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特許7393894テザー巻き取りユニット及びこれを備えた運搬車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】テザー巻き取りユニット及びこれを備えた運搬車
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/38 20060101AFI20231130BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20231130BHJP
   F16H 37/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B65H75/38 W
B62B5/00 Z
B65H75/38 J
F16H37/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019146369
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021024724
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】508173901
【氏名又は名称】TBグローバルテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥子
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-170853(JP,A)
【文献】実開昭58-160059(JP,U)
【文献】米国特許第05042159(US,A)
【文献】特開平09-058486(JP,A)
【文献】特開平04-078463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/38
B62B 5/00
F16H 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力によって引き出されるテザーが所定の引き出し長さを維持するように前記テザーに追従して走行する運搬車の内部に、前記テザーを収容するための巻き取りユニットであって、
複数の構成要素を収容するハウジングと、
前記テザーが巻き付けられるテザードラムと、
前記テザーが巻き取られる巻き取り回転方向に前記テザードラムを付勢するための回転付勢手段と、
該回転付勢手段から受ける回転トルクにより前記テザードラムを回転させるように、該テザードラムと同軸に接続された回転トルク伝達機構と、を含み、
前記ハウジングの内部は、前記テザードラムが配置される第1空間と、前記回転付勢手段及び前記回転トルク伝達機構が配置される第2空間とに、仕切り部材によって分割されており、
前記第2空間において前記テザードラムの回転に伴って回転する回転体に取り付けられた磁石を利用して、前記テザードラムの回転数を検出することで、前記テザーの引き出し長さを検出する引き出し長さ検出手段を含み、
前記磁石は、前記回転体に設けられた保持構造によって保持されている板金に対して、前記回転体の回転軸を通る位置において、磁力により吸着していることを特徴とするテザー巻き取りユニット。
【請求項2】
前記保持構造は、前記板金が載置される台座と、前記板金を該板金の外周側から前記台座の上面との間に挟み込む複数の爪部と、前記回転体の回転軸を囲う位置において前記台座の上面に立設され、前記板金に設けられた複数の貫通孔の各々に挿通される複数の棒状部と、を含むことを特徴とする請求項記載のテザー巻き取りユニット。
【請求項3】
前記回転トルク伝達機構の外周に大径ギヤが設けられており、
前記回転体は、前記大径ギヤの外径よりも小さい外径を有する、前記大径ギヤと噛み合う小径ギヤが外周に設けられたギヤ構造体であることを特徴とする請求項又は記載のテザー巻き取りユニット。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項記載のテザー巻き取りユニットと、
前記テザーを前記所定の引き出し長さに維持しながら前記テザーに追従して走行するように、進行方向及び進行速度を制御する走行制御部と、を含むことを特徴とする運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テザー巻き取りユニット及びこれを備えた運搬車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場等での運搬作業の効率化、重量物の運搬や女性並びに高齢者による荷物の運搬の補助等を目的として、自走式の運搬車が発案されている。例えば、特許文献1には、巻き取り収容されているテザーが利用者により引き出され、このテザーの動きを動作制御の入力として利用する移送ユニットが開示されている。この移送ユニットは、テザーを巻き取るための巻き取り装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-531401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような移送ユニットは、外部に引き出されるテザーに汚れが付着し、その汚れが更に巻き取り装置に移ることで、巻き取り装置の巻き取り性能が悪化することが懸念される。又、これとは反対に、巻き取り装置に使用されているグリス等がテザーに付着し、テザーを汚す要因となることも懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、テザーとその巻き取り装置との相互間での汚れ等の移動を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)外力によって引き出されるテザーが所定の引き出し長さを維持するように前記テザーに追従して走行する運搬車の内部に、前記テザーを収容するための巻き取りユニットであって、複数の構成要素を収容するハウジングと、前記テザーが巻き付けられるテザードラムと、前記テザーが巻き取られる巻き取り回転方向に前記テザードラムを付勢するための回転付勢手段と、該回転付勢手段から受ける回転トルクにより前記テザードラムを回転させるように、該テザードラムと同軸に接続された回転トルク伝達機構と、を含み、前記ハウジングの内部は、前記テザードラムが配置される第1空間と、前記回転付勢手段及び前記回転トルク伝達機構が配置される第2空間とに、仕切り部材によって分割されているテザー巻き取りユニット。
