(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】香りカプセル
(51)【国際特許分類】
A45D 34/02 20060101AFI20231130BHJP
A61L 9/12 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
A45D34/02 510B
A45D34/02 510Z
A61L9/12
(21)【出願番号】P 2023078945
(22)【出願日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-12
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523175797
【氏名又は名称】羽石 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100198498
【氏名又は名称】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】羽石 啓二
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0526681(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3165960(JP,U)
【文献】実開昭54-145383(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0072710(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/02
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の容器と第2の容器とからなり、
前記第1の容器は、外側の形状が縦長の柱状で下端が閉じ上端が開放された第1の収容部を有し、
前記第2の容器は、内側の形状が前記第1の収容部と中軸が一致する縦長の柱状で下端が開放され上端が閉じられた第2の収容部を有し、
前記第2の収容部は、内側に前記第1の収容部を収容可能であり、
前記第1の収容部の側壁に第1のリフト手段が設けられ、
前記第2の収容部の側壁に前記第1のリフト手段と共働して、前記第1の容器に対する前記第2の容器の前記中軸の軸方向のリフト量を調整するための第2のリフト手段が設けられ、
前記第1の収容部又は前記第2の収容部の少なくとも一方の側壁に
は、前記中軸の軸方向に延び
て前記リフト量が大きくなるに従って
開口面積が拡大する2以上の開口部が並列に
設けられ、
前記2以上の開口部は
、前記リフト量が所定リフト範囲のときに該リフト量が大きくなるに従って開口面積が同時に拡大するように配置されると共に、前記リフト量に応じて開口を開始する
一方の端部の位置が
軸方向で互いに異なる
ように形成され、前記リフト量に応じて開口面積の拡大が終了する他方の端部の位置が前記中軸を中心とする同一円周上に形成されていることを特徴とする香りカプセル。
【請求項2】
並列に形成された前記2以上の開口部は
、開口を開始する
前記一方の端部の位置が互いに異なる2以上の四角形であることを特徴とする請求項1に記載の香りカプセル。
【請求項3】
並列に形成された前記2以上の開口部は、前記開口を開始する
前記一方の端部が各々の頂点となっている高さの異なる2以上の三角形であり
、底辺が前記他方の端部となる前記中軸
を中心とする同一
円周上にあることを特徴とする請求項1に記載の香りカプセル。
【請求項4】
前記第2の収容部は前記第1の収容部に対して前記中軸の周方向に回転が可能であり、
前記第1の収容部の側壁の外側には雄ネジが前記第1のリフト手段として形成され、
前記第2の収容部の側壁の内側には前記雄ネジと螺合する雌ネジが前記第2のリフト手段として形成され、
前記第1の収容部の前記雄ネジには、前記第2の容器のリフト量を固定するリング状のストッパ部材が嵌合され、
前記第1の収容部に対する前記第2の収容部の回転に応じて前記第2の容器のリフト量が定ま
り、
前記ストッパ部材によって所望のリフト量で前記第2の容器が固定されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の香りカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封容器に関し、特に内部に揮発性のある物質を充填し、容器に形成された開口部から外部に放出される物質の量を調整可能な密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
香水、アロマオイル等の揮発性がある香り物質を内部に充填し、気化した香り物質を開口部から容器の外部に放出する香り密封容器(香りカプセル)及びこれをペンダントトップに用いた香りペンダント(アロマペンダント等)が一般に販売されている。
一例として、特開2000-102412号公報には、内部に芳香液(香り物質)が充填された香り(芳香)カプセルを外容器に収容するタイプの芳香機能付きストラップが開示されている。
【0003】
このストラップでは、香り(芳香)カプセルから出る香り物質が、外容器の芳香孔(開口部)から放出するようになっている。このストラップは小型のもので、携帯電話のストラップとして利用可能である旨も開示されている。
【0004】
この従来例の香り(芳香)カプセルでは、時間の経過と共に残存する芳香液の量が少なくなった場合、芳香カプセル自体をスペアとしての新たな香り(芳香)カプセルに取り替えて外容器に収容することも開示されている。また、香りが弱まった際に、収容部に香り物質(芳香液)を補充するタイプの香りペンダントも数多く販売されている。
【0005】
ところで、充填されている香り物質がなくなったときに、スペアに交換したり、香り物質(液体)を補充すると、スペア交換/液体の充填の前後で香りの強さが極端に変化する。
また、香り物質が十分に充填され香りが強いときには、使用する場面によっては、香りが強すぎて好ましくないこともある。
例えば、屋外では強い香りのままでも良いが、屋内では香りを弱める必要が生じたり、食事の場面では香りが生じないようにする必要もある。
【0006】
しかるに、従来公知の香り(芳香)カプセルやこれを用いた香りペンダントは、香りの強さの調整ができないため、使用する場面が限られてしまい、使い勝手が悪い。
