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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 17/00 20220101AFI20231130BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20231130BHJP
   E03C 1/05 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F24D17/00 L
F24D17/00 B
E03C1/044
E03C1/05
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019234878
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103061
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康明
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-015423(JP,A)
【文献】特開2018-071840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/00-1/20,4/00-4/06
F24D17/00
E03C1/044,1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯源から湯水が供給される給湯路及び給水源から水が供給される給水路が接続され、給湯路及び給水路からそれぞれ供給される湯水及び水を混合する混合部、給湯路に設けられ、給湯源から供給される湯水の流量を制御する湯量制御弁、並びに給水路に設けられ、給水源から供給される水の流量を制御する水量制御弁を有する電子水栓と、
給湯源からの湯水の給湯圧及び給水源からの水の給水圧を昇圧可能な昇圧手段と、
混合部から複数の出湯先に適温の混合湯水が供給されるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御する制御部と、を有する給湯システムであって、
混合部から混合湯水が供給される出湯路であって、出湯路から分岐して各出湯先に混合湯水を供給する分岐路よりも上流側には、混合湯水の供給温度を検出する温度検出部と、混合湯水の供給圧力を検出する圧力検出部とが設けられ、
制御部は、湯量制御弁の開度が最大開度位置にあるときに圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力より低くなると、昇圧手段により給湯圧及び給水圧を昇圧させ、
湯量制御弁の開度が最大開度位置にないときに圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力より低くなると、温度検出部で検出される供給温度が所定の設定温度になり、且つ圧力検出部で検出される供給圧力が所定の設定圧力になるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御する給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯システムにおいて、
制御部は、全ての出湯先の不使用状態から少なくとも1つの出湯先の使用状態に変化する場合、湯量制御弁及び水量制御弁の開度を最小開度位置または全閉位置から制御する給湯システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給湯システムにおいて、
制御部は、設定温度の混合湯水が設定圧力で少なくとも1つの出湯先に供給されているときに、圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力に対して増減すると、供給圧力の増減前における混合部に供給される湯水と水との混合割合が維持されるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御する給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯源から供給される湯水と給水源から供給される水とを混合部で混合して、混合湯水を複数の出湯先に供給する電子水栓を備える給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの給湯装置から複数の出湯先に湯水を供給する場合、同時に複数の出湯先で湯水が使用されると、配管の圧力損失の増加により各出湯先にかかる圧力が減少するので、各出湯先への湯水の流量が減少する。そのため、給湯装置から出湯される湯水を複数の分岐管にそれぞれ供給するためのヘッダを設けるとともに、多量の湯水が要求されるシャワーなどの特定の出湯先以外の出湯先とヘッダとを接続する分岐管に流量調節手段を設け、特定の出湯先で湯水が使用されると、流量調節手段によって他の出湯先への流量を絞る給湯システムが提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の給湯システムによれば、特定の出湯先への湯水の流量は確保できるものの、他の出湯先へ供給される湯水の流量が減少するため、他の出湯先を使用する使用者に不快感を与える。
【0003】
