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特許7393852複合構造体における微小亀裂生成を軽減するための、樹脂リッチポケット内への改質材料の載置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】複合構造体における微小亀裂生成を軽減するための、樹脂リッチポケット内への改質材料の載置
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/00 20060101AFI20231130BHJP
   B29C 70/02 20060101ALI20231130BHJP
   B29C 70/58 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B32B5/00 A
B29C70/02
B29C70/58
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2015177266
(22)【出願日】2015-09-09
(65)【公開番号】P2016064648
(43)【公開日】2016-04-28
【審査請求日】2018-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】14/493,363
(32)【優先日】2014-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィレンスキー, マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】ミール, サミュエル ジェー.
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】中野 裕之
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-13040(JP,A)
【文献】特許第4356870(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(114)と、
強化フィラメント(120)を含み、前記樹脂の中に少なくとも部分的に埋め込まれた繊維(118)と、
前記繊維に関連付けられた一又は複数の樹脂リッチポケット(132)と、
前記一又は複数の樹脂リッチポケット(132)内に配置された改質材(200)とを備え、前記改質材は、樹脂特性とは異なる少なくとも1つの改質材特性を有し、
前記改質材(200)は、樹脂リッチポケット(132)内のみの改質粒子(204)であり、
前記改質材(200)は、熱硬化モノマーコーティング又は熱硬化プレポリマーコーティングを含む改質コーティングであり、
前記改質コーティングは、繊維トウの一外縁部の一又は複数の強化フィラメントに適用される、複合構造体。
【請求項2】
樹脂(114)と、
強化フィラメント(120)を含み、前記樹脂の中に少なくとも部分的に埋め込まれた繊維(118)と、
前記繊維に関連付けられた一又は複数の樹脂リッチポケット(132)と、
前記一又は複数の樹脂リッチポケット(132)内に配置された改質材(200)とを備え、
前記改質材(200)は、樹脂リッチポケット(132)内のみの改質粒子(204)であり、
前記改質材は、樹脂特性とは異なる少なくとも1つの改質材特性を有し、かつ、
前記改質粒子(204)は、
樹脂弾性率よりも低い改質材弾性率
樹脂熱膨張率(CTE)よりも低い改質材CTE
樹脂靱性よりも高い改質材靱性、及び、
およそ20ミクロンよりも小さい断面幅、という改質材特性のうちの少なくとも1つを有する、複合構造体。
【請求項3】
樹脂(114)と、
強化フィラメント(120)を含み、前記樹脂の中に少なくとも部分的に埋め込まれた繊維(118)と、
前記繊維に関連付けられた一又は複数の樹脂リッチポケット(132)と、
前記一又は複数の樹脂リッチポケット(132)内に配置された改質材(200)とを備え、
前記改質材(200)は、樹脂リッチポケット(132)内のみの改質粒子(204)であり、
前記改質材は、樹脂特性とは異なる少なくとも1つの改質材特性を有し、
前記改質粒子(204)は、樹脂弾性率よりも低い改質材弾性率を有する、複合構造体。
【請求項4】
前記改質粒子(204)は、
樹脂弾性率よりも低い改質材弾性率
樹脂熱膨張率(CTE)よりも低い改質材CTE
樹脂靱性よりも高い改質材靱性、及び、
およそ20ミクロンよりも小さい断面幅、という改質材特性のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の複合構造体。
【請求項5】
前記樹脂リッチポケット(132)は、
一方向性プライ(108)の繊維(118)の間の区域、
一方向性のプライ又はテープの繊維の一又は複数の外縁部に沿った区域、
織布(126)又はクロースの繊維に関連付けられたくぼみ及び/又は隙間(128)内の区域、
積層複合構造体(100)の複合プライ(104)の間の界面の区域、及び、
積層複合構造体におけるプライ段差(110)の区域、のうちの少なくとも1つの中に位置する、請求項2又3に記載の複合構造体。
【請求項6】
複合構造体を製造する方法であって、
製造ツールに繊維(118)を関連付けることと、
前記繊維に関連付けられた樹脂リッチポケット(132)内のみに改質粒子(204)を含むこととを含み、
樹脂リッチポケット(132)内のみに改質粒子(204)を含む前記ステップは、
前記樹脂リッチポケット(132)内のみに改質粒子(204)を載置することと、
前記繊維(118)に樹脂(114)を適用することとを含み、
製造ツールに前記繊維(118)を関連付ける前記ステップ、及び、前記改質材(200)を載置する前記ステップは、
繊維製造装置から前記繊維を引き出している間に、前記繊維(118)に前記改質粒子(204)を適用することを含む、方法。
【請求項7】
複合構造体を製造する方法であって、
製造ツールに繊維(118)を関連付けることと、
前記繊維に関連付けられた樹脂リッチポケット(132)内のみに改質粒子(204)を含むこととを含み、
樹脂リッチポケット(132)内のみに改質粒子(204)を含む前記ステップは、
前記樹脂リッチポケット(132)内に改質粒子と樹脂との混合物を載置することと、
前記繊維(118)の残部に樹脂(114)を適用することとを含み、
製造ツールに前記繊維(118)を関連付ける前記ステップ、及び、前記改質粒子(204)を載置する前記ステップは、
繊維製造装置から前記繊維を引き出している間に、前記繊維(118)に前記改質粒子(204)を適用することを含む、方法。
【請求項8】
樹脂リッチポケット(132)内に前記改質材(200)を含む前記ステップは、
連続的な強化フィラメントを有する前記繊維(118)の一外縁部に一又は複数の連続的な改質フィラメント(208)を適用することと、
前記連続的な強化フィラメント(120)と同一の概略的な方向に沿って、前記改質フィラメントを配向することとを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
樹脂リッチポケット(132)内に前記改質材(200)を含む前記ステップは、
前記繊維のレイアップ中に、前記繊維(118)に前記改質材(200)を適用することを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
樹脂リッチポケット(132)内に前記改質材(200)を含む前記ステップは、
繊維プリフォームのレイアップ中に、前記繊維プリフォーム(130)に前記改質材(200)を適用することを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して複合構造体に関し、より具体的には、複合構造体の微小亀裂生成を軽減するために、製造段階で複合構造体の樹脂リッチポケット内に改質材料を組み込むことに関する。
【背景技術】
【0002】
複合構造体は、典型的には、樹脂マトリクス内に埋め込まれた構造強化繊維を含む。複合レイアップのある領域は、「複合レイアップ内の場所であって、その場所における繊維の体積に対して大きな樹脂の体積を有する場所」と説明されうる、樹脂リッチポケットを含みうる。樹脂リッチポケットは、一方向性プライの一方向性繊維トウ間に、織布の繊維トウの交点に、厚さ方向にテーパされた複合積層板のプライ段差に、及び、他の種類の複合構造体の他の場所に、発生しうる。
