(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】酸化セリウム複合粉末の分散組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20231130BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20231130BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20231130BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231130BHJP
C01F 17/235 20200101ALI20231130BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
C01F17/235
(21)【出願番号】P 2022511365
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2021008650
(87)【国際公開番号】W WO2022010257
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0083681
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522066551
【氏名又は名称】アドバンスド ナノ プロダクツ カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED NANO PRODUCTS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】78, Geumhoangol-gil Bugang-myeon Sejong 30077 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソン、セホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ムンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンワン
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0009150(KR,A)
【文献】特表2016-538359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
B24B37/00
H01L21/304
C01F17/235
C09G1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径
20nm以上40nm未満の第1酸化セリウム粒子と、
平均粒径
1nm~6nmの第2酸化セリウム粒子と、を含む分散組成物であって、
第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子の混合比は
6:4~4:6(wt./wt.)であ
り、
酸化セリウム複合粉末の分散粒度(D50)は、
ゼータサイザー(Zetasizer)分析時に100nm~110nmであるか、
マイクロトラック(Microtrac)分析時に170nm~185nmであるか、或いは
ルミサイザー(Lumisizer)分析時に35nm~45nmである、CMP用酸化セリウム複合粉末の分散組成物。
【請求項2】
酸化セリウム複合粉末は、透過電子顕微鏡(TEM)分析時に、単位面積(横550nm及び縦550nm)あたり第1酸化セリウム粒子1個に対して平均的に第2酸化セリウム粒子50~19,000個を含む、請求項1に記載のCMP用酸化セリウム複合粉末の分散組成物。
【請求項3】
酸化セリウム複合粉末の平均BET比表面積は50.00m
2/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載のCMP用酸化セリウム複合粉末の分散組成物。
【請求項4】
分散組成物の溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は1.0g/mL~2.95g/mLであることを特徴とする、請求項1に記載のCMP用酸化セリウム複合粉末の分散組成物。
【請求項5】
酸化セリウム複合粉末の分散組成物において、酸化セリウム複合粉末が0.007wt.%の濃度となるように調整した後に測定した、波長450~600nmでの吸光度が0.02~0.19%であるか、或いは波長500nmでの透過度が70~90%であることを特徴とする、請求項1に記載のCMP用酸化セリウム複合粉末の分散組成物。
