実施の形態においては、前記変速操作部材710は、変速操作軸線711回りに、車速セロ速位置を挟んで変速操作軸線711回り一方側の前進側最高速位置及び変速操作軸線711回り他方側の後進側最高速位置の間で回動操作可能とされている。
図10及び図11は、それぞれ、前記変速操作部材710が車速ゼロ速位置及び前進側最高速位置に位置された状態を示している。
【0099】
図10及び図11に示すように、本実施の形態においては、前記変速操作センサ715は、前記変速操作部材710の変速操作軸線711回りの回動角度を検出するように構成されている。
【0100】
図12図14に、前記ブレーキ操作部材720の斜視図を示す。
本実施の形態においては、前記ブレーキ操作部材720は、ブレーキ操作軸線721回りに、非操作位置(初期位置)及び最大操作位置の間で回動操作可能とされている。
【0101】
図12及び図13は、それぞれ、非操作位置(初期位置)に位置されている前記ブレーキ操作部材720をブレーキ操作軸線方向一方側及び他方側から視た状態を示している。
図14は、最大操作位置に位置されている前記ブレーキ操作部材720をブレーキ操作軸線方向一方側から視た状態を示している。
【0102】
図13に示すように、本実施の形態においては、前記ブレーキ操作センサ725は、前記ブレーキ操作部材720のブレーキ操作軸線721回りの回動角度を検出するように構成されている。
【0103】
図12及び図14に示すように、本実施の形態に係る作業車輌1は、さらに、前記ブレーキ操作部材720が所定閾値(例えば、ブレーキ操作軸線回りに3.5°)を超えてブレーキ操作されたか否かを検出するブレーキ入切スイッチ727を備えている。
【0104】
なお、図12及び図14における符号723は、前記ブレーキ操作部材720を非操作位置(初期位置)へ向けて付勢するブレーキ戻しバネである。
即ち、前記ブレーキ操作部材720へのブレーキ操作は前記ブレーキ戻しバネ723の付勢力に抗して行われ、前記ブレーキ操作部材720への人為操作力を解除すると、前記ブレーキ操作部材720は前記ブレーキ戻しバネ723の付勢力によって非操作位置(初期位置)へ戻されるようになっている。
【0105】
図2及び図3に示すように、本実施の形態においては、前記作業車輌1は、前記変速出力センサ735として、前記モータ軸122の回転速度を検出するHSTセンサ735a及び前記HMT出力軸195の回転速度を検出するHMTセンサ735bを備えているが、前記HSTセンサ735a及び前記HMTセンサ735bの何れか一方を省略することも可能である。
【0106】
即ち、例えば、前記HSTセンサ735aのみを備える場合には、前記モータ軸122の回転速度と前記遊星ギヤ機構150の変速比とに基づき、前記HMT出力軸195の出力回転速度が算出される。
【0107】
前記制御装置700は、ブレーキ非操作状態の際に起動する通常変速制御モード及びブレーキ操作状態の際に起動するブレーキ操作時変速制御モードを有している。
【0108】
前記通常変速制御モードは、前記無段変速装置100の出力の制御目標速度を前記変速操作部材710の操作位置に基づく速度に設定した状態で前記変速アクチュエータ(本実施の形態においては前記油圧サーボ機構500)の作動制御を実行する。
【0109】
一方、前記ブレーキ操作時変速制御モードは、前記無段変速装置100の出力の制御目標速度を前記変速操作部材710の操作位置に拘わらず強制的に、前記変速操作部材170の操作位置に応じて設定された通常車速よりも低速のブレーキ操作時車速に設定した状態で前記変速アクチュエータの作動制御を実行するものとされ、その際に、前記変速アクチュエータを前記ブレーキ操作部材720の操作位置に応じた制御速度で作動させるように構成されている。
【0110】
即ち、前記制御装置700には、前記ブレーキ操作部材720の操作位置毎に決められた、前記変速アクチュエータの制御速度が予め記憶されている。
そして、前記制御装置700は、前記ブレーキ操作センサ725からブレーキ操作を示す検出信号が入力されるとブレーキ操作時変速制御モードを起動し、ブレーキ操作時変速制御モードは、HMT出力目標速をブレーキ操作時車速に設定した状態で、前記ブレーキ操作部材720の操作位置によって決定される制御速度で前記変速アクチュエータを作動させる。
【0111】
かかる構成を備えることにより、操縦者のブレーキ操作の意図に適応した車速減速制御を迅速に実現することができる。
【0112】
以下、この効果に関し、3つの操作パターンX1~X3を例に説明する。
なお、下記説明においては、前記ブレーキ操作時車速が車速ゼロ速に設定されている場合を例に説明するが、当然ながら、前記ブレーキ操作時車速を車速ゼロ速以外の所望速度に設定することができる。