また、加熱量を調整可能な給湯装置を有する場合、給湯装置から湯水が出湯される給湯経路に、出湯先への湯水の供給圧力を調整可能な圧力調整弁と、湯水の供給圧力を検出する圧力センサとを設け、圧力センサで検出される供給圧力が所定の圧力に維持されるように圧力調整弁を制御する給湯システムも提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2のような給湯システムでは、給湯装置で加熱量を調整して、設定温度になるように湯水を加熱することができるため、給湯装置に供給される給水量を増加させて湯水の供給圧力を増加させても、各出湯先への湯水の供給温度を設定温度に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-156876号公報
【文献】特開2018-71840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、病院やホテルなどの大型の施設では、多数の出湯先に湯水を供給するため、給湯源として湯水の給湯温度が固定された給湯装置が用いられている。このような給湯温度が固定された給湯装置を有する給湯システムでは、出湯先への湯水の供給温度を一定の温度とするために、給湯装置から供給される湯水と給水源から供給される水とを混合部で混合して、所定の設定温度の混合湯水を生成し、各出湯先に混合湯水を供給する電子水栓が設けられる場合がある。
【0006】
しかしながら、上記電子水栓を備える給湯システムで特許文献2のように供給圧力を変更しようとすると、圧力調整弁が必要になり、部品点数が増加するだけでなく、それを制御する機能がコントローラに必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電子水栓を備える給湯システムにおいて、簡易な構成により、各出湯先の使用状態が変化した場合でも、各出湯先に設定温度の混合湯水を一定の供給圧力で供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
給湯源から湯水が供給される給湯路及び給水源から水が供給される給水路が接続され、給湯路及び給水路からそれぞれ供給される湯水及び水を混合する混合部、給湯路に設けられ、給湯源から供給される湯水の流量を制御する湯量制御弁、並びに給水路に設けられ、給水源から供給される水の流量を制御する水量制御弁を有する電子水栓と、
給湯源からの湯水の給湯圧及び給水源からの水の給水圧を昇圧可能な昇圧手段と、
混合部から複数の出湯先に適温の混合湯水が供給されるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御する制御部と、を有する給湯システムであって、
混合部から混合湯水が供給される出湯路であって、出湯路から分岐して各出湯先に混合湯水を供給する分岐路よりも上流側には、混合湯水の供給温度を検出する温度検出部と、混合湯水の供給圧力を検出する圧力検出部とが設けられ、
制御部は、湯量制御弁の開度が最大開度位置にあるときに圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力より低くなると、昇圧手段により給湯圧及び給水圧を昇圧させ、
湯量制御弁の開度が最大開度位置にないときに圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力より低くなると、温度検出部で検出される供給温度が所定の設定温度になり、且つ圧力検出部で検出される供給圧力が所定の設定圧力になるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御する給湯システムが提供される。
【0009】
上記給湯システムによれば、混合部から混合湯水が供給される出湯路に、混合湯水の供給圧力を検出する圧力検出部が設けられているから、各出湯先の使用状態が変化したときの混合湯水の供給圧力の増減を検出することができる。そして、上記給湯システムによれば、各出湯先の使用状態が変化して、出湯路を流通する混合湯水の供給圧力が変化しても、出湯路に設けられた温度検出部で検出される供給温度が所定の設定温度になり、且つ圧力検出部で検出される供給圧力が所定の設定圧力になるように、湯量制御弁及び水量制御弁の開度が制御されるから、混合湯水の供給圧力の変化に応じて、混合部に供給される湯水の流量と水の流量とが増減される。これにより、簡易な構成により、設定温度の混合湯水を一定の供給圧力で供給することができる。
また、上記給湯システムによれば、高層施設など給湯源からの湯水の給湯圧及び給水源からの水の給水圧が比較的低い環境下であっても、昇圧手段によって各出湯先への混合湯水の供給圧力を一定に保持することができる。
【0010】
好ましくは、上記給湯システムにおいて、
制御部は、全ての出湯先の不使用状態から少なくとも1つの出湯先の使用状態に変化する場合、湯量制御弁及び水量制御弁の開度を最小開度位置または全閉位置から制御する。
【0011】
全ての出湯先の不使用状態から少なくとも1つの出湯先の使用状態に変化する場合、出湯路内に残留する湯水が出湯先に供給される。従って、全ての出湯先の不使用状態で湯量制御弁及び水量制御弁の開度を最小開度位置とすれば、少なくとも1つの出湯先で使用が開始されると、混合部から混合湯水が出湯路に直ちに供給されるから、出湯先に混合湯水を連続して供給することができる。また、全ての出湯先の不使用状態で湯量制御弁及び水量制御弁の開度を全閉位置とすれば、少なくとも1つの出湯先で使用が開始されると、出湯路内の湯水の減少により圧力検出部で検出される圧力が大きく変化するから、確実に出湯先の使用開始を検出することができる。
【0012】
好ましくは、上記給湯システムは、さらに、
制御部は、設定温度の混合湯水が設定圧力で少なくとも1つの出湯先に供給されているときに、圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力に対して増減すると、供給圧力の増減前における混合部に供給される湯水と水との混合割合が維持されるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御する。
