(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20231130BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231130BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20231130BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/898
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019212615
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 知幸
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/081055(WO,A1)
【文献】特開平05-112423(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074439(WO,A1)
【文献】特開2008-143823(JP,A)
【文献】特開2018-065800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)を含有
し、成分(A)が、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンであり、成分(B)が、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、下記式(5)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位から選ばれる1種以上の繰り返し単位とを含むポリマーであり、成分(A)の含有量が、皮膚外用剤中0.05質量%以上5質量%以下であり、成分(B)の含有量が、皮膚外用剤中0.01質量%以上0.075質量%以下であり、成分(C)の含有量が、皮膚外用剤中0.01質量%以上1質量%以下である、皮膚外用剤。
(A)シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマー
(B)(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマー
(C)
フェノール系殺菌
剤
【化1】
〔式(5)中、
R
1
は、水素原子又はメチル基を示し、
R
2
は、水素原子、アルキル基、又は炭素数2以上のアルキル基の炭素-炭素原子間にカルボニル基を有する基を示す。〕
【請求項2】
成分(B)に対する成分(A)の含有質量比〔(A)/(B)〕が、2.5以上7.5以下である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
成分(C)が、
イソプロピルメチルフェノールである、請求項1
又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
更に、(D)
炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状の1価アルコール及び(E)水から選ばれる1種以上を含有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮脂や汗のべたつきや臭いを抑制し、清涼感を付与するための皮膚外用剤としてデオドラント皮膚化粧料が使用されている。このようなデオドラント皮膚化粧料には、制汗剤である各種金属塩や殺菌剤が配合されている。そして、制汗作用や殺菌作用に加えて使用感等を向上させる技術が報告されている。例えば、制汗成分、殺菌成分に加えて粉体を配合した粉末固形化粧料(特許文献1)、フェルラ酸と殺菌剤を含有する化粧料(特許文献2)、アルテピリンCと殺菌剤を含有する化粧料(特許文献3)、ゼラニウム等の植物抽出物、殺菌剤及びカチオン性界面活性剤を含有する化粧料(特許文献4)、ベンジルグリセリルエーテルとイソプロピルメチルフェノールと多価アルコール及び/又はノニオン性界面活性剤とを含有する皮膚外用防臭組成物(特許文献5)、シリコーンゲル、多価アルコール脂肪酸エステル粉体、固化剤及びデオドラント成分を含有するデオドラントスティック(特許文献6)、抗菌成分、シクロデキストリン系化合物及び固形ワックスを含有する皮膚外用組成物(特許文献7)、アルミニウム化合物とフェノール系殺菌剤とアルデヒド香料とキレート剤と水を含有する制汗デオドラント組成物(特許文献8)等が報告されている。
また、殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノールに、カルボン酸又はその塩、1,3-ブチレングリコール及びHLB10~13のノニオン界面活性剤を特定量組み合わせた化粧料も報告されている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-77094号公報
【文献】特開2010-116376号公報
【文献】特開2011-126862号公報
【文献】特開2012-51845号公報
【文献】特開2012-219046号公報
【文献】特開2015-3891号公報
【文献】特開2016-88925号公報
【文献】特開2016-113447号公報
【文献】特開2018-65799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の皮膚外用剤は、塗布後に多量に発汗した場合の殺菌剤や制汗剤の皮膚上における残留性に改善の余地があった。そのため、多量に発汗した場合に殺菌効果や制汗効果が持続しにくくなるものであった。また、発汗後のべたつきのなさも不十分であった。
【0005】
本発明は、塗布乾燥後のべたつきのなさだけでなく発汗後のべたつきのなさにも優れ、且つ殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上の成分が、発汗後でも皮膚上に十分に残留して殺菌効果及び/又は制汗効果が持続する皮膚外用剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上とともに、シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマーと(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーとを組み合わせることによって、塗布乾燥後のべたつきのなさだけでなく発汗後のべたつきのなさにも優れ、且つ殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上の成分が、発汗後でも皮膚上に十分に残留して殺菌効果及び/又は制汗効果が持続する皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)を含有する、皮膚外用剤を提供するものである。
(A)シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマー
(B)(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマー
(C)殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚外用剤は、塗布乾燥後のべたつきのなさだけでなく発汗後のべたつきのなさにも優れ、且つ殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上の成分が、発汗後でも皮膚上に十分に残留して殺菌効果及び/又は制汗効果が持続する。したがって、本発明の皮膚外用剤は、皮膚化粧料として有用であり、デオドラント皮膚化粧料として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<成分(A)>
本発明の皮膚外用剤は、(A)シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマーを含有する。
本明細書において、シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマーとは、シリコーンセグメントを分子内に有し、且つ皮膜形成能をもつカチオン性のポリマーをいい、シリコーン鎖を主鎖として有するものが好ましい。なお、ポリマーの電荷密度をゼータ電位測定装置等で測定したときに測定値が0meq/g超となる場合、そのポリマーは「カチオン性」である。
シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマーとしては、具体的には、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(例えばオキサゾリン変性シリコーン)、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。なお、これらのうち1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中では、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンが好ましい。
【0010】
(ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン)
上記ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンとしては、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、カチオン性の2価連結基を介して、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が500~4000であり、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が10000~200000である、オルガノポリシロキサン(以下、このオルガノポリシロキサンを、オルガノポリシロキサン(OX)ともいう)が好ましい。
【0011】
【0012】
〔式(1)中、R41は、水素原子、炭素数1~22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、tは2又は3を示す。〕
【0013】
ここで、オルガノポリシロキサン(OX)について詳細に説明する。
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、カチオン性の2価連結基を介して少なくとも2つ結合しているが、オルガノポリシロキサンセグメントの両末端を除く1以上のケイ素原子にカチオン性の2価連結基を介して結合しているのが好ましく、両末端を除く2以上のケイ素原子にカチオン性の2価連結基を介して結合しているのがより好ましい。
【0014】
カチオン性の2価連結基は、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの連結基として機能する。
カチオン性の2価連結基としては、カチオン性基を含むアルキレン基が挙げられ、カチオン性基を1~3個含む炭素数2~20のアルキレン基が好ましく、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基及び第4級アンモニウム基から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性基を1~3個含む炭素数2~20のアルキレン基がより好ましい。
このようなカチオン性の2価連結基の中でも、下記式(A1)~(A9)のいずれかで表される基が好ましく、式(A1)~(A4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(A1)又は(A2)で表される基が特に好ましい。
なお、式中、An-は、第4級アンモニウム塩の対イオンを示す。例えば、ハロゲン化物イオン(例えば塩化物イオン、ヨウ化物イオン)、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、モノアルキル硝酸イオン(例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン)等が挙げられる。
【0015】
【0016】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを構成するN-アシルアルキレンイミン単位において、一般式(1)中、R41で示されるアルキル基の炭素数は1~22であるが、好ましくは1~14、より好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。また、上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
R41で示されるアラルキル基としては、炭素数7~15のアラルキル基が好ましい。例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が挙げられる。
R41で示されるアリール基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基等が挙げられる。
これらの中でも、R41としては、水素原子、炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
式(1)中のtは2又は3を示すが、2が好ましい。
【0017】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)としては、40/60~98/2が好ましく、45/55~82/18がより好ましく、60/40~80/20が更に好ましく、65/35~80/20が更に好ましく、68/32~80/20が更に好ましく、70/30~79/21が特に好ましい。
なお、本明細書において、質量比(a/b)は、オルガノポリシロキサン(OX)を重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H-NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
【0018】
オルガノポリシロキサン(OX)において、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(以下、「MWg」ともいう)は、好ましくは1000~40000、より好ましくは1500~30000、特に好ましくは1750~5000である。
【0019】
本明細書において、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式(2)に示すように、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点A)から、これに隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点B)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのR42SiO単位と、1つのR43と、y+1個の(R42)2SiO単位とから構成されるセグメントをいう。また、「ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント」とは、上記R43に結合する-Z11-R44をいう。