【0003】
複合構造体の製造中に、複合レイアップは、強化繊維に樹脂を適用することによって準備されうる。樹脂が流れて繊維内に浸透しうるように、複合レイアップの温度を上げて、樹脂の粘度を下げることがある。複合レイアップは、樹脂を硬化して凝固又は固化した状態にするために、長時間にわたり高温に保持されうる。樹脂が硬化された後に、複合構造体は、室温に冷却されうる。
【0004】
多くの複合材料システムでは、樹脂は、繊維の熱膨張係数(CTE)とは異なりうるCTEを有することがある。例えば、エポキシ樹脂は、炭素繊維のCTEよりも1桁大きいものでありうるCTEを有しうる。CTEの相違により、複合構造体の温度が硬化後に冷却される時に、樹脂と繊維とが別々の収縮量だけ収縮することになりうる。繊維に対する樹脂の収縮の相違は、樹脂リッチポケット内に熱的に誘導された応力を引き起こしうる。樹脂リッチポケット内の凝固した樹脂が比較的大体積であること、及び、それに対応して、樹脂リッチポケットにおける樹脂の収縮量が繊維に対してより大きいことにより、熱的に誘導された応力は、樹脂リッチポケット内に望ましくない亀裂生成又は微小亀裂生成をもたらしうる。微小亀裂はまた、動作環境の温度の変化により、複合構造体の耐用期間内に発生しうる。
【0005】
複合構造体は、複合構造体の構造的負荷担持能力の増大によって、一定量の微小亀裂に適応するよう設計されうる。残念なことに、微小亀裂に適応するための複合構造体の負荷担持能力の増大は構造重量の増加をもたらすことがあり、構造重量の増加は、複合構造体の性能効率を低下させうる。例えば、負荷を担持する複合構造体からなる航空機の場合、複合構造体の構造重量の増加は、航空機の航続距離、燃料効率、及び/又は有効搭載能力の低下をもたらしうる。
【0006】
理解されうるように、当該技術分野においては、複合構造体の製造中及び使用時に、複合構造体における微小亀裂の発生を防止又は軽減するためのシステム及び方法に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
複合構造体に関連付けられた上記の必要性は、樹脂と、樹脂の中に少なくとも部分的に埋め込まれた繊維とを含みうる複合構造体を提供する本開示によって、具体的に対処される。複合構造体は、繊維に関連付けられた一又は複数の樹脂リッチポケットを含みうる。複合構造体は、樹脂リッチポケット内に配置された一又は複数の改質材を含みうる。改質材は、樹脂特性とは異なりうる、少なくとも1つの改質材特性を有しうる。改質材特性は、樹脂リッチポケットの中の樹脂特性を変化させ、それによって、複合構造体の樹脂リッチポケットの中での亀裂初発又は亀裂成長を軽減又は防止しうる。
【0008】
また、複合構造体を製造する方法も開示される。方法は、製造ツールに繊維を関連付けることと、繊維に関連付けられた樹脂リッチポケット内に改質材を載置することと、繊維に樹脂を適用することとを含みうる。樹脂は、複合構造体を形成するために硬化又は固化されうる。
【0009】
加えて、複合構造体の中の微小亀裂生成に抵抗する方法が開示される。方法は、繊維、樹脂、及び、繊維に関連付けられた樹脂リッチポケット内に配置された改質材を有する複合構造体に、負荷を印加することを含みうる。方法は、改質されていない樹脂リッチポケット内に微小亀裂を形成するために必要とされるエネルギーに対して、改質材を含有する樹脂リッチポケット内に微小亀裂を形成するために必要とされるエネルギーの量を変化させることを含みうる。加えて、方法は、樹脂リッチポケット内に改質材が欠けている複合構造体によって提供される負荷抵抗とは異なる負荷抵抗を用いて、負荷に抵抗することを含みうる。
【0010】
上述の特徴、機能及び利点は、本開示の様々な実施形態において個別に達成可能であるか、又は、以下の説明及び図面を参照して更なる詳細が理解されうる更に他の実施形態において、組み合わされうる。
【0011】
本開示の上記の特徴及びその他の特徴は、図面を参照することでより明確になり、図面では、その全体を通じて類似の番号は類似の部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】複合構造体の樹脂リッチポケット内に改質材を組み入れている、複合構造体のブロック図である。
図2】一方向プライの各々が複数の連続的な強化フィラメントで形成された、一方向プライのスタックを含む、複合材構造体の斜視図である。
図3】一方向性プライで構成された複合構造体の一部分の拡大断面図であり、一方向性プライに関連付けられた複数の樹脂リッチポケットを図示している。
図4】樹脂リッチポケットに含まれた改質フィラメント(斜線で示す)を備える、複合構造体の一部分の拡大断面図である。
図5】織布で形成された複合プライのスタックを含む、複合構造体の斜視図である。
図6】織布の複合プライの一部分の拡大図であり、織布に関連付けられ、かつ樹脂リッチポケットに相当するくぼみ(divot)及び/又は交点を示している。
図7】織布の繊維トウのくぼみ及び/又は交点に位置する樹脂リッチポケットを示す織布の断面図であり、樹脂リッチポケット内に載置された改質材(斜線で示す)を図示している。
図8】織布の繊維トウ間に位置する樹脂リッチポケットを示す織布の上面図であり、樹脂リッチポケット内の改質材(斜線)を図示している。
図9】繊維トウの一部分の上面図である。図9Aは、図9の線9Aに沿った断面図であり、繊維トウを構成する強化フィラメントを示している。
図10】繊維トウの外縁部の一又は複数の強化フィラメントに適用された改質コーティング(斜線で示す)を有する、繊維トウの一部分の上面図である。図10Aは、図10の線10Aに沿った断面図であり、改質コーティングを斜線で示している。
図11】繊維トウの外縁部に沿って適用された改質フィラメントを有する一方向性テープの一部分の上面図である。図11Aは、図11の線11Aに沿った断面図であり、繊維トウの外縁部に適用された改質材(斜線で示す)を図示している。
図12】複合構造体にテーパを形成するために定期的に終端して、複合構造体の樹脂リッチポケットに相当するプライ段差を生成する、積層複合プライのスタックで構成された、複合構造体の断面図である。図12Aは、図12の線12Aに沿った、複合構造体のプライ段差の拡大断面図であり、プライ段差における樹脂リッチポケット内への改質粒子の載置を示している。
図13】複合構造体を製造する方法に含まれうる、一又は複数の作業を示すフロー図である。
図14】複合構造体に負荷をかける方法に含まれうる、一又は複数の作業を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで図面を参照するに、これらの図面は本開示の様々な実施形態を例示する目的のためのものであり、図1には、複合構造体100のブロック図が示されている。複合構造体100は、樹脂114と、樹脂114の中に少なくとも部分的に埋め込まれた強化繊維118との合成物を含みうる。複合構造体100は、有利には、複合構造体100の樹脂リッチポケット132と説明されうる複合構造体100の特定の区域内に選択的に配置された、改質材200を含みうる。樹脂リッチポケット132は、複合構造体100内の樹脂を高含有する場所、又は、繊維118の体積に対して大体積の樹脂114を有し、かつ/又は、その場所における繊維体積分率が比較的低い場所、と説明されうる。
【0014】
樹脂リッチポケット132は、複合構造体100における多種多様な異なる場所のうちのいずれかに発生しうる。例えば、樹脂リッチポケット132は、一方向性プライ108の、強化繊維118の間及び/又は強化フィラメント120の間の間隙(interstice)内に発生しうる(例えば図4を参照のこと)。樹脂リッチポケット132はまた、織布126(例えば図5から図8を参照のこと)、織り込みクロース、編み上げロープ、及び、他の織り込み繊維又は編み上げ繊維の形態、又は、捲縮繊維の形態といった、織り込み繊維又は編み上げ繊維118の交差する繊維トウ118に関連付けられた、くぼみ128又は隙間に発生しうる。加えて、樹脂リッチポケット132は、厚さ方向にテーパされた複合積層板のプライ段差110(例えば図12から図12Aを参照のこと)において、及び、共硬化又は共接合された複合積層板の間に保持されるR部充填剤又はヌードル(図示せず)の角部のような他の場所において、発生しうる。
