(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ソナーユニット
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20231130BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20231130BHJP
G01S 15/93 20200101ALI20231130BHJP
【FI】
G01S7/521 A
H05K9/00 R
G01S15/93
(21)【出願番号】P 2019111970
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】519219313
【氏名又は名称】輝創電子科技(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】角 智明
(72)【発明者】
【氏名】中村 高明
(72)【発明者】
【氏名】長井 俊人
(72)【発明者】
【氏名】洪 高楊
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-318278(JP,A)
【文献】実開昭59-121895(JP,U)
【文献】特開昭59-050599(JP,A)
【文献】実開平03-065295(JP,U)
【文献】特開2011-053109(JP,A)
【文献】特開2019-016829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72- 1/82
G01S 3/80- 3/86
G01S 5/18- 5/30
G01S 7/52- 7/64
G01S 15/00-15/96
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を受波可能なトランスデューサと、
前記トランスデューサ、前記トランスデューサを駆動する回路を構成する電子部品、及び前記回路の入出力端子が実装された矩形状の回路基板と、
前記回路基板に配置され、前記電子部品に入射する電磁波を遮蔽するシールドユニットと、を備え、
前記入出力端子は、前記回路基板における長手方向の一端側に配置され、
前記シールドユニットは、
前記回路基板の一面に対向して配置され、前記回路基板の厚み方向視において前記電子部品と少なくとも一部が重複する板部を有し、
前記板部を厚み方向に貫通する貫通孔もしくは切欠きであり、前記厚み方向視において前記トランスデューサのリード端子と重複する窓部が形成されており、
前記窓部は、前記厚み方向視において前記回路基板の長手方向における前記入出力端子に近接する位置に配置されているソナーユニット。
【請求項2】
前記入出力端子は、グランドに接続されたGND端子を含み、
前記回路基板は、前記GND端子と電気的に接続されており、かつ、当該GND端子と同電位の第一スルーホールを有し、
前記シールドユニットは、
前記回路基板への取付端子を有し、
前記取付端子を前記第一スルーホールに挿通された状態で、当該第一スルーホールと電気的に接続され、かつ、当該第一スルーホールに対して接合されており、
前記第一スルーホールは、前記入出力端子に含まれる端子のうち、前記GND端子との距離が最も近くなる位置に配設されている請求項1に記載のソナーユニット。
【請求項3】
前記トランスデューサ、及び前記シールドユニットが前記回路基板に実装された状態で収容された筐体を更に備え、
前記回路基板には、当該回路基板の一方の面側の空間と他方の面側の空間とを連通する連通路が形成されている請求項1または2に記載のソナーユニット。
【請求項4】
前記回路基板における前記一端側から長手方向の他端側に向かうにつれて、前記板部と前記回路基板との間の距離が短くなる請求項1から3のいずれか一項に記載のソナーユニット。
【請求項5】
前記回路基板は、前記トランスデューサの前記リード端子が挿通されて電気的に接続される第二スルーホールを有し、
前記トランスデューサと前記第二スルーホールとは、前記厚み方向視において前記窓部と重複している請求項1から4のいずれか一項に記載のソナーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソナーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