図15に、横軸に前記ブレーキ操作センサ725のサンプリングタイミングを、縦軸に前記ブレーキ操作センサ725によって検出される前記ブレーキ操作部材720の操作位置をとったグラフを示す。
図15中の黒点が各操作パターンにおける前記ブレーキ操作センサ725の検出値である。
【0113】
図15に示すように、
・操作パターンX1は、前記ブレーキ操作部材720を初期位置から最大操作位置MAXまで速やかに操作したブレーキ操作(急ブレーキ操作)、
・操作パターンX2は、前記ブレーキ操作部材720を初期位置から最大操作位置まで緩やかに操作したブレーキ操作、
・操作パターンX3は、前記ブレーキ操作部材720を初期位置から最大操作位置の1/4の位置まで操作パターンX2と同一操作速度で操作し、その位置で保持したブレーキ操作である。
【0114】
前記ブレーキ操作時変速制御モードは、所定の制御切替タイミングでの前記ブレーキ操作センサ725の検出値に基づき前記ブレーキ操作部材720の操作位置を認識し、当該操作位置に対応した制御速度で前記変速アクチュエータの作動制御を行う。
【0115】
本実施の形態においては、制御切替タイミングとして、前記ブレーキ操作センサ725のサンプリングタイミングの所定回数(例えば、10回)を用いている。
即ち、前記ブレーキ操作センサ725からブレーキ操作の開始を示す信号が入力された時点(図15のS)から、10回のサンプリングタイミング毎(図15のC1~C8)を、制御切替タイミングとして用いている。
【0116】
これに代えて、前記ブレーキ操作センサ725からブレーキ操作の開始を示す信号が入力された時点(図15のS)から所定時間をカウントすることも可能である。
【0117】
図16に、前記操作パターンX1~X3の際に前記ブレーキ操作時変速制御モードによって現出される前記HMTの変速比の変化状況を表すグラフを示す。
【0118】
操作パターンX1においては、図15に示すように、前記ブレーキ操作部材720は、第1~第4制御切替タイミングC1~C4の時点で、それぞれ、最大操作位置の1/4の位置(以下、1/4操作位置という)、最大操作位置の1/2の位置(以下、1/2操作位置という)、最大操作位置の3/4の位置(以下、3/4操作位置という)、及び、最大操作位置に位置されている。
【0119】
操作パターンX1の場合、ブレーキ操作時制御モードは、図16に示すように、前記変速アクチュエータに対する制御速度として、
・第1制御切替タイミングC1の時点において1/4操作位置用の制御速度を採用し、
・第2制御切替タイミングC2の時点において1/2操作位置用の制御速度に切り替え、・第3制御切替タイミングC3の時点において3/4操作位置用の制御速度に切り替え、・第4制御切替タイミングC4の時点において最大操作位置用の制御速度に切り替える。
【0120】
これにより、前記HMTの変速比は、図16に示すように、
・第1制御切替タイミングC1~第2制御切替タイミングC2の間においては前記変速操作部材710の操作位置に応じた変速比Rnから1/4操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第2制御切替タイミングC2~第3制御切替タイミングC3の間においては1/2操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第3制御切替タイミングC3~第4制御切替タイミングC4の間においては3/4操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第4制御切替タイミングC4以降においては最大操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、時間T1の時点でブレーキ操作時車速(この例では車速ゼロ速)を現出させる変速比R0に到達する。
【0121】
操作パターンX2においては、図15に示すように、前記ブレーキ操作部材720は、第1~第8制御切替タイミングC1~C8の時点で、それぞれ、最大操作位置の1/8の位置(以下、1/8操作位置という)、1/4操作位置、最大操作位置の3/8の位置(以下、3/8操作位置という)、1/2操作位置、最大操作位置の5/8の位置(以下、5/8操作位置という)、3/4操作位置、最大操作位置の7/8の位置(以下、7/8操作位置という)、及び、最大操作位置に位置されている。
【0122】
操作パターンX2の場合、ブレーキ操作時制御モードは、図16に示すように、前記変速アクチュエータに対する制御速度として、
・第1制御切替タイミングC1の時点において1/8操作位置用の制御速度を採用し、
