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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231130BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231130BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/30 D
H05K3/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019066303
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163694
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝
(72)【発明者】
【氏名】谷本 周穂
(72)【発明者】
【氏名】西浦 克典
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171917(JP,A)
【文献】特開2016-176692(JP,A)
【文献】特開2006-142611(JP,A)
【文献】特開2003-100807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性支持体層(A)と、
前記耐熱性支持体層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備え、
前記離型層(B)の厚みが15μm以下であり、
前記フッ素系樹脂の数平均分子量が100万以上500万以下(ただし、500万は除く)である離型フィルムであり、
前記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレンを含み、
前記耐熱性支持体層(A)がポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂および金属箔からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の離型フィルムにおいて、
前記フッ素系樹脂は、前記離型層(B)と接する、前記離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有し、
前記反応基がアルコキシシリル基を含む離型フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性支持体層(A)と前記離型層(B)との間に、前記耐熱性支持体層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備える離型フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の離型フィルムにおいて、
前記耐熱性樹脂層(C)がエポキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む離型フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の離型フィルムにおいて、
前記離型フィルムの厚みが100μm以下である離型フィルム。
【請求項6】
第1電子部品と第2電子部品とが熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するための製造方法であって、
前記熱硬化型接着剤を介して前記第1電子部品上に配置された前記第2電子部品と、加熱ヘッドとの間に、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の離型フィルムを前記離型層(B)側が前記第2電子部品に向くように配置した状態で、前記加熱ヘッドにより前記第2電子部品を前記第1電子部品に向けて押圧することにより、前記第1電子部品および前記第2電子部品を加熱圧着により電気的に接続する工程を含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程には、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や非導電性接着フィルム(NCF:Non Conductive Adhesive Film)等のフィルム状の接着剤を用いて、電子装置に用いられる各種の部品や部材(以下、電子部品とも呼ぶ。)同士を加熱圧着により電気的に接続する工程がある。
ACFやNCF等の接着剤は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含んでいる。2つの電子部品の間に接着剤を配置し、電子部品同士を加熱圧着すると、接着剤に含まれる熱硬化性樹脂が熱によって硬化して、電子部品同士を接合することができる。
ここで、電子部品同士を加熱圧着する工程では、加熱加圧するための加熱加圧ヘッド部と電子部品との間に、加熱加圧ヘッド部と電子部品との接着を防止するための離型フィルムが配置される。
【0003】
このような離型フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2006-231916号公報)および特許文献2(特開2007-8153号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる圧着離型シートであって、シリコーンゴム層と、第1の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層とを含み、上記第1の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層が空孔を有し、上記シリコーンゴム層と上記第1の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層とが、互いに一体化されている圧着離型シートが記載されている。
【0005】
特許文献2には、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる圧着離型シートであって、超高分子量ポリエチレン層と、シリコーンゴム層とを含み、上記超高分子量ポリエチレン層と上記シリコーンゴム層とが互いに一体化されており、上記超高分子量ポリエチレン層の厚さが30μm以上である圧着離型シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-231916号公報
