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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231130BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019235121
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103932
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩史
(72)【発明者】
【氏名】赤間 貞洋
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-189149(JP,A)
【文献】特開2018-170894(JP,A)
【文献】特開2011-228638(JP,A)
【文献】特開2018-022846(JP,A)
【文献】特開2017-195687(JP,A)
【文献】特開2017-127095(JP,A)
【文献】特開2014-204589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する複数の半導体素子(271,272,51~56,811,812,821,822,831,832,841,842,851,852,861,862,111~116)が一体化された半導体モジュール(21~27,50,81~86,110)と、
冷媒が流れることにより前記レグを構成する前記複数の半導体素子を冷却する冷却流路(40~47,63~65,73~75,93~95,103~105,123~125)を備える冷却器(30,60,70,90,100,120)と、
を備える電力変換システム(1~6)であって、
前記電力変換器として、第1インバータ(INV1)及び第2インバータ(INV2)が備えられ、
3相分の巻線を有する回転電機と、
制御部(12)と、
を備え、
前記第1インバータは、前記半導体モジュールとして、複数の前記半導体素子としての上アームスイッチ(SU1a,SV1a,SW1a)及び下アームスイッチ(SU1b,SV1b,SW1b)の直列接続体が一体化された3相分の半導体モジュールを備え、
前記第2インバータは、前記半導体モジュールとして、複数の前記半導体素子としての上アームスイッチ(SU2a,SV2a,SW2a)及び下アームスイッチ(SU2b,SV2b,SW2b)の直列接続体が一体化された3相分の半導体モジュールを備え、
各相において、前記巻線の一端には、前記第1インバータが備える前記上,下アームスイッチの接続点が接続され、
各相において、前記巻線の他端には、前記第2インバータが備える前記上,下アームスイッチの接続点が接続され、
前記第1インバータが備える前記上,下アームスイッチの直列接続体に直流電源(VDC)が並列接続され、
前記第1インバータが備える各相の前記上アームスイッチの高電位側端子と、前記第2インバータが備える各相の前記上アームスイッチの高電位側端子とを接続する高電位接続線(La)と、
前記第1インバータが備える各相の前記下アームスイッチの低電位側端子と、前記第2インバータが備える各相の前記下アームスイッチの低電位側端子とを接続する低電位接続線(Lb)と、
を備え、
前記制御部は、
各相において、相電圧の半周期である第1期間(T1)にて、前記第1インバータが備える前記上,下アームスイッチを交互に閉状態とするPWM制御を実行し、かつ、前記第2インバータが備える前記上アームスイッチを閉状態に固定するとともに前記第2インバータが備える前記下アームスイッチを開状態に固定する処理と、
各相において、前記第1期間に続く期間であって相電圧の半周期である第2期間(T2)にて、前記第2インバータが備える前記上,下アームスイッチを交互に閉状態とするPWM制御を実行し、かつ、前記第1インバータが備える前記上アームスイッチを閉状態に固定するとともに前記第1インバータが備える前記下アームスイッチを開状態に固定する処理と、
を交互に行うH駆動を実行し、
前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュールにおいて前記上,下アームスイッチのうち、前記H駆動の実行中に最大発熱量が大きい側のスイッチ(271,51~53,811,821,831,841,851,861,111,113,115)が前記冷却流路の上流側となり、前記H駆動の実行中に前記最大発熱量が小さい側のスイッチ(272,54~56,812,822,832,842,852,862,112,114,116)が前記冷却流路の下流側となるように、前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュールが前記冷却器に対して配置される電力変換システム。
【請求項2】
複数の前記半導体素子は、上面視したときの形状が略長方形であり、
前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュールは、複数の前記半導体素子の略長方形の短辺方向が、前記冷却流路の冷媒の流れ方向に略平行となる位置関係で配置される請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記冷却器は、前記冷却流路を内部に備えるとともに厚み方向に積層された複数の冷却板(40~47)と、前記複数の冷却板の積層方向に連結する入口流路(31)および出口流路(32)とを備える積層冷却器であり、
前記冷媒は、前記入口流路から流入して前記複数の冷却板の冷却流路を通過して前記出口流路から流出し、
前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュールは、前記積層冷却器の前記冷却板の間に、最大発熱量が大きい前記半導体モジュールほど前記入口流路の上流側となる順序で配置される請求項1または2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュールは、その外部に露出するとともに前記複数の半導体素子のそれぞれに電気的に接続する複数の外部端子(271g,272g,276,51d,56d,111d,116d)と、を備え、
前記複数の外部端子が露出する方向は、前記半導体素子に対して前記冷却流路の冷媒の流れ方向に略垂直な方向である請求項1~3のいずれかに記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュール(81~86)をそれぞれ冷却する前記冷却流路が直列に接続されており、