・第2制御切替タイミングC2の時点において1/4操作位置用の制御速度に切り替え、
・第3制御切替タイミングC3の時点において3/8操作位置用の制御速度に切り替え、
・第4制御切替タイミングC4の時点において1/2操作位置用の制御速度に切り替え、
・第5制御切替タイミングC5の時点において5/8操作位置用の制御速度に切り替え、
・第6制御切替タイミングC6の時点において3/4操作位置用の制御速度に切り替え、
・第7制御切替タイミングC7の時点において7/8操作位置用の制御速度に切り替え、
・第8制御切替タイミングC8の時点において最大操作位置用の制御速度に切り替える。
【0123】
これにより、前記HMTの変速比は、図16に示すように、
・第1制御切替タイミングC1~第2制御切替タイミングC2の間においては前記変速操作部材710の操作位置に応じた変速比Rnから1/8操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第2制御切替タイミングC2~第3制御切替タイミングC3の間においては1/4操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第3制御切替タイミングC3~第4制御切替タイミングC4の間においては3/8操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第4制御切替タイミングC4~第5制御切替タイミングC5の間においては1/2操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第5制御切替タイミングC5~第6制御切替タイミングC6の間においては5/8操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第6制御切替タイミングC6~第7制御切替タイミングC7の間においては3/4操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第7制御切替タイミングC7~第8制御切替タイミングC8の間においては7/8操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第8制御切替タイミングC8以降においては最大操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、時間T1より遅い時間T2の時点でブレーキ操作時車速(この例では車速ゼロ速)を現出させる変速比R0に到達する。
【0124】
操作パターンX3においては、図15に示すように、前記ブレーキ操作部材720は、第1制御切替タイミングC1の時点で1/8操作位置に位置され、第2制御切替タイミングC2の時点で1/4操作位置に位置され、以降、1/4操作位置で保持されている。
【0125】
操作パターンX3の場合、ブレーキ操作時制御モードは、図16に示すように、前記変速アクチュエータに対する制御速度として、
・第1制御切替タイミングC1の時点において1/8操作位置用の制御速度を採用し、
・第2制御切替タイミングC2の時点において1/4操作位置用の制御速度に切り替え、
・第3制御切替タイミングC2以降においては1/4操作位置用の制御速度を保持する。
【0126】
これにより、前記HMTの変速比は、図16に示すように、
・第1制御切替タイミングC1~第2制御切替タイミングC2の間においては前記変速操作部材710の操作位置に応じた変速比Rnから1/8操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、
・第2制御切替タイミングC2以降においては1/4操作位置用制御速度に応じた傾きで減速側に変化し、時間T2よりさらに遅い時間T3の時点で変速比R0に到達する。
【0127】
このように、本実施の形態によれば、複雑な制御構造を要することなく、操縦者によるブレーキ操作の意図に適応した車速減速を実現することができる。
【0128】
なお、本実施の形態においては、前記変速アクチュエータは、前記第1及び第2電磁比例弁820a、bを有する前記油圧サーボ機構500とされている。
この場合、前記制御速度は、前記第1及び第2電磁比例弁820a、bに対してその時点で与えている電流値を、目標の電流値(本実施の形態においては、ブレーキ操作時車速(前記例においては車速ゼロ速)を現出させる為の電流値)へ変更させる際の処理時間(電流値変更処理時間)を変更することによって、調整され得る。
即ち、前記第1及び第2電磁比例弁820a、bに対する電流値変更処理時間を長くとるに従って、制御速度は遅くなる。
