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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】着色断熱ボードとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20231130BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20231130BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20231130BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B32B15/095
B32B15/20
E04F13/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020059910
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154694
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】596105644
【氏名又は名称】株式会社東北イノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 恭浩
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-105186(JP,A)
【文献】特開平08-169975(JP,A)
【文献】特開平10-037347(JP,A)
【文献】特開2019-025774(JP,A)
【文献】特開平11-201373(JP,A)
【文献】特開2006-321882(JP,A)
【文献】特開2006-083598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
E04F 13/00-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記ポリイソシアヌレート発泡体は前記面材間で発泡したものであり、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、
前記ポリイソシアヌレート発泡体は、前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と接する表面が、着色断熱ボード加熱時の排気通路部になっており、
前記排気通路部は、前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面に塗布された有機酸または消泡剤と接して、前記ポリイソシアヌレート発泡体が発泡した部分からなることを特徴とする着色断熱ボード。
【請求項2】
前記有機酸は10~180℃の融点を有するものであり、前記消泡剤はシリコーン系消泡剤であることを特徴とする請求項に記載の着色断熱ボード。
【請求項3】
ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記ポリイソシアヌレート発泡体は前記面材間で発泡したものであり、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、
前記ポリイソシアヌレート発泡体は、前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と接する表面が、着色断熱ボード加熱時の排気通路部になっており、
前記ポリイソシアヌレート発泡体の密度が25~45kg/mであることを特徴とする着色断熱ボード。
【請求項4】
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と、他の面材の裏面との間でポリイソシアヌレート組成物を発泡させることにより、
前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材と、前記他の面材との間にポリイソシアヌレート発泡体を形成する着色断熱ボードの製造方法において、
前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に有機酸または消泡剤を塗布し、
前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材における前記有機酸または消泡剤が塗布された裏面と、前記他の面材の裏面との間でポリイソシアヌレート組成物を発泡させて前記ポリイソシアヌレート発泡体を形成することにより、
前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面の前記有機酸または消泡剤と接触して形成された前記ポリイソシアヌレート発泡体の表面に、着色断熱ボード加熱時の排気通路部を形成することを特徴とする着色断熱ボードの製造方法。
【請求項5】
前記有機酸は10~180℃の融点を有するものであり、前記消泡剤はシリコーン系消泡剤であることを特徴とする請求項に記載の着色断熱ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が着色された着色断熱ボードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装などに用いられる断熱ボードとして、ポリイソシアヌレート発泡体の少なくとも一方の面にアルミニウムの面材を貼り合わせたものがある。ポリイソシアヌレート発泡体は、断熱性及び難燃性を有し、かつ強度を有することから、建材に利用されている。
【0003】
ポリイソシアヌレート発泡体にアルミニウムの面材を貼り合わせた断熱ボードは、アルミニウムの面材の表面がアルミニウムの金属色であってカラーバリエーションが無いことから、使用場所によっては色彩的に適さないことがある。そのため、近年では、表面が種々の色の断熱ボードが望まれるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3948014号公報
【文献】特許第4541970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の断熱ボードにおいてアルミニウムの表面に着色塗膜を設けたものは、アルミニウムが有する遮熱効果が着色塗膜によって低くなり、発熱性試験であるコーンカロリーメータ試験時に、着色断熱ボードに蓄熱され、総発熱量が国土交通省の定める不燃材料認定における準不燃性能の規定を越える(準不燃性能に合格しない)問題がある。また、コーンカロリーメータ試験時に、ポリイソシアヌレート発泡体の熱分解ガスが発生し、その発生した熱分解ガスが、ポリイソシアヌレート発泡体と着色塗膜を設けたアルミニウム層との界面に滞留し、着色塗膜を設けたアルミニウム層が滞留ガスで外側へ膨らんで試験装置の点火プラグに接触し、判定が不能になって準不燃性能に合格しなくなる問題がある。
