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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電気的接触子及びプローブカード
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20231130BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20231130BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
H01L21/66 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019065829
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165773
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正吾
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-232481(JP,A)
【文献】特開2016-148566(JP,A)
【文献】特開2011-117761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置と、被検査体との間を電気的に接続するプローブカードのプローブ基板に設けられるカンチレバー型の電気的接触子において、
第1接触対象としての前記プローブ基板の基板電極と電気的に接触する第1端部と、第2接触対象としての前記被検査体の電極端子と電気的に接触する第2端部とを有し、導電性材料で形成された接触部と、
前記プローブ基板の一方の面に取り付けられると共に、前記接触部を弾性的に支持する合成樹脂材料で形成された基部と
を有し、
前記基部が、
前記プローブ基板の一方の面に取り付けられる取付部と、
前記取付部から一体的に連なって、水平方向に沿って伸びるアーム部と、
前記アーム部の先端側に設けられ、前記接触部を支持する支持部と
を有し、
前記接触部が、水平方向に幅広に形成されており、
前記支持部が、水平方向に幅広に形成されており、
前記支持部の一方の面に、前記接触部が1又は複数の固定部を介して支持される
ことを特徴とする電気的接触子。
【請求項2】
前記固定部が複数個ある場合、複数の前記固定部が、前記支持部の一方の面上で、水平方向に対して垂直方向に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項3】
前記基部の前記支持部が、前記基板電極に接しながら前記接触部の前記第1端部を前記基板電極に案内して、前記接触部の位置ずれを補正するスクラブ補正部を有し、
前記スクラブ補正部が、湾曲したアーム部材であり、
前記スクラブ補正部は、湾曲した前記アーム部材の外側面が前記基板電極の表面に接しながら前記接触部の前記第1端部を前記基板電極に案内するガイド部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接触子。
【請求項4】
検査装置と被検査体の電極端子との間を電気的に接続するプローブカードにおいて、
前記検査装置と電気的に接続する配線回路を有し、一方の面に、前記配線回路と接続する複数の基板電極を有するプローブ基板と、
請求項1~のいずれかに記載の複数の電気的接触子と
を有することを特徴とするプローブカード。
【請求項5】
前記プローブ基板の前記一方の面における非電極領域に、前記電気的接触子が接合され、
前記プローブ基板の前記一方の面において、前記被検査体の前記電極端子の位置に対向する位置に、前記基板電極が配置され、
前記プローブ基板の前記一方の面に接合された前記電気的接触子の接触部が、対応する前記基板電極と前記被検査体の前記電極端子とに対して電気的に接触する
ことを特徴とする請求項に記載のプローブカード。
【請求項6】
前記基板電極と前記被検査体の前記電極端子との間の通電経路が、前記電気的接触子のうち前記接触部を経由するものであることを特徴とする請求項4又はに記載のプローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接触子及びプローブカードに関し、例えば、被検査体の通電試験等の際に、被検査体の電極端子と電気的に接触させる電気的接触子及びプローブカードに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に複数の半導体集積回路が形成された後、検査装置を用いて、半導体ウェハ上の各半導体集積回路(被検査体)の電気的な試験が行なわれる。
