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特許7393841手術支援装置に対するドレープの取付構造及びドレープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】手術支援装置に対するドレープの取付構造及びドレープ
(51)【国際特許分類】
   A61B 46/10 20160101AFI20231130BHJP
【FI】
A61B46/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023506573
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014133
【審査請求日】2023-01-31
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 円朗
(72)【発明者】
【氏名】岸本 力哉
(72)【発明者】
【氏名】森川 利昭
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0202009(US,A1)
【文献】国際公開第2011/121695(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0036452(KR,A)
【文献】特開2003-325543(JP,A)
【文献】特開2006-061272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 46/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連結アームを有する装置本体と前記装置本体に支持されたホルダーとを備えセパレーターが前記ホルダーに着脱可能にされ手術時に前記ホルダーと前記装置本体がドレープによって覆われる手術支援装置に対するドレープの取付構造であって、
前記ドレープはフィルム状のカバーと前記ホルダーの一端部に取り付けられ挿通孔が形成されたフードとを有し、
前記セパレーターには押付面を有し前記フードに密着可能な装着部と前記装着部から突出された挿通部とが設けられ、
前記フードは前記セパレーターの前記ホルダーに対する着脱方向における一方の面が被押付面として形成された環状の表面部と前記ホルダーの一端部を外周側から覆う筒状部とを有し前記挿通孔が形成された装着ベースと、外周部が前記着脱方向において前記表面部と前記筒状部に挟まれた状態で保持されると共に前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられる前の状態において前記挿通孔を閉塞する閉塞シートとを有し、
前記表面部と前記筒状部が柔軟性を有する材料によって形成され、
前記セパレーターは前記挿通部が前記閉塞シートを突き破ることにより前記挿通孔に挿通され前記押付面が前記被押付面に密着され前記装着部によって前記挿通孔が閉塞された状態で前記ホルダーに取り付けられる
手術支援装置に対するドレープの取付構造。
【請求項2】
前記カバーと前記閉塞シートが同一の材料によって形成された
請求項1に記載の手術支援装置に対するドレープの取付構造。
【請求項3】
前記挿通部の少なくとも先端部が先細りの形状に形成された
請求項1又は請求項2に記載の手術支援装置に対するドレープの取付構造。
【請求項4】
前記閉塞シートにミシン目が形成された
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の手術支援装置に対するドレープの取付構造。
【請求項5】
前記ミシン目が十字状に形成された
請求項4に記載の手術支援装置に対するドレープの取付構造。
【請求項6】
前記ホルダーにロック機構が設けられ、
前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられた状態において前記セパレーターが前記ロック機構によって前記ホルダーにロックされる
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の手術支援装置に対するドレープの取付構造。
【請求項7】
複数の連結アームを有する装置本体と前記装置本体に支持されたホルダーとを備え押付面が形成された装着部と挿通部を有するセパレーターが前記ホルダーに着脱可能にされた手術支援装置に対して用いられ手術時に前記ホルダーと前記装置本体を覆うドレープであって、
フィルム状のカバーと前記ホルダーの一端部に取り付けられ挿通孔が形成されたフードとを有し、
前記フードは前記セパレーターの前記ホルダーに対する着脱方向における一方の面が被押付面として形成された環状の表面部と前記ホルダーの一端部を外周側から覆う筒状部とを有し前記挿通孔が形成された装着ベースと、外周部が前記着脱方向において前記表面部と前記筒状部に挟まれた状態で保持されると共に前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられる前の状態において前記挿通孔を閉塞する閉塞シートとを有し、