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、表面が着色され、かつ準不燃性能以上の防火材料である着色断熱ボードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、ポリイソシアヌレート発泡体の両面に面材を有し、前記ポリイソシアヌレート発泡体は前記面材間で発泡したものであり、前記面材のうち少なくとも一方の面材はアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する着色断熱ボードにおいて、前記ポリイソシアヌレート発泡体は、前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面と接する表面が、着色断熱ボード加熱時の排気通路部になっていることを特徴とする。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記排気通路部は、前記表面に着色塗膜層を有するアルミニウム層の裏面に塗布された有機酸または消泡剤と接して、前記ポリイソシアヌレート発泡体が発泡した部分からなることを特徴とする。
【0009】
第3の態様は、第2の態様において、前記有機酸は10~180℃の融点を有するものであり、前記消泡剤はシリコーン系消泡剤であることを特徴とする。
【0010】
第4の態様は、第1の態様から第3の態様の何れか一において、前記ポリイソシアヌレート発泡体の密度が25~45kg/mであることを特徴とする。
【0011】
第5の態様は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と、他の面材の裏面との間でポリイソシアヌレート組成物を発泡させることにより、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材と、前記他の面材との間にポリイソシアヌレート発泡体を形成する着色断熱ボードの製造方法において、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に有機酸または消泡剤を塗布し、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材における前記有機酸または消泡剤が塗布された裏面と、前記他の面材の裏面との間でポリイソシアヌレート組成物を発泡させて前記ポリイソシアヌレート発泡体を形成することにより、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面の前記有機酸または消泡剤と接触して形成された前記ポリイソシアヌレート発泡体の表面に、着色断熱ボード加熱時の排気通路部を形成することを特徴とする。
【0012】
第6の態様は、第5の態様において、前記有機酸は10~180℃の融点を有するものであり、前記消泡剤はシリコーン系消泡剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の着色断熱ボードは、着色断熱ボードの加熱時に生じるポリイソシアヌレート発泡体の熱分解ガスが、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と接するポリイソシアヌレート発泡体の表面の排気通路部を通って外部へ放出されるため、熱分解ガスが、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材とポリイソシアヌレート発泡体との界面に滞留するのを防ぎ、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が、滞留ガスで外側へ膨らむのを防ぐ、または低減することができる。
【0014】
そのため、本発明の着色断熱ボードは、発熱性試験であるコーンカロリーメータ試験時に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が膨らんで試験装置の点火プラグに接触するおそれがなく、準不燃性能以上に合格することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の着色断熱ボードの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の着色断熱ボードにおける加熱時の排気を示す図である。
図3】連通処方と独泡処方の配合を示す表である。
図4】比較例と実施例の構成と物性及び発熱性試験等の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す本発明の一実施形態に係る着色断熱ボード10は、ポリイソシアヌレート発泡体11の両面に面材23、31を有し、少なくとも一方の面材23は、アルミニウム層21の表面に着色塗膜層22を有するものからなる。
【0017】
ポリイソシアヌレート発泡体11は、ポリイソシアヌレート組成物を反応、発泡させて得られる。ポリイソシアヌレート発泡体11は、独立気泡率(独泡率)が75%以上、より好ましくは80~90%である。本発明における独立気泡率(独泡率)は、ASTM D 2856に準じて測定される値である。
【0018】
ポリイソシアヌレート発泡体11の独立気泡率が高いほど断熱性が高くなる反面、加熱時にポリイソシアヌレート発泡体11が膨らみ易くなって発熱性試験で不利になる。一方、ポリイソシアヌレート発泡体11の独立気泡率が低すぎる場合、例えば、ポリイソシアヌレート発泡体11が殆ど連通気泡で構成されている場合には、ポリイソシアヌレート発泡体11が酸素を取り込み燃焼しやすく、亀裂あるいは穴を生じ易くなったり、総発熱量の規定を超過しやすくなり発熱性試験で不利になる。
【0019】
ポリイソシアヌレート発泡体11の密度(JIS K7222:2005)は、25~45kg/mが好ましい。密度が低すぎると強度不足になり、逆に密度が高すぎると天井材や壁材としての用途としては重くなり過ぎ、また施工時にも軽量のものが好まれ、壁構造材としての観点から好ましくない。
また、ポリイソシアヌレート発泡体11の厚みは適宜設定されるが、例として10~200mmを挙げる。
【0020】
ポリイソシアヌレート組成物は、ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、ポリイソシアネート、及び適宜配合される助剤を含む。
ポリオールは、ポリイソシアヌレート発泡体用として公知のものを使用することができる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0023】
ポリオールの量は、ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に1~20重量%が好ましい。
