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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】海苔束の回転,整列装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20231130BHJP
   B65G 47/90 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A23L17/60 103F
B65G47/90 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020016737
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021122211
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】392024699
【氏名又は名称】株式会社川島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【弁理士】
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】川島 一美
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-230675(JP,A)
【文献】特開昭63-027373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
B65G 47/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔の生産ラインにおいて、海苔束のカウント集積装置と折曲装置との間に設けられる、回転,整列装置であって、回転板とコンベアと整列板とを、有しており、
該回転板は、該カウント集積装置から落下される該海苔束を、上位置で受け取った後、向きを変えるべく90度回転しつつ降下可能であり、
停止中の該コンベアは、該海苔束を、その左右間隔間の直下の下位置まで降下する該回転板から、降下途中で乗り移らせ、
該整列板は、停止中の該コンベアに積載された該海苔束を、四方から起立,押動,揃えて整列可能であり、該コンベアは、整列完了した該海苔束を、該折曲装置へと搬出可能であり、
該回転板は、該海苔束の該コンベアによる真上からの搬出が完了するまで待機した後、下位置から上位置へと90度逆回転しつつ上昇可能であるが、
該回転板は、上記回転降下速度,時間に比し、上記逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されていること、を特徴とする海苔束の回転,整列装置。
【請求項2】
請求項1において、該回転板の駆動機構は、回転数,ブレーキがインバータ制御される変速可能なモータを備えており、
もって該回転板は、上記回転降下速度,時間が、該海苔束の回転慣性力による変位乱れの抑制を目処として限度設定されるのに比し、上記逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されていること、を特徴とする海苔束の回転,整列装置。
【請求項3】
請求項2において、該コンベアの駆動機構は、回転数,ブレーキがインバータ制御される変速可能なモータを備えており、
もって該コンベアは、緩やかな加速,減速,停止機能により、該海苔束の加速度Gによる変位乱れが抑制されつつ、搬送速度,時間が高速化,短縮化設定可能であり、
これにより該回転板は、上記待機時間が短縮化されていること、を特徴とする海苔束の回転,整列装置。
【請求項4】
請求項3において、上記回転降下時間は、0.8秒以上~1.8秒以下、上記整列時間は、0.2秒以上~1.0秒以下であり、上記逆回転上昇時間は、0.25秒以上~1.0秒以下、上記待機時間は、0.4秒以上~0.8秒以下となり、
もって、この回転,整列装置は、全体の動作工程時間が1.65秒以上となること、を特徴とする海苔束の回転,整列装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔束の回転,整列装置に関する。海苔の生産ラインにおいて、海苔束のカウント集積装置と折曲装置との間に設けられる、海苔束の回転,整列装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
