(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 21/04 20060101AFI20231130BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F16L21/04
F16L21/08 B
(21)【出願番号】P 2019190625
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】小田 圭太
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍之介
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-263813(JP,A)
【文献】特開昭54-043315(JP,A)
【文献】実開昭55-046840(JP,U)
【文献】特公昭58-015671(JP,B2)
【文献】特開2006-070994(JP,A)
【文献】特開2004-162854(JP,A)
【文献】特開2017-072222(JP,A)
【文献】特開2008-089095(JP,A)
【文献】特開昭54-034125(JP,A)
【文献】実公昭60-017590(JP,Y2)
【文献】実開昭57-083982(JP,U)
【文献】国際公開第2019/181918(WO,A1)
【文献】特開2011-106671(JP,A)
【文献】特開2021-067282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の受口に他方の管の挿口が挿入され、
受口の内周にロックリング収容溝が形成され、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
挿口の外周に係合部が形成され、
係合部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに係合することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な管継手であって、
係合部は挿口の先端から挿口の離脱方向に後退した箇所に形成されており、
挿口の先端と係合部との間における受口の内周と挿口の外周との間に、受口と挿口とを屈曲方向において拘束する屈曲抑制部材が設けられ
、
挿口の先端と受口の奥端部との間に、受口と挿口とを管軸心方向において拘束する伸縮抑制部材が設けられ、
伸縮抑制部材の外径が挿口の外径よりも大きく、
管軸心方向における伸縮抑制部材の一端面が、挿口の先端と受口の奥端部との間において、挿口の外周から管径方向の外側へ段差となってはみ出しており、
屈曲抑制部材は挿口の係合部と伸縮抑制部材の一端面との間に位置しており、
係合部がロックリングに係合した状態で、伸縮抑制部材は、屈曲抑制部材が伸縮抑制部材の一端面に当接することによって受口の内周と挿口の外周との間から管軸心方向にずれて挿口の先端と受口の奥端部との間に抜け出すことを阻止していることを特徴とする管継手。
【請求項2】
屈曲抑制部材はリング状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
屈曲抑制部材は周方向において複数の円弧状の屈曲抑制片に分割されていることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
伸縮抑制部材はリング状の部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項5】
伸縮抑制部材の中心を一方の管の中心に合わせるための心出し用ボルトが伸縮抑制部材に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の管継手。
【請求項6】
管径方向に圧縮されて受口の内周と挿口の外周との間をシールするシールリングがロックリングよりも受口開口端側に設けられ、
シールリングを受口奥側へ押圧する押輪が受口の開口端部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離脱防止機能を有する管継手であって、管路に作用する不平均力に対抗するために所定の曲げ剛性を確保する必要がある管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手としては、例えば
図15に示すように、一方の管101の受口102に他方の管103の挿口104が挿入され、受口102の内周にロックリング収容溝105が形成され、ロックリング収容溝105にロックリング106が収容され、挿口104の外周に挿口突部107が形成され、挿口突部107が挿口104の離脱方向Aにおいて受口奥側からロックリング106に係合することにより、挿口104が受口102から離脱することを防止する機能を有するものがある。