【文献】特開2007-8153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、半導体デバイスの高密度化および小型化が可能になるシリコン貫通電極(TSV)技術が注目され、開発が進められている。本技術を用いることで、半導体チップを積層し、3次元構造を形成することができるため、従来のデバイスに比べて、大幅な高密度化および小型化を達成することができる。
本技術では、チップを積み上げた後に加熱圧着するため、下層のチップにまで熱が伝わるように、従来よりもヒーターを高温化している。それに伴い、離型フィルムにおいても、更なる耐熱性が要求されている。
【0008】
本発明者らの検討によれば、離型フィルムを介してヒーターにより電子部品同士を加熱圧着する場合、電子部品を構成する半導体や金属材料と離型フィルムが、高温になるほど剥離し難くなることが見出された。
従来、フッ素系樹脂フィルムや、フッ素系樹脂が支持体上に塗工されたフィルムが、当該用途の離型フィルムとして使用されている。2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、電子部品同士を加熱圧着する場合、高温になるほど接着剤を構成する樹脂成分と離型フィルムとが溶融して融着するため、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう場合があることが明らかになった。
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと、離型フィルムに付着した接着剤が、製造ライン中に脱落し、製造ラインの汚染や停止が起こり、製品の歩留まりが低下してしまう懸念がある。
接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまう詳細な理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。電子部品同士を加熱圧着する場合、例えば、離型フィルムは300℃以上に加熱される。このとき、接着剤を構成する樹脂成分は溶融状態になっており、さらに離型フィルムの離型層が軟化して溶融状態に近い状態になっていると考えられる。そして、溶融した接着剤の一部と、溶融状態に近い離型層の一部とが相溶してしまう。これにより、電子部品から離型フィルムを剥離した際に、接着剤の一部が離型フィルムの離型層の表面に残ってしまい、その結果、接着剤の一部が離型フィルムに付着してしまうと考えられる。
【0009】
さらに、本発明者らの検討によれば、離型フィルムを介してヒーターにより電子部品同士を加熱圧着する場合、電子部品の表面に離型層を構成するフッ素系離型剤のフッ素成分が付着してしまうことが明らかになった。この場合、その後の工程において、電子部品の表面に付着したフッ素成分が原因で、電子部品と他の部品との接合性が低下してしまう懸念がある。
すなわち、本発明者らは、従来の離型フィルムには、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立するという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立した離型フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、耐熱性支持体層(A)と、上記耐熱性支持体層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備える離型フィルムにおいて、離型層(B)の厚みおよびフッ素系樹脂の数平均分子量をそれぞれ特定の範囲に調整することで、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立できる離型フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明によれば、以下に示す離型フィルムおよび電子装置の製造方法が提供される。
【0013】
[1]
電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルムであって、
耐熱性支持体層(A)と、
上記耐熱性支持体層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備え、
上記離型層(B)の厚みが30μm未満であり、
上記フッ素系樹脂の数平均分子量が10万以上600万未満である離型フィルム。
[2]
上記[1]に記載の離型フィルムにおいて、
上記フッ素系樹脂がパーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む離型フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の離型フィルムにおいて、
上記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、およびテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記フッ素系樹脂は、上記離型層(B)と接する、上記離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有する離型フィルム。
[5]
上記[4]に記載の離型フィルムにおいて、
上記反応基がアルコキシシリル基を含む離型フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性支持体層(A)がポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂および金属箔からなる群から選択される一種または二種以上を含む離型フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性支持体層(A)と上記離型層(B)との間に、上記耐熱性支持体層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備える離型フィルム。
[8]
上記[7]に記載の離型フィルムにおいて、
上記耐熱性樹脂層(C)がエポキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む離型フィルム。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の離型フィルムにおいて、