【0015】
改質材200が樹脂特性116とは異なる改質材特性202(図1)を提供して、改質材200の材料が、減少されなければ樹脂リッチポケット132内の亀裂初発又は亀裂成長をもたらしうる樹脂リッチポケット132内の熱的に誘導された内部応力を減少させることを可能にするように、改質材200の材料は、周囲の樹脂114の材料とは異なりうる。樹脂リッチポケット132(図1)内の樹脂特性116(図1)が改善されうるように、改質材200(図1)は、ビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジン及びフェノール、及び/又は、改質材200に所望の特性を提供するために選択されうる他の化学組成物を含むがそれだけに限定される訳ではない、多種多様な熱可塑性及び/又は熱硬化性組成物のうちのいずれかで形成されうる。改質材200はまた、シリカを含むがそれだけに限定される訳ではない、無機化合物で形成されうる。本書で開示されている改質材200の構成のうちのいずれかは、樹脂114(図1)に溶解性でありうるか、部分的に溶解性でありうるか、若しくは、不溶性でありうる、材料で形成されうる。いくつかの例では、改質材200は、樹脂114と同一の化学組成物を有し、樹脂114の最終硬化の前に予備硬化され(例えば少なくとも部分的に硬化され)うる。
【0016】
本書で開示されている例のうちのいずれかにおいて、改質材200は、硬化温度を局所的に低下させ、かつ/又は、樹脂リッチポケット132の中の反応熱を局所的に低下させるために、樹脂リッチポケット132に添加されうる。いくつかの例では、触媒又は硬化剤を含有するか又は含む改質材200が、樹脂リッチポケット132に添加されうる。かかる改質材200は、樹脂リッチポケット132の中で、局所的に硬化温度を低下させるために、及び/又は、樹脂硬化に必要とされる時間を短縮するために、樹脂硬化処理中に触媒又は硬化剤を放出するよう構成されうる。加えて、かかる改質材200は、改質材200を含有する場所における最終的な残留応力を変化させるために使用されうる。改質材200はまた、樹脂弾性率よりも低い、ヤング率又は弾性率(例えば改質材の剛性)を有しうる。樹脂リッチポケット132における改質材200の低い弾性率(modulus)は、樹脂靱性(例えば積層間破壊靱性)を局所的に増大させる効果を有することがあり、その効果により、樹脂リッチポケット132内の樹脂114の亀裂初発又は亀裂成長の発生し易さが低減しうる。本開示では、亀裂又は微小亀裂とは交換可能に、上述の熱的に誘導された応力により、又は機械的に誘導された応力により、樹脂114内に形成されうる比較的小さな亀裂と説明されうる。亀裂又は微小亀裂は、幅が数ミクロン以上のオーダーでありえ、複合構造体100の構造完全性に影響を与えうる。
【0017】
改質材200はまた、樹脂の熱膨張率(CTE)を下回りうる、改質材CTE(例えば改質後CTE)を有してよく、改質材CTEは、樹脂リッチポケット132内の熱的に誘導された応力を減少させ、それによって、樹脂リッチポケット132の中での亀裂初発及び/又は亀裂成長を軽減又は防止しうる。亀裂初発及び/又は亀裂成長を軽減又は防止しうる、改質材特性202の他の非限定的な例には、樹脂靱性よりも高い改質材靱性、樹脂密度よりも低い改質材密度、及び/又は、樹脂114の硬化収縮率よりも低い改質材の硬化収縮率が含まれる。改質材200はまた、樹脂114の変形能力よりも高い改質材の変形能力を有しうる。改質材200の自由体積又は孔部の増加により、基材樹脂114に可能な歪みに対しての、改質材200の変形能力又は歪み能力の量の増大が促進されうる。変形能力が増大した改質材200は、樹脂リッチポケット132の全体にわたる全歪みを減少させる効果を有しうる。改質材200はまた、有利には樹脂114又は複合構造体100の可燃性、煙特性及び/又は毒性を改善する、特性202を有しうるか、又は、改質材特性202は、複合構造体100の導電性を改善しうる。理解されうるように、改質材200は、樹脂特性116とは異なりうる多種多様な改質材特性202のうちの任意の一又は複数を有してよく、改質材特性202は、複合構造体100の製造可能性及び/又は性能を改善しうる。
【0018】
有利には、複合構造体100の樹脂リッチポケット132内に改質材200を目標通り載置することで、樹脂リッチポケット132内の亀裂形成及び/又は亀裂成長が低減又は抑制されることにより、複合構造体100の環境安定性が改善されうる。亀裂形成及び/又は亀裂成長は、低減又は抑制されなければ、複合構造体100の製造中に、及び/又は、複合構造体100の耐用期間中に熱サイクル又は機械的サイクルの結果として、発生しうる。樹脂リッチポケット132内への改質材200の選択的な載置により、微小亀裂の発生が軽減されうると同時に、複合構造体100全体の性能に対して改質材200の材料が有しうる、望ましくない影響が低減又は最小化されうる。例えば、予期される樹脂リッチポケット132内に弾性率が比較的低い改質材200の材料を載置することにより、樹脂リッチポケット132内の微小亀裂生成が軽減され、複合構造体100の繊維リッチ区域における主たる耐負荷部分の負荷担持性能に対する影響は最小化されうる。
【0019】
加えて、樹脂リッチポケット132内に改質材200を目標通り載置することによって、及び、複合構造体100の全体にわたり樹脂強靭化剤を用いて樹脂114の特質の大部分を改変することを回避することによって、樹脂114は、複合構造体100の製造中に比較的低い粘度を保つことができ、そのことにより、より迅速かつ信頼できる処理のための、強化繊維118の中への及び強化繊維118を通る、樹脂の流れが促進されうる。また更に、複合構造体100の全体にわたり樹脂強靭化剤を均一に分配するかわりに、樹脂リッチポケット132の中に改質材200を選択的に載置することによって、複合構造体100は、比較的高い曲げ弾性率、及び、比較的高い耐溶剤性/耐湿性を保ちうる。その際、樹脂リッチポケット132内に改質材200を目標通り載置することによって提供される、微小亀裂生成に対する抵抗性の改善が、従来型の複合構造体に対しての構造重量の多大な削減を可能にしうる。
【0020】
改質材200は、多種多様な異なるサイズ、形状及び構成のうちのいずれかのサイズ、形状及び構成で提供されうる。例えば、改質材200(図1)は、改質粒子204(図1)、改質フィラメント208(図1)、及び/又は改質コーティング210(図1)として、又は、多種多様な他の形状及び構成のうちのいずれかの形状及び構成で、提供されうる。改質材200の形状又は構成の選択は、複合構造体100の種類、及び/又は、改質材200が中に載置されうる樹脂リッチポケット132(図1)の形状又は構成に、基づいたものでありうる。
【0021】
図2は、樹脂リッチポケット132(図3)内に改質材200(図3)を有しうる、複合構造体100の一例を示している。図示されている例では、複合構造体100は、一方向性プライ108の積層スタックとして形成されうる。一方向性プライ108の各々は、横並びに配置された、複数の平行する繊維トウ118を含みうる。図示されている例では、一複合プライ104における繊維118は、スタック内で隣接する(例えば上又は下にある)複合プライ104内の繊維118に対して非平行に配向されうる。しかし、一又は複数の複合プライ104は、隣接する複合プライ104内の繊維118に対して平行に配向されている、繊維118を含みうる。一例では、繊維118は炭素繊維又はグラファイト繊維でありうる。しかし、本書で開示されている他の複合構造体100の例では、繊維118は非炭素材料で形成されうる。例えば、繊維118は、ホウ素、ガラス、セラミック、金属材料、及び/又は、他の任意の種類の繊維材料で形成されうる。
【0022】
図2では、一方向性プライ108の各々内の繊維118は、一方向性テープ122又は一方向性シートの平行繊維として提供されうる。複合プライ104の各々は、複数の、連続的な強化フィラメント120又は連続的な繊維トウ118を含みうる。単一の繊維118は、束になった数千の強化フィラメント120(例えば1000から100,000以上の強化フィラメント)を含みうる。いくつかの例では、強化フィラメントは、5から30ミクロンの断面幅又は直径のフィラメントを有する。例えば、炭素強化フィラメントは、およそ5から7ミクロンの断面幅のフィラメントを有することがある。ガラス強化フィラメントは、10から25ミクロンの断面幅のフィラメントを有することがある。本開示においては、繊維又は繊維トウ118は交換可能に、撚りのない、連続的な強化フィラメント120の一束と説明されうる。本開示における強化繊維118はまた、繊維マットの中に組み入れられうるもののような短繊維を包含しうる。本開示の強化繊維118は、他の繊維構成で提供されることもある。