【0013】
設定温度の混合湯水が設定圧力で少なくとも1つの出湯先に供給されているときに、不使用状態の出湯先で使用が開始されたり、使用状態の複数の出湯先の一部の出湯先で使用が中止されたりすると、圧力検出部で検出される供給圧力が変化する。一方、混合部から出湯路に供給される混合湯水の供給温度は混合部に供給される湯水と水との混合割合によって決定される。従って、圧力検出部で検出される供給圧力が設定圧力に対して増減したとき、供給圧力の増減前における混合部に供給される湯水と水との混合割合が維持されるように湯量制御弁及び水量制御弁の開度を制御すれば、供給圧力の増減前の湯水と水との混合割合が維持された状態で、供給圧力を増減させることができる。これにより、各出湯先の使用状態が変化しても、設定温度の混合湯水を設定圧力で使用中の全ての出湯先に供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、給湯源から供給される湯水と給水源から供給される水とを混合部で混合して、混合湯水を複数の出湯先に供給する電子水栓を備える給湯システムにおいて、簡易な構成により、各出湯先の使用状態に関わらず、設定温度の混合湯水を設定圧力で各出湯先に供給することができる。従って、本発明によれば、各出湯先の使用状態に起因する使用者の不快感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施例1に係る給湯システムの概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施例1に係る給湯システムにおける制御動作の一部を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施例1に係る給湯システムにおける制御動作の一部を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施例2に係る給湯システムの概略構成図である。
図5図5は、本発明の実施例2に係る給湯システムにおける制御動作の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、実施例1に係る給湯システムを示す概略構成図である。図1に示すように、給湯システムは、給湯源である給湯装置1及び給水源である水道管2からそれぞれ供給される湯水及び水を混合して、混合湯水を複数の出湯先3に供給する電子水栓4を備える。
【0019】
図示しないが、給湯装置1は、フィンチューブ型の熱交換器と、熱交換器を加熱するバーナとを備え、水道管2から供給される水を加熱しつつ、予め設定された給湯温度(例えば、60℃)の湯水を電子水栓4の給湯路41に供給するように構成されている。また、給湯装置1は、水道管2に接続される入水管に、水道管2から給湯装置1に導入される水の流量を検出する流量センサが設けられており、流量センサの検出流量が一定以上になると、電子水栓4への給湯を開始するように構成されている。なお、上記のような給湯装置としては、カランやシャワーなどの出湯先3に湯を供給する給湯器、温水ファンヒータや温水床暖房機などの出湯先3との間で湯を循環させる暖房用熱源機、給湯機能及び暖房機能を兼備する給湯暖房熱源機等が挙げられる。
【0020】
電子水栓4は、給湯装置1から湯水が供給される給湯路41と、水道管2から水が供給される給水路42と、給湯路41及び給水路42からそれぞれ供給される湯水及び水を混合する混合部である混合槽40と、混合槽40から混合湯水が供給される出湯路43と、出湯路43に供給された混合湯水を各出湯先3に供給する分岐路44とを備える。
【0021】
給湯路41には、給湯装置1から供給される湯水の流量を制御する湯量制御弁SV1が設けられており、給水路42には、水道管2から供給される水の流量を制御する水量制御弁SV2が設けられている。従って、これら湯量制御弁SV1の開度と水量制御弁SV2の開度との開度比率を調整することによって、混合槽40に供給される湯水と水との混合割合が変更される。
【0022】
出湯路43には、上流側から順に、出湯路43内の混合湯水の供給圧力を検出する圧力検出部である圧力センサ47と、出湯路43内の混合湯水の供給温度を検出する温度検出部である出湯温センサ46とが設けられている。なお、出湯温センサ46は、出湯路43における圧力センサ47の上流側に設けられてもよい。
【0023】
分岐路44は、出湯路43における出湯温センサ46及び圧力センサ47の配設部よりも下流側から分岐して、各出湯先3に接続されている。従って、電子水栓4から各出湯先3への混合湯水の供給温度は、出湯温センサ46によって検出され、電子水栓4から各出湯先3への混合湯水の供給圧力は、圧力センサ47によって検出される。
【0024】
電子水栓用リモコン5は、出湯先3への混合湯水の供給温度を設定操作するための温度設定キー51と、出湯先3への混合湯水の供給圧力を設定操作するための圧力設定キー52と、温度設定キー51で設定された温度(設定温度)Tsや圧力設定キー52で設定された圧力(設定圧力)Psを表示する表示部50とを備えている。なお、温度設定キー51は、プラスキー及びマイナスキーにより構成されており、温度設定キー51を操作することで、設定温度Tsを所定単位毎(例えば、39℃、40℃、41℃・・・)に増減させることができる。同様に、圧力設定キー52も、アップキー及びダウンキーにより構成されており、圧力設定キー52を操作することで、設定圧力Psを所定単位毎(例えば、低、中、高)に増減させることができる。
【0025】
湯量制御弁SV1、水量制御弁SV2、出湯温センサ46、圧力センサ47、及び電子水栓用リモコン5はそれぞれ、電子水栓4の内部に組み込まれた流量制御回路400に電気配線を通じて接続されている。
【0026】