前記第1インバータ及び前記第2インバータが備える各相の前記半導体モジュールは、各々に含まれる複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子ほど前記冷却流路の上流側となり、前記最大発熱量が小さい半導体素子ほど前記冷却流路の下流側となるように配置される請求項1~のいずれかに記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器として作動する複数の半導体素子を含む半導体モジュールと、この複数の半導体素子を冷却する冷却器とを備えた電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電力変換器として機能する半導体モジュールと、冷却装置とを含む電力変換装置(電力変換システム)が記載されている。半導体モジュールは、最大発熱量が異なる複数の発熱素子(半導体素子)を含む。冷却装置は、発熱素子を冷却するための冷却ブロックと、冷却ブロックを介して発熱素子による発熱を放熱する冷却フィンとを備える。この冷却装置では、冷却ブロックの均熱化を目的として、冷却ブロックに接触するヒートパイプが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-75251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換システムにおいて、インバータのスイッチング素子として複数の半導体素子が用いられる。複数の半導体素子の最大発熱量が互いに異なると、最大発熱量の大きい半導体素子ほど素子温度が高温となって素子の劣化が早くなる等の特性のばらつきが生じ得ることが懸念される。これを抑制するためには、最大発熱量が大きい半導体素子を効率よく冷却し、除熱量を大きくして、複数の半導体素子間の素子温度のばらつきを抑制することが有効である。
【0005】
特許文献1では、複数の発熱素子の発熱量に偏りが生じる場合において冷却効率が低下することを抑制するために、ヒートパイプは、最大発熱量が比較的大きい発熱素子の近傍で分割されている。すなわち、冷却する半導体モジュールにおける最大発熱量が比較的大きい半導体素子の位置に応じてヒートパイプの形状が決定される。このため、ヒートパイプを含む冷却装置の構成は、実質的に、冷却する半導体モジュール専用に設計されるものとなる。このため、最大発熱量が大きい半導体素子の位置が異なる半導体モジュールや、各半導体素子の最大発熱量が殆ど相違しない半導体モジュールなどに適用する際に、冷却装置としての機能を十分に活かすことができない場合があり、汎用性が低い。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、冷却器としての汎用性を確保しつつ、半導体モジュールが備える最大発熱量が異なる複数の半導体素子を効率よく冷却できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する複数の半導体素子がモールド材に一体に封止された半導体モジュールと、前記レグを構成する前記複数の半導体素子を冷却する冷却流路を備える冷却器と、を備える電力変換システムを提供する。この電力変換システムでは、前記半導体モジュールは、前記レグを構成する前記複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子が前記冷却流路の上流側となり、前記最大発熱量が小さい半導体素子が前記冷却流路の下流側となるように前記冷却器に対して配置される。
【0008】
本発明の電力変換システムでは、電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子が冷却流路の上流側となり、最大発熱量が小さい半導体素子が冷却流路の下流側となるように、半導体モジュールが冷却器に対して配置される。このため、最大発熱量が大きい半導体素子については、冷却流路における上流側を流れる比較的低温の冷媒によって冷却でき、除熱量を大きくすることができる。また、最大発熱量が小さい半導体素子については、冷却流路における下流側を流れる、上流側よりも温度が上昇した冷媒によって冷却でき、除熱量は比較的小さくなる。最大発熱量が大きい半導体素子ほど冷却流路の上流側に配置されて、より低温の冷媒によって効率よく冷却することにより除熱量が大きくなるため、半導体素子間の温度のばらつきを抑制できる。さらには、冷却器における冷却流路の冷媒の流れ方向に応じて、半導体モジュールを配置することにより、半導体素子間の温度のばらつきを抑制する効果を得られる。このため、電力変換システムにおいて、冷却器としての汎用性を確保しつつ、半導体モジュールが備える最大発熱量が異なる複数の半導体素子を効率よく冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電力変換システムの概要図。
図2図1に示す電力変換システムにおける冷却板と半導体モジュールとの位置関係を示す図。
図3図1に示す半導体モジュールの平面図。
図4図3のIV-IV線断面図。
図5図3のV-V線断面図。
図6図3に示す半導体モジュールを示す回路図。
図7】半導体モジュールが適用される回転電機の駆動装置。
図8】回転電機をH駆動する際の非対称スイッチング制御の一例としての交互PWM駆動の駆動パターンを示す図。
図9図7に示す交互PWM駆動時の電流経路を示す図。
図10図1に示す冷却器における半導体モジュールの設置位置と熱抵抗との関係を示す図。
図11】冷却板と半導体素子との関係を示す図。
図12】第2実施形態に係る電力変換システムの概要図。
図13】第3実施形態に係る電力変換システムの平面図。
図14図13のXIV-XIV線断面図。
図15】第4実施形態に係る電力変換システムの平面図。
図16図15のXVI-XVI線断面図。
図17】変形例に係る電力変換システムの概要図。
図18】変形例に係る電力変換システムの概要図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る電力変換システム1は、冷却器30と、複数の半導体モジュール21~27とを備えている。
【0011】
図1,2に示すように、冷却器30は、厚み方向(図1に示すy軸方向)に積層された複数の冷却板40~47と、冷却板40~47の積層方向に延在し、冷却板40~47とを連結する入口流路31および出口流路32とを備える積層冷却器である。冷却板40~47は、大きさおよび形状が同一であり、互いに概ね等間隔で、y軸の正方向から負方向に向かって冷却板40,41,…,47の順序で配置されている。
【0012】
冷却板40~47の形状について、図2に冷却板47を例示してさらに説明する。zx平面視すると、冷却板47は、略六角形状であり、その内部に冷媒が流れる流路である冷媒流路が設けられている。冷却板47は、x軸の正方向の端部に入口側接続孔471を備え、x軸の負方向の端部に出口側接続孔472を備えている。入口側接続孔471には、入口流路31が接続され、出口側接続孔472には、出口流路32が接続される。入口流路31と、冷却板47内の冷媒流路と、出口流路32とは、連通するように接続されている。入口流路31から冷却器30に供給される冷媒は、入口流路31内をy軸の負方向に向かって流れて、入口側接続孔471から冷却板47内に流入する。冷媒は、冷却板47内をx軸の正方向に向かって流れて、出口側接続孔472から出口流路32の内部に流出する。出口流路32においては、冷媒はy軸の正方向に向かって流れて、冷却器30から排出される。冷却板40~46においても、同様に、入口流路31内をy軸の負方向に向かって流れる冷媒は、入口側接続孔から冷却板40~46に流入し、冷却板40~46内をx軸の正方向に向かって流れて、出口側接続孔から出口流路32の内部に流出する。