【0024】
発泡剤は、化学発泡剤である水、あるいは物理発泡剤であるペンタンなどの炭化水素、ハイドロフルオロオレフィンを、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤の量は適宜とされるが、前述の通り、ポリイソシアヌレート発泡体11の密度(JIS K7222:2005)が、好ましい25~45kg/mになるように添加する。
【0025】
触媒は、ポリイソシアヌレート発泡体の製造に使用される三量化触媒あるいは三量化触媒とウレタン化触媒を併用することができる。
三量化触媒としては、例えば、1)酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の金属酸化物類;2)メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、プロポキシナトリウム、ブトキシナトリウム等のアルコキシド類;3)酢酸カリウム、2-エチルヘキサンカリウム、オクチル酸カリウム、カプリル酸カリウム、シュウ酸鉄等の有機金属塩類;4)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、N,N′,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類;5)エチレンイミンの誘導体;6)アルカリ金属、アルミニウム、遷移金属類のアセチルアセトンのキレート類、4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独、又は2種以上を混合して使用することができ、なかでも、3)有機金属塩類や6)4級アンモニウム塩を使用することがより好ましい。好適には、酢酸カリウムとオクチル酸カリウムとを組み合わせたものが使用できる。
【0026】
ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン等のアミン触媒、スタナスオクトエート等のスズ系触媒、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。
【0027】
混合触媒の好ましい量は、前記ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に0.8~7重量%が好ましい。
【0028】
整泡剤は、ポリイソシアヌレート発泡体用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。整泡剤の量は、前記ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に、前記整泡剤の量が0.2~3.0重量%であるのが好ましい。整泡剤の量を前記範囲にすることにより、ポリイソシアヌレート発泡体の独泡率を75~90%にすることができる。
【0029】
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートが用いられ、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。ポリイソシアネートは、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリイソシアネートの量は、イソシアネートインデックスが300~600となるようにするのが好ましく、より好ましくは350~500である。イソシアネートインデックスが300未満の場合は燃えやすく熱収縮しやすくなり、それに対して600より大の場合にはポリイソシアヌレート発泡体がもろくなり、圧縮強度や曲げ物性などが低下し構造体として好ましくない。イソシアネートインデックスの定義は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[ポリイソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0031】
適宜配合される助剤としては、難燃剤や着色剤等を挙げることができる。難燃剤としては、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、或いはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤等を挙げることができる。難燃剤の量は、前記ポリイソシアヌレート組成物100重量%中に1~15重量%が好ましく、より好ましくは2~13重量%である。
着色剤の樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができ、顔料、染料、カーボン等も使用できる。
【0032】
ポリイソシアヌレート組成物は、公知の発泡装置で混合されることにより、ポリオールとポリイソシアネートが反応して発泡し、ポリイソシアヌレート発泡体を形成する。
【0033】
ポリイソシアヌレート発泡体11において、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面(アルミニウム層21の裏面)と接する表面12が、着色断熱ボード10の加熱時の排気通路部13となっている。排気通路部13は、着色断熱ボード10の加熱時にポリイソシアヌレート発泡体11が熱分解して発生する熱分解ガスを、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とポリイソシアヌレート発泡体11との界面に沿って誘導し、着色断熱ボード10の外部へ排気するための通路となる部分である。
【0034】
排気通路部13は、後述する着色断熱ボード10の製造時に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面に塗布された有機酸または消泡剤と接して、ポリイソシアヌレート発泡体11の表面12が形成されることにより、該表面12に形成される。
【0035】
有機酸を用いる場合の排気通路部13は、発泡中のポリイソシアヌレート組成物が、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面の有機酸と接することにより形成される。発泡中のポリイソシアヌレート組成物が、有機酸と接することにより、気泡の硬化が遅れて複数の気泡の合一(隣合う気泡と気泡が密着して1つになる)または破泡されてなる半連通状態の排気通路部13が、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面と接するポリイソシアヌレート発泡体11の表面に形成される。
【0036】
有機酸としては、10~200℃の融点を有するもの、より好適には、40~100℃の融点を有するものが好ましい。例えば、融点が10~180℃の飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。