上記離型フィルムの厚みが100μm以下である離型フィルム。
[10]
第1電子部品と第2電子部品とが熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するための製造方法であって、
上記熱硬化型接着剤を介して上記第1電子部品上に配置された上記第2電子部品と、加熱ヘッドとの間に、上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の離型フィルムを上記離型層(B)側が上記第2電子部品に向くように配置した状態で、上記加熱ヘッドにより上記第2電子部品を上記第1電子部品に向けて押圧することにより、上記第1電子部品および上記第2電子部品を加熱圧着により電気的に接続する工程を含む電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立した離型フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の離型フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0017】
1.離型フィルム
以下、本実施形態に係る離型フィルム50について説明する。
図1および図2は、本発明に係る実施形態の離型フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る離型フィルム50は、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる離型フィルム50であって、耐熱性支持体層(A)と、耐熱性支持体層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備え、離型層(B)の厚みが30μm未満であり、フッ素系樹脂の数平均分子量が10万以上600万未満である。
【0019】
上述したように、本発明者らは、従来の離型フィルムには、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立するという観点において、改善の余地があることを見出した。
そこで、本発明者らは、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立した離型フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、離型層(B)を支持するための層として、耐熱性に優れた耐熱性支持体層(A)を使用するとともに、離型層(B)の厚みおよびフッ素系樹脂の数平均分子量をそれぞれ上記範囲に調整することにより、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立できることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態に係る離型フィルム50は、耐熱性支持体層(A)と、上記耐熱性支持体層(A)の一面上に配置され、かつ、フッ素系樹脂を含む離型層(B)と、を備える離型フィルムにおいて、離型層(B)の厚みが30μm未満であり、上記フッ素系樹脂の数平均分子量が10万以上であることにより、電子部品同士を高温で加熱圧着する際において、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性と、電子部品からの良好な離型性と、を両立することが可能となる。
フッ素系樹脂の数平均分子量は上限が600万未満であればよいが、500万以下が好ましく、450万以下がより好ましく、400万以下がさらに好ましい。数平均分子量の上限が上記範囲にあると、フッ素系樹脂の分散液や溶液を製膜するときに均質な離型層(B)を形成できる点で好ましい。
【0020】
本実施形態に係る離型フィルム50が耐熱性支持体層を複数備える場合、電子部品への熱伝導性と電子部品からの離型性とのバランスをより一層向上させる観点から、耐熱性支持体層(A)は電子部品の加熱圧着の際に電子部品に最も接近する部位に位置することが好ましい。
【0021】
本実施形態に係る離型フィルム50全体の厚みは、機械的特性、熱伝導性、取扱い性のバランスの観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
【0022】
本実施形態に係る離型フィルム50の形状は特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状等が挙げられる。これらの中でもフィルム状またはシート状が好ましい。
【0023】
本実施形態に係る離型フィルム50は電子部品の加熱圧着による接合に用いられる。より具体的には、2つの電子部品の間にACFやNCF等の接着剤を配置して、電子部品同士を加熱圧着する工程で使用する離型フィルムとして好適に用いることができる。
ただし、本実施形態に係る離型フィルム50は、ACFやNCF等の接着剤を用いた電子部品同士の電気的な接続に限定されず、加熱圧着による電子部品の接合に広く用いることができる。接合する電子部品の種類は特に限定されないが、例えば、金属基板やガラス基板等の各種基板類(基板上に電極が設けられていてもよい);プリント回路基板、TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)等の各種回路類(TCPやFPC上にIC等が設けられていてもよい);ITO(Indium Tin Oxide)層等の透明導電層;等が挙げられる。
離型フィルム50は、複数の異なる電子部品がモジュール化された電子部品の接合にも用いることができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る離型フィルム50を構成する各層について説明する。
【0025】
<耐熱性支持体層(A)>
耐熱性支持体層(A)は耐熱性を有する支持体層であり、電子部品同士を加熱圧着により接合する際に、熱源により加熱される側、すなわち加熱加圧ヘッド部と接する側の層である。耐熱性支持体層(A)を備えることにより、離型フィルム50の機械的特性が向上し、離型フィルム50の搬送性やハンドリング性を向上させることができる。さらに、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化を抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。
