(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】レーザ溶接システム及び加工条件登録方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20231130BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20231130BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/21 A
B23K26/00 Q
(21)【出願番号】P 2019226220
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和隆
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209692(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072107(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/024904(WO,A1)
【文献】特開2015-188938(JP,A)
【文献】特開2019-098453(JP,A)
【文献】特開2007-307595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工パラメータを含む加工条件と板金の板厚と加工形態との関係を板金の材質毎に記憶する加工条件記憶部と、
板金の材質毎に記憶された加工条件と板金の板厚と加工形態との関係を参照しつつ、未登録の板金に近い材質の板金の加工条件であって、前記未登録の板金の加工形態と同じ加工形態でかつ前記未登録の板金と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択する加工条件選択部と、
選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機を制御して前記未登録の板金に対して加工試験を行う溶接制御部と、
前記レーザ溶接機の加工ヘッド周辺の温度を検出する温度センサと、
選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、前記温度センサからの検出結果に基づいて、前記未登録の板金の加工試験の良否を判定する加工判定部と、
前記未登録の板金の加工試験
が良好であると判定されるときのいずれかの加工パラメータを特定して
、前記未登録の板金の加工条件を前記加工条件記憶部に登録する加工条件登録部と、
を備えたことを特徴とするレーザ溶接システム。
【請求項2】
板金の材質毎に記憶された加工パラメータを含む加工条件と板金の板厚と加工形態との関係を参照しつつ、未登録の板金に近い材質の板金の加工条件であって、前記未登録の板金の加工形態と同じ加工形態でかつ前記未登録の板金と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択し、
選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機を制御して前記未登録の板金に対して加工試験を行い、
選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、温度センサで検出した前記レーザ溶接機の加工ヘッド周辺の温度に基づいて、前記未登録の板金の加工試験の良否を判定し、
前記未登録の板金の加工試験
が良好であると判定されるときのいずれかの加工パラメータを特定して前記未登録の板金の加工条件を加工条件記憶部に登録することを特徴とする加工条件登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金に対してレーザ溶接を行うためのレーザ溶接システム、及び未登録の板金の加工条件を登録するための加工条件登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接システムは、板金に対してレーザ溶接を行うレーザ溶接機と、様々な加工データ等を記憶するデータベースとを備えている。データベースには、複数の板金の加工条件が板金の材質毎、板金の板厚毎、及び加工形態毎に登録されている。加工条件には、加工速度、レーザビーム(レーザ光)の出力、レーザビームの周波数、レーザビームのデューティ比、シールドガスの圧力等が含まれる。また、レーザ溶接システムは、選択した加工条件に基づいて、レーザ溶接機を制御する制御装置を備えている。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、データベースに加工条件が登録されていない未登録の板金に対してレーザ溶接を行う場合がある。このような場合には、レーザ溶接システムのユーザが加工試験専門の技術者に未登録の板金について加工試験を依頼し、その技術者が未登録の板金に適した加工条件を見出している。未登録の板金に適した加工条件は、加工条件記憶部としてのデータベースに登録される。
【0006】
