(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】高いTgを有するMXDT/XTコポリアミド製のバリア構造
(51)【国際特許分類】
C08G 69/26 20060101AFI20231130BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231130BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20231130BHJP
C08K 3/017 20180101ALI20231130BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
C08G69/26
B32B27/34
C08K3/014
C08K3/017
C08L77/06
(21)【出願番号】P 2018531449
(86)(22)【出願日】2016-12-15
(86)【国際出願番号】 FR2016053471
(87)【国際公開番号】W WO2017103504
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-10-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-09
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】カプロ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】デュフォール,ニコラ
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】藤井 勲
【審判官】海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159014(WO,A1)
【文献】特表2017-517595(JP,A)
【文献】特開2014-240148(JP,A)
【文献】特開2014-240149(JP,A)
【文献】特開2015-104830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/033792(US,A1)
【文献】国際公開第2005/102694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00 - 69/50
C08L 77/00 - 77/12
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/40
F16L 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル、タンク、コンテナ、パイプ、容器及びフィルムから選択され、MXDT/XTコポリアミドを含む少なくとも1つのバリア層(1)を含むバリア構造であって、
MXDTが、5~45%、好ましくは15~45%、より優先的には20~45%の範囲のモル含有率で存在するアミド部分を含む単位であり(ただし、MXDはm-キシリレンジアミン(MXD)を表し、Tはテレフタル酸を表す)、
XTが、55~95%、好ましくは55~85%、より優先的には55~80%の範囲のモル含有率で存在する主要アミド部分を含む単位であり(ただし、Xは、C
9~C
18、好ましくはC
9、C
10、C
11
又はC
12の直鎖脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸である)、
前記コポリアミドが、規格ISO11357-3(2013)に従って測定された融点:250℃<Tm≦300℃を有し、
- MXDT単位及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して30モル%までのテレフタル酸を、6~36個の炭素原子、特に6~14個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸で置き換えることができ、
- MXDT単位及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対してMXDの30モル%まで及び/又は適宜Xの30モル%までを、4~36個の炭素原子、特に6~12個の炭素原子を含む他のジアミンで置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30モル%以下をラクタム又はアミノカルボン酸によって形成することができ、
- テレフタル酸、MXD及びXを置き換えるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30モル%の濃度を超えないということを条件とし、
- MXDが完全には置換されないということを条件とし、
前記バリア層(1)が強化用繊維を含まず、
第2の層(2)が存在し、前記層(1)及び(2)が互いに付着することができ、
前記層(2)が、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA610及びPA612から選択される少なくとも1つのポリアミドを含み、
第3の層(3)が存在し、該層(3)が前記層(1)とは異なり、結合層であり、
少なくとも1つの他の層(4)が存在し、該層(4)がEVOHの層である、
バリア構造。
【請求項2】
前記コポリアミドが、規格ISO11357-2:2013に従って測定されたガラス転移温度Tg≧125℃を有する、請求項1に記載のバリア構造。
【請求項3】
Xが1,10-デカンジアミンである、請求項1又は2に記載のバリア構造。
【請求項4】
前記コポリアミドのモノマーのいずれも、別のジアミン、別のジカルボン酸又はラクタムで置換されていない、請求項1から3のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項5】
前記層(1)が衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項6】
前記層(1)が、有機安定剤、無機安定剤、特に銅系安定剤、及びそれらの混合物から選択される安定剤を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項7】
前記層(1)が、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、鉱物充填剤、難燃剤、核形成剤、可塑剤、及び染料から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる、請求項1から
6のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項8】
前記層(2)の前
記ポリアミドが、少なくとも1つのラクタム、1つのアミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸との重縮合から得られ、前記ジアミンが、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンから選択され、前記ジカルボン酸が、脂肪族二酸及び脂環式二酸、又はそれらの混合物から選択される、請求項1から
7のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項9】
前記層(2)のポリアミドとは異なる別のポリアミドが前記層(2)中に存在することができる、請求項1から
8のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項10】
可塑剤が前記層(2)中に存在する、請求項1から
9のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項11】
衝撃改質剤が前記層(2)中に存在する、請求項1から
10のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項12】
前記層(2)が、有機安定剤、無機安定剤、特に銅系安定剤、及びそれらの混合物から選択される安定剤を含む、請求項1から
11のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項13】
前記層(1)が有機安定剤を含み、前記層(2)が無機安定剤、特に銅系安定剤を含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項14】
前記層(1)が無機安定剤、特に銅系安定剤を含み、前記層(2)が有機安定剤を含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項15】
前記層(2)が、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維及びカーボンナノチューブ、特にカーボンブラック及びカーボンナノチューブから選択される帯電防止充填剤を含む、請求項1から
14のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項16】