また、香り物質(香水、アロマオイル等)の残量にかかわらず、香りの強さを常に一定に保ちたいとの要請に応えることもできない。
【0007】
香りの強さを調整可能なものとしては、特開2017-148441号公報に、側壁に複数の通気口(開口部)が周設された容器本体と、この容器本体の側壁に対して摺動自在に設けられた摺動内筒と、この摺動内筒の外面に対して摺動自在に設けられた摺動外筒からなる芳香剤容器が開示されている。
この芳香剤容器では、摺動外筒を摺動内筒に対して摺動させることで香りの強さの調整が可能である。
しかし、この芳香剤容器は、香りの強さを調整できるものの、製品自体が大型であるため、この構造をそのまま小型の香りペンダントに用いることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-102412号公報
【文献】特開2017-148441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように香りの強さを調整する香りカプセルやこれを用いた香りペンダントトップに用いたもの(アロマペンダント)は未だ提供されていない。
また、香りの強さを調整する芳香剤容器は、従来より提案されているもののこの技術をそのまま、小型の芳香(香り)ペンダントに適用することはできない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、内部に充填した物質が気化したときにその放出量(香りの強さ)を調整でき、かつ小型化が可能な密封容器を提供することを課題とする。
かかる密封容器が実現できれば、これを香りカプセルとして用いることで、容器内部に残存している香り物質(アロマオイル、香水等)の量が経時的に低下した場合でも、香りの強さを一定に保ったり、使用状況に応じて香りの強さが調整できる香りカプセル及びこれを用いた香りペンダント等を提供することができる。
【0011】
また、人が感じる香りの強さと、実際に放出された香り物質の量とは比例しないことに着目し(ウェーバー・フェヒナーの法則)、香り調整を行うときの操作量(リフト量)と香りの強さが、あたかも比例しているような感覚で、香り調整ができる密封容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本願の第1の発明は、第1の容器と第2の容器とからなる密封容器において、前記第1の容器は、外側の形状が柱状で下端が閉じ上端が開放された第1の収容部を有し、前記第2の容器は、内側の形状が前記第1の収容部と中軸が一致する柱状で下端が開放され上端が閉じられた第2の収容部を有し、前記第2の収容部は、内側に前記第1の収容部を収容可能であり、前記第1の収容部の側壁に第1のリフト手段が設けられ、前記第2の収容部の側壁に前記第1のリフト手段と共働して、前記第1の容器に対する前記第2の容器の前記中軸の軸方向のリフト量を調整するための第2のリフト手段が設けられ、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の少なくとも一方の側壁に、前記中軸の軸方向に延びる1又は2以上の開口部が形成され、該開口部は、前記第2の容器のリフト量に応じて開口する面積が定まるようにしたものである。
【0013】
また、本願の第2の発明は、第1の発明において、前記第2の収容部は前記第1の収容部に対して前記中軸の周方向に回転が可能であり、前記第1の収容部の側壁の外側には雄ネジが前記第1のリフト手段として形成され、前記第2の収容部の側壁の内側には前記雄ネジと螺合する雌ネジが前記第2のリフト手段として形成され、前記第1の収容部に対する前記第2の収容部の回転に応じて前記第2の容器のリフト量が定まるようにしたものである。
【0014】
また、本願の第3の発明は、前記第2の発明において、前記第1の収容部の前記雄ネジに、前記第2の容器のリフト量を固定するリング状のストッパ部材を嵌合させたものである。
また、本願の第4の発明は、前記第3の発明において、前記ストッパ部材の、前記第2の収容部の下端と当接する面にシール部材を配したものである。
【0015】
また、本願の第5の発明は、第1の発明において、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の一方の側壁には前記中軸の軸方向に延びるスライド溝が形成され、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の他方の側壁には前記スライド溝と嵌合する係止部が形成され、前記第1の容器に対する前記第2の容器の前記中軸の軸方向の移動に伴って、前記係止部は、前記スライド溝に沿って上下動するようにしたものである。
【0016】
また、本願の第6の発明は、第5の発明において、前記第2の収容部は前記第1の収容部に対して前記中軸の周方向に回転が可能であり、前記スライド溝が形成された前記第1の収容部又は前記第2の収容部の側壁には、該スライド溝から分岐する1又は2以上のロック溝が、前記中軸の周方向に延びるように設けられ、前記係止部が前記ロック溝が分岐する位置にあるときに、前記第2の容器を前記第1の容器に対して周方向に回転させて該第2の容器のリフト量が固定できるようにしたものである。
また、本願の第7の発明は、第1の発明から第6の発明の何れかにおいて、前記開口部を、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の下端から上端に向かって開口幅が広がる形状としたものである。
【0017】
また、本願の第8の発明は、第7の発明において、前記開口部は、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の下端の側が頂点、上端の側が底辺の三角形の開口としたものである。
また、本願の第9の発明は、第8の発明において、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の少なくとも一方の側壁に、前記開口部として、底辺が前記中軸を中心とする同一の周上にあり頂点が前記中軸の軸方向で互いに異なる高さの2以上の三角形の開口が形成されたものである。
【0018】
