(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/12 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2019227929
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香川 元輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 吉希
(72)【発明者】
【氏名】吉久 甫
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】王 文凱
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04589148(US,A)
【文献】実開平03-067194(JP,U)
【文献】実開昭61-160798(JP,U)
【文献】実開平04-083098(JP,U)
【文献】特開平10-211122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を回転自在に支持するための軸部材と、
前記軸部材が挿入され、前記軸部材の長手方向と交差する方向に、前記軸部材に対して相対移動する軸受部材とを有し、
前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面のいずれか一方に、前記相対移動中に前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面の他方に接触する突部が設けられて
おり、
前記突部は、前記相対移動の移動方向に延びたリブである便座装置。
【請求項2】
便座を回転自在に支持するための軸部材と、
前記軸部材が挿入され、前記軸部材の長手方向と交差する方向に、前記軸部材に対して相対移動する軸受部材とを有し、
前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面のいずれか一方に、前記相対移動中に前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面の他方に接触する突部が設けられており、
前記突部は、先細りの形状である便座装置。
【請求項3】
便座を回転自在に支持するための軸部材と、
前記軸部材が挿入され、前記軸部材の長手方向と交差する方向に、前記軸部材に対して相対移動する軸受部材とを有し、
前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面のいずれか一方に、前記相対移動中に前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面の他方に接触する突部が設けられており、
前記突部は、前記軸部材に設けられている便座装置。
【請求項4】
前記突部は、複数設けられている請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器の上面に便座が配置された便器装置が知られている。便器装置は、便座を回転自在に支持する便座装置を備えている。便座は、便器の上面に水平に沿う倒伏姿勢と、便器の上方に立ち上がる起立姿勢とに回転する。
【0003】
下記特許文献1には、倒伏姿勢の便座が、人の着座によって下方に移動し、人が立ち上がると上方に移動する便座装置が記載されている。このような便座装置によれば、着座時の荷重が便器の上面に受けられる。この便座装置は、便座の倒伏姿勢において上下方向に相対移動する軸部材及び軸受部材を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成では、軸部材及び軸受部材が相対移動する際に、軸部材の外周面と軸受部材の内周面とが擦れ合って異音が発生することがある。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、便座が移動する際の異音の発生を抑制できる便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の便座装置は、便座を回転自在に支持するための軸部材と、前記軸部材が挿入され、前記軸部材の長手方向と交差する方向に、前記軸部材に対して相対移動する軸受部材とを有し、前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面のいずれか一方に、前記相対移動中に前記軸部材の外面及び前記軸受部材の内面の他方に接触する突部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】突部と軸受部材の内面とが接触した状態を示す一部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
便器装置10は、
図1に示すように、便器本体11と、便座装置13とを備えている。以下、各構成部材において、便器装置10の設置状態における上側(
図1のZ軸正方向側)を上側、下側(