【0007】
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、外力によって引き出されるテザーが所定の引き出し長さを維持するようにテザーに追従して走行する運搬車の内部に、テザーを収容するためのものであって、ハウジング、テザードラム、回転付勢手段及び回転トルク伝達機構を含んでいる。テザードラムは、実際にテザーが巻き付けられる部位であって、回転付勢手段は、そのテザードラムに対して、テザーが巻き取られる巻き取り回転方向への付勢力を付与するものである。回転トルク伝達機構は、回転付勢手段から受ける回転トルクによってテザードラムを回転させるように、テザードラムと同軸に接続されたものである。すなわち、運搬車の利用者によってテザーが引き出されることで、テザードラムからテザーが繰り出され、回転付勢手段の付勢力が回転トルク伝達機構からテザードラムに伝達されることで、テザードラムにテザーが巻き取られるものである。
【0008】
ハウジングは、上述したテザードラムと回転付勢手段と回転トルク伝達機構とを含む、テザー巻き取りユニットの複数の構成要素を収容するものであって、ハウジングの内部が、仕切り部材によって第1空間と第2空間とに分割されている。そして、ハウジングの第1空間にテザードラムが配置されると共に、ハウジングの第2空間に回転付勢手段及び回転トルク伝達機構が配置されるものである。これにより、外部に引き出されるテザーに汚れが付着しても、巻き取りの付勢力を発生する回転付勢手段やその付勢力をテザードラムに伝達する回転トルク伝達機構に、テザーの汚れが移ることはなく、更に、回転付勢手段や回転トルク伝達機構に使用されたグリス等が、テザーに付着することもない。従って、テザーと回転付勢手段及び回転トルク伝達機構との相互間で、汚れ等が移動することが防止されるものとなる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記第2空間において前記テザードラムの回転に伴って回転する回転体に取り付けられた磁石を利用して、前記テザードラムの回転数を検出することで、前記テザーの引き出し長さを検出する引き出し長さ検出手段を含み、前記磁石は、前記回転体に設けられた保持構造によって保持されている板金に対して、前記回転体の回転軸を通る位置において、磁力により吸着しているテザー巻き取りユニット(請求項)。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、テザーの引き出し長さを検出する引き出し長さ検出手段を含み、この引き出し長さ検出手段は、テザードラムの回転に伴って、ハウジング内部の第2空間で回転する回転体に取り付けられた磁石を利用して、テザードラムの回転数を検出する。そのような回転体として、例えば、テザードラムと同軸に接続された回転トルク伝達機構を利用してもよく、テザードラムの回転に伴って回転するその他の回転体を用いてもよい。
【0010】
そして、引き出し長さ検出手段は、テザードラムの回転に伴って回転体と共に回転する磁石の回転数を、磁気センサ等を利用して検出することで、テザードラムの回転数を間接的に検出し、更に、テザードラムの回転数や巻径等を利用して、テザーの引き出し長さを検出する。一方、回転体には、板金を保持するための保持構造が設けられており、この保持構造により保持された板金に対して、回転体の回転軸を通る位置において、磁石が磁力により吸着している。これにより、回転体が樹脂等で形成されていても、保持構造で保持された板金を介して磁石が密着固定されるため、回転体に接着剤等で磁石を直接固定する場合と比較して、低コストかつ高品質で磁石が固定されるものである。更に、磁石は、仕切り部材により第1空間と隔てられた第2空間に配置されるため、例えばテザーを介して外部から第1空間に取り込まれた鉄粉等が第2空間に侵入することはなく、鉄粉等の影響による磁石の検出精度の低下が防止されるものである。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記保持構造は、前記板金が載置される台座と、前記板金を該板金の外周側から前記台座の上面との間に挟み込む複数の爪部と、前記回転体の回転軸を囲う位置において前記台座の上面に立設され、前記板金に設けられた複数の貫通孔の各々に挿通される複数の棒状部と、を含むテザー巻き取りユニット(請求項)。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、回転体において板金を保持するための保持構造が、台座、複数の爪部及び複数の棒状部を有しており、台座は、板金が載置される部位であって、回転軸と直交する回転体の面上等に設けられる。複数の爪部は、例えば台座の周囲に互いに間隔を空けて設けられ、台座に載置された状態の板金を、板金の外周側から台座の上面との間に挟み込んで保持すると共に、板金の外周側の位置決めの役割も担う。
【0012】
複数の棒状部は、回転体の回転軸を囲うようにして互いに間隔を空けて台座の上面に立設され、又、板金には、複数の棒状部の配置に対応する位置に、複数の貫通孔が設けられている。このため、板金は、複数の貫通孔に複数の棒状部が挿通された状態で台座の上面に載置され、これによって台座上でのズレが防止される。更に、回転体の回転軸を通る位置に配置される磁石は、複数の棒状部により囲まれる態様で板金に吸着することとなるため、複数の棒状部で位置決めされる。このような構成により、磁石が小さくて取り扱いが困難な場合であっても、板金及び磁石の双方が確実に位置決めされた状態で保持されることになるため、磁石を利用する引き出し長さ検出手段の検出精度が向上するものである。なお、板金には複数の貫通孔を設ける加工が必要となるが、板金を介さずに磁石を保持するために磁石の形状加工を行う場合と比較して、遥かに加工が容易であり、コストも低減されるものである。
【0013】