前記表面部と前記筒状部が柔軟性を有する材料によって形成され、
前記セパレーターの前記ホルダーへの取付時に前記閉塞シートが前記挿通部によって突き破られ前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられた状態において前記被押付面に前記押付面が密着された状態で前記挿通孔が前記装着部によって閉塞される
ドレープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の連結アームを備えた手術支援装置に対するドレープの取付構造及びこれに用いられるドレープについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術支援装置を用いた外科手術が普及しつつある。このような手術支援装置は、順に回動可能又は回転可能に連結された複数の連結アームを備え、連結アームがアクチュエーター等の駆動力によって回動され、連結方向における一端に位置された連結アームには手術具を保持するためのホルダーが設けられている。ホルダーには患者の体腔に一部(先端部)が挿入される手術具がセパレーターやアダプターを介して取り付けられることにより保持される。手術具としては内視鏡や鉗子等が手術の種類や状況に応じて使用される。
【0003】
手術支援装置において、複数の連結アームがそれぞれ所定の方向へ回動又は回転されると、連結アームの動作に伴って手術具の位置や姿勢が変化され、患者の体腔に挿入された手術具によって外科手術が行われる。
【0004】
上記のような手術支援装置を用いた外科手術は、一般に、手術室に設置された手術支援装置をマスタースレーブ方式により術者(医師)が遠隔から操作することによって行われる。このような外科手術が行われる際には、手術具の位置や姿勢の基準点とされるピボット点が設定される。
【0005】
ピボット点は患者の体腔に形成され手術具が挿入されるポートに略一致する位置であり、トロッカーが使用される場合にはトロッカーの位置に略一致される。従って、手術具が患者の体腔に挿入される状態においては、手術具の一部が常にピボット点を通るように手術具の位置や姿勢が制御され、手術具の一部がピボット点を通ることにより患者の体表付近の組織に対する負荷の発生が防止されて安全性が確保される。
【0006】
上記のような手術支援装置は手術時に滅菌されたドレープによって覆われる(例えば、特許文献1参照)。ドレープは透明なフィルム状に形成されたカバーとカバーに取り付けられたフードとを有している。特許文献1においては、カバーがドレープ本体として示され、フードがマウントカバーとして示されている。
【0007】
手術支援装置はホルダーの一部にフードが取り付けられた状態においてホルダーと装置本体がカバーによって覆われ、滅菌状態が保たれる。従って、ドレープの内部は清潔領域としてドレープの外側の不潔領域に対して区分される。
【0008】
フードには挿通孔が形成されており、フードにはセパレーターやアダプターが不潔領域側から取り付けられる。セパレーターやアダプターには手術具が取り付けられ、手術具がセパレーターやアダプターを介してホルダーに取り付けられる。
【0009】
このようにフードにセパレーターやアダプターが取り付けられセパレーターやアダプターに手術具が取り付けられることにより、フードに形成された挿通孔を介して手術具とホルダーの電気的な接続や機械的な結合が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2021-171345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、手術支援装置においては、フードに手術具とホルダーの電気的な接続や機械的な結合を行うための挿通孔が形成されているため、ホルダーへのセパレーターやアダプターの取付時等に誤って挿通孔に作業者の指等が挿入され、挿入された指等がホルダーに接触するおそれがある。
【0012】
このような指等のホルダーへの接触が生じてしまうと、清潔領域を保持することができなくなってしまう。
【0013】