前記層(2)が、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、鉱物充填剤、難燃剤、核形成剤、及び染料から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる、請求項1から
15のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項17】
前記層(1)がバリア層、特に流体に対するバリアであり、該流体が、ガソリン、特にバイオガソリン(ガソリンとアルコール、特にメタノール又はエタノールとの混合物)、又はディーゼル、特にバイオディーゼルである燃料、オイル、ブレーキ液、尿素溶液、グリコール系冷却流体、ガス、特に圧縮空気から選択され、前記バリア層(1)が前記流体と接触する、請求項1から
16のいずれか一項に記載のバリア構造。
【請求項18】
前記構造が外側から内側に以下の層、即ち、(2)//(4)//(3)//(1)を含み、前記層(1)が前記流体と接触する、請求項
17に記載のバリア構造。
【請求項19】
前記結合層(3)と同一又は異なる結合層(3’)が存在する、請求項
18に記載のバリア構造。
【請求項20】
前記構造が外側から内側に以下の層、即ち(2)//(3’)//(4)//(3)//(1)を含み、前記層(1)が前記流体と接触する、請求項
19に記載のバリア構造。
【請求項21】
請求項1から
20のいずれか一項に記載のバリア構造で製造されたボトル、タンク、コンテナ、パイプ
又は容器。
【請求項22】
請求項1から
20のいずれか一項に記載の構造で製造されたフィルムからなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高いTgを有するMXDT/XTコポリアミドをベースとするバリア構造に関し、この構造は強化用繊維を含まない。この構造は、このポリフタルアミドの単層からなるか、又はMXDT/XTポリフタルアミドの層及び別の材料の少なくとも1つの層を含むことができる。
【0002】
このバリア構造は、任意の種類のボトル、タンク、コンテナ、パイプ及び容器のような流体の貯蔵及び/又は輸送を目的とした物体に使用される。この構造はまた、例えば、ガスのような流体に対してバリア特性を必要とする包装材にされたフィルムの形態であることができる。これらの全ての物体は、良好なバリア特性、即ち、流体、特に自動車用流体、特に燃料に対する非常に低い透過率を示す。
【0003】
本発明は、MXDT/XTコポリアミドを含む少なくとも1つのバリア層を備えた、構造、特に多層構造を製造するための、高いTgを有するMXDT/XTコポリアミドの使用にも関する。
【0004】
本発明はまた、これらの構造及びこれらの物体の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
先行技術及び技術的課題
任意の種類のボトル、タンク、コンテナ、パイプ及び容器のような物体で輸送又は貯蔵される流体にかかわらず、液体と直接接触する材料は、流体が液体であるかガスであるかにかかわらず、流体に対して透過性であってはならない。
【0006】
したがって、自動車分野及び一般的に輸送分野では、燃料の組成は絶えず変化しており、特に生態学的な理由から市場にバイオ燃料が徐々に出現している。これらの燃料はより攻撃的である。したがって、ガソリン輸送用パイプのように、これらの新しい燃料と接触する熱可塑性部品の品質を向上させることが不可欠であることがわかる。
【0007】
安全性と環境保全上の理由から、自動車メーカーは、寒冷条件(-40℃)及び高温(125℃)で良好な衝撃強度を有する破裂抵抗及び柔軟性等の機械的特性と、炭化水素及びそれらの添加剤、特にメタノール及びエタノールのようなアルコールに対する非常に低い透過率の両方をこれらのパイプに課している。これらの管はまた、燃料及びエンジン潤滑油に良好な耐性を持たなければならない。
【0008】
出願WO2014/064375号は、少なくとも90℃のガラス転移温度Tg及び280℃以下の融点Tmを有する半結晶性ポリアミド(PA)でできたマトリックスとの熱可塑性複合材料の組成物又は該複合材料用の組成物、該材料をベースとする機械部品又は構造部品、自動車、鉄道、船舶、道路輸送、風力、スポーツ、航空及び航空宇宙、建設、パネル及びレジャーの分野における用途用の複合材料製部品のためのこの発明の組成物の使用に関する。
【0009】
この組成物は、自動車分野の用途に関わる機械部品の製造に使用することができるが、この用途において、流体、特に燃料に対するバリアである層を含む構造について言及されていない。また、この組成物は常に強化用繊維を含む。
【0010】
EP1988113号には、
- 40~95モル%の10T
- 5~40%の6T
を有する10T/6Tコポリアミドをベースとする成形組成物が記載されている。
【0011】
EP1988113号は、これらの組成物の層からなる構造のバリア特性に関しては何も記載していない。
【0012】
EP1741553号は、(A)脂肪族ポリアミドを含む少なくとも1つの層(a)と、9~13個の炭素原子を有する少なくとも60モル%の脂肪族ジアミン及び少なくとも50モル%のテレフタル酸を含む半芳香族ポリアミドを含む層(b)とを含み、層(b)は内層である、2つ以上の層を含む多層構造を記載する。
【0013】
EP1741553号は、このような構造のバリア特性に関して全く何も記載していない。
【0014】
EP1860134号には、ジカルボン酸単位の50~100モル%が芳香族ジカルボン酸単位であるジカルボン酸単位と、ジアミン単位の60~100モル%が9~13個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン単位であるジアミン単位とを含む半芳香族ポリアミドの樹脂が記載されており、半芳香族ポリアミドは、6以上のアミン鎖末端/酸鎖末端比を有する。
【0015】
EP1860134号は、特に9T/9’T(又は8MT/9T)化合物を例示しており、前記比が6未満、特に4以下である場合、耐アルコール性が低下することを示す。
【0016】
国際出願WO10/015786号は、式A/10.Tのコポリアミドに関し、
Aは、アミノカルボン酸から得られた部分、ラクタムから得られた部分及び式(Caジアミン).(Cb(環状)脂肪族二酸)に相当する部分(aはジアミン中の炭素原子の数を表し、bは二酸中の炭素原子の数を表し、a及びbは各々4~36の間である)から選択され、
それは、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、3.5以下の多分散性指数(PDIと称する)を有することを特徴とする。
【0017】
WO10/015786号は、そのような構造のバリア特性に関して全く記載していない。
【0018】
WO2015/159014号は、ポリアミドの組成物の射出成形のための少なくとも1つの工程又は押出による加工のための工程を含む熱可塑性材料の製造方法を記載する。非常に多数のポリアミドが特許請求されており、ポリアミド組成物は単層又は多層構造を製造するために使用することができるが、特にMXDT/XTコポリアミドを含む構造のバリア特性については全く言及していない。
【0019】
また、これらのポリアミドは、特に結晶化度、コポリアミドの温度耐性の改善を目的とする結晶化速度、加工性、又はそれらの衝撃強度特性及びそれらのバリア特性の改善に関していまだ改善されるべきままである。
【0020】
したがって、特にバリア特性の点で改善された特性を有するポリフタルアミドを見出すことが本当に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】国際公開第2014/064375号
【文献】欧州特許出願公開第1988113号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1741553号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1860134号明細書
【文献】国際公開第2010/015786号
【文献】国際公開第2015/159014号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の簡単な説明
驚くべきことに、これらの必要性は、MXDT/XTポリアミドを含む少なくとも1つの層を含む構造で満たされることがわかり、
「MXDT」は、m-キシリレンジアミンキシリレンジアミンとテレフタル酸との混合物の縮合生成物に対応するアミド部分を含む単位を表し、
XTは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は芳香族アミドの残基を表すX及びテレフタル酸を表すTの縮合生成物に対応するアミド部分を含む単位を表す。
【0023】
MXDTは、5~45%、好ましくは15~45%、より優先的には20~45%の範囲のモル含有率で存在し(ただし、MXDはm-キシリレンジアミン(MXD)を表し、Tはテレフタル酸を表す)、
XTは、55~95%、好ましくは55~85%、より優先的には55~80%の範囲のモル含有率で存在する主要アミド部分を含む単位であり(ただし、Xは、C9~C18、好ましくはC9、C10、C11及びC12の直鎖脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸である)、
