(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】筐体およびベース部材
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20231130BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20231130BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K5/03 A
H05K7/14 F
(21)【出願番号】P 2019139959
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 祐也
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0331451(US,A1)
【文献】実開平04-119251(JP,U)
【文献】特開2012-070508(JP,A)
【文献】特開2017-017119(JP,A)
【文献】特開2016-046371(JP,A)
【文献】実開昭57-017186(JP,U)
【文献】特開2002-373512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 5/03
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置可能なベース部と、
前記基板の上方および側方に位置するとともに、前記ベース部を覆うように配置されて前記ベース部との間の空間に前記基板を収容するカバー部と
を備え、
前記ベース部は、
前記カバー部の側面との間に隙間を形成する端部側の下面および上面の両方から突出するように形成されるリブ部
を備え、
前記リブ部は、
前記ベース部の下面に形成される第1リブ部と、前記ベース部の上面に形成される第2リブ部とを含み、
前記第2リブ部は、
前記ベース部の上面において前記第1リブ部と対応する位置に対して、前記カバー部の側面から離間する方向に所定距離ずれて形成される、
筐体。
【請求項2】
前記リブ部は、
前記ベース部と前記カバー部の側面との間の隙間が、クランク状となるように形成される、
請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記ベース部は、
前記ベース部の下面において、前記第1リブ部に対して前記カバー部の側面から離間する方向の所定位置に形成される段差部
を備える、請求項1または2に記載の筐体。
【請求項4】
前記第1リブ部は、
前記第1リブ部の先端部が前記カバー部の下端部より上方に位置するように形成される、
請求項1~3のいずれか一つに記載の筐体。
【請求項5】
基板を載置可能で、カバー部材と嵌合することで前記基板を収容するベース部材であって、
上面および下面を有するとともに、
前記カバー部材との間に隙間を形成する端部にリブ部を有し、
前記リブ部は、
前記下面から突出し、第1側面が前記カバー部材に面する第1リブ部と、
前記上面から突出し、前記第1側面より内方に設けた第2側面が前記カバー部材に面する第2リブ部と
を含む、ベース部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体およびベース部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を収容する筐体が知られている。また、かかる筐体について、水が筐体内に侵入することを抑制する技術も種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、筐体内へ水の侵入を抑制するという点で、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、水の侵入を抑制することができる筐体およびベース部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、筐体において、ベース部と、カバー部とを備える。ベース部は、基板の下方に位置する。カバー部は、前記基板の上方および側方に位置するとともに、前記ベース部を覆うように配置されて前記ベース部との間の空間に前記基板を収容する。前記ベース部は、前記カバー部の側面との間に隙間を形成する端部側の下面および上面の少なくともいずれかから突出するように形成されるリブ部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筐体内へ水の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る筐体の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る筐体の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、筐体のリブ部付近を示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図7は、筐体が水平面に対して傾斜して設置されたときの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する筐体の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係る筐体の構成例を示す斜視図である。また、