微弱なアナログ信号の電気的な処理が要請されるセンサユニットなどの回路基板では、外部から混入する静電気や電磁波の影響が相対的に大きなものとなる。このような場合には、回路基板を電磁波等から保護するシールドユニットが用いられる。
【0003】
特許文献1には、電子機器が内蔵する回路基板への取付け易さと、リワーク性とを向上させたシールドケース(本願のシールドユニットに対応)が記載されている。特許文献1では、シールドケースそのものを回路基板上にはんだ付けで固定した場合、例えばシールドケース内の回路部品を取り替えるような修理を行う際には、はんだ付けで固定されたシールドケースを取り外す作業が必要になり、リワーク性が悪いという問題が指摘されている。この問題を解決すべく、特許文献1のシールドケースは、側板部と天板部とで構成されている。側板部は、回路基板上に固定された側部を有する枠状で、側部の上端からほぼ水平に伸びて所定面積の平面部を有する形状とされている。天板部は、側板部に嵌合し、蓋をすることができる形状とされている。これにより、シールドケース内の回路部品の交換などのリワーク時には嵌合された天板部を外すことでリワークを可能としている。
【0004】
特許文献2には、回路基板、当該回路基板に取り付けられたイメージセンサ、当該回路基板を覆い、グラウンド(アース)に接続されているシールド板(本願のシールドユニットに対応)、及び回路基板やシールド板を収容するカメラ筐体、などを備え、ケーブルと接続されたカメラユニットが記載されている。このカメラユニットでは、シールド板に落ちた静電気は、回路基板を経由することなく、アースに流すことができ、また、回路基板がグラウンド(グランド)電位のシールド板で覆われているため、電磁波対策の効果を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-159144号公報
【文献】特開2014-075825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたユニットでは、シールドユニットで覆うことにより回路基板を電磁波や静電気から保護できるが、回路基板、当該回路基板に実装される電子部品、シールドユニット、及び回路基板等を収容する筐体の組み立て順序に制約が生じることも想定される。特許文献2に記載されたユニットでは、静電気や電磁波対策では所定の効果を得られるにしても、回路基板や筐体の組み立て順序の制約(以下、「組み立て上の制約」と記載する)の有無についての言及はなされていない。そのため、静電気や電磁波の遮蔽のようなノイズ対策と組み立て上の制約の緩和とを両立させたシールドユニットなどを含む構造の提案が望まれる。特に、例えば車載用の衝突防止用の距離センサとして用いられるソナーユニットのような、小型化と精度向上(低ノイズ化)とが求められるセンサについての提案が望まれる。
【0007】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、ノイズ対策と組み立て上の制約の緩和とを両立させたソナーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るソナーユニットの特徴構成は、超音波を受波可能なトランスデューサと、前記トランスデューサ、前記トランスデューサを駆動する回路を構成する電子部品、及び前記回路の入出力端子が実装された矩形状の回路基板と、前記回路基板に配置され、前記電子部品に入射する電磁波を遮蔽するシールドユニットと、を備え、前記入出力端子は、前記回路基板における長手方向の一端側に配置され、前記シールドユニットは、前記回路基板の一面に対向して配置され、前記回路基板の厚み方向視において前記電子部品と少なくとも一部が重複する板部を有し、前記板部を厚み方向に貫通する貫通孔もしくは切欠きであり、前記厚み方向視において前記トランスデューサのリード端子と重複する窓部が形成されており、前記窓部は、前記厚み方向視において前記回路基板の長手方向における前記入出力端子に近接する位置に配置されている点にある。
【0009】
上記構成によれば、回路基板の一方の面(以下、表面と記載する)にトランスデューサが搭載される。シールドユニットは、表面、もしくはその反対側の面(以下、裏面と記載する)に配置される。そして、シールドユニットの板部が、回路基板の厚み方向視で回路基板上の電子部品と重複し、電子部品を外部のノイズ(例えば電磁波)から保護(例えば遮蔽)する。
【0010】
