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  • 特許-活物質リサイクルシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】活物質リサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20231130BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231130BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231130BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231130BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M10/54
G06Q50/10
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M10/48 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018224665
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020087851
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】東 啓一郎
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】稲葉 崇
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-126669(JP,A)
【文献】特開2017-079211(JP,A)
【文献】特開2018-133237(JP,A)
【文献】特開2007-141464(JP,A)
【文献】特開2018-156768(JP,A)
【文献】特開2013-218909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/44
H01M10/42-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用活物質粒子が被覆材で被覆された被覆活物質を含み、被覆活物質の非結着体からなる電極活物質層を備えるリチウムイオン電池における被覆活物質を繰り返し使用する、活物質リサイクルシステムであって、
1次製品としてのリチウムイオン電池の用途が車載用途であり、
2次製品としてのリチウムイオン電池の用途が、家庭用又は業務用の、定置用電源又は非常用電源であり、
1次製品としてのリチウムイオン電池につき、電池容量を計測する電池容量測定部と、リサイクル時期を判断するコンピュータとが電気通信回線を通じて接続されており、前記電池容量測定部で測定した電池容量が前記コンピュータに送られて、前記コンピュータが受信した電池容量と前記1次製品としての仕様で定められた電池容量を比較することによりリサイクル時期を判断するリサイクル時期判断手段を使用して、前記1次製品としてのリチウムイオン電池のリサイクル時期を判断するステップ、
前記1次製品としてのリチウムイオン電池を解体し、被覆活物質を取り出すステップ、
取り出した被覆活物質から被覆材を除去し、再度被覆材でリチウムイオン電池用活物質粒子を再被覆することにより被覆活物質をリサイクルするステップ、
再被覆した被覆活物質を使用して、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造するステップ、を備えることを特徴とする活物質リサイクルシステム。
【請求項2】
1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、前記被覆活物質の所有権を証券化して資金調達し、
1次製品としてのリチウムイオン電池を購入して使用する使用者は、リチウムイオン電池の使用後に活物質リサイクルシステムにリチウムイオン電池のリサイクルを委託し、
2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、証券化された被覆活物質の所有権を購入する、又は、証券化された被覆活物質の賃借権を得て、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造する、請求項1に記載の活物質リサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(二次)電池は、高容量で小型軽量な二次電池として、近年様々な用途
に多用されている。一般的なリチウムイオン電池は、正極活物質、バインダ樹脂及び電
解液を含む正極活物質層と、同様に負極活物質、バインダ樹脂及び電解液を含む負極活
物質層とがセパレータを挾んで積層された状態で容器に収納されて構成されている(例え
ば特許文献1参照)。
【0003】
正極活物質の材料には、ニッケルの酸化物やコバルトの酸化物が使用される。これらの金属は価格が高価であり、その埋蔵量が限られていることから価格変動も大きい。
そのため、これらの金属を含む活物質をリサイクルして使用することによりリチウムイオン電池を安定的に製造することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-324118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリチウムイオン電池では、正極活物質層及び負極活物質層にはバインダ樹脂が含まれており、このバインダ樹脂により正極活物質層及び負極活物質層が固化され、活物質層が集電体と強固に結着しているため、リチウムイオン電池から活物質を取り出すことは困難であった。
【0006】
また、このようなリチウムイオン電池から活物質を取り出すことができたとしても、その取り出しに要するコストが高く、リサイクルを含むシステムを構築することは現実的ではなかった。
【0007】
また、活物質をリサイクルしたとしても、リサイクル後の活物質を使用して製造される電池の電池容量は、新品の電池の電池容量よりも低くなることがあり、リサイクル前に使用されていた電池と同じ用途には使用できないことがあった。