【0037】
飽和脂肪酸としては、カピリル酸(融点17℃)、カプリン酸(融点32℃)、ラウリン酸(融点45℃)、ミリスチン酸(融点45~56℃)、パルミチン酸(融点50~60℃)、マルガリン酸(融点61℃)、ステアリン酸(融点50~70℃)、ベヘニン酸(融点74~78℃)などが挙げられる。
【0038】
ヒドロキシ酸としては、乳酸(融点16.8℃)、リンゴ酸(融点130℃)、レモン酸(クエン酸)(融点153℃)、酒石酸(ブドウ酸)(融点150~200℃)、グリコール酸(融点75℃)、トロパ酸(融点116℃)、ベンジル酸(融点150~152℃)などが挙げられる。
【0039】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸(融点122℃)、フタル酸(融点130.8℃)、サリチル酸(融点158.6℃)、ケイヒ酸(融点133℃)などが挙げられる。
【0040】
ジカルボン酸としては、マロン酸(融点135℃)、グルタル酸(融点95~98℃)、アジピン酸(融点152.1℃)、ピメリン酸(融点103~105℃)、スベリン酸(融点141~144℃)、アゼライン酸(融点109℃)、セバシン酸(融点131~134.5℃)などが挙げられる。それらの中でも、常温で固体のものが取扱いがしやすく、かつ、発泡体製造時に発泡中のポリイソシアヌレート組成物と接した有機酸が、発泡熱により液状化しやすいものが排気通路部13を形成しやすく、好ましい。具体的には、融点が40~100℃の有機酸が好ましく、50~80℃の有機酸がより好ましい。
【0041】
消泡剤を用いる場合の排気通路部13は、発泡中のポリイソシアヌレート組成物が、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面の消泡剤と接することにより形成される。発泡中のポリイソシアヌレート組成物が、消泡剤と接することにより、複数の気泡の合一(隣り合う気泡と気泡がくっついて1つになる)または破泡されてなる半連通状態の排気通路部13が、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面と接するポリイソシアヌレート発泡体11の表面に形成される。
【0042】
消泡剤は、泡の形成を遅らせる抑泡性と、形成された泡を消す破泡性とを有する。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、ビニル系消泡剤等が挙げられ、シリコーン系消泡剤は特に好ましいものである。シリコーン系消泡剤の形態は、シリコーンオイル、オイルコンパウンド、溶液、エマルジョン、自己乳化の何れであってもよい。
【0043】
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23は、着色断熱ボード10の意匠面(表面)を構成する。
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23のアルミニウム層21は、厚みが12~150μmのアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム層21の厚みが薄すぎると、アルミニウム層にピンホールが存在するようになって、コーンカロリー試験時に準不燃性能以上に合格し難くなり、逆に厚すぎると着色断熱ボード10が重くなり、かつコストアップになる。
【0044】
着色塗膜層22は、着色された樹脂の塗膜からなる。着色塗膜層22の形成は、樹脂を溶媒に溶かして着色剤を分散させた樹脂塗料をアルミニウム層21の表面に所定厚みで塗布し、乾燥させることにより形成することができる。着色塗膜層22を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。着色塗膜層22の目付量(塗布量)は1.5~12.0g/mが好ましい。着色塗膜層22の目付量が少ない場合は均一に塗膜層が形成できなかったり、着色が不十分になったりする。着色の色は、白色、黄色、水色、アイボリー等、着色断熱ボード10の設置場所等に応じて適宜決定される。なお、着色塗膜層22の塗装方法は、グラビア塗装、スプレー、ロールコーター、コンマコーター等を挙げることができる。
【0045】
また、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23は、ポリイソシアヌレート発泡体11の発泡時に接着一体化するが、その接着力を高めるため、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面に、接着用樹脂を塗布しておくのが好ましい。また、接着用樹脂は、前記有機酸あるいは消泡剤と混合したものを使用してもよい。接着用樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0046】
アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とは反対側となる他の面材31は、着色断熱ボード10の裏面を構成する。他の面材31は、クラフト紙面材、アルミクラフト紙面材、炭酸カルシウム紙面材、水酸化アルミニウム紙面材、金属箔、アルミニウム箔(アルミニウム層)などから選択される。他の面材31は、厚みが12~150μmアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23は、ポリイソシアヌレート発泡体11の発泡時に接着一体化するが、その接着力を高めるため、接着用樹脂を塗布しておくのが好ましい。接着用樹脂樹しては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0047】
着色断熱ボード10における加熱時の作用を、図2を用いて説明する。着色断熱ボード10は、加熱によってポリイソシアヌレート発泡体11の熱分解ガスが発生すると、発生した熱分解ガスは、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23の裏面と接するポリイソシアヌレート発泡体11の表面の排気通路部13を通り、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とポリイソシアヌレート発泡体11との界面に沿って誘導され、外部へ放出される。そのため、発生した熱分解ガスが、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23とポリイソシアヌレート発泡体11との界面に滞留するのを防ぐことができ、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材23が滞留ガスで外側へ膨らむのを低減することができる。
【0048】
