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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20231130BHJP
   H02M 5/12 20060101ALI20231130BHJP
   G05F 1/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H02J3/12
H02M5/12 B
G05F1/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020022680
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129411
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-076347(JP,A)
【文献】特開2002-335630(JP,A)
【文献】特開平08-033316(JP,A)
【文献】特開平10-117438(JP,A)
【文献】特開2018-129920(JP,A)
【文献】特開2018-186598(JP,A)
【文献】特開2016-042279(JP,A)
【文献】特開2021-082667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
H02M 5/12
G05F 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相の交流電圧を配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に一次巻線が並列に接続されており、二次巻線のタップを切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続する負荷時タップ切換変圧器とを備える電圧調整装置であって、
前記配電線における前記直列変圧器の接続位置の一方側の電圧を計測する第1計測用変圧器から計測電圧を取得する第1取得部と、
前記負荷時タップ切換変圧器によって前記直列変圧器の一次巻線に印加される電圧を計測する第2計測用変圧器から計測電圧を取得する第2取得部と、
前記第1取得部が取得した計測電圧及び前記第2取得部が取得した計測電圧に基づいて前記配電線における前記接続位置の他方側の電圧を算出する算出部と
を備え
前記算出部は、前記第1取得部が取得した計測電圧に前記第1計測用変圧器の巻数比を乗算した電圧と、前記第2取得部が取得した計測電圧に前記第2計測用変圧器の巻数比及び前記直列変圧器の巻数比の逆数を乗算した電圧とに基づいて前記他方側の電圧を算出するようにしてある
電圧調整装置。
【請求項2】
三相の交流電圧を配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に一次巻線が並列に接続されており、二次巻線のタップを切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続する負荷時タップ切換変圧器とを備える電圧調整装置であって、
前記配電線における前記直列変圧器の接続位置の一方側の電圧を計測する第1計測用変圧器から計測電圧を取得する第1取得部と、
前記負荷時タップ切換変圧器によって前記直列変圧器の一次巻線に印加される電圧を計測する第2計測用変圧器から計測電圧を取得する第2取得部と、
前記第1取得部が取得した計測電圧及び前記第2取得部が取得した計測電圧に基づいて前記配電線における前記接続位置の他方側の電圧を算出する算出部と
を備え
前記第2取得部は、前記負荷時タップ切換変圧器における3つ接続線の線間それぞれに接続されている
電圧調整装置。
【請求項3】
前記第2計測用変圧器の巻数比の値は、前記第1計測用変圧器の巻数比に前記直列変圧器の巻数比を乗算した値であり、
前記算出部は、前記第1取得部が取得した計測電圧及び前記第2取得部が取得した計測電圧のそれぞれに前記第1計測用変圧器の巻数比を乗算した電圧に基づいて前記他方側の電圧を算出するようにしてある
請求項1又は請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記第1取得部が取得した計測電圧から前記一方側の一の二相の線間電圧を算出し、
前記第2取得部が取得した、前記一の二相それぞれにおける計測電圧から、前記一の二相それぞれの二次巻線に誘起する電圧の差分を算出し、
算出した線間電圧及び算出した差分に基づいて、前記他方側の前記二相の線間電圧を算出するようにしてある
請求項2又は請求項3に記載の電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統における配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線の電圧を調整する電圧調整装置には、配電線に直接接続された変圧器の巻線の電流が負荷時タップ切換器を通過するように結線された直接切換式と、直列変圧器の励磁巻線(一次巻線)を流れる電流が負荷時タップ切換器を通過するように結線された間接切換式とがある。
【0003】
間接切換式の電圧調整装置は、二次巻線が配電線に直列に接続される直列変圧器と、一次巻線が配電線に並列に接続され、二次巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、該複数のタップを切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続する負荷時タップ切換器とを備えている。
【0004】
この負荷時タップ切換器は、直列変圧器の一次巻線に接続するタップを切り換えるための複数の切換スイッチを有し、これらのスイッチを所定のシーケンスでオンオフすることにより、調整変圧器から直列変圧器の一次巻線に印加する調整電圧の大きさ及び極性を切り換える。
【0005】
切換スイッチをオンオフする制御を行う制御部は、配電線における電源側である一次側の電圧と、負荷側である二次側の電圧とを計測し、計測結果に基づいて、二次側の電圧が基準電圧に近づくように制御する。このような一次側及び二次側の電圧の計測は、特に系統切替による逆送時の電圧調整を考慮した場合に欠かすことができない。
【0006】