【0003】
電気的検査の際、チャックトップ上に被検査体が載置され、チャックトップ上の被検査体が、検査装置に取り付けられたプローブカードに対して押圧される。プローブカードは、当該プローブカードの下面から各プローブの先端部が突出するように、複数のプローブを装着しており、被検査体をプローブカードに対して押圧することにより、各プローブの先端部と被検査体の対応する電極端子とを電気的に接触させる。そして、検査装置からの電気信号を、プローブを介して被検査体に供給し、被検査体からの信号を、プローブを介して検査装置側に取り込むことで、被検査体の電気的検査を行なうことができる。
【0004】
近年、半導体集積回路の超微細化、超高集積化に伴い、プローブカードに設けられるプローブ数が増大し、プローブには、狭ピッチ化や被検査体の電極端子に対して低針圧で接触させることが求められている。さらに、半導体集積回路の超高性能化に伴い、プローブには、被検査体の電極端子に対して高い電流値の電流を供給することも求められている。
【0005】
特許文献1の記載技術は、プローブ間の狭ピッチ化と、プローブカードにおける導通経路のピッチ間隔を拡張するための技術が開示されており、全体が導電性材料で形成されたカンチレバー型プローブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-148566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、低針圧化の要求を満たすためには、プローブの断面積を小さくすることが望まれるのに対して、電流最大化の要求を満たすためには、プローブの断面積を大きくすることが望まれる。つまり低針圧化と電流最大化の双方の特性は、トレードオフの関係になっているので、低針圧化と電流最大化の双方の特性をもつプローブを提供することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、被検査体の電極端子への低針圧化と供給電流の最大化の双方の特性を有する電気的接触子及びプローブカードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、第1の本発明に係る電気的接触子は、検査装置と、被検査体との間を電気的に接続するプローブカードのプローブ基板に設けられるカンチレバー型の電気的接触子において、第1接触対象としてのプローブ基板の基板電極と電気的に接触する第1端部と、第2接触対象としての被検査体の電極端子と電気的に接触する第2端部とを有し、導電性材料で形成された接触部と、プローブ基板の一方の面に取り付けられると共に、接触部を弾性的に支持する合成樹脂材料で形成された基部とを有し、基部が、プローブ基板の一方の面に取り付けられる取付部と、取付部から一体的に連なって、水平方向に沿って伸びるアーム部と、アーム部の先端側に設けられ、接触部を支持する支持部とを有し、接触部が、水平方向に幅広に形成されており、支持部が、水平方向に幅広に形成されており、支持部の一方の面に、接触部が1又は複数の固定部を介して支持されることを特徴とする。
【0010】
第2の本発明に係るプローブカードは、検査装置と被検査体の電極端子との間を電気的に接続するプローブカードにおいて、前記検査装置と電気的に接続する配線回路を有し、一方の面に、前記配線回路と接続する複数の基板電極を有するプローブ基板と、第1の本発明に係る複数の電気的接触子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検査体の電極端子への低針圧化と供給電流の最大化の双方の特性を有する電気的接触子及びプローブカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電気的接触子の構成を示す正面図である。
図2】実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図3】実施形態に係る電気的接触子の構成を示す背面図である。
図4】実施形態に係る電気的接触子の組み立て方法の一例を示す図である。
図5】従来の電気的接触子の構成例を示す図である。
図6】従来の電気的接触子を介した通電経路を説明する説明図である。
図7】実施形態に係る電気的接触子を介した通電経路を説明する説明図である。
図8】変形実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である(その1)。
図9】変形実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である(その2)。
