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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】可搬型工作機
(51)【国際特許分類】
   B23B 45/14 20060101AFI20231130BHJP
   B23B 45/02 20060101ALI20231130BHJP
   B23Q 3/15 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B23B45/14
B23B45/02
B23Q3/15 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019025437
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020131321
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 淳
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03100933(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0030667(US,A1)
【文献】特開昭56-033379(JP,A)
【文献】特開平05-105385(JP,A)
【文献】特開2014-208393(JP,A)
【文献】特開昭56-126507(JP,A)
【文献】特開昭57-102709(JP,A)
【文献】特開昭57-184614(JP,A)
【文献】特開昭59-142043(JP,A)
【文献】特表2005-515080(JP,A)
【文献】実開昭58-040308(JP,U)
【文献】実開昭59-055640(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00-49/06
B23C 1/00-9/00
B23Q 3/00-3/154
B23Q 9/00-9/02
B25B 1/00-11/02
H01F 7/06-7/17
H01F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機本体と、
該工作機本体の下部に位置し、該工作機本体を被加工物に対して固定するための第1及び第2電磁石と、
該第1電磁石の周囲の第1磁束密度を検知する第1磁気検知手段と、
該第2電磁石の周囲の第2磁束密度を検知する第2磁気検知手段と、
該第1磁気検知手段の検知結果に応じて該第1電磁石に供給する電力を調整し、該第2磁気検知手段の検知結果に応じて該第2電磁石に供給する電力を調整する制御部と、
を備える可搬型工作機。
【請求項2】
該制御部が、該第1磁束密度が所定の第1基準値未満であることが該第1磁気検知手段によって検知された場合に該第1電磁石に供給する電力を大きくし、該第2磁束密度が所定の第2基準値未満であることが該第2磁気検知手段によって検知された場合に該第2電磁石に供給する電力を大きくするようにされた、請求項に記載の可搬型工作機。
【請求項3】
該制御部が、該第1磁束密度が該第1基準値よりも小さい所定の第3基準値以下であることが該第1磁気検知手段によって検知され且つ該第2磁束密度が該第2基準値よりも大きい所定の第4基準値未満であることが該第2磁気検知手段によって検知された場合に、該第2電磁石に供給する電力を大きくするようにされた、請求項に記載の可搬型工作機。
【請求項4】
該制御部が、該第1磁束密度が該第1基準値未満であることが該第1磁気検知手段によって検知され且つ該第2磁束密度が該第2基準値よりも大きい所定の第4基準値未満であることが該第2磁気検知手段によって検知された場合に、該第2電磁石に供給する電力を大きくするようにされた、請求項に記載の可搬型工作機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型工作機に関し、より詳細には工作機本体を電磁石によって被加工物に対して固定して使用するようにした可搬型工作機に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁石によって被加工物に対して固定して使用するようにされた可搬型の穿孔機が知られている(特許文献1)。この穿孔機は、バッテリを電源として駆動するようになっていて、バッテリの残量が変化しても電磁石に供給される電力が一定となるように制御されるようになっている。これにより、バッテリの電力を無駄に消費しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6174432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の穿孔機のような可搬型工作機は様々な場所に固定されることが想定されるが、固定場所によって電磁石による磁気吸着力が異なることがある。たとえば、電磁石に同じ大きさの電力を供給していたとしても、むき出しの平坦な鉄材の上に固定する場合に比べて、厚い塗装に覆われている鉄材の上や、凹凸や穴がある鉄材の上に固定する場合、電磁石の一部が磁性体上に載っていない場合、電磁石が載っている磁性体が部分的に又は全体的に薄い場合などには磁気吸着力が弱くなる。また、固定場所の材質によっても磁気吸着力は変化する。そのため、従来の可搬型工作機においては、磁気吸着力が弱まる環境においても十分な固定力が得られるように、ある程度余裕をもった大きさの電力を電磁石に供給する必要があった。