【請求項6】
40℃で30日放置した後の平均粒度の変化が5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のCMP用酸化セリウム複合粉末の分散組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子サイズの異なる2種の酸化セリウム粒子を含有する酸化セリウム複合粉末を含む分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が高集積化するにつれて、フォトリソグラフィマージンを確保し且つ配線長を最小化するために下部膜の平坦化技術が求められる。下部膜を平坦化するための方法として、BPSG(BoroPhosphorus Silicate Glass)リフロー、SOG(Spin On Glass)エッチバック(etch back)、化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下「CMP」という)工程などがある。
【0003】
その中でも、CMP工程は、リフロー工程やエッチバック工程で達成することができない広い空間領域の平坦化及び低温平坦化を達成することができるため、次世代半導体素子において有力な平坦化技術として台頭してる。しかし、配線抵抗を減らすために配線の厚さを増やすにつれて、金属間電気的絶縁のための金属間絶縁層(InterMetal Dielectric layer、以下「IMD」という)の厚さも相対的に増加するので、CMP段階で平坦化させるための絶対除去量が大幅に増加している。また、従来のCMP用スラリーは、除去速度が遅くてCMP時間が非常に長くなることにより、工程生産性が低下するという問題点がある。
【0004】
これを改善するために、セリア研磨粒子の表面にセリウム元素及び水酸化基(-OH)をコーティングした表面改質コロイダルセリア研磨粒子分散組成物を考えることができる。しかし、このような分散組成物の場合は、大きいセリア研磨粒子の表面が活性の大きい小さなセリア研磨粒子でコーティングされるため、大きいセリア研磨粒子の物理的な特性が十分に発現されないことにより、研磨速度が十分に改善されない。
【0005】
一方、4価の金属元素の水酸化物粒子を使用し、粒子の密度に対して特定的に制限することにより、化学的作用を活性化しながら研磨損傷の低減と研磨速度の向上を両立させる分散組成物を考えることができる。しかし、このような水酸化物粒子は、結晶性に劣って物理的な特性が十分に発現されないので、研磨速度が十分に改善されない。
【0006】
一方、セリウム酸化物を含む第1粒子と、4価の金属元素の水酸化物を含有する第2粒子を使用する方案を考えることができる。しかし、このような水酸化物粒子は、粒子相互間の凝集が発生するので、特別な化合物を含む添加剤などを必ず使用しなければならないという問題点があり、分散組成物の分散粒度が大きくてCMP研磨時にスクラッチを発生させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2002-0007607号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであり、その目的は、粒径の大きい第1酸化セリウム粒子の形状を角形に製造することにより、絶縁膜に対する物理的効果(Mechanical effect)を極大化し、粒径の小さい第2酸化セリウム粒子の比表面積を増加させて化学的効果(Chemical effect)を極大化することにある。このように、物理的作用の強い第1粒子と化学的作用の強い第2粒子とを混合して化学的・物理的効果を同時に実現しようとし、溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の密度の範囲を調節することにより凝集に対する安定性に優れるうえ、研磨速度にも非常に優れる、酸化セリウム複合粉末及びこれを含む分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、継続的な研究を介して、分散安定性及び粒子の結晶性に優れるうえ、表面が活性化して化学的・物理的な研磨性にも優れる分散組成物を開発することができた。
【0010】
本発明は、第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子とが複合された分散組成物であって、第1酸化セリウム粒子は、角が鋭い角形の形状を有し、結晶性に優れるうえ、粉末密度が6.5g/mL以上である大きい粒子を使用し、第2酸化セリウム粒子は、球状の形状を有し、結晶性に優れるうえ、水熱合成によって表面が活性化された密度2.5g/mL以下の小さい粒子を使用した。また、第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子は、溶液中にコアシェル形態で存在せず、独立して分散及び凝集していることを特徴とする。