また本願の第10の発明は、第1の容器と第2の容器とからなる密封容器において、前記第1の容器は、外側の形状が柱状で下端が閉じ上端が開放された第1の収容部を有し、前記第2の容器は、内側の形状が前記第1の収容部と中軸が一致する柱状で下端が開放され上端が閉じられた第2の収容部を有し、前記第2の収容部は、内側に前記第1の収容部を収容可能であり、前記第1の収容部の側壁に第1のリフト手段が設けられ、前記第2の収容部の側壁に前記第1のリフト手段と共働して、前記第1の容器に対する前記第2の容器の前記中軸の軸方向のリフト量を調整するための第2のリフト手段が設けられ、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の少なくとも一方の側壁に複数の孔が前記中軸の軸方向に分散して設けられ、前記第2の容器のリフト量に応じて前記第1の収容部の内部又は前記第2の収容部の内部を容器外部に連通する前記孔の数が定まるようにしたものである。
【0019】
また本願の第11の発明は、第10の発明において、前記第2の収容部は前記第1の収容部に対して前記中軸の周方向に回転が可能であり、前記第1の収容部の側壁の外側には雄ネジが前記第1のリフト手段として形成され、前記第2の収容部の側壁の内側には前記雄ネジと螺合する雌ネジが前記第2のリフト手段として形成され、前記第1の収容部に対する前記第2の収容部の回転に応じて前記第2の容器のリフト量が定まるようにしたものである。
【0020】
また本願の第12の発明は、第11の発明において、前記第1の収容部の前記雄ネジに、前記第2の容器のリフト量を固定するリング状のストッパ部材を嵌合させたものである。
また本願の第13の発明は、第10の発明から第12の発明の何れかにおいて、前記中軸の軸方向に分散して設けられた前記複数の孔は、前記中軸の周方向にも分散して設けられ、かつ、周方向に分散する前記複数の孔の数は、前記第1の収容部又は前記第2の収容部の下端から上端に向かって多くなっているものである。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1の発明によれば、密封容器を第1の容器と第2の容器とで構成し、第1の容器に対する第2の容器のリフト量に応じて密封容器の開口する面積を決定することができる。
本願の第2の発明によれば、第1の発明において、第2の容器を第1の容器に対して回転することができ、この回転によって生じる第1の容器側に形成された雄ネジと第2の容器側に形成された雌ネジとの螺合状態に応じて、第1の容器に対する第2の容器のシフト位置を細かく調整することができ、開口する面積も細かく調整できる。
【0022】
本願の第3の発明によれば、第1の収容部側の雄ネジに嵌合されたリング状のストッパ部材を前記第2の収容部の下端に押し当てることで、前記第2の容器の前記第1の容器に対するリフト量を所望の位置で固定することができ、かつ、第1の収容部と第2の収容部との間に生じうる隙間を封じることができる。
本願の第4の発明によれば、更に、リング状のストッパ部材と第2の容器との間に配置されたシール部材によって、第1の容器と第2の容器との間に生じうる隙間を完全に封じることができる。これにより不使用時に密封容器内の第1の収容部及び第2の収容部を容器外部から完全に遮断することができる。また、第1の収容部と第2の収容部との間に生じうる隙間を完全に封じることができるので、第2の容器のリフト量に応じて開口する面積の調整の精度が向上する。
【0023】
本願の第5の発明によれば、第2の容器を第1の容器に対して引き上げる際、係止部がスライド溝によって案内されるので、第2の容器の中軸の軸方向への移動が円滑になる。
本願の第6の発明によれば、第5の発明において、第2の容器を引き上げて、係止部がロック溝が形成された位置に達したとき、第2の容器を第1の容器に対して周方向に回転可能になり、この回転によって、第2の容器の上下動を禁止することができる。
【0024】
本願の第7の発明によれば、第1から第6の発明の何れかにおいて、密封容器が開口する度合いを第2の容器のリフト量の変化に対してより大きくすることができる。特に、密封容器の第1の収容部又は第2の収容部に揮発性のある香り物質を収容した場合、気化した香り物質の放出量をリフト量の変化に対して加速度的に大きくすることができる。
本願の第8の発明によれば、第7の発明において、密封容器が開口する面積を第2の容器のリフト量の変化に対して二次曲線に従って大きくすることができる。特に、密封容器の第1の収容部又は第2の収容部に揮発性のある物質を収容した場合、収容された物質の残量が少なくなっても、気化した物質の放出量を一定に調整できる。また、第1の収容部又は第2の収容部に揮発性の香り物質を収容した場合、人が感じる香りの強さと実際に放出された香り物質の量との関係性(ウェーバー・フェヒナーの法則)に合った香りの強さの調整が可能になる。
【0025】
本願の第9の発明によれば、第8の発明において、密封容器が開口する面積を、第2の容器のリフト量が増えるに従って、2以上の二次曲線を適宜重ね合わせた特性に従って大きくすることができる。特に、密封容器の第1の収容部又は第2の収容部に揮発性のある物質を収容した場合、収容された物質の残量が少なくなっても、密封容器から放出される気化した物質の量を一定に調整できる。また、第1の収容部又は第2の収容部に揮発性がある香り物質を収容した場合、人が感じる香りの強さの特性(ウェーバー・フェヒナーの法則)に一層近づけて香りの調整をすることができる。
【0026】
本願の第10の発明によれば、密封容器を第1の容器と第2の容器とで構成し、第1の容器に対する第2の容器のリフト量に応じて密封容器を外部に開口させる孔の数を決定することができる。
本願の第11の発明によれば、第10の発明において、第2の容器を第1の容器に対して回転することができ、この回転によって生じる第1の容器側に形成された雄ネジと第2の容器側に形成された雌ネジとの螺合状態に応じて、第1の容器に対する第2の容器のシフト位置を調整でき、開口する孔の数に応じた開口面積とすることができる。
【0027】
本願の第12の発明によれば、第1の収容部側の雄ネジに嵌合されたリング状のストッパ部材は、前記第2の容器を前記第1の容器に対して所望のリフト量で固定することができ、かつ、第1の収容部と第2の収容部との間に生じうる隙間を封じることができる。これにより不使用時に密封容器(第1の収容部及び第2の収容部)を完全に封じることができる。
【0028】