【0003】
一般に、管路の屈曲部や分岐部等においては不平均力(水圧によって管を動かそうとする力)が働き、このような不平均力が作用する管路に上記のような離脱防止機能を有する管継手100を使用すると、その伸縮機能によって管路が不平均力の作用する方向へ伸縮屈曲し、管継手100のシール性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0004】
この対策として、管路の不平均力が作用する範囲にある管継手100の挿口104の先端と受口102の奥端部との間に円筒状のライナ108を装着している。
【0005】
このようなライナ108を装着することにより、挿口104が受口102内で管軸心方向に相対移動しないように固定されるため、管継手100の伸縮および屈曲が拘束され、管継手100の曲げ剛性が向上し、不平均力に対抗することができる。
【0006】
尚、上記のような管継手100は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来形式では、特に管101,103の口径が大きくなると、ライナ108を装着しただけでは、管継手100の曲げ剛性が十分に得られないといった問題がある。
【0009】
本発明は、十分な曲げ剛性を得ることができる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本第1発明は、一方の管の受口に他方の管の挿口が挿入され、
受口の内周にロックリング収容溝が形成され、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
挿口の外周に係合部が形成され、
係合部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに係合することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な管継手であって、
係合部は挿口の先端から挿口の離脱方向に後退した箇所に形成されており、
挿口の先端と係合部との間における受口の内周と挿口の外周との間に、受口と挿口とを屈曲方向において拘束する屈曲抑制部材が設けられ、
挿口の先端と受口の奥端部との間に、受口と挿口とを管軸心方向において拘束する伸縮抑制部材が設けられ、
伸縮抑制部材の外径が挿口の外径よりも大きく、
管軸心方向における伸縮抑制部材の一端面が、挿口の先端と受口の奥端部との間において、挿口の外周から管径方向の外側へ段差となってはみ出しており、
屈曲抑制部材は挿口の係合部と伸縮抑制部材の一端面との間に位置しており、
係合部がロックリングに係合した状態で、伸縮抑制部材は、屈曲抑制部材が伸縮抑制部材の一端面に当接することによって受口の内周と挿口の外周との間から管軸心方向にずれて挿口の先端と受口の奥端部との間に抜け出すことを阻止しているものである。
【0011】
これによると、屈曲抑制部材を挿口の先端と係合部との間における受口の内周と挿口の外周との間に設けることにより、受口と挿口とが屈曲方向において拘束されるため、管継手の曲げ剛性が増大し、十分な曲げ剛性を得ることができる。
また、伸縮抑制部材によって管継手の伸縮が拘束されるため、管継手の曲げ剛性が向上する。さらに、伸縮抑制部材によって、屈曲抑制部材が受口の内周と挿口の外周との間から挿口の先端と受口の奥端部との間に抜け出して離脱してしまうのを防止することができる。
【0012】
本第2発明における管継手は、屈曲抑制部材はリング状の部材であるものである。
【0013】
本第3発明における管継手は、屈曲抑制部材は周方向において複数の円弧状の屈曲抑制片に分割されているものである。
【0014】
これによると、各屈曲抑制片を挿口の先端と係合部との間における受口の内周と挿口の外周との間に挿入してリング状に配置することにより、屈曲抑制部材を容易に装着することができる。
【0017】
本第4発明における管継手は、伸縮抑制部材はリング状の部材であるものである。
【0018】
本第5発明における管継手は、伸縮抑制部材の中心を一方の管の中心に合わせるための心出し用ボルトが伸縮抑制部材に設けられているものである。
【0019】
本第6発明における管継手は、管径方向に圧縮されて受口の内周と挿口の外周との間をシールするシールリングがロックリングよりも受口開口端側に設けられ、
シールリングを受口奥側へ押圧する押輪が受口の開口端部に設けられているものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によると、屈曲抑制部材を挿口の先端と係合部との間における受口の内周と挿口の外周との間に設けることにより、受口と挿口とが屈曲方向において拘束されるため、管継手の曲げ剛性が増大し、十分な曲げ剛性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態における管継手を有する管路の平面図である。