【0013】
冷却板40~47内には、インナーフィン等の冷媒の流れ方向や乱れ等を調整する構成が設けられていてもよい。冷却板40~47内の冷媒の流路は、x軸の正方向に向かって直線的に形成された流路である必要はなく、z軸方向やy軸方向に蛇行しながら全体としてx軸の負方向側が上流かつ正方向側が下流となっていればよい。
【0014】
複数の半導体モジュール21~27は、外観の形状および大きさが同じ半導体モジュールである。図3~5に例示する半導体モジュール27は、zx平面視するときに略長方形となるモールド材273と、モールド材273の長方形の長辺側からz軸の負方向に突出する第1外部端子271g,272gと、z軸の正方向に突出する第2外部端子276と、モールド材273のy方向の両面においてモールド材273から露出する電極271a,272a,271f,272fとを備えている。
【0015】
半導体モジュール21~27は、モールド材273の略長方形の長辺方向が、冷却板40~47内を流れる冷媒の流れ方向に略平行となる位置関係で配置されている。第1外部端子271g,272gおよび第2外部端子276がモールド材273から露出する方向は、冷却流路としての冷却板47における冷媒の流れ方向(x軸方向)に略垂直な方向(z軸方向)である。冷却板40~47を冷媒が通過することによって、半導体モジュール21~27におけるレグを構成する2つの半導体素子を冷却できる。冷却板40~47は、冷媒が流れることによりレグを構成する複数の半導体素子を冷却する冷却流路の機能を有する。
【0016】
モールド材273の内部には、x軸方向に隣接して配置された状態で、上面視したときの形状が略長方形である2つの半導体素子271,272が封止されている。半導体素子271,272は、その略長方形の短辺方向(x軸方向)に並べて配置された状態で、モールド材273に封止されている。例えば、半導体素子271,272が縦型のMOSFETである場合には、y軸の正方向側がドレイン電極であり、y軸の負方向側がソース電極である。
【0017】
半導体素子271,272のドレイン電極は、それぞれ、はんだ接合層271b、272bを介して電極271a,272aに接合されている。半導体素子271,272のソース電極は、それぞれ、はんだ接合層271c,271e,272c,272eおよび電極271d,272dを介して、電極271f,272fに接合されている。電極271fと電極272aとは、接続部277によって電気的に接続されている。これによって、図6に示すように、半導体素子271のソース電極と、半導体素子272のドレイン電極とは互いに接続されて、半導体素子271と半導体素子272とは直列接続されている。
【0018】
第1外部端子271g,272gは、それぞれ、半導体素子271,272の電極パッドにボンディングワイヤによって接続された制御端子である。第2外部端子276は、それぞれ、半導体素子271,272のパワー端子である。より具体的には、図3,6に示すように、制御端子である第1外部端子271g,272gは、それぞれ、半導体素子271,272のエミッタ端子(E端子)、ゲート端子(G端子)、電流検出セル端子(S端子)、温度検出ダイオードのアノード端子(A端子)およびカソード端子(K端子)を含んでいる。また、パワー端子である第2外部端子276は、正極端子(P端子)、負極端子(N端子)、出力端子(O端子)を含んでいる。P端子は、電極271aと電気的に接続しており、N端子は、電極272fと電気的に接続しており、O端子は、電極271fおよび電極272aと電気的に接続している。
【0019】
図1に示すように、半導体モジュール21~27は、冷却器30の冷却板40の間に1つずつ収容され、冷却板41~46を介して厚み方向(y軸方向)に積層された状態で配置される。半導体モジュール21は、冷却板40と冷却板41とに接して挟持されている。半導体モジュール22は、冷却板41と冷却板42とに接して挟持されている。半導体モジュール23は、冷却板42と冷却板43とに接して挟持されている。半導体モジュール24は、冷却板43と冷却板44とに接して挟持されている。半導体モジュール25は、冷却板44と冷却板45とに接して挟持されている。半導体モジュール26は、冷却板45と冷却板46とに接して挟持されている。半導体モジュール27は、冷却板46と冷却板47とに接して挟持されている。冷却板40~47は、半導体モジュール21~27の2つの平面に露出して設けられた電極(例えば電極271a,271f,272a,272f)を介して、モールド材の内部の半導体素子(例えば半導体素子271,272)を冷却する。半導体モジュール21~27における発熱は、y軸の正方向および負方向において接する2つの冷却板によって効率よく除熱される。
【0020】
図2に示すように、半導体モジュール27は、冷媒の流れ方向の上流側(x軸の負方向側)に半導体素子271が配置され、下流側(x軸の正方向側)に半導体素子272が配置された状態となるように、冷却板46と冷却板47との間に挟持されている。冷却板46および冷却板47内を流れる冷媒は、半導体素子271を冷却した後に、半導体素子272を冷却する。半導体モジュール21~27は、2つの半導体素子271,272の略長方形の短辺方向が、冷却板40~47の冷媒の流れ方向に略平行となる位置関係で配置されている。
【0021】
半導体モジュール21~27は、最大発熱量が大きい半導体モジュールほど入口流路の上流側となる順序で配置される。半導体素子271,272は、電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する2つの半導体素子であり、より具体的には、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである。
【0022】
図7に、半導体素子271,272が適用される電力変換回路の一例を示す。図7は、回転電機の駆動制御を実行する駆動装置10を示す。回転電機は、U相巻線Uと、V相巻線Vと、W相巻線Wとを備えている。駆動装置10は、駆動回路11と、制御部12と、直流電源VDCとを備えている。駆動回路11は、第1インバータINV1と、第2インバータINV2と、高電位接続線Laと、低電位接続線Lbと、接続線スイッチSCとを備えている。
【0023】
第1インバータINV1は、直流電源VDCに接続されており、回転電機のU相巻線の一端に接続された上アームスイッチSU1a及び下アームスイッチSU1bと、V相巻線の一端に接続された上アームスイッチSV1a及び下アームスイッチSV1bと、W相巻線の一端に接続された上アームスイッチSW1a及び下アームスイッチSW1bとを備える。
【0024】
第2インバータINV2は、直流電源VDCに接続されており、回転電機のU相巻線の他端に接続された上アームスイッチSU2a及び下アームスイッチSU2bと、V相巻線の他端に接続された上アームスイッチSV2a及び下アームスイッチSV2bと、W相巻線の他端に接続された上アームスイッチSW2a及び下アームスイッチSW2bとを備える。