【0011】
一般に、ナノサイズの粒子は、ほとんどの体積が表面に位置する。よって、本発明では、結晶性に優れる粒子を強い破砕及びミリング工程を介して表面改質して複合粉末密度を3.0g/mL以下に制御することにより、粒子のコア部分は結晶性に優れ、表面部分は多量のヒドロキシ基を含むように製造した。これにより、体積のコアに格子連結が集中し、表面に位置した大部分の体積はヒドロキシ基になることにより、機械的研磨特性と化学的研磨特性を同時に持つため高い酸化膜研磨率を実現することができた。
【0012】
また、本発明において上記の工程によって製作された複合粉末の場合、2.55g/mL~2.95g/mL程度の低い密度を有したにも拘らず、物理的研磨特性及び化学的作用による研磨特性に優れるうえ、粒子相互間の凝集が小さくて分散安定性に非常に優れる。特に角が鋭い形状を有する大きい粒子の場合は、物理的研磨特性を高める上で重要な役割を果たし、球状の形状を有する小さい粒子の場合は、水熱合成によって優れた結晶性を有し、上記工程を介して表面に多量のハイドロキシ基を含有して、大きい粒子と共に研磨作用の相乗効果を奏するようにする。
【0013】
より具体的には、本発明は、平均粒径15nm以上の第1酸化セリウム粒子と平均粒径10nm以下の第2酸化セリウム粒子とを含む酸化セリウム複合粉末を提供する。このとき、前記第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子との混合比は、9.5:0.5~0.5:9.5(wt./wt.)であり、具体的には8:2~2:8(wt./wt.)、より具体的には6:4~4:6(wt./wt.)であり得る。
【0014】
また、前記酸化セリウム複合粉末は、透過電子顕微鏡(TEM)分析の際に、単位面積(横550nm及び縦550nm)あたり第1酸化セリウム粒子1個に対して平均的に第2酸化セリウム粒子50~19,000個を含むことができる。さらに、前記酸化セリウム複合粉末の平均BET比表面積は50.00m2/g以上であり得る。
【0015】
これと共に、前記酸化セリウム複合粉末スラリーの粒度(D50)は、
ゼータサイザー(Zetasizer)分析時に50nm~180nmであるか、
マイクロトラック(Microtrac)分析時に60nm~350nmであるか、或いは
ルミサイザー(Lumisizer)分析時に30nm~70nmである。
【0016】
さらに、本発明は、上述の酸化セリウム複合粉末を含む分散組成物を提供する。ここで、前記分散組成物に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた場合に2.55g/mL~2.95g/mLであり得る。また、前記分散組成物溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、1.0g/ml~2.95g/mlであり得る。また、0.007wt%の濃度で分散した分散組成物は、波長450~600nmでの吸光度が0.02%~0.19%であり、波長500nmでの透過度が70~90%であり得る。また、分散組成物は、40℃で30日以上放置しても、5%以内の平均粒度の変化を示すものであり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明による酸化セリウム複合粉末は、粒子サイズの互いに異なる特定の粒度範囲を満たす2種の酸化セリウム粒子を含有し、分散組成物溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度を制御することにより、これを分散組成物に使用する場合、基板を損傷させることなく高い研磨速度を実現することができ、保存安定性にも優れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】製造例、実施例及び比較例で得た酸化セリウム粒子と酸化セリウム複合粉末に対する透過電子顕微鏡(TEM)分析画像である。
【
図2】製造例2で得た第2酸化セリウム粒子の格子間隔を示す透過電子顕微鏡(TEM)分析画像である。
【
図3】X線回折(XRD)分析器を用いて、実施例の酸化セリウム複合粉末の結晶性を分析した画像である。
【
図4】実施例で得た酸化セリウム複合粉末の密度と溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の密度を分析したグラフである。
【