本願の第13の発明によれば、複数の孔が形成される密度が、第1の収容部又は第2の収容部の下端から上端に向かって高くなるので、密封容器を開口させる孔の数を第2の容器のリフト量の変化に対してより大きく変化させることができる。特に、密封容器の第1の収容部又は第2の収容部に揮発性のある物質を収容した場合、気化した気体の放出量をリフト量の変化に比べて加速度的に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の香りカプセル(密封容器)100の外観を示す斜視図である。
【
図2】香りカプセル100を構成する容器本体110、覆体120及びストッパリング130を示す斜視図である。
【
図3】香りカプセル100の覆体120を全閉位置(密封状態)から第1の開放位置まで引き上げる手順を示す斜視図である。
【
図4】覆体120を第1の開放位置から第2の開放位置まで引き上げる手順を示す斜視図である。
【
図5】覆体120を第2の開放位置から全開位置まで引き上げるする手順を示す斜視図である。
【
図6】覆体120のリフト量に応じて開口部111が開口する様子を示す断面図である。
【
図7】本体収容部110Aの側壁に形成された大きさの異なる3つの開口部111,112,113の形状を示す展開図及びこれら3つの開口部の開口幅Yの和を示すグラフである。
【
図8】覆体120のリフト量hと開口面積Sの関係を示すグラフである。
【
図9】容器本体110の本体収容部110Aの側壁に大きさが同じ2つの四角形の開口部114,114と、大きさが異なる2つの四角形の開口部115a,115bを設けた変形例を示す図である。
【
図10】同一形状の四角形の開口部114,114を設けた場合と、異なる形状の四角形の開口部115a,115bを設けた場合のリフト量hと開口面積Sとの関係を示すグラフである。
【
図11】本体収容部110Aの側壁に複数の孔116,116…を設けた変形例を示す展開図及びリフト量(h)と孔の数(n)との関係を示す図である。
【
図12】覆体120の開放端120Bとストッパリング130との間にパッキン(シール部材)140を配した変形例を示す斜視図及び断面図である。
【
図13】覆体120の開放端120Bとストッパリング130との間にOリング(シール部材)150を配した変形例を示す斜視図及び断面図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態に係る香りカプセル200を示す斜視図である。
【
図15】スライド溝222及びロック溝223と突起212の係合の状態を示す断面図である。
【
図16】全閉位置(密封状態)にある香りカプセル200を示す斜視図である。
【
図17】全閉位置(密封状態)にある香りカプセル200の覆体220を第1の開放位置まで引き上げる手順を示す斜視図である。
【
図18】覆体220を第1の開放位置から全開位置まで引き上げる手順を示す斜視図である。
【
図19】香りカプセル200の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について、
図1から
図13を用いて説明する。
この実施の形態に係る香りカプセル(密封容器)100は、
図1、
図2に示すように容器本体(第1の容器)110と覆体(第2の容器)120とからなり、容器本体110と覆体120との間に覆体120を固定するためのストッパリング(リング状のストッパ部材)130が配されている。
【0031】
容器本体110の側壁の外周面(外側)には雄ネジ(第1のリフト手段)110Cが形成され、覆体120の覆体収容部120Aの側壁の内周面(内側)には雌ネジ(第2のリフト手段)120Cが形成されている。また、ストッパリング130の内周面には雌ネジ130Cが形成されている。
【0032】
また、容器本体110は、下端が閉じ(底部110B)上端が開放され(開放端110D)、外側の形状が円柱状で中空の本体収容部(第1の収容部)110Aを有する。
また、覆体120は、下端が開放され(開放端120B)上端が閉じられ(天井部120D)、かつ、内側の形状が円柱状で、前記本体収容部110Aの中軸Rと中軸が一致する覆体収容部120Aを有する。
覆体120は覆体収容部120A内に本体収容部110Aを収容可能であり、覆体収容部120Aは本体収容部110Aに対して回転可能である。これにより覆体120は容器本体110に対して中軸Rを中心に回転可能となる。
【0033】
覆体収容部120Aの内側の円柱状の空間には、外側が円柱状の前記本体収容部110Aが、収容される。ここで覆体収容部120Aの円柱状の空間は、前記覆体収容部120Aの外側の形状(円柱状)と略同じ大きさとなっており、詳細は後述するように、本体収容部110Aの側壁の外側に形成された雄ネジ110Cと、覆体収容部120Aの側壁の内側に形成された雌ネジ120Cとが螺合されたとき、本体収容部110Aの外側と覆体収容部120Aの内側が気密となり、香りカプセル100の内部(本体収容部110Aの内側,覆体収容部120Aの内側)が密封される。
【0034】
ストッパリング130の雌ネジ130Cは、容器本体110の雄ネジ110Cと螺合され、容器本体110に対する覆体120のリフト量(円柱状の容器本体110の中軸R方向の移動位置)が決まったときに、ストッパリング130を回動して覆体120側に締め付けることで覆体120を固定することができる。このときストッパリング130は、本体収容部110Aと覆体収容部120Aとの隙間を密封する(
図3(A))。
【0035】
香りカプセル100の容器本体110には、香水又はアロマオイル(香り物質)が染み込んだスポンジ30が収容される(
図2(B))。
香りカプセル100の覆体120の天井部120Dには取付部121が設けられており、この取付部121の孔121Aにストラップ(紐)10を通すことで、香りカプセル100を、
図1(A)に示すように、香りペンダントのトップとして用いることができる。
【0036】
なお、容器本体110の底部110Bには、
図1(B)(C)に示すように十字の溝部110bが形成されており、ストラップ10に代えて、弾力性のあるゴム紐20を孔121Aに通しておき、このゴム紐20を十字の溝部110bに掛けることで、覆体120が容器本体110から外れないようにすることもできる。
【0037】