該コポリアミドは、規格ISO11357-3(2013)に従って測定された融点:250℃<Tm≦300℃を有し、
該構造は強化用繊維を含まない。
【0024】
したがって、高い剛性(高いTg)/良好な加工性(比較的低いTm)の妥協のために、もともと複合用途のために開発されたこれらの生成物は、アミン鎖末端/酸鎖末端比が特に5未満であるが、期待よりも良好な結晶構造を有し、バリア層、即ち、流体輸送のために、構造、特に多層構造において、流体、特に自動車用流体、特に燃料に対して非常に低い透過率を有する層として使用できることが判明した。
【0025】
換言すれば、前記構造は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含む少なくとも1つのバリア層(1)を含む、特にボトル、タンク、コンテナ、パイプ、容器及びフィルムから選択されたバリア構造である。
【0026】
本発明の構造は、このポリアミドの単層からなる(この場合は、それは強化用繊維を含まない)か、又はMXDT/XTポリアミドを含む(したがって、強化用繊維を含まない)層及び別の材料の少なくとも1つ層を含むことができ、該少なくとも1つの他の層は強化用繊維を含むことが可能である。
【0027】
本発明の構造において、MXDT/XTポリアミドを含む層は、他のポリマーを含むこともできる。これらの他のポリマーの例として、ポリアミド、EVOH、PPS、PPO、ポリカーボネート及びABSを挙げることができる。
【0028】
本発明は、MXDT/XTコポリアミドを含む少なくとも1つのバリア層を含む構造、特に多層構造を製造するための、高いTgを有するMXDT/XTコポリアミドの使用にも関する。
【0029】
本発明はまた、上記の構造で製造された任意の種類のボトル、タンク、コンテナ、パイプ及び容器に関する。この構造は、例えば、それを用いて包装材が製造されるフィルムの形態であってもよい。これらの物体は全て良好なバリア特性を有する。
【0030】
本発明はまた、これらの物体、並びにこれらの構造及びこれらの物体の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明の他の特徴、態様、主題及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことによりさらにより明らかになるであろう。
【0032】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、MXDT/XTコポリアミドを含む少なくとも1つの層(1)を含む構造であって、
MXDTが、5~45%、好ましくは15~45%、より優先的には20~45%の範囲のモル含有率で存在するアミド部分を含む単位であり(ただし、MXDはm-キシリレンジアミン(MXD)を表し、Tはテレフタル酸を表す)、
XTが、55~95%、好ましくは55~85%、より優先的には55~80%の範囲のモル含有率で存在する主要アミド部分を含む単位であり(ただし、Xは、C9~C18、好ましくはC9、C10、C11及びC12の直鎖脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸である)、
該コポリアミドが、規格ISO11357-3(2013)に従って測定された融点:250℃<Tm≦300℃を有し、
- MXDT単位及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して30モル%までのテレフタル酸を、6~36個の炭素原子、特に6~14個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸で置き換えることができ、
- MXDT単位及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対してMXDの30モル%まで及び/又は適宜Xの30モル%までを、4~36個の炭素原子、特に6~12個の炭素原子を含む他のジアミンで置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30モル%以下をラクタム又はアミノカルボン酸によって形成することができ、
- テレフタル酸、MXD及びXを置き換えるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30モル%の濃度を超えないということを条件とし、
- MXDが完全には置換されないということを条件とし、
該組成物が強化用繊維を含まない構造に関する。
【0033】
その結果として、本発明は少なくとも単層であり、そのうちの単層がMXDT/XTをベースとする構造を記載する。
【0034】
二酸及び/又はジアミンのために実施される現在の置換にかかわらず、MXDT及びXTの割合は、示された値の範囲内にとどまることは非常に明らかである。例えば、MXDTは、それが二酸及び/又はジアミンで置換される場合であっても、いずれの場合も、特許請求された値の範囲に応じて少なくとも5%又は少なくとも15%又は少なくとも20%のモル含有率で存在する。
【0035】
同様に、これらの値の範囲の上限は保たれる。
【0036】
有利には、コポリアミドは、<5というアミン鎖末端基の量/酸鎖末端基の量の比を有し、アミン鎖末端基の量及び酸鎖基の量は電位差測定法によって決定される。
【0037】
有利には、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル含有率で存在する。
【0038】
有利には、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル含有率で存在する。
【0039】
有利には、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル含有率で存在する。
【0040】
MXD及び/又はXは、互いに独立して、30モル%まで、上で定義した他のジアミン、特にMXD以外の直鎖又は分枝脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン又はアリール芳香族ジアミンによって置き換えることができる。
【0041】
一例として、直鎖又は分枝脂肪族ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(MPMD)、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン(OMDA)、1,9-ノナンジアミン(NMDA)、2-メチル-1,8-オクタンジアミン(MODA)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン及び1,18-オクタデカンジアミンから選択される。
【0042】
脂環式ジアミンは、シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)から選択することができる。
【0043】
Tは、上で定義した他のジカルボン酸、特に他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸によって30モル%まで置き換えることができる。
【0044】
芳香族ジカルボン酸は、ナフタレンジカルボン酸(NDA)及びイソフタル酸(IPS)から選択することができる。
【0045】
脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量化脂肪酸から選択することができる。
【0046】
脂環式ジカルボン酸は、シス及び/又はトランス-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はシス及び/又はトランス-1,3-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)から選択することができる。
【0047】
MXD及び/又はX及び/又はTは、互いに独立して、30モル%まで、ラクタム又はアミノカルボン酸で置き換えることができる。
【0048】
ラクタム及びアミノカルボン酸は、カプロラクタム(CL)、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択することができる。
【0049】
それが、別のジアミン、別の二酸、ラクタム若しくはアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物を有するかどうかにかかわらず、MXDモノマー、Xモノマー及びTモノマーの総和に対して最大30モル%の置き換えが可能である。
【0050】
有利には、それが、別のジアミン、別の二酸、ラクタム若しくはアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物を有するかどうかにかかわらず、MXDモノマー、Xモノマー及びTモノマーの総和に対して最大20モル%の置き換えが可能である。
【0051】
有利には、それが、別のジアミン、別の二酸、ラクタム若しくはアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物を有するかどうかにかかわらず、MXDモノマー、Xモノマー及びTモノマーの総和に対して最大10モル%の置き換えが可能である。