図5】実施例及び比較例で得た分散組成物に対する研磨速度を評価して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を詳細に説明するに先立ち、本明細書に使用された用語は、特定の実施例を記述するためのものに過ぎず、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことを理解すべきである。本明細書に使用されるすべての技術用語及び科学用語は、他に記載がない限り、技術的に通常の技術を有する者に一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。
【0020】
本明細書及び請求の範囲の全般にわたって、他に記載がない限り、「含む(comprise、comprises、comprising)」という用語は、記載されたもの、ステップ、又は一群のもの及びステップを含むことを意味し、任意のある他のもの、ステップ、又は一群のもの又は一群のステップを排除する意味で使用されたものではない。
【0021】
また、本明細書において、範囲を示す「A乃至B」は、A以上B以下の範囲を意味する。
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明は、一実施形態であって、平均粒径15nm以上の第1酸化セリウム粒子と平均粒径10nm以下の第2酸化セリウム粒子とを含む酸化セリウム複合粉末を提供する。複合粉末において前記2種類の粒子は、個別に存在しても互いに接触していてもよく、別個の凝集形態を保つ。この時、複合粉末は、第1酸化セリウム粒子の物理的研磨特性を維持するために、第2酸化セリウム粒子が表面を覆うコアシェル形態で存在しない。
【0024】
本発明による酸化セリウム複合粉末は、平均粒径の異なる2種の酸化セリウム粒子を含み、前記2種の酸化セリウム粒子は、互いに異なる特定の粒度範囲を有する。具体的には、前記酸化セリウム複合粉末は、平均粒径15nm以上の大きい第1酸化セリウム粒子と、平均粒径10nm以下の小さい第2酸化セリウム粒子とを含み、より具体的には、平均粒径が15~60nm;20~55nm;25~50nm;30~45nm;又は20nm以上40nm未満である第1酸化セリウム粒子と、平均粒径が1~10nm;1~6nm;2~5nm;又は1nm以上3nm未満である第2酸化セリウム粒子と、を含む。
【0025】
前記平均粒径の大きい第1酸化セリウム粒子は、限定されないが、その形状が角形であってもよい。これにより、さらに優れる研磨速度を持つようにすることができる。また、前記酸化セリウム複合粉末は、第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子とを9.5:0.5~0.5:9.5の重量比(wt./wt.)で含むことができ、具体的には8:2~2:8の重量比(wt./wt.)で含むことができ、より具体的には6:4~4:6の重量比(wt./wt.)で含むことができ、場合によっては5.5:4.5~4.5:5.5の重量比(wt./wt.)で含むことができる。
【0026】
したがって、前記酸化セリウム複合粉末は、酸化セリウム複合粉末に対する透過電子顕微鏡(TEM)分析の際に、単位面積(横550nm及び縦550nm)あたり第1酸化セリウム粒子1個に対して第2酸化セリウム粒子50~19,000個を含むことができる。例えば、前記酸化セリウム複合粉末は、透過電子顕微鏡(TEM)分析の際に、単位面積(横550nm及び縦550nm)あたり第1酸化セリウム粒子1個に対して第2酸化セリウム粒子400~2500個;或いは650~1500個を含むことができる。
【0027】
また、前記酸化セリウム複合粉末は、平均粒径の異なる2種の酸化セリウム粒子を上述の比率で含むことにより、測定方法によって特定の範囲内の粒度値を示すことができる。
【0028】
一例として、前記酸化セリウム複合粉末の分散粒度は、ゼータサイザー(Zetasizer)分析時に50nm~180nmであり;マイクロトラック(Microtrac)分析時に60nm~350nmであり;ルミサイザー(Lumisizer)分析時に30nm~70nmであり得る。
【0029】
具体的には、前記酸化セリウム複合粉末の分散粒度は、
ゼータサイザー(Zetasizer)分析時に70nm~150nm;又は100nm~110nmであるか、
マイクロトラック(Microtrac)分析時に120nm~200nm;又は170nm~185nmであるか、或いは
ルミサイザー(Lumisizer)分析時に30nm~50nm;又は35nm~45nmを満たすことができる。
【0030】