容器本体110、覆体120、ストッパリング130を組み合わせるに当たっては、まず、容器本体110の雄ネジ110Cにストッパリング130の雌ネジ130Cが螺合され、次いで雄ネジ110Cに覆体120の雌ネジ120Cが螺合される。
なお、容器本体110の開放端110D側は、所定の幅で容器本体110とは異なる色(例えば、赤色)で着色されている(
図2(A)(B)の斜線部分)。この着色された部分は、覆体120の廻し過ぎによって覆体120が容器本体110から外れそうになったときに、外部から視認できるようになっている。
【0038】
また、容器本体110の側壁には、本体収容部110Aの中軸Rの軸方向に
一方の端部(図2(A)の底部110B側)から他方の端部(開放端110D側)に延びる3つの開口部111,112,113が
軸方向に沿って並列に設けられている(
図2(A))。
また、開口部111,112,113は、容器本体110の底部110Bの側が頂点、開放端110Dの側が底辺の二等辺三角形となっており、その底辺は、容器本体110の外周で同一の
円周上(R2)で揃えられている。
また、各開口部111,112,113を構成する二等辺三角形の開口
部は、その高さが軸方向で互いに異な
る(一方の端部が軸方向で互いに異なる位置にある)ように形成されいる。結果、各開口面積Sは、開口部111(高さb1)>開口部112(高さb2)>開口部113(高さb3)となる(
図7参照)。
このように高さの異なる3つの開口部111,112,113を並列に設け、図2(A)中、上端側(他方の端部)の位置を揃えておくことで、覆体120が引き上げられて開口部112の開口面積が拡大し始めたときには、既に開口している開口部111は開口面積が拡大しており、更に覆体120が引き上げられて開口部113が開口しその開口面積が拡大し始めたときには既に開口している開口部111,112もそれぞれ開口面積が拡大している。
また、開口部111,112,113は底辺が揃えられているので、覆体120が引き上げられたとき開口部111,112,113は同時に開口面積の拡大を終了する。
【0039】
香りカプセル100を実際に使用するに当たっては、先ず、本体収容部110Aに香り物質が染み込んだスポンジ30を収容し、この状態で、ストッパリング130を
図2中時計回りに回転させて容器本体110の底部110Bに密着させる。
次いで、本体収容部110Aを覆うように覆体120を被せ、この覆体120を
図2の上方から時計回りに回転させて締め付け、ストッパリング130に密着させる(
図3(A)の覆体120の全閉位置)。
このとき開口部111,112,113は、覆体120の側壁で全て閉ざされ、容器本体110の本体収容部110Aは全閉位置となる。この全閉位置では、本体収容部110Aから気化した香り物質が外部に漏れることはない(密封状態)。
【0040】
密封状態から気化した香り物質(香水等)を外部に放出には、
図3(A)に示す全閉位置の覆体120を、容器本体110に対して
図3中矢印で示す方向(反時計回り)に回転させる。このとき雄ネジ110Cと雌ネジ120Cの働きによって、覆体120が引き上げられる。
【0041】
その後、覆体120のリフト量(h)が全閉位置(h0)から第1の開放位置h1になるまでの間、開口部111のみが開口することになり、開口幅Yは、
図7(B)の実線に従って大きくなる(h0<h<h1)。
このときの香りカプセル100が開口する面積(開口面積)Sは、
図8(A)の二次曲線(実線)に従って大きくなる。
なお、
図8(A)の破線は、開口部を
図9(A)で示すような長方形にした場合(開口部114,114)の開口面積Sの変化を示す。
この実施の形態では、開口部111の形状は二等辺三角形であるから、開口幅Yはリフト量hに比例して大きくなり、これに伴い、開口面積Sは二次曲線に従って大きくなる。
【0042】
図3(A)に示す状態から覆体120を回転させて
図3(B)に示す位置まで引き上げた後、ストッパリング130を図中矢印で示す方向(反時計回り)に、ストッパリング130の上面が覆体120の開放端120Bに密着するまで回転させる。
この回転によりストッパリング130は、覆体120をこの位置で固定すると共に、覆体120と容器本体110の隙間を封じて香り物質が余分に漏れ出ることを防止する(
図3(C))。
【0043】
この実施の形態では、
上述したように本体収容部110Aには、開口部111の他、開口部112,113が
軸方向に並列に形成されている。
開口部111,112,113は、高さの異なる3つの二等辺三角形となっている
ため、開口面積Sは、開口部111のみが開口しているときには1
つの二次曲線に従って
拡大するが、開口部112が開口し始め
たときには既に開口している開口部111も開口面積が拡大しているため開口面積
(各開口面積の総和)Sは、2つの二次曲線を重ね合わせた曲線に従って大きくなる。
更に、
リフト量hが大きくなり図7のh2~h3間(所定リフト範囲)に至ると開口部113
が開口し始め
、この時点で既に開口している開口部111,112も開口面積が拡大しているため開口面積(各開口面積の総和)Sは、3つの二次曲線を重ね合わせた曲線に従って大きくなる(
図8(B))。
これによりリフト量hに応じた開口面積S(開口部からの香り物質の放出量に対応)の変化を
、ウェーバー・フェヒナーの法則に近づけることができ、覆体120のリフト量(覆体120の回転角度)と香りの強さがあたかも比例しているよな感覚で香りの強さの調整ができる。
【0044】
図4には、第1の開放位置h1で固定されている香りカプセル100の覆体120を第2の開放位置h2まで引き上げる手順を示す。
この場合にも、
図4(A)に示すように覆体120を容器本体110に対して、同図中矢印で示す方向(反時計回り)に回転させることで、覆体120は、第1の開放位置h1から第2の開放位置h2まで引き上げられる。
このとき開口部111のみならず開口部112も開口することになり、開口部111,112による開口幅Yは、
図7(B)の実線に従って変化する(h1<h<h2)。
よって、第1の開放位置h1から第2の開放位置h2に至るまでの間、本体収容部110Aの開口面積Sは
図8(B)の一点鎖線で示す曲線部分(2つの二次関数の和)に従って大きくなる。
【0045】
覆体120が第2の開放位置h2まで引き上げるされた状態(
図4(B))でストッパリング130を図中矢印で示す方向(反時計回り)に回転させ、ストッパリング130を覆体120の開放端120Bに密着させる。