図2は、実施形態に係る筐体の分解斜視図である。なお、
図1および
図2においては、説明の便宜のために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向で規定される3次元の直交座標系を図示している。なお、Z軸は、鉛直上向きを正方向、鉛直下向きを負方向とする。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、
図1,2および後述する
図3以降の図は、いずれも模式図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、筐体1は、ベース部10(
図1で見えず)と、カバー部20とを備え、その内部の空間に基板30(
図2参照)を収容する。かかる基板30は、例えば板状に形成され、基板30には、図示しない各種の電子機器が搭載される。なお、基板30を収容した筐体1は、例えば図示しない車両の適宜位置に設置されるが、これに限られず、用途に応じて任意の場所に設置されてもよい。
【0012】
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
図2および
図3に示すように、ベース部10は、例えば板状に形成され、基板30の下方に位置するように配置される。詳しくは、ベース部10は、上面10bが基板30の下面30aに対向するように配置される。また、ベース部10において、上面10bとは反対側の下面10aは、筐体1において下方に露出した面となる。なお、ベース部10の詳しい構成については、後述する。
【0013】
カバー部20は、
図3に示すように、下方が開口された箱状に形成される。従って、カバー部20には、かかる開口からベース部10および基板30が挿入されて、カバー部20とベース部10とが嵌め合った状態で組み付けられる。
【0014】
組み付けられたときのカバー部20は、基板30の上方および側方に位置するとともに、ベース部10を覆うように配置される。具体的には、カバー部20は、ベース部10の下面10a以外を覆うように配置される。
【0015】
詳しくは、カバー部20は、天井面の下面20aが基板30の上面30bに対向するように配置されるとともに、側面20cが基板30の側面30cおよびベース部10の側方の端部(側面)10cに対向するように配置される。このようにしてカバー部20とベース部10との間に空間Aが形成され、かかる空間Aに基板30が収容される。
【0016】
ところで、上記したように、カバー部20とベース部10とが嵌め合った状態で組み付けられる場合、例えばカバー部20やベース部10の製造ばらつきを考慮するため、カバー部20の側面20cとベース部10の端部(側面)10cとの間には、わずかな隙間Bが生じるように設定される。
【0017】
ここで、筐体1は、設置場所の状態や用途などによっては、水平面に対して傾斜して設置されることがある。筐体1が傾斜すると、例えば何らかの理由でベース部10の下面10aに水が付着した場合、水は、下面10aを伝って上記した隙間B部分に到達し、毛細管現象により隙間Bから筐体1内へ侵入するおそれがあった。
【0018】
そこで、本実施形態に係る筐体1にあっては、隙間Bからの水の侵入を抑制することができる構成とした。以下、かかる構成について
図3および
図4以降を参照して詳しく説明する。
【0019】
図4は、ベース部10の上面図である。また、
図5は、ベース部10の下面図である。
図3~
図5に示すように、ベース部10は、載置部11と、リブ部12と、段差部13とを備える。
【0020】
図4によく示すように、載置部11は、基板30を載置可能な部位である。例えば、載置部11は、ベース部10の四隅部分に形成されるとともに、基板30を載置する載置面11aがベース部の上面10bより上方に位置するように形成される。また、載置部11の載置面11aには、図示しない固定部材(例えばネジ)などを挿通可能な挿通孔11bが穿設される。
【0021】
また、
図2に示すように、基板30においては、載置部11の挿通孔11bと対応する位置に、挿通孔31が形成される。従って、載置部11には、基板30が載置された状態で、図示しない固定部材が挿通孔11bおよび基板30の挿通孔31に挿通されることで、基板30が載置部11に固定される。なお、載置部11が形成される位置や個数、形状などは、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0022】