(4)上記(2)(3)項において、前記回転トルク伝達機構の外周に大径ギヤが設けられており、前記回転体は、前記大径ギヤの外径よりも小さい外径を有する、前記大径ギヤと噛み合う小径ギヤが外周に設けられたギヤ構造体であるテザー巻き取りユニット(請求項)。
本項に記載のテザー巻き取りユニットは、テザードラムの回転に伴って回転する回転体が、回転トルク伝達機構とは別体のギヤ構造体であり、テザードラムと共に回転する回転トルク伝達機構が回転すると、ギヤ構造体も回転するようになっている。詳しくは、回転トルク伝達機構の外周に大径ギヤが設けられると共に、ギヤ構造体の外周に、回転トルク伝達機構の大径ギヤと噛み合う、大径ギヤの外径よりも小さい外径の小径ギヤが設けられている。このような構成によって、テザードラムが回転したときの回転数を比較すると、テザードラムと同軸に接続されることでテザードラムと同じ回転数になる回転トルク伝達機構よりも、大径ギヤと小径ギヤとの外径比に応じた分だけ、ギヤ構造体の回転数の方が多くなる。これにより、回転トルク伝達機構の回転数からテザーの引き出し長さを検出する場合と比較して、テザードラムの巻径を小さくすることなく、検出分解能が向上されることになるため、引き出し長さ検出手段の検出精度が向上するものである。
【0014】
(5)上記(1)から(4)項のいずれか1項に記載のテザー巻き取りユニットと、前記テザーを前記所定の引き出し長さに維持しながら前記テザーに追従して走行するように、進行方向及び進行速度を制御する走行制御部と、を含む運搬車(請求項)。
本項に記載に運搬車は、上記(1)から(4)項のいずれか1項に記載のテザー巻き取りユニットを備えるものであり、更に、走行制御部を含んでいる。走行制御部は、運搬車の内部から引き出されたテザーを所定の引き出し長さに維持しながら、テザーに追従して走行するように、運搬車の進行方向及び進行速度を制御するものである。このような構成により、上記(1)から(4)項のテザー巻き取りユニットと同等の作用を奏しながらも、テザーを介した容易な操作方法で、人力に依らない荷物の運搬を実現し、荷物の運搬作業の負担を軽減するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のような構成であるため、テザーとその巻き取り装置との相互間での汚れ等の移動を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニットの外部構成を示す上面図、正面図及び底面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニットの内部構成を示す上面図、正面図及び底面図である。
図3図2のテザー巻き取りユニットの回転トルク伝達機構及びテザードラムを示す斜視図である。
図4図3の回転トルク伝達機構に組み込まれたダンパ機構の単体斜視図である。
図5図4のダンパ機構を構成するロータリダンパの斜視図である。
図6図2のテザー巻き取りユニットのテザードラム周辺を示す拡大底面図である。
図7図2のテザー巻き取りユニットの回転付勢手段と回転トルク伝達機構とギヤ構造体とを模式的に示す平面図である。
図8図7のギヤ構造体の単体斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る運搬車の利用例を示す斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係る運搬車の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1及び図2は、テザー71に追従して走行する運搬車70(図9及び図10参照)の内部にテザー71を収容するための、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10の外部構造及び内部構造の夫々を示している。まず、図1を確認すると、テザー巻き取りユニット10は、複数の構成要素を収容するハウジング11を含み、このハウジング11は、図1における左右方向と直交する方向の断面が略L字状を成す仕切り部材12に対し、図1(b)における上下方向から第1カバー13及び第2カバー14が装着された構成を有している。
【0018】
換言すれば、ハウジング11の内部は、第1カバー13で覆われる第1空間16と、第2カバー14で覆われる第2空間17とに、仕切り部材12によって分割されている。又、図1(b)で確認できるように、第1カバー13には、第1空間16に設置されるテザー71の引き込み部47に対応する位置に、図1(b)の左右方向に延在する第1スリット15が設けられている。更に、第1カバー13には、図1(c)に示すように、第1空間16からハウジング11の外側へとケーブル21を通すための、第2スリット22が設けられている。
【0019】
図2を参照すると、仕切り部材12から第1カバー13及び第2カバー14が取り外された状態が示されており、ハウジング11の内部に配置される構成要素の多くが、仕切り部材12に取り付けられている。具体的に、第1カバー13により覆われる第1空間16には、テザー71をテザー巻き取りユニット10の内部に引き込むための引き込み部47と、テザー71が巻き付けられるテザードラム24と、テザー71にテンションを付加するテンション付加部材48とが、仕切り部材12に取り付けられて設置されている。又、テザードラム24を覆うドラムカバー19と、引き込み部47の近傍に設置された補強材20とが、第1空間16において仕切り部材12に取り付けられている。なお、図2では、図示の便宜上、仕切り部材12の一部とドラムカバー19とを、二点鎖線で透過させたイメージで示している。
【0020】
一方、第2カバー14により覆われる第2空間17には、回転付勢手段26、回転トルク伝達機構28、基板18及びギヤ構造体61が、仕切り部材12に取り付けられて設置されている。回転付勢手段26は、テザードラム24に対して、テザー71が巻き取られる巻き取り回転方向(図2(c)における左回り方向)の回転付勢力を付与するためのものであり、回転トルク伝達機構28は、回転付勢手段26により発生される巻き取り回転方向の回転トルクを、テザードラム24へ伝達するものである。回転トルク伝達機構28の内部には、ダンパ機構34が設けられている。基板18は、テザー巻き取りユニット10の制御を行う電子回路が搭載されたものであって、本実施形態では、テザー71の異常を検出する異常検出部46と、テザー71の引き出し長さを検出する引き出し長さ検出手段52とが、基板18に組み込まれている。