例えば、特許文献1には、複数のタップを有する変圧器と、タップ切換器と、変圧器の一次側および二次側の電圧を検出する計器用変圧器とを備え、計器用変圧器の検出電圧に基づいて二次側の電圧を一定の電圧範囲に調整する電圧調整装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-208640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一次側及び二次側の電圧の計測に用いられる高圧用の計測用変圧器は、高価であるという問題があった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一次側及び二次側の何れか一方の電圧を算出することが可能な間接切換式の電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、三相の交流電圧を配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に一次巻線が並列に接続されており、二次巻線のタップを切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続する負荷時タップ切換変圧器とを備える電圧調整装置であって、前記配電線における前記直列変圧器の接続位置の一方側の電圧を計測する第1計測用変圧器から計測電圧を取得する第1取得部と、前記負荷時タップ切換変圧器によって前記直列変圧器の一次巻線に印加される電圧を計測する第2計測用変圧器から計測電圧を取得する第2取得部と、前記第1取得部が取得した計測電圧及び前記第2取得部が取得した計測電圧に基づいて前記配電線における前記接続位置の他方側の電圧を算出する算出部とを備える。
【0011】
本態様にあっては、配電線に二次巻線が直列に接続された直列変圧器の一次巻線に対し、配電線に一次巻線が並列に接続された負荷時タップ切換変圧器の二次巻線のタップから調整電圧が印加される。配電線における直列変圧器の接続位置の一方側の電圧の計測結果と、直列変圧器の一次巻線に印加される電圧の計測結果とに基づいて、上記接続位置の他方側の電圧を算出するため、他方側の電圧を計測する計測用変圧器が不要となる。
【0012】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記算出部は、前記第1取得部が取得した計測電圧に前記第1計測用変圧器の巻数比を乗算した電圧と、前記第2取得部が取得した計測電圧に前記第2計測用変圧器の巻数比及び前記直列変圧器の巻数比の逆数を乗算した電圧とに基づいて前記他方側の電圧を算出するようにしてある。
【0013】
本態様にあっては、上記一方側の電圧の計測結果に該電圧を計測する計測用変圧器の巻数比を乗算した電圧と、直列変圧器の一次巻線の電圧の計測結果に該電圧を計測する計測用変圧器の巻数比及び直列変圧器の巻数比の逆数を乗算した電圧とに基づいて、上記接続位置の他方側の電圧を算出するため、各計測結果及び各変圧器の巻数比に基づいて上記他方側の電圧を容易に算出することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記第2計測用変圧器の巻数比の値は、前記第1計測用変圧器の巻数比に前記直列変圧器の巻数比を乗算した値であり、
前記算出部は、前記第1取得部が取得した計測電圧及び前記第2取得部が取得した計測電圧のそれぞれに前記第1計測用変圧器の巻数比を乗算した電圧に基づいて前記他方側の電圧を算出するようにしてある。
【0015】
本態様にあっては、直列変圧器の一次巻線の電圧を計測する計測用変圧器の巻数比の値を、上記一方側の電圧を計測する計測用変圧器の巻数比に直列変圧器の巻数比の逆数を乗算した値にしておくことにより、各計測結果及び一の計測用変圧器の巻数比に基づいて上記他方側の電圧を容易に算出することができる。
【0016】
前記算出部は、前記第1取得部が取得した計測電圧から前記一方側の一の二相の線間電圧を算出し、前記第2取得部が取得した前記二相それぞれの計測電圧から該二相それぞれの二次巻線に誘起する電圧の差分を算出し、算出した線間電圧及び算出した差分に基づいて、前記他方側の前記二相の線間電圧を算出するようにしてある。
【0017】
本態様にあっては、上記一方側の電圧の計測結果から算出した一の二相の線間電圧と、該二相について直列変圧器の一次巻線に印加される電圧の計測結果から算出した直列変圧器の二次巻線に誘起する電圧の差分とに基づいて、上記他方側の線間電圧を容易に算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一次側及び二次側の何れか一方の電圧を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
図2】切換スイッチの構成例を示す回路図である。
図3】OU相について、タップ位置とオンにする切換スイッチとの関係を示す図表である。
図4】配電線の電圧と直列変圧器の一次巻線に印加される電圧との関係を示す説明図である。
図5】計測用変圧器によって検出される電圧と配電線における電圧との関係を示す説明図である。
図6】電源側の電圧を算出する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図7】実施形態2に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電圧調整装置100の構成例を示すブロック図である。電圧調整装置(SVR=Step Voltage Regulator)100は、紙面左側の電源から供給されるU相,V相,W相の交流電圧を調整し、紙面右側の負荷へ、配電線1u,1v,1wを介してu相,v相,w相の交流電圧を配電する。
【0021】
電圧調整装置100は、配電線1u,1v,1wそれぞれに二次巻線112,122,132が直列に接続される直列変圧器1と、配電線1u,1v,1wに一次巻線211,221,231がΔ結線される調整変圧器2とを備える。電圧調整装置100は、更に、調整変圧器2の二次巻線212,222,232及び直列変圧器1の一次巻線111,121,131の間に設けられた負荷時タップ切換器(以下、単にタップ切換器と言う)3を備える。タップ切換器3及び調整変圧器2が、負荷時タップ切換変圧器200を構成する。
【0022】
直列変圧器1は、二次巻線112,122,132それぞれに一次巻線111,121,131が対応している。一次巻線111,121,131はΔ結線されている。二次巻線112,122,132それぞれの上記負荷側の端子に対応する一次巻線111,121,131の端子をu1,v1,w1とする。また、二次巻線112,122,132それぞれの上記電源側の端子に対応する一次巻線111,121,131の端子をu2,v2,w2とする。
【0023】