ここで、前記粒度は、全粒子の50%に該当する粒度(D50)であって、ゼータサイザー(Zetasizer)及びマイクロトラック(Microtrac)分析による粒度値は、体積平均粒径(Dv(50))値である。
【0031】
酸化セリウム複合粉末に含まれている酸化セリウム粒子は、そのサイズが大きいほど研磨剤として使用する場合、優れた研磨速度を実現することができるが、比表面積が低くて研磨剤の化学的活性を低減させ、研磨された基板の表面を損傷させるという問題がある。これに対し、酸化セリウム粒子のサイズが小さい場合、研磨される基板の表面損傷を防止するとともに研磨剤の化学的活性を向上させることができるものの、研磨速度が著しく劣るという限界がある。
【0032】
しかし、本発明の酸化セリウム複合粉末は、粒子サイズの異なる2種の酸化セリウム粒子を含むが、前記酸化セリウム粒子の平均粒度と混合された酸化セリウム複合粉末の分散粒度(D50)の範囲を上述の範囲に調節することにより、研磨される基板表面の損傷を防止することができるだけでなく、研磨剤の化学的・物理的活性を極大化して研磨速度を著しく向上させることができるとともに、研磨剤の保存安定性にも優れるという利点がある。
【0033】
一方、前記酸化セリウム複合粉末は、平均BET比表面積が50.00m2/g以上であり得る。例えば、前記酸化セリウム複合粉末の平均BET比表面積は、70.00m2/g~250m2/g;70.00m2/g~150m2/g;70.00m2/g~90m2/g;120.00m2/g~200m2/g;150.00m2/g~250m2/g;110.00m2/g~160m2/g;130.00m2/g~150m2/g;180.00m2/g~240m2/gであり得る。
【0034】
本発明は、酸化セリウム複合粉末の平均BET比表面積を上述の範囲に制御することにより、研磨時にこれを含む分散組成物が基板の表面に接触する面積を極大化することができるので、基板表面の損傷を防止しながら化学的研磨を行うことができる。
【0035】
さらに、本発明は、上述した酸化セリウム複合粉末を含む分散組成物を提供する。
【0036】
本発明による分散組成物は、粒子サイズが異なり且つ特定の組成範囲を満たす2種の酸化セリウム粒子を有する酸化セリウム複合粉末を含むことにより、使用時に基板を損傷させることなく高い研磨速度で実現することができるとともに、保存安定性を向上させることができる。
【0037】
ここで、前記分散組成物に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた場合に2.55g/mL~2.95g/mLであり得る。また、前記分散組成物溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、1.0g/mL~2.95g/mLであり得る。このとき、前記分散組成物に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた場合に2.55g/mL~2.95g/mLであり、具体的には2.70g/mL~2.85g/mLであり得る。一例として、前記分散組成物に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、2.81±0.05g/mLであり得る。
【0038】
また、前記分散組成物の溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、分散組成物を2時間乾燥させた場合に1.0g/mL~2.8g/mLであり、具体的には1.6g/mL~1.8g/mLであり得る。一例として、前記分散組成物の溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の平均密度は、1.69±0.05g/mLであり得る。本発明は、分散組成物の溶液中に含まれている酸化セリウム複合粉末の密度を上述の範囲に制御することにより、酸化セリウム複合粉末の低密度により粒子の被研磨膜への作用が弱まって研磨速度が低減することを改善することができるとともに、酸化セリウム複合粉末の高密度による基板表面の損傷を防止することができる。
【0039】
これに加えて、本発明による分散組成物を40℃で30日以上放置しても平均粒度の変化が5%以内であって保存安定性に優れるため、長時間が経過した後にも分散組成物の研磨特性を一定に実現することができる。
【0040】
さらに、前記分散組成物は、溶媒として水を使用することができ、有機溶剤を一部混合して使用することもできる。このとき、前記分散組成物は、上述した本発明の酸化セリウム複合粉末を0.3~15wt.%で溶媒に分散及び/又は混合したものであり得る。
【0041】
また、前記分散組成物は、酸化セリウム複合粉末以外に様々な添加剤が含まれることができ、一例として、分散剤、欠陥抑制剤、酸化剤、研磨促進剤、pH調節剤などが挙げられる。
