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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019140970
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021025782
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138741(JP,A)
【文献】TAKEI, Y. 外4名,Flexible pressure sensor based on ultra-thin Si piezo-resistive membrane,Bio4Apps 2017(International Conference on BioSensors, BioElectoronics, BioMedical Devices, BioMEMS/NEMS & Applications 2017)口頭発表の資料,2017年,第1-25頁
【文献】竹井 裕介 外4名,極薄シリコンピエゾ抵抗素子を用いたフレキシブルな圧力センサ,平成29年電気学会センサ・マイクロマシン部門大会 第34回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム論文集,2017年10月24日
【文献】TAKEI, Y. 外4名,Flexible Contact Pressure Sensor Based on Ultrathin Piezoresistive Silicon Membrane Capable of Strain Compensation,Sensores and Materials,2018年,Vol.30,No.12,第2999-3007頁
【文献】渡辺 理,ひずみゲージとその応用,1972年05月30日,第2-5、10-13頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材の一方の側に形成された第1抵抗体を有する第1ひずみゲージと、
前記第1抵抗体から視て前記第1基材と反対側に位置するように、前記第1ひずみゲージ上に積層された弾性体層と、
第2基材の一方の側に形成された第2抵抗体と、前記第2抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、前記第2基材の他方の側が前記弾性体層側を向くように、前記弾性体層上に積層された第2ひずみゲージと、
を有するセンサモジュールであって、
前記弾性体層の弾性率は、前記第2基材の弾性率よりも小さく、
前記弾性体層の側面は、前記絶縁樹脂層から露出するセンサモジュール。
【請求項2】
前記弾性体層の弾性率は、0.1MPa以上15GPa以下である請求項に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記第1抵抗体と前記第2抵抗体とは略同一パターンであり、平面視で重複する位置に配置されている請求項1又は2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記第1抵抗体及び前記第2抵抗体は、Cr混相膜から形成されている請求項1乃至の何れか一項に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記第1ひずみゲージは、前記第1抵抗体を含む複数の抵抗体を有し、
前記第2ひずみゲージは、前記第2抵抗体を含む複数の抵抗体を有し、
前記第1ひずみゲージの複数の前記抵抗体と、前記第2ひずみゲージの複数の前記抵抗体とは略同一パターンであり、平面視で重複する位置に配置されている請求項1乃至の何れか一項に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記第1ひずみゲージの前記弾性体層が積層される側とは反対側が起歪体に固着された請求項1乃至の何れか一項に記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
起歪体のひずみを検出する様々なセンサモジュールが知られている。例えば、少なくとも一層の導電性エラストマ層を有するシート状の弾性体と、この弾性体に積層されると共に前記導電性エラストマ層を介して電気的に接続される複数の電極シートとを備えるひずみセンサが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-80520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のセンサモジュールでは、起歪体自体に生じたひずみと外部から与えられたひずみとの区別がつかないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、起歪体自体に生じたひずみと外部から与えられたひずみとを区別可能なセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本センサモジュールは、第1基材の一方の側に形成された第1抵抗体を有する第1ひずみゲージと、前記第1抵抗体から視て前記第1基材と反対側に位置するように、前記第1ひずみゲージ上に積層された弾性体層と、第2基材の一方の側に形成された第2抵抗体と、前記第2抵抗体を被覆する絶縁樹脂層と、を有し、前記第2基材の他方の側が前記弾性体層側を向くように、前記弾性体層上に積層された第2ひずみゲージと、を有するセンサモジュールであって、前記弾性体層の弾性率は、前記第2基材の弾性率よりも小さく、前記弾性体層の側面は、前記絶縁樹脂層から露出する
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、起歪体自体に生じたひずみと外部から与えられたひずみとを区別可能なセンサモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する平面図である。
図2】第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
図3】起歪体を有するセンサモジュールを例示する断面図である。
図4】第1実施形態の変形例に係るセンサモジュールを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する平面図であり、センサモジュールをひずみゲージ10Bの基材11の上面11aの法線方向から視た様子を示している。図2は、第1実施形態に係るセンサモジュールを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。なお、図1ではカバー層16の図示を簡略化し、一部のみを破線で示している。
【0011】