【0025】
半導体素子271,272は、それぞれ、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する。高電位接続線Laは、第1インバータINV1の直流高電位側と第2インバータINV2の直流高電位側とを接続する配線である。低電位接続線Lbは、第1インバータINV1の直流低電位側と第2インバータの直流低電位側とを接続する。
【0026】
第1インバータINV1において、各相の上アームスイッチSU1a,SV1a,SW1aの高電位側端子は直流電源VDCの正極端子に接続され、各相の下アームスイッチSU1b,SV1b,SW1bの低電位側端子は直流電源VDCの負極端子に接続されている。
【0027】
第2インバータINV2において、各相の上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aの高電位側端子は高電位接続線Laに接続され、各相の下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2bの低電位側端子は低電位接続線Lbに接続されている。
【0028】
第1インバータINV1において、各相の上アームスイッチSU1a,SV1a,SW1aと下アームスイッチSU1b,SV1b,SW1bとの間の中間点には、それぞれ、巻線U、V、Wの一端(第2インバータINV2と接続されていない一端)が接続されている。第2インバータINV2において、各相の上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aと下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2bとの間の中間点には、それぞれ、巻線U、V、Wの一端(第1インバータINV1と接続されていない一端)が接続されている。
【0029】
接続線スイッチSCは、高電位接続線Laに設けられており、高電位接続線Laを導通または遮断することにより、第1インバータINV1と第2インバータINV2とを導通または遮断する。接続線スイッチSCが閉状態(オン状態)の場合には、駆動回路11は、Hブリッジ回路として利用することができ、回転電機のH駆動が可能となる。
【0030】
接続線スイッチSCが開状態(オフ状態)の場合には、駆動回路11によって回転電機のY駆動が可能となる。例えば、第2インバータINV2の全ての上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aを閉状態とするとともに全ての下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2bを開状態とすることにより、回転電機のY駆動が可能となる。すなわち、回転電機のU相巻線Uと、V相巻線Vと、W相巻線WとをY結線で接続することができる。この場合、上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aは、Y結線(星形結線)の中性点を構成する中性点構成スイッチに相当する。
【0031】
制御部12は、CPUや各種メモリからなるマイコンを備えており、回転電機における各種の検出情報や、力行駆動及び発電の要求に基づいて、第1インバータINV1および第2インバータINV2における各スイッチの開閉(オンオフ)により通電制御を実施する。回転電機の検出情報には、例えば、レゾルバ等の角度検出器により検出される回転子の回転角度(電気角情報)や、電圧センサにより検出される電源電圧(インバータ入力電圧)、電流センサにより検出される各相の通電電流が含まれる。制御部12は、さらに、接続線スイッチSCの開閉を制御する。制御部12は、第1インバータINV1および第2インバータINV2の各スイッチおよび接続線スイッチSCを操作する操作信号を生成して出力する。
【0032】
図8は、制御部12による第1インバータINV1および第2インバータINV2のスイッチ制御の一例を示す図である。より具体的には、接続線スイッチSCを閉状態に制御して回転電機をH駆動する際の駆動例として、交互PWM駆動を実行する場合の駆動パターンを示している。交互PWM駆動は、第1インバータINV1と第2インバータINV2とを交互に作動させる非対称スイッチング制御の一例である。
【0033】
図8に示す交互PWM駆動においては、期間T1と期間T2とによってU相電圧VUの波形の1周期が構成されている。U相電流IUは、U相電圧VUに対して位相が90°遅れている。期間T1において第1インバータINV1側では、PWM制御を実行し、第2インバータINV2側では、上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aを閉状態かつ下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2bを開状態に固定する。期間T2において第2インバータINV2側では、PWM制御を実行し、第1インバータINV1側では、上アームスイッチSU1a,SV1a,SW1aを閉状態かつ下アームスイッチSU1b,SV1b,SW1bを開状態に固定する。交互に期間T1と期間T2の制御が実行される。
【0034】
図9には、期間T1において駆動回路11に流れる電流経路を太線で示している。期間T1において、U相電流が負電流である場合には、図9に矢印で示す方向に電流が流れ、上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aのMOSFETに電流が流れる。U相電流が正電流である場合には、図9に矢印で示す方向とは逆方向に電流が流れ、上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aのダイオードに電流が流れる。期間T1ごとに周期的に上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aに電流が流れる一方で、期間T1においては下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2bには電流が流れないという状態が繰り返される。このため、上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2aにおける最大発熱量は、下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2bにおける最大発熱量よりも大きくなる。
【0035】
図8,9に示すように、交互PWM制御を実行する際に、第1インバータINV1と第2インバータINV2のうち、PWM制御をしていない側のインバータ(例えば第2インバータINV2)では、上アームスイッチ(例えば、上アームスイッチSU2a,SV2a,SW2a)は閉状態に制御されて電流が流れ、下アームスイッチ(例えば、下アームスイッチSU2b,SV2b,SW2b)は開状態に制御されて電流が流れない。このため、上アームスイッチにおいては、導通損失が生じ、下アームスイッチでは、導通損失が生じない。導通損失により、上アームスイッチにおける最大発熱量は、下アームスイッチにおける最大発熱量よりも大きくなる。半導体素子271が上アームスイッチとして機能し、半導体素子272が下アームスイッチとして機能する場合には、半導体素子271の最大発熱量は、半導体素子272の最大発熱量よりも大きくなる。