図10】変形実施形態に係る電気的接触子を基板電極及び被検査体の電極端子に接触させたときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る電気的接触子及びプローブカードの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)電気的接続装置
図2は、この実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
【0015】
図2において、この実施形態に係る電気的接続装置1は、平板状の支持部材44と、前記支持部材44の下面に保持される平板状の配線基板41と、前記配線基板41と電気的に接続される電気的接続ユニット42と、前記電気的接続ユニット42と電気的に接続すると共に複数の電気的接触子(以下では、「プローブ」とも呼ぶ)3を有するプローブ基板43とを有する。
【0016】
なお、図2の電気的接続装置1は、主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されるものではなく、実際は、図2に図示してない構成部材を有する。また、以下では、図2中の上下方向に着目して、「上」、「下」を言及する。
【0017】
電気的接続装置1は、例えば半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路等を被検査体2とし、被検査体2の電気的な検査を行なうものである。具体的には、被検査体2をプローブ基板43に向けて押圧し、プローブ基板43の各電気的接触子3の先端部と被検査体2の電極端子51とを電気的に接触させ、図示しないテスタ(検査装置)から被検査体2の電極端子51に電気信号を供給し、さらに被検査体2の電極端子51からの電気信号をテスタ側に与えることにより、被検査体2の電気的な検査を行なう。電気的接続装置1は、例えばプローブカードとも呼ばれている。
【0018】
検査対象である被検査体2はチャックトップ5の上面に載置される。チャックトップ5は、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能なものであり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢を調整可能である。被検査体2の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体2の電極端子51をプローブ基板43の各電気的接触子3の先端部に電気的に接触させるため、電気的接続装置1のプローブ基板43の下面と、チャックトップ5の上面の被検査体2とが相対的に近づくように移動させる。
【0019】
支持部材44は、配線基板41の変形(例えば、撓み等)を抑えるものである。配線基板41は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板41の上面の周縁部には、テスタ(検査装置)のテストヘッド(図示しない)と電気的に接続するための多数の電極端子(図示しない)が配置されている。また、配線基板41の下面には、図示しない配線パターンが形成されており、配線パターンの接続端子が、電気的接続ユニット42に設けられている複数の接続子(図示しない)の上端部と電気的に接続するようになっている。
【0020】
さらに、配線基板41の内部には配線回路(図示しない)が形成されており、配線基板41の下面の配線パターンと、配線基板41の上面の電極端子とは、配線基板41内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板41内の配線回路を介して、配線基板41の下面の配線パターンの接続端子に電気的に接続する電気的接続ユニット42の各接続子と、配線基板41の上面の電極端子に接続するテストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。配線基板41の上面には、被検査体2の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。
【0021】
電気的接続ユニット42は、例えばポゴピン等のような複数の接続子を有している。電気的接続装置1の組み立て状態では、各接続子の上端部を、配線基板41の下面の配線パターンの接続端子に電気的に接続され、また各接続子の下端部を、プローブ基板43の上面に設けられたパッドに接続される。電気的接触子3の先端部が被検査体2の電極端子51に電気的に接触するので、被検査体2の電極端子51は電気的接触子3及び接続子を通じてテスター(検査装置)と電気的に接続されるので、被検査体2はテスター(検査装置)による電気的な検査が可能となる。