乾海苔(以下単に海苔という)の生産ラインでは、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥の各工程の後、検査,カウント集積,回転,整列,折曲,結束の各工程を辿って、海苔が生産される。
すなわち乾燥後、検査選別された平海苔は、一束10枚等の海苔束としてカウント集積されて、90度回転されると共に整列された後、折曲されテープで結束されて、箱詰め出荷されている。
【0003】
《従来技術1》
このような海苔の生産ラインで使用される、従来技術1の回転,整列装置1の動作工程を、図3の(2)図,図4を参照して説明する。なお、この回転,整列装置1は、下記の特許文献1にも示されている。
回転,整列装置1は、回転板2とコンベア3と整列板4とを有しており、図4に示した動作工程は、図3の(2)図に示した、イ.からヘ.の各ステップを順に辿る。
イ.回転降下ステップ(図4の(1)図,(2)図):回転板2は、カウント集積装置から受け取った海苔束Aを、90度回転させつつ降下する。停止中のコンベア3は、海苔束Aを、降下する回転板2から乗り移らせる。
ロ.整列板4起立ステップ(図4の(3)図):上記イ.回転降下ステップ中に、整列板4が起立する。
ハ.整列ステップ(図4の(3)図):整列板4は、コンベア3上の海苔束Aを、整列させる。
ニ.整列板4退避ステップ(図4の(4)図):次のホ.待機ステップ中に、整列板4は降下する。
ホ.待機ステップ(図4の(4)図):コンベア3は、整列した海苔束Aを折曲装置へと搬出する。そして回転板2は、海苔束Aが真上から搬出されるまで、待機する。
へ.逆回転上昇ステップ(図4の(5)図):しかる後、回転板2は、90度逆回転しつつ上昇する。
従来技術1については、以上のとおり。
【0004】
《従来技術2》
他方、この種の回転,整列装置としては、下記の特許文献2に示された従来技術2も、開示されている。この従来技術2の回転,整列装置では、回転ステップと整列ステップとが、位置的に前後に分離されている。
前述した従来技術1では、イ.回転降下ステップや、へ.逆回転上昇ステップと、ハ.整列ステップとが、位置的に前後に分離せず、直上下関係の一箇所で行われていた。これに対しこの従来技術2では、両者が、コンベアを介し位置的,場所的に前後に分離され、それぞれの箇所で、回転昇降ステップと整列ステップとが、各々単独で行われる。
この従来技術2の回転,整列装置では、従来技術1と同様のイ.回転降下ステップの後、→従来技術1とは異なり、海苔束Aがコンベアにて搬送される。
→そして、整列板4の起立,整列,退避ステップが実施された後、→海苔束Aは、コンベアにて折曲装置へと搬出される。→これと共に、従来技術1と同様に、へ.逆回転上昇ステップが実施される。
従来技術2については、以上のとおり。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-27373号公報
【文献】特開2008-230675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来技術1,2については、次の問題が課題として指摘されていた。
《従来技術1の問題点》
上述した従来技術1の回転,整列装置1については、より一層の動作工程時間の短縮化,高速大量処理化が、望まれていた。
すなわち、海苔の生産ラインでは、高速大量処理のニーズが最近高まっている。特に、乾燥装置の大型化に伴い、回転,整列装置1については、一工程あたりの動作工程時間の短縮化、高速大量処理化が、切望されている状況にある。
具体的には、一工程(一束10枚)あたり動作工程時間3.6秒、時間あたりの処理枚数10,000枚/時間が、最近の目標値とされている。
しかしながら従来技術1の回転,処理装置1では、現状値が、一工程5秒で処理枚数7,200枚/時間程度や、4.7秒で7,650枚/時間程度に過ぎず、解決すべき問題,課題となっていた。
すなわち従来技術1では、例えば図3の(2)図中に示したように、イ.回転降下ステップ:1.7秒、ロ.整列ステップ0.5秒、ホ.待機ステップ:0.8秒、へ.逆回転上昇ステップ:1.7秒の各ステップ時間となり、合計で一工程の動作工程時間4.7秒となっていた。
【0007】
なお、動作工程時間の短縮,高速大量処理の実現のため、回転板2やコンベア3の駆動機構のモータの回転数を上げる対策が、過去に提案されていた。しかし、その採用は見送られていた。
回転板2のイ.回転降下ステップやへ.逆回転上昇ステップの速度,時間を、高速化,短縮すべく、→その駆動モータの回転数を上げると、→未だ結束されてはいない海苔束Aが、回転板2上で回転慣性力にて変位乱れし、ズレてバラバラに散乱するようになる。