【0036】
電力変換システム1において、半導体モジュール21~27は、電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する2つの半導体素子を備える。そして、冷却器30は、半導体モジュール21~27のそれぞれについて、レグを構成する2つの半導体素子を冷却する冷却流路を備える冷却器としての機能を有する。なお、冷却流路とは、その入口から出口の間に冷却対象となる半導体モジュールが配置され、半導体モジュールに含まれるレグを構成する複数の半導体素子を冷却する冷媒の流路である。冷却流路を通過した冷媒は、半導体モジュールにおけるレグを構成する複数の半導体素子からの発熱により、加熱される。半導体モジュール21~27は、レグを構成する複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子が冷却流路の上流側となり、最大発熱量が小さい半導体素子が冷却流路の下流側となるように冷却器に対して配置されている。
【0037】
電力変換システム1によれば、最大発熱量が大きい半導体素子(例えば半導体素子271)については、冷却流路の上流側を流れる比較的低温の冷媒によって冷却でき、除熱量を大きくすることができる。また、最大発熱量が小さい半導体素子(例えば半導体素子272)については、冷却流路の下流側を流れる、上流側よりも温度が上昇した冷媒によって冷却でき、除熱量は比較的小さくなる。電力変換システム1によれば、最大発熱量が大きい半導体素子ほど冷却流路の上流側に配置されて、より低温の冷媒によって効率よく冷却することにより除熱量が大きくなるため、半導体モジュール21~27のそれぞれが含む2つの半導体素子間の温度のばらつきを抑制できる。電力変換システム1によれば、半導体素子間の温度のばらつきを抑制できる効果は、冷却器30の冷却板40~47における冷却流路の冷媒の流れ方向に応じて、半導体モジュール21~27を配置することにより得られる。このため、冷却器30としての汎用性を確保しつつ、半導体モジュール21~27が備える最大発熱量が異なる複数の半導体素子を効率よく冷却できる。
【0038】
また、半導体モジュール21~27は、2つの半導体素子の略長方形の短辺方向が、冷却板40~47の冷媒の流れ方向に略平行となる位置関係で配置されている。半導体素子の短辺方向に冷媒が流れるため、冷媒が冷却板40~47の半導体素子に接する領域を通過する前後の温度差を小さくすることができる。このため、半導体素子内における熱分布を緩和することができ、半導体素子の性能をより有効に利用することができる。
【0039】
さらに、半導体モジュール21~27は、複数の外部端子がモールド材から露出する方向が冷却流路における冷媒の流れ方向に略垂直な方向となるように配置されている。外部端子は、半導体素子を上面視したときの短辺側に延在しているため、このように配置することにより、半導体素子の短辺方向に冷媒が流れるように半導体モジュール21~27を配置し易くなる。
【0040】
また、半導体モジュール21~27は、駆動回路11のような駆動回路のインバータを構成する、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチに適用できる。駆動回路11において交互PWM駆動を行う際に、上アームスイッチと下アームスイッチのいずれか一方の最大発熱量が、他方の最大発熱量よりも大きくなる場合において、上アームスイッチと下アームスイッチの素子温度のばらつきを抑制することができる。
【0041】
なお、半導体モジュール21~27間で、最大発熱量が相違する場合には、最大発熱量が大きい半導体モジュールほど入口流路31の上流側となる順序で半導体モジュール21~27を配置することが好ましい。図10に、冷却器30の冷媒入口側からの段数と、熱抵抗の関係を示す。段数1~7は、冷却板40~47の間の半導体モジュールを収容するスペースの順序を示しており、y軸の正方向側ほど段数が小さく、負方向側ほど段数が大きい。具体的には、冷却板40と冷却板41との間が段数1に相当し、冷却板46と冷却板47との間が段数7に相当する。
【0042】
図10に示すように、段数1~6の間では、段数が大きくなるほど熱抵抗が大きくなり、半導体モジュールを冷却する能力が低下する。このため、最大発熱量が大きい半導体モジュールほど段数が小さい側に配置し、最大発熱量が小さい半導体モジュールほど段数が大きい側に配置することが好ましい。なお、図10において、段数7においては、段数6よりも熱抵抗が低くなっている。これは、冷却板41~46は、y軸の正方向および負方向に配置された2つの半導体モジュールを冷却するのに対し、冷却板47は、1つの半導体モジュールを冷却するため、段数6よりも冷媒入口側に対し下流であっても、熱抵抗が低くなったものと推察できる。
【0043】
また、半導体モジュールと冷却板とは、冷却板を流れる冷媒が、最大発熱量が大きい半導体素子と最大発熱量が小さい半導体素子とを同時に冷却しないような位置関係に配置されることが好ましい。例えば、図11に示すように、最大発熱量が相違する2つの半導体素子281,282が、冷媒の流れ方向に垂直な方向に隣接するように配置される場合には、半導体素子281を冷却する冷却板481と、半導体素子282を冷却する冷却板482とを個別に備える冷却器を用いることが好ましい。半導体素子281の最大発熱量が半導体素子282の最大発熱量よりも大きい場合には、例えば、冷媒が冷却板481を流れた後で、冷却板482を流れるように構成してもよい。なお、モールド材283から露出する外部端子281d,282dは、それぞれ、半導体素子281,282に接続する外部端子であり、より具体的には、第1外部端子271g,272gと同様の制御端子である。
【0044】
(第2実施形態)
第1実施形態では、2つの半導体素子がモールド材に一体に封止された半導体モジュール21~27を例示して説明したが、半導体モジュールは、3つ以上の半導体素子をモールド材、またはゲル材で一体にモジュール化された状態で有するものであってもよい。例えば、図12に示すように、電力変換システム2は、冷却器60と、6つの半導体素子51~56を内包する1つの半導体モジュール50とを備えている。
【0045】
冷却器60は、入口流路61と、出口流路62と、冷却流路63~65とを備えている。入口流路61および出口流路62は、y軸方向に延在しており、x軸方向に離間して配置されている。冷却流路63~65は、入口流路61および出口流路62との間でx軸方向に延在するとともに、互いに離間して、y軸の正方向から負方向に向かって、冷却流路63,64,65の順序で配置されている。冷却流路63~65は、それぞれ、入口流路61と出口流路62とを接続している。
【0046】