【0020】
【0021】
〔式(2)中、R42はそれぞれ独立に炭素数1~22のアルキル基又はフェニル基を示し、R43はカチオン性の2価連結基を示し、-Z11-R44はポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、R44は重合開始剤の残基又は水素原子を示し、yは正の数を示す。なお、複数のR42、R43、R44は、同じであっても異なっていてもよい。〕
【0022】
MWgは、上記式(2)において破線で囲まれた部分の分子量であるが、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができる。なお、原料化合物の変性オルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。
【0023】
また、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量は、N-アシルアルキレンイミン単位の分子量と重合度から算出するか、又はゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができるが、本明細書においては、後記の測定条件で行なったGPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(以下、MNoxともいう)をいうものとする。MNoxは、好ましくは800~3500、より好ましくは1000~3000である。
【0024】
また、MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(質量%)(以下、Csiともいう)を用いて、下記式(I)により求めることができる。
【0025】
MWg = Csi×MNox/(100-Csi) (I)
【0026】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(以下、MWsiともいう)は、好ましくは15000~160000、より好ましくは20000~150000、特に好ましくは25000~100000である。
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントは、原料化合物の変性オルガノポリシロキサンと共通の骨格を有するため、MWsiは、原料化合物の変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と略同一である。なお、原料化合物の変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、下記の測定条件で行なったGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0027】
(変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量の測定条件)
カラム:Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製)
溶離液:1mMトリエチルアミン/THF
流量 :0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器:UV
サンプル:50μL
【0028】
オルガノポリシロキサン(OX)の重量平均分子量(以下、MWtともいう)は、好ましくは10000~500000、より好ましくは12000~200000、更に好ましくは25000~160000、特に好ましくは35000~150000である。MWtは、後記の測定条件で行なったGPCにより測定されるポリスチレン換算の値をいうものとする。
【0029】
(MNox及びMWtの測定条件)
カラム:K‐804L(東ソー社製)2つを直列につないで使用
溶離液:1mMジメチルドデシルアミン/クロロホルム
流量 :1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
サンプル:50μL
【0030】
なお、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントがポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)セグメントの場合、質量比(a/b)算出のための1H-NMR測定は、例えば、下記の条件で行うことができる。
(1H-NMR測定条件)
ポリマーサンプル0.5gを測定溶剤(重クロロホルム)2gで溶解させたものについて、1H-NMR(400MHz Varian製)により測定する。そして、各積分値よりシリコーンとポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)の比率を算出する。
PULSE SEQUENCE
・Relax.delay: 30秒 ・Pulse: 45degrees ・積算回数: 8回
確認ピーク 0ppm付近:ポリジメチルシロキサンのメチル基、
3.4ppm付近:エチレンイミンのメチレン部分。
【0031】
オルガノポリシロキサン(OX)は、特開2008-143820号公報、特開2009-24114号公報、特開2015-67603号公報、特開2016-204336号公報等に記載の方法に従って合成して得たものを用いてもよい。例えば、上記のカチオン性の2価連結基を誘導する官能基で変性されたオルガノポリシロキサンと、一般式(1)で表される繰り返し単位に対応する環状イミノエーテルを開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造できる。
【0032】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーンとしては、具体的には、ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-n-オクタノイルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-n-ドデカノイルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-ホルミルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-アセチルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-プロピオニルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-n-オクタノイルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N-n-ドデカノイルプロピレンイミン)変性シリコーン等が挙げられる。
【0033】
(アミノ変性シリコーン)
上記アミノ変性シリコーンとしては、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【0034】
【0035】
〔式(3)中、
R51~R53は、各々独立して、水素原子、ヒドロキシル基、又は炭素数1~20の1価の有機基を示し、