図1及び図2を参照すると、センサモジュール1は、ひずみゲージ10Aと、ひずみゲージ10Bと、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bとの間に積層された弾性体層20とを有している。言い換えれば、ひずみゲージ10Bは、弾性体層20を介して、ひずみゲージ10A上に積層されている。
【0012】
ひずみゲージ10A及び10Bは、それぞれ、基材11と、機能層12と、抵抗体13と、端子部14と、カバー層16とを有している。つまり、ひずみゲージ10A及び10Bは、便宜上別符号としているが、同一仕様のひずみゲージである。但し、本実施形態では、ひずみゲージ10A及び10Bが同一仕様のひずみゲージであるとして以降の説明を行うが、これには限定されず、ひずみゲージ10A及び10Bを別仕様のひずみゲージとしてもよい。
【0013】
なお、本実施形態では、便宜上、センサモジュール1において、ひずみゲージ10Bのカバー層16が設けられている側を上側又は一方の側、ひずみゲージ10Aの基材11が設けられている側を下側又は他方の側とする。又、各部位のひずみゲージ10Bのカバー層16が設けられている側の面を一方の面又は上面、ひずみゲージ10Aの基材11が設けられている側の面を他方の面又は下面とする。但し、センサモジュール1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物をひずみゲージ10Bの基材11の上面11aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をひずみゲージ10Bの基材11の上面11aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0014】
基材11は、抵抗体13等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材11の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材11の厚さが5μm~200μmであると、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0015】
基材11は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0016】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材11が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材11は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0017】
機能層12は、基材11の上面11aに抵抗体13の下層として形成されている。すなわち、機能層12の平面形状は、図1に示す抵抗体13の平面形状と略同一である。機能層12の厚さは、例えば、1nm~100nm程度とすることができる。
【0018】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体13の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層12は、更に、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体13の酸化を防止する機能や、基材11と抵抗体13との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層12は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0019】
基材11を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体13がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層12が抵抗体13の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0020】
機能層12の材料は、少なくとも上層である抵抗体13の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0021】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0022】
抵抗体13は、機能層12の上面に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。なお、図1では、便宜上、抵抗体13を梨地模様で示している。
【0023】
抵抗体13は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体13は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0024】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。又、Cr混相膜に、機能層12を構成する材料の一部が拡散されてもよい。この場合、機能層12を構成する材料と窒素とが化合物を形成する場合もある。例えば、機能層12がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0025】
抵抗体13の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体13の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体13を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体13の厚さが1μm以下であると、抵抗体13を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材11からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0026】
機能層12上に抵抗体13を形成することで、安定な結晶相により抵抗体13を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上できる。
【0027】
例えば、抵抗体13がCr混相膜である場合、機能層12を設けることで、α-Cr(アルファクロム)を主成分とする抵抗体13を形成できる。α-Crは安定な結晶相であるため、ゲージ特性の安定性を向上できる。
【0028】
ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗体13がCr混相膜である場合、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体13はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0029】