入口流路61から冷却器60に供給される冷媒は、入口流路61内をy軸の負方向に向かって流れて、冷却流路63~65に流入する。冷媒は、冷却流路63~65内をx軸の正方向に向かって流れて、出口流路62の内部に流出する。出口流路62においては、冷媒はy軸の負方向に向かって流れて、冷却器60から排出される。
【0047】
半導体モジュール50は、例えば、図7に示す各インバータINV1,INV2に含まれる6つのスイッチを一体に包含する半導体モジュールとして、駆動回路11に適用できる。半導体モジュール50を第1インバータINV1に適用する場合には、例えば、半導体素子51,54は、それぞれ、図7に示すU相の上アームスイッチSU1aと、下アームスイッチSU1bとして機能する。半導体素子52,55は、それぞれ、図7に示すV相の上アームスイッチSV1aと、下アームスイッチSV1bとして機能する。半導体素子53,56は、それぞれ、図7に示すW相の上アームスイッチSW1aと、下アームスイッチSW1bとして機能する。
【0048】
上アームスイッチSU1a,SV1a,SW1aとして機能する半導体素子51~53に電気的に接続する外部端子(例えば外部端子51d)は、半導体素子51~53に対してy軸の正方向側に延在しており、半導体モジュール50から露出している。下アームスイッチSU1b,SV1b,SW1bとして機能する半導体素子54~56に電気的に接続する外部端子(例えば外部端子56d)は、半導体素子54~56に対してy軸の負方向側に延在しており、半導体モジュール50から露出している。半導体素子51~56にそれぞれ接続する外部端子は、第1外部端子271g,272gと同様の制御端子である。
【0049】
半導体モジュール50は、U,V,W相の上アームスイッチおよび下アームスイッチの各組が、冷却流路63~65によって冷却されるような位置関係で、冷却器60に対して配置される。U相の上アームスイッチおよび下アームスイッチである半導体素子51,54は、冷却流路63に接する位置に配置される。V相の上アームスイッチおよび下アームスイッチである半導体素子52,55は、冷却流路64に接する位置に配置される。W相の上アームスイッチおよび下アームスイッチである半導体素子53,56は、冷却流路63に接する位置に配置される。冷却流路63~65の上流側には、上アームスイッチSU1a,SV1a,SW1aとして機能する半導体素子51~53が位置し、下流側には、下アームスイッチSU1b,SV1b,SW1bとして機能する半導体素子54~56に位置するように、半導体モジュール50は配置される。
【0050】
電力変換システム2において、半導体モジュール50は、電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する2つの半導体素子の組を3組備える。そして、冷却器60は、上アームスイッチおよび下アームスイッチの各組ごとに、2つの半導体素子を冷却する冷却流路63~65を備える。3組の上アームスイッチおよび下アームスイッチは、互いに冷却流路における冷媒の流れ方向に略直交する方向に沿って配置される。半導体モジュール50は、レグを構成する複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子(例えば上アームスイッチとして機能する半導体素子51~53)が冷却流路の上流側となり、最大発熱量が小さい半導体素子(例えば下アームスイッチとして機能する半導体素子54~56)が冷却流路の下流側となるように冷却器に対して配置されている。
【0051】
半導体モジュール50のように、上アームスイッチおよび下アームスイッチの組を複数含む半導体モジュールにおいても、上アームスイッチおよび下アームスイッチの各組を冷却する複数の冷却流路63~65を含む冷却器60に対して、上アームスイッチおよび下アームスイッチの各組が互いに冷却流路における冷媒の流れ方向に略直交する方向に沿うように配置することによって、半導体素子間の温度のばらつきを抑制する効果を得ることができる。
【0052】
(第3実施形態)
第1および第2実施形態においては、半導体モジュールに接する冷却流路が互いに並列に構成されている場合を例示して説明したが、冷却流路は、直列に接続されたものであってもよい。第3実施形態に係る電力変換システム3は、図13,14に示すように、冷却器70と、2つの半導体素子を内包する3つの半導体モジュール81~83とを備えている。
【0053】
冷却器70は、その内部に、冷媒が流れる冷媒流路としての入口流路71と、出口流路72と、冷却流路73~75と、中継流路76,77を備えている。入口流路71、出口流路72および中継流路76,77は、y軸方向に延在して配置されている。冷却流路73~75は、x軸方向に延在するとともに、互いに離間して、y軸の正方向から負方向に向かって、冷却流路73,74,75の順序で配置されている。各流路は、入口流路71、冷却流路73、中継流路76、冷却流路74、中継流路77、冷却流路75、出口流路72の順序で直列に接続され、全体として、x軸方向に蛇行しながらy軸の正方向から負方向に向かって進行する冷媒流路を構成している。
【0054】
入口流路71から冷却器70に流入する冷媒は、入口流路71をy軸の負方向に向かって流れ、次に冷却流路73をx軸の正方向に向かって流れ、次に中継流路76をy軸の負方向に向かって流れ、次に冷却流路74をx軸の負方向に向かって流れ、次に中継流路77をy軸の負方向に向かって流れ、次に冷却流路75をx軸の正方向に向かって流れ、最後に出口流路72をy軸の負方向に向かって流れて、冷却器70から流出する。
【0055】
半導体モジュール81~83は、外部端子等の図示を省略しているが、第1実施形態における半導体モジュール21~27と同様の半導体モジュールである。半導体モジュール81においては、2つの半導体素子811,812がモールド材に一体に封止されており、半導体素子811,812は、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである。半導体モジュール82においては、2つの半導体素子821,822がモールド材に一体に封止されており、半導体素子821,822は、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである。半導体モジュール83においては、2つの半導体素子831,832がモールド材に一体に封止されており、半導体素子831,832は、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである。
【0056】
半導体モジュール81~83は、図7に示す各インバータINV1,INV2に含まれる上アームスイッチおよび下アームスイッチの組を一体に包含する半導体モジュールとして、駆動回路11に適用できる。半導体モジュール81~83を第1インバータINV1に適用する場合には、例えば、半導体素子811,812は、それぞれ、図7に示すU相の上アームスイッチSU1a、下アームスイッチSU1bとして機能する。半導体素子821,822は、それぞれ、図7に示すV相の上アームスイッチSV1aと、下アームスイッチSV1bとして機能する。半導体素子831,832は、それぞれ、図7に示すW相の上アームスイッチSW1aと、下アームスイッチSW1bとして機能する。