【0023】
複合構造体100(図5)は、樹脂に予備含浸されうる複合プライ104(図5)(例えばプリプレグ複合プライ)で形成されうる。代替的には、複合構造体100は、乾燥繊維プリフォーム130として形成されうる。例えば、複合構造体100は、乾燥繊維シートのスタックをレイアップすることによって形成されてよく、湿式レイアップ工程において、樹脂が乾燥繊維シートに注入されうる。本書で開示されている例のうちのいずれかにおいて、樹脂114(図5)及び/又は強化繊維118(図5)は、熱可塑性材料又は熱硬化性材料から形成されうる。熱可塑性材料には、アクリル、フッ化炭素、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエーテルケトンケトン、及びポリエーテルイミドのうちの、少なくとも1つが含まれうる。熱硬化材料には、ポリウレタン、フェノール、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリエステル、エポキシ、及びシルセスキオキサンのうちの1つが含まれうる。加えて、本書で開示されている例のうちのいずれかにおいて、強化繊維118は、炭素、炭化ケイ素及びホウ素などの材料から形成されうる。強化繊維118はまた、Eガラス(アルミノホウケイ酸塩ガラス)、Sガラス(アルミノケイ酸塩ガラス)、純シリカ、ホウケイ酸ガラス、光学ガラス、及び他のガラス組成物のようなガラスから形成されうる。
【0024】
図3は、一方向性プライ108で構成された複合構造体100の一部分の拡大断面図であり、一方向性プライ108に関連付けられた複数の樹脂リッチポケット132を図示している。樹脂リッチポケット132は、一方向性プライ108の隣接する繊維トウ118又は一方向性テープの間の領域と説明されうる。しかし、複合積層板における樹脂リッチポケット132はまた、隣接する複合プライの間の界面に、又は複合積層板の他の場所に位置する、樹脂リッチ積層間区域を含みうる。
【0025】
図4は、樹脂リッチポケット132での亀裂初発及び/又は亀裂成長を軽減又は防止するために樹脂リッチポケット132の中に載置された改質フィラメント208を備える、図3の複合構造体100を示している。図示されている例では、改質フィラメント208は、繊維トウ118又はテープの外縁部124(図3)に沿って位置付けられうる。その際、一方向性プライ108内の隣接する一対の繊維トウ118又はテープの外縁部124が、樹脂リッチポケット132を画定しうる。いくつかの実施形態では、改質フィラメント208は概して、連続的なフィラメントであってよく、かつ概して、繊維トウ118又はテープの強化フィラメント120に対して平行に配向されうる。他の実施形態では、改質フィラメント208は、短改質フィラメント、又は短(例えば短いか、又は連続していない)フィラメントのストランド(図示せず)でありうる。
【0026】
図4では、最上部及び最底部の複合プライ104の改質フィラメント208は、図面の平面に対して垂直であり、かつ、かかるプライの強化フィラメント120に対して平行な方向に沿って、配向されうる。図示されていないが、図3の中間部の複合プライ108の改質フィラメント208は、図面の平面に対して平行であり、かつ、中間部のプライの強化フィラメント120に対して平行な方向に沿って配向されうる。中間部の複合プライ104と、最上部及び最底部のそれぞれの複合プライ104との間に配置された複合プライ104の改質フィラメント208は、図面の平面に対して非平行かつ非垂直であり、かかるプライの強化フィラメント120に対して平行な方向に沿って配向されうる。
【0027】
改質フィラメント208は、繊維トウ118、一方向性テープ又はシート、又は織り込みクロースの製造中に適用されてよく、かつ/又は、改質フィラメント208(図4)は、複合構造体100(図4)のレイアップ中に適用されうる。例えば、改質フィラメント208は、レイアップの前に、繊維トウ118、テープ、又は一方向性シートの製造中に、繊維トウ118(図4)又はテープの外縁部124(図3)に適用されうる。別の例では、改質フィラメント208は、以下でより詳細に説明されるように、レイアップ中に繊維プリフォーム130(図5)に直接適用されうる。いくつかの例では、一又は複数の改質フィラメント208はまた、プライのスタックの隣接する複合プライ104(図4)間の界面に適用されうる。
【0028】
図4では、改質フィラメント208は、強化フィラメント120の断面幅に概して類似しうる断面幅206を有することがある。いくつかの例では、改質フィラメント208は、最大10ミクロン以上の断面幅206(例えば直径)を有しうる。しかし、改質フィラメント208又は他の任意の改質材200(図1)の構成(例えば改質粒子204)は、強化フィラメント120の断面幅を下回りうる断面幅206を有しうる。例えば、改質フィラメント208及び/又は改質材200の粒子は、およそ20ミクロンよりも小さい断面幅206を有しうる。他の例では、改質フィラメント208及び/又は改質材200の粒子は、およそ200ナノメートルよりも小さい断面幅206を有しうる。
【0029】
改質フィラメント208は、樹脂114及び/又は強化フィラメント120とは異なる材料で形成されてよく、上述のように、樹脂114(図4)とは異なる少なくとも1つの改質材特性202(図1)を有しうる。いくつかの例では、改質フィラメント(図4)は非炭素材料で形成されてよく、強化フィラメント120(図4)は炭素材料で形成されうる。本書で開示されている、改質材200(図1)の形態のうちのいずれか(例えば改質粒子204、改質コーティング210など)は、樹脂弾性率よりも低い弾性率を有しうる。改質材200の低い弾性率は、樹脂114の靱性を局所的に増大させる効果を有することがあり、その効果により、樹脂リッチポケット132の亀裂の発生し易さが低減されうる。改質材200はまた、樹脂CTEを下回りうる改質材CTE、及び/又は、樹脂114の収縮率を下回りうる改質材硬化収縮率を有しうる。
【0030】
比較的低い改質材CTE、及び/又は、比較的低い改質材硬化収縮率は、樹脂リッチポケット132(図4)内の熱的に誘導された応力を減少させる硬化を有し、それによって、高温の硬化温度からの冷却中、及び/又は、複合構造体100(図4)を使用中の熱サイクル又は機械的サイクルにおける、亀裂初発及び/又は亀裂成長を軽減又は防止しうる。改質材200(図1)は、樹脂114(図4)の中での亀裂の形成を伴わない、歪み放出機構を提供しうる。また更に、CTEが比較的低い改質材が、樹脂リッチポケット132の中で基材樹脂114の体積の一部分を占めることがあり、このことは、樹脂リッチポケット132においてCTEが比較的高い基材樹脂114の体積を減少させることにより、樹脂リッチポケット132全体にわたる全歪みを低減しうる。
【0031】
いくつかの例では、改質フィラメント208(図4)は、樹脂弾性率及び/又は樹脂CTEとは異なる(例えば下回る)弾性率及び/又はCTEを備える、熱可塑性フィラメントとして提供されうる。他の例では、改質フィラメント208は、強靭化された樹脂又は接合剤でコーティングされた炭素フィラメントとして提供されうる。更に別の例では、改質フィラメント208は、樹脂114(図4)に溶解性であり、かつ、樹脂リッチポケット132内の樹脂114の靱性を増大させるよう構成されている、溶解性フィラメントとして提供されうる。改質フィラメント208はまた、連続した長さの強化フィラメント120に対して、非連続性又は不連続性のフィラメントと説明されうる、短フィラメントのストランド(図示せず)として提供されうる。フィラメントのストランドは、樹脂リッチポケット132の中に分置されうる。いくつかの例では、フィラメントのストランドは、熱硬化プレポリマー内に封入され、繊維118(図4)の外縁部124に留め置かれうる。短フィラメントのストランドが適用されうる繊維118は、連続的な繊維118又は一方向性クロースを含みうる。しかし、短フィラメントのストランドはまた、短繊維マット(図示せず)の非連続性の繊維及び/又は短繊維に適用されうるか、又はそれら共に含まれうる。