【0129】
図17に、前記制御装置700による変速制御フローを示す。
前記制御装置700は、前記ブレーキ操作センサ725から前記ブレーキ操作部材720の操作位置信号θ入力し(ステップ1)、前記ブレーキ操作部材720がブレーキ操作されたか否かを判断する(ステップ2)。
なお、ステップ2のαは、前記ブレーキ操作部材720の「あそび範囲」であり、適宜、設定される。
【0130】
ステップ2においてYES(ブレーキ操作有り)と判断すると、前記制御装置700は、ブレーキ操作時変速制御モードを起動する。
【0131】
ブレーキ操作時変速制御モードは、HMT出力回転速の目標値をブレーキ操作時車速(この例では車速ゼロ速)に設定した状態で(ステップ11)、前記ブレーキ操作部材720の操作位置θに応じた制御速度で前記変速アクチュエータを作動させる(ステップ12)。
【0132】
ステップ2においてNO(ブレーキ操作無し)と判断すると、前記制御装置700は、前記ブレーキ入切スイッチ727によるブレーキ操作有無の判断を行う(ステップ3)。
【0133】
前記ブレーキ操作センサ725及び前記ブレーキ入切スイッチ727が正常動作している場合には、ステップ3においてNO(ブレーキ操作無し)と判断されるはずである。
【0134】
即ち、ステップ2においてNOと判断された場合(即ち、前記ブレーキ操作センサ725の検出信号に基づきブレーキ操作無しと判断された場合)にステップ3へ移行される為、機器が正常に動作している状態ではステップ3の判断はNO(即ち、ブレーキ操作無し)となる。
【0135】
正常な場合、即ち、ステップ3においてNO(ブレーキ操作無し)と判断した場合には、前記制御装置700は、前記変速操作部材710の操作状態に応じて前記変速アクチュエータの作動制御を行う通常変速制御モードを起動する。
【0136】
通常変速制御モードは、HMT出力回転速の目標値を前記変速操作部材710の操作位置に応じた速度に設定し(ステップ31)、所定制御速度で前記変速アクチュエータを作動させる(ステップ32)。
【0137】
一方、ステップ3においてYES(ブレーキ操作有り)と判断した場合には、前記ブレーキ操作センサ725及び/又は前記ブレーキ入切スイッチ727の異常と考えられるため、前記制御装置700は、異常時変速制御モードを起動する。
【0138】
異常時変速制御モードは、HMT出力回転速の目標値を、所定の異常時車速(この例では、車速ゼロ速)に設定した状態で(ステップ21)、予め設定された所定制御速度で前記変速アクチュエータを作動させる(ステップ22)。
なお、この例においては、前記異常時車速が車速ゼロ速に設定されているが、当然ながら、前記異常時車速を車速ゼロ速以外の所望速度に設定することができる。
【0139】
前記作業車輌1に、操縦者への報知を行う報知手段が備えられている場合には、異常時変速制御モードは、前記報知手段によって操縦者に異常状態を報知するステップを含むことができる。
【0140】
なお、図2に示すように、本実施の形態に係る前記作業車輌1は、前記駆動源10から前記無段変速装置100へ入力される動力の入力回転速度を直接又は間接的に検出する変速入力センサ730を備えている。
【0141】
この場合、通常変速制御モード、ブレーキ操作時変速制御モード及び異常時変速制御モードは、前記変速入力センサ730の検出値及び前記変速出力センサ735の検出値に基づき前記無段変速装置100の変速比を算出する。
【0142】
これに代えて、前記変速入力センサ730が備えられていない構成においては、前記駆動源10から前記無段変速装置100に入力される動力の回転速度は予め設定された一定速度として、前記変速出力センサ735の検出値に基づき前記無段変速装置100の変速比を算出する。
【0143】
実施の形態2
以下、本発明に係る作業車輌の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0144】
本実施の形態に係る作業車輌は、前記実施の形態1に比して、前記ブレーキ操作時変速制御に代えて、第2ブレーキ操作時変速制御モードを有している。
【0145】
第2ブレーキ操作時変速制御モードは、HMT出力回転速の目標値を前記ブレーキ操作部材の操作位置に応じた速度とした状態で前記変速アクチュエータを作動させるものとされている。
【0146】
即ち、前記制御装置700には、前記ブレーキ操作部材720の操作位置毎に決められたブレーキ時HMT出力速度が予め記憶されている。
そして、前記制御装置700は、前記ブレーキ操作センサ725からブレーキ操作を示す検出信号が入力されると第2ブレーキ操作時変速制御モードを起動し、第2ブレーキ操作時変速制御モードは、前記ブレーキ操作部材720の操作位置によって決定されるブレーキ時HMT出力速度をHMT出力目標速に設定した状態で前記変速アクチュエータを作動させる。