【0021】
ギヤ構造体61は、本実施形態において、引き出し長さ検出手段52により、テザー71の引き出し長さを検出する際に用いられる回転体53として用いられるものである。なお、基板18にはケーブル21が接続されており、このケーブル21は、運搬車70に搭載される他の機器と信号のやり取りを行うためのものである。ケーブル21は、基板18が設置された第2空間17から、仕切り部材12に設けられた挿通穴12aを通って第1空間16へと至り、第1空間16を経由して、図1(c)に示した第2スリット22を通って外部まで延びている。又、ケーブル21と同じルートを通って、テザー巻き取りユニット10で使用する電力を取り込むための電力ケーブルが配線されてもよい。
【0022】
次に、図3には、図2に示したテザー巻き取りユニット10の構成要素のうち、第2空間17に設置される略筒状の回転トルク伝達機構28と、第1空間16に設置されるテザードラム24とを図示している。図2(b)及び図3で確認できるように、回転トルク伝達機構28とテザードラム24とは、共に回転するように、仕切り部材12を貫通する同じ軸に接続されている。テザードラム24は、図3での図示は省略するテザー71が巻き付けられる巻き付け部25を有している。回転トルク伝達機構28には、図2に示した回転付勢手段26から延びるワイヤ27が巻き付け収容可能に接続されており、ワイヤ27が回転付勢手段26により引っ張られることで、テザー71が巻き取られる巻き取り回転方向D1の付勢力が、回転トルク伝達機構28を経由してテザードラム24へ付与されるようになっている。なお、回転トルク伝達機構28及びテザードラム24の、テザードラム24からテザー71が繰り出される繰り出し回転方向D2への回転は、主に、運搬車70の利用者Uによってテザー71が引き出される際に行われる。又、回転トルク伝達機構28の外周の一部には、複数のギヤ歯を有する大径ギヤ30が設けられており、回転トルク伝達機構28の内部には、上述したように、回転トルク伝達機構28の巻き取り回転方向D1への回転速度を減速させるためのダンパ機構34が設けられている。
【0023】
より詳しくは、ダンパ機構34は、図4に示すように、本実施形態では2つのロータリダンパ35と、ワンウェイクラッチ39と、回転伝達部40とを備えており、これらは何れも同軸上に配置されている。ロータリダンパ35の各々は、双方向ロータリダンパであり、図5(a)に示すように、ギヤ型の第1部位36と、2つの突出部37aを有する第2部位37とを備え、第1部位36と第2部位37とは、互いに対しての何れの回転方向への回転速度も減速されるようになっている。そして、このような2つのロータリダンパ35は、図5(b)に示すように、本実施形態では、第2部位37の突出部37a同士が接続部材38により接続されている。このため、2つのロータリダンパ35の第2部位37が共に回転し、図5(b)における下方のロータリダンパ35の第1部位36及び第2部位37の間と、図5(b)における上方のロータリダンパ35の第2部位37及び第1部位36の間との2箇所が、回転負荷がかかる回転可動部として機能する。
【0024】
図4に戻り、図中上方のロータリダンパ35の第1部位36は、図1に示した第2カバー14等に対して回転不可に設置され、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36は、共に回転するように回転伝達部40と接続されている。これにより、図中上方のロータリダンパ35の第1部位36に対して、2つのロータリダンパ35の第2部位37が共に回転し、2つのロータリダンパ35の第2部位37に対して、回転伝達部40が回転するようになる。ワンウェイクラッチ39は、軸部材29から受ける巻き取り回転方向D1の回転トルクのみを回転伝達部40へ伝達するように、回転トルク伝達機構28の軸部材29と回転伝達部40との間に設置されている。ワンウェイクラッチ39には、巻き取り回転方向D1へ向いた第1主面41aと、繰り出し回転方向D2へ向いた第2主面41bとを備える第1突出板41が形成されている。この第1突出板41は、回転伝達部40の一部を構成するものであって、本実施形態では、ワンウェイクラッチ39の外周方向と、図中上方との双方へ突出している。
【0025】
回転伝達部40は、上述した第1突出板41と、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36に接続された筒状部42と、この筒状部42に形成され、第1受面43a及び第2受面43bを有する第2突出板43とを含んでいる。本実施形態において、筒状部42は、ワンウェイクラッチ39と略同じ外径の大径部42aと、大径部42aよりも外径が小さい小径部42bとを有する2段構造を成している。そして、図中下方に小径部42bが位置することで、大径部42aとワンウェイクラッチ39との間であって小径部42bの外周側に、リング状の空転空間44が形成されている。又、本実施形態において、第2突出板43は、筒状部42の大径部42a及び小径部42bの双方から外周方向へ突出しており、第1受面43aが繰り出し回転方向D2へ向き、第2受面43bが巻き取り回転方向D1へ向いている。更に、第2突出板43の一部と第1突出板41の一部との双方が、空転空間44に位置している。
【0026】
上記のような構成のため、回転トルク伝達機構28の軸部材29が巻き取り回転方向D1へ回転すると、この回転トルクを受けたワンウェイクラッチ39が巻き取り回転方向D1へ回転し、やがて図4に示すように、ワンウェイクラッチ39に設けられた第1突出板41の第1主面41aの一部が、筒状部42に設けられた第2突出板43の第1受面43aの一部と当接する。更に、そのままワンウェイクラッチ39が巻き取り回転方向D1へ回転すると、第1突出板41及び第2突出板43を介して筒状部42が巻き取り回転方向D1へ回転する。このとき、筒状部42は、図中下方のロータリダンパ35の第1部位36に接続されているため、直列に接続された2つのロータリダンパ35の制動力を受けながら、巻き取り回転方向D1へ回転する。