本発明の着色断熱ボード10は、コーンカロリーメータ試験の不燃性能に合格する。コーンカロリーメータ試験は、輻射電気ヒーターによって50kW/mをサンプルに照射して加熱し、発熱量等を測定して発熱性を判断する試験であり、ISO 5660-1に規定されている。コーンカロリーメータ試験における不燃の判定基準は、サンプル表面に50kW/mの輻射熱を当ててサンプルの加熱を開始した後、1200秒(20分)間において、次の(1)~(4)の全てを満たした場合に合格であり、(1)~(3)の何れか1つでも満たさない場合は不合格、(4)を満たさない場合は判定不能となって不燃及び準不燃の何れにも合格しなくなる。
(1)総発熱量が8MJ/m以下であること。
(2)防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴が無いこと。
(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを越えないこと。
(4)点火プラグに接触しないこと。
【0049】
着色断熱ボード10の製造について説明する。アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、好ましくは接着用樹脂を塗布し、その接着用樹脂の上に、有機酸または消泡剤を塗布する。有機酸の塗布量(乾燥時の塗布量)は、0.1~100g/mが、さらには0.5~50g/mが好ましい。一方、消泡剤の塗布量(乾燥時の塗布量)は、1~80g/mが、さらには2~40g/mが好ましい。有機酸及び消泡剤の塗布方法は、スプレー塗布、グラビア塗装、ロールコーター、コンマコーター等を挙げることができる。
なお、有機酸または消泡剤の塗布に代えて、接着用樹脂と有機酸または消泡剤を混合したものを塗布してもよい。
【0050】
次に、前記アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を、裏面の有機酸または消泡剤の塗布面が上向きとなるように配置し、有機酸または消泡剤の塗布面にポリイソシアヌレート組成物を吐出して発泡させ、その発泡途中のポリイソシアヌレート組成物上に、好ましくは予め接着用樹脂を塗布したアルミニウム層等からなる他の面材を、接着用樹脂が下向きとなるように積層し、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と他の面材との間にポリイソシアヌレート発泡体を形成し、図1の着色断熱ボード10を得る。
なお、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と、他の面材の裏面とを、上下さかさまにして、他の面材の裏面上にポリイソシアヌレート組成物を吐出して発泡させ、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と他の面材との間にポリイソシアヌレート発泡体を形成しても、図1の着色断熱ボード10を得ることができる。
【0051】
前記ポリイソシアヌレート組成物が発泡して硬化する際、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に有機酸が塗布されている場合、ポリイソシアヌレート組成物は、有機酸と接する部分のみ反応が遅延し、硬化が遅れる。ポリイソシアヌレート組成物は硬化する前に発泡が成長すると、気泡の合一(隣合う気泡と気泡が密着して1つになる)または破泡を繰り返し、気泡の接触界面が一部連通した半連通状態になり、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と接するポリイソシアヌレート発泡体の表面に、前記排気通路部が形成される。なお、ポリイソシアヌレート組成物において、有機酸と接触していない部分は、反応遅延を生じず、独立気泡率の高い発泡体となる。
【0052】
有機酸を塗布して製造された着色断熱ボードは、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に接するポリイソシアヌレート発泡体の表面のみが、一部連通した半連通状態の排気通路部になっているため、ポリイソシアヌレート発泡体の内部では独立気泡率が高くなっており、高い断熱性を維持することができる。
【0053】
一方、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に消泡剤が塗布されている場合、ポリイソシアヌレート組成物は、消泡剤と接する部分のみ破泡して気泡が合一になる(隣り合う気泡と気泡が密着して1つになる)を繰り返し、気泡の接触界面が連通構造になり、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面と接するポリイソシアヌレート発泡体の表面に前記排気通路部が形成される。なお、ポリイソシアヌレート組成物において、消泡剤と接触していない部分は、気泡の合一を生じ難く、独立気泡率の高い発泡体となる。
【0054】
消泡剤を塗布して製造された着色断熱ボードは、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に接するポリイソシアヌレート発泡体の表面のみが、連通構造の排気通路部になっているため、ポリイソシアヌレート発泡体の内部では独立気泡率が高くなっており、高い断熱性を維持することができる。
【実施例
【0055】
以下に比較例と実施例を示す。
下型と上型からなり、300×300×50mmのキャビティが形成されたモールド(発泡成形型)を用い、下型のキャビティの底面に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材(表面側の面材)を、着色塗膜層が下向きとなるようにして配置した。なお、実施例については、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を下型に配置する前に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、後述するように有機酸あるいは消泡剤を塗布した。また、比較例及び実施例におけるアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材については、後述する各比較例及び各実施例の説明において詳述する。前記モールドを90℃に温調した状態で、モールドのキャビティ内に、図3に示す及び後述の連通処方あるいは独泡処方のポリイソシアヌレート組成物を約180g注入した。そして、他の面材(裏面側の面材)としてのアルミニウム層を、裏面の接着用樹脂が下向きとなるように予めセットしたモールドの上型を、モールドの下型に被せて閉型し、ポリイソシアヌレート組成物をキャビティ内で発泡させて着色断熱ボードを形成し、その後に着色断熱ボードの成形品を脱型し、100mm角×厚み50mmに裁断して各比較例及び各実施例のサンプルを作製した。
【0056】
連通処方及び独泡処方に用いた原料を示す。
・連通処方の原料