そのため、リサイクル後の活物質を使用して製造されるリサイクル済み電池を有効に使用する方法も必要とされていた。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、高価な金属を使用した活物質を複数回にわたって繰り返し再利用することで有効に利用することのできる活物質リサイクルシステムを提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の活物質リサイクルシステムは、リチウムイオン電池用活物質粒子が被覆材で被覆された被覆活物質を含み、被覆活物質の非結着体からなる電極活物質層を備えるリチウムイオン電池における被覆活物質を繰り返し使用する、活物質リサイクルシステムであって、
1次製品としてのリチウムイオン電池につき、電池容量を計測する電池容量測定部と、リサイクル時期を判断するコンピュータとが電気通信回線を通じて接続されており、上記電池容量測定部で測定した電池容量が上記コンピュータに送られて、上記コンピュータが受信した電池容量と上記1次製品としての仕様で定められた電池容量を比較することによりリサイクル時期を判断するリサイクル時期判断手段を使用して、上記1次製品としてのリチウムイオン電池のリサイクル時期を判断するステップ、
上記1次製品としてのリチウムイオン電池を解体し、被覆活物質を取り出すステップ、
上記1次製品から取り出した活物質を含む被覆活物質を使用して、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造するステップ、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高価な金属を使用した活物質を複数回にわたって繰り返し再利用することで有効に利用することのできる活物質リサイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、活物質リサイクルシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0013】
本発明の活物質リサイクルシステムは、リチウムイオン電池用活物質粒子が被覆材で被覆された被覆活物質を含み、被覆活物質の非結着体からなる電極活物質層を備えるリチウムイオン電池における被覆活物質を繰り返し使用する、活物質リサイクルシステムであって、1次製品としてのリチウムイオン電池につき、電池容量を計測する電池容量測定部と、リサイクル時期を判断するコンピュータとが電気通信回線を通じて接続されており、上記電池容量測定部で測定した電池容量が上記コンピュータに送られて、上記コンピュータが受信した電池容量と上記1次製品としての仕様で定められた電池容量を比較することによりリサイクル時期を判断するリサイクル時期判断手段を使用して、上記1次製品としてのリチウムイオン電池のリサイクル時期を判断するステップ、上記1次製品としてのリチウムイオン電池を解体し、被覆活物質を取り出すステップ、上記1次製品から取り出した活物質を含む被覆活物質を使用して、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造するステップ、を備えることを特徴とする。
【0014】
まず、本発明の活物質リサイクルシステムでリサイクルの対象となるリチウムイオン電池について説明する。
リチウムイオン電池は、リチウムイオン電池用活物質粒子が被覆材で被覆された被覆活物質を含み、被覆活物質の非結着体からなる電極活物質層を備える。
【0015】
リチウムイオン電池用活物質粒子としては、リチウムイオン電池用正極活物質又はリチウムイオン電池用負極活物質の粒子を使用することができる。
リチウムイオン電池用正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0016】
リチウムイオン電池用負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記リチウムイオン電池用負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0017】
被覆材は高分子化合物を含む。
また、被覆材は好ましくはさらに導電剤を含むことが好ましい。
リチウムイオン電池用活物質の周囲が被覆材で被覆されている被覆活物質であると、活物質粒子の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
【0018】
続いて、被覆材を構成する高分子化合物について具体的に説明する。
被覆材を構成する高分子化合物としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、ビニル樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリサッカロイド(アルギン酸ナトリウム等)及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中では、電解液に浸漬した際の吸液率が10%以上であり、飽和吸液状態での引張破断伸び率が10%以上である高分子化合物がより好ましい。
【0019】
ビニル樹脂(A)は、ビニルモノマー(a)を必須構成単量体とする重合体(A1)を含んでなる樹脂である。
特に、重合体(A1)は、ビニルモノマー(a)としてカルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)又は下記一般式(2)で表されるビニルモノマー(a2)を含むことが好ましい。
CH=C(R)COOR (2)
[式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~12の直鎖又は炭素数4~36の分岐アルキル基である。]
ビニル樹脂(A)のうち、電解液に浸漬した際の吸液率が10%以上であり、飽和吸液状態での引張破断伸び率が10%以上であるものがより好ましい。
【0020】
カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)としては、(メタ)アクリル酸(a11)、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸(a11)が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
【0021】
上記一般式(2)で表されるビニルモノマー(a2)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0022】