【0052】
有利には、XはC9~C18ジアミンである。
【0053】
有利には、XはC9~C18ジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0054】
有利には、XはC9~C18ジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0055】
有利には、XはC9~C18ジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0056】
有利には、XはC9、C10、C11、C12ジアミンである。
【0057】
有利には、XはC9、C10、C11、C12ジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0058】
有利には、XはC9、C10、C11、C12ジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0059】
有利には、XはC9、C10、C11、C12ジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0060】
有利には、XはC9ジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0061】
有利には、XはC9ジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0062】
有利には、XはC9ジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0063】
有利には、XはC10ジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0064】
有利には、XはC10ジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0065】
有利には、XはC10ジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0066】
有利には、XはC11ジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0067】
有利には、XはC11ジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0068】
有利には、XはC11ジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0069】
有利には、XはC12ジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0070】
有利には、XはC12ジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0071】
有利には、XはC12ジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0072】
「強化用繊維」又は「繊維補強材」という表現は、短繊維又は長繊維の集合を意味する。繊維は、連続していてもよいし、又は一方向(UD)又は多方向(2D、3D)補強材の形態であってもよく、布地、シート、ストリップ又は組みひもの形態であってもよく、例えば、不織布(マット)又はフェルトの形態で切断されていてもよい。
【0073】
「強化用繊維」という表現は、特に、
- 鉱物繊維、特に、ナノチューブ又はカーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー又はグラフェンの繊維を含む炭素繊維;特にE、R又はS2タイプのガラス繊維のようなシリカ繊維;ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、バサルト繊維;金属及び/又はその合金をベースとする繊維又はフィラメント;金属酸化物、特にアルミナ(Al2O3)の繊維;金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維のような金属化繊維、又は上記繊維の混合物;
- ポリマー繊維、特に、
・ 熱硬化性ポリマーの繊維、より具体的には不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレート及びポリイミド、例えば、ビスマレイミド樹脂、又はメラミンのようなアミンとグリオキサール又はホルムアルデヒドのようなアルデヒドとの反応から生じるアミノプラストから選択される繊維、
・ 熱可塑性ポリマー、より具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びPET/PPコポリマーのような高密度ポリオレフィン、又はPVOH(ポリビニルアルコール)から選択される繊維、
・ 式:6、11、12、610、612、66、4.6の1つに対応するポリアミドの繊維、
・ アラミド(ケブラー(R)のような)及び式:PPDT、MPD.I、PAA及びPPAの1つに対応するもののような芳香族ポリアミドの繊維、ここでPPD及びMPDはそれぞれp-及びm-フェニレンジアミンであり、PAAはポリアリールアミドであり、PPAはポリフタルアミドであり、
・ ポリアミド/ポリエーテルのようなポリアミドブロックコポリマーの繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維、
- 又は上記の繊維の混合物
を表す。
【0074】
結果として、上で定義した全ての強化用繊維は、本発明の範囲から除外される。
【0075】
有利には、アミン鎖末端の量は、5μeq/g~100μeq/g、優先的には20μeq/g~80μeq/g、さらにより優先的には30μeq/g~60μeq/gである。
【0076】
有利には、酸鎖末端の量は、5μeq/g~100μeq/g、優先的には20μeq/g~80μeq/g、さらにより優先的には30μeq/g~60μeq/gである。
【0077】
1つの有利な実施形態では、本発明は、上で定義したコポリアミドが、規格ISO11357-2:2013に従って測定されたガラス転移温度Tg≧125℃を有する、上で定義した構造に関する。
【0078】
1つの有利な実施形態では、本発明は、Xが1,10-デカンジアミンである上で定義した構造に関する。
【0079】
有利には、Xは1,10-デカンジアミンであり、MXDTは5~45%のモル含有率で存在し、XTは55~95%のモル量で存在する。
【0080】
有利には、Xは1,10-デカンジアミンであり、MXDTは15~45%のモル含有率で存在し、XTは55~85%のモル量で存在する。
【0081】
有利には、Xは1,10-デカンジアミンであり、MXDTは20~45%のモル含有率で存在し、XTは55~80%のモル量で存在する。
【0082】
1つの有利な実施形態では、本発明は、コポリアミドのモノマーのいずれも、別のジアミン、別のジカルボン酸又はラクタムで置換されていない、上で定義した構造に関する。
【0083】
したがって、モノマーのいずれも置換されていない構造は、他のジアミン、他のジカルボン酸、ラクタム又はアミノカルボン酸の他の存在のない式MXDT/XTのものである。
【0084】
1つの有利な実施形態では、本発明は、層(1)が衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0085】
「衝撃改質剤」という用語は、任意に<200MPaの曲げ弾性率を有するPEBA(ペーテル(pether)-ブロック-アミド)と結合された、規格ISO-178:2010に従って測定された100MPa未満の曲げ弾性率及び0℃未満のTg(DSCサーモグラムの変曲点において規格11357-2:2013に従って測定)を有するポレオレフィン系ポリマー、特にポリオレフィンを意味するものとして理解すべきである。
【0086】
したがって、この有利な実施形態では、このポリオレフィン系ポリマーは、層(1)を構成するコポリアミド中に存在する。
【0087】
衝撃改質剤のポリオレフィンは、官能化されていても官能化されていなくてもよく、官能化されている少なくとも1つ及び/又は官能化されていない少なくとも1つの混合物であってもよい。
【0088】
特に、ポリオレフィンの一部又は全部は、カルボン酸官能基、カルボン酸無水物官能基及びエポキシド官能基から選択される官能基を有し、特にエラストマー性を有するエチレンとプロピレンのコポリマー(EPR)、エラストマー性を有するエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)及びエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン-高級アルケンコポリマー、特にエチレン-オクテンコポリマー、又はエチレン-アルキルアクリレート-無水マレイン酸ターポリマーから選択される。
【0089】