【0022】
プローブ基板43は、複数の電気的接触子3を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。プローブ基板43は、その周縁部をプローブ基板支持部18により支持されている。また、プローブ基板43は、例えばセラミック板で形成される基板部材431と、この基板部材431の下面に形成された多層配線基板432とを有する。
【0023】
セラミック基板である基板部材431の内部には、板厚方向に貫通する多数の導電路(図示しない)が形成されており、また基板部材431の上面には、パッドが形成されており、基板部材431内の導電路の一端が、当該基板部材431の上面の対応する配線パターンの接続端子と接続するように形成されている。さらに、基板部材431の下面では、基板部材431内の導電路の他端が、多層配線基板432の上面に設けられた接続端子と接続されるように形成されている。
【0024】
多層配線基板432は、例えばポリイミド等の合成樹脂部材で形成された複数の多層基板で形成されており、複数の多層基板の間に配線路(図示しない)が形成されたものである。多層配線基板432の配線路の一端は、セラミック基板である基板部材431側の導電路の他端と接続しており、多層配線基板432の他端は、多層配線基板432の下面に設けられた接続端子に接続されている。多層配線基板432の下面に設けられた接続端子は、複数の電気的接触子3と電気的に接続しており、プローブ基板43の複数の電気的接触子3は、電気的接続ユニット42を介して、配線基板41の対応する接続端子と電気的に接続している。
【0025】
(A-1-2)電気的接触子
次に、この実施形態に係る電気的接触子3の構成を、図1図3図10を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
電気的接触子3は、カンチレバー型の電気的接触子(コンタクトプローブ)であり、大別して、合成樹脂材料で形成される基部10と、導電性材料で形成される接触部20とを有する。
【0027】
電気的接触子3の接触部20は、プローブ基板43の下面に設けられている基板電極52と、被検査体2の電極端子51との間で通電する通電部位として機能する。
【0028】
電気的接触子3の基部10は、プローブ基板43の下面側に取り付けられると共に、接触部20を支持する部材である。当該電気的接触子3の接触部20と被検査体2の電極端子51とが接触のときに、電気的接触子3は下側から上側に向けて作用するコンタクト荷重(すなわち、被検査体2側からプローブ基板43側に向けて作用する荷重)を受けるが、基部10は、弾性変形を行ない、コンタクト荷重を受け持つ荷重部位として機能する。
【0029】
上述したように、電気的接触子3は、合成樹脂材料で形成される基部(荷重部位)10と、導電性材料で形成される接触部(通電部位)20とを、それぞれ別々の要素で形成される。これにより、コンタクト荷重に対する弾性的な作用を基部10が担い、電気信号の導通性を接触部20が担うことで、低針圧化と電流最大化の双方の特性を有する電気的接触子3を提供できる。
【0030】
[荷重部位としての基部]
基部10は、耐熱性を有する高強度の合成樹脂材料(例えば、エンジニアリングプラスチック)で形成されたものである。基部10を形成する材料は、耐熱性を有する高強度の合成樹脂材料であれば、特に限定されるものではなく、様々な合成樹脂材料を広く適用することができ、例えば、ポリカーボネート、ポリイミド等を材料としたものを用いることができる。また、基部10を形成する合成樹脂材料は、絶縁性を有するものとしてもよいし、導電性を有するものとしてもよい。この実施形態では、絶縁性を有する合成樹脂材料で基部10を形成した場合を例示して説明する。なお、基部10の一部又は全部の表面に絶縁性材料を被膜することで、基部10を絶縁性の部材として機能させるようにしてもよい。
【0031】
基部10は、例えば、合成樹脂材料で形成された板状部材又はブロック状部材を加工するなどして製造することができる。基部10の厚さは、例えば、被検査体2の電極端子51間のピッチ幅や、通電部位として機能する接触部20の厚さやピッチ幅、被検査体2への接触荷重等に応じて決めることができ、例えば数十um程度とすることができる。
【0032】
基部10は、取付部11、土台部12、上側アーム部13、下側アーム部14、支持部15を有する。
【0033】
取付部11は、プローブ基板43の下面側に取り付けられる部分であり、略四角形に形成されている。なお、取付部11の形状は、特に限定されるものではなく、プローブ基板43の下面側に対して、電気的接触子3を支持することができる形状であれば特に限定されない。
【0034】