又、機能層12を構成する金属(例えば、Ti)がCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性を向上できる。具体的には、ひずみゲージ10A及び10Bのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0030】
端子部14は、抵抗体13の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体13よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部14は、ひずみにより生じる抵抗体13の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。抵抗体13は、例えば、端子部14の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部14に接続されている。端子部14の上面を、端子部14よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体13と端子部14とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0031】
なお、ひずみゲージ10Aの抵抗体13と、ひずみゲージ10Bの抵抗体13とは、略同一パターンであり、弾性体層20等を挟んで対向する位置に配置されている。言い換えれば、ひずみゲージ10Aの抵抗体13と、ひずみゲージ10Bの抵抗体13とは、略同一パターンであり、平面視で重複する位置に配置されている。これにより、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bは、略同一領域のひずみを測定できる。
【0032】
ここで、略同一パターンとは、同一の設計に基づいて製造された結果、両者のパターンがほとんど同一であることを示し、製造上の誤差程度は許容されることを意味する。
【0033】
なお、ひずみゲージ10Aの端子部14と、ひずみゲージ10Bの端子部14とは、平面視で重複する位置に配置されてもよいし、平面視で重複する位置に配置されなくてもよい。抵抗体13と端子部14とを接続する配線パターンがある場合には、各々の配線パターンについても、平面視で重複する位置に配置されてもよいし、平面視で重複する位置に配置されなくてもよい。
【0034】
カバー層16は、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するように基材11の上面11aに設けられた絶縁樹脂層である。カバー層16を設けることで、抵抗体13に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層16を設けることで、抵抗体13を湿気等から保護できる。
【0035】
カバー層16は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層16は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層16の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。なお、ひずみゲージ10A及び10Bにおいて、カバー層16は必要に応じて設ければよい。
【0036】
弾性体層20は、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bとの間に積層されている。詳細には、弾性体層20は、ひずみゲージ10Aの抵抗体13から視て基材11と反対側に位置するように、ひずみゲージ10A上に積層されている。又、ひずみゲージ10Bは、基材11の他方の側(抵抗体13が形成されていない側)が弾性体層20側を向くように、弾性体層20上に積層されている。
【0037】
ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bとの間に積層された弾性体層20は、ひずみゲージ10Aで検出されるひずみのひずみゲージ10Bへの伝達と、ひずみゲージ10Bで検出されるひずみのひずみゲージ10Aへの伝達とを妨げる材料で形成されている。すなわち、弾性体層20は、ひずみゲージ10Aで検出されるひずみと、ひずみゲージ10Bで検出されるひずみが、互いに伝達しないように遮断する機能を有している。
【0038】
これにより、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bは、それぞれが独立してひずみを検出できる。但し、弾性体層20は、各々のひずみが互いに伝達しないように完全に遮断する必要はなく、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bの独立したひずみ検出に支障がない程度に遮断すればよい。
【0039】
弾性体層20の弾性率は、ひずみゲージ10Aのカバー層16の弾性率、及び、ひずみゲージ10Bの基材11の弾性率よりも小さい。但し、ひずみゲージ10Aがカバー層16を有していない場合には、弾性体層20の弾性率は、ひずみゲージ10Bの基材11の弾性率より小さければよい。
【0040】
弾性体層20の弾性率は、0.1MPa以上15GPa以下であることが好ましい。弾性体層20の弾性率が0.1MPa以上であると、センサモジュール1全体として十分な剛性を確保できる。又、弾性体層20の弾性率が15GPa以下であると、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bのひずみが互いに伝達しないように遮断できる。
【0041】
但し、弾性体層20の弾性率は0.1MPa以上1GPa以下であるとより好ましく、0.1MPa以上50MPa以下であると特に好ましい。弾性体層20の弾性率が1GPa以下、50MPa以下となるに従って、ひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bのひずみが互いに伝達しないように一層確実に遮断できる。
【0042】
弾性体層20の弾性率が0.1MPa以上50MPa以下である材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。弾性体層20の弾性率が50MPaより大きく1GPa以下である材料としては、例えば、PE、フッ素樹脂等が挙げられる。弾性体層20の弾性率が1GPaより大きく15GPa以下である材料としては、例えば、PP、PET等が挙げられる。又、弾性体層20は、フィラーや顔料を含有しても構わない。
【0043】
弾性体層20の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1μm以上10mm以下であることが好ましい。弾性体層20の厚さが1μm以上であるとひずみの伝達が遮断される点で好ましく、10mm以下であると反りを低減できる点で好ましい。