しかしながら、未登録の板金に適した加工条件を見出すための作業は熟練を要し、非常に厄介である。そのため、未登録の板金に適した加工条件をデータベースに登録するまでに多くの時間を要し、様々な板金のレーザ溶接を早期に開始することは困難であるとう問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前述の問題を解決するため、加工試験専門の技術者に頼ることなく、未登録の板金に適した加工条件を見出すことができる、新規なレーザ溶接システム及び加工条件登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1実施形態に係るレーザ溶接システムは、加工パラメータを含む加工条件と板金の板厚と加工形態との関係を板金の材質毎に記憶する加工条件記憶部と、板金の材質毎に記憶された加工条件と板金の板厚と加工形態との関係を参照しつつ、未登録の板金に近い材質の板金の加工条件であって、前記未登録の板金の加工形態と同じ加工形態でかつ前記未登録の板金と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択する加工条件選択部と、選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機を制御して前記未登録の板金に対して加工試験(加工試験としてのレーザ溶接)を行う溶接制御部と、前記レーザ溶接機の加工ヘッド周辺の温度を検出する温度センサと、選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、前記温度センサからの検出結果に基づいて、前記未登録の板金の加工試験の良否を判定する加工判定部と、前記未登録の板金の加工試験が良好であると判定されるときのいずれかの加工パラメータ(加工パラメータの値)を特定して、前記未登録の板金の加工条件を前記加工条件記憶部に登録する加工条件登録部と、を備える。
【0012】
第1実施態様に係るレーザ溶接システムによると、前記加工条件選択部は、前記未登録の板金に近い材質の板金の加工条件であって、前記未登録の板金の加工形態と同じ加工形態でかつ前記未登録の板金と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択する。次に、前記溶接制御部は、選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機を制御して前記未登録の板金に対して加工試験を行う。前記温度センサは、前記レーザ溶接機の加工ヘッド周辺の温度を検出する。前記加工判定部は、選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、前記温度センサからの検出結果に基づいて、前記未登録の板金の加工試験の良否を判定する。そして、前記加工条件登録部は、前記未登録の板金の加工試験が良好であると判定されるときのいずれかの加工パラメータを特定して、前記未登録の板金の加工条件を前記加工条件記憶部に登録する。
【0013】
つまり、第1実施形態に係るレーザ溶接システムによると、加工試験専門の技術者に頼ることなく、前記未登録の板金に適した加工条件を見出して、前記未登録の板金に適した加工条件を前記加工条件記憶部に登録することができる。
【0014】
第2実施形態に係る加工条件登録方法においては、板金の材質毎に記憶された加工パラメータを含む加工条件と板金の板厚と加工形態との関係を参照しつつ、未登録の板金に近い材質の板金の加工条件であって、前記未登録の板金の加工形態と同じ加工形態でかつ前記未登録の板金と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択し、選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機を制御して前記未登録の板金に対して加工試験(加工試験としてのレーザ溶接)を行い、選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、温度センサで検出した前記レーザ溶接機の加工ヘッド周辺の温度に基づいて、前記未登録の板金の加工試験の良否を判定し、前記未登録の板金の加工試験が良好であると判定されるときのいずれかの加工パラメータを特定して前記未登録の板金の加工条件を加工条件記憶部に登録する。
【0015】
第2実施形態に係る加工条件登録方法によると、加工試験専門の技術者に頼ることなく、前記未登録の板金に適した加工条件を見出して、前記未登録の板金に適した加工条件を前記加工条件記憶部に登録することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、未登録の板金に適した加工条件を加工条件記憶部に登録するまでの時間を短縮して、様々な板金のレーザ溶接を早期に開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るレーザ溶接システムの主要部の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るレーザ溶接システムの制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、板金の材質がA5052である場合における加工条件テーブルを示す図である。
【
図4】
図4(a)は、突き合わせた状態の未登録の板金に対して加工試験を行う前の様子を示す斜視図である。
図4(b)は、突き合わせた状態の未登録の板金に対して加工試験を行った後の様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、直角に合わせた状態の未登録の板金に対して加工試験を行う前の様子を示す斜視図である。
図5(b)は、直角に合わせた状態の未登録の板金に対して加工試験を行った後の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。