ここで、本実施形態において、耐熱性とは高温での寸法安定性や熱分解安定性を意味する。すなわち、耐熱性に優れるほど、高温における膨張や収縮、軟化等の変形や溶融、分解等が起き難いことを意味する。
耐熱性支持体層(A)は特に限定されないが、例えば、耐熱性樹脂層(例えば樹脂フィルム)や金属箔が挙げられる。これらの耐熱性支持体層は一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
金属箔としては、例えばニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、銀箔、金箔、モリブデン箔、銅箔およびアルミニウム箔等が挙げられる。さらに安価である点等の観点から、銅箔およびアルミニウム箔から選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0027】
耐熱性支持体層(A)が耐熱性樹脂層の場合、耐熱性支持体層(A)は耐熱性樹脂を含む。ここで、耐熱性樹脂層とは、例えば、主成分として耐熱性樹脂を含む層をいう。主成分とは、最も多く含まれる樹脂成分をいう。
耐熱性支持体層(A)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリメチルペンテンおよびシリコーン樹脂等から選択される一種または二種以上の樹脂を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましい。
【0028】
耐熱性支持体層(A)を構成する耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれかが200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。あるいは耐熱性支持体層(A)を構成する耐熱性樹脂は軟化点、ガラス転移温度および融点のいずれも有さないものであることが好ましく、分解温度が200℃以上であることがより好ましく、分解温度が220℃以上であることがさらに好ましい。
このような耐熱性樹脂を用いると、耐熱性支持体層(A)の耐熱性をより一層良好にすることができる。
【0029】
耐熱性支持体層(A)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、耐熱性支持体層(A)を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、押出フィルムやキャストフィルムなどの未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。耐熱性支持体層(A)の耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0030】
耐熱性支持体層(A)の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは5μm以上400μm以下であり、より好ましくは8μm以上200μm以下、さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。
耐熱性支持体層(A)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0031】
<離型層(B)>
離型層(B)は離型性を有する層であり、電子部品同士を加熱圧着により接合する際に、電子部品と対向するように配置される層(すなわち、電子部品側に配置される層)であり、電子部品同士の加熱圧着後に電子部品から離型フィルム50を剥離するために設けられる層である。
離型層(B)は特に限定されないが、例えば、コーティング層や樹脂フィルム等が挙げられる。
ここで、本実施形態において、離型性を有するとは、例えば、水に対する接触角が80°以上である場合をいう。
【0032】
離型層(B)は、フッ素系樹脂を含む。
本実施形態に係るフッ素系樹脂は、離型性をより一層良好にする観点から、パーフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル骨格からなる群から選択される一種または二種以上の構造を含む樹脂がより好ましい。
【0033】
フッ素系樹脂の数平均分子量が10万以上であるが、電子部品表面へのフッ素成分の付着をより一層抑制する観点から、20万以上が好ましく、50万以上がより好ましく、100万以上がさらに好ましい。
また、フッ素系樹脂の数平均分子量が600万未満であるが、高温時における離型性の観点から、20万以上が好ましく、50万以上がより好ましく、100万以上がさらに好ましい。フッ素系樹脂の数平均分子量は、Suwa et al., Journal of Applied Polymer Science, vol. 17, pp. 3253-3257 (1973) に記載の手法に基づいて、示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0034】
本実施形態に係るフッ素系樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの3元共重合体、フッ素ゴム等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、離型性に優れる点から、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)およびPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)からなる群から選択される一種または二種以上のフッ素系樹脂がより好ましい。
ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、ダイキン工業株式会社製「ポリフロンPTFE」、三井・ケマーズフロロプロダクツ社製「テフロン(登録商標)PTFE」等を挙げることができる。
テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体としては、例えば、ダイキン工業株式会社製「ネオフロンFEP」、または三井・ケマーズフロロプロダクツ社製「テフロン(登録商標)FEP」等を挙げることができる。
テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体としては、例えば、ダイキン工業株式会社製「ネオフロンPFA」、または三井・ケマーズフロロプロダクツ社製「テフロン(登録商標)PFA」等を挙げることができる。