【0044】
ひずみゲージ10Aを製造するためには、まず、基材11を準備し、基材11の上面11aに機能層12を形成する。基材11及び機能層12の材料や厚さは、前述の通りである。但し、機能層12は、必要に応じて設ければよい。
【0045】
機能層12は、例えば、機能層12を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材11の上面11aをArでエッチングしながら機能層12が成膜されるため、機能層12の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0046】
但し、これは、機能層12の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層12を成膜してもよい。例えば、機能層12の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材11の上面11aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層12を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0047】
次に、機能層12の上面全体に抵抗体13及び端子部14となる金属層を形成後、フォトリソグラフィによって機能層12並びに抵抗体13及び端子部14を図1に示す平面形状にパターニングする。抵抗体13及び端子部14の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体13及び端子部14は、同一材料により一体に形成できる。抵抗体13及び端子部14は、例えば、抵抗体13及び端子部14を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。抵抗体13及び端子部14は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0048】
機能層12の材料と抵抗体13及び端子部14の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層12としてTiを用い、抵抗体13及び端子部14としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0049】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体13及び端子部14を成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体13及び端子部14を成膜してもよい。
【0050】
これらの方法では、Tiからなる機能層12がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層12を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ10Aのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0051】
なお、抵抗体13がCr混相膜から形成されている場合、Tiからなる機能層12は、抵抗体13の結晶成長を促進する機能、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗体13の酸化を防止する機能、及び基材11と抵抗体13との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層12として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0052】
その後、必要に応じ、基材11の上面11aに、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するカバー層16を設けることで、ひずみゲージ10Aが完成する。カバー層16は、例えば、基材11の上面11aに、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層16は、基材11の上面11aに、抵抗体13を被覆し端子部14を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0053】
このように、抵抗体13の下層に機能層12を設けることにより、抵抗体13の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体13を作製できる。その結果、ひずみゲージ10Aにおいて、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、機能層12を構成する材料が抵抗体13に拡散することにより、ひずみゲージ10Aにおいて、ゲージ特性を向上できる。なお、ひずみゲージ10Bは、ひずみゲージ10Aと同様の方法により製造できる。
【0054】
センサモジュール1を作製するには、上記の方法で製造したひずみゲージ10Aとひずみゲージ10Bを弾性体層20を介して積層すれば良い。ひずみゲージ10Aのカバー層16の上面と弾性体層20の下面、ひずみゲージ10Bの基材11の下面と弾性体層20の上面とは、例えば、接着層を介して積層できる。
【0055】
但し、弾性体層20が接着層を兼ねてもよい。この場合には、弾性体層20以外に接着層を用いる必要はなく、弾性体層20が接着層を兼ねて図2に示すセンサモジュール1の積層構造となる。
【0056】
又、センサモジュール1の作製に接着層を用いない場合には、弾性体層20を基材としてひずみゲージを作製してもよい。つまり、弾性体層20を中心に挟みこむようにひずみゲージ10Aの機能層12及びひずみゲージ10Bの機能層12を積層させ、更に抵抗体13及び端子部14、更にカバー層16の順番で積層させてもよい。
【0057】
又、弾性体層20と触れ合うのは、カバー層16でも基材11でもどちらでもよい。つまり、図2のひずみゲージ10A又は10Bの積層方向は弾性体層20に対して反対であってもよい。
【0058】
又、弾性体層20とカバー層16が触れる場合は、薄型化の点からカバー層16が無くてもよい。つまり、図2において、ひずみゲージ10Aの抵抗体13及び端子部14は、カバー層16を介さずに弾性体層20と直接接着されてもよい。又、図2において、ひずみゲージ10Bにカバー層16を設けなくてもよい。
【0059】
図3は、起歪体を有するセンサモジュールを例示する断面図である。図3を参照すると、センサモジュール2は、起歪体100上に、ひずみゲージ10A、弾性体層20、及びひずみゲージ10Bが順次積層されたものである。
【0060】