上記構成によれば、シールドユニットが裏面に配置された場合、回路基板における裏面の内、シールドユニットの窓部と回路基板の厚み方向視で重複する部分は、当該窓部により外部に露出する。これにより作業者や産業機械などの操作端子等は、窓部を介して当該部分の裏面にアプローチ可能である。例えば、当該裏面からの操作によってトランスデューサなどのリード端子のはんだ付けなどが可能となる。シールドユニットが表面に配置された場合は、回路基板の裏面は外部に露出するため、作業者等は、当該裏面にアプローチが可能である。また、トランスデューサなどのリード端子は、窓部を介して回路基板に接続可能となる。これにより、トランスデューサ、回路基板、及びシールドユニットは、順序を問わず組み立て可能となり、組み立て上の制約を緩和できる。
【0011】
上記構成によれば、窓部がシールドユニットの両面の空間を連通するため、例えば、樹脂もしくは樹脂前駆体などの封止材を筐体の内部空間に充填して樹脂封止する場合、シールドユニットの一方の面側から封止材を供給すれば、封止材が窓部を流れて他方の面側にも封止材が充填される。また、封止の際に生じた気泡は、封止材の流れと共に窓部を通過可能であるため、回路基板とシールドユニットとの間の気泡を容易に除去できる。
【0012】
なお、上記構成によれば、窓部の部分はノイズから保護されないことになるが、相対的に入出力端子から離れた位置に実装される電子部品は板部により保護されている。すなわち、電子部品におけるノイズからの保護の必要性に比べて、ノイズからの保護の必要性が相対的に小さい入出力端子に近接する位置に窓部を配置することで、回路基板におけるノイズからの保護と組み立て上の制約の緩和とのバランスを調和している。
【0013】
本発明に係るソナーユニットの更なる特徴構成は、前記入出力端子は、グランドに接続されたGND端子を含み、前記回路基板は、前記GND端子と電気的に接続されており、かつ、当該GND端子と同電位の第一スルーホールを有し、前記シールドユニットは、前記回路基板への取付端子を有し、前記取付端子を前記第一スルーホールに挿通された状態で、当該第一スルーホールと電気的に接続され、かつ、当該第一スルーホールに対して接合されており、前記第一スルーホールは、前記入出力端子に含まれる端子のうち、前記GND端子との距離が最も近くなる位置に配設されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、シールドユニットは取付端子が第一スルーホールに挿通された状態で第一スルーホールに接合されることで、回路基板への固定状態の維持と電気的な接続状態の維持との安定性ないし確実性を向上させることができる。
【0015】
加えて上記構成によれば、入出力端子に含まれる端子のうちGND端子が最も距離が近くなる位置に第一スルーホールを配設することで、シールドユニットとグランドとの間のインピーダンスを極力低下させることができる。これにより、シールドユニットが遮蔽した電磁波の電荷や、例えばグランドから逆流するなどした電荷を、速やかにグランドに逃がす(アースする)ことを可能とする。また、回路基板へのこれら電荷の影響を低減することができる。
【0016】
本発明に係るソナーユニットの更なる特徴構成は、前記トランスデューサ、及び前記シールドユニットが前記回路基板に実装された状態で収容された筐体を更に備え、前記回路基板には、当該回路基板の一方の面側の空間と他方の面側の空間とを連通する連通路が形成されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、回路基板に形成された連通路は、回路基板の裏面側から回路基板の表面側に向けて貫通するなどして、筐体の内部空間における、回路基板の裏面側の空間と表面側の空間とを連通するものとなる。当該連通路により、例えば、樹脂もしくは樹脂前駆体などの封止材を筐体の内部空間に充填して樹脂封止する場合、回路基板の表面側と裏面側の何れか一方側から封止材を供給すれば他方側にも封止材が充填され、筐体の内部空間全体が封止可能となる。
【0018】
本発明に係るソナーユニットの更なる特徴構成は、前記回路基板における前記一端側から長手方向の他端側に向かうにつれて、前記板部と前記回路基板との間の距離が短くなる点にある。
【0019】