R54は、下記一般式(4)で表される基を示し、
R55~R56は、各々独立して、ヒドロキシル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20の1価の有機基、又は下記一般式(4)で表される基を示し、
R57~R60は、各々独立して、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20の1価の有機基、又は下記一般式(4)で表される基を示し、
dは、10≦d≦10000の数を示し、
eは、0.1≦e≦1000の数を示す。〕
【0036】
【0037】
〔式(4)中、
R61~R62は、各々独立して、炭素数1~8のアルカンジイル基を示し、
R63~R65は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基を示し、
fは、0≦f≦6の数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0038】
式(3)中、R51~R53、R55~R56、R57~R60で示される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、2-(パーフルオロオクチル)エチル基等のハロゲノアルキル基などが挙げられる。
【0039】
また、R51~R53としては、炭素数1~20の1価の有機基が好ましい。また、式(3)中に含まれる全てのR51~R53のうち、90モル%以上がメチル基であるのが好ましい。
【0040】
R55~R56、R57~R60で示されるアルコキシ基の炭素数は1~20であるが、好ましくは1~12、より好ましくは1~6である。また、アルコキシ基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
R55~R56、R57~R60としては、ヒドロキシル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20の1価の有機基が好ましく、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチル基がより好ましい。
【0041】
また、dは、10≦d≦10000の数であるが、100≦d≦2000が好ましい。
また、eは、0.1≦e≦1000の数であるが、1≦e≦100が好ましい。
また、d及びeの和としては、数平均で10以上1000未満が好ましく、数平均で30以上1000未満がより好ましく、数平均で40以上800未満が特に好ましい。
【0042】
式(4)中、R61~R62は、各々独立して、炭素数1~8のアルカンジイル基を示す。
R61で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~6である。一方、R62で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~4である。
R61~R62で示されるアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルカンジイル基としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、R61としては、プロパン-1,3-ジイル基(トリメチレン基)が好ましく、R62としては、エタン-1,2-ジイル基(ジメチレン基)が好ましい。
【0043】
また、R63~R65は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基を示す。R63~R65で示される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;アセチル基、プロピオニル基等のアルカノイル基の他、これらの基の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる置換基で置換した基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、2-(パーフルオロオクチル)エチル基等のハロゲノアルキル基;酸無水物、エポキシ化合物、アクリル化合物との反応により得られる1価の有機基(例えば-COCH3、-CH2CH(OH)CH2OH、-CH2CH(OH)CH2OCH2CH2OH)などが挙げられる。
R63~R65としては、水素原子が特に好ましいが、R63~R65の少なくとも1つが水素原子の場合に、残りの基の一部又は全部が、上記の酸無水物、エポキシ化合物、アクリル化合物との反応により得られる1価の有機基などの基であってもよい。
また、fは、0≦f≦6の数を示すが、好ましくは0≦f≦3の数である。
【0044】
このようなR54としては、具体的に下記のものが挙げられる。
【0045】
【0046】
また、アミノ変性シリコーンのアミノ当量は、好ましくは200g/mol~3万g/mol、より好ましくは400g/mol~1万g/mol、特に好ましくは600g/mol~5000g/molである。
アミノ変性シリコーンとしては、アモジメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコン、アミノプロピルジメチコンが好ましい。
【0047】
アミノ変性シリコーンは、市販品を用いても常法に従って合成して得たものを用いてもよい。アミノ変性シリコーンの市販品としては、SF8451C、SF8452C、SF8457C(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、KF8003、KF867(以上、GE東芝シリコーン社製)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)等のアモジメチコーンエマルションが挙げられる。また、アミノ変性シリコーンオイルは、エマルションの形で配合してもよい。なお、アミノ変性シリコーンのエマルションは、機械的乳化(アミノ変性シリコーンと水との高剪断機械混合)、化学的乳化(アミノ変性シリコーンを水及び乳化剤で乳化)、若しくはこれらの組み合わせによって、又は乳化重合によっても調製することができる。
【0048】
なお、シリコーン系カチオン性皮膜形成ポリマーは、1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
成分(A)の含有量は、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、本発明の皮膚外用剤中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上であり、また、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、本発明の皮膚外用剤中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。具体的な範囲としては、本発明の皮膚外用剤中、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下が更に好ましく、0.15質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
【0050】
<成分(B)>
本発明の皮膚外用剤は、(B)(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーを含有する。