→もって、回転板2の駆動モータの回転数を上げる対策は、採用されなかった。
又、ホ.待機ステップの待機時間短縮のため、→コンベア3の搬送速度,時間を、高速化,短縮化すべく、→コンベア3の駆動モータの回転数を上げると、→まだ結束されていない海苔束Aについて、加速度Gつまり発進Gや停止Gにより、変位乱れが発生するようになる。
→もってコンベア3の駆動モータの回転数を上げる対策も、採用されなかった。
従来技術1の問題点については、以上のとおり。
【0008】
《従来技術2の問題点》
前述し従来技術2の回転,整列装置は、上述した従来技術1の回転,整列装置1の問題を解決すべくなされたものである。
そして、前述した一工程の動作工程時間3.6秒、処理枚数10、000枚/時間を目ざしているが、スペース面や制御面に課題が指摘されていた。
すなわち、この従来技術2では、前述したように回転板による回転昇降ステップと、整列板による整列ステップとが、位置的,場所的に前後に分離され、それぞれの箇所で各々単独で行われる。
そこで、従来技術2の回転,整列装置は、従来技術1に比し、設置スペースが増大する、という難点が指摘されていた。又、回転昇降ステップと整列ステップとを個別にタイム管理して、各部動作についてタイマー等による複雑なタイミング管理が必要である。もって、制御が複雑である、という難点も指摘されていた。
従来技術2の問題点については、以上のとおり。
【0009】
《本発明について》
本発明の海苔束の回転,整列装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術1について、その課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、高速大量処理が実現され、第2に、しかもこれが、海苔束の変位乱れを伴うこともなく実現される、海苔束の回転,整列装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の海苔束の回転,整列装置は、海苔の生産ラインにおいて、海苔束のカウント集積装置と折曲装置との間に設けられ、回転板とコンベアと整列板とを、有している。
該回転板は、該カウント集積装置から落下される該海苔束を、上位置で受け取った後、向きを変えるべく90度回転しつつ降下可能である。
停止中の該コンベアは、該海苔束を、その左右間隔間の直下の下位置まで降下する該回転板から、降下途中で乗り移らせる。
該整列板は、停止中の該コンベアに積載された該海苔束を、四方から起立,押動,揃えて整列可能である。
該コンベアは、整列完了した該海苔束を、該折曲装置へと搬出可能である。
該回転板は、該海苔束の該コンベアによる真上からの搬出が完了するまで待機した後、下位置から上位置へと90度逆回転しつつ上昇可能である。
そして該回転板は、上記回転降下速度,時間に比し、上記逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されていること、を特徴とする。
【0011】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の海苔束の回転,整列装置では、請求項1において、該回転板の駆動機構は、回転数,ブレーキがインバータ制御される変速可能なモータを、備えている。
もって該回転板は、上記回転降下速度,時間が、該海苔束の回転慣性力による変位乱れの抑制を目処として限度設定されるのに比し、上記逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されていること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の海苔束の回転,整列装置では、請求項2において、該コンベアの駆動機構は、回転数,ブレーキがインバータ制御される変速可能なモータを、備えている。
もって該コンベアは、緩やかな加速,減速,停止機能により、該海苔束の加速度Gによる変位乱れが抑制されつつ、搬送速度,時間が高速化,短縮化設定可能である。
これにより該回転板は、上記待機時間が短縮化されていること、を特徴とする。
【0012】
請求項4については、次のとおり。
請求項4の海苔束の回転,整列装置では、請求項3において、上記回転降下時間は0.8秒以上~1.8秒以下、上記整列時間は0.2秒以上~1.0秒以下、上記逆回転上昇時間は0.25秒以上~1.0秒以下、上記待機時間は0.4秒以上~0.8秒以下となる。
もって該回転,整列装置は、全体の一工程の動作工程時間が1.65秒以上となること、を特徴とする。
【0013】
《動作工程について》
本発明は、このような手段よりなる。その動作工程については、次のとおり。