【
図3】同、管継手に備えられるロックリングを拡径するときの図である。
【
図4】同、管継手に備えられるリング体の断面図である。
【
図5】同、管継手に備えられるリング体の斜視図である。
【
図9】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図10】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図11】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図12】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図13】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図14】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、50は複数の管を接合して形成された管路であり、この管路50は屈曲部51を有しており、屈曲部51において不平均力52が働く。
【0024】
このような管路50において、1は離脱防止機能を有する管継手であり、一方の管2の受口3に他方の管4の挿口5が挿入されている。尚、これら管2,4には例えばダクタイル鉄管等が使用されている。
【0025】
図2に示すように、受口3の内周面にはロックリング収容溝7が全周にわたり形成されている。ロックリング収容溝7には、ロックリング8と、ロックリング8を管径方向内向きに押圧する円環状の押圧部材9とが収容されている。
【0026】
図3に示すように、ロックリング8は、一箇所が切断された一つ割り構造のリングであり、切断部分11の幅12を拡大器13で拡大することによって拡径し、拡大器13を切断部分11から取り外すことによって縮径して元の径に戻るような弾性を有している。
【0027】
図2に示すように、挿口5の外周には挿口突部15(係合部の一例)が全周にわたり形成されている。挿口突部15は挿口5の先端から挿口5の離脱方向Aに所定長さだけ後退した箇所に形成されている。挿口突部15が挿口5の離脱方向Aにおいて受口奥側からロックリング8に係合することにより、挿口5が受口3から離脱するのを防止できる。尚、上記のように挿口突部15がロックリング8に係合した場合、挿口5の先端と受口3の奥端面37(奥端部の一例)との間隔Dが最大になる。
【0028】
図11に示すように、受口3の内周面は、受口3の開口端面から奥側へ次第に縮径するテーパー部16と、テーパー部16の奥端から奥側へ延びるストレート部17と、ストレート部17の奥端から管径方向内側へ突出した受口突部18とを有している。ストレート部17は管軸心方向において同一の内径で形成されている。受口突部18は、管軸心方向においてストレート部17とロックリング収容溝7との間に全周にわたり設けられており、ストレート部17よりも小さな内径を有している。
【0029】
図2に示すように、ロックリング8よりも受口開口端側において、管径方向に圧縮されて受口3の内周面と挿口5の外周面との間をシールするシールリング19が設けられている。シールリング19は、ゴム製のリング(ゴム輪)であり、
図11に示すように受口3のテーパー部16およびストレート部17と挿口5の外周面との間に形成されるシールリング挿入空間20に挿入される。
【0030】
図2に示すように、受口3の開口端部には、シールリング19を受口奥側へ押圧する押輪22が設けられている。押輪22は、シールリング19を押圧する押圧方向Bにおいて受口3の開口端面に当接する当接部23を有しており、複数のボルト25およびナット26によって受口3の開口端部に連結されている。
【0031】
管軸心方向におけるロックリング8とシールリング19との間には、リング体31が設けられている。
図2,
図4,
図5に示すように、リング体31は、一箇所が切断された一つ割り構造のリングであって、弾性を有する樹脂等の材質で製造されており、円環状で一つ割り構造の本体部32と、本体部32が受口開口端側へずれるのを防止するずれ止め部材33とを有している。
【0032】
本体部32は、その断面形状が四角形であり、受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入されることで、受口3に対して挿口5を管径方向へ移動させて、一方の管2の軸心(図示省略)と他方の管4の軸心(図示省略)との管径方向におけるずれを減少させる。
【0033】
尚、本体部32の内周面53から外周面54までの径方向の高さHは、受口突部18の内径の許容最小値と挿口5の外径の許容最大値との差の半分の値未満に設定されている。