上記構成によれば、シールドユニットの板部は、一端側が他端側よりも回路基板から離間した傾斜状態になる。換言すれば、他端側から一端側に向けて、回路基板と板部との隙間が順次拡大する傾斜状態になる。この傾斜状態により、筐体の内部空間に封止材を供給する際に回路基板及びシールドユニットの他端側(回路基板と板部との隙間が狭い側)から封止材を供給すれば、封止後に回路基板とシールドユニットとの間に気泡が残留しにくくなり、封止状態が良好なものになる。
【0020】
本発明に係るソナーユニットの更なる特徴構成は、前記回路基板は、前記トランスデューサの前記リード端子が挿通されて電気的に接続される第二スルーホールを有し、前記トランスデューサと前記第二スルーホールとは、前記厚み方向視において前記窓部と重複している点にある。
【0021】
上記構成によれば、シールドユニットが裏面に配置された場合、トランスデューサのリード端子を回路基板にはんだ付けなどで接合する際に、当該リード端子を回路基板の表面から第二スルーホールに挿通した状態で、回路基板の裏面において窓部を介したはんだ付けなどの接合操作を行うことが可能となる。シールドユニットが表面に配置された場合は、当該リード端子をシールドユニットの窓部を介して回路基板の表面から第二スルーホールに挿通した状態で、回路基板の裏面においてはんだ付けなどの接合操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】封止材を注入する前のソナーユニットの縦断面図
【
図6】封止材を注入した後のソナーユニットの縦断面図
【
図7】基板及び基板に実装された別の形態のシールドを基板の裏面側から見た図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るソナーユニットについて説明する。
【0024】
〔概略構成〕
図1には、例えば車載用途において衝突防止用などの距離センサとして用いられるソナーユニット(以下、ソナー100と記載する)の分解斜視図を示している。
【0025】
ソナー100は、超音波を送受波する圧電素子(図示せず)などを有するトランスデューサ1が搭載される回路基板(以下、基板2と記載する)、基板2を覆う板部30を有するシールドユニット(以下、シールド3と記載する)、基板2と電気的に接続され、ソナー100の入出及び出力のインタフェースである入出力ピン5、及び、これらを収容する筐体6とを備えている。入出力ピン5は、例えば4本の端子ピンを含み、それぞれ二本の電力ピンと、二本の信号ピンである。なお、二本の電力ピンとは、いわゆる電圧が印加される+V入力ピンと、グランドに接続されるGNDピンのことを言う。
【0026】
ソナー100は入出力ピン5を介して外部の装置である車両の走行制御装置(図示せず、以下、ECUと記載する)と通信し、また、電力供給を受ける。またソナー100は、入出力ピン5を介して外部の装置である他のソナー100と通信し、また、電力供給を受けたり電力供給を行ったりする。
【0027】
ソナー100は、
図1、
図2に示すように、基板2の厚み方向視においてトランスデューサ1、基板2、及びシールド3がこの順に重複する状態で筐体6中に収容されている。以下では、基板2から見てトランスデューサ1の側を上と定義し、その逆を下と定義して記載する。また、基板2の厚み方向と平行である方向を、上下方向と記載する。すなわち、筐体6中においてトランスデューサ1は基板2の上側に配置されている。また、筐体6中においてシールド3は下側に配置されている。
【0028】
ソナー100は、トランスデューサ1により超音波を発信し、その超音波が対象物(図示せず)により反射した反射波を受信することで、発信から受信までの時間と音速とに基づいて、トランスデューサ1と対象物との距離を求めるという、いわゆるタイム・オブ・フライト(Time-Of-Flight、TOF)法を実行する。
【0029】
〔各部の説明〕
トランスデューサ1は金属製などの筒状体の内部に超音波を送受波可能な圧電素子と配線等と(図示せず)を収容したデバイスである。
図1に示すように、トランスデューサ1は、圧電素子を内包し、超音波の送受波面が形成された本体部10と、本体部10から下方に延出する基部13、及び、圧電素子及び基板2の配線パターンと電気的に接続され、基板2に固定されるためのリード端子である端子11,12を有する。端子11,12は、金属もしくは金属合金性の針金状の電極であり、基部13から下方に向けて延出している。
【0030】
基板2は、
図3に示すように、配線パターン(図示せず)と電子部品29とにより回路が形成された板状の本体20を有するプリント基板である。
【0031】