本明細書において、(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーとは、(メタ)アクリルセグメントを分子内に有し、且つ皮膜形成能をもつアニオン性のポリマーをいい、(メタ)アクリル鎖を主鎖として有するものが好ましい。
また、(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーとしては、非架橋型のものが好ましい。また、オルガノシロキサンセグメント骨格を有しないものが好ましい。
【0051】
また、(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーとしては、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を含むものが好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、下記式(5)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位から選ばれる1種以上の繰り返し単位とを含むものがより好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と、下記式(5)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位とを含むものが特に好ましい。なお、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位は、アルカノールアミン等で中和されていてもよい。
【0052】
【0053】
〔式(5)中、
R1は、水素原子又はメチル基を示し、
R2は、水素原子、アルキル基、又は炭素数2以上のアルキル基の炭素-炭素原子間にカルボニル基を有する基を示す。〕
【0054】
式(5)中、R2としては、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、アルキル基、炭素数2以上のアルキル基の炭素-炭素原子間にカルボニル基を有する基が好ましい。
R2で示されるアルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~14の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が特に好ましい。
また、炭素数2以上のアルキル基の炭素-炭素原子間にカルボニル基を有する基の「炭素数2以上のアルキル基」としては、炭素数2~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数2~14の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が特に好ましい。R2がこのような基であるモノマーとしては、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド(R2=-C(CH3)2-CH2-C(=O)-CH3)が挙げられる。
このようなR2の中でも、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、-C(CH3)2-CH2-C(=O)-CH3が特に好ましい。
【0055】
また、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基としては、炭素数1~30の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が特に好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーの具体例としては、アクリル樹脂アルカノールアミン液(プラスサイズL-9909B、プラスサイズL-9909U、プラスサイズL-9900、プラスサイズL-9540B(以上、互応化学工業社製)、アニセットNF-1000(大阪有機化学工業社製)等)、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体(ダイヤホールド(三菱化学社製)等)、アクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸エチル共重合体(アンフォーマーV-42、ダーマクリル79(以上、アクゾノーベル社製)、ウルトラホールド8、ウルトラホールドstrong(以上、BASF社製)等)、(アクリレーツ/オクチルアクリルアミド)コポリマー(アンフォーマーHC(アクゾノーベル社製)等)、アクリレーツコポリマー(ティラマーFix A1000(DSM社製)、ルビマー100P(BASF社製)等)、(アクリレーツ/アクリル酸ヒドロキシアルキル)コポリマー(アキュダイン180(ダウ・ケミカル社製)等)、(アクリレーツ/コハク酸アルキル(C1,2)/アクリル酸ヒドロキシアルキル)コポリマー(アキュダインLT-120(ダウ・ケミカル社製)等)が挙げられる。
これらの中では、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、アクリル樹脂アルカノールアミン液、アクリレーツコポリマーが好ましく、アクリル樹脂アルカノールアミン液がより好ましい。
【0057】
なお、(メタ)アクリル系アニオン性皮膜形成ポリマーは、1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
成分(B)の含有量は、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、本発明の皮膚外用剤中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.025質量%以上であり、また、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、本発明の皮膚外用剤中、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.075質量%以下である。具体的な範囲としては、本発明の皮膚外用剤中、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.005質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下が更に好ましく、0.025質量%以上0.075質量%以下が特に好ましい。
【0059】
また、成分(B)に対する成分(A)の含有質量比〔(A)/(B)〕は、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2.5以上、特に好ましくは4以上であり、また、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは7.5以下である。具体的な範囲としては、0.1以上30以下が好ましく、1以上20以下がより好ましく、2.5以上10以下が更に好ましく、4以上7.5以下が特に好ましい。
【0060】
<成分(C)>
本発明の皮膚外用剤は、(C)殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上を含有する。この中では、殺菌剤が好ましい。本発明の皮膚外用剤は、成分(C)が殺菌剤の場合であっても、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさに優れる。
殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ピロクトンオラミン、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、トリクロカルバン、サリチル酸、パラベン、クロルヘキシジン又はその塩、リゾチーム又はその塩、アクリノール、グルコン酸、アルキルジアミノグリシン又はその塩、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、クレゾール、感光素101号、感光素201号、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、ハロカルバン、3,4,4-トリクロロカルバニリド、トリエチルシトレート、レゾルシン、フェノール、ソルビン酸、ヘキサクロロフェン、銀担持ゼオライト、銀担持シリカ等が挙げられる。殺菌剤の中では、低級アルコール以外の殺菌剤が好ましく、有機系殺菌剤がより好ましく、フェノール系殺菌剤、第4級アンモニウム塩系殺菌剤が更に好ましく、フェノール系殺菌剤が更に好ましく、イソプロピルメチルフェノールが特に好ましい。また、水難溶性又は水不溶性の殺菌剤が好ましい。
【0061】
制汗剤としては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、酸化亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロルハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロルハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロルハイドレート、ジルコニウムクロルハイドレート等が挙げられる。制汗剤の中では、水難溶性又は水不溶性の制汗剤が好ましい。
【0062】
なお、殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上は、1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
成分(C)の含有量は、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、本発明の皮膚外用剤中、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、また、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、本発明の皮膚外用剤中、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.25質量%以下である。具体的な範囲としては、本発明の皮膚外用剤中、0.005質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.25質量%以下が特に好ましい。
【0064】
また、成分(C)に対する成分(A)の含有質量比〔(A)/(C)〕は、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上であり、また、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、好ましくは35以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは15以下、特に好ましくは7.5以下である。具体的な範囲としては、0.1以上35以下が好ましく、0.25以上25以下がより好ましく、0.5以上15以下が更に好ましく、1以上7.5以下が特に好ましい。
【0065】
また、成分(C)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(C)〕は、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、好ましくは0.025以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.25以上であり、また、塗布乾燥後及び発汗後のべたつきのなさ、成分(C)の皮膚上での残留性等の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2.5以下、特に好ましくは0.75以下である。具体的な範囲としては、0.025以上10以下が好ましく、0.05以上5以下がより好ましく、0.1以上2.5以下が更に好ましく、0.25以上0.75以下が特に好ましい。
【0066】
<成分(D)、(E)>
本発明の皮膚外用剤としては、成分(A)~(C)に加えて、更に(D)低級アルコール及び(E)水から選ばれる1種以上を含有するものが好ましい。
低級アルコールとしては、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状の1価アルコールが好ましく、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状の飽和1価アルコールがより好ましい。また、低級アルコールの炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは2~3である。
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。これらの中でも、エタノール、イソプロパノールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0067】
成分(D)の含有量としては、本発明の皮膚外用剤中、0~90質量%が好ましく、0~80質量%がより好ましい。
成分(E)の含有量としては、本発明の皮膚外用剤中、10質量%以上100質量%未満が好ましく、15質量%以上99.9質量%以下がより好ましい。
また、本発明の皮膚外用剤としては、成分(A)~(C)に加えて、更に(D)低級アルコール及び(E)水から選ばれる1種以上を含有し、且つ成分(D)及び(E)を合計で、本発明の皮膚外用剤中に70~99.99質量%(好ましくは80~99.99質量%、より好ましくは90~99.99質量%)含有するものが好ましい。
【0068】
本発明の皮膚外用剤は、上記各成分の他に、(F)カルボン酸又はその塩、(G)多価アルコール、(H)界面活性剤、(I)水溶性高分子、シリコーン油、炭化水素油、合成エステル油、油脂類、ワックス類、粉体、塩基、高級アルコール、高級脂肪酸、アミノ酸、色素、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、清涼剤、抗炎症剤、ビタミン剤、各種植物抽出エキス、香料等を含んでいてもよい。なお、これらのうち1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
<成分(F)>
カルボン酸又はその塩としては、炭素数1~8の有機カルボン酸又はその塩が好ましく、炭素数3~8の有機カルボン酸又はその塩がより好ましい。
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸等が挙げられる。
また、カルボン酸塩を構成する対イオンの具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンが挙げられる。塩は、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
カルボン酸又はその塩としては、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、クエン酸、コハク酸、アジピン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0070】