有利には、衝撃改質剤は、Fusabond F493、Lotader(R)、特にLotader 5500又はLotader 7500、Escor VA1801又はVA1803、Excelsior E1040、Amplify GR216、Tafmer MH5020又はOrevac IM800又はそれらの混合物から選択され、この場合、それらが2つの混合物中にある場合、それらは0.1/99.9~99.9/0.1、優先的には1/2~2/1の範囲の比にある。
【0090】
一例として、衝撃改質剤は、以下の混合物、即ち、F493/Lotader(R)、特にF493/Lotader(R) 5500又はF493/Lotader(R) 7500から選択される。
【0091】
「コア-シェル型の改質剤」という用語は、「コア-シェル型のコポリマー」とも呼ばれる。
【0092】
「コア-シェル型の改質剤」は、エラストマーコアと少なくとも1つの熱可塑性シェルとを有する微粒子の形態であり、粒子のサイズは一般にマイクロメートル未満、有利には150~500nmの間である。
【0093】
「コア-シェル型の改質剤」は、ポリオレフィンベースを有する衝撃改質剤とは異なり、アクリルベース又はブタジエンベースを有する。
【0094】
挙げることができるコアの例としては、イソプレンホモポリマー又はブタジエンホモポリマー、イソプレンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマー、及びブタジエンと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマーを含む。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル又はアルキル(メタ)アクリレートであることができる。別のコアファミリーは、アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、及びアルキル(メタ)アクリレートと30モル%以下のビニルモノマーとのコポリマーからなる。アルキル(メタ)アクリレートは、有利にはブチルアクリレートである。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエン又はイソプレンであることができる。コポリマー(A)のコアは、完全に又は部分的に架橋されていてもよい。コアの調製中に少なくとも二官能性モノマーを添加すれば足りる。これらのモノマーは、ブチレンジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレート等の、ポリオールのポリ(メタ)アクリルエステルから選択することができる。他の二官能性モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレート及びビニルメタクリレートである。コアはまた、重合中にその中に不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシドのような不飽和官能性モノマーを導入することにより、これらをグラフト化することにより、又はコモノマーとして、架橋されてもよい。挙げることができる例としては、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0095】
シェルは、スチレン、アルキルスチレン若しくはメチルメタクリレートのホモポリマー、又はこれらの先行するモノマーの1つを少なくとも70モル%及び他の先行するモノマー、酢酸ビニル及びアクリロニトリルから選択される少なくとも1つのコモノマーを含むコポリマーである。シェルはまた、重合中にその中に不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸及び不飽和エポキシドのような不飽和官能性モノマーを導入することにより、これらをグラフト化することにより、又はコモノマーとして、官能化されてもよい。挙げることができる例としては、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。一例として、ポリスチレンシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)及びPMMAシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)を挙げることができる。一方がポリスチレンからできており、外側のものがPMMAでできている2つのシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)も存在する。コポリマー(A)及びそれらの製造方法の例は、以下の特許、即ち、US4180494号、US3808180号、US4096202号、US4260693号、US3287443号、US3657391号、US4299928号、US3985704号に記載されている。
【0096】
したがって、「コア-シェル型の改質剤」は、特に衝撃改質剤がポリアミドマトリックスと反応するのに対して、コア-シェルはコア-シェルのコアがそのシェルとしか反応できないため、ポリアミドマトリックスとは反応しない点で、衝撃改質剤のポリオレフィンとは異なる。
【0097】
有利には、衝撃改質剤及び/又はコアシェル型の改質剤は、層(1)のコポリアミドの全成分の重量に対して、5~35重量%、特に5~25重量%、より具体的には5~15重量%で存在する。
【0098】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMPMD.T/X.Tコポリアミドを含み、衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤を、コポリアミドの全成分の重量に対して、5~35重量%、特に5~25重量%、より具体的には5~15重量%の割合で含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0099】
有利には、衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤を含む構造において、Xは1,10-デカンジアミンである。
【0100】
1つの有利な実施形態では、本発明は、単層(1)からなる、上で定義した構造に関する。
【0101】
したがって、本発明はこの場合、単層パイプに関し、この実施形態では、他の層は存在しない。
【0102】
1つの有利な実施形態では、本発明は、層(1)が、有機安定剤、無機安定剤、特に銅系安定剤、及びそれらの混合物から選択される安定剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0103】
「有機安定剤」又はより一般的には「有機安定剤の組合せ」という表現は、フェノール型の一次酸化防止剤、亜リン酸塩型の二次酸化防止剤、又は任意に他の安定剤、例えば、ヒンダードアミン光安定剤を意味するHALS(例えば、チバ(Ciba)社のTinuvin 770)、UV安定剤(例えば、チバ社のTinuvin 312)、フェノール系安定剤又はリン系安定剤を表す。クロンプトン(Crompton)社のNaugard 445等のアミン型の酸化防止剤、又はクラリアント社のNylostab S-EEDのような多官能性安定剤を使用することもできる。
【0104】
層(1)内に存在する有機安定剤は、このリストが限定的であることなく、
- フェノール系酸化防止剤、例えば、チバ社のIrganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、チバ社のIrganox MD1024、グレート・レークス(Great Lakes)社のLowinox 44B25、アデカ・パルマロール(Adeka Palmarole)社のADK Stab AO-80、
- リン系安定剤、例えば、亜リン酸塩、例えば、チバ社のIrgafos 168、
- UV吸収剤、例えば、チバ社のTinuvin 312、
- 前述したHALS、
- アミン型の安定剤、例えば、クロンプトン社のNaugard 445、又はヒンダードアミン型の安定剤、例えば、チバ社のTinuvin 770、
- 多官能性安定剤、例えば、クラリアント社のNylostab S-EED
から選択することができる。
【0105】
もちろん、これらの有機安定剤の2つ以上の混合物を想定することも可能である。
【0106】
好ましくは、有機安定剤は、構造の層(1)のコポリアミド中に、コポリアミドの成分の総重量に対して0.3~3重量%の間の含有率で存在する。
【0107】
「無機安定剤」という表現は、銅系の安定剤を表す。そのような無機安定剤の例としては、酢酸銅及びハロゲン化銅を挙げることができる。なお、銀のような他の金属も任意に検討することができるが、前記金属は有効性が低いことが知られている。これらの銅系の化合物は、典型的にはアルカリ金属ハロゲン化物、特にハロゲン化カリウムと組み合わされる。
【0108】
これらの無機安定剤は、ポリマー鎖の切断を防止する傾向があるので、構造が高温空気中、特に100~120℃以上の温度で改善された長期耐熱性を有さなければならない場合に特に使用される。
【0109】
より具体的には、「銅系の安定剤」という用語は、少なくとも1つの銅原子を、特にイオン形態又はイオン化可能な形態、例えば、錯体形態で含む化合物を意味することが意図される。
【0110】