本体20は、矩形状であり、四隅の角の内、一つが矩形の内側に向けて凹むように切りかかれた形状の凹部20aとなっている。本体20の面上には、トランスデューサ1やトランスデューサ1の送受波回路等を構成する電子部品29が実装されている。トランスデューサ1や、電子部品29のうち比較的背の高い電解コンデンサなどの大型電子部品29a(
図2参照)は、本体20の表面側(上側)に実装されている。シールド3(
図2参照)は、本体20の裏面側(下側)に配置されている。また、本体20には、配線パターンと電気的に接続されているスルーホール21~27が形成されている。また、本体20には、貫通孔H,Hや、切欠き部20b,20bが形成されている。以下では、本体20の長手方向と平行な方向は、単に長手方向と記載する場合がある。また、本体20の短手方向と平行な方向は、単に短手方向と記載する場合がある。
【0032】
凹部20aは、本体20の内側に向けて矩形状に凹む形状をしている。凹部20aの三角形状の頂点の一つは本体20の内側に位置している。凹部20aの他の二つの頂点は本体20の隣り合う二辺と重複している。
【0033】
スルーホール23~26は、入出力ピン5(
図1参照)が電気的に接続される、基板2の回路の入出力端子(接点)である。スルーホール23,24は電源入力端子であり、スルーホール23は入出力ピン5の+V入力ピンと接続され、スルーホール24は入出力ピン5のGNDピンと接続される。スルーホール23~26は、本体20の長手方向における、凹部20aと反対側の端部に形成されている。スルーホール23~26と入出力ピン5との接続については筐体6の説明と共に後述する。
【0034】
スルーホール21,22(第二スルーホールの一例)は、トランスデューサ1を実装するための接点である。スルーホール21,22のそれぞれには、端子11,12(
図1参照)のそれぞれが挿通されてはんだ付けなどにより接合されている。スルーホール21,22は、本体20の長手方向における、スルーホール23~26と凹部20aとの間に形成されている。
【0035】
スルーホール27(第一スルーホールの一例)は、シールド3が電気的に接続される接点である。スルーホール27は、長手方向においてスルーホール21,22とスルーホール24との間に配置されている。スルーホール27とスルーホール24との中心間距離は短くなるようにそれぞれ配置されており、スルーホール27とスルーホール23,25,26との中心間距離よりも短くなるように配置されている。スルーホール27は、配線パターンによりスルーホール24と電気的に接続されており、シールド3のグランドとなる。スルーホール27とシールド3との電気的な接続についてはシールド3の説明と共に後述する。
【0036】
貫通孔H,Hは、シールド3(
図1参照)が係止される穴である。貫通孔H,Hは、本体20の長手方向における、凹部20aと同じ側の端部に形成されている。貫通孔H,Hは、本体20の短手方向において凹部20aに近い側と遠い側とにそれぞれ形成されている。切欠き部20b,20bは、シールド3が係止される係合部である。切欠き部20b,20bは、本体20の短手方向における両端部にそれぞれ形成されている。シールド3の貫通孔H,H及び切欠き部20b,20bへの係止についてはシールド3の説明と共に後述する。
【0037】
電子部品29には、送受波回路、すなわち、トランスデューサ1(
図1参照)から出力される電気信号を増幅する回路や、ECUなどと通信する回路が含まれる。トランスデューサ1から出力される電気信号を増幅される回路は微弱なアナログ信号をハンドリングするため、電気的なノイズに対する保護を十分に行うことが好ましい。電子部品29の内、特にトランスデューサ1から出力される電気信号を増幅する回路を構成する部品は、本体20の裏面側における、貫通孔H,H(
図2参照)とスルーホール21,22との間に配置することが好ましい。また、当該部品は、本体20における、後述するシールド3の板部30(
図1、
図4参照)と上下方向視で重複する位置(板部30により覆われる位置)であって、後述するシールド3の貫通孔31によっては露出されない箇所に配置することが好ましい。
【0038】
シールド3は、
図1、
図4に示すように、金属製の板をプレス加工などして一体に形成した導電性の部品である。シールド3は、外部から飛来する電気的ノイズから電子部品29を保護(シールド)する。シールド3は、円形状の貫通孔31(窓部の一例)を形成された板部30、板部30の外周部から板部30の垂線に沿い上方に延出するピン状のGND端子33(取付端子の一例)及び脚部34,34、板部30の外周部から板部30の垂線に沿い上方に延出し、その先端が板部30の内側に向けて爪状に屈曲したスナップフィット部39とを有する。