(a21)Rが炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。
【0023】
(a22)Rが炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0024】
重合体(A1)は、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)をさらに含んでいることが好ましい。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
【0025】
エステル化合物(a3)の含有量は、正極活物質の体積変化抑制等の観点から、重合体(A1)の合計重量に基づいて、10~60重量%であることが好ましく、15~55重量%であることがより好ましく、20~50重量%であることがさらに好ましい。
【0026】
また、重合体(A1)は、さらに重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含有することが好ましい。
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0027】
アニオン性単量体の塩(a4)の含有量は、内部抵抗等の観点から、高分子化合物の合計重量に基づいて0.1~15重量%であることが好ましく、1~15重量%であることがより好ましく、2~10重量%であることがさらに好ましい。
【0028】
重合体(A1)は、(メタ)アクリル酸(a11)とエステル化合物(a21)とを含むことが好ましく、さらにエステル化合物(a3)を含むことがより好ましく、さらにアニオン性単量体の塩(a4)を含むことが特に好ましい。
【0029】
高分子化合物は、(メタ)アクリル酸(a11)、下記一般式(1)で示されるエステル化合物(a21)、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)及び重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含んでなる単量体組成物を重合してなり、上記エステル化合物(a21)と上記(メタ)アクリル酸(a11)の重量比[上記エステル化合物(a21)/上記(メタ)アクリル酸(a11)]が10/90~90/10であることが好ましい。
CH=C(R)COOR (1)
[Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基である。]
エステル化合物(a21)と(メタ)アクリル酸(a11)の重量比が10/90~90/10であると、これを重合してなる重合体は、正極活物質との接着性が良好で剥離しにくくなる。
上記重量比は、30/70~85/15であることが好ましく、40/60~70/30であることがさらに好ましい。
【0030】
また、重合体(A1)を構成する単量体には、カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)、上記一般式(2)で表されるビニルモノマー(a2)、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)及び重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)の他に、活性水素を含有しない共重合性ビニルモノマー(a5)が含まれていてもよい。
活性水素を含有しない共重合性ビニルモノマー(a5)としては、下記(a51)~(a58)が挙げられる。
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール又は炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0031】
(a52)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]
【0032】
(a53)窒素含有ビニル化合物
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
【0033】
(a53-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
【0034】
(a53-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
【0035】
(a53-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
【0036】
(a53-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
【0037】
(a54)ビニル炭化水素
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
【0038】
(a54-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
【0039】
(a54-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0040】
(a55)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
【0041】
(a56)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
【0042】
(a57)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
【0043】
(a58)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
【0044】
上記(a5)として例示したもののうち耐電圧の観点から好ましいのは、(a51)、(a52)及び(a53)である。
【0045】
重合体(A1)において、カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)、上記一般式(2)で表されるビニルモノマー(a2)、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)及び活性水素を含有しない共重合性ビニルモノマー(a5)の含有量は、重合体(A1)の重量を基準として、(a1)が0.1~80重量%、(a2)が0.1~99.9重量%、(a3)が0~60重量%、(a4)が0~15重量%、(a5)が0~99.8重量%であることが好ましい。