このとき覆体120のリフト量が固定され、覆体120と本体収容部110Aとの隙間から香り物質が余分に漏れ出ることが防止できる(
図4(C))。
【0046】
図5は、第2の開放位置h2で固定されている覆体120を全開位置(第3の開放位置h3)まで引き上げる手順を示す。このとき香り物質は、開口部111,112だけでなく開口部113からも外部に放出される。
なお、覆体120が第3の開放位置h3に達すると、覆体120の開放端120Bから本体収容部110Aの着色部分(赤)が視認可能になり、これ以上回すと覆体120が脱落する虞があることが使用者に示される。
【0047】
リフト量が大きくなり第2の開放位置
h2から第3の開放位置
h3まで
引き上げられる間(所定リフト範囲)、開口部111,112,113による開口幅Yは、
図7(B)の実線で示すようにリフト量(h)に応じて変化する(h2<h<h3
:所定リフト範囲)。
リフト量hが所定リフト範囲(第2の開放位置h2から第3の開放位置h3)の間、本体収容部110Aの開口面積Sは
図8(B)の曲線部分(3つの二次曲線の和:二点鎖線)に従って大きくな
る。
【0048】
覆体120が第3の開放位置h3まで引き上げるされた状態(
図5(B))でストッパリング130を図中矢印で示す方向に回転させることで、覆体120のリフト量が固定され、覆体120と本体収容部110Aとの隙間から香り物質が余分に漏れ出ることが防止できる(
図5(C))。
【0049】
図6は、覆体120のリフト量(h)と本体収容部110Aの開口部111,112,113(
図6では開口部111のみ示す。)の開口面積S(図中黒塗りで示す)との関係を示す断面図である。
容器本体110の本体収容部110Aの開口部111,112,113は、
図7(A)の展開図に示すように底辺の長さaが同一で、高さb(b1,b2,b3)が異なる3つの二等辺三角形が並列に形成され
ている。
このように並列に形成された三角形の高さbを互いに異ならせることで、リフト量が大きくなるに従い開口を開始する中軸の軸方向の端部
(一方の端部)の位置(頂点)が異なることになる。
よって、開口部112が開口し始めて開口面積が拡大している間は、この時点で既に開口している開口部111の開口面積は拡大を続ける。また、リフト量hが所定リフト範囲(h2<h<h3)に至って開口部113が開口し始めその開口面積が拡大している間は、この時点で既に開口している開口部111,112の開口面積も拡大を続けている。
なお、開口部111,112,113をなす各二等辺三角形は、底面が同一
円周上となっている(R2の線上
=他方の端部)。これにより最大のリフト量
に至るまでは、開口部111,112,113が順次開口面積の拡大を始め、最大のリフト量に至ったとき3つの開口部111,112,113では同時に開口面積の拡大が終了する。
【0050】
高さが異なる3つの二等辺三角形で3つの開口部111,112,113を形成することで、3つの開口部は、
図7(B)に示すように重ね合わされ、開口幅Yは、リフト量hに対して段階的(h0→h1→h2→h3)にその変化率が大きくなる。
この場合の開口面積Sは、リフト量hに基づいて、次式に従って算出される。
【0051】
【数1】
従って、覆体120のリフト量hが大きくなるに従って開口部111,112,113を合わせた開口面積Sは、1つの二次曲線、2つの二次曲線を重ね合わせた曲線、3つの二次曲線を重ね合わせた曲線に従ってそれぞれ大きくなる。
【0052】
このようにリフト量hに対して開口面積Sを二次曲線を重ね合わせた曲線に従って大きくすることで以下のような効果が期待できる。
香り(臭い)物質の実際の濃度と、人が感じる香り(臭い)の強さとの関係を示す法則としてウェーバー・フェヒナーの法則が知られている。ウェーバー・フェヒナーの法則によれば、人の嗅覚は物質濃度の対数に比例するとされている。
この実施の形態では、複数の二次曲線を重ね合わせた曲線に従って開口面積Sを大きくしているので、人が感じる香りの強さに比例してリフト量hを変化させると、香り物質の放出量が複数の二次曲線を重ね合わせた曲線に従って大きくなるので、ウェーバー・フェヒナーの法則に従った香りの調整に近づけることができる。
【0053】
この結果、香り物質(香水、アルマオイル等)が十分に充填されているときには、人が感じる香りの強さを、あたかもリフト量hに比例して大きくなったように感じることができ、直感的な香りの強さの調整が可能になる。
【0054】
また、香りの強さは、時間が経過するに従って低下するが、この実施の形態の香りカプセル100では、覆体120のリフト量に対しする開口面積Sを急激に大きくできるので、覆体120のリフト量を調整すれば、香りの強さを常に一定に維持することができる。
【0055】
この第1の実施の形態の香りカプセル100では、開口部111,112,113を、
図7(A)に示す高さの異なる二等辺三角形としているが、
図9(A)(B)に示すように軸方向に延びる大きさ/形状が同一の2つの
長方形(四角形)の開口部114、又は、軸方向に延びる大きさ/形状が異なる2つの
長方形の開口部115a,115bを並列に形成することもできる。
特に、大きさ/形状が異なる2つの
開口部115a,115bとした場合、
開口部115aと
開口部115bは、開口
し始めて開口面積が拡大する軸方向の
一方の端部の位置(
図9中、下底の位置)が異な
っている。
また、開口部115a,115bは、軸方向の他方の端部の位置(図9中、上部側の位置)が同じになっており、開口面積の拡大が終了するときのリフト量が一致する。
開口部を同じ形状の2つの長方形
(開口部114,114
)とした場合(
図9(A))開口面積Sは、
図10の破線に従って大きくなるが、
開口部115a,115bを長さが異なる2つの
長方形(高さh
と高さh/2)
とした場合には(
図9(B))
、リフト量hがh0~h3/2の間は開口面積Sは
図10中二点鎖線に従って
拡大しリフト量hがh3/2を超えh3に至るまでの間(所定リフト範囲)は、開口部115a
のみならず開口部115bの開口面積も
拡大し、最大のリフト量h3に至ると2つの開口部115a,115bは、開口面積の拡大を同時に終了する。
【0056】