【0005】
そこで本発明は、使用環境に合わせて電磁石に供給する電力を調整できるようにした可搬型工作機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
工作機本体と、
該工作機本体の下部に位置し、該工作機本体を被加工物に対して固定するための電磁石と、
該電磁石の周囲の磁束密度を検知する磁気検知手段と、
該磁気検知手段の検知結果に応じて該電磁石に供給する電力を調整する制御部と、
を備える可搬型工作機を提供する。
【0007】
当該可搬型工作機においては、磁気検知手段の検知結果に応じて電磁石に供給する電力を調整するようになっているため、電磁石に供給される電力を必要な磁気吸着力が得られる必要最小限の大きさに抑えることが可能となる。また、使用環境が変わっても常に最適な磁気吸着力が得られるようにすることが可能となる。
【0008】
具体的には、該磁束密度が所定の基準値未満であることが該磁気検知手段によって検知された場合に、該制御部が該電磁石に供給する電力を大きくするようにすることができる。
【0009】
また、エラー表示部をさらに備え、
該電磁石に供給する電力を所定の最大電力にまで大きくしても該磁束密度が所定の基準値未満であることが該磁気検知手段によって検知されている場合に、該制御部が該エラー表示部にエラーを表示するようにすることができる。
【0010】
このような構成により、必要な磁気吸着力が得られていないことを作業者が容易に認識することができ、危険な状態で加工作業を開始してしまうことを防止することが可能となる。
【0011】
具体的には、該磁気検知手段が該磁束密度を測定する磁気センサであるようにすることができる。
【0012】
又は、該磁気検知手段が該磁束密度が該基準値以上となったときに作動するリードスイッチであるようにすることができる。
【0013】
また本発明は、
工作機本体と、
該工作機本体の下部に位置し、該工作機本体を被加工物に対して固定するための第1及び第2電磁石と、
該第1電磁石の周囲の第1磁束密度を検知する第1磁気検知手段と、
該第2電磁石の周囲の第2磁束密度を検知する第2磁気検知手段と、
該第1磁気検知手段の検知結果に応じて該第1電磁石に供給する電力を調整し、該第2磁気検知手段の検知結果に応じて該第2電磁石に供給する電力を調整する制御部と、
を備える可搬型工作機を提供する。
【0014】
複数の電磁石に供給する電力をそれぞれ調整するようにすることで、当該可搬型工作機を載置した面が場所によって状態が異なる場合でも、それぞれの場所に最適な磁気吸着力を得られるようにすることが可能となる。
【0015】
この場合には、該制御部が、該第1磁束密度が所定の第1基準値未満であることが該第1磁気検知手段によって検知された場合に該第1電磁石に供給する電力を大きくし、該第2磁束密度が所定の第2基準値未満であることが該第2磁気検知手段によって検知された場合に該第2電磁石に供給する電力を大きくするようにすることができる。
【0016】
さらには該制御部が、該第1磁束密度が該第1基準値よりも小さい所定の第3基準値以下であることが該第1磁気検知手段によって検知され且つ該第2磁束密度が該第2基準値よりも大きい所定の第4基準値未満であることが該第2磁気検知手段によって検知された場合に、該第2電磁石に供給する電力を大きくするようにすることができる。
【0017】
又は、該制御部が、該第1磁束密度が該第1基準値未満であることが該第1磁気検知手段によって検知され且つ該第2磁束密度が該第2基準値よりも大きい所定の第4基準値未満であることが該第2磁気検知手段によって検知された場合に、該第2電磁石に供給する電力を大きくするようにすることができる。
【0018】
以下、本発明に係る可搬型工作機の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る可搬型工作機の側面図である。
図2図1の可搬型工作機の固定部の分解斜視図である。
図3図2の固定部に取り付けられた磁気センサユニットの斜視図である。
図4図1の可搬型工作機の機能ブロック図である。
図5図1の可搬型工作機の第1の実施形態における動作を示す第1のフローチャートである。
図6図1の可搬型工作機の第1の実施形態における動作を示す第2のフローチャートである。
図7図1の可搬型工作機の第2の実施形態における動作を示す第1のフローチャートである。
図8図1の可搬型工作機の第2の実施形態における動作を示す第2のフローチャートである。
図9図1の可搬型工作機の第2の実施形態における動作を示す第3のフローチャートである。