【0032】
図5は、織布126のプライのスタックとして配設された、複合構造体100を示している。織布126のプライの各々は、繊維トウ118又はロービングを織り込むことによって形成されうる。プライは、部分的に硬化された状態で提供されうる樹脂114(例えばプリプレグ)に予備含浸されうる。レイアップ後に、プリプレグ織布126のプライの樹脂114は、樹脂114が流れて織布126のプライ全体にわたり均一に浸透すること、及び、隣接する織布126のプライの樹脂114と混ざり合うことを可能にするよう、樹脂114の粘度を低下させるために、加熱されうる。複合構造体100を形成するために、レイアップは固化されてよく、樹脂114は硬化されうる。代替的には、織布126のプライは、湿式レイアップ工程において樹脂114が注入されうる乾燥繊維プリフォーム130として提供されてよく、その後に樹脂114は、複合構造体100を形成するために硬化されうる。
【0033】
図6から図7は、二方向性織布126で形成された複合構造体100の一部分を示し、織布126の繊維118の交点におけるくぼみ128及び/又は隙間を図示している。くぼみ128及び/又は隙間は、樹脂リッチポケット132に相当しうる。改質材200は、織布126に関連付けられた樹脂リッチポケット132の中に組み入れられうる例えば、複数の改質粒子204及び/又は短フィラメントのストランドが、樹脂リッチポケット132の中での亀裂初発及び/又は亀裂成長を軽減又は防止するために、織布126のくぼみ128及び隙間の場所の樹脂リッチポケット132の中に、特に載置されうる。
【0034】
図8は、樹脂リッチポケット132を創出する重複する(例えば織り込まれた)繊維トウ118の間に位置し、熱サイクル又は機械的サイクルにおいて亀裂形成が発生し易くなりうる、樹脂リッチポケット132を示す、織布126の上面図である。織布126は、有利には、改質粒子204を樹脂リッチポケット132の中に組み入れてよく、このことが、樹脂CTEと繊維CTEとの間の相違を減少させることによって、亀裂初発及び/又は亀裂成長を抑制又は防止しうる。その際、本書で開示されている実施形態のうちのいずれかにおいて、樹脂リッチポケット132の領域の中の樹脂CTEが、改質材200を欠いている樹脂(図7)のCTEに対して低くされるように、改質材CTEは基材樹脂CTEを下回りうる。
【0035】
一例では、改質材200は、樹脂リッチポケット132内の樹脂CTEが改質材200を欠いている樹脂114(図7)に対して低くされるように、樹脂114の中に溶解性でありうる。別の例では、改質材200は樹脂114の中に不溶性でありうる。しかし、改質材CTEは樹脂CTEよりも低いことから、改質材200の存在は、樹脂リッチポケット132の中の樹脂114(図7から図8)の全体的なCTEを低くしうる。いくつかの例では、樹脂114内の改質粒子204(図7から図8)の高投入量レベルでの樹脂114の粘度の増大を回避するために、改質粒子204は概して円形又は球形でありうる。しかし、改質粒子204は球形以外の形状でも提供されうる。例えば、改質粒子204(図7から図8)は、立方体、又は、樹脂114の粘度に対して最小効果を有する他の形状のような、三次元のファセット形状で提供されうる。
【0036】
織布126(図6から図8)の樹脂リッチポケット132の中への改質粒子204の目標載置は、織布126上の、くぼみ128及び/又は隙間の場所に、又は他の樹脂リッチポケット132(図6から図8)に、改質粒子204を直接噴霧することによって提供されうる。例えば、改質粒子204(図6から図8)は、特定の領域上の、繊維プリフォーム130(図5)の樹脂リッチポケット132に噴霧されうる溶液で提供されうる。改質粒子204はまた、プリプレグ作業中に及び/又は織布126のレイアップ中に、樹脂リッチポケット132内に載置されうる。改質粒子204はまた、手作業での載置によって、及び/又は、ロボット式装置(図示せず)を使用することによって、樹脂リッチポケット132内に載置されうる。いくつかの例では、改質材200(図7)の載置後、レイアップ中に、繊維プリフォーム130に振動又は移動が適用されることがあり、このことによって、固化後に織布126の樹脂リッチポケット132を形成しうる隙間及びくぼみ128の中での、改質粒子204の自然凝集がもたらされうる。
【0037】
別の例では、後で織布126の中に織り込まれうる繊維トウ118の強化フィラメント120に、改質コーティング210が適用されうる。例えば、改質コーティング210は、繊維トウ118又はロービングの対向する外縁部124(図10から図10A)に配置された強化フィラメント120に適用されうる。例えば、改質コーティング210は、織布126のレイアップの前に又はレイアップ中に、強化フィラメント120に適用されうる。一実施形態では、改質コーティング210(図10から図10A)は、繊維トウ118(図11から図11A)の製造中に、繊維トウ118の対向する外縁部124に適用されうる。改質フィラメント208は、織布126の中に繊維トウ118又はロービングを織り込む前に、繊維トウ118又はロービングの外縁部124(図11から図11A)に沿って載置されうる。織布126(図6)の樹脂リッチポケット132の中に改質材200(図11から図11A)を組み入れる上述の例は、他の織り込み繊維又は編み上げ繊維の形態にも適用されてよく、織布に限定される訳ではない。例えば、改質粒子204(図12A)、改質フィラメント208(図12A)、及び/又は改質コーティング210(図10から図10A)は、織り込みクロース、編み上げロープ、及び、樹脂リッチポケット132を含みうる織り込み繊維又は編み上げ繊維の他の任意の形態を含むがそれらだけに限定される訳ではない、任意の種類の編み上げ繊維に適用されうる。
【0038】
図9から図9Aはそれぞれ、複数の強化フィラメント120からなる繊維トウ118の上面図及び断面図を示している。一例では、強化フィラメント120は、炭素で形成されうる。代替的には、強化フィラメント120は、ホウ素、セラミック、ガラス、及び/又は金属材料などの、他の材料で形成されうる。改質材200は、図8を参照して上述したように、レイアップ上に改質粒子204を噴霧することによって、繊維トウ118で形成された複合レイアップ102に適用されうる。
【0039】
図10から図10Aはそれぞれ、繊維トウ118の外縁部124(例えば側縁部)の一又は複数のフィラメントに適用された改質溶液又は改質コーティング210を有する繊維トウ118の、上面図及び断面図を示している。改質コーティング210又は改質溶液は、繊維トウ118の対向する外縁部124に適用されうる。改質コーティング210はまた、一方向性テープ122(図4)の一方又は両方の外縁部124に適用されうる。改質コーティング210は、熱硬化モノマーコーティング、又は熱硬化プレポリマーコーティングでありうる。熱硬化プレポリマーは、強靭化された熱硬化樹脂114(図8)でありうる。代替的には、熱硬化プレポリマーは、改質粒子204(図8)及び/又は改質フィラメント208(図8)を含有する熱硬化樹脂114でありうる。熱硬化プレポリマーコーティングは、樹脂弾性率、樹脂硬化温度、及び/又は樹脂靱性とは異なりうる、弾性率、硬化温度、及び/又は靱性を有しうる。
【0040】
例えば、コーティング弾性率は樹脂弾性率を下回ってよく、かつ/又は、コーティング靱性は樹脂靱性を上回ってよく、このことによって、樹脂リッチポケット132(図7)の、亀裂初発又は亀裂成長の発生し易さが低減されうる。コーティングは、樹脂114の硬化温度よりも低い硬化温度を有してよく、この低い硬化温度によって、CTEが比較的高い樹脂114(図7)とCTEが比較的低い強化フィラメントとの間の界面において亀裂が初発する傾向が、低減又は回避されうる。熱硬化モノマーコーティング及び/又は熱硬化プレポリマーコーティングは、好ましくは、繊維118(図7)で強化されたポリマーマトリクス材料の固化中に、樹脂リッチポケット132内に滞留するに十分な粘度又は表面張力を有する。その際、CTEが比較的低い強化フィラメント上の改質コーティング210(10から10A)は、好ましくは、固化中の樹脂の流れによる変位に十分抵抗しうるよう高次である。