そこで、本発明手術支援装置に対するドレープの取付構造及びドレープは、ホルダーと装置本体の存在領域である清潔領域を保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る手術支援装置に対するドレープの取付構造は、複数の連結アームを有する装置本体と前記装置本体に支持されたホルダーとを備えセパレーターが前記ホルダーに着脱可能にされ手術時に前記ホルダーと前記装置本体がドレープによって覆われる手術支援装置に対するドレープの取付構造であって、前記ドレープはフィルム状のカバーと前記ホルダーの一端部に取り付けられ挿通孔が形成されたフードとを有し、前記セパレーターには押付面を有し前記フードに密着可能な装着部と前記装着部から突出された挿通部とが設けられ、前記フードは前記セパレーターの前記ホルダーに対する着脱方向における一方の面が被押付面として形成された環状の表面部と前記ホルダーの一端部を外周側から覆う筒状部とを有し前記挿通孔が形成された装着ベースと、外周部が前記着脱方向において前記表面部と前記筒状部に挟まれた状態で保持されると共に前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられる前の状態において前記挿通孔を閉塞する閉塞シートとを有し、前記表面部と前記筒状部が柔軟性を有する材料によって形成され、前記セパレーターは前記挿通部が前記閉塞シートを突き破ることにより前記挿通孔に挿通され前記押付面が前記被押付面に密着され前記装着部によって前記挿通孔が閉塞された状態で前記ホルダーに取り付けられるものである。
【0015】
これにより、セパレーターがホルダーに取り付けられる前の状態においてフードの挿通孔が閉塞シートによって閉塞されセパレーターがホルダーに取り付けられた状態において挿通孔が装着部によって閉塞される。
【0016】
本発明に係るドレープは、複数の連結アームを有する装置本体と前記装置本体に支持されたホルダーとを備え押付面が形成された装着部と挿通部を有するセパレーターが前記ホルダーに着脱可能にされた手術支援装置に対して用いられ手術時に前記ホルダーと前記装置本体を覆うドレープであって、フィルム状のカバーと前記ホルダーの一端部に取り付けられ挿通孔が形成されたフードとを有し、前記フードは前記セパレーターの前記ホルダーに対する着脱方向における一方の面が被押付面として形成された環状の表面部と前記ホルダーの一端部を外周側から覆う筒状部とを有し前記挿通孔が形成された装着ベースと、外周部が前記着脱方向において前記表面部と前記筒状部に挟まれた状態で保持されると共に前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられる前の状態において前記挿通孔を閉塞する閉塞シートとを有し、前記表面部と前記筒状部が柔軟性を有する材料によって形成され、前記セパレーターの前記ホルダーへの取付時に前記閉塞シートが前記挿通部によって突き破られ前記セパレーターが前記ホルダーに取り付けられた状態において前記被押付面に前記押付面が密着された状態で前記挿通孔が前記装着部によって閉塞されるものである。
【0017】
これにより、セパレーターがホルダーに取り付けられる前の状態においてフードの挿通孔が閉塞シートによって閉塞されセパレーターがホルダーに取り付けられた状態において挿通孔が装着部によって閉塞される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セパレーターがホルダーに取り付けられる前の状態においてフードの挿通孔が閉塞シートによって閉塞されセパレーターがホルダーに取り付けられた状態において挿通孔が装着部によって閉塞されるため、ホルダーと装置本体の存在領域である清潔領域を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図2乃至図9と共に本発明手術支援装置に対するドレープの取付構造及びドレープの実施の形態を示すものであり、本図は、手術支援装置の使用状態を示す概略斜視図である。
図2】手術支援装置の概略斜視図である。
図3】ホルダーの分解斜視図である。
図4】ホルダーと装置本体がドレープによって覆われた状態をセパレーターとともに示す斜視図である。
図5】ドレープの平面図である。
図6】フード等を示す断面図である。
図7】フード等を示す斜視図である。
図8】セパレーターがホルダーに取り付けられる前の状態を示す断面図である。
図9】セパレーターがフードを介してホルダーに取り付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明手術支援装置に対するドレープの取付構造及びドレープを実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0021】
以下に示した実施の形態は、本発明に用いられる手術支援装置を手術台に固定されて使用されるタイプに適用した例を示す。但し、本発明に用いられる手術支援装置は適用範囲が手術台に固定されて使用されるタイプに限られることはなく、手術室の床等に設置されて使用されるタイプや手術室の天井や壁面に取り付けられて使用されるタイプにも適用することができる。
【0022】
尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0023】
<手術支援装置等の概略構成>
先ず、手術支援装置1等の概略構成について説明する(図1及び図2参照)。