層(1)内に存在する銅系の安定剤は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、酢酸第一銅及び酢酸第二銅から選択することができる。銅系の安定剤と組み合わせて、銀等の他の金属のハロゲン化物又は酢酸塩を挙げることができる。これらの銅系の化合物は、典型的にはアルカリ金属ハロゲン化物と組み合わされる。よく知られている例は、CuIとKIの混合物であり、ここでCuI:KI比は典型的には1:5~1:15の間である。そのような安定剤の例は、チバ社のPolyadd P201である。
【0111】
銅系の安定剤に関するフラー(Fuller)の詳細は、特許US2705227号に記載されている。錯化された銅等の銅系の安定剤、例えば、Bruggolen H3336、H3337、H3373がつい最近ブリュッゲマン(Bruggemann)社から出現した。
【0112】
有利には、銅系の安定剤は、ハロゲン化銅、酢酸銅、少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物との混合物としてのハロゲン化銅又は酢酸銅、及びそれらの混合物から選択され、好ましくはヨウ化銅とヨウ化カリウムの混合物(CuI/KI)である。
【0113】
好ましくは、銅系の安定剤は、構造の層(1)中に、コポリアミドの成分の総重量に対して0.05~1.5重量%の間の含有率で存在する。
【0114】
好ましくは、銅(1)は、さらに他の遷移金属を含まない。
【0115】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含み、コポリアミドの全成分の重量に対して5~35重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤及び有機安定剤を含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0116】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含み、コポリアミドの全成分の重量に対して5~35重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤及び無機安定剤(特に銅系安定剤)を含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0117】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含み、コポリアミドの全成分の重量に対して5~35重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤並びに有機安定剤及び無機安定剤(特に銅系安定剤)の混合物を含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0118】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含み、コポリアミドの全成分の重量に対して5~25重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤及び有機安定剤を含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0119】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含み、コポリアミドの全成分の重量に対して5~25重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤及び無機安定剤(特に銅系安定剤)を含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0120】
したがって、有利には、本発明は、上で定義したMXDT/XTコポリアミドを含み、コポリアミドの全成分の重量に対して5~25重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤並びに有機安定剤及び無機安定剤(特に銅系安定剤)の混合物を含む少なくとも1つの層(1)を含む、上で定義した構造に関する。
【0121】
有利には、衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤及び安定剤を含む構造において、Xは1,10-デカンジアミンである。
【0122】
1つの有利な実施形態では、本発明は、層(1)が、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維及びカーボンナノチューブ、特にカーボンブラック及びカーボンナノチューブから選択される帯電防止充填剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0123】
1つの有利な実施形態では、本発明は、層(1)が、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、鉱物充填剤、難燃剤、核形成剤、可塑剤、及び染料から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる、上で定義した構造に関する。
【0124】
強化用繊維は添加剤から除外され、特に「無機充填剤」という用語は強化用繊維を除外する。
【0125】
有利には、添加剤は、層(1)の成分の総重量に対して、1~20%、特に5~15%の重量割合で層(1)中に存在する。
【0126】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)及び(2)は互いに付着することができる、上で定義した構造に関する。
【0127】
「互いに付着することができる」という表現は、構造が2つの層からなる場合、層(1)及び(2)が互いに少なくとも部分的に付着することを意味する。
【0128】
構造が少なくとも1つの第3の層を含む場合、第3の層は層(1)と層(2)との間に配置することができ、その場合、層(1)及び層(2)は互いに付着しないが、他方、層(1)及び層(3)は、層(3)及び層(2)と同様に、互いに付着する。
【0129】
有利には、構造は、互いに付着する2つの層(1)及び(2)からなる。
【0130】
有利には、層(2)は、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドから選択される少なくとも1つのポリアミドを含む。
【0131】
有利には、脂肪族ポリアミドは、少なくとも1つのラクタム又は少なくとも1つのアミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸、又はそれらの混合物の重縮合から得られ、ジアミンは、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンから選択され、ジカルボン酸は、脂肪族二酸及び脂環式二酸、又はそれらの混合物から選択される。
【0132】
アミノカルボン酸は、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、12-アミノドデカン酸及び11-アミノウンデカン酸及びそれらの誘導体、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸、有利には12-アミノドデカン酸及び11-アミノウンデカン酸から選択することができる。
【0133】
ラクタムは、ピロリジノン、2-ピペリジノン、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム及びラウリルラクタム、有利にはウンデカノラクタム及びラウリルラクタムから選択することができる。
【0134】
ジアミンが脂肪族かつ直鎖である場合、それは式H2N-(CH2)a-NH2を有する。二酸は脂肪族(特に直鎖脂肪族)、脂環式又は芳香族であることができる。
【0135】
優先的には、ジアミンが直鎖かつ脂肪族である場合、それは、ブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)、オクタデカンジアミン(a=18)、オクタデカンジアミン(a=18)、エイコサンジアミン(a=20)、ドコサンジアミン(a=22)及び二量化脂肪酸から得られるジアミンから選択される。
【0136】
ジアミンが脂環式である場合、それは好ましくは2つの環を含むものから選択される。それらは、特に以下の一般式に対応する。
【0137】
【化1】
式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキルから選択される基を表し、
- Xは、単結合、又は以下からなる二価の基のいずれかを表す。
- 6~8個の炭素原子を有する脂環式基又は芳香族基で置換されていてもよい1~10個の炭素原子を含む直鎖又は分枝脂肪族鎖、
- 6~12個の炭素原子を有する脂環式基。
【0138】
より優先的には、ポリアミドのCa脂環式ジアミンは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM、MACM又はBと称する)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)及びイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)から選択される。