【0042】
前記分散剤は、硝酸(Nitric acid)、ギ酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、安息香酸(benzoic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)、マレイン酸(maleic acid))、マロン酸(malonic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも一つを含むものであり得る。
【0043】
一方、本発明による酸化セリウム複合粉末と分散組成物の製造方法は、当業分野における通常用いられものであれば、特に限定されずに適用可能である。例えば、酸化セリウム複合粉末は、湿式酸化法、ゾルゲル(Sol Gel)法、水熱合成法、か焼法などを使用することができる。一例として、前記酸化セリウム複合粉末は、セリウム前駆体と塩基性物質とを混合してセリウム前駆体を酸化させて酸化セリウムを得た後、これを洗浄、乾燥、粉砕した後、熱処理し、水で希釈させて酸化セリウム複合粉末を含む分散組成物を得ることができる。本発明の酸化セリウム複合粉末を得るために、実施例を介して具体的に例示した。セリウム前駆体としては、特に限定されず、好ましくは塩の形態であってもよく、その非限定的な例には、硝酸セリウム(cerium nitrate)、酢酸セリウム(cerium acetate)、塩化セリウム(cerium chloride)、炭酸セリウム(cerium carbonate)、硝酸アンモニウムセリウム(cerium ammonium nitrate)、これらの水和物などがあり、これらは、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0044】
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明する。下記の説明は本発明の具体的な一例についてのものであるので、たとえ断定的、限定的表現があっても、特許請求の範囲から定められる権利範囲を制限するものではない。
【0045】
<製造例1>第1酸化セリウム粒子の製造
【0046】
炭酸セリウム水和物(Ce2(CO3)3)・xH2O)1.85kgを水18.15kgと硝酸(HNO3)2.4kgに溶かした後、1時間攪拌して前駆体溶液を製造した。アンモニア水6kgを前駆体溶液に投入し、投入完了後に75℃に昇温し、攪拌しながら6時間反応させた。得られた沈殿物をフィルタープレスで濾過、洗浄し、1000℃で熱処理して第1酸化セリウム粒子を製造した。このとき、粒子の密度は6.5g/mL以上であった。
【0047】
<製造例2>第2酸化セリウム粒子の製造
【0048】
硝酸アンモニウムセリウム((NH4)2Ce(NO3)6)1.2kgを水2kgに溶かした後、過酸化水素水(H2O2)10gを入れて1時間攪拌して前駆体溶液を製造した。アンモニア水2kgを前駆体溶液に投入し、反応溶液を200℃で水熱合成反応した。得られた沈殿物をフィルタープレスで濾過、洗浄し、60℃で真空乾燥させて第2酸化セリウム粒子を製造した。このとき、粒子の密度は2.5g/mL以下であった。
【0049】
<比較製造例1>水酸化セリウム粒子の製造
【0050】
硝酸アンモニウムセリウム((NH4)2Ce(NO3)6)350gを水7825gに溶かした後、攪拌して前駆体溶液を製造した。イミダゾール750gを前駆体溶液に5mL/minの速度で投入し、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。得られた沈殿物をフィルタープレスで濾過、洗浄して水酸化セリウム粒子を得た。
【0051】
<実施例1~7及び比較例1~2>
【0052】
製造例1で得た第1酸化セリウム粒子と、製造例2で得た第2酸化セリウム粒子とを下記表1のように混合した後、破砕及びウェットミリングした。ミリングされた分散組成物を60℃で真空乾燥させて最終的に酸化セリウム複合粉末を製造した。
【0053】
a:比較例3の場合は、製造例1の第1酸化セリウム粒子と比較製造例1の水酸化セリウム粒子とを混合した比率であり、ウェットミリングを行っていない混合粒子である。
【0054】
<実施例8~14及び比較例4~6>
【0055】
下記表2に示すように、前記実施例1~7及び比較例1~3で得たそれぞれの酸化セリウム複合粉末を1.0wt%となるように水と混合した後、分散させて分散組成物を製造した。
【0056】
【0057】
<実験例1>酸化セリウム複合粉末の評価
【0058】