図示しないが、流量制御回路400は、出湯温センサ46で検出される混合湯水の供給温度T1の検出値と電子水栓用リモコン5の設定温度Tsとを比較する供給温度判定部、圧力センサ47で検出される混合湯水の供給圧力P1の検出値と電子水栓用リモコン5の設定圧力Psとを比較する供給圧力判定部、上記供給温度T1や供給圧力P1に応じて図示しないステッピングモータで弁軸を駆動することによって湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度をそれぞれ最小開度位置(閉リミッタ位置)から最大開度位置(開リミッタ位置)まで制御する流量制御部等の回路構成を有している。従って、流量制御回路400が湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を制御する制御部を構成する。
【0027】
次に、図2及び図3を参照して、上記給湯システムの制御動作について説明する。ここでは、給湯装置1からの湯水の給湯温度は「60℃」、電子水栓用リモコン5の設定温度Tsは「40℃」、設定圧力Psは「中」に相当する値に予め設定されているものとする。また、通常、全ての出湯先3の水栓が閉栓されている全ての出湯先3が不使用状態のとき、出湯路43内の水圧は設定圧力Psよりも高い水道管2にかかる所定のリミット圧力Paまで上昇しており、出湯路43内の混合湯水の温度は放熱によって設定温度Tsよりも低くなっている。また、全ての出湯先3が不使用状態のときの湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度(待機位置)はいずれも、少なくとも1つの出湯先3で使用が開始されたときに給湯路41及び給水路42から混合槽40に少量の水が通水可能なように最小開度位置に設定されている。なお、以下の制御動作における、供給温度T1と設定温度Tsとの対比及び供給圧力P1と設定圧力Psとの対比はそれぞれ、使用環境や流量の変動などを考慮して、所定の温度範囲内及び所定の圧力範囲内にあるかどうかから行われるように設定されている。
【0028】
図2に示すように、全ての出湯先3の不使用状態から少なくとも1つの出湯先3の水栓(例えば、浴室のシャワー用混合栓)が開栓されると、その出湯先3に分岐路44を介して繋がる出湯路内43内の水圧が減少し、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2よりも下流側にある圧力センサ47で検出される。また、上記したように、全ての出湯先3の水栓が閉栓された不使用状態にある場合、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度は最小開度位置にあるため、給湯路41及び給水路42から混合槽40に供給される水の流量は少ない。このため、圧力センサ47で検出される供給圧力P1は設定圧力Psより低く(ステップS1で、No)、湯量制御弁SV1は最大開度位置でないため(ステップS2で、No)、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分(例えば、1ステップ分)、開方向に移動させて水道管2から給湯装置1の入水管に供給される水の流量を増加させ(ステップS3)、温調制御のサブルーチンを実行する(ステップS4)。
【0029】
図示しないが、給湯装置1は、入水管への水の流量が一定以上になったことを検出すると、湯水の温度が予め設定された固定の給湯温度(例えば、60℃)になるように給湯を開始する。給湯が開始されると、給湯装置1から加熱生成された湯水が給湯路41を通じて混合槽40に供給されるとともに、水道管2から水が給水路42を通じて混合槽40に供給されて、混合槽40で湯水と水とが混合され、混合槽40から出湯路43に混合湯水が供給される。
【0030】
熱交換器が十分に加熱されていない給湯の開始時には、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Ts(例えば、40℃)より低く(ステップS41で、No)、水量制御弁SV2は最小開度位置にあるため(ステップS42で、Yes)、水量制御弁SV2の開度を最小開度位置で維持したまま、S1のステップに戻る。
【0031】
供給圧力P1を増加させるための湯量制御弁SV1の開度の増加に伴い、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Ts(例えば、40℃)より高くなった場合(ステップS41で、Yes)、水量制御弁SV2の開度を所定ステップ分、開方向に移動させて水道管2から給水路42への水の流量を増加させ(ステップS45)、S1のステップに戻る。
【0032】
出湯先3の使用状態が変化しなければ、上記のようにして、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psになり、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Tsになるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が制御されて、混合槽40で湯水と水とが所定の混合割合で混合される。
【0033】
出湯先3の使用状態が変化して、不使用状態の出湯先3の水栓が開栓されると、給湯路41及び給水路42の圧力損失の増加により圧力センサ47で検出される供給圧力P1が減少する。このため、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより低くなり(ステップS1で、No)、湯量制御弁SV1の開度が最大開度位置でなければ(ステップS2で、No)、上記と同様に、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分、開方向に移動させて給湯装置1から給湯路41への湯水の流量を増加させ(ステップS3)、温調制御を実行する(ステップS4)。