【0041】
本書で開示されている実施形態のうちのいずれかにおいて、改質コーティング210は、裸繊維118又は裸強化フィラメント120に適用されうる。代替的には、改質コーティング210(図10から図10A)は、強化フィラメント120(図10から図10A)の製造中に強化フィラメント120に適用されうるサイズ剤の上に適用されうる。かかるサイズ剤は、強化フィラメント120と樹脂114と(図7)の間の接着性を改善するために、かつ/又は、例えば織り込み作業及び/又はプリプレグ作業において強化フィラメント120が破断することを防止するために、概して均一の厚さで強化フィラメント120の表面上に整然と堆積されうる、表面仕上げ剤を含みうる。
【0042】
図11から図11Aはそれぞれ、繊維トウ118の対向する外縁部124の一方又は両方に適用されるか、又はそれらに沿って位置付けられる改質フィラメント208を有する、繊維トウ118の上面図及び断面図を示している。いくつかの例では、改質フィラメント208は概して、繊維トウ118の強化フィラメント120に対して平行に配向されうる、連続的なフィラメントでありうる。しかし、改質フィラメント208は、短フィラメントのストランドとして提供されてよく、連続的な改質フィラメント208に限定される訳ではない。改質フィラメント208は、繊維トウ118を構成する強化フィラメント120の束と共に含まれうるか、又はそれに適用されうる。他の例では、改質フィラメント208は、繊維トウ118の縁部に留め置かれうるフィラメントのストランドでありうる。改質フィラメント208は、炭素材料又は非炭素材料で形成されてよく、上述のように、樹脂114(図7)とは異なる少なくとも1つの改質材特性202を有しうる。例えば、改質フィラメント208は、樹脂弾性率よりも低い弾性率、樹脂CTEを下回りうる改質材CTE、樹脂靱性よりも高い改質材靱性、樹脂密度よりも低い改質材密度、樹脂の変形能力を上回りうる改質材の変形能力、及び/又は、樹脂硬化収縮率よりも低い改質材硬化収縮率を有しうる。
【0043】
本書で開示されている実施形態のいずれかにおいて、改質フィラメント208及び/又は改質粒子204は、表面機能性を伴って提供されうる。いくつかの例では、表面機能性は、樹脂114と改質フィラメント208(図7から図8)との間の接合特性を変化させうる。例えば、改質材特性202(図1)は、樹脂114(図7)に機械的連動を提供するために改質フィラメント208及び/又は改質粒子204(図7から図8)の外表面に付加されうる、機械的な特徴を含みうる。改質フィラメント208及び/又は改質粒子204は、樹脂114との接着性を増強するために、かつ/又は、編み上げ又はレイアップなどの処理中に改質フィラメント208及び/又は改質粒子204を防護するために、改質フィラメント208及び/又は改質粒子204の外表面上にコーティング(図示せず)を伴って、提供されうる。
【0044】
図12は、積層複合プライ104のスタックで構成された積層複合構造体100の断面図である。複合構造体は、テーパされた厚さを有しうる。図示されている例では、複合構造体は、各プライが複合構造体100にプライ段差110を形成するように終端する、2つの複合プライ104を含みうる。各プライ段差の終端は、樹脂リッチポケット132の場所に相当しうる。
【0045】
図12Aは、複合構造体100における樹脂リッチポケット132の場所に相当しうる、図12のプライ段差110のうちの1つの断面図を示している。樹脂リッチポケット132は、プライの終端による、複合積層板における応力集中の場所に相当しうる。樹脂リッチポケット132は、一又は複数の改質材200を含みうる。その際、改質材はまた、曲がった(例えば平面外の)複合プライの内側のR部又は外側のR部(図示せず)の直近に隣接した場所に載置されうる。例えば、改質材200は、複合品におけるR部充填剤(例えばヌードル)の場所(図示せず)のような複合積層板の交点の、複合プライの外側R部に隣接して位置する、樹脂リッチポケット132内に載置されうる。
【0046】
いくつかの例では、改質材200は、改質粒子204(図7から図8)として提供されうる。樹脂リッチポケット132内の改質材200は、樹脂リッチポケット132の中での亀裂初発又は亀裂成長を軽減又は防止するための、上述の改質材特性202(図1)のうちの一又は複数を有しうる。改質粒子204以外構成の改質材200が、プライ段差110の樹脂リッチポケット132の中に載置されることもある。例えば、上述の改質材200のフィラメント構成のうちのいずれかが、プライ段差110の樹脂リッチポケット132内に載置されうる。改質フィラメント208は、プライ段差110の長さ方向に沿って(すなわち、図12の紙面の平面の中へと)載置されうる。改質材200は、複合積層板のレイアップ中に、プライ段差110の樹脂リッチポケット132内に載置されうる。
【0047】
一例では、改質材200は、靱性の増大、耐燃性の増大、導電性の増大、硬化収縮率に関連した変形の低減、反応熱に関連した変形の低減、及び、反応熱に関連した樹脂劣化の低減のうちの少なくとも1つを提供する、ポリマーナノ粒子を含有しうる。ポリマーナノ粒子は、樹脂と同一の材料、又は、熱可塑性材料、アクリル、フッ化炭素、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、熱硬化性材料、ポリウレタン、フェノール、ポリイミド、スルホン化ポリマー(ポリフェニレンサルファイド)、導電性ポリマー(例えばポリアニリン)、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアン酸エステル、ポリエステル、エポキシ、及びシルセスキオキサンのうちの少なくとも1つから、作られうる。ポリマーナノ粒子はまた、少なくとも部分的に溶解性であること、芯鞘型構造を有すること、より高く、樹脂硬化収縮率よりも低いナノ粒子硬化収縮率を有すること、樹脂CTEとは異なるナノ粒子CTE、樹脂反応熱よりも低いナノ粒子反応熱、樹脂よりも大きな変形能力、樹脂硬化処理中に触媒又は硬化剤のいずれかを放出すること、及び/又は、触媒又は硬化剤が樹脂の反応速度を変化させうること、という特質のうちの少なくとも1つを有しうる。
【0048】
図13は、複合構造体100を製造する方法300に含まれうる一又は複数の作業を示すフロー図である。方法300は、上述のように、亀裂初発又は亀裂成長を軽減又は防止するという目的のために、複合構造体100の樹脂リッチポケット132(図3)内に改質材200(図1)を載置することを含みうる。方法300のステップ302は、製造ツールに繊維118(図3)を関連付けることを含みうる。いくつかの例では、製造ツールに繊維118を関連付けるステップは、フィラメント製造装置(図示せず)のノズルから強化フィラメント120(図3)を引き出すことを含みうる。他の例では、製造ツールに繊維118を関連付けるステップは、強化フィラメント120及び/又は繊維トウ118を、編み上げロープ、織布126(図6)、織り込みクロース又は他の編み上げ繊維又は織り込み繊維の形態のような、編み上げ繊維の形態又は織り込み繊維の形態へと編み上げるか、又は織り込むことを含みうる。更に別の例では、製造ツールに繊維118を関連付けるステップは、繊維118、繊維トウ又は繊維プリフォームを複合成型物に適用することを含みうる。例えば、繊維トウ118又はロービング、一方向性テープ122、一方向性シート、織布126、及び/又は編み上げ繊維プリフォームが、任意のサイズ、形状又は構成の成型物に非限定的に適用されうる。繊維トウ118又はロービング、一方向性テープ122(図3)、一方向性シート、織布126、及び/又は編み上げ繊維プリフォームは、乾燥繊維プリフォームとして、又はプリプレグとして成型物に適用されうる。
【0049】