センサモジュール2において、ひずみゲージ10Aの弾性体層20が積層される側とは反対側が起歪体100に固着されている。詳細には、ひずみゲージ10Aの基材11の下面は、例えば、接着層を介して、起歪体100の上面に固着されている。起歪体100は、例えば、Fe、SUS(ステンレス鋼)、Al等の金属やPEEK等の樹脂から形成され、印加される力に応じて変形する(ひずみを生じる)物体である。
【0061】
接着層は、ひずみゲージ10Aの基材11と起歪体100とを固着する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂等を用いることができる。又、ボンディングシート等の材料を用いても良い。接着層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~50μm程度とすることができる。
【0062】
センサモジュール2において、例えば、起歪体100がロボットボディである場合、ロボットが物を持ち上げたとき等にロボットボディ自体に生じたひずみは、ひずみゲージ10Aによって検出される。しかし、ロボットボディ自体に生じたひずみは、弾性体層20によって遮断されるため、ひずみゲージ10Bまでは伝達されない。よって、ロボットボディ自体に生じたひずみは、ひずみゲージ10Bでは検出されない。
【0063】
一方、外部からの物の接触等によって生じたひずみは、ひずみゲージ10Bによって検出される。しかし、外部から生じたひずみは、弾性体層20によって遮断されるため、ひずみゲージ10Aまでは伝達されない。よって、外部から生じたひずみは、ひずみゲージ10Aでは検出されない。
【0064】
このように、センサモジュール2では、従来は区別できなかった、起歪体であるロボットボディ自体に生じたひずみと、外部から与えられたひずみとを区別して検出可能である。ひずみゲージ10A及び10Bを別仕様のひずみゲージとした場合も、同様の効果を奏する。
【0065】
なお、起歪体100がロボットボディである場合は一例を示したものであり、これには限定されない。例えば、起歪体100がテニスラケットのグリップであってもよい。例えば、テニスラケットのグリップの使用者が握る部分にひずみゲージ10A、弾性体層20、及びひずみゲージ10Bを順次積層し、ひずみゲージ10Bの外側にグリップテープを巻いて使用する。
【0066】
この場合、テニスラケットでボールを打ったときにグリップ自体に生じるひずみは、ひずみゲージ10Aによって検出されるが、ひずみゲージ10Bでは検出されない。一方、テニスラケットの使用者がグリップを握る力は、ひずみゲージ10Bによって検出されるが、ひずみゲージ10Aでは検出されない。
【0067】
このように、センサモジュール2では、起歪体100の種類に依らず、従来は区別できなかったひずみを区別可能である。
【0068】
なお、ひずみゲージ10A及び10Bにおいて抵抗体13がCr混相膜から形成されている場合は、高感度化(従来比500%以上)かつ、小型化(従来比1/10以下)を実現できる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、ひずみゲージ10A及び10Bでは0.3mV/2V以上の出力が得られる。又、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、ひずみゲージ10A及び10Bの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は各々0.3mm×0.3mm程度に小型化できる。
【0069】
このように、抵抗体13の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ10A及び10Bは小型であるため、センサモジュール2全体としても小型にできる。そのため、センサモジュール2を所望の個所に容易に貼り付け可能である。又、抵抗体13の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ10A及び10Bは高感度であり、小さい変位を検出できるため、従来は検出が困難であった微小なひずみを検出可能である。すなわち、抵抗体13の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ10A及び10Bを有することにより、ひずみを精度よく検出可能なセンサモジュール2を実現できる。
【0070】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、各々のひずみゲージが複数の抵抗体を有するセンサモジュールの例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0071】
図4は、第1実施形態の変形例に係るセンサモジュールを例示する平面図である。第1実施形態の変形例に係るセンサモジュールの断面構造は図2と同一であるため、断面図の図示は省略する。なお、図4ではカバー層16の図示を簡略化し、一部のみを破線で示している。
【0072】
図4を参照すると、センサモジュール3では、ひずみゲージ10A及び10Bの各々が、抵抗体13、配線パターン18、及び端子部14を複数組有している点が、センサモジュール1の場合(図1及び図2参照)と相違する。
【0073】
センサモジュール3のひずみゲージ10A及び10Bでは、4つの抵抗体13が配線パターン18で接続されており、抵抗体13同士の接続点4箇所が、各々配線パターン18を介して端子部14に接続されている。ひずみゲージ10Aの複数の抵抗体13と、ひずみゲージ10Bの複数の抵抗体13とは略同一パターンであり、平面視で重複する位置に配置されている。
【0074】
このような接続により、4つの抵抗体13でホイートストンブリッジ回路を構成できる。なお、図4おける各抵抗体13のグリッド方向は一例であり、これには限定されない。例えば、複数の抵抗体13はグリッド方向が互いに直交する抵抗体を含んでもよい。
【0075】
図4の例では、ひずみゲージ10A及び10Bの各々が4つの抵抗体13を有しているが、これには限定されず、ひずみゲージ10A及び10Bの各々が2つや3つの抵抗体13を有してもよいし、5つ以上の抵抗体13を有してもよい。例えば、ひずみゲージ10A及び10Bの各々が2つの抵抗体13を有する場合、ひずみゲージ10A及び10Bの各々がハーフブリッジ回路を構成できる。
【0076】
このように、センサモジュールにおいて、各々のひずみゲージは複数の抵抗体を有してもよい。弾性体層を介したひずみゲージは感知するひずみの大きさが異なるため、それぞれに適した抵抗体を用いることで高寿命化の点で好ましい。
【0077】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1、2、3 センサモジュール、10A、10B ひずみゲージ、11 基材、11a 上面、12 機能層、13 抵抗体、14 端子部、16 カバー層、18 配線パターン、20 弾性体層、100 起歪体
図1
図2
図3
図4