【0139】
これらの脂環式ジアミンの網羅的でないリストは、刊行物「脂環式アミン(Cycloaliphatic Amines)」(Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer、第4版(1992)、386~405頁)に与えられている。
【0140】
脂肪族かつ直鎖ジカルボン酸は、コハク酸(b=4)、ペンタン二酸(b=5)、アジピン酸(b=6)、ヘプタン二酸(b=7)、オクタン二酸(b=8)、アゼライン酸(b=9)、セバシン酸(b=10)、ウンデカン二酸(b=11)、ドデカン二酸(b=12)、ブラシル酸(b=13)、テトラデカン二酸(b=14)、ヘキサデカン二酸(b=16)、オクタデカン酸(b=18)、オクタデセン二酸(b=18)、エイコサン二酸(b=20)、ドコサン二酸(b=22)、及び36個の炭素を含む脂肪酸二量体から選択される。
【0141】
上記の脂肪酸二量体は、特に文献EP0471566号に記載されているように、長い炭化水素鎖を有する不飽和一塩基性脂肪酸(例えば、リノール酸及びオレイン酸)のオリゴマー化又は重合によって得られる二量化脂肪酸である。
【0142】
二酸が脂環式である場合、それは以下の炭素主鎖、即ち、ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含むことができる。
【0143】
層(2)のポリアミドは、ホモポリアミド又はコポリアミドであることができる。
【0144】
ポリアミドの定義に使用される命名法は、規格ISO16396-1:2015「プラスチック-ポリアミド(PA)成形及び押出材料(Plastic-Polyamide(PA) molding and extrusion materials)-第1部:指定システム、製品のマーキング及び仕様の基礎(Designation systems,marking of products and basis for specifications)」に記載されている。
【0145】
有利には、層(2)のポリアミドは、PA11、PA12、PA1010、PA1012、PA610及びPA612から選択される。
【0146】
1つの有利な実施形態では、本発明は、層(2)のものとは異なる別のポリアミドが層(2)中に存在することができる、上で定義した構造に関する。
【0147】
他のポリアミドは、それが層(2)のものとは異なるという条件で、層(2)において上で定義したとおりである。
【0148】
有利には、可塑剤が層(2)中に存在する。
【0149】
有利には、層(2)の可塑剤は、層(2)のコポリアミドの全成分の重量に対して1~20重量%、特に5~15重量%で存在する。
【0150】
1つの有利な実施形態では、本発明は、衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤が層(2)中に存在する、上で定義した構造に関する。
【0151】
衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤は、上で定義したとおりである。
【0152】
有利には、衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤は、層(2)のコポリアミドの全成分の重量に対して5~35重量%、特に5~25重量%、より具体的には5~15重量%で存在する。
【0153】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)及び(2)は互いに付着し、層(1)は上で定義したものの1つであり、層(2)は任意に別のポリアミドを含み、層(2)は、層(2)のコポリアミドの全成分の重量に対して、1~20重量%の可塑剤と、5~35重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤とを含む、上で定義した構造に関する。
【0154】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)及び(2)は互いに付着し、層(1)は上で定義したものの1つであり、層(2)は任意に別のポリアミドを含み、層(2)は、層(2)のコポリアミドの全成分の重量に対して、1~20重量%の可塑剤と、5~25重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤とを含む、上で定義した構造に関する。
【0155】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)及び(2)は互いに付着し、層(1)は上で定義したものの1つであり、層(2)は任意に別のポリアミドを含み、層(2)は、層(2)のコポリアミドの全成分の重量に対して、5~15重量%の可塑剤と、5~35重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤とを含む、上で定義した構造に関する。
【0156】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)及び(2)は互いに付着し、層(1)は上で定義したものの1つであり、層(2)は任意に別のポリアミドを含み、層(2)は、層(2)のコポリアミドの全成分の重量に対して、5~15重量%の可塑剤と、5~25重量%の割合の衝撃改質剤及び/又はコア-シェル型の改質剤とを含む、上で定義した構造に関する。
【0157】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(2)が有機安定剤、無機安定剤(特に銅系安定剤)及びそれらの混合物から選択される安定剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0158】
安定剤は上に定義したとおりである。
【0159】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)が有機安定剤を含み、層(2)が無機安定剤、特に銅系安定剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0160】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(1)が無機安定剤、特に銅系安定剤を含み、層(2)が有機安定剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0161】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(2)が、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維及びカーボンナノチューブ、特にカーボンブラック及びカーボンナノチューブから選択される帯電防止充填剤を含む、上で定義した構造に関する。
【0162】
1つの有利な実施形態では、本発明は、第2の層(2)が存在し、層(2)が、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、潤滑剤、鉱物充填剤、難燃剤、核形成剤及び染料から選択される少なくとも1つの添加剤を含むことができる、上で定義した構造に関する。
【0163】
1つの有利な実施形態では、本発明は、層(1)がバリア層、特に流体に対するバリアであり、流体が、ガソリン、特にバイオガソリン(ガソリンとアルコール、特にメタノール又はエタノールとの混合物)、又はディーゼル、特にバイオディーゼルである燃料、オイル、ブレーキ液、尿素溶液、グリコール系冷却流体、ガス、特に圧縮空気から選択され、バリア層(1)が流体と接触する、上で定義した構造に関する。
【0164】
したがって、この実施形態で定義した構造は、少なくとも1つの層(1)を含み、したがって単層又は二重層(1)及び(2)であり得るが、構造が他の層を含む場合、これは本発明の文脈から逸脱しないであろう。
【0165】
有利には、構造は2つの層(1)及び(2)からなり、層(1)はバリア層である。
【0166】
結果として、構造が2つの層を含む場合、それは、外側から内側へ、以下の層(2)//(1)を含む。
【0167】
構造が少なくとも1つの他の層を含む場合、後者は流体と接触することができない。
【0168】
1つの有利な実施形態では、本発明は、上で定義した少なくとも1つの層(1)と、上で定義した第2の層(2)とを含み、層(1)及び(2)は互いに付着することができ、さらに層(3)を含み、層(3)は層(1)と同一又は異なる構造に関する。
【0169】
この実施形態では、構造は、外側から内側へ、以下の層(3)//(2)//(1)又は(2)//(3)//(1)を含むか、又はこれらからなる。
【0170】
有利には、層(3)は層(1)とは異なり、結合層であり、構造は外側から内側に以下の層、即ち、(2)//(3)//(1)を含み、層(1)は流体と接触する。
【0171】
有利には、構造(2)//(3)//(1)では、層(1)は100~300μm、特に200~300μm、特に250μmの厚さを有し、層(3)は50~100μm又は100~200μm、特に150μmの厚さを有し、層(2)は50~800μm、特に50~200μm又は500~700μmの厚さを有する。