【0057】
U相の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する半導体モジュール81は、上アームスイッチSU1aとして機能する半導体素子811が冷却流路73の上流側(x軸の負方向側)となり、下アームスイッチSU1bとして機能する半導体素子812が下流側となるように配置される。
【0058】
V相の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する半導体モジュール82は、上アームスイッチSV1aとして機能する半導体素子821が冷却流路74の上流側(x軸の正方向側)となり、下アームスイッチSV1bとして機能する半導体素子822が下流側となるように配置される。
【0059】
W相の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する半導体モジュール83は、上アームスイッチSW1aとして機能する半導体素子811が冷却流路75の上流側(x軸の負方向側)となり、下アームスイッチSW1bとして機能する半導体素子832が下流側となるように配置される。
【0060】
冷却器70のように、複数の半導体モジュール81~83をそれぞれ冷却する冷却流路73~75が直列に接続されている場合には、冷却流路73~75のそれぞれに対応する半導体モジュール81~83において、それぞれ、最大発熱量が大きい半導体素子ほど冷却流路の上流側となり、最大発熱量が小さい半導体素子ほど冷却流路の下流側となるように配置する。これによって、半導体モジュール81~83のそれぞれにおいて、半導体素子811,812間の温度のばらつき、半導体素子821,822間の温度のばらつき、半導体素子831,832間の温度のばらつき、を抑制する効果を得ることができる。
【0061】
(変形例)
第3実施形態として、図13,14では、冷却流路73~75の上面に接するように半導体モジュール81~83が配置される場合を例示して説明したが、図15,16に示すように、半導体モジュールは、冷却流路の冷媒と直接接するようにしてもよい。
【0062】
図15,16に示す電力変換システム4は、冷却器90と、2つの半導体素子を内包する3つの半導体モジュール84~86とを備えている。冷却器90は、その内部に、冷媒流路としての入口流路91と、出口流路92と、冷却流路93~95と、中継流路96,97を備えている。入口流路91、出口流路92および中継流路96,97は、y軸方向に延在して配置されている。冷却流路93~95は、x軸方向に延在するとともに、互いに離間して、y軸の正方向から負方向に向かって、冷却流路93,94,95の順序で配置されている。各流路は、入口流路91、冷却流路93、中継流路96、冷却流路94、中継流路97、冷却流路95、出口流路92の順序で直列に接続され、全体として、x軸方向に蛇行しながらy軸の正方向から負方向に向かって進行する冷媒流路を構成している。
【0063】
入口流路91から冷却器90に流入する冷媒は、入口流路91をy軸の負方向に向かって流れ、次に冷却流路93をx軸の正方向に向かって流れ、次に中継流路96をy軸の負方向に向かって流れ、次に冷却流路94をx軸の負方向に向かって流れ、次に中継流路97をy軸の負方向に向かって流れ、次に冷却流路95をx軸の正方向に向かって流れ、最後に出口流路92をy軸の負方向に向かって流れて、冷却器90から流出する。
【0064】
半導体モジュール84においては、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである2つの半導体素子841,842がモールド材に一体に封止されている。半導体モジュール85においては、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである2つの半導体素子851,852がモールド材に一体に封止されている。半導体モジュール86においては、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチである2つの半導体素子861,862がモールド材に一体に封止されている。図15,16に示すように、冷却器90には、z軸の正方向側の外表面から冷媒流路まで達する装着孔が設けられている。半導体モジュール84~86は、冷却器90の外表面側からz軸の負方向に装着孔に差し込まれて、それぞれ、その一部が冷却流路93~95内に配置され、冷却流路93~95を流れる冷媒に浸漬される。半導体モジュール84~86の外部端子は、冷却流路93~95内に配置された場合に、冷媒に浸漬しない位置(例えば、冷却器90のz軸の正方向側の面よりもさらにz軸の正方向側となる位置)において、モールド材から突出している。
【0065】
半導体モジュール84~86は、図7に示す各インバータINV1,INV2に含まれる上アームスイッチおよび下アームスイッチの組を一体に包含する半導体モジュールとして、駆動回路11に適用できる。例えば、U相の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する半導体モジュール84は、上アームスイッチSU1aとして機能する半導体素子841が冷却流路93の上流側(x軸の負方向側)となり、下アームスイッチSU1bとして機能する半導体素子842が下流側となるように配置される。
【0066】
V相の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する半導体モジュール85は、上アームスイッチSV1aとして機能する半導体素子851が冷却流路94の上流側(x軸の正方向側)となり、下アームスイッチSV1bとして機能する半導体素子852が下流側となるように配置される。
【0067】
W相の上アームスイッチおよび下アームスイッチとして機能する半導体モジュール86は、上アームスイッチSW1aとして機能する半導体素子861が冷却流路95の上流側(x軸の負方向側)となり、下アームスイッチSW1bとして機能する半導体素子862が下流側となるように配置される。
【0068】
上記の各実施形態において説明した電力変換システムにおいて、半導体モジュールおよび冷却器の形態は、適宜、変更することもできる。
【0069】
例えば、図15に示す冷却器90を、図12と同様に並列な冷却流路103~105を有する冷却器100に置き換えて、図17に示す電力変換システム5を構成してもよい。電力変換システム5は、冷却器100と、半導体モジュール84~86とを備える。冷却器100は、入口流路101と、出口流路102と、冷却流路103~105とを備えている。冷却器60と同様に、入口流路101から冷却器100に供給される冷媒は、入口流路101内をy軸の負方向に向かって流れて、冷却流路103~105に流入する。冷媒は、冷却流路103~105内をx軸の正方向に向かって流れて、出口流路102の内部に流出する。半導体モジュール84~86は、上アームスイッチSU1a,SV1a,SW1aとして機能する半導体素子841,851,861が冷却流路103~105の上流側(x軸の負方向側)となり、下アームスイッチSU1b,SV1b,SW1bとして機能する半導体素子842,852,862が下流側(x軸の正方向側)となるように、それぞれ配置される。