【0034】
湯量制御弁SV1の開度を増加させて、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Ts(例えば、40℃より高くなった場合(ステップS41で、Yes)、水量制御弁SV2の開度が最大開度位置でなければ(ステップS44で、No)、水量制御弁SV2の開度を所定ステップ分、開方向に移動させて水道管2から給水路42への水の流量を増加させる(ステップS45)。これにより、給湯路41の湯水の流量及び給水路42の水の流量の両方が増加され、S1のステップに戻る。上記のようにして供給温度T1及び供給圧力P1がそれぞれ設定温度Ts及び設定圧力Psになるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が増加される。すなわち、湯量制御弁SV1の開度と水量制御弁SV2の開度との開度比率は、供給圧力P1の減少前と同一となるように制御され、供給圧力P1の減少前と同じ混合割合で湯水と水とが混合槽40に供給される。
【0035】
圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより低いが(ステップS1で、No)、湯量制御弁SV1の開度が最大開度位置である場合(ステップS2で、Yes)、水量制御弁SV2の開度を増加させて、混合槽40に供給する水の流量を増加させると、使用状態にある全ての出湯先3に設定温度Tsよりも低温の混合湯水が供給される虞がある。このため、湯量制御弁SV1の開度を最大開度位置に維持したまま、設定温度Tsの混合湯水が出湯先3に供給されるように温調制御を実行する。これにより、温調制御が優先されるため、設定温度Tsの混合湯水を出湯先3に供給することができる。なお、このとき、出湯先3への混合湯水の供給量は成り行き状態となる。
【0036】
また、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより低くなり(ステップS1で、No)、湯量制御弁SV1の開度を増加させて(ステップS3)、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Ts(例えば、40℃)より高くなった場合(ステップS41で、Yes)、水量制御弁SV2の開度が最大開度位置であれば(ステップS44で、Yes)、そのまま湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を維持すると、使用状態にある全ての出湯先3に設定温度Tsよりも高温の混合湯水が供給される虞がある。このため、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分、閉方向に移動させて(ステップS46)、設定温度Tsの混合湯水が出湯先3に供給されるように温調制御を実行する。これにより、上記と同様に、温調制御が優先される。なお、このときの供給温度T1及び供給圧力P1が給湯システムの限界能力となる。
【0037】
一方、出湯先3の使用状態が変化して、使用状態にある複数の出湯先3のうち、一部の出湯先3の水栓が閉栓されると、給湯路41及び給水路42の圧力損失の減少により圧力センサ47で検出される供給圧力P1が増加する。このため、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより高くなった場合(ステップS1で、Yes)、湯量制御弁SV1の開度が最小開度位置でなければ(ステップS5で、No)、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分、閉方向に移動させて給湯装置1から給湯路41への湯水の流量を減少させ(ステップS6)、温調制御を実行する(ステップS4)。
【0038】
湯量制御弁SV1の開度を減少させて、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Ts(例えば、40℃)より低くなった場合(ステップS41で、No)、水量制御弁SV2の開度が最小開度位置でなければ(ステップS42で、No)、水量制御弁SV2の開度を所定ステップ分、閉方向に移動させて水道管2から給水路42への水の流量を減少させる(ステップS43)。これにより、給湯路41の湯水の流量及び給水路42の水の流量の両方が減少され、S1のステップに戻る。従って、供給圧力P1が増加した場合も、湯量制御弁SV1の開度と水量制御弁SV2の開度との開度比率が、供給圧力P1の増加前と同一となるように制御され、供給圧力P1の増加前と同じ混合割合で湯水と水とが混合槽40に供給される。
【0039】
圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより高いが(ステップS1で、Yes)、湯量制御弁SV1の開度が最小開度位置である場合(ステップS5で、Yes)、水量制御弁SV2の開度を減少させて、混合槽40に供給する水の流量を減少させると、使用状態にある全ての出湯先3に設定温度Tsよりも高温の混合湯水が供給される虞がある。このため、湯量制御弁SV1の開度を最小開度位置に維持したまま、設定温度Tsの混合湯水が出湯先3に供給されるように温調制御を実行する(ステップS4)。これにより、上記と同様に、温調制御が優先される。
【0040】
図示しないが、全ての出湯先3が不使用状態になると、全ての出湯先3の水栓が閉栓されるため、それに応じて湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を閉方向に移動させていき、供給圧力P1が設定圧力Psを超えてリミット圧力Paまで上昇すると、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を最小開度位置で停止させる。