方法300のステップ304は、一又は複数の繊維118に関連付けられた樹脂リッチポケット132内に改質材200を載置することを含みうる。例えば、樹脂リッチポケット132内に改質材200を含むステップは、例えばプリプレグプライ又は乾燥繊維プライをレイアップする工程において、樹脂リッチポケット132内に改質材200を選択的に載置することを含みうる。その際、改質材200は、樹脂リッチポケット132だけが改質材200で構成されるか、又は改質材200を含むように、樹脂リッチポケット132内のみに提供又は載置されうる。改質材200は、複合レイアップ102の他の樹脂領域とは対照的に、樹脂リッチポケット132内により集中的に提供されうる。代替的には、方法は、樹脂リッチポケット132内に改質材と樹脂との混合物(図示せず)を載置することを含みうる。例えば、改質材と樹脂との混合物の予備硬化された小球が、レイアップの樹脂リッチポケット132の各々内に選択的に載置されてよく、その後に、レイアップの残部に基材樹脂が適用されうる。
【0050】
いくつかの例では、ステップ304は、繊維118(図4)又は強化フィラメント120の製造中又は形成中に、改質材200(図1)を繊維118又は強化フィラメント120(図4)に適用することを含んでよく、強化フィラメント120は後に、複合レイアップ102(図2)の樹脂リッチポケット132(例えば図4を参照のこと)の境界又は側部を画定しうる。その際、改質材200は、繊維118又は強化フィラメント120のレイアップの前に適用されうる。一実施形態では、繊維118又は強化フィラメント120が繊維製造装置から引き出されている間に、改質コーティング210(図10)が繊維118又は強化フィラメント120に適用されうる。いくつかの例では、上述のように、改質材210は、強化フィラメント120にサイズ剤が適用された後に、強化フィラメント120に適用されうる。他の例では、繊維118又は強化フィラメント120の製造中に、繊維118又は強化フィラメント120上に、改質粒子204を含有する溶液が噴霧されうる。更に別の例では、例えば編み上げ作業又は織り込み作業の段階で、巻枠(図示せず)から繊維トウ118が引き出されている間に、改質コーティング210又は改質粒子204(図4)のような改質材200が、束になったフィラメント120の繊維トウ118に適用されうる。改質材200は、手作業での載置によって、及び/又は、ロボット式装置(図示せず)を使用することによって、或いは他の手段によって、適用されうる。
【0051】
方法は、繊維トウ118の外縁部124の強化フィラメント120に、熱硬化モノマーコーティング又は熱硬化プレポリマーコーティングである改質コーティング210(図10)を適用することを含みうる。熱硬化モノマーコーティング及び/又はプレポリマーコーティングは、プリプレグ中又は接合剤の適用中に、繊維トウ118、一方向性テープ122(図4)、及び/又は織布126の外縁部124(図10)に適用されうる。改質コーティング210は、繊維トウ118(図10)の縁部上に、改質コーティング210を噴霧又はローリングすることによって適用されうる。しかし、改質コーティング210は、多種多様な異なる様態のうちのいずれかで適用されてよく、噴霧又はローリングに限定される訳ではない。いくつかの例では、熱硬化プレポリマーコーティングは、レイアップの前に繊維118の外縁部124に適用されうる。上述のように、プレポリマーは、強靭化された熱硬化樹脂、又は改質粒子204(図8)又は短フィラメントのストランドを含有する熱硬化樹脂でありうる。
【0052】
樹脂リッチポケット132内に改質材200を載置するステップはまた、図3及び図11に示すように、連続的な強化フィラメント120の束を有する繊維トウ118の一方又は両方の外縁部124に、一又は複数の連続的な改質フィラメント208を適用することを含みうる。方法は、図3及び図11に示すように、連続的な強化フィラメント120と同一の概略的な方向に沿って改質フィラメント208を配向することを含みうる。例えば、方法は、繊維118の外縁部124の一方又は両方に、一又は複数の連続的な改質フィラメント208を適用することを含みうる。いくつかの例では、改質フィラメント208は、強靭化された樹脂又は接合剤でコーティングされた炭素フィラメントでありうる。他の例では、改質フィラメント208は、樹脂114内に溶解して樹脂リッチポケット132内の樹脂114を強靭化する、溶解性フィラメントでありうる。代替的には、改質フィラメント208は、繊維トウ118の外縁部124に留め置かれうる、短フィラメントのストランド(図示せず)でありうる。
【0053】
樹脂リッチポケット132内に改質材200を載置するステップはまた、織布126のレイアップの前に、織布126に改質材200を適用することを含みうる。例えば、方法は、織布126を織り込む段階のような織布126(図5)の製造中に、かつレイアップの前に、改質材200(図7)を適用することを含みうる。改質材200はまた、上述のように、プリプレグ作業中に、かつレイアップの前に、織布126に関連付けられたくぼみ128(図6)及び/又は隙間内に改質材200を載置することによって、織布126に適用されうる。樹脂リッチポケット132(図7)内に改質材200を載置するステップは、繊維プリフォーム130のレイアップ中に、繊維プリフォーム130(図5)に改質材200を適用することを含みうる。例えば、方法は、複合レイアップ102(図8)の一又は複数のプライ上に、改質粒子204(図7)を噴霧することを含みうる。方法は加えて、レイアップ102に樹脂が適用される時に樹脂リッチポケット132になることが予想される、複合レイアップ102の区域内に、改質粒子204を選択的に噴霧又は適用することを含みうる。織布126の繊維プリフォーム130で形成された複合レイアップ102の場合、方法は加えて、織布126の隙間またはくぼみ128内での粒子204の凝集を促進するために、レイアップ中に織布126のプリフォームを振動又は移動させることを含みうる。
【0054】
樹脂リッチポケット132内に改質材200を載置するステップはまた、手作業による適用/プリント、噴霧コーティング、熱溶解造形、リトグラフィ、ステレオリトグラフィ、フレキソグラフィ、乾式転写、レーザ焼結、選択加熱焼結、石膏系3Dプリント、層毎堆積、インクジェットプリント、化学的/熱的接合、及び所定位置への押出しを含むがそれらだけに限定されない他の製造技術によって、プリントすることを含みうる。プリントされた改質材200は、有機モノマー、プレポリマー、ポリマー、金属粉、無機充填材、並びに、ナノシリカ、ブロック共重合体、グラフェン小板状体、カーボンナノチューブ及び他の種類の材料のような水性で溶剤系の溶液、充填材、又は二次相のうちの一又は複数を、含みうる。有利には、改質材料のプリントされたパターンは、複合構造体100における特定の機能又は性能の改善を実現するために、複合積層板の中の階層的構造で提供されうる。
【0055】
方法300のステップ306は、繊維118又は強化フィラメント120に樹脂114を適用することを含みうる。上述のように、繊維118(図8)又は強化フィラメント120(図8)は、予備含浸された繊維プリフォーム130の一部であってよく、その場合、繊維118又は強化フィラメント120に樹脂114(図7)を適用するステップは、繊維118又は強化フィラメント120への改質材200の適用の前に、又は適用中に実行されうる。代替的には、繊維118又は強化フィラメント120は、乾燥繊維プリフォーム130(図5)の一部であってよく、乾燥繊維プリフォーム130には後に、樹脂114が注入され、複合構造体100を形成するための硬化が可能になりうる。有利には、複合構造体100(図8)の樹脂リッチポケット132(図8)の中での改質材200(図7)の選択的な載置により、樹脂リッチポケット132の中での亀裂初発及び/又は亀裂成長が低減又は防止されうる。
【0056】
図14は、複合構造体100の中での微小亀裂生成に抵抗する方法400に含まれうる、一又は複数の作業を示すフロー図である。いくつかの例では、複合構造体100(図1)は、航空機のような乗用運搬体の構造的構成要素でありうる。他の例では、複合構造体100は、建物又は非乗用運搬構造体のような静的アセンブリの一部でありうる。
【0057】
方法400のステップ402は、少なくとも1つの繊維118、樹脂114、及び、繊維118に関連付けられた樹脂リッチポケット132内に配置された(図7)改質材200を有する複合構造体100に、負荷(例えば機械的力又は構造的力)を印加することを含みうる。負荷は、複合構造体100の耐用期間中に印加されうる。代替的には、負荷は、複合構造体100の製造中又は熱サイクル中に印加される、熱負荷でありうる。例えば、熱負荷は、硬化後の高温からの複合構造体100の冷却中に、樹脂リッチポケット132に印加されうる。加えて、熱負荷は、複合構造体100の通常動作環境における複合構造体100の耐用期間中の温度変動の結果として、複合構造体100(図7)に印加されうる。