【0019】
なお、本願の明細書において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「X軸方向」とは、水平方向の1つであって、本発明の実施形態にあっては左右方向のことである。「Y軸方向」とは、X軸方向に直交する水平方向の1つであって、本発明の実施形態にあっては前後方向のことである。「Z軸方向」とは、鉛直方向(上下方向)のことである。また、図面中、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接システム10は、例えば突き合わせた板金Wに対してレーザ溶接を行うための加工システムである。レーザ溶接システム10は、板金Wを載置する載置台12を備えており、載置台12の適宜位置には、板金Wを載置台12に対してセットするための治具(図示省略)が設けられている。
【0021】
レーザ溶接システム10は、板金Wに対してレーザ溶接を行うレーザ溶接機14を備えており、レーザ溶接機14は、溶接ロボット16を主要な構成要素としている。溶接ロボット16は、載置台12の後方に設置したガイドフレーム18にX軸方向へ移動可能に設けられている。また、溶接ロボット16は、多関節のロボットアーム20を備えており、ロボットアーム20の先端部には、板金Wに向かってレーザビーム(レーザ光)を照射する筒状の加工ヘッド22が設けられている。加工ヘッド22は、ロボットアーム20の動作によってX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向へ移動する。レーザ溶接機14は、レーザビームを発振(出力)するファイバレーザ発振器又はYAGレーザ発振器等のレーザ発振器24を備えており、レーザ発振器24は、加工ヘッド22に光学的に接続されている。
【0022】
加工ヘッド22の外側には、反射板(熱伝導板)26が設けられており、反射板26は、純銅又は銅合金からなる。反射板26の適宜位置には、加工ヘッド22周辺の温度を検出する温度センサ28が設けられている。温度センサ28によって検出される温度が低い程、スパッタの量が少なく、板金Wのレーザ溶接が良好である。また、加工ヘッド22の適宜位置には、レーザ溶接に生じた粉塵を取入れる粉塵ダクト30が設けられている。粉塵ダクト30には、その内部に取入れた粉塵の量(粉塵量)を検出する粉塵量検出器32が接続されている。粉塵量検出器32によって検出される粉塵量が少ない程、スパッタの量が少なく、板金Wのレーザ溶接が良好である。
【0023】
図2に示すように、レーザ溶接システム10は、様々な加工データ等を記憶するデータベース34を備えている。データベース34には、複数の板金Wの加工条件が板金Wの材質毎、板金Wの板厚毎、及び加工形態毎に登録されており、データベース34は、加工条件記憶部36としての機能を有する。ここで、加工条件には、加工速度、レーザビームの出力、レーザビームの周波数、レーザビームのデューティ比、シールドガスの圧力、レーザビームの焦点位置、レーザビームのビームパラメータ積(Beam Parameter Products)、ウィービング速度、フィラーワイヤの供給速度が含まれる。なお、加工条件は、加工速度等の複数の要素に限定されるものでなく、加工速度等の複数の要素から一部の要素を削除したり、他の要素を追加したりしてもよい。
【0024】
図2及び
図3に示すように、加工条件記憶部36は、加工パラメータを含む加工条件と板金Wの板厚と加工形態との関係を示す加工条件テーブルTを板金Wの材質毎に記憶する。そして、加工条件記憶部36に記憶された様々な加工条件テーブルTのうち、一例として、板金Wの材質が材料記号A5052のアルミニウム合金である場合の加工条件テーブルT(A5052)について簡単に説明すると、次のようになる。
【0025】
図3に示すように、加工条件テーブルT(A5052)中における第1加工形態は、例えば、板金W(
図1参照)の溶接部の美観を重視した加工形態である。第1加工形態においては、加工条件のうち、加工速度、レーザビームの出力、レーザビームの周波数、レーザビームのデューティ比、及びシールドガスの圧力がそれぞれ固定値として設定されている。
図3の加工条件テーブルT(A5052)中における「△」は、固定値であることを表している。第1加工形態においては、ウィービング速度及びフィラーワイヤの供給速度がそれぞれゼロとして設定されている。第1加工形態においては、レーザビームの焦点位置が加工パラメータα
1として設定されており、レーザビームのビームパラメータ積が加工パラメータβ
1として設定されている。
【0026】
加工条件テーブルT(A5052)中における第2加工形態は、例えば、板金Wの溶接強度を重視した加工形態である。第2加工形態においては、加工条件のうち、レーザビームの周波数、レーザビームのデューティ比、シールドガスの圧力、及びレーザビームのビームパラメータ積がそれぞれ固定値として設定されている。
図3の加工条件テーブルT(A5052)中における「□」は、固定値であることを表している。第2加工形態においては、加工速度が加工パラメータγ
1として設定されており、レーザビームの出力が加工パラメータδ
1として設定されている。レーザビームの焦点位置が加工パラメータα
2として設定され、ウィービング速度が加工パラメータλ
1として設定されており、フィラーワイヤの供給速度が加工パラメータμ
1として設定されている。
【0027】