【0041】
以上のように、上記実施例1では、出湯先3の使用状態に変化が生じて、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psよりも低くなり、且つ湯量制御弁SV1の開度が開リミッタ位置よりも小さな開度位置にある場合、湯量制御弁SV1の開度を増加させた後、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Tsとなるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が制御され、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psよりも低くなり、且つ湯量制御弁SV1の開度が開リミッタ位置にある場合、湯量制御弁SV1の開度を開リミッタ位置に維持した状態で、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Tsとなるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が制御される。また、出湯先3の使用状態に変化が生じて、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psよりも高くなり、且つ湯量制御弁SV1が閉リミッタ位置よりも大きな開度位置にある場合、湯量制御弁SV1の開度を減少させた後、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Tsとなるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が制御され、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psよりも高くなり、且つ湯量制御弁SV1の開度が閉リミッタ位置にある場合、湯量制御弁SV1の開度を閉リミッタ位置に維持した状態で、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Tsになるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が制御される。
【0042】
上記実施例1の給湯システムによれば、混合槽40から混合湯水が供給される出湯路43に、混合湯水の供給圧力P1を検出する圧力センサ47が設けられているから、各出湯先3の使用状態が変化したときの混合湯水の供給圧力P1の増減を検出することができる。そして、上記給湯システムによれば、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psに対して増減したとき、供給圧力P1の増減前における混合槽40に供給される湯水と水との混合割合が維持されるように湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を増減させるから、供給圧力P1の増減前の湯水と水との混合割合が維持された状態で、供給圧力P1を増減させることができる。これにより、各出湯先3の使用状態が変化しても、混合湯水の供給温度T1を設定温度Tsに維持しながら、設定圧力Psで混合湯水を出湯先3に供給することができる。また、上記給湯システムによれば、圧力調整弁やそれを制御するためのコントローラを設ける必要もない。
【0043】
また、上記給湯システムによれば、全ての出湯先3の不使用状態から少なくとも1つの出湯先3の使用状態に変化する場合、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を最小開度位置から制御するから、混合槽40から混合湯水が出湯路43に直ちに供給される。これにより、出湯先3に湯水を連続して供給することができる。
【0044】
また、上記給湯システムによれば、電子水栓4に設けられた湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2によって出湯先3への混合湯水の供給温度T1及び供給圧力P1を調整できるから、例えば、給湯温度を任意に変更できない給湯装置1により構成される既設の給湯システムに、ヘッドシャワーやハンドシャワー、カランなど複数の出湯先3を有する浴室用の出湯ユニットを増設するような場合に、給湯装置1に圧力調整弁や圧力センサを組み込んだり、給湯装置1自体を交換したりする必要がない。従って、上記出湯ユニットと給湯装置1とを繋ぐ管路に電子水栓4を設けるだけで、既設の給湯システムに出湯ユニットを追加することができる。
【0045】
図4は、実施例2に係る給湯システムを示す概略構成図である。この給湯システムは、給湯装置1から給湯路41に供給される湯水の給湯圧及び水道管2から給水路42に供給される水の給水圧を増加させるために水道管2に昇圧手段である単一段の昇圧ポンプ8が設けられている以外は、実施例1と同一の構成を有する。
【0046】
図5は、実施例2に係る給湯システムの制御動作の一部を示すフローチャートである。なお、出湯温センサ46で検出される供給温度T1が設定温度Tsになるように湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を増減させる制御動作は、実施例1と同様であるため、昇圧ポンプ8を作動及び停止させるときの制御動作のみを説明する。
【0047】