【0039】
板部30は、矩形状であり、四隅の角の内、一つが矩形の内側に向けて凹むように切りかかれた形状の凹部30aとなっている。板部30は、上下方向において、基板2の電子部品29と重複するように配設される。これにより、板部30は、外部(特に下方)から飛来する電気的ノイズから電子部品29を保護(シールド)する。
【0040】
凹部30aは、板部30の内側に向けて矩形状に凹む形状をしている。凹部30aの三角形状の頂点の一つは板部30の内側に位置している。凹部30aの他の二つの頂点は板部30の隣り合う二辺と重複している。
【0041】
脚部34,34(
図1参照)は、貫通孔H,H(
図2参照)に挿通(係止)されることで、シールド3の位置決めを行う。脚部34,34は、板部30の長手方向における、凹部30aと同じ側の端部に形成されている。脚部34,34は、板部30の短手方向において凹部30aに近い側と遠い側とにそれぞれ形成されている。スナップフィット部39は、基板2の本体20における、切欠き部20b,20bと係合してシールド3を本体20に係止させる。
【0042】
GND端子33は、板部30の長手方向における、凹部30aと反対側の端部であって、板部30の短手方向における、凹部30aと同じ側に形成されている。GND端子33はスルーホール27に挿通されてはんだ付けなどにより接合されている。これによりスルーホール27とシールド3は電気的に接続されると共に、シールド3が本体20に固定される。はんだ付けで接合された場合、後述する樹脂による封止や、使用中の振動や温度変化、その他の物理的な刺激に対しても確実に電気的な接続を維持できるため耐久性が向上する。
【0043】
また、シールド3はスルーホール27及びスルーホール24を介して入出力ピン5のGNDピンと接続される。すなわち、シールド3及びそのGND端子33、スルーホール27、スルーホール24及び入出力ピン5のGNDピンとは同電位(同じGND電位)で接続される。
【0044】
スルーホール27と、入出力ピン5のGNDピンと電気的に接続されるスルーホール24とはその距離が短くなるように配置されているため、シールド3と入出力ピン5のGNDピン(
図1参照)とはインピーダンスが小さくなるように電気的に接続される。
【0045】
このように、シールド3と入出力ピン5(
図1参照)のGNDピンとが低インピーダンスで接続されるため、シールド3が遮蔽した電磁波による電荷は、速やかに入出力ピン5のGNDピンから流れ出る。また、万一、入出力ピン5のGNDピンから電気的ノイズがスルーホール24へ逆流した場合にも、スルーホール24へ逆流した当該電気的ノイズの大部分はシールド3に流れ込み、直後に入出力ピン5のGNDピンから流れ出る。したがって、シールド3が外部空間から飛来した電磁波などの電気的ノイズを遮蔽した場合も、入出力ピン5のGNDピンから電気的ノイズがスルーホール24へ逆流した場合も、いずれの場合にも、基板2に大きな電気的ノイズが流入することを回避し、基板2を電気的ノイズから保護できる。
【0046】
GND端子33は、脚部34,34(
図1参照)よりも上下方向において長く形成されており、シールド3が本体20に固定された状態で、脚部34,34の側からGND端子33の側に向けて、本体20と板部30との隙間が順次拡大する傾斜状態になる。シールド3が本体20に固定された状態で、シールド3とスルーホール23~26とは上下方向で重複していない。シールド3が本体20に固定された状態で、凹部30aと凹部20aとは上下方向視で重複する。シールド3が本体20に固定(シールド3が基板2に実装)された状態で、貫通孔31とスルーホール21,22とは上下方向視で重複する(
図4、
図5参照)。
【0047】
貫通孔31は、板部30を上下方向に貫通する穴である。貫通孔31は、長手方向において、脚部34,34よりもGND端子33により近い位置に形成されている。
【0048】
筐体6は、
図1、
図2に示すように、樹脂などにより形成されたソナー100のケーシングであり、トランスデューサ1、基板2、シールド3、及び入出力ピン5を内部に収容する。筐体6は、入出力ピン5と共にインサート成形されている。筐体6は、上下方向に沿う筒状の部材である収容部61と、収容部61の筒の側部から延出する筒状の部材であるコネクタ部69とを有する。