【0070】
また、例えば、図12に示す冷却器60を、図13と同様に直列な冷却流路123~125を有する冷却器120に置き換えて、図18に示す電力変換システム6を構成してもよい。冷却器120は、入口流路121と、出口流路122と、冷却流路123~125と、中継流路126,127を備えている。各流路は、入口流路121、冷却流路123、中継流路126、冷却流路124、中継流路127、冷却流路125、出口流路122の順序で直列に接続され、全体として、x軸方向に蛇行しながらy軸の正方向から負方向に向かって進行する冷媒流路を構成している。
【0071】
半導体モジュール110は、V相の上アームスイッチSV1aとして機能する半導体素子と、下アームスイッチSV1bとして機能する半導体素子との位置が入れ替わっている点において、図12に示す半導体モジュール50と相違している。半導体モジュール110においては、半導体素子111,114は、それぞれ、図7に示すU相の上アームスイッチSU1aと、下アームスイッチSU1bとして機能する。半導体素子115,112は、それぞれ、図7に示すV相の上アームスイッチSV1aと、下アームスイッチSV1bとして機能する。半導体素子113,116は、それぞれ、図7に示すW相の上アームスイッチSW1aと、下アームスイッチSW1bとして機能する。また、図12,18に示す6つの半導体素子51~56,111~116をそれぞれ内包する半導体モジュール50,110についても、図15,17に示すように、冷却水路を流れる冷媒に少なくとも一部が浸漬されるようにしてもよい。
【0072】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0073】
電力変換システム1~4は、それぞれ、電力変換器の1つの相単位として作動するレグを構成する複数の半導体素子271,272,51~56,811,812,821,822,831,832,841,842,851,852,861,862,111~116が一体化された半導体モジュール21~27,50,81~86,110と、レグを構成する複数の半導体素子を冷却する冷却流路(例えば冷却板40~47,冷却流路63~65,73~75,93~95,103~105,123~125)を備える冷却器30,60,70,90,100,120と、を備える。半導体モジュールは、レグを構成する複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子(例えば半導体素子271,51~53,811,821,831,841,851,861,111,113,115)が冷却流路の上流側となり、最大発熱量が小さい半導体素子(例えば半導体素子272,54~56,812,822,832,842,852,862,112,114,116)が冷却流路の下流側となるように冷却器に対して配置される。
【0074】
半導体モジュールにおいて、複数の半導体素子は、上面視したときの形状が略長方形であってもよい。この場合、半導体モジュールは、複数の半導体素子の略長方形の短辺方向が、冷却流路の冷媒の流れ方向に略平行となる位置関係で配置されることが好ましい。半導体素子の短辺方向に冷媒が流れるため、半導体素子内における熱分布を緩和することができ、半導体素子の性能をより有効に利用することができる。
【0075】
半導体モジュールにおいて、その外部に露出するとともに複数の半導体素子のそれぞれに電気的に接続する複数の外部端子(例えば第1外部端子271g,272g,第2外部端子276,外部端子51d,56d,111d,116d)が備えらえていてもよい。この場合、複数の外部端子が露出する方向は、その外部端子が電気的に接続する半導体素子に対して、冷却流路の冷媒の流れ方向に略垂直な方向であることが好ましい。半導体素子の短辺方向に冷媒が流れるように半導体モジュールを配置し易くなる。
【0076】
冷却器の形態については特に限定されず、冷媒の流路に冷媒を流して、電力変換器として機能する半導体モジュールを冷却する、多種多様な電力変換システムに適用できる。例えば、冷却器30のように、冷却流路を内部に備えるとともに厚み方向に積層された複数の冷却板40~47と、複数の冷却板の積層方向に連結する入口流路31および出口流路32とを備える積層冷却器であってもよい。この場合、冷媒は、入口流路31から流入して複数の冷却板40~47内の冷却流路を通過して出口流路32から流出する。また、複数の半導体モジュール21~27は、隣接する冷却板40~47の間に、最大発熱量が大きい半導体モジュールほど入口流路の上流側となる順序で配置されることが好ましい。
【0077】
レグを構成する複数の半導体素子は、例えば図7に示すように、直列に接続された1組の上アームスイッチおよび下アームスイッチであってもよい。この場合、半導体モジュールは、上アームスイッチと下アームスイッチのうち、電力変換器が作動する際の最大発熱量が大きい側の一方のスイッチは冷却流路の上流側となり、他方のスイッチは冷却流路の下流側となるように配置されることが好ましい。駆動回路11において交互PWM駆動を行う場合等に、上アームスイッチと下アームスイッチの各組において、上アームスイッチと下アームスイッチのいずれか一方の最大発熱量が、他方の最大発熱量よりも大きくなることがある。電力変換システム1~4を駆動回路11に適用することにより、交互PWM駆動を行う場合等における、上アームスイッチと下アームスイッチの素子温度のばらつきを抑制することができる。
【0078】
なお、半導体モジュール50,110のように、上アームスイッチおよび下アームスイッチの組を複数含んでいてもよく、冷却器60,120のように、上アームスイッチおよび下アームスイッチの各組を冷却する複数の冷却流路を含む冷却器を用いてもよい。この場合、複数の上アームスイッチおよび下アームスイッチの組は、互いに冷却流路における冷媒の流れ方向に略直交する方向に沿って配置されることが好ましい。
【0079】
また、冷却器80,90のように、複数の半導体モジュール81~83,84~86をそれぞれ冷却する冷却流路が直列に接続されていてもよい。この場合、複数の半導体モジュールは、各々に含まれる複数の半導体素子のうち、最大発熱量が大きい半導体素子ほど冷却流路の上流側となり、最大発熱量が小さい半導体素子ほど冷却流路の下流側となるように配置されることが好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1~6…電力変換システム、21~27,50,81~86,110…半導体モジュール、271,272,51~56,811,812,821,822,831,832,841,842,851,852,861,862,111~116…半導体素子、30,60,70,90,100,120…冷却器、40~47,63~65,73~75,93~95,103~105,123~125…冷却流路
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