【0058】
方法400のステップ404は、改質されていない樹脂リッチポケットにおいて微小亀裂を形成するために必要とされるエネルギーに対して、改質材を含有する樹脂リッチポケットにおいて微小亀裂を形成するために必要とされるエネルギーの量を、変化させることを含みうる。微小亀裂を初発させるために必要とされるエネルギーの増大は、改質材200の添加による、樹脂リッチポケット132の靱性の増大の結果でありうる。方法はまた、樹脂リッチポケット132内に改質材200が欠けている複合構造体100によって提供される負荷抵抗とは異なる負荷抵抗を用いて、複合構造体100への負荷に抵抗することを含みうる。例えば、図2及び図4に示す、一方向性プライ108のスタックで形成された複合構造体100に引張負荷が印加されうる。図3に示すように、複合構造体100は、複合プライ104の各々を構成する繊維トウ118の外縁部124に沿って載置された、改質フィラメント208を含みうる。繊維トウ118は、かかる改質フィラメント208を欠いている樹脂リッチポケットのより低い靱性及びより高いCTEに対して、複合構造体100の樹脂リッチポケット132の中で、靱性を改善し、かつ/又は、樹脂CTEを減少させうる。
【0059】
有利には、複合構造体100の樹脂リッチポケット132の中に改質材200を目標通り載置することは、樹脂リッチポケット132(図3)の中の樹脂114の靱性を増大させ、かつ/又は、樹脂CTEを減少させる効果を有しうる。樹脂リッチポケット132の中の靱性の増大及び/又は樹脂CTEの減少により、改質材200(図10)を含有する樹脂リッチポケット132における繊維118と樹脂114との間の熱膨張の相違は、樹脂リッチポケット132内に改質材200が欠けている複合構造体の繊維と樹脂リッチポケットとの熱膨張のより大きな相違に対して、減少しうる。樹脂リッチポケット132における繊維118と樹脂114(図4)との間の熱膨張の相違の減少により、改質材200が欠けている複合構造体の樹脂リッチポケット132全体にわたる全歪みに対して、複合構造体100の熱サイクル中の樹脂リッチポケット132全体にわたる全歪みの減少がもたらされうる。上述のように、複合構造体100(図3)の熱サイクルは、高温の硬化温度からの冷却中のような、複合構造体100の処理又は作製中に発生しうる。複合構造体100の熱サイクルはまた、複合構造体100の作業環境の温度の変化により発生しうる。例えば、航空機において、航空機の複合構造体100の熱サイクルは、高度の変化に伴う大気温度の変化などの結果として発生しうる。
【0060】
樹脂リッチポケット132の中での微小亀裂の低減又は防止は、複合構造体100の負荷担持能力の増大につながりうる。その際、図2及び図4の複合構造体100の負荷抵抗能力は、樹脂リッチポケット132内に改質材200が欠けている複合構造体の負荷抵抗能力よりも大きくなりうる。複合構造体100の負荷担持能力の増大は、構造重量の減少につながりうる。航空機の場合、構造重量の減少により、航空機の航続距離、燃料効率、及び/又は有効搭載能力が改善されうる。
【0061】
本開示の例示的な実施形態は、航空機、宇宙船、衛星、又は他の航空宇宙構成要素の製造及び/又は保守方法(図示せず)との関連において説明されうる。製造準備、構成要素の製造、及び/又は保守は、航空宇宙構成要素の仕様及び設計、並びに材料調達を含みうる。製造段階においては、航空宇宙構成要素の、構成要素及びサブアセンブリの製造並びにシステムインテグレーションが行われる。その後、航空機、宇宙船、衛星、又は他の航空宇宙構成要素が、認可及び納品を経て運航に供されうる。
【0062】
一例では、製造及び保守方法によって生産された航空宇宙構成要素は、複数のシステム及び内装を備える機体を含みうる。複数のシステムの例には、推進システム、電気システム、油圧システム、及び環境システムのうちの一又は複数が含まれうる。任意の数の他のシステムが含まれることもある。航空宇宙産業の例を示したが、種々の例示的な実施形態は、自動車産業のような他の産業にも応用されうる。
【0063】
本書で具現化される装置及び方法は、航空宇宙構成要素の製造及び/又は保守方法の段階のうちの少なくとも1つにおいて採用されることがある。具体的には、複合材構造体100(例えば図1)、コーティング、射出成型プラスチック、及び/又は接着剤は、航空宇宙構成要素の製造及び保守方法の段階のうちのいずれかにおいて製造されうる。限定する訳ではないが例としては、複合構造体は、構成要素及びサブアセンブリの製造、システムインテグレーション、定期的な製造及び保守、又は航空機の製造及び保守の他の何らかの段階のうちの少なくとも1つにおいて、製造されうる。また更に、複合構造体は、航空宇宙構成要素の一又は複数の構造体において使用されうる。例えば、複合構造体は、航空機、宇宙船、衛星、又は他の航空宇宙構成要素の機体、内装、又は他の何らかの部品の構造体に含まれうる。
【0064】
本開示の一態様により、複合構造体の中での微小亀裂生成に抵抗する方法であって、繊維、樹脂、及び繊維に関連付けられた樹脂リッチポケット内に配置された改質材を有する複合構造体に、負荷を印加するステップと、樹脂リッチポケット内に改質材が欠けている複合構造体によって提供される負荷抵抗とは異なる負荷抵抗を用いて、負荷に抵抗するステップとを含む、方法が提供される。有利には、方法は、改質材が欠けている複合構造体の樹脂リッチポケット内に発生する亀裂初発又は亀裂成長に対して、複合構造体の熱サイクル中の樹脂リッチポケット内の亀裂初発又は亀裂成長を低減することを、更に含む。本開示の一態様により、樹脂、樹脂の中に少なくとも部分的に埋め込まれた繊維、繊維に関連付けられた一又は複数の樹脂リッチポケット、及び、一又は複数の樹脂リッチポケット内に配置された改質材を備える、複合構造体であって、改質材は、樹脂特性とは異なる少なくとも1つの改質材特性を有する、複合構造体が提供される。有利には、改質材は、複数の改質粒子、溶液、又はコーティングのうちの少なくとも1つである。有利には、改質粒子の少なくとも一部分は球形である。
【0065】
有利には、改質材は、一又は複数の連続的な改質フィラメントとして構成される。有利には、改質フィラメントは、熱可塑性フィラメント、強靭化された樹脂又は接合剤でコーティングされた炭素フィラメント、及び、樹脂リッチポケット内の樹脂の靱性を増大させる溶解性フィラメントのうちの少なくとも1つとして提供される。有利には、改質材は、樹脂と同一の材料から形成され、かつ、樹脂の最終硬化の前に少なくとも部分的に硬化される。
【0066】
本開示の一態様により、製造ツールに繊維を関連付けることと、繊維に関連付けられた樹脂リッチポケット内に改質材を含むこととを含む、複合構造体を製造する方法が提供される。有利には、繊維プリフォームに改質材を適用するステップは、複合レイアップの一又は複数のプライ上に改質粒子を噴霧すること、及び、樹脂リッチポケットになるであろう区域内に改質粒子を噴霧/適用すること、のうちの少なくとも1つを含む。有利には、樹脂リッチポケット内に改質材を含むステップは、繊維の外縁部の一又は複数の強化フィラメントに改質コーティングを適用することを含み、改質コーティングは、熱硬化モノマーコーティング又は熱硬化プレポリマーコーティングを含む。有利には、繊維プリフォームに改質材を適用するステップは、繊維トウ、一方向性テープ、及び/又は織布の形成中に改質コーティングを適用すること、及び、繊維トウ、一方向性テープ、及び/又は織布のプリプレグ中に改質コーティングを適用すること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0067】
本開示の追加的な改変及び改善が、当業者には明白でありうる。ゆえに、本書で説明され図示されている、部品の特定の組み合わせは、本開示のある特定の実施形態のみを表すことを意図しており、本開示の本質及び範囲に含まれる代替的な実施形態又は装置を限定する役割を果たすことは意図していない。
図1
図2
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図5
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