イ.この回転,整列装置では、まず、回転板がカウント集積装置から落下される海苔束を、上位置で受け取った後、向きを変えるべく90度回転しつつ降下する。そして停止中のコンベアが、海苔束を、降下途中の回転板から乗り移らせる。
ロ.この間、同時併行的に、整列板が起立する。
ハ.そして整列板は、停止中のコンベア上の海苔束を整列させる。
ニ.その後、整列板は降下する。
ホ.それ迄停止していたコンベアは、整列が済んだ海苔束を、折曲装置へと搬出する。回転板は、海苔束がコンベアにて真上から搬出されるまで、待機する。
コンベアは、駆動モータのインバータ制御に基づき変速可能であり、加速,減速,停止機能にて、海苔の加速度Gによる変位乱れが抑制されつつ、搬送速度,時間が高速化,短縮化される。もって、回転板の待機時間も短縮化される。
へ.回転板は、このような待機後、下位置から上位置へと90度逆回転しつつ上昇する。
回転板は、駆動モータのインバータ制御に基づき変速可能であり、前記イ.の回転降下速度,時間が、海苔束の回転慣性力による変位乱れを抑制すべく設定されていたのに比し、逆回転上昇,時間が、より高速化,短縮化設定されている。
ト.これらにより、この回転,整列装置は、一工程(一束10枚)の動作工程時間が大幅短縮され、大量処理が可能となる。そこで、本発明に係る海苔束の回転,整列装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
《第1の効果》
第1に、高速大量処理が実現する。
本発明の海苔束の回転,整列装置は、回転板の駆動機構のモータをインバータ制御することにより、回転降下は低速運転(一部高速運転)、逆回転上昇は高速運転に、切換え運転する。
又、コンベアの駆動機構のモータもインバータ制御することにより、緩やかな加速,減速,停止機能によって、コンベアを全体的には高速運転する。もって、回転板の待機時間が短縮される。
この回転,整列装置は、これらにより処理能力が向上し、一工程(一束10枚)あたりの動作工程時間が短縮される。もって、時間あたりの処理枚数は、10,000枚/時間の目標値を、余裕をもち十分にクリアー可能となる。この種従来技術に比し、大幅な高速大量処理が実現する。
【0015】
《第2の効果》
第2に、しかも、このような高速大量処理は、海苔束の変位乱れを伴うこともなく、実現される。
本発明の海苔束の回転,整列装置において、回転板は、回転降下は低速運転(一部高速運転)、逆回転上昇は高速運転に、切換え運転される。すなわち、回転降下速度,時間のみは、載せられた未だ結束されていない海苔束の回転慣性力による変位乱れ抑制用に、低速運転される。
又、コンベアは、全体的には高速化されるが、運ばれる未だ結束されていない海苔束の加速度Gによる変位乱れ抑制用に、穏やかに加速,減速,停止される。
前述により、高速大量処理が実現されるものの、このように、海苔束の変位乱れ発生は抑制される。
なお、この回転,整列装置は、前述した従来技術1に準じた設置スペースや制御よりなり、従来技術2のように、設置スペース増や制御複雑化を伴うこともない。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る海苔束の回転,整列装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、正面図である。そして、海苔束が回転板に受け取られた状態を示す。
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、正面図である。そして(1)図は、海苔束がコンベアに乗り移った状態を示す。(2)図は、海苔束がコンベアにて折曲装置へと搬出される状態を示す。
図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、工程ブロック図である。そして(1)図は、海苔の生産ラインの各工程を示す。(2)図は、海苔束の回転,整列装置の動作工程の各ステップを示す。
図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、回転,整列装置の動作工程の斜視写真である。 そして(1)図は、海苔束が回転板に受け取られた状態を示す。(2)図は、海苔束がコンベアに乗り移った状態を示す。(3)図は、海苔束が整列される状態を示す。(4)図は、海苔束がコンベアにて回転板の真上から搬出された状態を示す。(5)図は、海苔束がコンベアにて折曲装置へと搬出される状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
《海苔の生産ラインについて》