【0034】
ずれ止め部材33は、管軸心方向における先端部が受口3の内周面のストレート部17に当接可能であり、管軸心方向における基端部が本体部32の内周側に一体に設けられており、基端部から先端部に行くほど拡径するリング状で一つ割り構造の部材である。
【0035】
尚、管軸心方向におけるシールリング19とリング体31との間には隙間38が全周にわたり形成されている。
【0036】
また、
図2に示すように、管継手1には、不平均力52(
図1参照)に対抗するために、伸縮抑制部材34と屈曲抑制部材35とが備えられている。伸縮抑制部材34は、受口3と挿口5とを管軸心方向において拘束する部材であり、挿口5の先端と受口3の奥端面37との間に着脱自在に設けられている。伸縮抑制部材34を設けることにより、挿口5の先端と受口3の奥端面37との間隔Dが最大に保たれる。
【0037】
図2,
図6,
図7に示すように、伸縮抑制部材34は、内周に凹部39を有する金属製の円筒状の部材であり、周方向において複数個(例えば
図6では4個)の円弧状の伸縮抑制片40に分割されている。周方向において隣り合う一方の伸縮抑制片40の端部と他方の伸縮抑制片40の端部とは、連結板42および複数の連結用ボルト43を介して、連結されている。すなわち、連結板42には複数のボルト孔44が形成され、伸縮抑制片40の端部には連結用ねじ孔45が形成され、連結用ボルト43が連結板42のボルト孔44に挿通されて伸縮抑制片40の連結用ねじ孔45に螺合することにより、一方の伸縮抑制片40の端部と他方の伸縮抑制片40の端部とが連結される。
【0038】
また、各伸縮抑制片40には、内周面と外周面とに貫通する心出し用ねじ孔47が形成されている。各心出し用ねじ孔47には、伸縮抑制部材34の中心を管2の中心に合わせる心出し用ボルト48が螺合されている。各心出し用ボルト48を回すことにより、伸縮抑制部材34が管径方向へ移動する。
【0039】
尚、伸縮抑制部材34の内径は挿口5の内径と同じ又はほぼ同じであるが、伸縮抑制部材34の外径は挿口5の外径よりも大きく、これにより、
図2に示すように、管軸心方向における伸縮抑制部材34の一端面34aが、全周にわたり、挿口5の外周よりも管径方向外側へ段差となってはみ出している。
【0040】
図2,
図8に示すように、屈曲抑制部材35は、受口3と挿口5とを屈曲方向Cにおいて拘束する部材であり、挿口5の先端と挿口突部15との間における受口3の内周と挿口5の外周との間に着脱自在に設けられている。この屈曲抑制部材35は、金属製のリング状の部材であり、周方向において複数個(例えば
図8では3個)の円弧状の屈曲抑制片60に分割されている。
【0041】
以下に、上記管継手1における管2,4同士の接合方法を以下に説明する。
【0042】
図9に示すように、予め、他方の管4にリング体31とシールリング19と押輪22を外嵌しておく。そして、一方の管2のロックリング収容溝7に押圧部材9とロックリング8とを収容(セット)する。そして、
図3に示すように、ロックリング8の切断部分11の幅12を拡大器13で拡大して、ロックリング8を拡径する。次に、
図9に示すように、ロックリング8の切断部分11にL形状の拡径保持具58を挿入するとともに、拡大器13を取り外し、ロックリング8を拡径した状態に維持する。
【0043】
その後、
図10に示すように、挿口5を受口3に挿入して、挿口突部15をロックリング8の受口開口端側から受口奥側へ通過させる。この際、ロックリング8は拡径保持具58によって拡径状態に維持されているため、挿口突部15は容易にロックリング8の内側を通過する。
【0044】
次に、
図11に示すように、拡径保持具58を取り外して、ロックリング8を縮径させる。これにより、ロックリング8が挿口5の外周に抱き付く。
【0045】
その後、
図12に示すように、挿口突部15をロックリング8に係合させた状態で、リング体31を、管軸心方向に移動して、受口3の開口端部から受口3の内周面と挿口5の外周面との間に押し込み、受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入する。
【0046】
これにより、リング体31の本体部32が、挿口5を管径方向へ移動させて、一方の管2の軸心と他方の管4の軸心との管径方向におけるずれを減少させる。このため、他方の管4の軸心が一方の管2の軸心にほぼ一致し、管2,4の心出しが行える。
【0047】
その後、
図13に示すように、シールリング19を受口3の開口端部からシールリング挿入空間20に挿入し、ボルト25およびナット26を用いて押輪22を受口3の開口端部に連結し、押輪22の当接部23が受口3の開口端面に当接するまで、ボルト25およびナット26を締め込む。これにより、シールリング19が、シールリング挿入空間20に押し込まれ、管径方向において圧縮される。