カルボン酸又はその塩は、1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カルボン酸又はその塩の含有量としては、本発明の皮膚外用剤中、0.1~3質量%が好ましく、0.2~2.8質量%がより好ましい。
【0071】
<成分(G)>
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のグリコール類;グリセリン(濃グリセリンを含む)、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類が挙げられる。なお、これらのうち1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
多価アルコールの含有量としては、本発明の皮膚外用剤中、0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
【0072】
<成分(H)>
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、(H-1)HLB10~13のノニオン界面活性剤、(H-2)HLB値が4~7であり且つグリセリル基を有する25℃で液状のノニオン界面活性剤、(H-3)モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン等のような、25℃で液状のソルビタン脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤が挙げられる(成分(H-3)のノニオン界面活性剤としては、HLB4~7のものが好ましい)。界面活性剤は、1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、ノニオン界面活性剤における上記「25℃で液状」とは、25℃での粘度が10万mPa・s以下であることを意味する。
【0073】
(成分(H-1))
HLB10~13のノニオン界面活性剤としては、HLB11~13のものが好ましく、HLB12~13のものがより好ましい。
【0074】
本明細書において、HLB値は、親水性-親油性のバランス(Hydrophile Lipophile Balance)を示す指標であり、小田及び寺村らによる次式により定義される。また、HLB値は、配合前の各ノニオン界面活性剤のHLBである。
【0075】
【0076】
成分(H-1)としては、炭素数10~18のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルが好ましい。上記炭素数は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルを構成するアルキル基、アルケニル基の炭素数を意味する。当該アルキル基、アルケニル基の炭素数としては、10~16が好ましく、12~14がより好ましい。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルの中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数としては、3~9が好ましく、4~8がより好ましく、5~7が特に好ましい。
【0077】
成分(H-1)としては、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(炭素数12)、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル(炭素数14)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(炭素数16)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(炭素数18)等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(5E.O.)(HLB:10.6)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(6E.O.)(HLB:11.5)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7E.O.)(HLB:12.2)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(8E.O.)(HLB:12.9)がより好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(6E.O.)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7E.O.)が更に好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(6E.O.)が特に好ましい。
【0078】
(成分(H-2))
HLB値が4~7であり且つグリセリル基を有する25℃で液状のノニオン界面活性剤としては、炭素数8~22の分岐のアルキル基又はアルケニル基を有し、これがグリセリル基とエーテル結合若しくはエステル結合したもの、又はアルキレンオキサイド基を介して結合しているものが好ましい。成分(H-2)のノニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、アルキルグリセリルエーテル及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルキルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0079】
成分(H-2)のノニオン界面活性剤としては、具体的には、イソステアリルグリセリルエーテル(HLB5.4)、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(HLB7)、モノイソステアリン酸グリセリル(HLB6)、モノイソステアリン酸(重合度2)ポリグリセリル(HLB5.5)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油(HLB4)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB5)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(15)硬化ヒマシ油(HLB7)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB4)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(15)硬化ヒマシ油(HLB5)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(HLB6)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(HLB7)等が挙げられる。
これらの中では、イソステアリルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、モノイソステアリン酸グリセリルが好ましく、イソステアリルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0080】