調整変圧器2は、一次巻線211が配電線1u,1v間に、一次巻線221が配電線1v,1w間に、一次巻線231が配電線1w,1u間にそれぞれ接続されている。一次巻線211,221,231のそれぞれには、二次巻線212,222,232が対応している。
【0024】
二次巻線212,222,232のそれぞれは、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt4と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2及びt3とを有する。二次巻線212,222,232のそれぞれは、タップt1~t4の何れか1つがタップ切換器3を介して直列変圧器1の一次側の端子u2,v2,w2と、端子v1,w1,u1とに接続され、他の何れか1つが中性点Nとしてアースに接続される。即ち、調整変圧器2の二次巻線212,222,232は、タップ切換器3を介してY結線される。
【0025】
調整変圧器2の一次巻線211,221,231に印加される電圧を計測するために、配電線1u,1v、1wには計測用変圧器PT1,PT2(第1計測用変圧器に相当)がV結線されている。即ち、配電線1u,1v、1wにおける直列変圧器1の接続位置よりも負荷側にて、配電線1u及び1v間に計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されており、配電線1v及び1w間に計測用変圧器PT2の一次巻線が接続されている。例えば計測用変圧器PT1及びPT2の二次巻線をΔ結線の三相平衡回路と見做し、後述する制御部31が三相分の計測電圧(以下、計測結果と言う)を取得することにより、一次巻線211,221,231に印加される電圧を検出する。これらの電圧を、3つの計測用変圧器をΔ結線することによって検出してもよいし、抵抗分圧等の手段を用いて検出してもよい。
【0026】
タップ切換器3は、調整変圧器2の二次巻線212のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_U,Th1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uと、二次巻線222のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_V,Th1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vと、二次巻線232のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_W,Th1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wとを有する。
【0027】
タップ切換器3の構成は図1に示すものに限定されず、例えば、直列変圧器1に印加する電圧の極性を切り換える極性切換用タップ選択スイッチを含む構成であってもよい。
【0028】
タップ切換器3は、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31と、制御部31からの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32とを有する。制御部31には、計測用変圧器PT1,PT2の二次巻線、及び後述する計測用変圧器PT3,PT4,PT5(第2計測用変圧器に相当)の二次巻線が接続されている。制御部31と各計測用変圧器との接続、及び駆動部32と各切換スイッチとの接続は、図示を省略する。
【0029】
制御部31は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って、電圧の調整を制御する。一時的に発生した情報はRAM(Random Access Memory )に記憶される。制御部31は、また、不図示のFPGA(Field Programmable Gate Array )を有し、計測用変圧器PT1~PT5から計測結果を取得して本実施形態1に係る電圧の算出を行う。
【0030】
二次巻線212のタップt1は、保護用のヒューズ(不図示:以下同様)を介して切換スイッチThA_U及びTh1_Uの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_U及びTh2_Uの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_U及びTh3_Uの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_U及びTh4_Uの一端に接続されている。切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士は、接続線3uを介して直列変圧器1の一次側の端子u2及びv1に接続されている。接続線3uは、タップ切換器3からU相に対応する交流電圧を出力するものであり、その位相をOUと表す。
【0031】
二次巻線222のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_V及びTh1_Vの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_V及びTh2_Vの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_V及びTh3_Vの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_V及びTh4_Vの一端に接続されている。切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_Vの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vの他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器1の一次側の端子v2及びw1に接続されている。接続線3vは、タップ切換器3からV相に対応する交流電圧を出力するものであり、その位相をOVと表す。
【0032】