図1のZ軸負方向側)を下側、便器装置10に着座した状態の人から見て前側(
図1のX軸正方向側)を前側、後側(
図1のX軸負方向側)を後側、右側(
図1のY軸正方向側)を右側、左側(
図1のY軸負方向側)を左側として説明する。
【0010】
便器本体11は、便鉢部12を有している。便鉢部12は、すり鉢状の内面を有している。
【0011】
便座装置13は、
図1及び
図2に示すように、便座14、便蓋15、装置本体16、左右の便座ヒンジ部30A,30B及び便蓋ヒンジ部17を備えている。
【0012】
便座14は、倒伏姿勢と起立姿勢とに回転自在である。倒伏姿勢の便座14は、
図2に示すように、便器本体11の上面に沿って配置される。起立姿勢の便座14は、便器本体11の上方に向けてわずかに後方に傾斜して配置される。
【0013】
便座14は、便座本体部18と、足部19とを有している。便座本体部18は、中心部が開口した環状をなしている。足部19は、便座本体部18の裏面(倒伏姿勢における下面)に突設されている。足部19は、前後方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0014】
便蓋15は、便座14の上面を覆う形状をなしている。便蓋15は、倒伏姿勢と起立姿勢とに回転自在である。倒伏姿勢の便蓋15は、便座14及び便器本体11の開口を塞ぐ。起立姿勢の便座14は、便座14及び便器本体11の開口を開放する。
【0015】
装置本体16には、便器洗浄機構、局部洗浄機構などの図示しない機能部が備えられている。便蓋ヒンジ部17は、便蓋15を回転自在に保持する。便蓋ヒンジ部17の回転軸は左右方向に延びている。
【0016】
便座ヒンジ部30A,30Bは、便座14を回転自在に保持する。便座ヒンジ部30A,30Bの回転軸は左右方向に延びている。便座ヒンジ部30A,30Bは、便座14及び装置本体16の左右両端部に設けられている。左右の便座ヒンジ部30のうち一方の便座ヒンジ部30Aは、駆動側ヒンジ部であり、他方の便座ヒンジ部30Bは、支持側ヒンジ部である。駆動側の便座ヒンジ部30Aは、
図3に示すように、軸受部材31と、弾性部材32と、軸部材33とを有している。
【0017】
軸受部材31は、便座14に設けられている。軸受部材31は、便座本体部18の後端部において後方に突出している。軸受部材31には、軸部材33が嵌合する軸受孔35が形成されている。軸受孔35は、水平方向に開口している。倒伏姿勢の便座14において軸受孔35を左右方向から見た形状は、上下方向に長い形状をなしている。倒伏姿勢の便座14において軸受部材31の内面は、前後一対の第1内面36と、上下一対の第2内面37とを有している。倒伏姿勢の便座14において前後一対の第1内面36は、上下方向に延びている。前後一対の第1内面36は、互いに平行である。第1内面36は、倒伏姿勢の便座14が上下動する際に、軸部材33と接触する接触面である。第2内面37は、弧状をなしている。軸受部材31には、弾性部材32が取り付けられる取付部38が設けられている。
【0018】
弾性部材32は、弾性変形可能な部材であり、例えばエラストマーによって形成されている。弾性部材32は、外郭部39と、軸保持部41とを有している。外郭部39は、円環状をなしている。軸保持部41は、軸部材33の外形に沿った縦長の環状をなしている。軸保持部41には、軸部材33が挿通される。これによって、軸保持部41は軸部材33を保持する。外郭部39と軸保持部41とは連結部42によって連結されている。
【0019】
軸部材33は、装置本体16に設けられている。軸部材33は、スローダウンユニット34から回転軸に沿って突出している。軸部材33は、弾性部材32の軸保持部41を通って軸受孔35に嵌め込まれる。
【0020】
軸部材33は、合成樹脂製(ナイロン樹脂やPBT樹脂など)である。軸部材33の材質は、軸受部材31の材質よりも高い強度を有している。便座14が倒伏姿勢であるときの軸部材33を左右方向から見た形状は、上下方向に長い形状をなしている。便座14が倒伏姿勢であるときの軸部材33の上下方向の寸法は、軸受孔35の上下方向の寸法よりも小さい。
【0021】
便座14が倒伏姿勢であるときの軸部材33の外面は、前後一対の第1外面43と、上下一対の第2外面44とを有している。前後一対の第1外面43は、上下方向に延びている。前後一対の第1外面43は、互いに平行である。第1外面43は、便座14が上下動する際に、軸受部材31と接触する接触面である。第2外面44は、弧状をなしている。
【0022】
軸部材33及び軸受部材31は、便座14が倒伏姿勢であるときに、人が離着座すると上下方向(回転軸と交差する方向)に相対移動する。軸部材33の第1外面43には、相対移動中に軸受部材31の第1内面36に接触する突部45が設けられている。突部45は、前後の第1外面43の両方に設けられている。前後の第1外面43において突部45は、回転軸を中心に180度反対向きで突出している。前側の第1外面43に設けられた突部45と、後側の第1外面43に設けられた突部45とは、形状及び位置が等しくされている。
【0023】
突部45は、