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI、NCO%;31.3、品名;ミリオネートMR-200、東ソー株式会社製
ポリエステルポリオールA:オルトフタル酸とジエチレングリコール(DEG)とを脱水縮合してなるポリエステルポリオール(水酸基価:323mgKOH/g、数平均分子量350)、25℃での粘度2600mPa・s、官能基数2
ジエチレングリコール:官能基数2、分子量106、水酸基価1057mgKOH/g、25℃の粘度27mPa・s、丸善石油化学株式会社製
難燃剤:トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、品名;ProFlame-PC1389、ProFlame社製
三量化触媒:次の(1)~(3)
(1)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、水酸基価213mgKOH/g、品名;ルベアックDMP-30、ナカライテスク株式会社製、
(2)オクチル酸カリウム溶液、水酸基価271mgKOH/g
(3)酢酸カリウム溶液、水酸基価270mgKOH/g
破泡剤-1:ブタジエン系破泡剤、品名;オルテゴール501、エボニックジャパン株式会社製
破泡剤-2:シリコーン系破泡剤、品名;テゴスターブB8523、エボニックジャパン株式会社製
発泡剤-1:水
発泡剤-2:ハイドロフルオロオレフィン、品名;ソルスティスLBA、ハネウェルジャパン株式会社製
連通処方におけるイソシアネートインデックスは406である。
【0057】
・独泡処方の原料
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI、NCO%;31.3、品名;ミリオネートMR-200、東ソー株式会社製
ポリエステルポリオールB:オルトフタル酸とジエチレングリコール(DEG)とを脱水縮合してなるポリエステルポリオール(水酸基価:400mgKOH/g、数平均分子量280)、25℃での粘度1100mPa・s、官能基数2
ジエチレングリコール:官能基数2、分子量106、水酸基価1057mgKOH/g、丸善石油化学株式会社製
難燃剤:トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、品名;ProFlame-PC1389、ProFlame製
整泡剤:シリコーン系、品名;SH-193、ダウ・東レ株式会社製
三量化触媒:次の(1)~(3)
(1)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、水酸基価213mgKOH/g、品名;ルベアックDMP-30、ナカライテスク株式会社製
(2)オクチル酸カリウム溶液、水酸基価271mgKOH/g
(3)酢酸カリウム溶液、水酸基価270mgKOH/g
発泡剤:シクロペンタン
独泡処方におけるイソシアネートインデックスは404である。
【0058】
各実施例及び各比較例のサンプルについて、独立気泡率、発泡体密度、熱伝導率の測定及び発熱性試験(コーンカロリーメータ試験)を行った。
独立気泡率の測定は、各実施例及び各比較例のサンプルにおけるポリイソシアヌレート発泡体について、発泡体中心部(コア部)を切り出し、ASTM D 2856に準じて行った。
発泡体密度の測定は、各実施例及び各比較例のサンプルにおけるポリイソシアヌレート発泡体について、JIS K7222:2005に準じて行った。
熱伝導率の測定は、英弘精機株式会社製、Heat Flow Meter HC-074を用いて、各実施例及び各比較例のサンプルについて、JIS A-1412-2に規定されている熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法によって行った。
発熱性試験は、ISO5660に規定されているコーンカロリーメータ試験に準拠し、株式会社東洋精機製作所製コーンカロリーメータC4を用いて各実施例及び各比較例のサンプルに対して行った。
【0059】
各比較例と各実施例の構成及び結果と総合評価を図4に示す。総合評価は、発熱性試験において、総発熱量が6MJ/m未満、かつ、防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴がないこと、かつ、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないこと、かつ、点火プラグに接触しない、かつ、熱伝導率が0.024W/m・K以下である場合に「◎」、総発熱量が6MJ/m以上8MJ/m未満、かつ、防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴がないこと、かつ、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないこと、かつ、点火プラグに接触しない、かつ、熱伝導率が0.024W/m・K以下である場合に「〇」、総発熱量が8MJ/m以上、または、防火上有害となるサンプル裏面まで貫通する亀裂・穴がある、または、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超える、または、点火プラグに接触する、または、熱伝導率が0.024W/m・K以上の何れか1つ以上に該当する場合に「×」とした。
以下に各比較例及び各実施例の構成および物性、発熱性試験結果について詳述する。
【0060】
<比較例1>
比較例1は、ポリイソシアヌレート発泡体が、連通処方のポリイソシアヌレート組成物からなり、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に有機酸(ステアリン酸)及び消泡剤の何れも塗布なしの例である。
【0061】
・アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材
表面側(意匠面側)のアルミニウム層としてアルミニウム箔(合金番号1N30、東洋アルミニウム株式会社製、厚み80μm)を用い、そのアルミニウム層の表面に、着色材を含むエポキシ樹脂(ホワイト、品名;ロックホールドホワイト、ロックペイント株式会社製)をシンナーで希釈した希釈樹脂液を、目付量を5g/mとしてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置することにより着色塗膜層を作製し、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材を得た。また、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に、接着用樹脂を目付量1.5g/mとしてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置した。接着用樹脂は、エポキシ樹脂(透明、品名;RC12〔硬化剤〕、JER828〔主剤〕、三菱ケミカル株式会社製、主剤100gに対して硬化剤50で配合)をメチルエチルケトンで希釈した希釈樹脂液を用いた。