二次巻線232のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_W及びTh1_Wの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_W及びTh2_Wの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_W及びTh3_Wの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_W及びTh4_Wの一端に接続されている。切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_Wの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wの他端同士は、接続線3wを介して直列変圧器1の一次側の端子w2及びu1に接続されている。接続線3wは、タップ切換器3からW相に対応する交流電圧を出力するものであり、その位相をOWと表す。
【0033】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器R_UV及び矯絡用スイッチThS_UVの直列回路と、電磁接触器MC_UVとが並列に接続されている。接続線3v及び3w間には、限流抵抗器R_VW及び矯絡用スイッチThS_VWの直列回路と、電磁接触器MC_VWとが並列に接続されている。
【0034】
矯絡用スイッチThS_UVは、二次巻線212又は222のタップt1~t4を切り換える過程で、限流抵抗器R_UVを介してタップ間を矯絡させておくために、タップ間への限流抵抗器R_UVの接続及び切り離しを行うためのものである。矯絡用スイッチThS_VWは、二次巻線222又は232のタップt1~t4を切り換える過程で、限流抵抗器R_VWを介してタップ間を矯絡させておくために、タップ間への限流抵抗器R_VWの接続及び切り離しを行うためのものである。電磁接触器MC_UV及びMC_VWは、過電流が検出されて全ての切換スイッチがオフされる場合、又はタップ切換器3の運用が停止される場合に、直列変圧器1の一次側の端子u1,u2間、端子v1,v2間及び端子w1,w2間を矯絡して、開放状態にしないようにするためのものである。
【0035】
切り換えられたタップから出力される二次巻線212,222,232の電圧を計測するために、接続線3u,3v、3wの線間には計測用変圧器PT3,PT4,PT5が接続されている。即ち、接続線3u,3v間には、計測用変圧器PT3の一次巻線が接続されており、接続線3v,3w間には、計測用変圧器PT4の一次巻線が接続されており、接続線3w,3u間には、計測用変圧器PT5の一次巻線が接続されている。計測用変圧器PT3,PT4,PT5の二次巻線は、Y結線されて制御部31に接続されている。制御部31が計測用変圧器PT3,PT4,PT5の二次巻線からOU,OV,OW三相分の計測結果を取得することにより、タップ切換された二次巻線212,222,232の電圧が検出される。
【0036】
次に、各スイッチの構成を、切換スイッチThA_Uを例として説明する。他の切換スイッチ及び矯絡用スイッチについても同様である。図2は、切換スイッチThA_Uの構成例を示す回路図である。切換スイッチThA_Uは、アノードからカソードへ一方向に導通するサイリスタThAa_U及びThAb_Uを逆並列に接続してなる。サイリスタThAa_Uのアノード及びサイリスタThAb_Uのカソードは、中性点Nに接続されている。サイリスタThAa_Uのカソード及びサイリスタThAb_Uのアノードは、調整変圧器2の二次巻線212のタップt1に接続されている。サイリスタThAa_U及びThAb_Uのゲートは、駆動部32に接続されている。駆動部32からトリガ信号が各サイリスタのゲートに印加された場合、切換スイッチThA_Uは双方向に導通する。切換スイッチThA_Uを1つのトライアックで構成してもよい。
【0037】
次に、オンにする切換スイッチの組合せについて説明する。図3は、OU相について、タップ位置とオンにする切換スイッチとの関係を示す図表である。他のOV相,OW相についても、UをV,Wに読み替えた同様の図表が示される。以下では、主にOU相を例にして説明するが、OV相及びOW相についても同様の説明が成り立つ。
【0038】
切換スイッチの組合せは13通りあり、これらの組合せをタップ1からタップ13までのタップ位置で表す。例えば、タップ位置をタップ1にした場合、切換スイッチThD_U及びTh1_Uがオンする。これにより、二次巻線212のタップt1が接続線3uに接続され、タップt4が中性点Nに接続される。この場合、タップt1及びt4間の巻数が二次巻線212の巻数に等しくなり、OU相の相電圧の大きさが最大となる。
【0039】
タップ2からタップ6までについては、タップ間の巻数が5段階に少なくなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び中性点Nに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ6にした場合、切換スイッチThD_U及びTh3_Uがオンする。これにより、二次巻線212のタップt3が接続線3uに接続され、タップt4が中性点Nに接続される。この場合、タップt3及びt4間の巻数が0を除いて最小となり、OU相の相電圧の大きさが0を除いて最小となる。
【0040】
タップ位置をタップ7にした場合、切換スイッチThD_U及びTh4_Uがオンする。これにより、二次巻線212のタップt4が接続線3uに接続され、同じタップt4が中性点Nに接続される。この場合、タップt4及びt4間の巻数が0となり、OU相の相電圧が0となる。これが、いわゆる素通しタップである。
【0041】
タップ8からタップ12までについては、タップ間の巻数が5段階に多くなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び中性点Nに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ8にした場合、切換スイッチThC_U及びTh4_Uがオンする。これにより、二次巻線212のタップt4が接続線3uに接続され、タップt3が中性点Nに接続される。この場合、タップt3及びt4間の巻数が0を除いて最小となり、OU相の相電圧の大きさが0を除いて最小となる。但し、タップ6の場合と比較して、OU相の相電圧の位相が反転する。
【0042】
タップ位置をタップ13にした場合、切換スイッチThA_U及びTh4_Uがオンする。これにより、二次巻線212のタップt4が接続線3uに接続され、タップt1が中性点Nに接続される。この場合、タップt1及びt4間の巻数が二次巻線212の巻数に等しくなり、OU相の相電圧の大きさが最大となる。但し、タップ1の場合と比較して、OU相の相電圧の位相が反転する。
【0043】