図10図1の可搬型工作機の第2の実施形態における動作を示す第4のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る可搬型工作機1は、図1に示すように、可搬型の穿孔機である。当該可搬型工作機1は、工作機本体10と、工作機本体10の下部に取り付けられた固定部12とを備える。工作機本体10の前方位置には、工作機本体10が内蔵する電動モータによって回転駆動される環状カッタ14が取外し可能に取り付けられている。この環状カッタ14は、ハンドル16を枢動させることにより上下動するようになっている。固定部12には、リング状の第1コイル18を有する第1電磁石20と、リング状の第2コイル22を有する第2電磁石24とが形成されている。磁性体材料の上に当該可搬型工作機1を載置した状態でこれら第1コイル18及び第2コイル22に電力を供給したときに第1電磁石20と第2電磁石24によって生じる磁気吸着力によって、工作機本体10が磁性体材料に対して固定される。当該可搬型工作機1は、第1電磁石20と第2電磁石24とを有する固定部12によって工作機本体10を被加工物に対して固定した状態で、回転する環状カッタ14を被加工物に押し当てて、被加工物の穿孔加工を行うようになっている。
【0021】
固定部12は、図2に示すように、固定部本体26と固定部カバー28とを有する。固定部本体26の上面には取付け溝30が形成されており、この取付け溝30に磁気センサユニット32が嵌め込まれている。磁気センサユニット32は、図3に示すように、ケース34内に第1磁気センサ(第1磁気検知手段)36及び第2磁気センサ(第2磁気検知手段)38を備える。第1磁気センサ36と第2磁気センサ38は、ケース34に形成されたセンサ保持部40により水平方向での所定の位置に固定されるとともに、ケース34に接着固定されるカバー42によってその上面が押えられて上下方向での位置も固定される。ケース34の外周面34aには複数の突起44が形成されており、磁気センサユニット32は、これら突起44を取付け溝30の側面によって僅かに変形させながら、取付け溝30内に押し込まれて、固定部本体26に取り付けられる。このときケース34の外周面34aと取付け溝30の内周面30aとの間には突起44により隙間が形成されるが、この隙間にはシリコーンが流し込まれる。このシリコーンによりケース34とカバー42との間の隙間が塞がれてケース34の内部に水や塵などが浸入することを防止している。これによりケース34の中の第1磁気センサ36と第2磁気センサ38を保護するようにしている。このようにして固定部本体26に対して固定された第1磁気センサ36は、図1に示すように、第1電磁石20の上部に位置し、第1電磁石20の周囲に生じる磁界の磁束密度を測定する。また第2磁気センサ38は、第2電磁石24の上部に位置し、第2電磁石24の周囲に生じる磁界の磁束密度を測定する。第1電磁石20と第2電磁石24とをケース34によってこのように固定部本体26に固定することにより、第1電磁石20に対する第1磁気センサ36の位置と第2電磁石24に対する第2磁気センサ38の位置にばらつきが生じにくくなる。なお、当該可搬型工作機1における第1磁気センサ36及び第2磁気センサ38はホールセンサであるが、他の形式の磁気センサとしてもよい。
【0022】
当該可搬型工作機1は、工作機本体10内に制御部46(図4)を備える。電源コード48を外部電源50に接続すると、制御用電源回路52を介して制御部46に電力が供給され、制御部46がまず起動する。当該可搬型工作機1はさらに、第1コイル18及び第2コイル22に供給する電力を制御するための第1コイル制御回路54及び第2コイル制御回路56と、第1コイル18及び第2コイル22の断線を検知するための第1断線検出回路58及び第2断線検出回路60を備える。制御部46は、PWM制御により第1電磁石20及び第2電磁石24に供給する電力を制御する。電磁石スイッチ検出回路62は、電磁石スイッチ64がONになったことを検出し、モータスイッチ検出回路66は、モータスイッチ68がONになったことを検出する。当該可搬型工作機1はさらに、電動モータ70を制御するためのモータ制御部72と、電動モータ70に流れる電流を検出するモータ電流検出部74を備える。工作機本体10に設けられたLED表示部76は、LEDによる表示によって当該可搬型工作機1の状態を作業者に伝えるためのものである。
【0023】
図5及び図6のフローチャートに基づき、当該可搬型工作機1の第1の実施形態に係る動作について説明する。電源コード48を外部電源50に接続すると制御部46が制御を開始し(S10)、電磁石スイッチ64がONになると(S12)、制御部46は第1電磁石20と第2電磁石24に対する電力供給を開始する(S14)。当該実施形態では、このときの初期デューティー比は50%に設定されている。次に第1断線検出回路58と第2断線検出回路60によって、第1コイル18と第2コイル22とが断線していないことを確認する(S16)。第1コイル18と第2コイル22の一方でも断線していることが検出されると、LED表示部76にコイルの断線を示すエラーが表示される(S18)。