加工条件テーブルT(A5052)中における第3加工形態は、例えば、溶接ビードによって板金W間の隙間を埋める加工形態である。第3加工形態においては、加工条件のうち、加工速度、レーザビームの出力、レーザビームの周波数、レーザビームのデューティ比、シールドガスの圧力、及びレーザビームのビームパラメータ積がそれぞれ固定値として設定されている。
図3の加工条件テーブルT(A5052)中における「▽」は、固定値であることを表している。第3加工形態においては、レーザビームの焦点位置が加工パラメータα
3として設定されており、ウィービング速度が加工パラメータλ
2として設定されている。フィラーワイヤの供給速度が加工パラメータμ
2として設定されている。
【0028】
加工条件テーブルT(A5052)中における第4加工形態は、例えば、高速溶接に適した加工形態である。第4加工形態においては、加工条件のうち、レーザビームの周波数、レーザビームのデューティ比、シールドガスの圧力がそれぞれ固定値として設定されている。
図3の加工条件テーブルT(A5052)中における「◇」は、固定値であることを表している。第4加工形態においては、ウィービング速度及びフィラーワイヤの供給速度がそれぞれゼロとして設定されている。第4加工形態においては、加工速度が加工パラメータγ
2として設定されており、レーザビームの出力が加工パラメータδ
2として設定されている。レーザビームの焦点位置が加工パラメータα
4として設定されており、レーザビームのビームパラメータ積が加工パラメータβ
2として設定されている。
【0029】
なお、各加工形態は、突き合わせ継手、角継手等の溶接継手の種類に応じて細分化してもよい。
【0030】
図1及び
図2に示すように、レーザ溶接システム10は、レーザ溶接機14(溶接ロボット16及びレーザ発振器24)を制御する制御装置38を備えており、制御装置38は、コンピュータによって構成されている。制御装置38は、加工プログラム及び加工試験プログラム等を記憶するメモリと、加工プログラム及び加工試験プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを有している。制御装置38には、温度センサ28、粉塵量検出器32、及びデータベース34が接続されている。また、制御装置38には、様々な加工データ等を入力する入力部40が接続されており、入力部40は、タッチパネル、キーボード、及びマウス等からなる。入力部40は、オペレータの入力操作に基づいて、データベース34(加工条件記憶部36)に加工条件が登録されていない未登録の板金Wの材質、板厚、及び加工形態等を入力する。
【0031】
制御装置38のCPUは、加工試験プログラムを実行することにより、加工条件選択部42、溶接制御部44、加工判定部46、及び加工条件登録部48としての機能を有する。そして、制御装置38のCPUの各機能の具体的な内容は、次の通りである。
【0032】
図1から
図3に示すように、加工条件選択部42は、板金の材質毎に記憶された加工条件テーブルTの中から、入力された未登録の板金Wの材質に近い材質の板金の加工条件テーブルTを選択する。加工条件選択部42は、選択した加工条件テーブルTを参照しつつ、入力された未登録の板金Wの加工形態と同じ加工形態で、かつ入力された未登録の板金Wの板厚と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択する。例えば、未登録の板金Wの材質が材料記号A5054のアルミニウム合金であって、未登録の板金Wの加工形態が第1加工形態であって、未登録の板金Wの板厚が0.8mmである場合に、加工条件選択部42は、加工条件テーブルT(A5052)を選択する。加工条件選択部42は、加工条件テーブルT(A5052)を参照しつつ、加工形態が第1加工形態に設定されかつ板金Wの板厚が1.0mmに設定された所定の加工条件を選択する。ここでは0.8mmに最も近い1.0mmの加工条件を選択しているが、例えば0.8mmに近い2つの板厚の加工条件を選択してもよい。
【0033】
溶接制御部44は、選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機14を制御して未登録の板金Wに対して加工試験(加工試験としてのレーザ溶接)を行う。例えば、加工条件テーブルT(A5052)中の前記所定の加工条件が選択された場合に、溶接制御部44は、前記所定の加工条件に基づいて、加工パラメータα1、β1としてのレーザビームの焦点位置、ビームパラメータ積を変化させながら、レーザ溶接機14を制御して未登録の板金Wに対して加工試験を行う。なお、変化させる加工パラメータの値、及び加工試験の試験時間は、加工条件毎に予め設定されている。
【0034】
なお、未登録の板金Wに対して加工試験を行う前に、例えば、
図4(a)に示すように、未登録の板金Wを突き合わせた状態で載置台12(
図1参照)に対してセットする。又は、
図5(a)に示すように、未登録の板金Wを直角に合わせた状態で載置台12に対してセットする。未登録の板金Wに対して加工試験を行うと、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、未登録の板金Wに複数の接合部Wjが形成される。
【0035】
図1から
図3に示すように、加工判定部46は、選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、温度センサ28及び粉塵量検出器32からの検出結果に基づいて、未登録の板金Wの加工試験の良否を総合的に判定する。例えば、加工条件テーブルT(A5052)中の前記所定の加工条件が選択された場合に、加工判定部46は、加工パラメータα