【0062】
・裏面側の他の面材
裏面側のアルミニウム層としてアルミニウム箔(合金番号1N30、東洋アルミニウム株式会社製、厚み35μm)を用い、そのアルミニウム層の裏面に、接着用樹脂を目付量1.5g/mとしてバーコーターにより塗布し、常温で1週間放置した。接着用樹脂は、エポキシ樹脂(透明、品名;RC12〔硬化剤〕、JER828〔主剤〕、三菱ケミカル株式会社製、主剤100gに対して硬化剤50で配合)をメチルエチルケトンで希釈した希釈樹脂液を用いた。
【0063】
比較例1は、ポリイソシアヌレート発泡体が連通処方、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が、裏面に有機酸(ステアリン酸)及び消泡剤の何れも塗布なしの例である。
比較例1は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が2.0%、密度が35.1kg/m、熱伝導率が0.036W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が1.59MJ/m、最高発熱速度が3.6kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。比較例1の着色断熱ボードは、総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、かつ点火プラグ接触もなかったが、着色断熱ボードの熱伝導率が高く、断熱性の低いものであり、断熱ボードとして劣るため、総合評価が「×」になった。
【0064】
<比較例2>
比較例2は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材のアルミニウム層の厚みを50μm、ポリイソシアヌレート発泡体を、独泡処方のポリイソシアヌレート組成物とし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に有機酸(ステアリン酸)及び消泡剤の何れも塗布なしの例である。
比較例2は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.8%、密度が33.8kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が0.72MJ/m、最高発熱速度が3.5kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触ありであった。比較例2の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たしたが、発熱性試験開始後168秒経過したところで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が膨れて点火プラグに接触したため、不燃判定不能になり、総合評価が「×」になった。
【0065】
<比較例3>
比較例3は、比較例2におけるアルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材のアルミニウム層の厚みを80μmとし、他を比較例2と同様にした例である。
比較例3は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.2%、密度が34.6kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が1.38MJ/m、最高発熱速度が2.4kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触ありであった。比較例3の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たしたが、発熱性試験開始後180秒経過したところで、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が膨れて点火プラグに接触したため、不燃判定不能になり、総合評価が「×」になった。
【0066】
<実施例1>
実施例1は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材のアルミニウム層の厚みを80μm、ポリイソシアヌレート発泡体を、独泡処方のポリイソシアヌレート組成物とし、表面側のアルミニウム層(アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材)の裏面に有機酸(ステアリン酸)を塗布した例であり、有機酸(ステアリン酸)の塗布以外は、比較例3と同様である。
【0067】
有機酸(ステアリン酸)の塗布方法について説明する。使用したステアリン酸は、品名:ステアリン酸つばき、日油株式会社製である。まず、比較例1と同様にして、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の形成と、その裏面の接着用樹脂の塗布及び乾燥を行う。次に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の接着用樹脂の上に、90℃で溶融した有機酸(ステアリン酸)をハケで均一塗布し、その後に23℃で8時間冷却固化させた。実施例1の有機酸(ステアリン酸)の冷却固化の塗布量(乾燥後)は8g/mである。
【0068】
実施例1は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.2%、密度が33.9kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が2.68MJ/m、最高発熱速度が4.8kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例1の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0069】
<実施例2>
実施例2は、有機酸(ステアリン酸)の塗布量(乾燥後)を13g/mにした以外は、実施例1と同様である。
実施例2は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.2%、密度が33.3kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が2.09MJ/m、発熱速度が7.2kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例2の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び発最高熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0070】