【0147】
以下、第2ブレーキ操作時変速制御モードについて、前記操作パターンX1~X3を例に説明する。
図18に、前記実施の形態1における図16に対応したグラフを示す。
【0148】
ブレーキ時HMT出力速度は、例えば、以下のように設定される。
即ち、操縦者が前記ブレーキ操作部材720を最大操作位置まで操作するということは、走行車速を急激に減速させることを意図していると考えられる。そこで、最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度は、例えば、車速をゼロとさせる車速ゼロ速とされる。
なお、当然ながら、最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度として、車速ゼロ速以外の所望低速を設定することも可能である。
一方、操縦者が前記ブレーキ操作部材720を少しだけしか操作していない場合(例えば、1/8操作位置)、それ程急激な車速減速を意図していないと考えられる。
【0149】
最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度が車速ゼロ速に設定されている場合を例に説明すると、ブレーキ時HMT出力速度ωaは、
ωa=(1-最大操作位置に対する、その時点でのブレーキ操作位置の比率)×(その時点での前記変速操作部材710の操作位置によって画されるHMT出力速度ωn)
に基づいて決定することができる。
【0150】
具体的には、前記ブレーキ操作部材720が1/8操作位置、1/4操作位置、3/8操作位置、1/2操作位置、5/8操作位置、3/4操作位置、7/8操作位置及び最大操作位置に位置された際に、ブレーキ時HMT出力速度ωaは、それぞれ、(7/8)×ωn、(3/4)×ωn、(5/8)×ωn、(1/2)×ωn、(3/8)×ωn、(1/4)×ωn、(1/8)×ωn、及び、車速ゼロとされ得る。
【0151】
図15に示す通り、操作パターンX1においては、前記ブレーキ操作部材720は、第1~第4制御切替タイミングC1~C4の時点で、それぞれ、1/4操作位置、1/2操作位置、3/4操作位置及び最大操作位置に位置されている
【0152】
従って、操作パターンX1の場合、第2ブレーキ操作時制御モードは、前記変速アクチュエータを作動させる際のHMT出力目標速度として、
・第1制御切替タイミングC1の時点では(3/4)×ωnを設定し、
・第2制御切替タイミングC2の時点では(1/2)×ωnに切り替え、
・第3制御切替タイミングC3の時点では(1/4)×ωnに切り替え、
・第4制御切替タイミングC4の時点では最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度(この例では車速ゼロ速)に切り替える。
【0153】
これにより、前記HMTの変速比は、図18に示すように、
・第1制御切替タイミングC1~第2制御切替タイミングC2の間においては前記変速操作部材710の操作位置に応じた変速比Rnから(3/4)×ωnを現出させる変速比(3/4)×Rnへ向けて変化し、
・第2制御切替タイミングC2~第3制御切替タイミングC3の間においては変速比(3/4)×Rnから(1/2)×ωnを現出させる変速比(1/2)×Rnへ向けて変化し、
・第3制御切替タイミングC3~第4制御切替タイミングC4の間においては変速比(1/2)×Rnから(1/4)×ωnを現出させる変速比(1/4)×Rnへ向けて変化し、
・第4制御切替タイミングC4以降においては変速比(1/4)×Rnから最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度(この例では車速ゼロ速)を現出させる変速比R0へ向けて変化し、時間T1においてR0に到達する。
【0154】
操作パターンX2においては、図15に示すように、前記ブレーキ操作部材720は、第1~第8制御切替タイミングC1~C8の時点で、それぞれ、1/8操作位置、1/4操作位置、3/8操作位置、1/2操作位置、5/8操作位置、3/4操作位置、7/8操作位置及び最大操作位置に位置されている。
【0155】
従って、操作パターンX2の場合、第2ブレーキ操作時制御モードは、前記変速アクチュエータを作動させる際のHMT出力目標速度として、
・第1制御切替タイミングC1の時点では(7/8)×ωnを設定し、
・第2制御切替タイミングC2の時点では(3/4)×ωnに切り替え、
・第3制御切替タイミングC3の時点では(5/8)×ωnに切り替え、