【0027】
一方、回転トルク伝達機構28の軸部材29が、巻き取り回転方向D1と反対の、テザー71が繰り出される繰り出し回転方向D2へ回転すると、ワンウェイクラッチ39は、第1突出板41の第2主面41bが、第2突出板43の第2受面43bに当接するまで、軸部材29と共に繰り出し回転方向D2へ回転する。そして、ワンウェイクラッチ39は、第1突出板41の第2主面41bの一部が第2突出板43の第2受面43bの一部に当接すると、第1突出板41と第2突出板43と筒状部42とを介して、2つのロータリダンパ35の回転負荷を受け、軸部材29との共回りを停止する。更に、そのまま軸部材29が繰り出し回転方向D2へ回転すると、ワンウェイクラッチ39に対して軸部材29が空回りする状態になる。
【0028】
すなわち、ダンパ機構34では、軸部材29の回転方向が繰り出し回転方向D2から巻き取り回転方向D1へ切り替わる際に、ワンウェイクラッチ39に設けられた第1突出板41の第1主面41aが、筒状部42に設けられた第2突出板43の第1受面43aに当接するまでの間は、軸部材29の回転トルクがロータリダンパ35へ伝わらない、所謂「あそび」の期間となる。この回転伝達部40の「あそび」は、最大で、第1突出板41の第2主面41bと第2突出板43の第2受面43bとが当接した状態から、図4に示すような、第1突出板41の第1主面41aと第2突出板43の第1受面43aとが当接するまでの期間となる。より具体的に、「あそび」の最大の大きさは、リング状の空転空間44における第1突出板41の最大旋回角度で定められ、それは、360°から第1突出板41及び第2突出板43の厚み分の角度を除いた旋回角度(同大きさのワンウェイクラッチ39の回転角度)である。
【0029】
続いて、図6には、図2(c)に示した第1空間16に設置されるテザードラム24、引き込み部47及びテンション付加部材48の周辺を示している。図示のように、テザー71は、図2にも示した引き込み部47により引き込み位置が定められて第1空間16内に引き込まれ、仕切り部材12に立設された2本のスタッド49の間を通り、更にテンション付加部材48に接するようなルートを通った後、テザードラム24の巻き付け部25(図3も参照)に巻き付けられている。本実施形態において、テンション付加部材48は、仕切り部材12に立設されたスタッド48aと、スタッド48aの頭部近傍に取り付けられたカラー48bとで構成されており、カラー48bと仕切り部材12との間において、スタッド48aの軸部に接するように、テザー71が配線されている。
【0030】
又、本実施形態のテンション付加部材48は、図6に示されているようなテザードラム24の軸方向視で、テザー71が引き込み部47からテザードラム24へと至るまでの間に、引き込み部47を通ってテザードラム24の巻き付け部25の外周に接する仮想直線VLと等しいルートで配線されるように、テザー71に対してテンションをかけるような位置に設置されている。或いは、テンション付加部材48は、図6に二点鎖線で示されているような、仮想直線VLよりもテザードラム24の回転軸S24に近付くルートでテザー71が配線されるように、テザー71を付勢してテンションをかける位置に設置されていてもよい。更に、テンション付加部材48は、図6に示されている位置から白抜き矢印で示している方向に、例えばスタッド48aがスライド移動される長穴が設けられることで、位置調整が可能なものであってもよい。
【0031】
次に、図7は、図2に示したテザー巻き取りユニット10の構成要素のうち、第2空間17に設置される回転付勢手段26、回転トルク伝達機構28及びギヤ構造体61を図示している。上述したように、回転トルク伝達機構28には、回転付勢手段26から延びるワイヤ27が接続されており、回転付勢手段26によってワイヤ27が引っ張られることで、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)に対して巻き取り回転方向D1の付勢力が付与されている。そして、この付勢力よりも強い力でテザー71が引き出されると、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)が繰り出し回転方向D2へ回転する。
【0032】
回転トルク伝達機構28の外周に設けられた大径ギヤ30は、ギヤ構造体61の外周に設けられた小径ギヤ62と噛み合っており、ギヤ構造体61は、回転トルク伝達機構28に隣接して回転可能に設置されている。このため、ギヤ構造体61は、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)の回転に伴って回転する回転体53として機能する。回転トルク伝達機構28が巻き取り回転方向D1に回転すると、ギヤ構造体61は巻き取り回転方向D1´に回転し、回転トルク伝達機構28が繰り出し回転方向D2に回転すると、ギヤ構造体61は繰り出し回転方向D2´に回転する。又、ギヤ構造体61に設けられた小径ギヤ62の外径は、大径ギヤ30の外径よりも小さくなっており、このようなギヤ比によって、ギヤ構造体61の回転数は、回転トルク伝達機構28(及びテザードラム24)の回転数よりも多くなる。
【0033】
更に、ギヤ構造体61(回転体53)は、図8に示すように、板金59を保持するための保持構造54を備えており、この保持構造54は、台座55、複数の爪部56及び複数の棒状部57を含んでいる。台座55は、板金59が載置される部位であり、本実施形態では平面視略円形で、ギヤ構造体61の上面61aに設けられている。複数の爪部56は、本実施形態では2本設けられており、台座55上に載置された板金59を、板金59の外周側から台座55の上面55aとの間に挟み込むように、台座55の外周の対向する位置に設置されている。複数の棒状部57は、本実施形態では4本設けられており、ギヤ構造体61(回転体53)の回転軸S53を囲う位置において、互いに略等間隔で、台座55の上面55aに立設されている。
【0034】