【0024】
手術室には手術台100が設置され、手術台100には患者200が、例えば、仰向けの状態で横たえられている。手術台100の側部には固定用レール100aが設けられている。患者200の体腔201、例えば、腹壁201aにはポート202が形成される。ポート202には外科手術が行われるときに後述する手術具の一部(先端部)が挿入される。ポート202は手術具の一部が挿入される小孔である。
【0025】
手術支援装置1は装置本体2とホルダー3を有している。装置本体2の内部には、例えば、図示しない一つの電動モーターと図示しない複数の空気圧アクチュエーターとが配置されている。
【0026】
装置本体2は手術台100に固定可能にされた固定ベース4と固定ベース4に連結されたアーム体5とを有している。
【0027】
固定ベース4は内部に所定の各機構等が設けられた略直方体状のベース本体6とベース本体6に回転可能に支持された台座7とベース本体6から突出されたクランパー8とを有している。クランパー8は上側クランプ部8aと下側クランプ部8bを有し、上側クランプ部8aと下側クランプ部8bの少なくとも一方が他方に離接する方向へ移動可能にされている。
【0028】
ベース本体6にはクランパー8が設けられた面と反対側の面から図示しないエアー吸入管が突出されている。エアー吸入管は吸入チューブを介してコンプレッサーに接続される。従って、固定ベース4の内部にはコンプレッサーから圧縮空気が供給される。固定ベース4の内部に供給された圧縮空気は固定ベース4の内部を通ってアーム体5の内部へ向かいアーム体5の各部を動作させる駆動力として用いられる。
【0029】
手術支援装置1はクランパー8の上側クランプ部8aと下側クランプ部8bが固定用レール100aを上下から挟持することにより手術台100に固定される。
【0030】
尚、手術支援装置1は、例えば、固定ベース4が図示しない台車(スタンド)に取り付けられることにより台車によって搬送され、滅菌室に搬送されて滅菌処理が行われた状態で手術室に搬送されて手術において使用される。
【0031】
台座7はベース本体6に垂直方向に延びる軸S1を支点として回転可能に支持され、一部が固定ベース4の上面より上方に位置されている。台座7は、例えば、電動モーターの駆動力によって固定ベース4に対して回転される。
【0032】
アーム体5は第1の連結アーム9と第2の連結アーム10と第3の連結アーム11を有している。尚、アーム体5における連結アームの数は三つに限られることはなく、複数であればよく、二つでも四つ以上であってもよい。
【0033】
第1の連結アーム9は長手方向における一端部が第1の連結部9aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部9bとして設けられている。第1の連結アーム9は第1の連結部9aが台座7に連結され、水平方向に延びる軸S2を支点として台座7に対して回動可能にされている。第1の連結アーム9は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより台座7に対して回動される。
【0034】
第2の連結アーム10は長手方向における一端部が第1の連結部10aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部10bとして設けられている。第2の連結アーム10は第1の連結部10aが第1の連結アーム9の第2の連結部9bに連結され、水平方向に延びる軸S3を支点として第1の連結アーム9に対して回動可能にされる。第2の連結アーム10は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより第1の連結アーム9に対して回動される。
【0035】
第3の連結アーム11は長手方向における一端部が第1の連結部11aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部11bとして設けられている。第2の連結部11bは、例えば、二つの腕部によって構成されている。第3の連結アーム11は第1の連結部11aが第2の連結アーム10の第2の連結部10bに連結され、軸S3に直交する方向に延びる軸S4を支点として第2の連結アーム10に対して回転可能にされる。第3の連結アーム11は、例えば、電動モーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10等の他の動作に応じて回転されるフリーな回転動作を行う部分である。
【0036】
<ホルダーの具体的構成等>
次に、ホルダー3の具体的構成等について説明する(図3参照)。
【0037】