図4および
図5に示すように、リブ部12は、ベース部10の端部10c側に形成される。
図4,5の例では、リブ部12は、ベース部10の端部10c側の一部に形成されるが、これに限られず、端部10c側の全周に亘って形成されてもよい。
【0023】
ここで、リブ部12について
図6も参照しつつさらに詳しく説明する。
図6は、筐体1のリブ部12付近を示す部分拡大断面図である。なお、
図6は、
図3の破線の閉曲線C部分を拡大した断面図である。
【0024】
図3~
図6に示すように、リブ部12は、第1リブ部12a(
図4で見えず)と、第2リブ部12b(
図5で見えず)とを含む。
【0025】
第1リブ部12aは、ベース部10の下面10aから下方(Z軸負方向)に向けて突出するように形成される。具体的には、
図6に示すように、第1リブ部12aは、ベース部10において、カバー部20の側面20cとの間に隙間Bを形成する端部10c側の下面10aから突出するように形成される。
【0026】
第2リブ部12bは、ベース部10の上面10bから上方(Z軸正方向)に向けて突出するように形成される。具体的には、第2リブ部12bは、ベース部10において、カバー部20の側面20cとの間に隙間Bを形成する端部10c側の上面10bから突出するように形成される。
【0027】
すなわち、第1リブ部12aおよび第2リブ部12bを含むリブ部12は、ベース部10の下面10aおよび上面10bの両方から突出するように形成される。
【0028】
これにより、隙間Bの上下方向の高さ(長さ)Laを、第1リブ部12aおよび第2リブ部12bの分だけ長くすることができる。具体的に説明すると、第1リブ部12aの下面10aからの高さ(言い換えると、下面10aからの突出量)を「L1」、第2リブ部12bの上面10bからの高さ(言い換えると、上面10bからの突出量)を「L2」とする。また、ベース部10の板厚(言い換えると、第1リブ部12a等が無い場合のベース部10の高さ)を「Lx」とする。
【0029】
第1リブ部12a等が無い場合、隙間Bの上下方向の距離は、ベース部10の板厚Lxと同じである。これに対して、本実施形態にあっては、第1、第2リブ部12a,12bを備えることで、隙間Bの上下方向の高さLaを、ベース部10の板厚Lxに、第1リブ部の高さL1および第2リブ部の高さL2の分を加えた長さにすることができる。これにより、隙間Bからの水が筐体1内に侵入することを抑制できる。
【0030】
これについて、
図7を参照して説明する。
図7は、筐体1が水平面に対して傾斜して設置されたときの状態を示す説明図である。
図7に示すように、筐体1が傾斜すると、例えばベース部10の下面10aに付着した水は、下面10aを伝って隙間B部分に到達することがある。なお、
図7では、隙間B部分に到達した水を符号D1で示す。
【0031】
このように、水D1が隙間B部分に到達した場合であっても、隙間Bの上下方向の高さLa(
図6参照)を、第1、第2リブ部12a,12bの分だけ長くしている、換言すると、水D1の侵入経路を第1、第2リブ部12a,12bの分だけ長くしていることから、毛細管現象が生じても、水D1は、筐体1の内部までは上昇せず、よって隙間Bからの水D1の侵入を抑制することができる。また、本実施形態にあっては、隙間Bからの水D1の侵入を抑制することから、水D1が基板30に付着して基板30に影響を与えることもない。
【0032】
なお、上記では、リブ部12は、ベース部10の下面10aおよび上面10bの両方から突出するように形成されるようにした、言い換えると、ベース部10が、第1、第2リブ部12a,12bの両方を備えることで、隙間Bからの水D1の侵入を抑制するようにしたが、これに限られない。
【0033】
すなわち、例えば、リブ部12は、ベース部10の下面10aおよび上面10bの一方から突出するように形成されてもよい。換言すると、ベース部10は、第1リブ部12aおよび第2リブ部12bのいずれか一方を備えるようにしてもよく、かかる場合であっても、第1リブ部12aまたは第2リブ部12bの分だけ、隙間Bの上下方向の高さを長くでき、よって隙間Bからの水D1の侵入を抑制することができる。
【0034】
従って、本実施形態においては、リブ部12が、ベース部10の下面10aおよび上面10bの少なくともいずれかから突出するように形成されれば、隙間Bからの水D1の侵入を抑制することができる。
【0035】
図6に戻って、第1、第2リブ部12a,12bの説明を続ける。第1リブ部12aは、先端部12a1がカバー部20の下端部20d1より上方に位置するように形成される。詳しくは、第1リブ部12aは、カバー部20の下端部20d1の下面20d2を含む水平面より上方に位置するように形成される。