【0049】
コネクタ部69の筒の内側には、
図2に示すように、入出力ピン5の一端がその内部空間に露出する状態で、端子の本体がコネクタ部69の筒の延在方向に沿い配列されている。コネクタ部69には、外部の装置のコネクタが接続される。
【0050】
収容部61は、
図1、
図2に示すように、上下方向と交差する隔壁62により上方の第一収容部63と下方の第二収容部64とに区画されている。隔壁62には上下方向に貫通する挿通孔62aが形成されている。
【0051】
第一収容部63は、
図1に示すように、矩形状の筒状体であり、四隅は例えばR状に面取りされている。第一収容部63には、トランスデューサ1が収容される。トランスデューサ1は、本体部10が隔壁62の上面に載置された状態で、基部13を挿通孔62aに挿通される。したがってトランスデューサ1の端子11,12は、第二収容部64に配置される。
【0052】
第二収容部64は、矩形状の筒状体であり、四隅は例えばR状に面取りされたような形状になっている。第二収容部64の筒内部には、入出力ピン5の他端が下方に向けて露出する状態で配列された接続部65と、筒の内壁と一体に形成されており、当該内壁から内側に延出する8つの座部66(
図5参照)とを有する。第二収容部64には、シールド3が下面に固定された基板2が収容される。
【0053】
第二収容部64には、基板2は、上面が座部66の下面に当たる状態で筒内部に収容される。この収容状態で、基板2のスルーホール23~26にはそれぞれ入出力ピン5の他端が挿通されて電気的接続を確立する。本実施形態では、スルーホール23~26と入出力ピン5とは、はんだ付けにより接合される。
【0054】
また、基板2のスルーホール21,22には、トランスデューサ1の端子11,12が挿通されて電気的接続を確立する。本実施形態では、スルーホール21,22と端子11,12とは、はんだ付けにより接合される。
図1、
図5に示すように、シールド3には基板2のスルーホール21,22と上下方向に重複する位置に貫通孔31が形成されているため、トランスデューサ1やシールド3を固定した基板2を筐体6中に収容した後に、スルーホール21,22と端子11,12とのはんだ付けを基板2の裏面側から貫通孔31を介して行える。そのため、ソナー100は組み立て時(製造時)の作業の自由度が高い。具体的には、はんだごてやはんだ付け装置の小手先を貫通孔31に挿入することで、シールド3と基板2との隙間空間内でスルーホール21,22と端子11,12とのはんだ付けを行える。
【0055】
第二収容部64の内部空間(筐体6の内側の空間)の内、基板2と隔壁62との間の空間(基板2の表面側に面した空間)は、シールド3の凹部30aと第二収容部64の内側壁面との間に形成される流路、及び、基板2の凹部20aと第二収容部64の内側壁面との間に形成される流路(連通路の一例)により残りの空間(基板2の裏面側に面した空間)と連通した状態になる(
図5参照)。
【0056】
第二収容部64の内部空間には、
図6に示すように、空間全体に樹脂Fが封入される。この封入は、例えば、熱溶融させて液状にした液状樹脂や、ラジカル重合などで硬化する樹脂前駆体など(以下、封止材と記載する)を第二収容部64の内部空間に封入した後に、これを硬化させて樹脂Fとすることで行う。第二収容部64の内部空間の封止により、少なくとも基部13の下部、端子11,12、及び基板2の全てが封止される。
【0057】
第二収容部64の内部空間の内、基板2と隔壁62との間の空間には、シールド3の凹部30aと基板2の凹部20aを介して封止材を簡単に注入可能である。
【0058】
第二収容部64の内部空間の内、基板2とシールド3との間の空間には、基板2とシールド3の端部の隙間から封止材を注入可能である。封止材の注入の際は、凹部30a、凹部20aの近傍から封止材を注入するとよい。このようにすると、封止材は、基板2と隔壁62との間の空間にはシールド3の凹部30aと基板2の凹部20aを介して注入され、基板2とシールド3との隙間には脚部34,34側から注入されるので、効率よく第二収容部64の内部空間全体に封止材を注入することができる。特に、脚部34,34の側からGND端子33の側に向けて、本体20と板部30との隙間が順次拡大しているため、基板2とシールド3の隙間に封止材を注入する際に、本体20と板部30との間に気泡などが残りにくくなるため作業性が良く、好ましい。また、シールド3には貫通孔31が形成されているため、本体20と板部30との間に生じた気泡の空気は貫通孔31からも排出可能となるため気泡が残りにくい。