【0035】
本実施形態に係るフッ素系樹脂は、耐熱性支持体層(A)、耐熱性樹脂層(C)およびプライマー層(P)等の離型層(B)と接する、離型フィルムを構成する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基を有することが好ましい。離型層(B)と接する層と200℃未満の温度にて結合可能な反応基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、アルコキシシリル基、イソシアネート基等が挙げられる。中でもアルコキシシリル基が、離型フィルム表面のフッ素系樹脂の濃度を高めることができるため好ましい。
アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、イソプロポキシシリル基などが挙げられる。反応性の観点から、メトキシシリル基、エトキシシリル基が好ましい。
【0036】
また、離型層(B)は、導電性材料を含んでもよい。これにより、電子部品同士を加熱圧着により接合する工程における離型フィルム50への静電気の発生を抑制でき、電子部品の接合をより安定して行うことができる。導電性材料としては特に限定されないが、例えば、カーボン粒子等が挙げられる。
【0037】
また、離型層(B)は、離型層(B)の厚みを薄くすることが可能な点から、フッ素系コーティング層であることが好ましい。フッ素系コーティング層であると、離型層(B)の厚みを薄くすることができるため、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。これにより、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着をより一層抑制することが可能となる。
フッ素系コーティング層は、例えば、フッ素系樹脂を含むフッ素系コーティング剤を耐熱性支持体層(A)または耐熱性樹脂層(C)に塗工して乾燥することにより形成することができる。また、フッ素系コーティング剤はフッ素系樹脂のラテックスであってもよいし、フッ素系樹脂の溶液であってもよい。
【0038】
離型層(B)の厚みは30μm未満であるが、接着剤の付着をより一層抑制する観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。離型層(B)の厚みが上記上限値以下または未満であると、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。
【0039】
離型層(B)は単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、離型層(B)は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0040】
<耐熱性樹脂層(C)>
本実施形態に係る離型フィルム50は、図2に示すように、耐熱性支持体層(A)と離型層(B)との間に、耐熱性支持体層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層(C)をさらに備えることが好ましい。これにより、離型フィルム50の機械的特性が向上し、離型フィルム50の搬送性やハンドリング性をより一層向上させることができる。さらに、電子部品同士を加熱圧着する際の離型層(B)の軟化をより一層抑制でき、その結果、溶融した接着剤の一部と、離型層(B)の一部とが相溶してしまうことをより一層抑制することができる。ここで、耐熱性支持体層(A)とは異なる種類の耐熱性樹脂層とは、例えば、主成分として含まれる耐熱性樹脂が異なる耐熱性樹脂層をいう。主成分とは、最も多く含まれる耐熱性樹脂をいう。
耐熱性樹脂層(C)は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
【0041】
耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0042】
耐熱性樹脂層(C)は耐熱性樹脂を含む。耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いることができる。これらの耐熱性樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、耐熱性樹脂層(C)を形成するために硬化促進剤を用いてもよい。硬化促進剤は特に限定されないが、熱硬化促進剤を用いてもよく、光硬化促進剤を用いてもよく、あるいは両者を併用もよい。このような硬化促進剤の配合量を調整することによっても、耐熱性樹脂層(C)の350℃における貯蔵弾性率E’を調整することが可能である。
【0044】
本実施形態に係る離型フィルム50において、電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着をより一層抑制する観点から、耐熱性樹脂層(C)の350℃における貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、さらに好ましくは2.0×10以上、さらにより好ましくは3.0×10以上、さらにより好ましくは5.0×10以上である。
また、本実施形態に係る離型フィルム50において、耐熱性樹脂層(C)の350℃における貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.0×10Pa以下、より好ましくは9.0×10Pa以下、さらに好ましくは8.0×10Pa以下、さらにより好ましくは6.0×10Pa以下、さらにより好ましくは5.0×10Pa以下である。これにより、電子部品表面に形成された凹凸への追従性が向上し、電子部品と離型性フィルムとの間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。その結果、電子部品同士を加熱圧着する際の電子部品への熱伝導性をより一層向上させることができる。