【0036】
これにより、本実施形態にあっては、筐体1の下方から第1リブ部12aが突出しないようにすることができ、よって筐体1が設置場所に設置される際に、第1リブ部12aが設置場所に干渉してしまうことを抑制することができる。
【0037】
なお、上記では、第1リブ部12aは、先端部12a1がカバー部20の下端部20d1より上方に位置するように形成されるが、これに限られず、先端部12a1がカバー部20の下端部20d1と同じ位置、あるいは、下端部20d1より下方に位置するように形成されてもよい。
【0038】
第2リブ部12bは、ベース部10の上面10bにおいて第1リブ部12aと対応する位置10b1とは異なる位置に形成される。ここで、上面10bにおいて第1リブ部12aと対応する位置10b1とは、第1リブ部12aが形成される下面10aの位置の裏面(反対面)側の位置である。
【0039】
詳しくは、第2リブ部12bは、ベース部10の上面10bにおいて第1リブ部12aと対応する位置10b1に対して、カバー部20の側面20cから離間する方向(
図6の例では右方(Y軸正方向))に所定距離Eずれて形成される。
【0040】
これにより、隙間Bからの水D1の侵入をより一層抑制することができる。
図7を参照して説明すると、第2リブ部12bは、上記のようにずれて形成されることで、水D1の侵入経路をずれた分だけ長くすることができる。また、第2リブ部12bは、筐体1が水平面に対して傾斜して設置されたとき、重力に逆らうように右上方に向けてずれるようになることから、隙間Bの水D1は上昇しにくくなり、結果として隙間Bからの水D1の侵入をより一層抑制することができる。
【0041】
図6の説明に戻ると、カバー部20は、側面段差部21を備える。側面段差部21は、カバー部20の側面20cに形成される。また、側面段差部21は、上記したようにカバー部20の側面20cから離間する方向にずれて形成される第2リブ部12bに倣って追従するような段差形状に形成される。言い換えると、側面段差部21は、カバー部20の側面20cにおいて第2リブ部12bに対応する位置に形成されるとともに、ずれて形成される第2リブ部12bとの間の隙間Bが均一または略均一の幅となるような段差形状に形成される。
【0042】
このように、リブ部12である第2リブ部12bがずれて形成されるとともに、カバー部20が上記した側面段差部21を備えることで、ベース部10とカバー部20の側面20cとの間の隙間Bが、クランク状となる。
【0043】
これにより、水の侵入経路を、隙間Bが直線状に形成された場合に比べて長くすることができ、よって隙間Bからの水の侵入をより一層抑制することができる。
【0044】
ベース部10の段差部13は、下面10aにおいて、第1リブ部12aに対してカバー部20の側面20cから離間する方向(
図6の例では右方(Y軸正方向))の所定位置に形成される。
【0045】
例えば、段差部13は、下面10aにおいて上方へ向けて延伸するような段差形状に形成される。なお、
図6に示す例では、段差部13は、上方へ向けて延伸するような段差形状に形成されるが、これに限定されるものではなく、下方へ向けて延伸するような段差形状に形成されてもよい。
【0046】
このように、ベース部10が段差部13を備えることで、水がベース部10の端部10cの隙間Bまで到達しにくくすることができる。
図7を参照して説明すると、筐体1が傾斜している場合、例えばベース部10の下面10aの中央側に付着した水は、ベース部10の端部10cへ向けて伝って流れることとなる。
【0047】
このとき、ベース部10が段差部13を備えることで、水D2は、段差部13で一旦止まり、その後自重や振動等によって落下し易くなる(矢印F参照)。このように、本実施形態にあっては、段差部13を備えることで、水D2がベース部10の端部10cの隙間Bまで到達しにくくすることができる、別言すれば、隙間Bに到達する水の量を低減でき、よって隙間Bからの水が筐体1内に侵入することを効果的に抑制することができる。
【0048】
上述してきたように、実施形態に係る筐体1は、ベース部10と、カバー部20とを備える。ベース部10は、基板30の下方に位置する。カバー部20は、基板30の上方および側方に位置するとともに、ベース部10を覆うように配置されてベース部10との間の空間Aに基板30を収容する。ベース部10は、カバー部20の側面20cとの間に隙間Bを形成する端部10c側の下面10aおよび上面10bの少なくともいずれかから突出するように形成されるリブ部12を備える。これにより、筐体1内へ水の侵入を抑制することができる。
【0049】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 筐体
10 ベース部
12a 第1リブ部
12b 第2リブ部
13 段差部
20 カバー部
30 基板