一方、保持構造54により保持されている板金59は、本実施形態では円板状を成しており、又、保持構造54の4本の棒状部57の配置に対応する配置で、4つの貫通孔60が形成されている。このため、板金59は、4つの貫通孔60に4本の棒状部57が挿通されると共に、2本の爪部56と台座55の上面55aとの間に挟み込まれた状態で、台座55上に載置されている。そして、このように保持構造54により保持された板金59に対して、板金59の貫通孔60から突出した4本の棒状部57に囲まれる位置において、磁石58が磁力により吸着している。すなわち、磁石58は、回転体53の回転軸S53を通る位置に配置されている。
【0035】
ここで、図2に示した基板18に組み込まれている、異常検出部46及び引き出し長さ検出手段52について説明する。本実施形態において、基板18は、ギヤ構造体61(回転体53)の回転数及び回転速度を検出するようになっており、具体的には、図8に示したようにギヤ構造体61に取り付けられた磁石58を、基板18に搭載された磁気センサにより計測することで、ギヤ構造体61の回転数及び回転速度を検出する。そして、引き出し長さ検出手段52は、磁気センサにより計測されたギヤ構造体61の回転数、及び、ギヤ構造体61に設けられた小径ギヤ62と回転トルク伝達機構28に設けられた大径ギヤ30とのギヤ比に基づいて、回転トルク伝達機構28と同軸に接続されたテザードラム24の回転数を算出する。更に、引き出し長さ検出手段52は、算出したテザードラム24の回転数、テザードラム24の巻き付け部25の大きさ等を利用して、テザー71の引き出し長さを算出する。引き出し長さ検出手段52により検出されたテザー71の引き出し長さは、例えばケーブル21を介して運搬車70の走行制御部73(図10参照)へ送信される。
【0036】
異常検出部46は、図3及び図4に示したダンパ機構34の回転伝達部40の「あそび」の期間に、テザー71が巻き取られる巻き取り速度に基づいて、テザー71の異常を検出する。ここでのテザー71の異常とは、テザー巻き取りユニット10を搭載した運搬車70が、例えば図9に示すように利用者Uによって使用されているときに、何かしらの要因でテザー71を引っ張っている力がなくなり、テザー71が解放された状態になることを示している。図9の実施形態では、テザー71の先端に磁石を介して着脱可能にテザーハンドル72が取り付けられており、利用者Uは、テザーハンドル72を把持してテザー71を引いている。このため、テザーハンドル72と運搬車70との間を異物が横切る等して、テザーハンドル72とテザー71とが切り離されると、テザー71が解放されて上記の異常状態となる。
【0037】
本実施形態での異常検出部46は、テザー71が巻き取られる巻き取り速度を、テザードラム24の回転速度から取得するのではなく、テザードラム24の回転に伴って回転する回転体53としてのギヤ構造体61の回転速度から取得する。このため、異常検出部46は、基板18の磁気センサにより計測されたギヤ構造体61の回転速度を取得し、この回転速度からテザー71の巻き取り速度を算出する。そして、異常検出部46は、ギヤ構造体61が図7に示したような巻き取り回転方向D1´に回転したときの回転速度を監視し、例えば回転速度が所定速度を超えた場合に、テザー71に異常が発生したと判定する。すなわち、上述したようなテザー71の異常が発生すると、テザー71を引っ張っていた力がなくなるため、回転付勢手段26の付勢力により、テザードラム24及び回転トルク伝達機構28が巻き取り回転方向D1に回転し始める。
【0038】
このとき、図4に示すように、ダンパ機構34の回転伝達部40の「あそび」の間は、回転トルク伝達機構28の軸部材29、すなわち、回転トルク伝達機構28及びテザードラム24が、ロータリダンパ35の制動力を受けることなく回転する。このため、この際の回転速度は、運搬車70がテザー71に追従して走行しているとき等の通常時の「あそび」の間の回転角度よりも速くなる。このような回転速度の差は、テザードラム24の回転に伴って回転するギヤ構造体61の回転速度にも表れるため、その回転速度の差を判定可能な所定速度を比較対象として設定しておくことで、異常検出部46がテザー71の異常を検出するものである。なお、異常検出部46によるテザー71の異常判定結果は、例えばケーブル21を介して運搬車70の他の機器に送信してもよい。
【0039】
続いて、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10を備えた、本発明の実施の形態に係る運搬車70の構成の一例について説明する。運搬車70は、テザー巻き取りユニット10により内部に巻き取り収容されているテザー71が利用者Uにより引き出され、テザー71に追従する方式で自走するものであり、図9に示すように、荷物載置面74に荷物Bを載せた状態で、利用者Uによってテザー71が引っ張られて使用される。上述したように、テザー71の先端には、利用者Uにより把持されるテザーハンドル72が、磁石を介して着脱可能に取り付けられており、本実施形態のテザーハンドル72は、丸みを帯びた三角環状を成している。そして、テザー71が運搬車70の内部に巻き取り収容された状態では、図10(a)に示すように、必要に応じてテザーハンドル72を介してテザー71を引き出すことができるように、その先端が把持可能な位置にテザーハンドル72が収容されている。なお、図10(a)が運搬車70の進行方向前方側を示し、図10(b)が運搬車70の進行方向後方側を示している。
【0040】
又、運搬車70は、荷物Bが載置される荷物載置面74の外周を囲うように、着脱可能に取り付けられる囲い部材75を備えている。更に、進行方向前方側に、運搬車70を立設した状態で収容するための、図示しないスタンド構造の取り付け用の2つの穴78が設けられると共に、進行方向後方側に、運搬車70を立設させる際に利用者Uにより把持される把持部79が設けられている。又、運搬車70は、荷物載置面74と反対側に、走行のための2つの駆動用タイヤ76と2つのキャスタ77とを有している。2つの駆動用タイヤ76は、本実施形態では進行方向前方側に設けられ、図示しないモータを介して回転駆動されるものであり、駆動用タイヤ76毎にモータを有し、別々に駆動可能になっている。このため、運搬車70の進行は、2つの駆動用タイヤ76が同じ速度で回転することで実現され、運搬車70の方向転換は、2つの駆動用タイヤ76が異なる速度で回転することで実現される。2つのキャニスタは、本実施形態では進行方向後方側に設けられ、駆動用タイヤ76の動きに従って回転及び方向転換するようになっている。更に、運搬車70の内部には、運搬車70がテザー71に追従して走行するように、運搬車70の進行方向及び進行速度を制御する走行制御部73が備えられている。走行制御部73は、例えば、テザー71の引き出し方向や引き出し長さを常に把握し、テザー71の引き出し方向に向かって、予め設定されたテザー71の引き出し長さが維持された状態で進行するように、各モータの回転速度を調整して進行方向及び進行速度を制御する。