海苔の生産ラインでは、まず、生海苔摘採,水洗,抄き,脱水,乾燥等の前工程を辿った後、検査,カウント集積,回転,整列,折曲,結束の後工程を辿って、海苔が生産される。
すなわち、図3の(1)図に示したように、乾燥装置6から1枚ずつ搬出された平海苔は、→検査装置7で品質検査,選別された後、→カウント集積装置8で、10枚等所定枚数の海苔束Aとして、カウントされて集積される。
→それから、回転,整列装置5(従来技術1の回転,整列装置1)で、90度方向転換すべく回転されると共に、整列される。→そして、折曲装置9で二つ折りに折曲してから、→結束装置10で、10束毎にテープで結束され100枚束とされる。→もって、このような海苔束Aが、箱詰め部11で箱に詰められて出荷されている。
なお、上述した回転,整列装置5(1)による90度方向転換は、主に各装置の設置スペースの関係で行われる。すなわち、途中で海苔束Aを90度方向転換することにより、生産ラインの全体スペースの削減,無駄解消,コンパクト化が図られる。
海苔の生産ラインについては、以上のとおり。
【0018】
《回転板2について》
以下、本発明について、図1図2を参照して説明する。
本発明に係る海苔束Aの回転,整列装置5は、前述した従来技術1の回転,整列装置1と同様、海苔の生産ラインにおいて、海苔束Aのカウント集積装置8と折曲装置9との間に設けられ、回転板2とコンベア3と整列板4とを、有している。
まず、回転,整列装置5の回転板2について説明する。回転板2は、プレート状をなし、カウント集積装置8から落下される海苔束Aを、上位置Bで受け取った後、向きを変えるべく90度回転しつつ下位置Cまで降下可能であり、下位置Cで停止する。
それから回転板2は、海苔束Aのコンベア3による真上からの搬出が完了するまで、待機した後、下位置Cから上位置Aへと90度逆回転しつつ上昇可能である。そして回転板2は、上記回転降下速度,時間に比し、その逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されている。
このような回転板2の駆動機構12は、回転数,ブレーキがインバータ制御される変速可能なモータ13を備えている。
もって回転板2は、上記回転降下速度,時間が、海苔束Aの回転慣性力による変位乱れの抑制を目処として限度設定されるのに比し、逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されている。
【0019】
このような回転板2について、更に詳述する。回転板2の駆動機構12は、駆動源の三相交流モータ13や、伝達機構のクランク,リンク,ローラー,カム等を備えている。
そしてモータ13は、インバータにて正逆の回転数制御(変速制御),ブレーキ制御が行われ、逆回転上昇ステップの高速化に伴い、モータ減速機の減速比は1/20程度とされる。
もって、このようなインバータ制御により、回転板2の回転降下速度,時間(図1の状態から図2の状態へ)は、載せられた未だ拘束されていない海苔束Aの回転慣性力による変位乱れ(ズレてバラバラに散乱)を抑制可能な上限値にて、設定される。実施例では、回転降下時間1.2秒程度となるように低速設定される。
これに対し、回転板2の逆回転上昇速度,時間(図2の状態から図3の状態へ)は、海苔束Aが載せられてないことに鑑み、大幅に高速化,短縮化設定される。実施例では、逆回転上昇時間0.4秒程度となるように高速設定される。
このような逆回転上昇速度,時間は、モータ13,その他の駆動機構12の状態等に鑑み、回転降下速度,時間に比し、より高速化,短縮化設定される。
【0020】
なお第1に、回転降下速度,時間については、更に次のとおり。回転降下において、降下の大部分は、文字通り正回転しつつ降下されるが、降下後半において、正回転されることなく垂直降下される瞬間がある。90度の方向転換が完了した後半において、垂直降下される時間が部分的に存する。
そこで、この後半部分については、モータ13のインバータ制御により、降下速度,時間を、それ迄より高速化,短縮化可能となる。海苔束Aは載せられているものの、回転されないので、その慣性変位乱れの虞がなく、可能となる。上述した実施例の回転降下時間1.2秒は、このように部分的に一部高速化,短縮化した結果による。
【0021】
なお第2に、回転板2は、薄板化や多数の孔H形成(図1図2の(2)図,図4の(5)図等も参照)により軽量化されており、逆回転上昇する際等において、高速回転後の停止に際しての振動等、慣性の影響回避が図られている。
【0022】