前述のとおり、タップ切換によって接続線3u及び中性点Nに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数は、タップ位置に応じて決まる、換言すれば、タップ位置に応じて、調整変圧器2の巻数比が決まる。ここで言う巻数比は、タップ切換によって接続線3u及び中性点Nに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数に対する一次巻線211の巻数の比である。そこで、図3に示すように、タップ1からタップ13までのタップ位置と、NT_U1からNT_U13までの巻数比とを対応付けておく。但し、タップ位置がタップ7の場合、上記の定義による巻数比の算出は不能となるから、タップ位置と巻数比との対応付けは行わない。NT_U1からNT_U13までの総称をNT_Uとする。
【0044】
本実施形態1にあっては、図3に示すタップ位置と、オンにする切換スイッチ及び巻数比とを対応付けたテーブルが、制御部31のROMに予め記憶されている。制御部は、タップ位置を上げ下げする毎にこのテーブルを参照して、オンにすべき切換スイッチを示す情報と巻数比とを読み出すことにより、タップ切換の処理が容易に行える。
【0045】
次に、例として電源側からのV相の交流電圧に加算又は減算される電圧について説明する。図4は、配電線1u,1v,1wの電圧と直列変圧器1の一次巻線121に印加される電圧との関係を示す説明図である。図4Aでは、配電線1u,1v,1wの電圧の位相と接続線3u,3v,3wの電圧の位相との関係を示している。図4Bでは、接続線3u,3vの電圧に基づいて一次巻線121に印加する電圧が合成されることを示している。
【0046】
先ず、図4Aにより、接続線3u,3v,3wそれぞれにおけるOU相,OV相,OW相の電圧について説明する。電源から供給されるU相,V相,W相の電圧ベクトルを太い実線の矢印で示す場合、配電線1u,1v,1wそれぞれにおけるu相,v相,w相の電圧ベクトルの大きさは、直列変圧器1による昇圧又は降圧に応じて、U相,V相,W相の電圧ベクトルよりも大きくなるか又は小さくなる。ここでは、仮に大きさが小さくなるものとして図示する。調整変圧器2の一次巻線211,221,231それぞれには、破線の矢印で示すように、uv,vw,wu各相間の電圧V_uv,V_vw,V_wuが印加される。調整変圧器2の二次巻線212,222,232それぞれには、電圧V_uv,V_vw,V_wuと同相の電圧が誘起する。
【0047】
例えば二次巻線212は、切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの何れかがオンすることによって、何れかのタップが接続線3uに接続され、切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uの何れかがオンすることによって、他の何れかのタップが中性点Nに接続される。調整変圧器2の二次巻線222,232についても、UをV,Wに読み替えることによって同様のことが言える。
【0048】
図3を用いて説明したように、タップ位置がタップ1からタップ6の何れかである場合と、タップ位置がタップ8からタップ13までの何れかである場合とでは、OU相の相電圧の位相が互いに反転する。ここでは、タップ位置がタップ1からタップ6の何れかである場合について説明する。この場合、接続線3u,3v,3wそれぞれにおけるOU相,OV相,OW相の電圧は、図4Aにて細い実線の矢印で示すように、電圧V_uv,V_vw,V_wuと同相の電圧となる。即ち、OU相,OV相,OW相それぞれの電圧は、U相,V相,W相の電圧に対して位相が30度だけ進んでいる。一方、直列変圧器1の一次巻線121には、一点鎖線の矢印で示すように、OU相及びOV相の相間の電圧であるVO_UVが印加される。以下では、特に指定がない限り、二次巻線212,222,232のタップ位置が同一であるものとする。
【0049】
ここで図1に戻って、例えば直列変圧器1の一次巻線121及び二次巻線122に着目する。上述のとおり、一次巻線121の端子v1,v2間には、端子v2からv1に対して電圧VO_UVが印加される。この場合、電圧VO_UVに対応して二次巻線122に誘起する電圧も、電圧VO_UVと同相の電圧となる。従って、電源側からのV相の交流電圧に対して電圧VO_UVに比例する電圧が加算されて負荷側に供給される。
【0050】
一方、図4Aに一点鎖線の矢印で示す電圧VO_UVは、太い実線の矢印で示すV相の電圧とは逆位相の電圧である。即ち、V相の交流電圧に対して、V相の電圧とは逆位相の電圧VO_UVに比例する電圧が加算されるから、V相の交流電圧と同位相の電圧が減算されることとなる。換言すれば、電源側からのV相の交流電圧が降圧されて、負荷側にv相の交流電圧が供給される。
【0051】
次に、図4Bにより、タップ位置に応じて一次巻線121に印加される電圧が変化することを説明する。OU相及びOV相の電圧は、それぞれタップ1からタップ13までのタップ位置に応じて13段階に大きさが変化する。タップ位置がタップ1からタップ13である場合のOU相の電圧をOU_1からOU_13で表す。同様にタップ位置がタップ1からタップ13である場合のOV相の電圧をOV_1からOV_13で表す。電圧OU_1から電圧OU_6までの位相は、図4Aに示すOU相と同相である。電圧OU_8から電圧OU_13までの位相は、図4Aに示すOU相と逆相である。なお、図4Bで説明する全ての電圧ベクトルの始点は、図の中央に示す基点BPにあるものとする。
【0052】
一次巻線121に印加される電圧VO_UVの電圧ベクトルは、図4AよりOU相の電圧ベクトルからOV相の電圧ベクトルを減算したものである。換言すれば、電圧VO_UVの電圧ベクトルは、OU相の電圧ベクトルに、OV相の電圧ベクトルの逆ベクトルを加算したものである。図4Bにてこれらの加算を視覚的に示すために、図4Bにおける電圧OV_1から電圧OV_6の電圧ベクトル向きを図4AのOV相の電圧とは逆にする。電圧OV_8から電圧OV_13の電圧ベクトル向きは、図4AのOV相の電圧と同じにする。
【0053】
例えば、タップ位置がタップ3である場合、電圧OU_3と電圧OV_3の逆向きの電圧とをベクトル的に加算した電圧のベクトルは、細い実線の矢印で表される。一次巻線121の端子v2からv1に対して印加されるこの電圧のベクトルは、太い実線の矢印で表されるV相の電圧ベクトルに対して逆向きである。即ち、タップ位置がタップ3である場合に直列変圧器1の二次巻線122に誘起する電圧により、電源側からのV相の電圧が降圧されることが確認された。
【0054】