土台部12は、取付部11の下側から一体的に連なって形成された部分であり、上側アーム部13と下側アーム部14を支持する部分である。土台部12は略台形に形成されている場合を例示している。これは、土台部12の上底部121の長さ(図1中の左右方向の長さ)を、土台部12の下底部122の長さよりも大きくすることで、プローブ基板43の下面に固定されている基部10の弾性を保持できるようにするためであるが、基部10の弾性を保持することができるのであれば、土台部12の形状は限定されない。
【0035】
上側アーム部13及び下側アーム部14は、接触部20を支持している支持部15を、弾性的に支持する弾性支持部材である。被検査体2の電極端子51と電気的接触子3とが接触する際、上側アーム部13及び下側アーム部14は、接触部20と支持部15との上下動を許容するための部材である。
【0036】
上側アーム部13は、例えば直線状の棒材として形成されている。上側アーム部13の基端部131は、土台部12と一体的に形成されており、上側アーム部13の先端部132は、わずかに円弧状(上に凸の円弧状)に湾曲して支持部15と一体的に形成されている。
【0037】
下側アーム部14も、上側アーム部13と同様に、例えば直線状の棒材として形成されており、下側アーム部14の基端部141が、土台部12と一体的に形成されており、下側アーム部14の先端部142が、わずかに円弧状(下に凸の円弧状)に湾曲して支持部15と一体的に形成されている。
【0038】
上側アーム部13及び下側アーム部14を上述した構成とすることで、電気的接触子3が下側から上側に向けたコンタクト荷重を受けると、上側アーム部13及び下側アーム部14は弾性変形し、被検査体2の電極端子51に対する低針圧化を図ることができる。
【0039】
支持部15は、通電部位として機能する接触部20を安定的に支持する通電部材支持部である。支持部15の接続部151は、上側アーム部13の先端部132及び下側アーム部14の先端部142と一体的に接続している。
【0040】
支持部15の上方には、基板電極52に接触部20の上端部201が接触する際に、基板電極52に対する上端部201のスクラブ動作を補正するスクラブ補正部153が設けられている。スクラブ補正部153の上部は平坦に形成されているので、接触部20の上端部201と基板電極52とが接触する際に、スクラブ補正部153も基板電極52に当接可能となるので、基板電極52に対する接触部20の上端部201の接触を補正することができる。
【0041】
[通電部位としての接触部]
接触部20は、例えば、銅、白金、ニッケル等の導電性材料で形成されている。例えば、接触部20は板状部材を加工して形成されたものであり、接触部20の厚さは、基部10の厚さよりも薄く、例えば数十μm程度とすることができる。
【0042】
接触部20は、プローブ基板43の下面に設けられた基板電極52と、被検査体2の電極端子51との間で通電する通電部位として機能する。接触部20の上端部201は、プローブ基板43の下面に設けられている配線パターンの基板電極52と接触させる部分である。接触部20の下端部202の下方先端には、被検査体2の電極端子51と接触させる先端接触部203が設けられている。
【0043】
接触部20は、その上端部201が基板電極52に接触し、下端部202の先端接触部203が被検査体2の電極端子51に接触するので、検査時における通電経路の経路長を、従来の電気的接触子を用いたときの通電経路の長さよりも短くすることができる。
【0044】
[電気的接触子の組み立て]
図4は、この実施形態に係る電気的接触子3の組み立て方法の一例を示す図である。図4は、図1の電気的接触子3を上から見たときの図である。
【0045】
図4は、基部10の支持部15に接触部20を取り付け方の一例であり、それぞれ材料が異なる基部10の支持部15と接触部20とを合わせることができる方法であれば、これに限定されるものではない。
【0046】
図4に示すように、板状の支持部15の一方の面(接触部20を取り付ける側の面)には、接触部20を固定するための1又は複数の固定部152が設けられている。例えば、支持部15の一方の面には、突起状に形成された2個の固定部152が設けられており、また接触部20には、各固定部と嵌合する2個の嵌合部21が設けられており、支持部15の各固定部152と、接触部20の各嵌合部21とを嵌合させることで、基部10の支持部15に接触部20を取り付けることができる。
【0047】