・第4制御切替タイミングC4の時点では(1/2)×ωnに切り替え、
・第5制御切替タイミングC5の時点では(3/8)×ωnに切り替え、
・第6制御切替タイミングC6の時点では(1/4)×ωnに切り替え、
・第7制御切替タイミングC7の時点では(1/8)×ωnに切り替え、
・第8制御切替タイミングC8の時点では最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度(この例では車速ゼロ速)に切り替える。
【0156】
これにより、前記HMTの変速比は、図18に示すように、
・第1制御切替タイミングC1~第2制御切替タイミングC2の間においては前記変速操作部材710の操作位置に応じた変速比Rnから(7/8)×ωnを現出させる変速比(7/8)×Rnへ向けて変化し、
・第2制御切替タイミングC2~第3制御切替タイミングC3の間においては変速比(7/8)×Rnから(3/4)×ωnを現出させる変速比(3/4)×Rnへ向けて変化し、
・第3制御切替タイミングC3~第4制御切替タイミングC4の間においては変速比(3/4)×Rnから(5/8)×ωnを現出させる変速比(5/8)×Rnへ向けて変化し、
・第4制御切替タイミングC4~第5制御切替タイミングC5の間においては変速比(5/8)×Rnから(1/2)×ωnを現出させる変速比(1/2)×Rnへ向けて変化し、
・第5制御切替タイミングC5~第6制御切替タイミングC6の間においては変速比(1/2)×Rnから(3/8)×ωnを現出させる変速比(3/8)×Rnへ向けて変化し、
・第6制御切替タイミングC6~第7制御切替タイミングC7の間においては変速比(3/8)×Rnから(1/4)×ωnを現出させる変速比(1/4)×Rnへ向けて変化し、
・第7制御切替タイミングC7~第8制御切替タイミングC8の間においては変速比(1/4)×Rnから(1/8)×ωnを現出させる変速比(1/8)×Rnへ向けて変化し、
・第8制御切替タイミングC8以降においては、変速比(1/8)×Rnから最大操作位置用ブレーキ時HMT出力速度(この例では車速ゼロ速)を現出させる変速比R0へ向けて変化し、時間T1より遅い時間T2においてR0に到達する。
【0157】
操作パターンX3においては、図15に示すように、前記ブレーキ操作部材720は、第1制御切替タイミングC1の時点で1/8操作位置に位置され、第2制御切替タイミングC2の時点で1/4操作位置に位置され、以降、1/4操作位置で保持されている。
【0158】
従って、操作パターンX3の場合、第2ブレーキ操作時制御モードは、前記変速アクチュエータを作動させる際のHMT出力目標速度として、
・第1制御切替タイミングC1の時点では(7/8)×ωnを設定し、
・第2制御切替タイミングC2の時点では(3/4)×ωnに切り替え、
・それ以降、(3/4)×ωnの設定を保持する。
【0159】
これにより、前記HMTの変速比は、図18に示すように、
・第1制御切替タイミングC1~第2制御切替タイミングC2の間においては前記変速操作部材710の操作位置に応じた変速比Rnから(7/8)×ωnを現出させる変速比(7/8)×Rnへ向けて変化し、
・第2制御切替タイミングC2~第3制御切替タイミングC3の間においては変速比(7/8)×Rnから(3/4)×ωnを現出させる変速比(3/4)×Rnへ向けて変化し、
・第3制御切替タイミングC3以降においては、変速比(3/4)×Rnに保持される。
【0160】
図19に、本実施の形態での前記制御装置による変速制御フローを示す。
なお、前記実施の形態1の図17と同じステップには同一ステップ番号を付している。
【0161】
図19に示すように、前記第2ブレーキ操作時変速制御モードは、ステップ11がステップ41に変更されている点においてのみ、前記ブレーキ操作時変速制御モードに対して相違している。
【0162】
図19に示すように、好ましくは、前記第2ブレーキ操作時変速制御モードは、前記変速アクチュエータの制御速度を前記ブレーキ操作部材720の操作位置θに応じて変更する前記ステップ12を備えることができる。
【符号の説明】
【0163】
1 作業車輌
10 駆動源
15 走行部材
100 HMT(無段変速装置)
110 HST
150 遊星ギヤ機構
300 ブレーキ装置
500 油圧サーボ機構(変速アクチュエータ)
700 制御装置
710 変速操作部材
715 変速操作センサ
720 ブレーキ操作部材
725 ブレーキ操作センサ
727 ブレーキ入切スイッチ
730 変速入力センサ
735 変速出力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19