ホルダー3は第3の連結アーム11の第2の連結部11bに回動可能に支持(連結)されている。ホルダー3は外形状が略円柱状に形成され、長手方向(軸方向)における中間部において第2の連結部11bに連結されている。ホルダー3は軸S4に直交する方向に延びる軸S5を支点として第3の連結アーム11に対して回動可能にされている。ホルダー3は、例えば、電動モーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10や第3の連結アーム11等の他の動作に応じて回動されるフリーな回動動作を行う部分である。
【0038】
ホルダー3は一部が回転可能にされ、回転されないベース筒部12とベース筒部12に回転可能に支持された回転部13とベース筒部12に取り付けられた連結筒部14とを有している。
【0039】
ベース筒部12には軸方向に貫通された図示しない軸支持孔が形成されている。
【0040】
回転部13は一部がベース筒部12の軸支持孔に挿通された軸部15と軸部15の一端部に結合された操作部16と軸部15の他端部に結合された着脱部17とを有している。回転部13はベース筒部12と連結筒部14に対して軸S5に直交する軸S6の軸回り方向へ回転可能にされている。回転部13は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより回転可能にされると共に手動によっても回転可能にされている。
【0041】
軸部15にはロック機構18が取り付けられ、ロック機構18の一部が軸部15の外周面から外方に突出されている。ロック機構18における軸部15の外周面から突出された部分は被押圧部18aとして設けられている。軸部15には軸方向に延びる挿入孔15aが形成されている。
【0042】
操作部16には切替釦16aが配置されている。切替釦16aは回転部13の回転を行うための駆動力を切り替える機能を有している。
【0043】
着脱部17は外周面が円周面に形成され、軸方向において開口された結合溝17aを有している。結合溝17aは矩形状に形成されている。結合溝17aには軸部15の挿入孔15aが連通され、結合溝17aにおける開口の大きさは挿入孔15aにおける開口の大きさより大きくされている。
【0044】
連結筒部14は略円筒状に形成され、ベース筒部12に軸部15と着脱部17を覆う状態で取り付けられている。連結筒部14は第3の連結アーム11の第2の連結部11bに支持(連結)されている。連結筒部14のベース筒部12側と反対側の端面は当接面14aとして形成されている。
【0045】
連結筒部14にはロック解除釦14bが配置されている。ロック解除釦14bが操作されることにより、ロック解除釦14bによってロック機構18の被押圧部18aが押圧される。但し、ロック機構18が軸部15の回転方向においてロック解除釦14bと同じ位相に位置された状態でのみロック解除釦14bが操作されたときに被押圧部18aが押圧される。
【0046】
ホルダー3において、切替釦16aが操作されている状態においては回転部13が手動により回転可能にされる。一方、切替釦16aが操作されていない状態においては回転部13が空気圧アクチュエーターの駆動力により回転可能にされる。
【0047】
手術支援装置1の使用者、例えば、医師や補助者等により操作部16が手動により回転されることによって軸部15と着脱部17が一体になって回転され、回転部13がベース筒部12と連結筒部14に対して回転される。
【0048】
上記のように、手術支援装置1においては、軸S1から軸S6までの6軸で各部が回転可能又は回動可能な構成にされているため、ホルダー3に保持される手術具の向き及び位置(姿勢)の自由度が高く、手術を高い精度で迅速に行うことができる。特に、軸S4と軸S5においてフリーな回転動作又は回動動作が行われ軸S4と軸S5が直交するため、ポート202に挿入された手術具の向きや位置が変化されたときや患者200の呼吸状態等によりポート202の向きや位置が変化されたときに患者200の体表付近の組織に対する負荷を低減することができる。
【0049】
また、手術支援装置1においては、アーム体5の手術具から最も遠距離の位置における軸S1での回転が電動モーターの駆動力によって行われ軸S1より手術具に近い位置における軸S2と軸S3と軸S6での回転又は回動が空気圧アクチュエーターの駆動力によって行われる。
【0050】
従って、電動モーターの駆動力より患者200に対する負荷が小さい空気圧アクチュエーターの駆動力によって手術具に近い位置においてアーム体5の動作が行われるため、患者200の体表付近の組織に対する負荷を一層低減することができる。
【0051】
さらに、空気圧アクチュエーターの駆動力によるアーム体5の回転又は回動の箇所が電動モーターの駆動力によるアーム体5の回転の箇所より多くされていることによっても、患者200の体表付近の組織に対する負荷の低減を図ることができる。
【0052】
尚、手術支援装置1においては、電動モーター又は空気圧アクチュエーターに代えて高精度の位置決めが可能な圧電モーター等の超音波モーターが用いられていてもよい。また、超音波モーターが用いられることにより、手術支援装置1における省電力化や小型化を図ることも可能である。