次に、第1磁気センサ36で第1電磁石20の周囲の磁束密度(第1磁束密度)を測定し(S20)、第2磁気センサ38で第2電磁石24の周囲の磁束密度(第2磁束密度)を測定する(S22)。第1磁気センサ36により測定された第1電磁石20の周囲の磁束密度(以下、第1磁束密度測定値と呼ぶ)が、所定の基準値X(第1基準値)未満である場合には(S24)制御部46は第1電磁石20が十分な磁気吸着力を発生させていないと判断し、第1電磁石20に供給する電力を徐々に大きくしていく。具体的には、まず第1電磁石20に対する供給電力のデューティー比が100%に達していないことを確認し(S26)、デューティー比を1%増加させる(S28)。再度測定された第1磁束密度測定値が依然として基準値X未満である場合には(S24)、デューティー比をさらに1%増加させる(S28)。このようにして第1磁束密度測定値が基準値X以上となるまでデューティー比を増加させていく。同様に、第2磁気センサ38により測定された第2電磁石24の周囲の磁束密度(以下、第2磁束密度測定値と呼ぶ)が、所定の基準値X(第2基準値)未満で有る場合には(S30)制御部46は第2電磁石24が十分な磁気吸着力を発生させていないと判断し、第2電磁石24に対する供給電力のデューティー比が100%に達していないことを確認しつつ(S32)、デューティー比を1%ずつ増加させていく(S34)。第1磁気センサ36により測定された第1磁束密度測定値と第2磁気センサ38により測定された第2磁束密度測定値がともに基準値X以上になったとき、制御部46は、第1電磁石20と第2電磁石24とによって工作機本体10が適性に固定されたと判断する。一方で、第1電磁石20に対する供給電力のデューティー比が100%となって第1電磁石20に供給する電力を最大電力にまで大きくしても第1磁気センサ36により測定される第1磁束密度測定値が基準値X未満である場合には(S26)、LED表示部76にエラーを表示する(S36)。同様に、第2電磁石24に対する供給電力のデューティー比が100%となって第2電磁石24に供給する電力を最大電力にまで大きくしても第2磁気センサ38により測定される第2磁束密度測定値が基準値X未満である場合には(S32)、LED表示部76にエラーを表示する(S36)。なお、第1電磁石20に対する基準値X(第1基準値)と第2電磁石24に対する基準値X(第2基準値)は、異なる値としてもよい。モータスイッチ68がOFFである間は、上述の制御(S16~S36)が繰り返し行われる。
【0024】
モータスイッチ68がONになると(S38)、電動モータ70の駆動が開始される(S40)。その後、上述の制御(S16~S38)と同様な制御が行われ、第1コイル18又は第2コイル22の断線が検知された場合には(S42)、電動モータ70の駆動を停止し(S44)、LED表示部76にコイルの断線を示すエラーを表示する(S46)。第1磁束密度測定値と第2磁束密度測定値がともに基準値X以上である場合には(S52、S58)、モータスイッチ68がONである間、磁束密度の測定が繰り返し行われる。モータスイッチ68がOFFになった場合(S64)には、電動モータ70の駆動が停止される(S68)。また、第1電磁石20又は第2電磁石24に対するデューティー比が100%になっても磁束密度測定値が基準値X未満で有る場合には(S54、S60)、LED表示部76にエラーを表示すると共に(S66)、電動モータ70の駆動を停止する(S68)。電動モータ70の駆動が停止されたときに、電磁石スイッチ64がONであれば(S70)、制御はS16に戻り、OFFであれば(S70)、第1電磁石20と第2電磁石24への電力供給が停止され(S72)、一連の制御が終了する(S74)。
【0025】
図7乃至図10のフローチャートに基づき、当該可搬型工作機1の第2の実施形態に係る動作について説明する。当該実施形態における動作は、第1の実施形態における動作と多くの部分が同じであるので、以下には異なる部分のみを説明する。当該実施形態においては、第1磁気センサ36により測定された第1磁束密度測定値が、所定の基準値X(第1基準値)未満であるが(S124)、基準値Xよりも小さい基準値W(第3基準値)よりは大きい場合に(S126)、第1電磁石20に対する供給電力のデューティー比が100%に達していないことを確認しつつ(S128)、デューティー比を1%ずつ増加させていく(S130)。第1磁束密度測定値が基準値W以下である場合には(S126)、デューティー比を100%にまで増加させても基準値X以上にはならないことが予想されるため、LED表示部76にエラーを表示する(S132)。なお、第1磁束密度測定値が基準値W以下である場合は第1電磁石20の下に磁性体からなる被加工物がないことが予想される。この場合には、まず第2磁気センサ38により測定された第2磁束密度測定値が基準値X(第2基準値)よりも大きい基準値Y(第4基準値)以上であるかを確認して(S134)、基準値Y未満である場合には第2電磁石24に対する供給電力のデューティー比を1%ずつ増加させていく(S144)。第2磁気センサ38により測定された第2磁束密度測定値が基準値Y以上となった場合には(S134)、第1電磁石20への電力供給を停止し(S136)、第2電磁石24の磁気吸着力のみで工作機本体10を固定するようにする。