図4に示すように、上下方向(相対移動の移動方向)に延びたリブである。突部45は、第1外面43の上端近傍から下端近傍まで直線状に延びている。突部45は、左右方向に等間隔で配置されている。全ての突部45は同形状をなしている。
【0024】
突部45は、先細りの形状である。突部45の先端側(回転軸から遠い側)の左右方向の寸法は、突部45の基端側(回転軸に近い側)の左右方向の寸法よりも小さい。突部45の断面(便座14が倒伏姿勢であるときの水平な断面)の形状は、
図5に示すように、球体を半分にわけた半球状をなしている。突部45の外面は、円弧面である。
【0025】
各突部45の突出端は、第1内面36に接触する接触部46である。接触部46は、上下方向に線状をなして延びている。第1外面43のうち接触部46を除く部分は、第1内面36に接触しない非接触部47である。便座14の姿勢が起立姿勢及び倒伏姿勢のいずれの姿勢であっても、接触部46は第1内面36に接触し、非接触部47は第1内面36から離れている。
【0026】
便座14は、スローダウンユニット34によって、起立姿勢からゆっくりと倒伏姿勢になる。この倒伏姿勢において便座14の後側の足部19は便器本体11の上面からわずかに離れている。着座者が便座14に着座すると、便座14に下向きの力が作用し、弾性部材32が弾性変位して便座14が下がり、後側の足部19が便器本体11の上面に当接する。着座者が便座14から立ち上がると、便座14に作用していた下向きの力が開放され、弾性部材32の弾性力により便座14が上がり、後側の足部19が便器本体11の上面から離れる。このように便座14が上方及び下方に移動するとき、軸部材33の突部45の接触部46と軸受部材31の第1内面36とが擦れ合う。突部45の接触部46と第1内面36との接触は線接触であるから、第1内面と第1外面とが面接触する場合よりも接触面積が減る。これによって、軸部材33と軸受部材31とが擦れ合うことによる異音の発生が抑制される。
【0027】
上記のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。便座装置13は、便座14を回転自在に支持する。便座装置13は、上下方向に相対移動する軸部材33及び軸受部材31を有している。軸部材33の第1外面43に、相対移動中に軸受部材31の第1内面36に接触する突部45が設けられている。この構成によれば、軸部材33の外面と軸受部材31の内面とが面接触する場合に比べて相対移動中に接触する面積が減るから、便座14が移動する際の異音の発生を抑制できる。
【0028】
突部45は、上下方向に延びたリブである。この構成によれば、突部45の上下方向の強度が高いから、突部45の耐久性を高めることができる。
【0029】
突部45は、先細りの形状である。この構成によれば、突部45と軸受部材31との接触面積を小さくでき、かつ突部45の強度を確保できる。したがって、異音の発生を抑制し、突部45の耐久性を高めることができる。
【0030】
突部45は、軸部材33の外面に設けられている。この構成によれば、軸受部材31の内面に突部45を形成する場合と比べて容易に突部45を形成できる。
【0031】
突部45は、複数設けられている。この構成によれば、軸受部材31との接触によって作用する力が複数の突部45に分散するから、各突部45に作用する力を低減できる。
【0032】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、突部45の形状を例示した。これに限らず、突部の形状は変更できる。例えば突部は、シボ加工によって形成されたシボや、ヘアライン加工によって形成されたラインなどであってもよい。
(2)上記実施形態では、一つの第1外面43に複数の突部45が設けられている。これに限らず、突部は、一つの第1外面に1のみでもあってもよい。
(3)上記実施形態では、複数の突部45が左右方向に並んで配置されている。これに限らず、複数の突部を上下方向に並んで配置してもよい。
(4)上記実施形態では、突部45は前後の第1外面43の両面に設けられている。これに限らず、突部は前後の第1外面の片面のみに設けてもよい。
(5)上記実施形態では、突部45の断面は半球状をなしている。これに限らず、突部の断面形状は変更できる。例えば突部の断面形状は、三角形状、四角形状、台形状などであってもよい。
(6)上記実施形態では、突部45は軸部材33の外面に備えられている。これに限らず、突部は軸受部材の内面に形成してもよい。
(7)上記実施形態では、便座ヒンジ部30はスローダウンユニット34を備えている。これに限らず、便座ヒンジ部の駆動ユニットは、電動開閉ユニットであってもよい。
(8)上記実施形態では、突部45は上下方向に延びた形状をなしている。これに限らず、突部は点状であってもよい。
(9)上記実施形態では、駆動側のヒンジ部30Aに突部45を設けている。突部は、支持側のヒンジ部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…便器装置、11…便器本体、13…便座装置、14…便座、31…軸受部材、33…軸部材、36…第1内面(軸受部材の内面)、43…第1外面(軸部材の外面)、45…突部