【0053】
<ドレープの構成>
次いで、装置本体2とホルダー3を覆うドレープ19の構成について説明する(図4乃至図7参照)。
【0054】
手術時に、装置本体2とホルダー3は滅菌された状態において滅菌されたドレープ19によって覆われる(図4参照)。
【0055】
ドレープ19はフィルム状のカバー20とカバー20に取り付けられたフード21と一部がカバー20に接着等により接合された複数の巻き付けテープ22とを有している(図5参照)。
【0056】
カバー20は透明な樹脂材料、例えば、ポリエチレン等によって形成され、装置本体2とホルダー3の全体を覆う大きさにされている。カバー20は袋状に形成され、ホルダー3等を覆う側である先端側の略半分の部分である第1の覆い部23の径が先端に近付くに従って小さくなる形状に形成され、基端側の略半分の部分である第2の覆い部24の径が第1の覆い部23の最大の径と同じ径の円筒状に形成されている。第1の覆い部23には先端寄りの位置に貫通孔23aが形成されている(図6参照)。
【0057】
フード21はホルダー3の長手方向における一端部(先端部)に装着される装着ベース25と装着ベース25に保持された閉塞シート26とによって構成されている(図6及び図7参照)。フード21は装着ベース25が第1の覆い部23に形成された貫通孔23aの周囲の部分に外面側から接着等によって取り付けられている。
【0058】
装着ベース25は厚みの薄い円環状の表面部27と円筒状の筒状部28とによって構成され、表面部27と筒状部28が軸方向において閉塞シート26を挟んだ状態で結合されている。表面部27は表面が被押付面27aとして形成されている。
【0059】
表面部27と筒状部28は、例えば、ポリエチレンの発泡材等によって形成されている。従って、装着ベース25は柔軟性(クッション性)を有している。表面部27と筒状部28の外径は同じにされ、表面部27の内径は筒状部28の内径より小さくされている。筒状部28の内部の空間は挿通孔28aとして形成されている。
【0060】
閉塞シート26は径が表面部27と同じ外径の円形状に形成され、例えば、カバー20と同一の材料によって形成されている。カバー20と閉塞シート26が同一の材料によって形成されることにより、カバー20と閉塞シート26を各別の材料によって形成する必要がないため、材料の調達費用が少なくなると共に材料の有効活用を行うことが可能になり、ドレープ19の製造コストの低減を図ることができる。但し、カバー20と閉塞シート26は異なる材料によって形成されていてもよく、閉塞シート26は透明以外の半透明や不透明な材料によって形成されていてもよい。
【0061】
閉塞シート26は外周部が表面部27と筒状部28の間に位置された状態で両者に接着等によって固定され、一定の張力を有した状態で装着ベース25に保持されている。閉塞シート26には表面部27の内側の部分に対応する位置にミシン目29が形成されている。ミシン目29は、例えば、挿通孔28aの中心において交差する十字状に形成され、直交する第1の直線部29aと第2の直線部29bによって構成されている。
【0062】
尚、閉塞シート26に形成されるミシン目の形状は任意であり、例えば、ミシン目が一つの直線部や三つ以上の直線部や少なくとも一つの曲線部によって形成されていてもよい。また、ミシン目は少なくとも一つの直線部と少なくとも一つの曲線部とによって構成されていてもよい。さらに、閉塞シート26にはミシン目が形成されていなくてもよく、例えば、中心部にライン状又は十字状の切込が形成されていてもよい。
【0063】
巻き付けテープ22は第1の覆い部23と第2の覆い部24を結ぶ方向において離隔して位置され、一端部がカバー20に接合されている。
【0064】
<セパレーター等の構成>
続いて、ホルダー3に取り付けられるセパレーター30等の構成について説明する(図1図2及び図4参照)。
【0065】
ホルダー3にはセパレーター30が着脱可能にされている(図4参照)。セパレーター30は樹脂材料によって形成され、ホルダー3に取り付けられる略円板状の装着部31と装着部31の厚み方向における一方の面から突出された挿通部32と装着部31の厚み方向における他方の面から突出された一対の係合部33とを有している。
【0066】
装着部31は外径がホルダー3における連結筒部14の外径と略同じ大きさに形成されている。装着部31の厚み方向における挿通部32側の面は押付面31aとして形成されている。
【0067】
挿通部32は装着部31に連続され矩形のブロック状に形成された結合部34と結合部34から突出された軸状の挿入突部35とによって構成されている。挿入突部35の先端部は先細りの形状に形成された破断用突部35aとして設けられている。尚、挿入突部35は全体が先細りの形状に形成されていてもよい。但し、挿入突部35の先端部のみが先細りの形状に形成されることにより、挿入突部35の高い剛性を確保することができる。