【0041】
加えて、運搬車70は、進行方向前方側に緊急停止ボタン80及び充電残量表示部81を、進行方向後方側に可動ランプ82及び連結マグネット格納部83を、一方の側面部に電源スイッチ/充電コネクタ格納部84を備えている。緊急停止ボタン80は、緊急時に利用者Uにより押下されることで、運搬車70の全ての電源を切断するものであり、充電残量表示部81は、運搬車70に内蔵されている図示しないバッテリの充電残量を表示するためのものである。又、可動ランプ82は、運搬車70の電源が投入されていることを示すためのものであり、連結マグネット格納部83は、運搬車70の連結用の磁石を格納するものである。すなわち、運搬車70は、テザーハンドル72が取り外された状態のテザー71の先端に、異なる運搬車70の連結マグネット格納部83に格納されている磁石が接続されることで、異なる運搬車70と連結することが可能になっており、3台以上の運搬車70の連結にも対応する。又、電源スイッチ/充電コネクタ格納部84には、運搬車70の電源スイッチと、上述したバッテリのための充電コネクタとが格納されている。
【0042】
ここで、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10及びこれを備える運搬車70は、図1図10に示した構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。例えば、図1及び図2等に図示した仕切り部材12は、ハウジング11の内部を第1空間16と第2空間17とに仕切るものであれば、断面がL字状を成していなくてもよく、単なる板状であってもよい。又、図4及び図5に示したダンパ機構34の2つのロータリダンパ35は、一方の部位同士が接続されていれば接続位置は任意であり、例えば、一方のロータリダンパ35の第2部位37と、他方のロータリダンパ35の第1部位36とが接続されていてもよい。更に、適切な制動力を付与するものであれば、ダンパ機構34のロータリダンパ35が1つであってもよく、回転伝達部40の構成や各構成要素の形状が、図4の例と異なっていてもよい。又、図6に示したテンション付加部材48は、テザー71を付勢してテンションをかけるものであれば、スタッド48a及びカラー48b以外の構成でもよい。加えて、テザードラム24の回転に伴って回転する回転体53が、図7及び図8に示したギヤ構造体61以外の構成要素、例えば回転トルク伝達機構28であってもよく、この場合は、回転トルク伝達機構28に磁石58が取り付けられる。更に、回転体53に設けられる保持構造54は、図8に示した例と構成や各構成要素の形状が異なっていてもよく、それに合わせて板金59の形状が異なっていてもよい。
【0043】
他方、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10が適用される運搬車70は、テザー71に追従する方式と併せて、リモコンにより走行が制御されるものであってもよい。更に、図10に示した各構成要素の一部が置換、改造、削除されたものであってもよく、別の構成要素が追加されたものであってもよい。なお、運搬車70は、工場での部品や製品等の運搬を目的とした利用に止まらず、一般家庭での利用や、商業施設におけるショピングカートとしての利用等にも対応するものである。このため、運搬車70は、図10に示した台車サイズのものだけでなく、利用形態に応じて、様々な形状や大きさを取り得るものである。
【0044】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、例えば図9に示すように、外力によって引き出されるテザー71が所定の引き出し長さを維持するように、テザー71に追従して走行する運搬車70の内部に、テザー71を収容するためのものであって、図1及び図2に示すように、ハウジング11、テザードラム24、回転付勢手段26及び回転トルク伝達機構28を含んでいる。テザードラム24は、図6に示すように、実際にテザー71が巻き付けられる部位であって、回転付勢手段26は、図7に示すように、本実施形態では回転トルク伝達機構28を介してテザードラム24に対し、テザー71が巻き取られる巻き取り回転方向D1への付勢力を付与するものである。回転トルク伝達機構28は、回転付勢手段26から受ける回転トルクによってテザードラム24を回転させるように、図2(b)及び図3に示すように、テザードラム24と同軸に接続されたものである。すなわち、運搬車70の利用者Uによってテザー71が引き出されることで、テザードラム24からテザー71が繰り出され、回転付勢手段26の付勢力が回転トルク伝達機構28からテザードラム24に伝達されることで、テザードラム24にテザー71が巻き取られるものである。
【0045】
図1に示すハウジング11は、上述したテザードラム24と回転付勢手段26と回転トルク伝達機構28とを含む、テザー巻き取りユニット10の複数の構成要素を収容するものであって、ハウジング11の内部が、仕切り部材12によって第1空間16と第2空間17とに分割されている。そして、図2に示すように、ハウジング11の第1空間16にテザードラム24が配置されると共に、ハウジング11の第2空間17に回転付勢手段26及び回転トルク伝達機構28が配置されるものである。これにより、外部に引き出されるテザー71に汚れが付着しても、巻き取りの付勢力を発生する回転付勢手段26やその付勢力をテザードラム24に伝達する回転トルク伝達機構28に、テザー71の汚れが移ることはなく、更に、回転付勢手段26や回転トルク伝達機構28に使用されたグリス等が、テザー71に付着することもない。従って、テザー71と回転付勢手段26及び回転トルク伝達機構28との相互間で、汚れ等が移動することを防止することが可能となる。