【0048】
その後、
図13の仮想線で示すように、先ず、1個の屈曲抑制片60を、挿口5の先端と受口3の奥端面37との間から、挿口5の先端と挿口突部15との間における受口3の内周と挿口5の外周との間に挿入して、管継手1内の底部に配置する。次に、残り2個の屈曲抑制片60をそれぞれ、挿口5の先端と受口3の奥端面37との間から、挿口5の先端と挿口突部15との間における受口3の内周と挿口5の外周との間に挿入して、周方向に配置する。
【0049】
このようにして、
図8に示すように、3個の屈曲抑制片60をリング状に配置することにより、
図14に示すように、屈曲抑制部材35を、挿口5の先端と挿口突部15との間における受口3の内周と挿口5の外周との間に、容易に配置することができる。
【0050】
その後、
図6に示すように、1個の伸縮抑制片40を受口3内の底部に配置し、次に、伸縮抑制片40の両端部にそれぞれ別の伸縮抑制片40を1個ずつ配置し、これら各伸縮抑制片40の端部同士を連結板42および連結用ボルト43で連結する。さらに、残り1個の伸縮抑制片40を受口3内の天井部に配置し、隣り合う伸縮抑制片40の端部同士を連結板42および連結用ボルト43で連結する。
【0051】
このようにして、4個の伸縮抑制片40を円筒状に配置することにより、
図2に示すように、伸縮抑制部材34が挿口5の先端と受口3の奥端面37との間に設けられる。その後、各心出し用ボルト48を回すことにより、伸縮抑制部材34の中心を管2の中心に合わせる。
【0052】
例えば、伸縮抑制部材34の中心が管2の中心よりも下がっている場合、心出し用ボルト48を回して、伸縮抑制部材34を心出し用ボルト48で持ち上げ、伸縮抑制部材34の中心を管2の中心に合わせればよい。
【0053】
上記のようにして管2,4同士を接合することにより、
図2に示すように、管継手1において、屈曲抑制部材35が挿口5の先端と挿口突部15との間における受口3の内周と挿口5の外周との間に設けられるため、受口3と挿口5とが屈曲方向Cにおいて拘束され、これにより、管継手1の曲げ剛性が増大し、十分な曲げ剛性を得ることができる。
【0054】
また、伸縮抑制部材34が挿口5の先端と受口3の奥端面37との間に設けられるため、受口3に対する挿口5の管軸心方向への移動が阻止されて、管継手1の伸縮が拘束され、管継手1の曲げ剛性が向上する。
【0055】
また、屈曲抑制部材35が管軸心方向において伸縮抑制部材34の一端面34aに当接することにより、屈曲抑制部材35が受口3の内周と挿口5の外周との間から管軸心方向へずれて挿口5の先端と受口3の奥端面37との間に抜け出すことは阻止される。これにより、屈曲抑制部材35が受口3の内周と挿口5の外周との間から挿口5の先端と受口3の奥端面37との間に抜け出して離脱してしまうのを防止することができる。
【0056】
また、
図2に示すように、押輪22の当接部23が受口3の開口端面に当接することにより、これ以上、押輪22でシールリング19を受口奥側へ押し込むことはできない。これにより、シールリング19が過大な押圧力で受口奥側へ押し込まれることはなく、シールリング19の奥端部がリング体31に当接することはないので、リング体31の損傷を防止することができる。
【0057】
また、ずれ止め部材33の先端部が受口3の内周面のストレート部17に当接した状態で、ずれ止め部材33が受口3の内周面と本体部32との間で突っ張ることにより、リング体31の本体部32が受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間から受口開口端側(離脱方向A)へずれるのを防止することができる。
【0058】
上記第1の実施の形態では、
図6に示すように、伸縮抑制部材34を4個の伸縮抑制片40に分割しているが、4個に限定されるものではなく、4個以外の複数個に分割してもよい。
【0059】
上記第1の実施の形態では、
図8に示すように、屈曲抑制部材35を3個の屈曲抑制片60に分割しているが、3個に限定されるものではなく、3個以外の複数個に分割してもよい。また、周方向において隣り合う屈曲抑制片60同士を連結してもよい。
【0060】
上記実施の形態では、
図2に示すように伸縮抑制部材34と屈曲抑制部材35とが個別の部材として管継手1内に設けられているが、伸縮抑制部材34と屈曲抑制部材35とは、一体的に形成されていてもよく、或いは、ねじ等の連結部材で連結されて一体化する構造であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 管継手
2 一方の管
3 受口
4 他方の管
5 挿口
7 ロックリング収容溝
8 ロックリング
15 挿口突部(係合部)
34 伸縮抑制部材
35 屈曲抑制部材
37 奥端面(奥端部)
60 屈曲抑制片
A 離脱方向
C 屈曲方向