【0068】
挿入突部35には突出方向における中間の部分に溝が形成され、この溝が被ロック部35bとして形成されている。
【0069】
セパレーター30にはアダプター36が着脱可能にされている(図1及び図2参照)。アダプター36は手術具80を保持する機能を有している。
【0070】
アダプター36は、例えば、アッパーケース37とロアーケース38が上下で結合されて成り、一端部がセパレーター30に係合されて取り付けられる被取付部36aとして設けられている。
【0071】
手術具80は、例えば、内視鏡を有するスコープユニットとして設けられ、内部に複数のレンズが配置されたシャフト部81とシャフト部81の一端部に結合されたカメラヘッド82とシャフト部81の中間部に結合されたライトガイド83とを有している。カメラヘッド82の内部には図示しない撮像素子が配置されている。
【0072】
カメラヘッド82には図示しない信号線や電源線であるケーブルが接続され、ライトガイド83には光を導くための図示しないライドガイドケーブルが接続される。
【0073】
手術具80はシャフト部81の先端部が患者200に形成されたポート202から体腔201の内部に挿入される。シャフト部81の先端部が体腔201の内部に挿入された状態において、シャフト部81の先端部から照明光が照射され、撮像素子によって体腔201の内部の状態が撮影される。
【0074】
手術具80はカメラヘッド82がアッパーケース37とロアーケース38によって上下から挟持されることによりアダプター36に保持される。手術具80を保持したアダプター36は被取付部36aが係合部33に係合されることによりセパレーター30に取り付けられる。従って、手術具80はアダプター36とセパレーター30を介してホルダー3に保持される。
【0075】
<ドレープによる被覆状態>
次に、ドレープによる被覆状態について説明する(図4図8及び図9参照)。
【0076】
ドレープ19は装置本体2とホルダー3に被せられる(図4参照)。従って、装置本体2とホルダー3はカバー20の内部に位置された状態でドレープ19によって覆われる。装置本体2とホルダー3がドレープ19によって覆われた状態においては、ホルダー3における連結筒部14の先端部にフード21が取り付けられ、連結筒部14の当接面14aにフード21の閉塞シート26が接した状態にされ、連結筒部14の先端部がフード21の筒状部28によって外周側から覆われる(図8参照)。
【0077】
このようにドレープ19にはホルダー3の一端部に取り付けられるフード21が設けられているため、フード21が装置本体2とホルダー3をドレープ19によって覆うときの目印になり、ドレープ19によって装置本体2とホルダー3を迅速かつ確実に覆うことができる。
【0078】
装置本体2とホルダー3がドレープ19によって覆われた状態において、複数の巻き付けテープ22がそれぞれの位置においてカバー20の外面に巻き付けられ図示しない固定用金具等によって締め付けられる(図4参照)。従って、巻き付けテープ22によってカバー20の捲れ上がり等が防止され、ドレープ19によって装置本体2とホルダー3が覆われた状態が保持される。
【0079】
尚、装置本体2の固定ベース4がクランパー8によって手術台100の固定用レール100aに固定された状態においては、固定ベース4が固定用レール100aに固定された状態で、例えば、クランパー8を含む固定ベース4の全体がドレープ19によって覆われる。
【0080】
装置本体2とホルダー3がドレープ19によって覆われた状態において、セパレーター30がフード21を介してホルダー3に取り付けられる。セパレーター30がフード21を介してホルダー3に取り付けられるときには、セパレーター30の挿通部32によってフード21の閉塞シート26が突き破られ、挿通部32がフード21の挿通孔28aに挿通される(図9参照)。挿通部32には先細りの形状に形成された破断用突部35aが設けられているため、閉塞シート26は破断用突部35aによって閉塞シート26が押し広げられて突き破られる。
【0081】
このとき閉塞シート26にはミシン目29が形成されているため、ミシン目29において閉塞シート26が破断される。
【0082】
フード21の挿通孔28aに挿通された挿通部32は、結合部34がホルダー3における着脱部17の結合溝17aに挿入され挿入突部35がホルダー3における軸部15の挿入孔15aに挿入される。挿入孔15aに挿入された挿入突部35は被ロック部35bにホルダー3のロック機構18の一部が係止され、セパレーター30がホルダー3にロック機構18によってロックされる。セパレーター30がホルダー3にロックされた状態においては、装着部31がフード21における表面部27の被押付面27aに押し付けられ、挿通孔28aがセパレーター30によって閉塞される。
【0083】