また、2個の突起である固定部152は、接触部20のX軸(図1の左右方向の軸)に対して垂直なY軸(図1の上下方向の軸)と平行になるような位置に配置されることが望ましく、又接触部20の2個の嵌合部21も、支持部15の一方の面における各固定部152の位置に対する位置に設けられている。これにより、基部10に取り付ける接触部20の姿勢を安定に保持することができる。その結果、被検査体2の電極端子51と電気的接触子3とを接触させる際に、被検査体2の電極端子51への接触部20の位置合わせも良好とすることができる。
【0048】
さらに、図4に示すように、板状の支持部15の厚さは、取付部11、土台部12、上側アーム部13及び下側アーム部14の厚みよりもわずかに薄く形成されている。したがって、支持部15に接触部20を取り付けたときでも、電気的接触子3における、接触部20の取付領域の厚さを抑えることができる。換言すると、基部10の支持部15に接触部20を取り付けても、電気的接触子3自体の厚さを略同じ厚さにできる。その結果、被検査体2の電極端子51間のピッチ幅が狭小であっても、確実な接触が可能となる。
【0049】
[通電経路]
以下では、実施形態の電気的接触子3を用いたときの被検査体2の電極端子51と基板電極52との間の通電経路と、従来の電気的接触子を用いたときの前記通電経路とを比較しながら説明する。
【0050】
図5は、従来の電気的接触子の構成例を示す構成図である。図5の例では、従来の電気的接触子9が、この実施形態の電気的接触子3と同様に、取付部91と、土台部92と、2本のアーム部93及び94と、支持部95と、先端接触部96を有するカンチレバー型プローブであり、電気的接触子9の全体が導電性材料で形成されているものとする。
【0051】
図6は、従来の電気的接触子9を介した通電経路を説明する説明図であり、図7は、この実施形態に係る電気的接触子3を介した通電経路を説明する説明図である。
【0052】
図6に示すように、従来の電気的接触子9を、被検査体2の電極端子51及び基板電極52に電気的に接触させて、被検査体2の電気的検査を行なう場合、電気的接触子9を介した基板電極52と被検査体2の電極端子51との間の通電経路は、R21及びR22のようになる。
【0053】
これに対して、図7に示すように、電気的接触子3を用いて被検査体2の電気的検査を行う場合、電気的接触子3を介した基板電極52と被検査体2の電極端子51との間の通電経路は、R1のようになる。
【0054】
ここで、この実施形態の電気的接触子3は、荷重部位としての基部10と、通電部位としての接触部20とをそれぞれ異なる材料で別部材としたので、プローブ基板43の下面の基板電極52と、被検査体2の電極端子51との相対的な位置関係を従来のそれと異なるようにすることができる。
【0055】
例えば、従来のカンチレバー型プローブの電気的接触子9は、その取付部91と基板電極52とが電気的に接続できるようにして設けているので、プローブ基板43の基板電極52を、電気的接触子9の取付部91の位置に対応させるように配置している(図6参照)。
【0056】
これに対して、この実施形態の電気的接触子3は、通電部位としての接触部20と、荷重部位としての基部10とをそれぞれ異なる部材としており、電気的接触子3のうち接触部20の部材のみを、基板電極52及び被検査体2の電極端子51に電気的に接触させるようにできる。
【0057】
例えば図7に例示するように、接触部20の姿勢を上下方向に保持できるのであれば、被検査体2の電極端子51の上方に、基板電極52を配置させることができる。そうすると、電気的接触子3を用いて被検査体2の電気的検査を行なう場合、電気的接触子3のうち接触部20の部材のみを、基板電極52と被検査体2の電極端子51とに電気的に接続させることができるので、通電経路R1の経路長を短くすることができる。
【0058】
つまり、従来の電気的接触子9は、その全体が導電性材料で形成されているため、電気的接触子9を介した基板電極52と被検査体2の電極端子51との間の通電経路R21及びR22の経路長は比較的長くなる。これに対して、この実施形態の電気的接触子3を介した基板電極52と被検査体2の電極端子51との間の通電経路R1の経路長を比較的短くすることができる。
【0059】
また、通電経路R1の経路長が、従来の通電経路R21及びR22のそれによりも短くなるため、通電経路R1上の抵抗値を、従来の通電経路上の抵抗値(すなわち、通電経路R21及びR22の抵抗値の合計(合成抵抗値))よりも低くすることができる。その結果、基板電極52と被検査体2の電極端子51との間に大電流(大きな値の電流)を流すことが可能となる。
【0060】