タップ位置がタップ8からタップ13である場合は、一次巻線121の端子v2からv1に対して印加される電圧のベクトルがV相の電圧ベクトルに対して同じ向きとなることは図4Bから明らかである。この場合は、電源側からのV相の電圧が昇圧される。このように、タップ位置のタップ番号を1から6まで上げるに連れて、降圧される電圧の絶対値が順次小さくなり、タップ7(素通し)にて降圧される電圧が0となる。その後、更にタップ位置のタップ番号を上げるに連れて、電源側からのV相の交流電圧が順次昇圧されて負荷側に供給されるようになる。
【0055】
実際には、二次巻線212,222,232のタップ位置が異なる組み合わせがあり得るため、一次巻線121の端子v2からv1に対して印加される電圧のベクトルの終点は、図4Bに丸印で示す169のポイントの何れかとなる(電圧の大きさが0の場合を含む)。このため、例えば図4Aに示すv相の電圧は、V相の電圧に対して必ずしも同相のまま昇圧又は降圧されるとは限らず、一般的には多少の位相差が生じる。
【0056】
以上のとおり、タップ位置をタップ1からタップ13まで切り換えることにより、電源側からのU相,V相,W相の交流電圧を降圧した電圧から昇圧した電圧まで段階的に調整して、u相,v相,w相の交流電圧とすることができる。制御部31は、計測用変圧器PT1及びPT2により、u相,v相,w相の線間電圧を検出し、検出した電圧が不感帯を逸脱した場合に、タップ位置を上げ下げすることによって、u相,v相,w相の線間電圧が基準電圧に近づくように調整する。本実施形態1では、二次巻線212,222,232それぞれについてタップ位置が同じとなるように調整するが、それぞれのタップ位置を独立して切り換えることにより、U相,V相,W相の交流電圧の不平衡を改善することもできる。
【0057】
制御部31は、タップ位置の切り換えに際し、配電線1u,1v,1wにおける電源側の線間電圧である電圧V_UV,V_VW,V_WUを算出し、算出した電圧V_UV,V_VW,V_WUと、負荷側の線間電圧である電圧V_uv,V_vw,V_wuとの差分に基づいて目標のタップ位置を決定する。電圧V_uv,V_vw,V_wuは、計測用変圧器PT1,PT2の計測結果を取得することによって検出される。以下では、電圧V_UV,V_VW,V_WUの算出について、電圧V_UVの算出を例にして説明する。
【0058】
図5は、計測用変圧器PT1からPT5によって検出される電圧と配電線1u,1v,1wにおける電圧との関係を示す説明図である。本図を用いて電圧V_UVを算出する方法を説明する。電圧V_VW,V_WUについても同様に算出される。破線の矢印は、検出又は算出される電圧を示す。実線の矢印は、各計測用変圧器から取得される電圧を示す。紙面右側と紙面左側との対応を実線及び一点鎖線で示す。紙面の横方向に延びる実線は1対1に対応していることを示す。紙面の横方向に延びる一点鎖線は間に直列変圧器1が介在することを示す。
【0059】
先ず、以下の記号を定義する。電圧V_VW,V_WUの算出に用いる記号についても同様に定義される。
V_U,V_V:配電線1u,1vにおける電源側の相電圧
V_UV:配電線1u,1vにおける電源側の線間電圧
V_u,V_v:配電線1u,1vにおける負荷側の相電圧
V_uv:配電線1u,1vにおける負荷側の線間電圧
V_1u:直列変圧器1の一次巻線111の端子u1からu2に対して印加される電圧
V_1v:直列変圧器1の一次巻線121の端子v1からv2に対して印加される電圧
V_2u:直列変圧器1の二次巻線112にV_1uと同相に誘起する電圧
V_2v:直列変圧器1の二次巻線122にV_1vと同相に誘起する電圧
n1:直列変圧器1の巻数比
V_uv’:計測用変圧器PT1による電圧V_uvの計測結果
n2:計測用変圧器PT1の巻数比
VO_UV:接続線3u,3vにおける線間電圧(=-V_1v)
VO_WU:接続線3w,3uにおける線間電圧(=-V_1u)
VO_UV’:計測用変圧器PT3による電圧VO_UVの計測結果
VO_WU’:計測用変圧器PT5による電圧VO_WUの計測結果
n3:計測用変圧器PT3,PT5の巻数比
【0060】
計測用変圧器PT1は、一次巻線が配電線1u,1vの線間に接続されているから、計測用変圧器PT1の計測結果である電圧V_uv’を用いて電圧V_uvが検出される。同様に、計測用変圧器PT2は、一次巻線が配電線1v,1wの線間に接続されているから、計測用変圧器PT2の計測結果である電圧V_vw’を用いて電圧V_vwが検出される。ここで、配電線1w,1uの線間に接続される仮想的な計測用変圧器の計測結果を電圧V_wu’とすると、電圧V_uv’,V_vw’,V_wu’それぞれの電圧ベクトルの和が0になることから、電圧V_wu’は電圧V_uv’及びV_vw’ に基づいて算出され、電圧V_wu’を用いて電圧V_wuが算出される。
【0061】
計測用変圧器PT3は、図1より接続線3u,3vの線間に接続されているから、計測用変圧器PT3の計測結果である電圧VO_UV’を用いて電圧VO_UVが検出される。この電圧VO_UVは、直列変圧器1の一次巻線121の端子v2からv1に対して印加される電圧であり、端子v1からv2に対して印加される電圧V_1vの極性を反転したものに等しい。また、電圧V_1vを直列変圧器1の巻数比n1で除算することにより、二次巻線122に誘起する電圧V_2vが算出される。
【0062】
換言すれば、計測用変圧器PT3の計測結果である電圧VO_UV’を用いて検出される電圧VO_UVを(-n1)で除算することにより、電圧V_2vが算出される。同様に、計測用変圧器PT4の計測結果である電圧VO_VW’を用いて検出される電圧VO_VWを(-n1)で除算することにより、電圧V_2wが算出される。更に、計測用変圧器PT5の計測結果である電圧VO_WU’を用いて検出される電圧VO_WUを(-n1)で除算することにより、電圧V_2uが算出される。
【0063】
電源側の線間電圧であるV_UVは電圧V_U,V_Vによって以下の式(1)で表され、電圧V_U,V_Vそれぞれは以下の式(2),(3)によって表される。
V_UV=V_U-V_V・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
V_U=V_u+V_2u・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
V_V=V_v+V_2v・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
【0064】
式(1)~(3)より、電圧V_UVは以下の式(4)のとおり変形される。この式(4)は、図5に示す各電圧のベクトルの関係と対応している。
V_UV=(V_u-V_v)+(V-2u-V_2v)
=V_uv+(V-2u-V_2v)・・・・・・・・・・・・(4)
【0065】