図5に示すように、昇圧ポンプ8が作動されていない状態で、複数の出湯先3で水栓が開栓されて供給圧力P1が設定圧力Psよりも低くなった場合(ステップS51で、No)、湯量制御弁SV1の開度が最大開度位置であれば(ステップS52で、Yes)、それ以上、開度を増加させることができないため、昇圧ポンプ8を作動させる(ステップS53)。これにより、給湯装置1の入水管及び給水路42に供給される水の給水圧が昇圧され、混合槽40から供給される混合湯水の供給圧力P1が増加された状態で温調制御が実行される(ステップS54)。
【0048】
なお、昇圧ポンプ8が作動されていない状態で、供給圧力P1が設定圧力Psよりも低くなった場合(ステップS51で、No)、湯量制御弁SV1の開度が最大開度位置でなければ(ステップS52で、No)、昇圧ポンプ8を作動させることなく、実施例1と同様に、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分、開方向に移動させて(ステップS55)、温調制御が実行される(ステップS54)。
【0049】
一方、昇圧ポンプ8が作動されている状態で、出湯先3の使用状態が変化して、使用状態にある複数の出湯先3のうち、一部の出湯先3の水栓が閉栓されると、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が増加する。このため、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより高くなった場合(ステップS51で、Yes)、湯量制御弁SV1の開度が最小開度位置でなければ(ステップS56で、No)、実施例1と同様に、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分、閉方向に移動させて(ステップS57)、温調制御を実行する(ステップS54)。
【0050】
また、昇圧ポンプ8が作動されている状態で、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより高くなった場合(ステップS51で、Yes)、湯量制御弁SV1の開度が最小開度位置であれば(ステップS56で、Yes)、それ以上、開度を減少させることができないため、昇圧ポンプ8の作動を停止させて(ステップS58)、温調制御を実行する(ステップS54)。
【0051】
上記実施例2に係る給湯システムによれば、高層施設などで水道圧が低く、給湯装置1から供給される湯水の給湯圧や水道管2から供給される水の給水圧が比較的低い環境下であっても、昇圧ポンプ8によって各出湯先3への混合湯水の供給圧力P1を一定に保持することができる。
【0052】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、全ての出湯先3が不使用状態のときの湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度は、最小開度位置から制御される。しかしながら、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度は、全閉位置から制御してもよい。すなわち、閉リミッタ位置は、最小開度位置、全閉位置のいずれに設定してもよい。
【0053】
(2)上記実施の形態では、単一段の昇圧ポンプ8が使用されている。しかしながら、複数段階で給水圧を切替可能な多段ポンプが用いられてもよい。昇圧ポンプ8として多段ポンプが用いられる場合の制御動作の一例を説明すると、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより低い場合、湯量制御弁SV1の開度が最大開度位置であれば、上記と同様に、昇圧ポンプ8を1段速、増加させて、温調制御を行う。一方、圧力センサ47で検出される供給圧力P1が設定圧力Psより高い場合、昇圧ポンプ8を1段速、減少させるとともに、湯量制御弁SV1の開度を所定ステップ分、閉方向に移動させて(最小開度位置である場合は開度を維持して)温調制御を行う。上記のように、供給圧力P1が設定圧力Psよりも高いときに、昇圧ポンプ8を1段速、減少させるとともに、湯量制御弁SV1の開度を閉方向に移動させることにより、低速で昇圧ポンプ8を作動させる時間を長くすることができる。
【0054】
(3)上記実施の形態では、設定温度Ts及び設定圧力Psは、電子水栓用リモコン5によって設定されている。しかしながら、設定温度Ts及び設定圧力Psは、給湯装置1の動作条件を設定操作するための給湯リモコンによって設定してもよいし、流量制御回路400に予め記憶された固定の設定温度Tsや設定圧力Psに基づいて設定してもよい。
【0055】
(4)上記実施の形態では、各出湯先3から同一温度の混合湯水が出湯されている。しかしながら、出湯先3に分岐路44及び水道管2から分岐させた給水管が接続された混合水栓を設けて、任意の温度の湯水を出湯先3から出湯させてもよい。
【0056】
(5)上記実施の形態では、出湯温センサ46で検出される供給温度T1に基づいて供給温度T1が設定温度Tsとなるように、湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度が制御される。しかしながら、所定の設定圧力Psで所定の設定温度Tsの混合湯水を得るための湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度のデータテーブルを用いて湯量制御弁SV1及び水量制御弁SV2の開度を制御してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 給湯装置(給湯源)
2 水道管(給水源)
3 出湯先
4 電子水栓
40 混合槽
41 給湯路
42 給水路
43 出湯路
46 出湯温センサ(温度検知部)
47 圧力センサ(圧力検出部)
400 流量制御回路(制御部)
SV1 湯量制御弁
SV2 水量制御弁
図1
図2
図3
図4
図5