さらに、電気的接触子3は、荷重部位と通電部位との機能を分別して形成することができるので、低針圧化を図るために、荷重部位として機能する基部10の断面積を小さくしたり、電流最大化を図るために、通電部位として機能する接触部20の断面積を大きくしたりすることができる。特に、電流最大化を図るために、例えば、図1に例示する接触部20のX軸方向(図1中の左右方向)の長さを大きくして幅広にしたり、板状の接触部20の厚さを増大したりしてもよい。これにより、検査時に、電気的接触子3に大電流を流すことが可能となる。なお、被検査体2の電極端子51間の狭ピッチ化に対応するため、電気的接触子3の板厚(若しくは接触部20の板厚)の増大には制限が生じ得るが、その場合でも接触部20の幅広化は有効となる。
【0061】
また、電気的接触子3は、通電部位の接触部20とは別に、荷重部位の基部10を設けているので、接触部20の断面積の増大とは別に、基部10の断面積を小さくすることができる。その結果、検査時に被検査体2の電極端子51に対する荷重を抑制する低針圧化を図ることができる。
【0062】
(A-2)実施形態の効果
上述したように、荷重部位として機能する基部を、耐熱性を有する高強度の合成樹脂材料で形成し、通電部位として機能する接触部を、導電性材料で形成した接触子とすることにより、低針圧化及び被検査体に大電流を供給する双方の特性をもつ電気的接触子を提供できる。
【0063】
具体的には、基部の断面積を小さくできるので、低針圧で、被検査体の電極端子に対して確実に電気的接触を可能とする。その結果、超微細化、超高集積化に伴う、電極端子数の増大や電極端子間の狭ピッチ化した集積回路の電気的検査を行なうことができる。
【0064】
また、接触部の断面積を増大できるので、被検査体に大電流を供給することが可能となる。その結果、超微細化、超高性能化した集積回路の電気的検査を行なうことができる。
【0065】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態について言及したが、本発明は、以下のような変形実施形態にも対応できる。
【0066】
(B-1)上述した実施形態では、電気的接触子3の基部10が、弾性支持部として、2本のアーム部(上側アーム部13及び下側アーム部14)を有する場合を例示した。しかし、弾性支持部は、図8に例示すように、1本のアーム部13Aであってもよい。また図示しないが、弾性支持部が、3本以上のアーム部を有するようにしてもよい。
【0067】
図8に例示するように、電気的接触子3Aの基部10Aが、1本のアーム部13Aを有することにより、基板電極52と接触部20を電気的に接続させる際に、電気的接触子3Aの弾性力を柔軟にすることができる。つまり、基板電極52に対する接触部20の上下方向(図8のY軸方向)、左右方向(図8のX軸方向)のスクラブ動作を大きくすることができる。その結果、基板電極52に対して接触部20の上端部201を確実に接触させることができる。
【0068】
(B-2)図9は、変形実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である。図10は、変形実施形態に係る電気的接触子を基板電極及び被検査体の電極端子に接触させたときの状態を示す図である。
【0069】
図9に例示する電気的接触子3Bにおいて、基部10Bの支持部15Bは、スクラブ補正部材155を有する。スクラブ補正部材155は、基部10Bの取付部11側の方に伸びた湾曲アーム部材とすることができる。なお、スクラブ補正部材155は、図9に例示するものに限定されるものではない。
【0070】
コンタクト荷重を受けて、上側アーム部13及び下側アーム部14が弾性的に変形しながら、基板電極52に対して接触部20の上端部201が接触する。このとき、湾曲したスクラブ補正部材155のガイド部156が、必要に応じて基板電極52に接しながら接触部20の上端部201を基板電極52に案内して、上端部201が基板電極52に接触する。さらにこのとき、スクラブ補正部材155の湾曲支持部157が、プローブ基板43の下面に弾性的に接するので、より低針圧を図ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…電気的接続装置、2…被検査体、3、3A、3B…電気的接触子、10、10A、10B…基部、11…取付部、12…土台部、13…上側アーム部、13A…アーム部、14…下側アーム部、15、15B…支持部、151…接続部、152…固定部、153…スクラブ補正部、155…スクラブ補正部材、18…プローブ基板支持部、20…接触部、201…上端部、202…下端部、203…先端接触部、
51…電極端子、52…基板電極、
4…プローブカード、41…配線基板、42…電気的接続ユニット、43…プローブ基板、44…支持部材、5…チャックトップ、6…検査ステージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10