本発明で用いられる第1及び第2酸化セリウム粒子の形態及び粒度と、これを含む酸化セリウム複合粉末の分散粒度及びBET比表面積を評価するために、製造例1~2で得た第1及び第2酸化セリウム粒子と;実施例1~7及び比較例1~3で得た酸化セリウム複合粉末を対象として下記の実験を行った。
【0059】
A)第1及び第2酸化セリウム粒子の粒度及び形態の分析
【0060】
製造例、実施例及び比較例で得た酸化セリウム粒子と酸化セリウム複合粉末に対する透過電子顕微鏡(TEM)分析を行った。その結果は
図1に示す。
【0061】
図1を参照すると、実施例の酸化セリウム複合粉末は、平均粒径20~50nmの多角形の第1酸化セリウム粒子と、平均粒径1~5nmの球状の第2酸化セリウム粒子とが混合された形態を有することが分かる。また、X線回折(XRD)分析器を用いて酸化セリウム粒子の結晶性を確認した。その結果は
図3に示す。さらに、製造例2の結果から、第2酸化セリウム粒子は0.31±0.005nmの平均格子間隔を有することが確認された。実施例1~7で得た酸化セリウム複合粉末は、第1酸化セリウム粒子1個に対して第2酸化セリウム粒子を50~19,000個で含むことが分かる。
【0062】
これらの結果は、本発明による酸化セリウム複合粉末が酸化されたセリウム粒子のみを含み、前記酸化セリウム粒子は互いにサイズの異なる2種の粒子が一定の比率で混合及び/又は分散された構成を有することを意味する。
【0063】
B)酸化セリウム複合粉末の分散粒度の分析
【0064】
製造例、実施例及び比較例で得た酸化セリウム粒子と酸化セリウム複合粉末に対する(1)ゼータサイザー(Zetasizer)分析;(2)マイクロトラック(Microtrac)分析;(3)ルミサイザー(Lumisizer)分析を行い、各酸化セリウム粒子と酸化セリウム複合粉末に対する50%粒度(D50)を測定した。測定された各結果は、下記表3に示す。
【0065】
前記表3を参照すると、本発明による酸化セリウム複合粉末は、粒子サイズの異なる2種の酸化セリウム粒子を含むことにより、測定方法によって一定の粒度範囲を有することが分かる。
【0066】
C)酸化セリウム複合粉末のBET比表面積の分析
【0067】
製造例、実施例及び比較例で得た酸化セリウム粒子と酸化セリウム複合粉末に対するBET比表面積を測定した。
【0068】
その結果、製造例1及び2で得た第1酸化セリウム粒子及び第2酸化セリウム粒子の平均BET比表面積は、それぞれ22.76m2/g及び183.50m2/gであることが確認され、実施例1、4及び7で得た酸化セリウム複合粉末の平均BET比表面積は、それぞれ73.80m2/g、142.62m2/g及び178.57m2/gであることが確認された。
【0069】
<実験例2>分散組成物の評価
【0070】
本発明による分散組成物の光特性、保存安定性、研磨効率などを評価するために、実施例8~14及び比較例4~6で得た分散組成物を対象として下記実験を行った。
【0071】
A)分散組成物の光特性の評価
【0072】
実施例12で得た分散組成物(第1酸化セリウム粒子:第2酸化セリウム粒子=50:50wt.%/wt.%)を0.007wt.%の濃度で蒸留水に分散させてスラリーを製造し、製造されたスラリーを1cm×1cmのセルに約4mL入れた後、分光光度計内にセルを装入した。その後、波長450nmでの吸光度と波長500nmでの透過度を測定した。
【0073】
その結果、前記分散組成物が0.007wt.%で分散された場合、波長450~600nmでの吸光度が0.027±0.005%であって0.02~0.19%の範囲内に存在することが確認された。また、分散組成物が0.007wt.%で分散した場合、波長500nmでの透過度が85.35±0.005%であって70~90%の範囲内の値を有することが確認された。
【0074】
B)分散組成物中の酸化セリウム粒子の密度の評価
【0075】
製造例1、製造例2及び比較製造例1で得た酸化セリウム粒子を下記表4の分散組成物で混合した後、破砕及びウェットミリングして分散組成物サンプルを準備し、分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた後、複合粉末密度を測定した。また、複合粉末を5.0wt.%の濃度で蒸留水に分散させた後、分散組成物の溶液中に含まれている複合粉末の密度を測定した。
【0076】
このとき、前記測定条件は次の通りであり、その結果は下記表4及び
図4に示す。また、比較例3の場合は、製造例1及び比較製造例1で得た粒子を分散組成物(第1酸化セリウム粒子:第2水酸化セリウム粒子=50:50wt.%/wt.%)で混合した後、超音波を照射して分散組成物サンプルを準備し、分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた後、複合粉末の密度を測定した。また、複合粉末を5.0wt.%の濃度で蒸留水に分散させた後、分散組成物の溶液中に含まれている複合粉末の密度を測定した。