電圧V_uvは、計測用変圧器PT1による計測結果である電圧V_uv’と計測用変圧器PT1の巻数比とを用いて表され、電圧V-2u,V_2vそれぞれは、電圧V-1u,V_1vと直列変圧器1の巻数比n1とを用いて表されるから、式(4)は以下の式(5)のとおり変形される。
V_UV=V_uv’×n2+(V-1u-V_1v)/n1・・・・・(5)
【0066】
式(5)における電圧V-1u,V_1vそれぞれは、上述のとおり電圧VO_WU,VO_UVの符号を反転したものであるから、式(5)は以下の式(6)のとおり変形される。
V_UV=V_uv’×n2+(VO_UV-VO_WU)/n1・・・(6)
【0067】
電圧VO_UV,VO_WUそれぞれは、計測用変圧器PT3,PT5による計測結果であるVO_UV’,VO_WU,と計測用変圧器PT3,PT5の巻数比とを用いて表されるから、式(6)は以下の式(7)のとおり変形される。
V_UV=V_uv’×n2+(VO_UV’-VO_WU’)×n3/n1・・(7)
【0068】
式(7)は、計測用変圧器PT1,PT3,PT5の計測結果を用いて、電源側の線間電圧である電圧V_UVが算出されることを示している。更に、式(7)にてn2=n3/n1となるように、即ち計測用変圧器PT3,PT5の巻数比n3が、n3=n1×n2となるように構成した場合は、式(7)が以下の式(8)のとおり変形されて、電圧V_UVの算出が簡略化される。
V_UV=(V_uv’+VO_UV’-VO_WU’)×n2・・・・(8)
【0069】
同様にして、電圧V_VW,V_WUそれぞれが以下の式(9),(10)のとおりに表される。そして、巻数比の関係がn3=n1×n2となる場合は、電圧V_VW,V_WUそれぞれが以下の式(11),(12)のとおりに表される。
V_VW=V_vw’×n2+(VO_VW’-VO_UV’)×n3/n1・・(9)
V_WU=V_wu’×n2+(VO_WU’-VO_VW’)×n3/n1
・・・・・(10)
V_VW=(V_vw’+VO_VW’-VO_UV’)×n2・・・・(11)
V_WU=(V_wu’+VO_WU’-VO_VW’)×n2・・・・(12)
【0070】
以下では、上述した制御部31の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。図6は、電源側の電圧V_UV,V_VW,V_WUを算出する制御部31の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、配電線1u,1v,1wの電圧を監視する周期で起動され、制御部31に含まれるFPGAにより実行される。図6の処理をCPUが実行するようにしてもよい。
【0071】
図6の処理が起動された場合、FPGAは、計測用変圧器PT1,PT2から計測結果として電圧V_uv’,V_vw’を取得する(S11:第1取得部に相当)。次いで、FPGAは、取得した電圧V_uv’,V_vw’に基づき、仮想的な計測結果として電圧V_wu’を算出する(S12)。
【0072】
その後、FPGAは、計測用変圧器PT3~PT5から計測結果として電圧VO_UV’,VO_VW’,VO_WU’を取得する(S13:第2取得部に相当)。次いで、FPGAは、式(7)又は(8)の右辺に、取得した電圧V_uv’及び電圧VO_UV’,VO_WU’を代入することにより、電源側の電圧V_UVを算出する(S14:算出部に相当)。
【0073】
その後、FPGAは、式(9)又は(11)の右辺に、取得した電圧V_vw’及び電圧VO_VW’,VO_UV’を代入することにより、電源側の電圧V_VWを算出する(S15:算出部に相当)。更に、FPGAは、式(10)又は(12)の右辺に、算出した電圧V_wu’及び取得した電圧VO_WU’,VO_VW’を代入することにより、電源側の電圧V_WUを算出し(S16:算出部に相当)、図6の処理を終了する。
【0074】
以上のように本実施形態1によれば、配電線1u,1v,1wそれぞれに二次巻線112,122,132が直列に接続された直列変圧器1の一次巻線111,121,131に対し、配電線1u,1v,1wの線間に一次巻線211,221,231が並列に接続された負荷時タップ切換変圧器200の二次巻線212,222,232それぞれのタップt1~t4から調整電圧が印加される。配電線1u,1v,1wにおける直列変圧器1の接続位置よりも負荷側の電圧の計測結果と、直列変圧器1の一次巻線111,121,131に印加される電圧の計測結果とに基づいて、上記接続位置よりも電源側の電圧を算出することが可能となるため、電源側の電圧を計測する計測用変圧器が不要となる。
【0075】
また、実施形態1によれば、例えば負荷側の電圧V_uvの計測結果である電圧V_uv’に該電圧を計測する計測用変圧器PT1,PT2の巻数比n2を乗算した電圧と、直列変圧器1の一次巻線121,111それぞれに印加される電圧V_1v,V_1uを反転した電圧の計測結果である電圧VO_UV’,VO_WU’に該電圧を計測する計測用変圧器PT3,PT5の巻数比n3及び直列変圧器1の巻数比n1の逆数を乗算した電圧とに基づいて、上記接続位置よりも電源側の電圧を算出する(式(7)参照)ため、各計測結果及び各変圧器の巻数比に基づいて電源側の電圧を容易に算出することができる。
【0076】
更に、実施形態1によれば、例えば直列変圧器1の一次巻線121,111それぞれに印加される電圧V_1v,V_1uを反転した電圧を計測する計測用変圧器PT3,PT5の巻数比n3の値を、負荷側の電圧を計測する計測用変圧器PT1,PT2の巻数比n2に直列変圧器1の巻数比n1の逆数を乗算した値にしておくことにより、各計測結果及び計測用変圧器PT1の巻数比n2に基づいて電源側の電圧を容易に算出する(式(8)参照)ことができる。
【0077】
更に、実施形態1によれば、例えば負荷側の電圧V_uvの計測結果である電圧V_uv’から算出したu相,v相の線間の電圧V_uvと、直列変圧器1の一次巻線111,121それぞれに印加される電圧V_1u,V_1vを反転した電圧の計測結果である電圧VO_WU’,VO_UV’から算出した直列変圧器1の二次巻線112,122に誘起する電圧V_2u,V_2vの差分とに基づいて電源側の線間電圧を容易に算出する(式(4)~(8)参照)ことができる。
【0078】
なお、本実施形態1にあっては、負荷側の線間電圧を検出して電源側の線間電圧を算出したが、負荷側の相電圧を検出若しくは算出して電源側の相電圧を算出することも可能である。例えば、負荷側のu相の電圧V_uと、直列変圧器1の二次巻線112に誘起する電圧V_2uとを用いて以下の式(13)により、電源側のU相の電圧V_Uを算出することができる。V_2uは、式(4)~(6)を参照して、-(VO_WU)/n1から算出される。