モノマーの含有量が上記範囲内であると、電解液への吸液性が良好となる。
より好ましい含有量は、(a1)が15~60重量%、(a2)が5~60重量%、(a3)が10~60重量%、(a4)が0.1~15重量%、(a5)が5~69.9重量%であり、さらに好ましい含有量は、(a1)が25~49重量%、(a2)が15~39重量%、(a3)が15~39重量%、(a4)が1~15重量%、(a5)が20~44重量%である。
【0046】
重合体(A1)の数平均分子量の好ましい下限は3,000、より好ましくは50,000、さらに好ましくは100,000、特に好ましくは200,000であり、好ましい上限は2,000,000、より好ましくは1,500,000、さらに好ましくは1,000,000、特に好ましくは800,000である。
【0047】
重合体(A1)の数平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
検出器:RI
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0048】
重合体(A1)は、公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合に際しては、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル等)]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して行なうことができる。
重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%である。
【0049】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、さらに好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、さらに好ましくは30~80重量%である。
【0050】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。さらに安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。使用量はモノマーの全重量に基づいて好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下である。
【0051】
続いて、被覆材に含まれる導電剤について説明する。
被覆材に含まれる導電剤は、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0052】
導電剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0053】
導電剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
【0054】
導電剤は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電剤が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。
【0055】
リチウムイオン電池用被覆活物質は、高分子化合物、導電剤及びリチウムイオン電池用活物質を混合することによって製造してもよく、高分子化合物と導電剤とを混合して被覆材を準備したのち、該被覆材とリチウムイオン電池用活物質とを混合することにより製造してもよい。
なお、リチウムイオン電池用活物質と高分子化合物と導電剤とを混合する場合、混合順序には特に制限はない。
【0056】
リチウムイオン電池用被覆活物質は、例えば、リチウムイオン電池用活物質を万能混合機に入れて30~50rpmで撹拌した状態で、高分子化合物を含む高分子溶液を1~90分かけて滴下混合し、さらに導電剤を混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持することにより得ることができる。
【0057】
リチウムイオン電池用被覆活物質を電極活物質層とする際は、リチウムイオン電池用被覆活物質及び導電材料を、分散媒(水、電解液又は溶剤)の重量に基づいて30~60重量%の濃度で分散してスラリー化した分散液を、集電体にバーコーター等の塗工装置で塗布後、分散媒として水又は溶剤を用いた場合には乾燥することによって、分散媒として電解液を用いた場合には過剰の電解液をスポンジ等の吸収体に吸収させたり、メッシュを介して吸引することよって分散媒を除去して、必要によりプレス機でプレスすればよい。
上記分散液には、電極用バインダは添加しないことが好ましい。活物質として被覆活物質を用いていないリチウムイオン電池用電極においては、電極用バインダで活物質を電極内に固定することで導電経路を維持する必要がある。しかし、リチウムイオン電池用被覆活物質を用いた場合は、被覆材の働きによって活物質を電極内に固定することなく導電経路を維持することができるため、電極用バインダを添加する必要がない。電極用バインダを添加しないことによって、活物質が電極活物質層内で固定化されないため活物質の体積変化に対する緩和能力が更に良好となる。
このようにして得られる電極活物質層は、被覆活物質の非結着体からなるといえる。
なお、電極活物質層の製造に用いる導電材料は、被覆材が含む導電剤とは別であり、被覆活物質が有する被覆材の外部に存在し、電極活物質層中において被覆活物質表面からの電子伝導性を向上する機能を有する。
【0058】
リチウムイオン電池用被覆活物質を含む電極活物質層を用いてリチウムイオン電池を作製する際には、対極となる電極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収容し、電解液を注入し、セル容器を密封する方法等により製造することができる。
また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成して双極型電極を作製し、双極型電極をセパレータと積層してセル容器に収容し、電解液を注入し、セル容器を密閉することでも得られる。
【0059】