このようにセパレーター30はホルダー3に取り付けられた状態においてロック機構18によってホルダー3にロックされるため、セパレーター30がホルダー3に取り付けられた状態においてセパレーター30のホルダー3に対する意図しない変位が規制され、セパレーター30によって挿通孔28aが閉塞された状態を確実に保持することができる。
【0084】
上記のようにセパレーター30がホルダー3にロックされた状態において、ホルダー3のロック解除釦14bが操作されることによりロック機構18が動作され、セパレーター30のロックを解除してセパレーター30をホルダー3から取り外すことが可能にされる。
【0085】
<まとめ>
以上に記載した通り、フード21にはセパレーター30がホルダー3に取り付けられる前の状態において挿通孔28aを閉塞する閉塞シート26が設けられ、セパレーター30は挿通部32が閉塞シート26を突き破ることにより挿通孔28aに挿通され装着部31によって挿通孔28aが閉塞された状態でホルダー3に取り付けられる。
【0086】
従って、セパレーター30がホルダー3に取り付けられる前の状態においてフード21の挿通孔28aが閉塞シート26によって閉塞されセパレーター30がホルダー3に取り付けられた状態において挿通孔28aが装着部31によって閉塞されるため、ドレープ19によって覆われるホルダー3と装置本体2の存在領域である清潔領域を保持することができる。
【0087】
また、閉塞シート26は外周部が装着ベース25に接合され一定の張力を有した状態で装着ベース25に保持されているため、セパレーター30のホルダー3に対する取付時に閉塞シート26が破断用突部35aによって破断され易く、セパレーター30のホルダー3への取付を小さな力で容易に行うことができる。
【0088】
さらに、挿通部32によって突き破られる部分がフード21における装着ベース25の内側の部分であり、フード21が突き破る部分の目印になるため、突き破る目標の部分が明確であり、セパレーター30をホルダー3に正確かつ容易に取り付けることができる。
【0089】
さらにまた、挿通部32の先端部が破断用突部35aとして先細りの形状に形成されているため、挿通部32によって閉塞シート26を突き破り易くなり、セパレーター30をホルダー3に迅速かつ容易に取り付けることができる。
【0090】
また、フード21にミシン目29が形成されているため、ミシン目29において挿通部32によってフード21を突き破り易くなり、セパレーター30をホルダー3に一層迅速かつ容易に取り付けることができる。
【0091】
加えて、ミシン目29が第1の直線部29aと第2の直線部29bによって十字状に形成されており、ミシン目29において挿通部32によってフード21が十字状に突き破られるため、セパレーター30をホルダー3により一層迅速かつ容易に取り付けることができる。
【0092】
また、ドレープ19において、フード21にはセパレーター30がホルダー3に取り付けられる前の状態において挿通孔28aを閉塞する閉塞シート26が設けられ、セパレーター30のホルダー3への取付時に閉塞シート26が挿通部32によって突き破られセパレーター30がホルダー3に取り付けられた状態において挿通孔28aが装着部31によって閉塞される。
【0093】
従って、セパレーター30がホルダー3に取り付けられる前の状態においてフード21の挿通孔28aが閉塞シート26によって閉塞されセパレーター30がホルダー3に取り付けられた状態において挿通孔28aが装着部31によって閉塞されるため、ドレープ19によって覆われるホルダー3と装置本体2の存在領域である清潔領域を保持することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 手術支援装置
2 装置本体
3 ホルダー
9 第1の連結アーム
10 第2の連結アーム
11 第3の連結アーム
18 ロック機構
19 ドレープ
20 カバー
21 フード
22 巻き付けテープ
26 閉塞シート
28a 挿通孔
29 ミシン目
30 セパレーター
80 手術具
【要約】
複数の連結アームを有する装置本体と装置本体に支持されたホルダーとを備えセパレーターがホルダーに着脱可能にされ手術時にホルダーと装置本体がドレープによって覆われる手術支援装置に対するドレープの取付構造において、ドレープはフィルム状のカバーとホルダーの一端部に取り付けられ挿通孔が形成されたフードとを有し、セパレーターにはフードに密着可能な装着部と装着部から突出された挿通部とが設けられ、フードにはセパレーターがホルダーに取り付けられる前の状態において挿通孔を閉塞する閉塞シートが設けられ、セパレーターは挿通部が閉塞シートを突き破ることにより挿通孔に挿通され装着部によって挿通孔が閉塞された状態でホルダーに取り付けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9