【0172】
結合層は、特に文献WO09/122060号に定義されているように、4~8.5の間、有利には4~7の間の窒素原子当たりの平均炭素原子数を有する少なくとも1つのポリアミド、180℃以上の融点及び7~10の間、有利には7.5~9.5の間の窒素原子当たりの平均炭素原子数を有する少なくとも1つのポリアミド、及び9~18の間、有利には10~18の間の窒素原子当たりの平均炭素原子数を有する少なくとも1つのポリアミドの混合物であることができる。
【0173】
1つの有利な実施形態では、本発明は、上で定義した少なくとも1つの層(1)、上で定義した第2の層(2)(層(1)及び(2)は互いに付着できる)、及び層(3)を含み、層(3)は層(1)と同一であるか又は異なる構造であって、該構造は少なくとも1つの他の層(4)をさらに含み、層(1)は流体と接触する該構造に関する。
【0174】
有利には、層(4)はEVOHの層である。
【0175】
1つの有利な実施形態では、本発明は、上で定義した少なくとも1つの層(1)、及び上で定義した第2の層(2)(層(1)及び(2)は互いに付着できる)、及び層(3)(層(3)は層(1)と同一であるか又は異なる)、及び少なくとも1つの他の層(4)を含み、層(1)は流体と接触する構造であって、該構造は外側から内側に以下の層、即ち、(2)//(4)//(3)//(1)を含み、層(1)は流体と接触する該構造に関する。
【0176】
有利には、構造(2)//(4)//(3)//(1)において、層(3)は上で定義した結合層である。
【0177】
有利には、構造(2)//(4)//(3)//(1)において、層(4)は上で定義したEVOHの層である。
【0178】
有利には、構造(2)//(4)//(3)//(1)において、層(3)は上で定義した結合層であり、層(4)は上で定義したEVOHの層である。
【0179】
有利には、構造は、上で定義した層(2)//(4)//(3)//(1)からなる。
【0180】
1つの有利な実施形態では、本発明は、上で定義した少なくとも1つの層(1)、上で定義した第2の層(2)(層(1)及び(2)は互いに付着できる)、層(3)(層(3)は層(1)と同一であるか又は異なる)、少なくとも1つの他の層(4)を含み、層(1)は流体と接触する構造であって、該構造は外側から内側に以下の層、即ち、(2)//(4)//(3)//(1)を含み、層(1)は流体と接触する該構造に関する。
【0181】
結合層(3)と同一又は異なる結合層(3’)をさらに含む前記構造が存在する。
【0182】
したがって、層(3’)は、層(3)について上で定義したものと同じ種類の結合層であるが、同一又は異なる組成のものである。
【0183】
有利には、結合層(3’)をさらに含む構造は、外側から内側に以下の層、即ち(2)//(3’)//(4)//(3)//(1)を含み、層(1)は流体と接触する。
【0184】
有利には、層(1)は100~200μm、特に150μmの厚さを有し、層(2)は100~200μm、特に150μmの厚さを有し、層(3)は200~400μm、特に300μmの厚さを有し、層(3’)は200~400μm、特に300μmの厚さを有し、層(4)は50~150μm、特に100μmの厚さを有する。
【0185】
別の態様によれば、本発明は、上で定義した構造の1つで製造されたボトル、タンク、コンテナ、パイプ及び容器に関する。
【0186】
別の態様によれば、本発明は、上で定義した構造の1つで製造されたフィルムからなる包装材に関する。
【0187】
別の態様によれば、本発明は、MXDT/XTポリアミドを含む少なくとも1つのバリア層を含む構造、特に多層構造の製造のためのMXDT/XTポリアミドの使用に関し、
MXDTは、5~45%、好ましくは15~45%、より優先的には20~45%の範囲のモル含有率で存在するアミド部分を含む単位であり(ただし、MXDはm-キシリレンジアミン(xylyenediamine)(MXD)を表し、Tはテレフタル酸を表す)、
XTは、55~95%、好ましくは55~85%、より優先的には55~80%の範囲のモル含有率で存在する主要アミド部分を含む単位であり(ただし、Xは、C9~C18、好ましくはC9、C10、C11及びC12の直鎖脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸である)、
該コポリアミドは、規格ISO11357-3(2013)に従って測定された融点:250℃<Tm≦300℃を有し、
- MXDT単位及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して30モル%までのテレフタル酸を、6~36個の炭素原子、特に6~14個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸で置き換えることができ、
- MXDT単位及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対してMXDの30モル%まで及び/又は適宜Xの30モル%までを、4~36個の炭素原子、特に6~12個の炭素原子を含む他のジアミンで置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30モル%以下をラクタム又はアミノカルボン酸によって形成することができ、
- テレフタル酸、MXD及びXを置き換えるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30モル%の濃度を超えないということを条件とし、
- MXDが完全には置換されないということを条件とし、
該組成物は強化用繊維を含まない。
【0188】
構造について上で定義した全ての特徴及び全ての実施形態は、上で定義した使用に適用することができる。
【実施例】
【0189】
1)MXDT/10T及び比較ポリアミドの調製
5kgの以下の出発物質を14リットルのオートクレーブ反応器に導入する。
- 水500g、
- ジアミン(単数又は複数)、
- アミノ酸(任意に)、
- 二酸(単数又は複数)、
- 単官能性連鎖調節剤(chain regulator):意図された粘度に適した量の安息香酸又はステアリン酸、
- 溶液中の次亜リン酸ナトリウム35g、
- Wacker AK1000消泡剤(ワッカー・シリコーンズ)0.1g。
【0190】
ポリアミドの分子構造及び部分の性質及びモル比(参照試験による)を以下の表1に示す。
【0191】
密閉した反応器からその残留酸素を追い出し、次に導入された材料に対して230℃の温度に加熱する。これらの条件下で30分間攪拌した後、反応器内で形成された加圧蒸気を、材料の温度を大気圧でTm+10℃になるように徐々に上昇させながら、60分かけて徐々に減圧する。次いで、特性表に示す意図された粘度が得られるまで20L/時の窒素フラッシュ下で重合を続ける。
【0192】
その後、ポリマーを底部バルブを介して排出し、次いで水槽で冷却し、次いで粒状にする。
【0193】
次いで、これらの生成物を、Tm+20℃に等しい射出成形温度及び100℃に加熱された金型を使用する射出成形プレスによって、100mm×100mm×1mmのプレートの形態で射出成形する。完全には結晶性でないプレート(ISO11357-2によるDSC加熱による再結晶の存在)を、Tg+30℃で真空下で2時間焼きなます。
【0194】
- 固有粘度の測定は、m-クレゾール中で行う。この方法は当業者に周知である。規格ISO307:2007に従うが、溶媒(硫酸の代わりにm-クレゾールの使用)及び温度(20℃)及び濃度(0.5重量%)を変える。
【0195】
- 使用される熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgを、規格ISO11357-2:2013に従って2回目の加熱パスの後、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。加熱及び冷却速度は20℃/分である。
【0196】
- 融点Tm及び結晶化温度Tcは、規格ISO11357-3:2013に従って、最初の加熱の後、DSCによって測定する。加熱及び冷却速度は20℃/分である。
【0197】
- マトリックスポリマーの結晶化熱を、規格ISO11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0198】
- アミン鎖末端及び酸鎖末端の含有率は、電位差測定法によって決定する。
【0199】
- ガソリンに対する透過率の測定を、上で調製したプレート上のCE10:イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10体積%及びCE85:イソオクタン/トルエン/エタノール=7.5/7.5/85体積%を用いて、重量測定法により60℃で決定する。
【0200】
誘導期間中の瞬間透過率はゼロであり、次いで、それは連続運転条件下での透過率に対応する平衡値まで徐々に増加する。連続運転条件下で得られたこの値は、材料の透過率と考えられる。
【0201】
結果を以下の表1に示す。
【0202】
【0203】
本発明の化合物は、比較例に比べて改善された透過率を示す。