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータが挙げられる。
【0060】
セル容器に注入する電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0061】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiN(FSO、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはイミド系電解質[LiN(FSO、LiN(CFSO及びLiN(CSO等]及びLiPFである。
【0062】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0063】
電解液の電解質濃度は、1~5mol/Lであることが好ましく、1.5~4mol/Lであることがより好ましく、2~3mol/Lであることがさらに好ましい。
電解液の電解質濃度が1mol/L未満であると、電池の充分な入出力特性が得られないことがあり、5mol/Lを超えると、電解質が析出してしまうことがある。
なお、電解液の電解質濃度は、リチウムイオン電池用電極又はリチウムイオン電池を構成する電解液を、溶媒などを用いずに抽出して、その濃度を測定することで確認することができる。
【0064】
本発明の活物質リサイクルシステムでリサイクルの対象となる活物質は、正極活物質、負極活物質のいずれでもよいが、高価な活物質をリサイクルすることが効果的であるため、正極活物質を対象にすることが好ましい。
以下の説明では、活物質が高価な正極活物質であることを前提にしているが、負極活物質を対象としてもよい。
【0065】
1次製品としてのリチウムイオン電池の用途は、特に限定されるものではないが、単位体積当たりの電池容量が大きいことが要求される用途に使用することができる。例えば、車載用途、モバイル端末(ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、携帯電話等)が挙げられる。
特に、車載用途には、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の台数増加に伴って、これらの車の駆動用に多くのリチウムイオン電池が使用されることが予想される。このことから、車載用途に使用されるリチウムイオン電池のリサイクルをすることが望まれているため、車載用途に使用することがより好ましい。
1次製品としては、その電池容量が300Wh/L以上であることが必要とされる用途であることが好ましい。
車載用途に使用されるリチウムイオン電池は、複数のセルを組み込んだモジュールにまとめられているものであってもよい。
【0066】
2次製品としてのリチウムイオン電池の用途は、特に限定されるものではないが、リサイクル後には1次製品よりも単位体積当たりの電池容量が小さくなることから、必要とされる単位体積当たりの電池容量が1次製品よりも小さくてもよい用途に使用することが好ましい。
例えば、家庭用、業務用の定置用電源、非常用電源が挙げられる。
2次製品としては、その電池容量が200Wh/L以上であることが必要とされる用途であることが好ましい。また、その電池容量が200Wh/L未満であってもよい用途に使用しても構わない。
【0067】
そして、本発明のリサイクルシステムにおける1次製品としてのリチウムイオン電池の用途と2次製品としてのリチウムイオン電池の用途が異なることが好ましい。
1次製品の用途が車載用途であり、2次製品の用途が定置用電源用途であることが好ましい。
【0068】
図1は、活物質リサイクルシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
活物質リサイクルシステムにおいて、リサイクル時期を判断するステップS1では、以下のようにして1次製品として使用可能な期限を判断する。
まず、1次製品としてのリチウムイオン電池の用途でリチウムイオン電池を使用する(S11)。
リチウムイオン電池は、充電と放電(電池の使用)を繰り返して使用される。
リチウムイオン電池の充電の際に、電池容量測定部10において電池容量を計測する(S12)。
電池容量測定部は、リチウムイオン電池の一部品として組み込まれていることが多い。リチウムイオン電池が、複数のセルを組み込んだモジュールにまとめられているものである場合、モジュールの一部品として組み込まれることが多い。
【0069】
電池容量測定部10は、コンピュータ20と電気通信回線を通じて接続されている。電池容量測定部において計測された電池容量はコンピュータ20に送られる。
コンピュータ20には、1次製品としてのリチウムイオン電池の用途において仕様で定められた電池容量が記憶されており、受信した電池容量の数値と比較される(S13)。
【0070】
コンピュータが受信した電池容量と1次製品としての仕様で定められた電池容量を比較し、受信した電池容量が1次製品としての仕様で定められた電池容量以上である場合は、まだ1次製品として使用可能と判断し、1次製品としてリチウムイオン電池を使用するステップS11に戻る。
【0071】
コンピュータが受信した電池容量と1次製品としての仕様で定められた電池容量を比較し、受信した電池容量が1次製品としての仕様で定められた電池容量未満である場合、1次製品としての使用はできないと判断し、1次製品としてのリチウムイオン電池を解体し、被覆活物質を取り出すステップS2へ移る。
【0072】
被覆活物質を取り出すステップS2では、1次製品としてのリチウムイオン電池を解体して被覆活物質を取り出す(S21)。リチウムイオン電池を解体して被覆活物質を取り出す手順及び方法は特に限定されるものではないが、例えば以下のようにすることができる。
リチウムイオン電池は、通常は外装容器に覆われているので、外装容器を取り外す。外装容器を取り外して電極活物質層を露出させる。
電極活物質層における被覆活物質は、バインダ(結着剤)で固められていない非結着体からなる。この場合、電極活物質層中において、例え被覆活物質同士が接触したとしても、接触面において被覆材同士が不可逆的に接着することはなく、接着は一時的なものであるから、被覆活物質同士が不可逆的に被覆材によって固定されておらず、被覆活物質を破壊することなくほぐすことができる。被覆活物質を含む混合物の非結着体を含んでなる電極活物質層は、被覆活物質が互いに結着されているものではなく、非結着体である被覆活物質を手や道具でほぐして分離して取り出すことができる。また、シャワーノズル等を用いて電解液を注ぐことによってスラリー状にして、被覆活物質を活物質スラリーとして取り出してもよい。