<実施例3>
実施例3は、有機酸(ステアリン酸)の塗布量(乾燥後)を35g/mにした以外は、実施例1及び実施例2と同様である。
実施例3は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.1%、密度が34.3kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が7.95MJ/m、発熱速度が13.9kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例3の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったが、総発熱量が6MJ/m以上8MJ/m未満だったため、総合評価が「○」になった。
【0071】
<実施例4>
実施例4は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材のアルミニウム層の厚みを50μmとし、有機酸(ステアリン酸)の塗布量(乾燥後)を0.5g/mにした以外は、実施例1~実施例3と同様である。
実施例4は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.7%、密度が34.7kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が6.05MJ/m、最高発熱速度が15.9kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例4の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったが、総発熱量が6MJ/m以上8MJ/m未満だったため、総合評価が「○」になった。
【0072】
<実施例5>
実施例5は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材のアルミニウム層の厚みを80μmとし、有機酸(ステアリン酸)の塗布量(乾燥後)を0.5g/mにした以外は、実施例4と同様である。
実施例5は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が85.4%、密度が35.0kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が5.03MJ/m、最高発熱速度が16.4kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例5の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0073】
<実施例6>
実施例6は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に消泡剤を塗布した例であり、消泡剤の塗布以外は、実施例1と同様である。使用した消泡剤は、シリコーン消泡剤、品名:Dowsil FSアンチフォーム93、ダウ・東レ株式会社製である。
【0074】
消泡剤の塗布方法について説明する。比較例1と同様にして、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の形成と、その裏面の接着用樹脂の塗布及び乾燥を行う。次に、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の接着用樹脂の上に、消泡剤をハケで均一に塗布し、その後に80℃の乾燥炉で9時間乾燥させた。実施例6の消泡剤の塗布量(乾燥後)は8g/mである。
【0075】
実施例6は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が87.2%、密度が34.7kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が4.28MJ/m、最高発熱速度が7.5kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例6の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0076】
<実施例7>
実施例7は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に塗布した消泡剤(シリコーン消泡剤)の量を13g/mにした例であり、消泡剤の塗布量以外は、実施例6と同様である。
【0077】
実施例7は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が86.8%、密度が35.0kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が3.45MJ/m、最高発熱速度が6.3kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例7の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0078】
<実施例8>
実施例8は、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材の裏面に塗布した消泡剤(シリコーン消泡剤)の量を25g/mにした例であり、消泡剤の塗布量以外は、実施例6及び実施例7と同様である。
【0079】
実施例8は、ポリイソシアヌレート発泡体の独立気泡率が84.5%、密度が34.2kg/m、熱伝導率が0.021W/m・K、着色断熱ボードの総発熱量が2.83MJ/m、最高発熱速度が6.2kW/m、亀裂なし、点火プラグ接触なしであった。実施例8の着色断熱ボードは、熱伝導率が低く、高い断熱性を有し、かつ総発熱量及び最高発熱速度の何れも不燃基準を満たし、アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材が点火プラグに接触しなかったため、総合評価が「◎」になった。
【0080】
このように、本発明の着色断熱ボードは、表面が着色され、かつコーンカロリーメータ試験において点火プラグに接触せず、準不燃以上に合格するため、カラー装飾性と難燃性の両方が求められる内装材などの建材に好適なものである。なお、実施例では、着色断熱ボードの片面にのみ着色塗膜層を設けたが、両面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 着色断熱ボード
11 ポリイソシアヌレート発泡体
12 ポリイソシアヌレート発泡体の表面
13 排気通路部
21 アルミニウム層
22 着色塗膜層
23 一方の面材(アルミニウム層の表面に着色塗膜層を有する面材)
31 他の面材
図1
図2
図3
図4