耐熱性樹脂層(C)の350℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、耐熱性樹脂層(C)を構成する樹脂の種類や樹脂組成を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0045】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0046】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、塩化ビニリデン樹脂、ポリベンゾイミダゾールおよびポリベンゾオキサゾール等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましく、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドから選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0047】
光硬化性樹脂としては、例えば、重合性不飽和基を導入したアクリル樹脂又はアルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0048】
本実施形態に係る耐熱性樹脂が熱硬化促進剤を含む場合、熱硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、ポリアミド樹脂、二級または三級アミン類、イミダゾール類、液状ポリメルカプタン類、ポリスルフィド樹脂、酸無水物類、ホウ素‐アミン錯体類、ジシアンアミド類、有機酸ヒドラジド類、パーオキサイド類等が挙げられる。これらの熱硬化促進剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本実施形態に係る耐熱性樹脂が光硬化促進剤を含有する場合、光硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、光ラジカル硬化促進剤、光カチオン硬化促進剤及び光アニオン硬化促進剤等が挙げられる。これらの光硬化促進剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて増感剤を併用してもよい。
光ラジカル硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、アルキルフェノン類、オキシムエステル類、有機リン化合物類等が挙げられる。
光カチオン硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類等が挙げられる。
光アニオン硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、オキシムエステル類、アミニウム塩類等が挙げられる。
【0050】
耐熱性樹脂層(C)を構成する耐熱性樹脂としては、高温での弾性率と柔軟性(クッション性)とのバランスに優れる点から、エポキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群から選択される一種または二種以上が好ましい。
これらの中でもエポキシ樹脂が好ましく、熱硬化性エポキシ樹脂がより好ましい。本実施形態に係る離型フィルムにおいて、エポキシ樹脂を含む耐熱性樹脂層(C)は、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる前にあらかじめ硬化させておくことが好ましい。硬化させることにより、耐熱性樹脂層(C)に含まれる成分が電子部品側にブリードアウトすることを抑制することができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオンレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0051】
熱可塑性ポリイミドとしては、従来公知のジアミンとテトラカルボン酸二無水物から合成される樹脂が利用できる。本実施形態に係る熱可塑性ポリイミドは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせた混合物であってもよい。
【0052】
ジアミンの例としては、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-エチルベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)-5-sec-ブチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノ-6-メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノ-6-エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)-4-メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)-4-tert-ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,3-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-3-n-ブチルベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、3,4'-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、3,3'-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4'-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼンなどが挙げられる。なかでも、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、4,4'-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、3,4'-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、3,3'-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、3,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン、3,3'-ジメチルベンジジン、3,4'-ジメチルベンジジン、4,4'-ジメチルベンジジン等が好ましい例として挙げられる。ただし、熱可塑性ポリイミドを得るためのジアミンはこれらに限定されるものではない。
【0053】