【0073】
1次製品としてのリチウムイオン電池を解体して取り出した被覆活物質は、そのまま2次製品としてのリチウムイオン電池の製造に使用してもよい。
被覆活物質をそのまま使用するとは、被覆活物質から被覆材を除去せずに使用することを意味しており、被覆活物質に対して必要な洗浄処理等を行ったのちに使用することは許容される。
【0074】
また、1次製品としてのリチウムイオン電池を解体し、被覆活物質を取り出すステップの後に、取り出した被覆活物質から被覆材を除去し、再度被覆材でリチウムイオン電池用活物質粒子を再被覆することにより被覆活物質をリサイクルするステップを行い、再被覆した被覆活物質を2次製品としてのリチウムイオン電池の製造に使用してもよい(S4、S41)。被覆材を構成する高分子化合物の変性等によって被覆活物質の表面状態が変化し、電池容量の低下の原因になる場合があり、このような場合には被覆材を再被覆することによって被覆活物質の性能を回復させることができる。
被覆材の除去方法としては、被覆材を構成する高分子化合物を溶解させることのできる溶剤中で高分子化合物を溶解除去する方法や、高分子化合物の焼失温度以上に被覆活物質を加熱する方法が挙げられる。
活物質の再被覆方法は、最初の被覆活物質の製造工程において活物質を被覆材で被覆する方法と同様にすることができる。
【0075】
上記1次製品から取り出した活物質を含む被覆活物質を使用して、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造するステップS3では、上記被覆活物質を使用して、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造する(S31)。
1次製品から取り出した活物質を含む被覆活物質としては、1次製品から取り出した被覆活物質をそのまま使用してもよく、1次製品から取り出した被覆活物質から被覆材を除去し、再度被覆材でリチウムイオン電池用活物質粒子を再被覆することにより得られた被覆活物質を使用してもよい。
【0076】
上記被覆活物質を使用して、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造する際には、1次製品としてのリチウムイオン電池と同様にバインダを使用せずにリチウムイオン電池用電極を製造してもよい。また、バインダを使用してリチウムイオン電池用電極を製造するようにしてもよい。
【0077】
2次製品としてのリチウムイオン電池が、バインダを使用せずに製造されたリチウムイオン電池である場合、1次製品としてのリチウムイオン電池と同様に、2次製品としてのリチウムイオン電池を解体してさらに3次製品としてのリチウムイオン電池を製造するリサイクルを行うことができる。
この場合、2次製品としてのリチウムイオン電池について電池容量測定部で測定した電池容量と、2次製品としての仕様で定められた電池容量を比較することにより、リサイクル時期を判断すればよい。
2次製品としての仕様で定められた電池容量は、1次製品としての仕様で定められた電池容量より小さい。
【0078】
2次製品としてのリチウムイオン電池をさらにリサイクルして、3次製品、さらに4次製品・・・としてのリチウムイオン電池として使用すると、高価な金属を使用した活物質を有効にかつ複数回にわたって使用することができるので、資源保護の観点及び経済的な観点から非常に有益である。
【0079】
また、本発明の活物質リサイクルシステムに関連して、高価な活物質の価格変動によりリチウムイオン電池の製造者及び使用者が受ける影響を緩和するため、被覆活物質の所有権を証券化する枠組みを利用することも好ましい。
例えば、1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、上記被覆活物質の所有権を証券化して資金調達し、1次製品としてのリチウムイオン電池を購入して使用する使用者は、リチウムイオン電池の使用後に活物質リサイクルシステムにリチウムイオン電池のリサイクルを委託し、2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、証券化された被覆活物質の所有権を購入する、又は、証券化された被覆活物質の賃借権を得て、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造するようにすることが好ましい。
【0080】
1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、上記被覆活物質の所有権を証券化して資金調達することができる。被覆活物質の所有権を証券化することで、活物質の購入にかかる費用の一部を証券の購入者(銀行、保険会社等の投資家)が負担することになるので好ましい。費用の一部を証券の購入者が負担することでリチウムイオン電池の製造者は、実質的に市場価格よりも安い価格で活物質を使用して1次製品としてのリチウムイオン電池を製造することができる。
【0081】
1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、市場価格よりも安い価格で活物質の調達ができたことから、リチウムイオン電池の販売価格を安くすることができる。
1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者は、安い価格でリチウムイオン電池を購入して使用することができる。ここで、被覆活物質の所有権は証券の購入者が有しているので、リチウムイオン電池の使用者は被覆活物質の所有権は有していないことになり、証券の購入者から被覆活物質を借りている状態となる。そのため、1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者は何らかの形で証券の購入者に費用を払うようにする。
費用を払う指標としては、月ぎめの費用のように使用期間に応じた費用とする方法や、リチウムイオン電池の使用により得た便益(例えば、使用した電力量、車載用であれば走行距離等の指標)に応じて費用を支払う方法が挙げられる。
このようにすることで、証券の購入者は利益を享受することができる。
【0082】