【0059】
以上のようにして、ノイズ対策と組み立て上の制約の緩和とを両立させたソナーユニットを提供することができる。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、基板2の本体20は角部に凹部20aを有し、シールド3の板部30は角部に凹部30aを有し、第二収容部64の内部空間の内、基板2と隔壁62との間の空間は、シールド3の凹部30aと第二収容部64の内側壁面との間に形成される流路、及び、基板2の凹部20aと第二収容部64の内側壁面との間に形成される流路により残りの空間(基板2の裏面側に面した空間)と連通した状態になる場合を説明した。そして、基板2と隔壁62との間の空間に封止材を注入する際には、シールド3の凹部30aと基板2の凹部20aを介して封止材を簡単に注入可能であることを説明した。しかしながら、角部以外の本体20の外周と第二収容部64の内周(内側壁面)との間、及び角部以外の板部30と第二収容部64の内周との間にそれぞれ隙間(凹部)を設けて基板2と隔壁62との間の空間に封止材を注入する流路を形成することもできる。この場合でも、シールド3に形成された凹部と基板2に形成された凹部とが上下方向視で重複することが好ましい。
【0061】
(2)上記実施形態では、シールド3が本体20に固定された状態で、凹部30aと凹部20aとは上下方向視で重複する場合を説明した。しかし、凹部30aと凹部20aとは上下方向視で重複しない位置関係であっても、基板2と隔壁62との間の空間に封止材を注入する流路は形成される。また、凹部30aを形成しない場合にも、基板2と隔壁62との間の空間に封止材を注入する流路は形成される。凹部30aを形成しない場合には、例えば貫通孔31及び凹部20aにより基板2と隔壁62との間の空間に封止材を注入する流路が形成される場合もある。
【0062】
(3)上記実施形態では、シールド3が本体20に固定された状態で、脚部34,34の側からGND端子33の側に向けて、本体20と板部30との隙間が順次拡大する傾斜状態になる場合を説明した。しかし、本体20と板部30とは平行に設置することもできる。
【0063】
(4)上記実施形態では、シールド3は、板部30に窓部の一例として円形状の貫通孔31が形成されている場合を説明した。しかし、窓部の一例は、円形状の貫通孔31に限られない。例えば、貫通孔31は矩形や三角形その他の多角形でもよい。また、貫通孔31に換えて、
図7に示すように、長手方向におけるGND端子33の側の端部から他端側に向けて板部30を切り欠いた切欠き部32であり、シールド3が基板2に実装された状態で、切欠き部32とスルーホール21,22とが上下方向視で重複すればよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、シールド3が、本体20の裏面側に配置されている場合を例示して説明したが、シールド3の配置の態様はこれに限られない。シールド3は、本体20の表面側に配置してもよい。この場合は、トランスデューサ1の端子11,12は、シールド3の貫通孔31を介して基板2スルーホール21,22に挿通して接続可能である。トランスデューサ1やシールド3を固定した基板2を筐体6中に収容した後に、スルーホール21,22と端子11,12とのはんだ付けを基板2の裏面側から行える。
【0065】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ソナーユニットに適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 :トランスデューサ
2 :基板(回路基板)
3 :シールド
5 :入出力ピン
6 :筐体
11 :端子(リード端子)
12 :端子(リード端子)
20a :凹部(連通路)
21 :スルーホール(第二スルーホール)
22 :スルーホール(第二スルーホール)
23 :スルーホール(入出力端子)
24 :スルーホール(入出力端子)
25 :スルーホール(入出力端子)
26 :スルーホール(入出力端子)
27 :スルーホール(第一スルーホール)
29 :電子部品
29a :大型電子部品(電子部品)
30 :板部
31 :貫通孔(窓部)
33 :GND端子(取付端子)
100 :ソナー
H :貫通孔