【0077】
(条件(1))破砕及びウェットミリングした分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた後、50mLの比重瓶を用いて下記式1で密度を計算した。
【0078】
(条件(2))混合分散組成物を60℃及び真空条件の下で72時間乾燥させた後、50mLの比重瓶を用いて下記式1で密度を計算した。
【0079】
[式1]PD=PW/PV,PV=CV-WV,WV=WW/WD
【0080】
(PD:パウダー密度、PW:パウダー重量、PV:パウダー体積、CV:比重瓶の体積、WV:水体積、WW:水重量、WD:水密度)。
【0081】
(条件(3))条件(1)、(2)で製造された複合粉末を5.0wt.%の濃度で蒸留水に分散させた後、溶液中に含まれている複合粉末の密度を下記式2で計算した。
【0082】
[式2]PD=PW/PV,PV=SV-WV,WV=WW/WD,WW=SW-PW
(PD:溶液中のパウダー密度、PW:パウダー重量、PV:パウダー体積、SV:スラリー体積、WV:水体積、WW:水重量、WD:水密度、SW:スラリー重量)。
【0083】
前記表4及び
図4を参照すると、本発明による分散組成物は、酸化セリウム複合粉末に対する特定の密度範囲を有することが分かる。
【0084】
C)分散組成物の保存安定性の評価
【0085】
製造例1及び2で得た酸化セリウム複合粉末を5.0wt%の濃度となるように蒸留水に分散させたサンプルを準備した。その後、準備されたサンプルと実施例8、11及び14と比較例5で製造された分散組成物に含まれている酸化セリウム複合粉末の分散粒度を測定し、40℃の恒温槽に30日以上放置した。30日以上経過した後、各サンプル及び分散組成物の平均粒度を再測定して粒度変化を確認した。その結果を下記表5に示す。
【0086】
本発明による分散組成物は、長期保管後にも酸化セリウム複合粉末の分散粒度の変化が大きくないので、これにより、長時間が経過した後にも組成物の研磨特性を変化なく一定に実現することができる。
【0087】
D)分散組成物の研磨効率の評価
【0088】
まず、製造例1及び2で得た酸化セリウム粒子を1.0wt.%の濃度で蒸留水に分散させたサンプルを準備した。準備されたサンプルと実施例8~14及び比較例3~5で得た分散組成物に対して下記の条件でテストを行い、各分散組成物の研磨速度を測定した。その結果を
図5に示す。
【0089】
-研磨テスト:CMP装備(モデル名:斗山UNIPLA 231)
-パッド(Pad):IC1000TM A2 PAD 20'*1.18' ACAO:1Y10
-時間:60秒
-スピンドルスピード:85rpm
-Wafer pressure:5psi
-スラリー流量(Slurry flow rate):200cc/min
-Wafer:8インチ(PETEOS)
-Wafer thickness:20000Å
【0090】
図5を参照すると、本発明による分散組成物は、特定のサイズを有する第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子とを一定の含有量比率で含有して、被研磨される基板の表面を損傷させることなく研磨を行うことができ;粒子サイズの大きい第1酸化セリウム粒子又は粒子サイズの小さい第2酸化セリウム粒子を単独で含む組成物に比べて高い研磨速度を有することが確認された。
【0091】
具体的には、実施例の分散組成物は、研磨される基板の表面を損傷させないのに対し、第1酸化セリウム粒子を単独で含むか高い含有量比率で含む製造例1又は比較例3の場合、基板の表面損傷が発生したことが確認された。
【0092】
また、実施例の分散組成物はいずれも、約12,000Å/min以上の高い研磨速度を示し、特に第1酸化セリウム粒子と第2酸化セリウム粒子との混合比が6:4~4:6(wt./wt.)である実施例10~12の分散組成物は、研磨速度が17000Å/min以上と著しく高いことが確認された。これに対し、第1酸化セリウム粒子又は第2酸化セリウム粒子を単独で含むサンプル(製造例1及び2)と、前記酸化セリウム粒子の混合比が本発明とは異なる分散組成物(比較例3及び4)は、11,000Å/min未満の低い研磨速度を有することが確認された。
【0093】
このような結果から、本発明による分散組成物は、一定のサイズを有する2種の酸化セリウム粒子を特定の比率で含有する酸化セリウム複合粉末を含むことにより、使用時に基板の表面を損傷させることなく高い研磨効率を実現することができることが分かる。