界面活性剤の含有量としては、本発明の皮膚外用剤中、0.1~3質量%が好ましく、0.2~2.5質量%がより好ましい。
【0081】
<成分(I)>
水溶性高分子は、水溶性天然高分子、水溶性半合成高分子、水溶性合成高分子のいずれでもよい。
天然高分子としては、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられる。
半合成高分子としては、半合成多糖系高分子が好ましく、例えば、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等の変性多糖類が挙げられる。
合成高分子としては、カルボマー(架橋ポリアクリル酸)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0082】
ヒドロキシプロピルセルロースの市販品としては、HPC-M、HPC-H(以上、日本曹達社製)等が挙げられ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの市販品としては、CMCダイセル(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
カルボマーの市販品としては、カーボポール910、カーボポール934、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981(以上、Lubrizol Advanced Materials,Inc.製)等が挙げられる。
【0083】
水溶性高分子は、1種のみを単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
水溶性高分子の含有量としては、本発明の皮膚外用剤中、0.01~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
【0084】
そして、本発明の皮膚外用剤は、塗布乾燥後のべたつきのなさだけでなく発汗後のべたつきのなさにも優れ、且つ殺菌剤及び制汗剤から選ばれる1種以上の成分が、発汗後でも皮膚上に十分に残留して殺菌効果及び/又は制汗効果が持続するものである。このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、成分(A)と成分(B)が皮膚上で複合的な皮膜を形成するためであると、本発明者は推察する。
したがって、本発明の皮膚外用剤は、皮膚化粧料として有用であり、デオドラント皮膚化粧料として特に有用である。本発明の皮膚外用剤の適用部位は、好ましくは頭皮を除く皮膚、より好ましくは顔、身体、手足等である。
【0085】
本発明の皮膚外用剤の剤形は特に限定されないが、ロールオンタイプ、ジェル、クリーム、ミスト、ローション、エアゾール、スプレー、スティック、乳液、不織布等に含浸させたシート状等の形態が挙げられる。これらの中では、ロールオンタイプ、ジェルが好ましく、ロールオンタイプが特に好ましい。本発明の皮膚外用剤は、ロールオンタイプの皮膚外用剤とした場合でも、析出が生じにくく、且つロールオン容器が備えるボールへの皮膚外用剤のノリが良好で、皮膚に塗布するときに液ダレ等が生じにくく、容易に塗布できるものである。なお、ロールオンタイプとは、ロールオン容器に皮膚外用剤が充填された容器詰め皮膚外用剤の形態であり、ロールオン容器が備えるボールを適用部位にあてて塗布するものである。
本発明の皮膚外用剤は、成分(A)~(C)及び必要に応じて他の成分を混合し、必要に応じて加熱することで製造することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例3~4は参考例である。
【0087】
(実施例1~4及び比較例1~6)
実施例1~4及び比較例1~6の皮膚外用剤を、表1に示す処方に従って常法により製造し、残留性及び使用感(塗布乾燥後のべたつきのなさ、多量に発汗した後のべたつきのなさ)を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0088】
(残留性の評価方法)
以下の手順で残留性の評価を行った。
(i) 皮膚外用剤を一方の前腕内側に10μL/cm2だけ塗布し乾燥させた。
(ii) 皮膚外用剤を他方の前腕内側に10μL/cm2だけ塗布し乾燥させた。乾燥後、サンプル塗布部を水に30秒間浸漬させた。その後、水から前腕を引き上げ、サンプル塗布部の水に浸漬した部分をドライヤーで乾燥させた。
(iii) (i)及び(ii)のサンプル塗布部からエタノール5mLでカップシェイクし、残留していた皮膚外用剤をそれぞれ回収した。回収した溶液を、0.45μmのフィルターでろ過した。このサンプルを、それぞれ、サンプル(i)'、(ii)'とする。
(iv) サンプル(i)'、(ii)'それぞれについて、サンプル中のイソプロピルメチルフェノール(IPMP)のUV吸光度を測定した。
(v) サンプル(i)'の吸光度(A)とサンプル(ii)'の吸光度(B)を以下の数式にあてはめ残留率を算出した。
(残留率(%))=(B/A)×100
【0089】
(塗布乾燥後のべたつきのなさの評価方法)
皮膚外用剤を前腕内側に10μL/cm2塗布し乾燥させた後のべたつきのなさについて、最もべたつかないものを5、最もべたつくものを1とし、5段階で評価した。評価は専門パネル5名により行い、スコアの平均を評価値とした。
【0090】
(多量に発汗した後のべたつきのなさの評価方法)
皮膚外用剤を前腕に10μL/cm2塗布し乾燥させ、次いで40℃、湿度75%の環境で5分間放置した後のべたつきのなさについて、最もべたつかないものを5、最もべたつくものを1とし、5段階で評価した。評価は専門パネル5名により行い、スコアの平均を評価値とした。
【0091】
【0092】
表中の記号は、それぞれ以下を示す。
*1:特開2008-143820号公報 合成例1の記載に準じて調製したもの(ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーン30質量%とエタノール70質量%との混合液)
*2:プラスサイズL-9909B(互応化学工業株式会社製)
*3:プラスサイズL-9540B(互応化学工業株式会社製)
*4:大阪化成株式会社製イソプロピルメチルフェノール
【0093】
(処方例1:ロールオン)
以下に示す処方に従って常法により液状組成物を製造し、当該組成物をロールオン容器に充填した。
【0094】
(成分) (質量%)
イソプロピルメチルフェノール 0.1
1,3-ブチレングリコール 2.0
ヒドロキシプロピルセルロース 0.4
イソステアリルグリセリルエーテル 0.1
アクリル樹脂アルカノールアミン液(*2) 0.15
メチルポリシロキサン 1.0
ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーン含有液(*1) 1.0
コハク酸 0.7
エタノール 75.0
香料 0.1
精製水 バランス
合計 100.00
【0095】
(処方例2:ジェル)
処方例2のジェルを、以下に示す処方に従って常法により製造した。
【0096】
(成分) (質量%)
イソプロピルメチルフェノール 0.1
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシビニルポリマー 0.5
ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーン含有液(*1) 2.0
アクリル樹脂アルカノールアミン液(*3) 0.3
コハク酸 0.1
水酸化カリウム 0.15
エタノール 30.0
香料 0.1
精製水 バランス
合計 100.00