第3に、穿孔加工により、回転板2に孔Hを形成したことにより、更に次のようになる。すなわち、多数の上下貫通孔よりなる孔Hを、回転板2全面に形成したことにより、次のA,Bの利点がある。
A.回転板2は、逆回転上昇する際、高速設定されているので、風圧を伴って上昇するが、このような回転板2上に落下する海苔束Aが、風圧の影響を受けて、変位乱れ(ズレてバラバラに散乱)するようなことは、回避される。
すなわち、多数形成された孔Hにて回転板2による風圧が低下し、海苔束Aは、風圧の影響を受けることなく、所期の通り、回転板2上に落下し積載される。
B.そして、海苔束Aが回転板2上に落下する際、回転板2に多数形成された孔Hから、海苔束Aと回転板2間の空気が下へ抜けるようになる。
もって海苔束Aが、回転板2との間の空気抵抗により、変位乱れ(ズレてバラバラに散乱)するようなことは回避される。海苔束Aは、空気抵抗の影響を受けることなく、所期の通り、回転板2上に落下し積載される。
これらA,Bのように、多数の孔Hの形成により、回転板2の運転安定性が向上する。
回転板2については、以上のとおり。
【0023】
《コンベア3について》
次に、回転,整列装置5のコンベア3について、説明する。
まず停止中のコンベア3は、海苔束Aを、その左右間隔間の直下の下位置Cまで降下する回転板2から、降下途中で乗り移らせる。そして事後、整列完了した海苔束Aを、折曲装置9へと搬出可能である。
このようなコンベア3は、例えばVベルト14が用いられ、その駆動機構15は、回転数,ブレーキがインバータ制御される変速可能なモータ16を備えている。
もってコンベア3は、緩やかな加速,減速,停止機能により、海苔束Aの加速度Gによる変位乱れが抑制されつつ、搬送速度,時間が高速化,短縮化設定可能であり、これにより回転板2は、上記待機時間が短縮化されている。
【0024】
このようなコンベア3については、更に詳述する。コンベア3の駆動機構15は、駆動源の三相交流モータ16や、駆動伝達用のベルト,ローラー17等を備えている。
モータ16は、インバータにて回転数制御(変速制御),ブレーキ制御が行われ、高速化に伴い、モータ減速機の減速比は1/20程度とされる。
そしてコンベア3は、インバータによる加速,減速,停止機能を活用することにより、これらを使いながら、速度をよりより高く設定可能となる。
すなわち、緩やかに加速,減速,停止することにより、未だ拘束されていない海苔束Aの加速度Gによる変位乱れ(ズレてバラバラに散乱)を抑止しつつ、全体的な搬送速度,時間を、より高速化,短縮化可能となる。搬送速度が、平均で例えば20m/分程度に高速化されるものの、その発進Gや停止Gによる変位乱れ発生は、回避される。
【0025】
回転板2は、前述したように、海苔束Aのコンベア3による真上からの搬送が完了するまで待機した後(図2の(1)図の状態)、逆回転上昇するが(図2の(2)図の状態)、その待機時間が短縮化される。上述により、コンベア3の搬送速度,時間が高速化,短縮化されるので、その分、回転板2の待機ステップ時間も短縮される。
ところでコンベア3としては、例えば左右2本のVベルト14が間隔を存して配設され、この左右のVベルト14間に、上位置Bと下位置C間で降下,上昇される回転板2の通過間隔が、形成されている。
もって回転板2は、上位置Bで受け取った海苔束Aを、降下途中の通過間隔の箇所で、コンベア3に乗り移らせるようになっている。コンベア3の左右のVベルト14間の通過間隔は、回転板2幅より広いと共に、海苔束Aの幅よりは狭く設定されている。
コンベア3については、以上のとおり。
【0026】
《整列板4について》
次に、回転,整列装置5の整列板4について、説明する。
整列板4は、停止中のコンベア3に積載された海苔束Aを、四方から起立,押動,揃えて整列可能である。
すなわち整列板4は、停止中のコンベア3上に積載された海苔束Aの前後左右に配され、起立位置D(図2の(1)図)と、退避位置E(図1図2の(2)図)とに、閉開起伏可能となっている。
そして起立位置Dにて、海苔束Aの四辺を断続的に叩いて押動することにより、海苔束Aを揃えて整列させる。図中、18は整列板4の駆動機構、19は装置フレームである。
整列板4については、以上のとおり。
【0027】
《動作工程等》
本発明の海苔束Aの回転,整列装置5は、以上説明したように構成されている。その動作工程については、次のとおり。
回転,整列装置5の動作工程は、図3の(2)図に示した、イ.からへ.の各ステップを順に辿る。以下これについて、図1図2に加え、図4も参照して、説明する。
【0028】
イ.回転降下ステップ(図1図2図4の(1)図,(2)図も参照):