V_U=V_u+V_2u・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(13)
【0079】
また、本実施形態1にあっては、電圧調整装置100は、調整変圧器2がΔ-Yの二次巻線212,222,232がタップ切換器3を介してY結線され、直列変圧器1の一次巻線111,121,131がΔ結線されているが、これに限定されるものではない。例えば、調整変圧器2の二次巻線212,222,232がタップ切換器3を介してΔ結線され、直列変圧器1の一次巻線111,121,131がY結線されている場合であっても、計測用変圧器PT3,PT4,PT5をY結線することにより、全く同様に電源側の電圧を算出することができる。具体的には、例えば計測用変圧器PT3,PT4それぞれによるOU相,OV相の計測結果を電圧VO_U’,VO_V’とすれば、式(7)を変形した以下の式(14)により、電圧V_UVが算出される。
V_UV=V_uv’×n2+(VO_U’-VO_V’)×n3/n1・・(14)
【0080】
(実施形態2)
実施形態1は、負荷側の電圧を検出して電源側の電圧を算出する形態であるのに対し、実施形態2は、電源側の電圧を検出して負荷側の電圧を算出する形態である。図7は、実施形態2に係る電圧調整装置100の構成例を示すブロック図である。本実施形態2にあっては、電圧調整装置100が計測結果を取得する計測用変圧器PT1,PT2の接続箇所が実施形態1と異なっている。
【0081】
具体的には、配電線1u,1v、1wにおける直列変圧器1の接続位置よりも電源側にて、配電線1u及び1v間に計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されており、配電線1v及び1w間に計測用変圧器PT2の一次巻線が接続されている。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0082】
負荷側の線間電圧であるV_uvは電圧V_u,V_vによって以下の式(15)で表され、電圧V_u,V_vそれぞれは以下の式(16),(17)によって表される。
V_uv=V_u-V_v・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(15)
V_u=V_U-V_2u・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(16)
V_v=V_V-V_2v・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(17)
【0083】
式(15)~(17)より、電圧V_uvは以下の式(18)のとおり変形される。
V_uv=(V_U-V_V)-(V-2u-V_2v)
=V_UV-(V-2u-V_2v)・・・・・・・・・・・・(18)
【0084】
電圧V_UVは、計測用変圧器PT1による計測結果である電圧V_UV’と計測用変圧器PT1の巻数比とを用いて表され、電圧V-2u,V_2vそれぞれは、電圧V-1u,V_1vと直列変圧器1の巻数比n1とを用いて表されるから、実施形態1と同様に、式(18)は以下の式(19)のとおり変形される。
V_uv=V_UV’×n2-(V-1u-V_1v)/n1
=V_UV’×n2-(VO_UV-VO_WU)/n1・・・(19)
【0085】
電圧VO_UV,VO_WUそれぞれは、計測用変圧器PT3,PT5による計測結果であるVO_UV’,VO_WU,と計測用変圧器PT3,PT5の巻数比とを用いて表されるから、式(19)は以下の式(20)のとおり変形される。
V_uv=V_UV’×n2-(VO_UV’-VO_WU’)×n3/n1
・・・・・(20)
【0086】
式(20)は、計測用変圧器PT1,PT3,PT5の計測結果を用いて、負荷側の線間電圧である電圧V_uvが算出されることを示している。更に、式(20)にてn2=n3/n1となるように、即ち計測用変圧器PT3,PT5の巻数比n3が、n3=n1×n2となるように構成した場合は、式(20)が以下の式(21)のとおり変形されて、電圧V_uvの算出が簡略化される。
V_uv=(V_UV’-VO_UV’+VO_WU’)×n2・・・・(21)
【0087】
同様にして、電圧V_vw,V_wuそれぞれが以下の式(22),(23)のとおりに表される。そして、巻数比がn3=n1×n2の関係にある場合は、電圧V_vw,V_wuそれぞれが以下の式(24),(25)のとおりに表される。
V_vw=V_VW’×n2-(VO_VW’-VO_UV’)×n3/n1
・・・・・(22)
V_wu=V_WU’×n2-(VO_WU’-VO_VW’)×n3/n1
・・・・・(23)
V_vw=(V_VW’-VO_VW’+VO_UV’)×n2・・・・(24)
V_wu=(V_WU’-VO_WU’+VO_VW’)×n2・・・・(25)
【0088】
以上のように本実施形態2によれば、配電線1u,1v,1wにおける直列変圧器1の接続位置よりも電源側の電圧の計測結果と、直列変圧器1の一次巻線111,121,131に印加される電圧の計測結果とに基づいて、上記接続位置よりも負荷側の電圧を算出することが可能となるため、負荷側の電圧を計測する計測用変圧器が不要となる。
【0089】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1u,1v,1w 配電線、 100 電圧調整装置、 1 直列変圧器、 111,121,131 一次巻線、 112,122,132 二次巻線、 u1,u2,v1,v2,w1,w2 端子、 200 負荷時タップ切換変圧器、 2 調整変圧器、 211,221,231 一次巻線、 212,222,232 二次巻線、 t1,t2,t3,t4 タップ、 3 タップ切換器、 31 制御部、 32 駆動部、 Th1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_U,ThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_U 切換スイッチ、 3u,3v,3w 接続線、 ThS_UV,ThS_VW 矯絡用スイッチ、 R_UV,R_VW 限流抵抗器、 MC_UV,MC_VW 電磁接触器、 PT1,PT2,PT3,PT4,PT5 計測用変圧器
図1
図2
図3
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図5
図6
図7