図11(A)は、香りカプセル100の本体収容部110Aに形成された3つの二等辺三角形の開口部111,112,113(図中一点鎖線で示す。)に代えて、多数の孔を形成した例を示す。
【0057】
多数の孔116,116…は、本体収容部110Aの側壁に、その中軸Rの軸方向に沿って多数分散し、かつ、中軸Rの周方向(R1)にも分散するように設けられている。
周方向の孔116,116…の数(n)は、本体収容部110Aの底部110Bから開放端110Dに向かって多くなっている(密度が徐々に高くなる。)。
これにより覆体120のリフト量に対して香り物質の放出量を二次関数的に大きくすることができる。
【0058】
図12は、覆体120の開放端120Bとストッパリング130との間に生じ得る隙間を完全に埋めるパッキン140を設けた変形例を示す。
パッキン140を配することで、覆体120を所望のリフト量にて固定した際に、ストッパリング130と覆体120の開放端120Bの隙間を完全に埋めることができ、本体収容部110Aから不要に香り物質が漏れ出ることを確実に防止できる。なお、パッキン140は、予めストッパリング130に接着させたり、埋め込んでもよい。
【0059】
図13は、
図12のパッキン140に代えてOリング150を用いた変形例を示す。
Oリング150を用いても、ストッパリング130と覆体120の開放端120Bの隙間を確実に埋めることができ、本体収容部110Aから不要に香り物質が漏れ出ることがなくなる。
なお、香りカプセル100の覆体120を強磁性体の金属で構成するのであれば、ストッパリング130としてリング型のネオジム磁石等を用いてもよい。
【0060】
(第2の実施の形態)
次に本願の第2の実施の形態に係る香りカプセル200について、
図14から
図19を用いて説明する。
図14は、香りカプセル200を示す斜視図である。
この
図14に示すように、香りカプセル200は容器本体210と覆体220とによって構成されており、本体収容部210Aに香り物質(香水、アロマオイル等)を染み込ませたスポンジ30が収容される。
【0061】
この第2の実施の形態に係る香りカプセル200では、第1のリフト手段として、本体収容部210A側壁に突起(係止部)212が形成されている。
一方、本体収容部210Aを外側から覆う覆体収容部220Aの側壁には、中軸Rの軸方向(
図14中、上下方向)に延びるスライド溝222が、第2のリフト手段として形成されている。
また、スライド溝222には、中軸Rに対して周方向に延びる5つのロック溝223a~223eが連設され、このうち最下部のロック溝223eには、覆体220の底部(開放端)220Bにて開口し、軸方向に延びる取付溝224が連設されている。
【0062】
突起212が、取付溝224,ロック溝223eを通ってスライド溝222に達すると、覆体220は軸方向に上下動が可能となる。
突起212が、スライド溝222からロック溝223a~223eに移動すると、覆体220は周方向に回転可能となる。
【0063】
突起212がスライド溝222内で上下方向に移動し、5つのロック溝223a~223eの何れかの分岐する位置で上下動を止めると覆体220は、容器本体210に対して周方向に回転可能になる。このとき覆体220は、突起212が何れかのロック溝223a~223eに移動することで当該ロック溝223a~223eの位置に応じたリフト位置で固定(ロック)される。
【0064】
図15(A)は、突起212とスライド溝222、ロック溝223との位置関係を示す側壁の壁面に沿った断面図、
図15(B)は軸方向に沿った断面図である。
突起212は、円柱状の下部212Aに雄ネジが連設され、薄い箱型の上部212Bによってロック溝223a~223e内で係止できるようになっている。
【0065】
本体収容部210Aの側壁には雌ネジが形成された凹部215が設けられ、下部212Aの雄ネジが、凹部215の雌ネジと螺合され、この螺合部分に接着剤が塗布されて、突起212は本体収容部210Aの側壁に固定される。
【0066】
突起212が幅広に形成された取付溝224、スライド溝222内にあるときには、突起212は自在に移動可能である。
突起212が、スライド溝222からロック溝223a~223eの中央部(幅狭)223N内に移ったときには、突起212は周方向に移動可能であるが、幅が狭い分、強い力で回転させる必要がある。
突起212がロック溝223a~223eの端部(幅広)223Wに至ると突起212には遊びが生じ、突起212はロック溝223の端部223W内で保持される。
【0067】
ロック溝223a~223e内でのロック状態を解除するために、覆体220を強い力で回転させると突起212は、端部223Wから中央部223Nに移動し、更に覆体220を回転させることで、突起212を再びスライド溝222に至らせることができる(このとき覆体220の上下動が可能になる)。
【0068】
香りカプセル200を使用するに当たっては、前述したように、先に容器本体210の本体収容部210Aに香り物質を染み込ませたスポンジ30を収容しておく(
図14)。
次いで、突起212を、覆体220側の取付溝224、ロック溝223e内を移動させてスライド溝222内に至らせる。
突起212がスライド溝222内にある状態で、
図16(A)に示すように、覆体220が容器本体210の底部フランジ210Bに接するまで引き下げる(このとき突起212は、スライド溝222の最上部に当接する)。
この状態から
図16(A)中の矢印で示す方向(時計回り)に回転させると突起212がロック溝223a内を周方向に移動し、端部(223W)に至ると覆体220が固定(ロック)され密封状態が保たれる(
図16(B))。
【0069】
香りカプセル200から香り物質を放出させる際には、
図16(B)に示す密封状態を解除するために、先ず、ロック状態にある覆体220を反時計回りに回転して、突起212をロック溝223aからスライド溝222内に戻す。このとき覆体220は軸方向(上下方向)にスライド可能となる(
図17(A))。
【0070】
次いで、覆体220を所望のリフト量hだけ引き上げて、突起212を、所望のリフト量に対応するロック溝(図示例ではロック溝223b)が分岐する位置に至らせる(
図17(B))。
この状態から覆体220を図中矢印で示す方向(反時計回り)に回転させて突起212をロック溝223b内で移動させて端部に至らせる。このとき突起212はロック溝223b内で固定され、覆体220の上下動(軸方向の移動)が禁止される(