1、β
1としてのレーザビームの焦点位置、ビームパラメータ積が変化する度に、温度センサ28によって検出される温度が温度閾値を超えているか否かについて判定する。加工判定部46は、加工パラメータα
1、β
1としてのレーザビームの焦点位置、ビームパラメータ積が変化する度に、粉塵量検出器32によって検出される粉塵量が粉塵量閾値を超えているか否かについて判定する。そして、加工判定部46は、温度センサ28によって検出される温度が温度閾値を超えないで、かつ粉塵量検出器32によって検出される粉塵量が粉塵量閾値を超えないこと条件として、未登録の板金Wの加工試験が良好であると判定する。温度閾値、粉塵量閾値等の判定閾値は、未登録の板金Wの加工試験の良否を判定するために加工条件毎に予め設定されている。
【0036】
なお、加工判定部46は、温度センサ28及び粉塵量検出器32からの検出結果についてそれぞれ重み付けて、未登録の板金Wの加工試験の良否を判定してもよい。加工判定部46は、温度センサ28及び粉塵量検出器32からの検出結果のうちの一方の検出結果のみに基づいて、未登録の板金Wの加工試験の良否を判定してもよい。また、加工判定部46は、カメラ(図示省略)によって撮像された無登録の板金Wの溶接部の画像と、良好な溶接部の参照画像(図示省略)をパターンマッチングにより比較することにより、未登録の板金Wの加工試験の良否を判定してもよい。
【0037】
加工条件登録部48は、未登録の板金Wの加工試験が最も良好であると判定されるときの加工パラメータ(加工パラメータの値)を特定して、未登録の板金Wの加工条件を加工条件記憶部36に登録する。換言すれば、加工条件登録部48は、未登録の板金Wの加工試験の試験結果に基づいて、加工パラメータを特定して未登録の板金Wの加工条件を加工条件記憶部36に登録する。例えば、加工条件テーブルT(A5052)中の前記所定の加工条件が選択された場合に、未登録の板金Wの加工試験が最も良好であると判定されるときの加工パラメータα1、β1としてのレーザビームの焦点位置、ビームパラメータ積を特定して、未登録の板金Wの加工条件を加工条件記憶部36に登録する。
【0038】
加工条件登録部48は、未登録の板金Wの加工試験が最も良好であると判定されるときの加工パラメータの代わりに、良好であると判定されるときのいずれかの加工パラメータを特定してもよい。加工条件登録部48は、加工判定部46の判定結果を用いることなく、作業者が目視によって判断した登録の板金Wの加工試験の試験結果を基づいて、加工パラメータを特定して未登録の板金Wの加工条件を加工条件記憶部36に登録してもよい。
【0039】
続いて、本実施形態に係る加工条件登録方法を含めて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態に加工条件登録方法は、未登録の板金の加工条件を登録するための方法であり、加工条件選択ステップ、溶接制御ステップ、加工判定ステップ、及びを備えている。
【0040】
入力部40は、オペレータの入力操作に基づいて、未登録の板金Wの材質、板厚、及び加工形態を入力する。すると、加工条件選択部42は、入力された未登録の板金Wの材質に近い材質の板金の加工条件テーブルTを選択する。そして、加工条件選択部42は、選択した加工条件テーブルTを参照しつつ、入力された未登録の板金Wの加工形態と同じ加工形態で、かつ入力された未登録の板金Wの板厚と同じ板厚又は近い板厚の加工条件を選択する(加工条件選択ステップ)。
【0041】
その後、 溶接制御部44は、選択された加工条件に基づいて、その加工条件の加工パラメータを変化させながら、レーザ溶接機14を制御して未登録の板金Wに対して加工試験を行う(溶接制御ステップ)。また、加工判定部46は、選択された加工条件の加工パラメータが変化する度に、温度センサ28及び粉塵量検出器32からの検出結果に基づいて、未登録の板金Wの加工試験の良否を総合的に判定する(加工判定ステップ)。そして、加工条件登録部48は、未登録の板金Wの加工試験が最も良好であると判定されるときの加工パラメータ(加工パラメータの値)を特定して、未登録の板金Wの加工条件を加工条件記憶部36に登録する(加工条件登録ステップ)。
【0042】
つまり、本実施形態に係るレーザ溶接システム10によると、加工試験専門の技術者に頼ることなく、未登録の板金Wに適した加工条件を見出して、未登録の板金Wに適した加工条件を加工条件記憶部36に登録することができる。
【0043】
従って、本実施形態によれば、未登録の板金Wに適した加工条件を加工条件記憶部36に登録するまでの時間を大幅に短縮して、様々な板金Wのレーザ溶接を早期に開始することができる。
【0044】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、適宜の変更を行うことにより、その他、様々な態様で実施可能である。そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0045】
10 レーザ溶接システム
12 載置台
14 レーザ溶接機
16 溶接ロボット
18 ガイドフレーム
20 ロボットアーム
22 加工ヘッド
24 レーザ発振器
26 反射板(熱伝導板)
28 温度センサ
30 粉塵ダクト
32 粉塵量検出器
34 データベース
36 加工条件記憶部
38 制御装置
40 入力部
42 加工条件選択部
44 溶接制御部
46 加工判定部
48 加工条件登録部
W 板金
T 加工条件テーブル