テトラカルボン酸二無水物の好ましい例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,1',2,2'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4'-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-イソフタロイルジフタリックアンハイドライド、ジアゾジフェニルメタン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、ジアゾジフェニルメタン-2,2',3,3'-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-チオキサントンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラキノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-キサントンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。ただし、熱可塑性ポリイミドを得るためのテトラカルボン酸二無水物はこれらに限定されるものではない。
【0054】
これらの耐熱性樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
耐熱性樹脂層(C)は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、耐熱性樹脂層(C)を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、押出フィルムやキャストフィルムなどの未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。耐熱性樹脂層(C)は一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、フィルムの反りを抑制する観点から、未延伸フィルムが好ましい。
【0056】
耐熱性樹脂層(C)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0057】
耐熱性樹脂層(C)の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは5μm以上400μm以下であり、より好ましくは8μm以上200μm以下、さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。
耐熱性樹脂層(C)は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0058】
<プライマー層(P)>
本実施形態に係る離型フィルム50は、離型層(B)の塗布性および離型性を向上させる観点から、離型層(B)の下層すなわち離型層(B)と耐熱性支持体層(A)の間または離型層(B)と耐熱性樹脂層(C)の間にプライマー層(P)を有してもよい。プライマー層(P)はシロキサン結合(-Si-O-)やシロキサン結合を有するシラン系化合物の前駆体、またはシラノール基を有していることが好ましい。
シロキサン結合やシラノール基を有するプライマー層は、例えば、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)を、大気中または、水蒸気雰囲気下で加熱して得られるシリカ膜や、アルコキシシランのゾルゲル反応により得られるシリカ膜などが挙げられる。
【0059】
プライマー層(P)の厚さは、例えば0.001μm以上1μm以下である。
【0060】
<その他の層>
本実施形態に係る離型フィルム50は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、耐熱性支持体層(A)と離型層(B)との間や、耐熱性支持体層(A)と耐熱性樹脂層(C)との間、離型層(B)と耐熱性樹脂層(C)との間に、例えば接着層や凹凸吸収層、衝撃吸収層等をさらに有してもよい。
【0061】
2.離型フィルム50の製造方法
本実施形態に係る離型フィルム50の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の積層フィルムの製造方法を採用することができる。例えば、本実施形態に係る離型フィルム50は、共押出成形法、ラミネート法、押出コーティング法、塗布法等の公知の製造方法を1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることによって作製することができる。耐熱性支持体層(A)、離型層(B)および耐熱性樹脂層(C)の種類によって、公知の積層フィルムの製造方法から適切な製造方法を選択することができる。
さらに、本実施形態に係る離型フィルム50は、例えば耐熱性支持体層(A)上にプライマー層(P)を形成後、離型層(B)をコーティングすることにより得ることもできる。プライマー層(P)および離型層(B)の形成法は特に限定されないが、各層を形成する化合物溶液を塗布乾燥する方法が挙げられる。
【0062】
3.電子装置の製造方法
本実施形態に係る離型フィルム50は、電子部品の加熱圧着による接合に用いられる。より具体的には、本実施形態に係る離型フィルム50は、第1電子部品と第2電子部品とが熱硬化型接着剤を介して接合された電子装置を製造するために好適に用いることができる。
本実施形態に係る離型フィルム50を用いた電子装置の製造方法は、例えば、熱硬化型接着剤を介して第1電子部品上に配置された第2電子部品と、加熱ヘッドとの間に、離型フィルム50を離型層(B)側が第2電子部品に向くように配置した状態で、加熱ヘッドにより第2電子部品を第1電子部品に向けて押圧することにより、第1電子部品および第2電子部品を加熱圧着により電気的に接続する工程を含む。
熱硬化型接着剤としては、例えば、公知の異方性導電フィルムや非導電性接着フィルム等のフィルム状接着剤を用いることができる。また、公知の異方性導電接着剤ペーストや非導電性接着剤ペーストを用いてもよい。電子部品(第1電子部品および第2電子部品)としては特に限定されないが、例えば、IC、LSI、ディスクリート、発光ダイオード、受光素子等の半導体チップや半導体パネル、半導体パッケージ等を挙げることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0064】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