同様に、第2磁気センサ38により測定された第2磁束密度測定値が、所定の基準値X未満であるが(S138)基準値Xよりも小さい基準値Wよりは大きい場合には(S140)、第2電磁石24に対する供給電力のデューティー比が100%に達していないことを確認しつつ(S144)、デューティー比を1%ずつ増加させていく(S146)。第2磁束密度測定値が基準値W以下である場合には(S140)、LED表示部76にエラーを表示する(S148)。この場合には、まず第1磁気センサ36により測定された第1磁束密度測定値が基準値Y以上であるかを確認して(S150)、基準値Y未満である場合には第1電磁石20に対する供給電力のデューティー比を1%ずつ増加させていく(S128)。第1磁気センサ36により測定された第1磁束密度測定値が基準値Y以上となった場合には(S150)、第2電磁石24への電力供給を停止して(S152)、第1電磁石20のみで工作機本体10を固定するようにする。すなわち、第1電磁石20と第2電磁石24の一方の磁束密度測定値が比較的に大きな値である基準値Y以上である場合には、一方の電磁石のみで工作機本体10を固定するのに十分な磁気吸着力が得られていると判断して、他方の電磁石は停止させる。一方の電磁石の磁束密度測定値が基準値X未満であるときに他方の電磁石の磁束密度測定値が基準値Y以上にならない場合には、第1電磁石20と第2電磁石24とで十分な磁気吸着力が得られないと判断して、エラー表示部にエラーを表示する(S154)。モータスイッチ68がONになると(S156)、電動モータ70の駆動が開始される(S158)。これ以降の動作(S160~S210)は、上記実施形態における動作(S42~S74)又は当該実施形態における上記動作(S116~S154)と同様である。
【0026】
当該可搬型工作機1においては、第1磁気センサ36及び第2磁気センサ38によって測定された磁束密度測定値(検知結果)に応じて第1電磁石20及び第2電磁石24に供給する電力を調整するようになっているため、第1電磁石20及び第2電磁石24に供給される電力を必要な磁気吸着力が得られる必要最小限の大きさに抑えることが可能となる。また、使用環境が変わっても常に最適な磁気吸着力が得られるようにすることが可能となる。
【0027】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、各電磁石の周囲の磁束密度を検知する磁気検知手段として磁束密度の大きさを測定できる磁気センサを利用しているが、磁束密度が所定以上となったときに作動するリードスイッチを利用することもできる。この場合には、磁束密度が所定の基準値以上となったときにリードスイッチが作動するようにしておき、リードスイッチの作動信号(検知結果)に基づいて、磁束密度が基準値未満であるのか又は基準値以上であるのかを検知し、その検知結果に応じて電磁石に供給する電力を調整する。そして、例えば上記実施形態における基準値Xと基準値Wのような複数の基準値に対する磁束密度の大きさを検知する場合には、それぞれの基準値に対応した複数のリードスイッチを一つの電磁石に対して配置すればよい。また、上記実施形態においては、2つの電磁石と2つの磁気センサを備えているが、1つの電磁石と1つの磁気センサを備えるようにしてもよいし、1つの磁気センサでいずれかの電磁石の周囲の磁束密度を測定しその結果に基づいて2つの電磁石に対する供給電力を制御するようにしてもよい。又は3つ以上の電磁石や磁気センサを備えるようにしてもよい。また、上記実施形態においては、供給する電力を徐々に大きくしていくようになっているが、例えば一気にデューティー比を80%や100%にまで大きくするようにしてもよい。また、磁束密度が所定の基準値よりも大きいことが検知された場合に、電磁石に供給する電力を小さくするようにしてもよい。初期デューティー比としての50%などの具体的な数値は単なる例示であり、当然に他の数値とすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 可搬型工作機
10 工作機本体
12 固定部
14 環状カッタ
16 ハンドル
18 第1コイル
20 第1電磁石
22 第2コイル
24 第2電磁石
26 固定部本体
28 固定部カバー
30 取付け溝
30a 内周面
32 磁気センサユニット
34 ケース
34a 外周面
36 第1磁気センサ(第1磁気検知手段)
38 第2磁気センサ(第2磁気検知手段)
40 センサ保持部
42 カバー
44 突起
46 制御部
48 電源コード
50 外部電源
52 制御用電源回路
54 第1コイル制御回路
56 第2コイル制御回路
58 第1断線検出回路
60 第2断線検出回路
62 電磁石スイッチ検出回路
64 電磁石スイッチ
66 モータスイッチ検出回路
68 モータスイッチ
70 電動モータ
72 モータ制御部
74 モータ電流検出部
76 LED表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10