回転板2は、カウント集積装置8から、例えば10枚カウントされて落下される海苔束A(一束10枚)を、上位置Bで受け取った後、向きを変えるべく90度回転しつつ降下する。そして、停止中のコンベア3は、海苔束Aを、その左右間隔間の直下の下位置Cまで降下する回転板2から、降下途中で乗り移らせる。
実施例について、イ.回転降下ステップの時間を実測した所、平均1.2秒であった(前述した従来技術1は、1.7秒)。本発明において、イ.回転降下ステップの時間は、一部高速化されるものの、大部分は、海苔束Aの回転慣性力による変位乱れ抑制等に鑑み、低速であり、0.8秒以上~1.8秒以下とされる。
【0029】
ロ.整列板4起立ステップ(図2の(1)図,図4の(3)図も参照):
上記イ.回転降下ステップ中に、同時併行して整列板4が、それ迄の退避位置Eから起立位置Dに起立する。
【0030】
ハ.整列ステップ(図2の(1)図,図4の(3)図も参照):
整列板4は、起立位置Dにおいて、停止中のコンベア3に、回転板2から乗り移って積載された海苔束Aを、四方から押動,揃えて整列させる。
実施例について、ハ.整列ステップの時間を実施した所、平均0.5秒であった(前述した従来技術1も、0.5秒)。本発明において、ハ.整列ステップの時間は、整列作業の必要上0.2秒以上~1.0秒以下とされる。
【0031】
ニ.整列板退避ステップ(図2の(2)図,図4の(4)図も参照):
次のホ.待機ステップ(搬送初期段階)中に、同時併行して整列板4が、起立位置Dから退避位置Dに降下する。
【0032】
ホ.待機ステップ(搬送初期段階)(図4の(4)図も参照):
コンベア3は、上記ハ.整列ステップで整列完了した海苔束Aを、回転,整列装置5外へ、そして折曲装置9へと搬出を開始する。
そして回転板2は、海苔束Aのコンベア3による真上からの搬出が完了するまで待機する。回転板2は、コンベア3そして海苔束Aより下位の下位置Cで、そのまま不動で待機し、コンベア3にて海苔束Aが真上から搬出されてしまうのを待つ。
実施例について、ホ.待機ステップの時間を実測した所、平均0.7秒であった(前述した従来技術1は、0.8秒)。本発明において、ホ.待機ステップの時間は、コンベア3の搬送速度,時間に鑑み、0.4秒以上~0.8秒とされる。
すなわちコンベア3は、駆動機構15のモータ16のインバータ制御に基づき変速可能であり、緩やかな加速,減速,停止機能により、海苔束Aの加速度Gによる変位乱れが抑制されつつ、搬送速度,時間が高速化,短縮化されている。
これにより回転板2は、このように待機時間が短縮化されている。
【0033】
へ.逆回転上昇ステップ(図2の(2)図,図4の(5)図を参照):
回転板2は、上記ホ.待機ステップの後、下位置Cから上位置Bへと90度逆回転しつつ上昇し、上位置Bにて次の海苔束Aが落下される。
そして回転板2は、前記回転降下速度,時間に比し、逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定される。
回転板2は、駆動機構12のモータ13のインバータ制御に基づき、変速可能であり、もって、前記イ.ステップの回転降下速度,時間が、海苔束Aの回転慣性力による変位乱れ抑制を目処として限度設定されるのに比し、このヘ.逆回転ステップの逆回転上昇速度,時間が、より高速化,短縮化設定されている。
実施例について、へ.逆回転上昇ステップの時間を実測した所、平均0.4秒であった(前述した従来技術1は、1.7秒)。本発明において、へ.逆回転上昇ステップの時間は、モータ13,その他の駆動機構12の性能等に鑑み、0.25秒以上~1.0秒以下とされる。
【0034】
回転,整列装置5は、動作工程が、上述したイ.からへ.の各ステップを順に辿る。
もって、この回転,整列装置5の全体の動作工程時間は、実施例の実測値平均で2.8秒(前述した従来技術1は、4.7秒)となった。本発明において、全体の動作工程時間は、最速1.65秒以上が可能となる。
このように、この回転,整列装置5は、処理能力が向上し、その動作工程時間が大幅短縮される。一工程(一束10枚)あたりの所要処理時間が、大幅短縮される。時間あたりの処理枚数は、実施例の場合、約12,800枚/時間となった。
【符号の説明】
【0035】
A 海苔束
B 上位置
C 下位置
D 起立位置
E 退避位置
H 孔
1 回転,整列装置(従来技術1)
2 回転板
3 コンベア
4 整列板
5 回転,整列装置(本発明)
6 乾燥装置
7 検査装置
8 カウント集積装置
9 折曲装置
10 結束装置
11 箱詰部
12 駆動機構
13 モータ
14 Vベルト
15 駆動機構
16 モータ
17 ローラー
18 駆動機構
19 フレーム

図1
図2
図3
図4