<材料>
離型フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0067】
(耐熱性支持体層(A))
A1:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン社製、製品名:カプトン(登録商標)100H、厚み:25μm)
A2:ポリイミド製フィルム(東レ・デュポン社製、製品名:カプトン(登録商標)50H、厚み:12.5μm)
A3:銅箔(厚み:18μm)
【0068】
(離型層(B))
B1:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液1(ダイキン社製、製品名:Polyfluon-D、PTFEの数平均分子量:340万)
B1におけるPTFEの数平均分子量は、Suwa et al., Journal of Applied Polymer Science, vol. 17, pp. 3253-3257 (1973) に記載の手法に基づいて、示差走査熱量分析(DSC)により測定した。
B3:パーフルオロポリエーテル骨格のポリマー溶液(ダイキン社製、製品名:オプツールHD、数平均分子量:5000(推定値))
また、離型層(B)の厚みはダイヤルゲージを用いて測定し、塗工幅方向で両端部および中央部3点の平均値を採用した。
【0069】
(耐熱性樹脂層(C))
C1:エポキシ樹脂製フィルム
エポキシ樹脂製フィルム(C1)としては特許第5696038号に記載の製膜方法によって作製した後、更なる加熱によって硬化させたものを用いた。
【0070】
[実施例1]
耐熱性支持体層(A1)上にPTFE分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み10μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルム1を得た。
【0071】
[実施例2]
耐熱性支持体層(A1)の代わりに耐熱性支持体層(A2)を用いた以外は、以外は実施例1と同様の操作で、離型フィルム2を得た。
【0072】
[実施例3]
耐熱性支持体層(A1)上にPTFE分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み5μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルム3を得た。
【0073】
[実施例4]
耐熱性支持体層(A1)の代わりに耐熱性支持体層(A2)を用いた以外は、以外は実施例3と同様の操作で、離型フィルム4を得た。
【0074】
[実施例5]
耐熱性支持体層(A1)上にPTFE分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み2.5μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルム5を得た。
【0075】
[実施例6]
耐熱性支持体層(A1)の代わりに耐熱性支持体層(A2)を用いた以外は、以外は実施例5と同様の操作で、離型フィルム6を得た。
【0076】
[実施例7]
耐熱性支持体層(A1)の代わりに耐熱支持体層(A3)を用いた以外は、実施例3と同様の操作で、離型フィルム7を得た。
【0077】
[比較例1]
耐熱性支持体層(A1)上に厚み10μmの耐熱性樹脂層(C1)を形成した。次いで、耐熱性樹脂層(C1)上にパーフルオロポリエーテル骨格のポリマー溶液を塗布した。その後、130℃の温度で15分乾燥させて、厚み0.1μm未満の離型層(B3)を形成し、離型フィルム8を得た。
【0078】
[比較例2]
耐熱性支持体層(A1)上にPTFE分散液1を塗布した。その後、100℃の温度で5分乾燥させたのち、350℃で10分焼成し、厚み30μmの離型層(B1)を形成し、離型フィルム9を得た。
【0079】
<評価>
実施例および比較例で得られた離型フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0080】
(1)電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着評価(離型性評価)
シリコンウェハ―上にNCF(特開2018-22819号公報の実施例1に記載のアンダーフィル絶縁フィルム)を接着した。次いで、NCF上に実施例および比較例で得られた離型フィルムを積層し、得られた積層体を350℃、圧着圧力0.6MPaの条件で、30秒間プレスした。次いで、積層体を室温まで冷却してから離型フィルムをNCFから剥離した。次いで、離型フィルムの表面を観察し、NCFの付着の有無を以下の基準で評価した。なお、離型フィルムおよびNCFのサイズはそれぞれ1x5cm、1x1cmである。試験後にNCFと接触した1x1cmの部位を観察した。
◎:離型フィルムの表面にNCFの接触痕がわずかに観察された以外は付着物が全く観察されなかった。
○:離型フィルムの表面にNCFの接触痕が観察されたが、付着物は無かった。試験後もフィルムの表面は平滑であった。
×:離型フィルムの表面に粉状0.5~2mmの付着物が観察された。試験後のフィルムの試験部位に触れると付着物が脱落した。
【0081】
(2)フッ素転写量
離型フィルムの離型面をシリコンウェハに350℃で30秒、2Nで押し当てた。次いで、X線光電子分光法(XPS)を用いて、離型フィルムが押し当てられた面の300×700μmの領域を観察した。F原子とSi原子の存在比(F/Si)をフッ素転写量と定めた。
装置:AXIS-NOVA(KRATOS社製)
X線源:単色化Al Kα(1486.6eV)
【0082】
【表1】
【0083】
電子部品同士を加熱圧着する際の接着剤の付着評価において、実施例の離型フィルムは、電子部品同士を加熱圧着する際のNCFの付着物が無く、良好な離型性を示した。これに対し、比較例1および2の離型フィルムは、NCFの付着物が観察された。
また、電子部品表面へのフッ素成分の付着量評価においては、数平均分子量が10万以上600万未満であるフッ素系樹脂を離型層(B)に用いた実施例の離型フィルムを用いた場合、電子部品へのフッ素の転写量が少なく、電子部品表面へのフッ素成分の低付着性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0084】
A 耐熱性支持体層
B 離型層
C 耐熱性樹脂層
50 離型フィルム
図1
図2