図17(C))。
このように覆体220が軸方向に所望のリフト量hだけ引き上げられて固定されると、容器本体210に設けられた開口部211,211がリフト量hに応じて開口することになる。
【0071】
突起212がロック溝223b内で固定されている状態からロック溝223e(全開位置)にするのであれば、
図17(C)の状態にある覆体220を図中時計回りに回転させて、再び突起212をスライド溝222内に至らせる(
図18(A))。
【0072】
この状態から、覆体220を
図18(A)の矢印に示す方向に引き上げて、突起212をスライド溝222の下端に至らせる(
図18(B))。このとき突起212はロック溝223e内で周方向に移動可能となる。
この状態から覆体220を図中矢印で示す方向(時計回り)に回転させると、突起212がロック溝223e内を図中右側に移動し、端部で固定される(
図18(C))。
このように覆体220が軸方向に全開位置まで引き上げられ。その後、覆体220が回転して固定されると、容器本体210に形成されている開口部211,211,211は全開となり、このときの開口面積Sに応じて香り物質が放出されることになる。
【0073】
なお、この第2の実施の形態の香りカプセル200では、覆体220が、容器本体210に対して軸方向に引き上げられたとき、開口部211のみならず、スライド溝222及びロック溝223a~223eも、本体収容部210A内の気体(香り)を容器外部に放出する開口部としても機能する。
【0074】
スライド溝222は軸方向に延びる縦長となっているため、リフト量に応じて、スライド溝222の開口面積が大きくなる。
よって、開口部211,211を形成するに当たっては、スライド溝222によって開口面積が大きくなる分、開口部211,211を小さく形成しておけばよい。
【0075】
図19は、第2の実施の形態の変形例に係る香りカプセル300に係る変形例を示すものである。
この変形例の香りカプセル300では、取付溝224が設けられておらず、また、突起212に代えて逆止突起312が形成されている点が香りカプセル200と異なる。
覆体320を容器本体310の本体収容部310Aで覆うに当たっては、逆止突起312をスライド溝322の下方で位置合わせし、この状態から覆体320を強く押し下げる。
【0076】
このとき本体収容部310A側に形成された逆止突起312は、
図19(B)に示すように、覆体収容部320Aの側壁に形成されたスライド溝322に嵌め込まれるが、一旦嵌め込まれると、逆方向に抜けないようになる。
【0077】
この香りカプセル300では、覆体320が本体収容部310Aに取り付けられると逆止突起312の働きによって外れなくなるため、香り物質の補充は、本体収容部310Aに形成された開口部311,311,311から行われることになる。
【0078】
なお、第2の実施の形態に係る香りカプセル200は、第1の実施の形態の雄ネジ110Cに代えて本体収容部210Aの突起212を第1のリフト手段とし、第1の実施の形態の雌ネジ120Cに代えて、覆体220のスライド溝222,ロック溝223a~223eを第2のリフト手段とし、ストッパリング130を省いた点が、第1の実施の形態の香りカプセル200と異なる。その他の容器本体210,覆体220等の構成は、第1の実施の形態の香りカプセル100と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
なお、この第2の実施の形態では、スライド溝222を覆体120側に、突起212を容器本体210側に形成した例をあげて説明したが、覆体220側に突起、容器本体210側にスライド溝を形成することも可能である。
【0079】
また、上述した第1、第2の実施の形態の香りカプセル100,200では共に、本体収容部の外側の形状、覆体収容部の内側の形状を共に円柱状としたが、容器本体に対して覆体が回転(回動)可能であるならば、その断面形状は円形に限られない。容器本体に対して回転(回動)可能な断面形状としては、角数の多い多角形とすることが好ましい。
【0080】
また、上述した第1、第2の実施の形態の香りカプセル100,200では共に、開口部を容器本体側の側壁に形成する例をあげて説明したが、覆体側に形成し、これを本体収容部側の側壁で閉塞することで本体収容部を密封できるようにしてもよい。
【0081】
また、上述した第1、第2の実施の形態の香りカプセル100,200では共に、本体収容部に香り物質(香水、アロマオイル等)を染み込ませたスポンジを収容する例を示したが、香り物質を染み込ませた他の素材、香りを発する固体、ゲル状の香り物質、ゾロ状の香り物質等、その如何なるものを収容しても本発明の目的は達せられる。
【符号の説明】
【0082】
30 スポンジ
100,200 香りカプセル(密封容器)
110,210 容器本体(第1の容器)
110A,210A 本体収容部(第1の収容部)
110C 雄ネジ(第1のリフト手段)
111,112,113 開口部
116 孔
120,220 覆体(第2の容器)
120A,220A 覆体収容部(第2の収容部)
120C 雌ネジ(第2のリフト手段)
130 ストッパリング(ストッパ部材)
130B 段差(凹部)
130C 雌ネジ(第2のリフト手段)
140 パッキン(シール部材)
150 Oリング(シール部材)
212 突起(係止部:第1のリフト手段)
222 スライド溝(第2のリフト手段)
223 ロック溝
【要約】
【課題】 内部に充填された香り物質が気化して外部に放出される香りの強さを調整可能な香りカプセルを提供する。
【解決手段】
香りカプセル100は容器本体110と覆体120とからなる。容器本体110は上端が開放された円柱状の容器で、内部に香り物質が収容される。覆体120は下端が開放された円柱状の容器で容器本体110の本体収容部110Aを覆う。本体収容部110Aの側壁には開口部111,…が形成されている。全閉状態では、覆体収容部120Aの側壁によって開口部111,…は閉じられる。本体収容部110A外側の雄ネジと覆体収容部120A内側の雌ネジは螺合されている。覆体120を容器本体110に対して回転させると容器本体110に対し覆体120が上下動する。覆体120のリフト量hに応じて開口部111,…の開口面積Sが調整され、開口部111,…から放出される香り物質の量が定まる。
【選択図】
図1