【0046】
又、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、図2の実施形態では基板18に組み込まれた、テザー71の引き出し長さを検出する引き出し長さ検出手段52を含んでいる。この引き出し長さ検出手段52は、テザードラム24の回転に伴って、ハウジング11内部の第2空間17で回転する回転体53に取り付けられた磁石58(図8参照)を利用して、テザードラム24の回転数を検出する。そして、引き出し長さ検出手段52は、テザードラム24の回転に伴って回転体53と共に回転する磁石58の回転数を、磁気センサ等を利用して検出することで、テザードラム24の回転数を間接的に検出し、更に、テザードラム24の回転数や巻径等を利用して、テザー71の引き出し長さを検出する。
【0047】
一方、回転体53には、図8に示すように、板金59を保持するための保持構造54が設けられており、この保持構造54により保持された板金59に対して、回転体53の回転軸S53を通る位置において、磁石58が磁力により吸着している。これにより、回転体53が樹脂等で形成されていても、保持構造54で保持された板金59を介して磁石58が密着固定されるため、回転体53に接着剤等で磁石58を直接固定する場合と比較して、低コストかつ高品質で磁石58を固定することができる。更に、磁石58は、仕切り部材12により第1空間16と隔てられた第2空間17に配置されるため、例えばテザー71を介して外部から第1空間16に取り込まれた鉄粉等が第2空間17に侵入することはなく、鉄粉等の影響による磁石58の検出精度の低下を防止することが可能となる。
【0048】
更に、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、回転体53において板金59を保持するための保持構造54が、台座55、複数の爪部56及び複数の棒状部57を有しており、台座55は、板金59が載置される部位であって、回転軸S53と直交する回転体53の面上等に設けられる。複数の爪部56は、例えば台座55の周囲に互いに間隔を空けて設けられ、台座55に載置された状態の板金59を、板金59の外周側から台座55の上面55aとの間に挟み込んで保持すると共に、板金59の外周側の位置決めの役割も担う。複数の棒状部57は、回転体53の回転軸S53を囲うようにして互いに間隔を空けて台座55の上面55aに立設され、又、板金59には、複数の棒状部57の配置に対応する位置に、複数の貫通孔60が設けられている。このため、板金59は、複数の貫通孔60に複数の棒状部57が挿通された状態で台座55の上面55aに載置され、これによって台座55上でのズレが防止される。
【0049】
更に、回転体53の回転軸S53を通る位置に配置される磁石58は、複数の棒状部57により囲まれる態様で板金59に吸着することとなるため、複数の棒状部57で位置決めされる。このような構成により、磁石58が小さくて取り扱いが困難な場合であっても、板金59及び磁石58の双方を確実に位置決めした状態で保持することができるため、磁石58を利用する引き出し長さ検出手段52の検出精度を向上させること可能となる。なお、板金59には複数の貫通孔60を設ける加工が必要となるが、板金59を介さずに磁石58を保持するために磁石58の形状加工を行う場合と比較して、遥かに加工が容易であり、コストも低減することができる。
【0050】
加えて、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10は、図7に示すように、テザードラム24の回転に伴って回転する回転体53が、回転トルク伝達機構28とは別体のギヤ構造体61であり、テザードラム24と共に回転する回転トルク伝達機構28が回転すると、ギヤ構造体61も回転するようになっている。詳しくは、回転トルク伝達機構28の外周に大径ギヤ30が設けられると共に、ギヤ構造体61の外周に、回転トルク伝達機構28の大径ギヤ30と噛み合う、大径ギヤ30の外径よりも小さい外径の小径ギヤ62が設けられている。このような構成によって、テザードラム24が回転したときの回転数を比較すると、テザードラム24と同軸に接続されることでテザードラム24と同じ回転数になる回転トルク伝達機構28よりも、大径ギヤ30と小径ギヤ62との外径比に応じた分だけ、ギヤ構造体61の回転数の方が多くなる。これにより、回転トルク伝達機構28の回転数からテザー71の引き出し長さを検出する場合と比較して、テザードラム24の巻径を小さくすることなく、検出分解能を向上させることができるため、引き出し長さ検出手段52の検出精度を向上させることができる。
【0051】
一方、本発明の実施の形態に係る運搬車70は、図9及び10に示すように、上述したようなテザー巻き取りユニット10を備えるものであり、更に、走行制御部73を含んでいる。走行制御部73は、運搬車70の内部から引き出されたテザー71を所定の引き出し長さに維持しながら、テザー71に追従して走行するように、運搬車70の進行方向及び進行速度を制御するものである。このような構成により、本発明の実施の形態に係るテザー巻き取りユニット10と同等の作用効果を奏しながらも、テザー71を介した容易な操作方法で、人力に依らない荷物Bの運搬を実現することができ、荷物Bの運搬作業の負担を軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10:テザー巻き取りユニット、11:ハウジング、12:仕切り部材、16:第1空間、17:第2空間、24:テザードラム、26:回転付勢手段、28:回転トルク伝達機構、30:大径ギヤ、52:引き出し長さ検出手段、53:回転体、54:保持構造、55:台座、55a:上面、56:爪部、57:棒状部、58:磁石、59:板金、60:貫通孔、61:ギヤ構造体、62:小径ギヤ、70:運搬車、71:テザー、73:走行制御部、D1:巻き取り回転方向、S53:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10