1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者は、リチウムイオン電池の使用の際に測定した電池容量が1次製品としてのリチウムイオン電池の用途において仕様で定められた電池容量未満となった場合に、活物質リサイクルシステムにリチウムイオン電池のリサイクルを委託する。
1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者は、リサイクルを委託することで実質的には被覆活物質を返却することとなる。
【0083】
リサイクルを実施するのは、1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者、1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者、2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者、又は、他の第三者(リサイクルのみを行う者)であってもよい。
リサイクルの実施者は、具体的には、1次製品としてのリチウムイオン電池を解体して被覆活物質を取り出す。リサイクルの実施者は、取り出した被覆活物質から被覆材を除去し、活物質に被覆材を再被覆してもよい。
以下の説明では、1次製品から取り出した活物質を含む被覆活物質について、取り出した被覆活物質がそのまま使用される場合の被覆活物質と、活物質に被覆材を再被覆した被覆活物質が使用される場合の被覆活物質をまとめて、「リサイクル済みの被覆活物質」とする。
リサイクルの実施者は、証券の購入者(被覆活物質の所有者)からリサイクルに係る作業費用を得ることができる。
【0084】
1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者がリサイクルを実施する場合、リチウムイオン電池の使用後にリチウムイオン電池を解体し被覆活物質を取り出して、リサイクル済みの被覆活物質を市場に戻す。
1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者又は他の第三者(リサイクルのみを行う者)がリサイクルを実施する場合は、1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者が被覆活物質の所有者に返却した1次製品としてのリチウムイオン電池を入手して、リチウムイオン電池の使用後にリチウムイオン電池を解体し被覆活物質を取り出して、リサイクル済みの被覆活物質を市場に戻す。
【0085】
2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、証券化された被覆活物質の所有権を購入する、又は、証券化された被覆活物質の賃借権を得て、2次製品としてのリチウムイオン電池を製造する。
2次製品としてのリチウムイオン電池が最終用途である場合は被覆活物質の所有権を購入することが好ましいが、さらに3次製品としてのリチウムイオン電池に被覆活物質を使用することを予定している場合は、証券化された被覆活物質の賃借権を得るようにすることが好ましい。
また、2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者がリサイクルを実施する場合は、証券化された被覆活物質の所有権を購入する、又は、証券化された被覆活物質の賃借権を得たのちに、1次製品としてのリチウムイオン電池を入手し、解体して被覆活物質を取り出し、リサイクル済みの被覆活物質を用いて2次製品としてのリチウムイオン電池を製造する。
【0086】
2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は、市場から新しい活物質を購入してリチウムイオン電池を製造する場合に比べて、安価にリチウムイオン電池を製造することができる。
2次製品としてのリチウムイオン電池は、その用途から、新しい活物質を使用することは必須ではなくリサイクル済みの被覆活物質を使用しても電池容量の値がその仕様を満たすことができるので、安価であるリサイクル済みの被覆活物質を使用することができる。
【0087】
証券の購入者は、この枠組みの中で、活物質の価格変動によるメリットとリスクを背負うことになる。活物質の市場価格が証券の購入時より上昇した場合は証券価格が上昇するので証券を売却することで利益を得ることができるが、活物質の市場価格が証券の購入時よりも低下した場合は証券価格も低下するので損失を被ることとなる。
【0088】
また、証券の購入者は、当該証券に係る被覆活物質を使用したリチウムイオン電池が使用されている限り、その使用に係る費用の支払いを受けることができる。
最終製品としてのリチウムイオン電池の使用が終了した時点で、その証券に係る被覆活物質の価値は実質的にゼロとなる。そのため、証券の価格も実質的にゼロとなる。
そこで、1次製品としてのリチウムイオン電池から、最終製品としてのリチウムイオン電池まで、被覆活物質の使用開始から使用終了までに得られる費用支払い額が、証券の購入額より高くなるように被覆活物質の使用に係る価格を設定することで、証券の購入者がより確実に利益を得ることができる。
【0089】
この枠組みに参加する各事業者は以下のようなメリットを得ることができる。
1次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は市場価格よりも安い価格で活物質を調達してリチウムイオン電池を製造することができる。
1次製品としてのリチウムイオン電池の使用者は市場価格よりも安い価格でリチウムイオン電池を調達することができる。
2次製品としてのリチウムイオン電池の製造者は市場価格よりも安い価格で被覆活物質を調達してリチウムイオン電池を製造することができる。
そして、各事業者は活物質の価格変動に係るリスクを低減させることができる。
また、証券化された被覆活物質の所有権を購入する投資家は、被覆活物質がリサイクルされて使用される過程でその使用に係る費用の支払いを受けることができる。
すなわち、この枠組みに参加する事業者のそれぞれが、被覆活物質のリサイクルによる便益を享受することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の活物質リサイクルシステムは、高価な金属を使用した活物質を有効にかつ複数回にわたってリチウムイオン電池の活物質として使用することができるので、資源保護の観点及び経済的な観点から非常に有用である。
【符号の説明】
【0091】
10 電池容量測定部
20 コンピュータ
図1